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ビスベンゾチエニルエテンのフォトクロミズムに関 する研究

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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

ビスベンゾチエニルエテンのフォトクロミズムに関 する研究

内田, 欣吾

https://doi.org/10.11501/3111025

出版情報:Kyushu University, 1995, 博士(工学), 論文博士

(2)
(3)

ピスベンゾチエニルエテンのフォトクロミズム に関する研究

内 田 欣 吾

(4)

第1章 序 論 1

第2章 高繰り返し耐久性ビスベン、ノ、チエニルエテン 5

2 序 5

2. 2 ビスベンゾチエニルエテンの合成 5

2. 3 ビスベン、ノ、チエニルエテンのフォトクロミック特性 9

2. 3. 1 1,2-ジシアノー1,2-ビス(2-メチルベンゾ[bJチオフェンー3-イノレ)- 9 エテンのフォトクロミック特性

2. 3. 2 2,3-ビス(2・メチルベンゾ[bJチオフェン・3-イノレ)マレイン酸 9 無水物のフォトクロミック特性

2. 3. 3 量子収率 12

2. 3. 4 繰り返し耐久性 12

2. 3. 5 lHNMRスペクトノレ 12

2. 3. 6 光異性化の温度依存性 14

2. 4 ビスベン、ノ、チエニルエテンへの置換基効果 18

2. 4. シアノ基による置換基効果 18

2. 4. 2 ハロゲンによる置換基効果 18

2. 4. 3 吸収波長の理論的計算 24

2. 5 実験 26

2. 6 まとめ 29

参考文献 30

第3章 ジナフチルエテン閉環体の熱安定性 32

3. 1 序 32

3. 2 ジナフチルエテン類の合成 32

3. 3 ジナフチルエテン類のフォトクロミック反応と閉環体の安定性 36

3. 3. ジヒドロフェナントレン型中間体の生成 36

3. 3. 2 いろいろなタイプの閉環体の安定性 44

(5)

第4章 黄色に着色するジチエニルエテン 53

4. l 序 53

4. 2 ジチエニルエテンの合成 53

4. 3 ジチエニルエテンのフォトクロミック反応 56

4. 4 実験 63

4. 5 まとめ 65

参考文献 66

第5章 ジチエニルエテンの置換基効果ー吸光係数の増大一 67

5 序 67

5. 2 p-置換フェニル基を持つジチエニルエテン類の合成 68 5. 3 p-置換フェニル基を持つジチエニルエテン類の 68

フォトクロミック反応

5. 3. 1 吸収極大波長と吸光係数 68

5. 3. 2 量子収率 75

5. 3. 3 プロトン化の効果 ー多色系一 79

5. 4 実験 84

5. 5 まとめ 88

参考文献 89

第6章 鍵機構をもっビスベンゾチエニルエテン 90

6. 1 序 90

6. 2 分子内水素結合生成能を有するビスベンゾチエニルエテンの合成 91 6. 3 脂肪鎖末端にメルカプト基を有するビスベンゾチエニルエテンの合 91

6. 4 フォトクロミック反応挙動 92

6. 4. 分子内水素結合による鍵機構 92

6. 4. 2 分子内ジスルフィド結合による鍵機構 104

6. 5 実験 108

6. 6 まとめ 114

参考文献 115

第7章 総括 116

謝辞 118

(6)

第1章 序 論

近年、 パーソナルコンビューターの性能の進歩は著しく、 一昔前の超大型コンビュ ーターの性能を凌駕するまでになってきている。 記録媒体も大容量化、 高密度化し、

アクセス速度も高速化してきている。 現在、 一般化してきた光磁気デ、イスクは、 光エ ネルギーを熱エネルギ、ーに変換し記録媒体をキュリー温度以上に加熱し、 磁区を反転 させて記録するヒートモード記録を採用しているために、 大容量化、 高密度化、 高速 化などの点において光本来の特性を十分生かせていない。 光のもつ特性(波長、 位相、

