1.システムの必要性
(1)必要性
発泡スチロールは、①断熱性②緩衝性③水を通さない④軽い⑤成形しやすい⑥安価な どの優れた特性を持っているが、処理時にかさばるという欠点もある。
2005 年度の日本国内の発泡スチロールの出荷量は、187,000 トン/年(JEPSRA 調べ)
であり、マテリアルリサイクルが 71,400 トン(38.1%)行われている。その内の 48,100 トンが、240℃程度の熱で減容しインゴットにされているが、熱によりスチロールの品 質劣化が激しいため国内の化学メーカーでは再生加工が行えないので引き取らず、海外 に輸出せざるを得ない状況にある。しかしながら、その主な輸出先である中国政府側も 廃発泡スチロールインゴットの輸入禁止宣言など制限をし始めた。バーゼル条約にも示 されるように、国内処理が基本となりつつある。
また、廃発泡スチロールはその 90%は、油として有効利用できることもあり、資源 をわざわざ輸出することもないとの考え方もある。その他に、各地魚市場や小売店など では、有償で廃発泡スチロールを引き取ってもらっている現状もある。さらに端的な例 として、離島や客船、自衛艦船など陸上から離れ廃発泡スチロールが処分できない場所 では、船舶やヘリコプターなどにより廃発泡スチロールを引き取るため、大変大きなエ ネルギーを消費している。加えて、近年の基本的な考え方として自分で出した不要物は 自分で処分することが主流である。京都議定書のCO2問題もその基本に立っており、そ の考え方からすれば、廃発泡スチロールの処分についても、今後ますます重要度を増し ていくものと思われる。
これらのことを考慮すると、廃発泡スチロールをごみ処理にとどまらず、資源として 有効に再利用することは現代社会の使命でありニーズであるといえる。
本廃発泡スチロール油化リサイクルシステムは、廃発泡スチロールを減容して効率よ く貯蔵、搬送し、油化による資源化を図る最適の方法と考えられる。これにより
①減容により省スペースで貯蔵できる。1/50 の減容と輸送費の軽減
②廃発泡スチロールの処理
③廃発泡スチロールの資源化(油の製造)
が可能となる。
(2)国内、海外の現状
廃発泡スチロール処理事業化における解決すべき問題点としては下記の7項目をよ り効率的にいかに解決できるかが重要である。
① 減容の方法
② 異物混入の処理
③ 溶剤の回収(溶剤減容の場合)
④ ポリスチレンリサイクル方法
⑤ 初期設備投資の低減
⑥ 上記に係わるランニングコストの低減
⑦ プラント規模に見合う原料の確保と操業効率の維持 結果的には、満足のいく解決はできていないのが現状である。
現在のところ熱による溶解が主流で、熱箱に 240℃前後の熱風を送り込んで、廃発泡 スチロールを溶かし受け皿に流し込んで入れインゴッドにしている。また、溶剤を使用 して減容する方式もあるが、溶剤自身が高価であったり、溶解に時間がかかり実用化に 難がある。また、溶剤の 100%回収を謳っているものの、回収装置にさらに億円単位の 投資が必要で現実的に無理である等の問題点があり、溶剤による減容は熱による溶解と 比較してその利便性は認識するものの広く普及していなかった。
本システムでは減容物を流動性の高い液体状態にし、溶剤を分離した中間生成物も液 状物であるため
①溶剤を分離し易い(分離効率:90%以上)
②ゴミを溶剤分離・回収機装置内で取り除ける
③低温で溶剤分離できるので
・溶剤の再利用が何度でも可能
・ポリスチレンの品質劣化がない
④溶剤分離機から油化装置までポンプで運べる
⑤中間生成物が高密度のため
・油化装置の小型化が可能
・油化装置の高効率化が可能
など従来システムにない特長を持ち、国内はもとより国外でも初めてのシステムとい える。
廃発泡スチロールを溶剤により減容から油化してリサイクルするシステムは過去〜
