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電気系統からの出火事例について

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Academic year: 2021

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1 はじめに

自動車本体から出火した火災の原因を系 統別に分類すると,燃料系,電気系,排気系 等に分けることができます。このうち,電気 系からの火災の特徴としては,出火原因と なる痕跡が微小のため発見しにくい点や, エンジン停止後でも出火することがある点 が挙げられます。

今回,このような電気系から出火した事 例がありましたので紹介します。

2 短絡による出火事例

2-1 火災概要

出火日時 1 平成 10 年 8 月 15 日 8 時 53 分 頃

出火車両の状況:焼損程度:エンジンルー ム内のみ全焼している。

2-2 出火時の状況

走行中,突然「ボン」という音とともにエ ンジンルームから白煙が上がったのを見て 路上に停車したものである。

2-3 現場調査の結果

① 焼損したのは,エンジンルーム内全てで

る。(写真 1 参照)

②エンジンルーム内には 9 エンジンオイル クーラー用のエンジンオイルが流れるホー ス(以下「オイルホース」という。)があるも のの,フロントグリルに空冷式エンジンオ イルクーラーが取り付けられていないため, オイルホースはただ単にエンジンオイルを 循環させるだけのものである。これは,出火 日の 3 日前に当該オイルクーラーからエン ジンオイルが漏れたために取り外そうとし て所有者が,一番修理費用の安い方法での 修理を修理業者に依頼し 9 現在の仕様にし たものである。(写真 2 参照)

③燃料用の合成ゴム及び樹脂系の機器はす べて焼失し,バッテリ上部の樹脂は焼失し ているものの,+及び一端子は一切焼失して おらず,出火原因になるような痕跡はない。

電気系統からの出火事例について

火災原因調査シリーズ

(12)・〈車輌火災〉

神戸市消防局

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④そこで,インテークマニーホールド(エン ジン本体の右車輪側)を取り外すと,スター ター端子の横のオイルパン側面に前記のオ イルホース(円筒の合成ゴムの外周にメッ シュ状のステンレスを巻いたホース,長さ 約 120cm)が接続され,エンジン本体の右前 輪側全体に大きな円を描くように固定せず に取り回している。この接続部は,360 度自 由に回転できるタイプである。

スターターB 端子(写真 3 参照)に接続さ れている電気配線の接続金具の下面には,

火災熱で溶けた状況とは明らかに 異なる溶融痕がある。この直下のオ イルホースにも直径 1cm の溶融痕 があり,合成ゴムも焼失している。

この位置は接続金具の溶融痕の位 置と一致するとともに,振動等の外 力が働けば容易に接触することが できる状況である。また,このオイ ルホースには,溶融痕からエンジン 本体の約 10cm 反対側方向に同じ大 きさの溶融痕があり,2 箇所の溶融 痕は,接続金具と同じで二次的な火災熱で 溶けた状況とは明らかに異なる。

⑤オイルパンのエンジンオイルを計量する と約 2 ㍑であり,約 2 ㍑減量している。

2-4 出火原因

電気は,バッテリ+端子からイグニッショ ンスイッチ(以下「IG」という。)を介して電 装品に入り,ボディにアースされているた めボディに流れる。基本的に電気配線に は,IG を介しているため ON にすると電気は 流れる。OFF にすると電気は流れないが,バ ッテリ+端子から IG までの間は,常時電圧が 印加されているためボディに接触さえすれ ば,電気回路が形成され短絡出火し 得る。(図参照)しかも,バッテリー からスターターB 端子までの電気 配線には,フューズが入っていない ため短絡による溶融痕が非常に大 きくなる。今回の事案は,常時電圧 が印加されているスターターB 端 子の接続金具に溶融痕がある。

また,オイルホースは,走行中の 振動により揺られた際に,スタータ ーB 端子の接続金具に接触する位

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- 52 - 置関係にあり,もう一方の溶融痕でも,ボデ

ィアースされた箇所に接触している。

したがって,オイルホース上で電気回路 が形成され,接続金具とオイルホースの接 触部分から出火したものと考えられる。

なお,エンジンオイルはオイルホースか ら漏洩しても高温部にこぼれ落ちた場合に 限り発火するのが一般的である。今回の自 動車の高温部である排気管は,オイルホー スを設置している反対側であるため,エン ジンオイルは最初の着火物ではないが,オ イルホース上で電気回路が形成された場合 のエンジンオイルが火災に及ぼす影響を確

認するために再現実験を行った。

2-5 再現実験

同一車の入手が困難なため,消火器を使 用し,ホース部分を同一のオイルホースに 付け替えて実施した。

実験に先がけ,火災発生時と同一条件に するために以下のとおりとした。

①エンジンオイルの温度は,90℃にして 消火器の中に注入する。

②当該車両のオイルホース内のエンジン オイルは 3kg/c ㎡であったことからコンプ レッサーで同一圧力にする。

バッテリ+端子から延ばした電気配線(一

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端子から延ばした電気配線は,予めオイル ホースに取り付けておいた)をオイルホー スに接触させたところ,オイルホースのメ ッシュ状ステンレスが赤熱して,その後ホ ース内の合成ゴムが発火する。さらに,合 成ゴムの穴の開いたところからエンジン オイルが霧状で噴出した後,引火して一気 に火炎が拡大する状況が確認できた。(写 真 4 参照)

3 おわりに

自動車火災のうち電気系からの出火は, 痕跡を残しにくいものであるが,今回の事 案は,電気系からの出火の特徴となる痕跡 を残した事例であった。

参照

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