偏光など〉を十分に使いこなすには、 光量子をそのまま光反応エネルギーとして用い るフォトンモード、記録を使った新しい記録方式とその材料の開発が不可欠であり、 そ の候補としてフォトクロミック化合物が有望祝されている。 フォトクロミックフォト ンモード記録媒体を用いると高密度化、 多重化、 高速記録が可能であり、 次世代の記 録材料として注目され、 開発研究が活発に行われてきている。

フォトクロミック化合物とは、 光励起により結合を組み換えて、 色の異なる異性体 を可逆的に生成する化合物をしづ。 フォトクロミック分子を高分子へ分散して光メモ リ材料として用いることは、 すでに1950年代に提案されていたが、 光電子技術者が 実際に取りあげて研究の対象とする性能には遠く及ばないものであった。 光メモリ材 料へ応用する際の最低限の要求性能には、 以下のようなものがある。 1)

(1)両異性体の熱安定性 (2)繰り返し耐久性 (3)速い応答速度

(4)半導体レーザー感受性 的非破壊読み出し機能 (6)高い感度

(7)高分子媒体との相溶性

これらすべてを同時に満足する性能のフォトクロミック分子が開発されてはじめて 光メモリ材料への応用が現実化する。 以上の性能をもっフォトクロミック分子の合成 をめざして研究がすすめられている。 光メモリ材料へ応用可能なフォトクロミック分 子の候補のlつは、 下記の分子骨格を持つフォトクロミック分子、 ジアリールエテン

( 1 )である。 2)

(7)

フォトクロミック分子を光記録材料として用いようとした場合、 その一番の問題点 は記録の熱安定性がないことであった。 今まで知られているフォトクロミック化合物 はいずれも、 光により生じた着色体が不安定で、 熱的にもとの無色体に戻る。

熱的に戻らないフォトクロミック分子として、 ヘテロ五員環を持つジアリールエテ ンが開発された。ジアリールエテンの閉環体の吸光度は、暗所下8 OOCで3カ月保存 の後も減衰しない。 開環体は、 30 OOCに加熱しでも着色しない。3)

このような ジアリールエテンの熱安定性は分子軌道法(MNDO法〉により説明さ れた。4)この反応は典型的なヘキサトリエンニシクロヘキサジエン反応で、熱反応 は逆旋反応、 光反応は同旋反応が許容である。

て一一一一込

図1・1、 1・2に逆旋および同旋反応の状態相関図を示す。 逆旋反応においては、

ベンゼン環、 フラン環いずれの場合も、 基底状態において対称性の上からは反応は可 能である(図1・1)。しかし、閉環体のエネルギーが、開環体と比較して異常に高く

(30,....,40 kcal / mol )実際には、 反応は起こりえない(表1-1 )。

一方、 同旋反応は、 基底状態においては禁制で光励起状態においてのみ反応は許容 となる(図ト2)。熱安定性において問題となるのは、閉環体から開環体への開環反 応である。この反応は本来禁制であるが、non-crossing ruleにより、実際は、図の実線 で示す熱反応は許容となる。この図によれば、 開環体と閉環体とのエネルギー差が大 きい場合は、 熱反応が進み、小さいと反応障壁が高くなり起こらなくなる。表1-1に

半経験的 MOPAC AM 1法により求めた両異性体のエネルギー差をまとめて示す。

同旋反応においてベンゼン環の場合、 エネルギー差は大きく、 閉環体は容易に開環体 にもどる。ベンゼン環をフラン環、 チオフェン環に変えるとそのエネルギー差は、 ず っと小さくなる。 それにともない閉環体の熱安定性は増している。この差は、 芳香族 安定化エネルギーに依存する。

表1・1開環イ本と閉環体の基底状態、エネルギー差

compd disrotatory conrotatory kcal/mol kca1/mol

1. 2-diphenyle小切と 41.8 27.3

1. 2-di (3-pyπolyOethene 32.3 15.5

1. 2-di (3-furyl)ethene 27.0 9.2

1.2-di(3-出ienyl) ethene 12.1 -3.3

(8)

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A・

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図1- ,逆旋反応の状態相関図

A

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A A B

8

A B A

A

A

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(9)