現在を通して最も解決の満足度の高い実用化可能な装置の開発といえ、今後、熱減容に 変わるリサイクルシステムとして極めて有望であると考える。搭載する油化機はスチレ ン専用として設計するため、従来の一般廃プラスチック油化機と比べて、コンパクトで 省エネルギー、処理速度もアップしている。また、溶剤分離・回収機〜油化機までの機 器はトラックにて輸送できるようなコンセプトで、従来にない画期的なダウンサイジン グにしている。
2.システムの概要
(1)主要性能
各機器の主要性能を表1に示す。
表1 各機器の主要性能
減容量 廃発泡スチロール60kg/1ドラム缶(4トントラック1車分)
減容時間 60kg/1ドラム缶を3時間(液温度に左右されず)
60kg減容時(3時間稼働) 消費電力量0.1 kWh以下 0.0008 kWh/廃発泡kg
処理時間1.5時間/減容物1ドラム ポリスチレン回収能力 40 kg/h 溶剤分離効率 90%以上
溶剤回収能力 溶剤回収能力 63L/h
廃発泡スチロール60kg溶剤分離・回収時 消費電力量40kWh 0.66 kWh/廃発泡kg
油化能力 120 kg/h
油化効率 95%(原料重量比)以上 油化原料120kg時 消費電力 48 kWh 0.4 kWh/原料kg
油化性能 エネルギー使 用量
油化 パート 減溶機
溶剤分離・
回収パート
エネルギー使 用量
溶剤分離能力
エネルギー使 用量
(2)構成
減溶 機A 各 卸店舗
減溶機B 各 卸店 舗
減溶機C 各卸店 舗
減 溶機D 各卸店 舗
魚市場内( 例)
溶剤分離 部 溶剤液 化部
移 動 移動 移動 移動
溶剤 ガス
ポリス チレン 油化機
場内フ ォー クリフト
発電機
再 生溶剤 燃料
溶剤分 離・ 回収機 再 利用
減 溶機へ
油利 用
図1 廃発泡スチロール油化リサイクルシステム全体概念図
図 1 に、廃発泡スチロール油化リサイクルシステム(以下「本システム」という。)
の全体構成の概念図を示す。システムは、①減溶機、②溶剤分離・回収機パート、③ス
チレン油化パートより構成される。
図2に、本システム1セットあたり(減溶機 16 台、溶剤分離・回収機〜油化機 1 台)
の廃発泡スチロール処理量と油化製造量のマテリアルフローを示す。
図2 本システム 1 セットあたりの廃発泡スチロール処理量と油化製造量
さらに、溶剤分離・回収機パートとスチレン油化パートは、図3のように構成される。
混 合 工 程
溶 剤 分 離 ・ 液 化 工 程
油 化 工 程
減 溶 物 ド ラ ム 缶 減 溶 物 (溶 剤 + ポリスチ)
混 合 槽
受 け 容 器
溶 剤 分 離 機
溶 剤 液 溜 器
ガ ス 化 部 回 収 溶 剤
ス チ レ ン 系 油
スチレンガス 3 種 混 合 液
(溶 剤 +ポリスチ +スチ 油)
溶 剤 ガス
溶 剤 液 液 化 機
2 種スチレン (ポリスチ+ スチ油)
油 化 部
H H
ガ ス 温 度 40℃ 〜80℃
ガ ス 温 度 140℃ 〜350℃
図3 溶剤分離・液化機パートとスチレン油化パートの構成図
(3)特徴
本システムは機械装置一式を販売し、その使用をエンドユーザーが行う。そのため従 来の廃プラスチック処理プラントに見られるような専門業者を対象とした億円単位の 大型処理装置ではなく、排出元での処理を想定した小型で簡易、低コストの機械である ことを特長としている。
1)減溶機
密閉された装置内に溶剤が入った樹脂ドラム缶が設置されている。廃発泡スチロー ルを減容(1/50)すると共に、発泡スチロール以外は溶けないので、選別機の役割を 果たす。本減溶機には、次の特長がある。
①スチレン以外の異物は溶け残るので選別が容易
②機械は密閉式のケーシングで囲われている
屋外型、使用者の安全性確保、外部から物が入らない、溶剤回収率向上
③自動化され、誰にでも操作可能
④既存減容剤では、トップレベルの溶解速度
⑤熱減容のような臭気がない
⑥圧縮減容、破砕式溶剤減容に比べ騒音がほとんどない
⑦投入口に入る大きさであれば投入前処理(破砕など)が必要ない 2)溶剤分離・液化機パート
回収物に熱をかけて、溶剤ガスとポリスチレンに分離し、溶剤ガスを液化して再利
