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戦間期ドイツ・中欧におけるマイノリティ問題の射程   一研究の現状−  

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東京外国語大学論集第76号(2∝18)  

戦間期ドイツ・中欧におけるマイノリティ問題の射程   一研究の現状−  

相馬 保夫  

はじめに:問題の射程  

1.マイノリティ問題:言説と実態   2.シティズンシップ:包摂か排除か   3.移住とマイノリティ政策  

まとめ:今後の展望  

はじめに:問題の射程   

宗教や言語,文化,民族の異なるマイノリティの問題が当該地域の国内問題であるだけでなく,  

大きな反響を呼び起こす国際間題にもなりうることは,最近のチベット問題の事例からもよく知   られている。そこには,報道機関とインターネットにより情報が地球を駆けめぐり,マイノリテ   ィの人種間題が世界各地で一般の人たちも巻き込む互いの非難の応酬を招き,それがナショナリ   ズムを相互に昂進しあうという,グローバル化に特徴的な新たな事態が生まれている。   

しかし,マイノリティ問題が国内外を問わず注目され,戦争や危機的な事態をもたらしうる   ことは,遅くとも第一次世界大戦後の時期には明らかであった。本稿は,この戦間期のドイツ・  

中欧地域におけるマイノリティ問題の構図を近年の研究成果をふまえて再検討し,マイノリテ   ィ問題を解きほぐして考える可能性を探ろうとするものである。   

第一次世界大戦中,ロシア革命とウイルソン大統領の14カ条によって戦争目的として掲げら   れた「民族自決」は,戦後の講和会議において帝国崩壊後の中東欧・バルカン地域に生まれた  

新しい国家を承認する際の基本原則となった。新国家と戦勝国による国境の線引きによって解   決されないマイノリティの権利の問題は,当該諸国と個別に締結される国際条約によって規定  

され,国際連盟によって保証されることになった。   

しかし,マイノリティ保護を目的としたこの体制は十分に機能せず,強制的住民交換やジェ  

ノサイドの方法によって暴力的に住民を追放または抹殺するやり方が用いられることになる  

【Ma約Wer1999】。だが,いったいなぜ国際連盟によるマイノリティ保護の体制が失敗し,再び   戦争の道に向かうことになったのか。それは,戦間期ヨーロッパの国際関係に関わる重要な論   

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