本論文では、 このように優れた熱安定性を有するジアリールエテンを基本骨格に選 び、 光記録媒体に適した性能をもっフォトクロミック材料へし1かに構造最適化をはか

ったかの研究結果について述べている。

第2章では、 べンゾチオフェン環をアリール基とするジアリールエテンを合成し、

この化合物が非常に優れた繰り返し耐久性を持つことを報告し、 さらにこのフォトク ロミック反応とその吸収帯の波長に及ぼすべンゾチオフェン環上の置換基効果につい て述べた。 第3章ではピスナフチルエテンのフォトクロミック反応を通して閉環体の 構造とその熱安定性について考察した。 第4章では、 ジチエニルエテンを対象化合物 に選ぴ、 チ オ フェン環上のエテン部との結合位置がその化合物の吸収位置とフォトク ロミック反応特性にどのよ うな変化を与えるか考察した。 第5章ではピ ス(3・チエニ ル)エテンの 5, 5'位に置換基を導入し、 共役を延ばすことによって、 フォトクロミッ ク化合物を記録材料に応用するときに必要なlつの条件である吸光係数の大きさがど のように増大していくかを検討した。 第6章で、は記録材料に欠かせない非破壊読み出 し機能をジアリールエテン分子に付与する目的でピスベンゾチエニルエテンに末端に カルボン酸やメルカプト基をもっ脂肪鎖を導入し、 そのフォトクロミック反応への鍵 機構の導入を検討した。

最後に第7章で、 以上の研究成果をまとめた。

参考文献

1) A. E. J. Wilson, Phys. Techno1., 15,232(1985).

2) M. Irie, Jpn. J. Appl. Phys., 28・3,215(1989).

3) 1\在. Irie,五在.1\在ohri, J. Org. Chem., 53, 803(1988).

4) S. Nakamura, M. Irie, J. Org. Chem., 53, 6136(1988).

(10)

第2章 高繰り返し耐久性ビスベンゾチエニルエテン

2. 1 序

今までのフォトクロミック化合物には片一方の異性体(一般的には着色体の方〉に 熱安定性が無く、 室温で放置すれば色が消える。1-9) (め-2-[2-(2,5-dime出ylふfuryl)­

ethy lidene ]ふ(isopropylidene)succinic組hydride (フリノレフルギド)の光生成閉環体は、熱的 に安定であるが、3θ)開環体E型は120 oc以上で着色する。 一方、チオフェン環をア リール基とするジアリールエテンは両異性体とも熱的に安定である。 叫しかし、この 閉環体の吸収端は700nm以下であり、記録に使われる半導体レーザーに対応するに は、吸収波長をさらに長波長化する必要がある。 そこでジアリールエテンのチオフェ ン環をベンゾチオフェン環に変換することにより共役系を長くして吸収を長波長化す ることをめざして下記2aおよび4のビス(ベンゾチエニノレ)エテン類の合成に着手し た。 その過程において、ベンゾチオフェン環が繰り返し耐久性の向上に有効であるこ とが明らかとなった。 さらに、吸収帯の長波長化をめざしてこの系に有機色素の修飾 によく用いられるシアノ基、問ハロゲン11)を導入して置換基効果を検討した。この章 では閉環体の吸収波長の長波長化と繰り返し耐久性について考察する。 12, 13)

NC CN

2a

4

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一ーーー一事』ー

2. 2 ビスベンゾチエニルエテンの合成

NC CN

3a

5

(11)

Scheme 2-1

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6a 7a

NaCN, BU4NBr __ NC NaOH, BU4NBr

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CN

8a 2a

KOH MeOCH2CH20H

4

(12)

成することから始めた。 得られた(6a)を 1,2・ジクロロエタン中、 少量の塩化亜鉛の存 在下、 大過剰(約30倍等量)のクロロメチルメチルエーテルを作用させて、 3・クロロメ チルー2・メチルベンゾ[b]チオフェン(7a)を合成した。 この時、クロロメチルメチルエー テルを数倍量以下しか使用しなければジアリールメタンが優先的に生成し、 目的物は ほとんど得られなかった。 また、 この化合物は、 シリカゲルクロマトグラフィー精製 時に分解するので、 組生成物のまま次のシアノ化を行った。 3-シアノメチル・2-メチル ベンゾ[b]チオフェン(8a)は、 (7a)のベンゼン溶液をテトラブチルアンモニウムブロマ イドの存在下、 シアン化ナトリウム水溶液と加熱しながら激しく撹排することにより 合成した。