用溶剤にすると共に、ポリスチレン分は油化機に送る。
溶剤の分離からポリスチレンの抽出にいたる工程は、ポリスチレンが常温では固体 のため、減容物から溶剤を分離し始めると、分離表面から固形化が進み、溶剤が内部 に封入されるため、溶剤とスチレンを完全に分離できない。また、ポリスチレン単体 は固体のため、その後工程への搬送が極めて困難であり、この欠点の解決ができなか った。今回、画期的な方法により、問題点を解決することができた。それは、減容物 に本システムで生産する最終生成物を添加することにより減容物を流動性の高い液 体状態にできることを発見したことである。
これに常圧状態で 80℃程度の低温の熱をかければ溶剤のみが蒸発できるため、省 エネルギーでポリスチレンの品質(分子量)を維持したまま溶剤と分離できる特長を 持っている。溶剤を分離した中間生成物も液体状態になるため、後工程への搬送も通 常のオイルポンプで運べるので簡便であり、複雑な機構を必要としないことを特長と している。
3)油化装置
ポリスチレンを加熱・冷却し、スチレン油にする。油は燃料もしくは原料として再 利用する。
本廃発泡スチロール油化リサイクルシステムは、従来類似システムにない次の点が挙 げられる。
①システム全体が小型コンパクト
②油化までの一貫処理システム
③システム全体が自動・連続運転可能
④高品位なポリスチレン抽出
⑤高い溶剤回収率と溶剤再利用回数
⑥ゴミの前処理が不要
3.実施期間
製作 平成19年7月〜平成20年6月 試用 平成20年7月〜平成20年9月
4.実施内容
(1)製作過程 1)製作体制
製作者の製作に係わる組織及び製作場所
(株)マエカワ 本社 東京都江東区牡丹3−14−15 守谷工場 茨城県守谷市立沢2000
システム仕様検討:本社 関東支店
守谷工場 ユニットプロダクツ 守谷工場 技術研究所
基本設計 :本社 関東支店
守谷工場 ユニットプロダクツ 守谷工場 技術研究所
詳細設計 :守谷工場 ユニットプロダクツ 製造部門 :守谷工場 ユニットプロダクツ 能力検証 :本社 関東支店
守谷工場 ユニットプロダクツ 守谷工場 技術研究所
2)実施結果
①減溶機のシステム仕様検討、基本設計、詳細設計、製作
減溶機の仕様を検討し、基本設計を行った。さらに、能力や使い勝手を考慮して 各部品を選定し、詳細設計を行った。図4に、減溶機の詳細設計図を示す。
この設計に基づき、製作を行った減溶機を写真1に示す。
②溶剤分離・液化機パートのシステム仕様検討、基本設計、詳細設計、製作 図5に溶剤分離・液化機と油化装置のフローを示す。
②-1 混合工程の設計、製作
減溶物と製造したスチレン油を混ぜる混合工程の設計を行った。主な構成機器 は、減溶物供給ポンプ、混合槽容器、攪拌機、搬送経路の途中に設けたゴミ取り 用のストレーナである。図6に設計姿図を示す。
この設計に基づき、製作を行った混合工程を写真2に示す。
②-2 溶剤分離機
3 種混合液を加熱し、溶剤をガス化させる溶剤分離機の設計を行った。主な構 成機器は、原料供給ポンプ、分離槽容器、加熱ヒータ、循環ポンプである。分離 機周りの設計姿図を図7に、設計に基づき製作を行った溶剤分離機を写真3に示 す。
②-3 液化機
分離機でガス化した溶剤を冷却して液化再生する液化機の設計を行った。主な 構成機器は、冷却部(溶剤ガス凝縮器)、液溜器である。液化機の設計姿図を図 8に、設計に基づき製作を行った液化機を写真4に示す。
③油化機パートのシステム仕様検討、基本設計、詳細設計、製作
油化機の仕様、能力を検討して各部品を選定し設計を行った。図9に、油化装置 の設計姿図を示す。主な構成要素は、ガス化部容器、加熱ヒータ、油化部(分解ガ スの凝縮器)である。設計に基づき製作を行った油化装置を写真5に示す。
④溶剤分離・液化機〜油化機の装置全体組み立て設計、製作
減溶物の投入から溶剤分離機へまでの搬送工程の設計、分離ガスの液化工程への 搬送系の設計、液化溶剤の搬出系統の設計、溶剤分離後油化原料の油化機への搬送 系統の設計、油化されたスチレン油の搬出系統の設計を行った。さらに、製作する ための詳細設計及び図面化して、製作を行った。
⑤システム制御用電気制御盤設計製作
溶剤分離・液化機〜油化機の装置全体の各機器の制御及び全体システムチューニ ング制御ソフトを設計し、それに基づいた制御盤を製作した。
⑥減溶機の試運転
減溶機単独の減溶動作確認、試運転を行い、必要な調整を行った。
写真6に、減溶機に発泡スチロールを投入している状況を示す。
⑦溶剤分離・液化機パートの試運転
溶剤分離部に減溶物を入れて、溶剤分離・液化の単独試運転を行い、動作確認を 行った。写真 7 は、ポンプで減溶物を吸い上げている状況である。スチレン油を加 えて攪拌されて混合した3種混合液を写真8に示す。
分離機でヒータ加熱している3種混合液を写真9に示す。泡となって溶剤が分離 している様子がわかる。液化再生された溶剤の様子を写真10に示す。
⑧油化機パートの試運転
油化機に油化原料(スチレン油+ポリスチレン)を入れて、油化の単独試運転を 行い、動作確認を行った。
写真11に、油化された状況を示す。初期は、透明な液体が油化されスチレンモ ノマーが取り出されている。写真12は、油化終了間際の状況であるが、着色した
液体であることより成分の異なる油であることがわかる。
⑨減溶機の性能確認試験
減溶機の性能試験の結果より、以下の性能が確認できた。
⑨-1 減溶量の確認
図10に減溶試験の結果を示す。減溶重量は 60.8kg を超え、目標とした1ド ラム缶(溶剤 100L 充填)に減溶できる廃発泡スチロール量が 60kg 以上であるこ とが確認できた。
⑨-2 減溶時間
図10に示すように、3時間以内で廃発泡スチロール 60kg を減溶することが 確認できた。
⑨-3 エネルギー使用量
廃発泡スチロール 60kg 減溶時(延べ 3 時間稼働)における減溶機の消費電力が、
45Wh〜65Wh(0.045〜0.065 kWh)となり、目標としていた 1.0 kWh を十分にクリ アすることが確認できた。
⑩溶剤分離・回収機の性能確認試験
溶剤分離・回収機の性能試験の結果より、以下の性能が確認できた。
⑩-1 溶剤分離能力
図11に、溶剤回収量の経時変化を示す。55 分で目標値(63L/h)の回収量に 達した。これより、ポリスチレン回収能力が 40 kg/h 以上、溶剤回収能力が 63L/h 以上であることが確認できた。
⑩-2 溶剤分離効率
投入した減溶物重量から推定される溶剤量 64.0L に対して、1 時間後に回収で きた量(溶剤+若干の水、スチレンモノマー)66.2L から推定して
66.2L/64.0L=103%
目標としていた減溶物から溶剤を 90%以上は分離できたものと思われる。
⑩-3 エネルギー使用量
図12に、分離機用ヒータ表面温度とヒータ出力の経時変化を示す。
スチロールの含有量は 42kg である。1 時間のヒータの平均値は 9.9kW と 9.7kW で、60kg のスチロール回収時のヒータの消費電力に換算すると、
(9.9kW+9.7kW)×1h×(60kg/42kg)=28.0 kWh
である。その他の動力として、循環ポンプ、ブラインチラー動力、ブライン循環 ポンプ動力を合わせて
28 kWh+2.2 kWh+10 kWh=40.2 kWh
目標であった、廃発泡スチロール 60kg の溶剤分離・回収時の消費電力が 50 kWh
以下であることが確認できた。
⑪スチレン油化装置の性能確認試験
スチレン油化装置の性能試験の結果より、以下の性能が確認できた。
⑪-1 油化性能
図13に、スチレン油生産量の経時変化を示す。目標である時間当たり 120kg は、56 分と 1 時間以内に達成できることが確認できた。また、129.4kg の油化原 料が供給されたと推測されるが、1 時間での油化生産量が 127.4kg であり
127.4kg / 129.4kg =98.5%