1,2-ジシアノー1,2-ビス(2・メチルベンゾ[b]チオフェン-3・イノレ)エテン2aは、 2分子の 3・シアノメチルー2-メチルベンゾ[b]チオフェン(8a)をテトラブチルアンモニウムブロマ イドの存在下、 水酸化ナトリウム水溶液、 ベンゼン、 四塩化炭素からなる混合溶媒中 で 50 ocで加熱しながら激しく撹枠してカップリングすることにより合成した。この 化合物はシス体とトランス体のおよそ1 : 1の混合物であった。 薄層クロマトグラフ ィーによりシス体を単離し、 構造を同定し た。 その後、 さらにヘキサン ー ベンゼ ン 混合溶媒から再結晶して精製した。

2,3・ビス(2-メチルベンゾ[b]チオフェンふイノレ)マレイン酸無水物4は、 化合物 2a と 2・メトキシエタノールを50%水酸化カリウム水溶液に加え、その混合溶液を 30時間 加熱還流して合成した。

ベンゾチオフェン環上に、 シアノ基、 フッ素原子等の電子吸引基をもっ1,2-ジシア ノー1,2-ビス(2・メチルベンゾ[b]チオフェンー3・イノレ)エテン類は、 Scheme 2・2 に示すよう に合成した。

ベンゾチオフェン環上には、 求電子置換反応で任意の位置に置換基を導入すること はできないので、 すでに置換基をもっ前駆体からベンゾチオフェン環を合成すること にした。ここでは電子吸引基をもっチオエーテル類(11 )をチオクライゼン転位附する ことにより、電子吸引基をもっベンゾチオフェン環(6)を合成した。チオフェノールと して市販されている 2-シアノチオフェノール、 子シアノチオフェノール、 4-シアノチ オフェノールはWilliamsonのエーテル合成法により、2,3 -ジクロロペンテンと反応さ せてチオエーテルに変換した。 原料となる置換チオフェノールが市販品として入手で きなかったフッ素、塩素、臭素置換チオエーテル類は、対応する置換フェノール類(9) を3ステップでチオフェノール類(10)に変換してから、同チオエーテル合成を行った。

(13)

Scheme 2-2

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ーーーー

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9a; R=o・CN 9b; R=m・CN 9c; R=p-CN

10 11

a; R=o・CN e; R=p-F b; R=m-CN f; R=p-CI C; R=p-CN g; R=p-Br d; R=m-F

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2a; R=H 2f; R=4,4' -(F)2 2b; R=4, 4' -(CN)2 2g; R=5, 5' -(Fh 2c; R=5, 5' -(CNh 2h; R=6,6'・(F)2 2d; R=6, 6'・(CNh 2i; R=5, 5'-(Clh 2e; R=7, 7'-(CNh 2j; R=5, 5'・(Br)2

(14)

ロマトグラフィーにより容易に分離精製できたので、 分離後それぞれの合成に使用し た。クロロメチル化反応、シアノ化、 カップリング反応は先に述べた基本骨格の合成 に従って行った。 ただし、ベンゾチオフェン環上にシアノ基を有する誘導体のカップ リング反応においては、 反応時にこのシアノ基の加水分解という副反応がおこるので 反応時間を短めにしたり、 加熱せず室温で撹排する等の操作の変更が必要であった。

2. 3 ビスベンゾチエニルエテンのフォトクロミック特性

2. 3. 1 1,2-ジシアノ-1,2-ビス(2-メチルベンゾ[b]チオフェンー3- イル)エテン(2a)のフォトクロミック特性

Fig.2-1に化合物2aのベンゼン溶液(À IDax: 392 nm, ε: 7700 M-1cmう に 384nm光を 照射した時の吸収スペクトル変化を示す。 波長 384nm の光を照射すると、392nmの 吸収が減少し、 507nmに吸収極大をもっ吸収帯が増大し、溶液は赤色を呈するように なった(変換率52 % )。 この間環体に由来する吸収帯の極大波長は1,2-ジシアノ -1,2・