となり、目標とした油化効率は 85%を大きく上回り、オフガスとしてほとんど 出ないことが確認できた。
⑪-2 エネルギー使用量
油化機用ヒータは、定格 25kW と 15kW の 2 系統に分かれており、ヒータの表面 温度が設定値の 550℃に達すると停止する。したがって 120kg の油化にかかるヒ ータの消費電力量は
(25kW+15kW)×1h=40 kWh となる。
その他の動力として、ブラインチラー動力、ブラインポンプの動力を合計して、
40 kWh+8 kWh=48 kWh
となり、目標値である 90 kWh を大きく下回ることが確認できた。
(2)試用過程(試用体制、実施結果、問題点)
1)試用体制
試用者の試用に係わる組織
(株)マルハニチロ物流 関東支社 試用場所
減溶機:(株)マルハニチロ物流 関東支社 豊海物流センター 東京都中央区豊海町14−17
溶剤分離・回収機・油化機:(株)マエカワ 守谷工場 茨城県守谷市立沢2000
2)実施結果
①減溶機の試用評価試験
減溶機を実際に試用し、使用時の安全性、使用時の不具合の処理方法など、シス テム制御ソフトの妥当性を評価した。
減溶機の開始から終了までの実際の工程のフローチャートを図14に示す。
安全対策としては、投入時のみ扉の自動ロックが解除され、扉を閉めると自動ロ
ックが施錠され、減溶機が稼働中は扉が開かない構造となっていて、安全面には配 慮されている。
その他の工夫として、減溶時間の適正設定と発泡スチロールの引っ掛かり対策の 制御である。通常運転では、規定時間内に重りがドラム缶上部に達するが、投入密 度が高かったり、投入した発泡スチロールが引っ掛かった場合、規定時間内に重り が達しないことがある。この時、自動的に重りを上昇させ、再度発泡スチロールを 浸漬させるRe−Try機能がついており、順調に作動することが確認できた。
②溶剤分離・回収機、スチレン油化装置の試用評価試験
②-1 油化原料のゴミ取りとスムーズな搬送
実際に試用して、ゴミ取りフィルタによるゴミの分離状況を確認し、搬送につ いては通常のオイルポンプや自由落下で問題がないかを検証した。
設計製造時のゴミ取りフィルタの位置と写真を図15に示す。混合槽で混合さ れた 3 種の液は、ストレーナを介して受け容器に落とされる。実際に試用してみ ると、ゴミの入ったものは、ストレーナが頻繁に詰まり、清掃が(1 ドラム缶で 20 回程度)大変であった。
そこで、図16のように改造した。吸込口とベーンポンプの間に、写真13に 示す粗ゴミ用のフィルタを設け粗いゴミを取り除き。混合槽の 3 種液は、写真1 4に示す回転式の詳細フィルタで細かいゴミを取り除く。実際に試用すると、詳 細フィルタも写真15に示すように、ハンドルを回転させることによりゴミを排 除できるようになり、全体の清掃も数ドラム缶で 1 回程度すればよいので、清掃 の手間が大きく改善された。
混合槽から受け容器への自由落下による 3 種液の搬送、受け容器から分離機ま でのオイルポンプによる搬送ともに問題はないことが確認できた。
②-2 溶剤分離・回収機、スチレン油化装置の同時運転の確認
性能検証時は、溶剤分離・回収機、スチレン油化装置の運転は、それぞれ単独 で稼動させたが、実運用時は、同時運転させることになる。同時運転しても、不 具合のないことを確認した。
図17に同時運転時の冷却ブライン出入口温度、分離機内の溶剤ガス温度、油 化機内のガス温度の経時変化を示す。動作に関しては不具合点はないが、ブライ ン供給温度が徐々に上がって、負荷がチラー能力を上回っていた。その後、液化、
油化負荷がともに減少しチラー能力が上回りブラインの温度が下がった。ブライ ン供給温度が上がっても、溶剤液化再生能力、油化能力にはほとんど影響を与え ず、特に不具合とはならなかった。
負荷に対してチラー能力が下回った理由であるが、本装置のヒータを余裕を見
て選定したためで、装置全体で定格 42.9kW に対して最大 70kW 出力が可能となっ ている。チラーの能力が、-5℃時の冷却能力は約 45kW であるのでチラーの能力 が下回らないためには定格のヒータ容量で運転すればよい。
③製造したスチレン油の分析
製造したスチレン油の総発熱量など、燃料としての特性を分析した。
表2に、本システムで油化したスチレン油とA重油、灯油の燃料としての成分を 比較した結果を示す。本システムで製造した油は、引火点が 30.0℃であり危険物 の範囲としては、第四類 第二石油類に該当することが確認できた。
A重油と比較すると、動粘度が低く、流動点、目詰まり点の温度も低いことから 燃料として適していることが分かる。また、硫黄分が少なく SOxがほとんどない と考えられる。窒素分も一般的に見て少なく、NOxも少ないものと思われる。総発 熱量は、リッターあたりではA重油より若干低く、灯油に比べれば高いことが分か り、総じて燃料としては良好な性質を示している。どちらかというと、灯油に近い 性質である。
④本システムの経済性評価
本システムのイニシャルコスト、ランニングコストを本システムの耐用年数は 7 年と計算して算出し、経済性を評価した。
表3に、経済計算を行うにあたっての基本条件を示す。
表4に、単純投資回収年数の結果を示す。検討の結果、単純投資回収年数は 3.8 年で、十分償却可能で経済性があるものと判断できた。これを償却資産税 1.4%、
金利 3.0%として、年度別事業収支に展開すれば、表5のとおりと表すことができ、
2年目に単年度収支が黒字化し、3年目で累計収支も黒字化する。耐用年数を 7 年 としたが、本システムは部品点数が少ないことより実際の耐用年数はもっと長いも のと思われる。
5.成果
(1)技術的、経済的成果
①減溶機は、当初の目標どおり減溶量、減溶時間、エネルギー使用量が達成でき、さ らに、使用時の安全性、制御ソフトの妥当性を実証し実用化の目処が立った。
②溶剤分離・回収機は、溶剤分離能力、溶剤分離効率、エネルギー使用量が目標値を 達成でき、実用化が可能であると判断した。
③スチレン油化装置は、油化性能、エネルギー使用量の目標値を達成でき、実用化が 可能であると判断した。
④経路の途中に設けたゴミ取りの仕組みも、改善をして実用化の目処が立った。
⑤製造したスチレン油の分析を行い、粘性が低く、SOx、NOxも少ないと考えられる ため燃料として適していることが分かった。
⑥本システムの経済性を評価して、単純投資回収年数で 3.8 年となり、十分経済性が あることが証明できた。
(2)今後の問題点
①減溶物、スチレン油の投入時の方法(密閉化)の改善
②使用ドラム缶の見直し
③機器のさらなるローコスト化
(3)本システムの今後5年間の需要推計
2005 年度の日本国内の発泡スチロールの出荷量は、187,000 トン/年であるため、当 該新機械システムが完成した場合、最低毎年、発泡スチロール出荷量の2%程度の処理 が行われるものと推定される。5年後には出荷量の 10%は、当該新機械システムで処 理されるものと考えられる。2005 年度を参考にすると出荷量の 10%は 18,700 トン/年
(これはインゴットの 39%にあたる)である。
減溶機は、食品スーパーを対象にした場合を例にすると1台あたり年間4.75トン (13kg/日×365 日)程度を処理することになるので、5年間で約 4000 台の販売が見込め る。廃発泡スチロール 50kg でドラム缶処理が飽和するために、各減溶機は 4〜5 日で溶 剤交換となる。
一方、溶剤分離・回収機及び油化装置は配送センター等に置くが、1日(8 時間)で 3
〜4 ドラム缶処理を考えると、16店舗分処理を1セットで処理すると 4000 台の減溶 機に対して250セット必要になる。
また、販売単価として減溶機を1台あたり 160 万円、溶剤分離・回収機及び油化装置 を1セットあたり 2000 万円とすると5年間で
減溶機 4000台×160万円=64億円 溶剤分離・回収機、油化装置 250セット×2000万円=50億円 となり、本システムで114億円程度の市場規模が見込まれる。