ビス( 2,4,5・トリメチノレふチエニノレ)エテンの閉環体に比べて 5 nm短波長化していた。

光照射により生成した閉環体旬以mu:507m, ε: 8200 M-1cmうは、熱的に安定で、16) 507nmの吸収は 80 ocで3週間以上放置しておいても吸光度に変化はなかった。 さら にシス体は、mp. 236 ocで最初の黄色の呈色を保ったまま溶解し、 300 ocまで昇温し でも着色することはなかった。

2. 3. 2 2,3-ビス(2-メチルベンゾ[b]チオフェン-3-イル)マレイン酸

無水物4のフォトクロミック特性

Fig.2-2に化合物4(À IDax: 41 7 nm, ε: 6800 M-1cmうのベンゼ、ン溶液に 405nm光を照 射する前と光平衡状態の吸収スペクトルを、閉環体の吸収スペクトルと共に示す。405 mの光を照射すると溶液は赤色になり、 544nmに吸収極大 (ε: 8700 M-1cm-1)が現れ てきた。閉環体の吸収極大はジシアノ誘導体2aと比較して 37nm長波長化していた。

しかし、 2,3・ビス( 2,4,5-トリメチノレふチエニノレ)マレイン酸無水物の閉環体に比べて

16 nm短波長化していた。 この時の光定常状態、における閉環体の割合は、 48%であっ た。 この閉環体5も 熱的に安定で暗所中に 80 ocで3週間以上放置しておいても吸光 度に変化はなかった。 その後、 この赤色の溶液に可視光(え>500 nm)を照射すると、

黄色の溶液になりはじめの吸収スペクトルに戻った。 酸無水物誘導体4は、 その融点 239 ocまで昇温しでも最初の色から変化せず、 着色は認められなかった。

(15)

CN NC

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1.5

1.0

〈主

0 300 500 600

Wavelength/nm

400

Fig.2-1 Absorption spectral change of benzene solution of 2a (1 x 10-4 M) ( ), 3a (一一一一), and photostationary state

(ー一一『ーー句)

under irradiation with 384 nm light.

(16)

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500 600

Wavelength / nm

700

Fig.2-2Absorption spectral change of benzene solution of 4 (1 x 10-4 M) ( ), 5 (一一一一), and photostationary state ( - - - - ・ - - 暢 ・)

under irradiation with 405 nm light.

(17)

2. 3. 3

量子収率

Table 2-1 に化合物2aと4の着色反応と退色反応の量子収率をまとめた。 量子収率

は、 反応初期の異性化速度を測定し、 これを量子収率既知のフルギドの速度と比較す ることにより算出した。 照射波長における化合物の吸光度は、 0.2 以下になるように 調整した。 ベンゾチオフェン環をアリール基とするこれら2つのジアリールエテンの 退色の量子収率は、2,3-ビス (2,4,5・トリメチノレー3-チ エニノレ)マレイン酸無水物の退色反 応量子収率(四塩化炭素中0.15)叩)と比較して大きい値が得られた。

フルギドの退色反応において、 その量子収率は着色体の7位の置換基の嵩高さに依 存することが報告されている。 アダマンチリデンフリルフルギドの量子収率は、 イソ プロピリデンフリルフルギドと比較して5倍大きい。17) ここで‘述べたジアリールエテ ンのシステムには、 この説明は適応できない。 チオフェン環をベンゾ[b]チオフェン環

に変えたことで、 閉環体構造をそれほど嵩高くするとは考えられない。 ここでの退色 反応量子収率の増大は、 ベンゾチオフェン環の堅さが閉環構造を不安定化させたため と考えられる。