付
1.システムの設計図 図4〜図9
2.システムの製作、試運転写真 写真 1〜写真12
3.システムの性能 図10〜図13
4.システムの試用状況 図14〜図17
5.製造油特性、システム経済評価 表2〜表5
1.システムの設計図
―付1―
―付2―
―付3―
―付4―
―付5―
―付6―
2.システムの製作、試運転の写真 2.システムの製作、試運転の写真
写真1 減溶機外観
写真2 混合槽(溶剤分離・液化パート)
写真3 分離機(溶剤分離・液化パート)
写真4 液化機(溶剤分離・液化パート)
油下部
ガス化部
写真5 油化装置
写真6 減溶機への投入
写真7 減溶物の投入
写真8 3種混合液
写真9 溶剤分離中(分離機内)
写真10 溶剤液化再生
写真11 油化(初期段階:スチレンモノマー)
写真12 油化(終了間際:炭化油)
3.システム性能
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0
0:00:00 0:30:00 1:00:00 1:30:00 2:00:00 2:30:00 3:00:00
経過時間
減溶量(kg)
図10 減溶量の経時変化
溶剤回収量
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0
0:00:00 0:15:00 0:30:00 0:45:00 1:00:00 1:15:00 1:30:00 1:45:00 経過時間
回収量(L)
図11 溶剤回収量の経時変化
0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0 160.0
0:00 0:15 0:30 0:45 1:00 1:15 1:30 1:45
経過時間
ヒータ温度(℃)
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0
ヒータ出力(kW)
ヒータ1温度 ヒータ2温度 ヒータ1出力 ヒータ2出力
スチレン油生産量
0 20 40 60 80 100 120 140 160
0:00:00 0:10:00 0:20:00 0:30:00 0:40:00 0:50:00 1:00:00 1:10:00 経過時間
生産量(kg)
図12 分離機用ヒータ表面温度とヒータ出力
図13 スチレン油生産量の経時変化
4.システムの試用状況
規定時間 運転スイッチ on
発泡スチロール投入
警報停止 扉 手動閉
扉 手動開 扉センサ 開
扉自動ロック
重り下降開始 扉センサ 閉
減溶回数
浸漬時間 扉自動ロック解除
ホイスト上昇 重り上昇 上限リミット検知
運転スイッチoff
減溶回数上限
停止 扉自動ロック
停止
※1
※2
※3 Re Try 機能
重り上昇 上限リミット検 知
5分以上 5分未満
規定時間以上
規定時間未満
未満 以上 ReTry 4回
未満
警報停止 以上
no
yes
※1,2,3
減溶回数 規定時間 浸漬時間
sec sec
1〜10回 25 20
11〜20回 30 30
21〜30回 40 40
31〜40回 60 50
41〜50回 70 60
51〜60回 80 80
61〜70回 90 100
71〜80回 120 180
図14 減溶機制御フローチャート
オ イ ルポ ン プ 混 合 槽
受 け 容器 ス チ レ ン油 減 溶物
(溶 剤 +ポリスチ) ベ ー ン ポ ン プ
バル ブ
ス ト レ ーナ
分離 機 へ
図15 設計時のゴミ取りフィルタ(ストレーナ)の位置と写真
オイ ル ポ ン プ 混合 槽
受 け 容 器 ス チ レ ン 油 減 溶 物
(溶 剤+ ポリスチ) ベー ン ポ ン プ
バ ル ブ
粗 ゴ ミフ ィ ル タ
分 離 機 へ
回 転 式 詳ゴ ミ フ ィ ル タ
図16 改造後のゴミ取りフィルタの取り付け位置
写真13(2) 粗ゴミフィルタ中身
写真13(1) 改造後の粗ゴミ取フィルタ
写真14 回転式詳細フィルタ 写真15(1) 詳細フィルタ中身
写真6(2) 詳細フィルタ回転状態1 写真15(2) 詳細フィルタ回転状態1 写真写真6(5) 15(3) ゴミ貯めカゴの排出 ゴミ貯めカゴの排出
-10 -5 0 5 10 15 20 25 30 35 40
0:00:00 0:10:00 0:20:00 0:30:00 0:40:00 0:50:00 1:00:00 経過時間
冷却ブライン温度(℃)
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
ガス温度(℃)
溶剤液化機ブライン入口 溶剤液化機ブライン出口
油化機ブライン入口 油化機ブライン出口
分離機内ガス 油化機ガス
図17 同時運転時の冷却ブライン温度と溶剤ガス油化ガス温度
5.製造油特性、システム経済性評価
表2 製造スチレン油とA重油、灯油の比較
項目 単位 本油 A重油 灯油
1 密度@15℃ g/cm3 0.9544 0.874 0.7944
2 引火点 ℃ 30.0 87.0 45.0
3 動粘度@30℃ mm2/s 1.008 2.962※1 −
4 流動点 ℃ -40以下 -20 −
5 目詰まり点 ℃ -40以下 -11 −
6 10%残留炭素分 質量% 1.06 0.5 −
7 セタン指数 − 33.6 45.8 −
8 灰分 質量% 0.005以下 0.005以下 −
9 水分 質量% 0.03 0.00 −
10 窒素分 質量% 0.004 − −
11 硫黄分 質量% 0.0003 0.57 0.0006
MJ/kg 40.080 44.99 46.37 MJ/L 38.252 39.33 36.83
※1は、@50℃
12 総発熱量
表3 経済計算基本条件
減溶機 16 台
分離・油化機 1
ドラム缶1台あたりPS減溶量 50 kg 分離・油化機の1日あたりの処理
台
量 4 ドラム缶
操業日数 22 日/月
発泡スチロール処理費 700 円/kg
再生油販売価格 80 円/L
表4 経済計算のまとめ(単純投資回収年数)
表5 本システムの年度別事業収支
1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 合 計
事業収入 41,184,000 41,184,000 41,184,000 41,184,000 41,184,000 41,184,000 41,184,000 288,288,000 事業支出 47,128,748 39,917,485 35,390,809 32,533,158 30,811,795 31,814,440 30,893,013 248,489,446 年度別収支 -5,944,748
-4,678,232
1,266,515 5,793,191 8,650,842 10,372,205 9,369,560 10,290,987 39,798,554 累計収支 1,114,959 9,765,802 20,138,007 29,507,567 39,798,554
数量 単価 合計
減溶機 16 台 1,600,000 25,600,000 分離機・油化機 1 台 20,000,000 20,000,000
運搬車両 3,000,000
装置格納建物 5,000,000
保険料 270,000
点検消耗品 2,297,600
電力量 1,235,520
人件費 14,400,000
新溶剤の購入費 5,760,000
再生不能溶剤廃棄費 2,160,000
ドラム缶購入等諸経費 1,000,000
PS処理費用 52,800 kg 700 36,960,000 再生油販売 52,800 L 80 4,224,000
3.8 年
投資回収年 ①/(③−②)
項 目
円
円/年
円/年
総 計
年間収入
③
53,600,000
27,123,120
41,184,000 初期投資
①
年間経費
②