2. 3. 4

繰り返し耐久性

繰り返し耐久性とは、 何回着色、 消色の反応サイクルをシステムの損傷なく行える かであり、 これはフォトクロミック化合物に要求される非常に重要な性質である。 今 まで実用化されなかった1つの理由は、 フォトクロミック 化合物にこの特性が欠落し ていたことによる。

化合物4を溶かしたベンゼン溶液(3.7X 104M)を光路長2mmのセルに入れ、これを 436nmで25秒間、546nmで15秒間交互に照射した。25秒間,15秒間は、化合物が光 定常状態と完全に 消色した状態、にそれぞれ到達するのに十分な時間である。546nmで の光定常状態、の吸光度は、5000回着色、消色の反応サイクルを繰り返した後もFig.2-3 に見られるように一定であった。 1.0 X 104回着色、 消色の反応サイクルを繰り返した 後、 その吸光度は最初の80%に減少した。 着色反応の光定常状態では、化合物のおよ そ50%が閉環体になっている。 以上のことは、分解の量子収率は1/40000以下であ ることを示している。 その量子収率がなぜこのように低し、かは、 チオフェン環などと 違い一重項酸素の付加によりエンドパーオキシドを生成する反応が起こりにくいため と考えられる。18)

2. 3. 5 lH NlIRスペクトノレ

Fig. 2-4 にはCD30D中における化合物2aの色々な温度での1HNMRスペクトルを

示した。 室温ではδ1.98 ppmと2.37ppmにブロードな2つのシグナルが観測されて いる。 この非等価な2つのシグナルが見られたことは、 その化合物に2つのアトロー プ 異性体が存在することを意味している。 2つのコンフォーマー として、2つのベン

(18)

Table 2-1 Quantum Yield of Coloration and Decoloration in Benzene Solution

2a→3a 3a→2a 4→5 5→4

2 0.6

\

04

0 2

2000

Wavelength/nm

405 546 405 546

4000 6000 Cycle number

Quan tum Yield

0.17 0.30 0.13 0.21

8000 10000 '12000

ーFig. 2-3 Fatigue resistant property of 4 in benzene solution.

(19)

ゾチオフェン環が鏡像対称( パラレル配向)に存在する構造と、2つのベンゾチオフェン 環がC2対称( アンチパラレル配向)に存在する構造とが考えられる。

parallel onentatlon

NC

NC

antI・parallel onentatlon

2つのメチルプロトンのシグナルの形状は温度に依存し、 これはベンゾ[b]チオフェン 環の回転による2つのコンフォーマーの相互変換として説明できる。 室温以上では、

シグナルの線幅は増し、 45 ocで2つのシグナルは、 コアレスした。 60 ocまで昇温す るとただ一つの鋭いシグナルしか観察されなくなった。 この結果から、 Jaeschkeの方 法1勾により化合物 2a と4のコンフォメーション変化の活性化エネルギーはそれぞれ 67 kJmol-1、71 kJmol-1と見積もられた。エチレン部分の置換基が異なるにもかかわらず、

2aと4の回転エネルギー障壁は、 互いに似た値であった。

重クロロホルム中、- 60 ocにおける2aと4の芳香環のlHNMRシグナルをFig.2・5 に示した。 これらのシグナルは、 プロトンデカップル法により帰属した。 その結果を Table 乙2にまとめた。 この表では、 2aと4のベンゾ[b]チオフェン環のlH N民侭シグ ナルのケミカ ルシフトと3-メチルベンゾ[b]チオフェンのケミカルシフトとの差が 示 しである。 高磁場側のシグナルを有するコンフォーマーは、 2 つのベンゾ[b]チオフェ ン環がエテン部に対して垂直で、 かっ、 互いに向かい合ったパラレル配向と帰属でき る。 これらのlHNMRデータは、 これらの化合物にパラレル型とアンチノミラレル型の 2つのコンフォーマーが存在することを支持している。

2. 3. 6 光異性化の温度依存性

Woodward - Hoffmann則によれば、1,3,トヘキサトリエン分子骨格の光閉環反応は、

同旋的に進行する。 ジアリールエテンのようにこの分子骨格の1, 2-及び5, 6 -位に芳 香環が縮環した分子では、 反応の道筋は更に制限される。 ジアリールエテン類の光閉 環反応は、 アンチノミラレルコンフォーマーのみから進行し、 立体障害のためパラレル 型からは進行しない。 これは、 光に誘起される閉環反応の速度は、 アンチノぐラレルコ ンフォーマーの存在比に依存することを意味する。 これを確かめるためにメタノール 中、 - 600Cと200Cで同じ光照射条件下、 光閉環反応速度を比較したが、 - 600Cでの速度 が室温での速度よりわずかに大きいだけだった(1.1倍)。実験精度のために存在比が反

(20)

2 00C

(1.00: 1.051) 一200c

:- 600C 3.0

、‘,,,­司J一41

ハU一 ハU一 . 41一内,ム•• ・i・ 一ハU --

a司・・・-,,,‘、-

1.0/ppm

Fig. 2-4 Temperature dependence of lH NMR spectra of methyl protons of

2a

in CD30D.

(21)

(a)

8.0 7.8 7.6 7.4 7.2 7.0/ppm

Fig.

2-5 lH NMR

signals of aromatic rings of 2a (a) and

4

(b)

in CDC13 at

-60oC.

(22)

'1

Table 2・2 Assignments of Aromatic Protons of Benzothiophenyl Groups of 28 and 4 at -60 oC (in CDCb vs. TMS) Posi tion BT

4 7.78

5 7.33

6 7.31

7 7.86

Anti-parallel 7.76 (一0.02) (d, J=7.7 Hz) 7.41 (0.08)

(dd, J=7.7, 7.3 Hz) 7.50 (0.19)

(dd, J=7.8, 7.3 Hz) 7.93 (0.07)

(d, J=7.8 Hz)

2a

Parallel 7.39 (一0.39) (d, J=7.9 Hz) 7.11 (一0.22)

(dd, J=7.9, 7.5 Hz) 7.25 (-0.06)

(dd, J=7.9, 7.5 Hz) 7.66 (一0.20)

(d, J=7.9 Hz)

Anti-parallel 7.58 (一0.20) (d, J=7.6 Hz) 7.36 (0.03)

(dd, J=7.6, 7.2 Hz) 7.40 (0.09)

(dd, J=8.0, 7.2 Hz) 7.76 (一0.10)

(d, J=8.0 Hz)

4

Parallel 7.20 (一0.58) (d, J=8.0 Hz) 7.13 (-0.20)

(dd, J=8.0, 7.1 Hz) 7.27 (-0.04)

(dd, J=8.0, 7.1 Hz) 7.72 (-0.14)

(d, J=8.0 Hz) BT; 2・Methylbenzo[b]thiophene. The difference of chemical shifts between BT and 1,2・bis(benzo[b ]thiophen-3- yl)ethenes, 2a, and 4 in each positions are listed in the brackets.

(23)

応速度に直接関連していると結論づけるのは困難であった。

2. 4 ビスベンゾチエニルエテンへの置換基効果

2. 4. 1 シアノ基による置換基効果

Fig.2・6に334nm照射による 化合物2b(Am:312nm, ε:12000 M-1cmりの吸収スペ クトル変化を示した。 光照射により、312nmの吸収が減少し、486nmの可視領域 (ε:

4800 M-1cm-1)の吸収が観察され、 溶液 は赤色を呈する ようになった。化合物3bの吸収 極大は 無置換化合物3a(えmu:507m )と比較して21nmブルーシフトした。Fig. 2 - 7,

8, 9に紫外光照射時の2c(えmu:373m, ε:6200 M-1cm-1)ヲ2d(えmu:380m, ε:4800 M-1cm-1), 2e(えmu: 378m, ε: 7700 M-1cm-1)のベンゼン溶液 のスペクトル変化を示し た。 光照射により生成した閉環体の吸収極大波長はそれぞれ3c;506 nm (ε: 4500 M-1 mり,3d;530nm (ε:4800 M-切り,3e;505nm (ε:7700 M-1cmりであった。uv光照射時 の光平衡状 態 での全異性体に対する閉環体の割合は ( 閉環体/閉環体+トランス開環 体+シス閉環側、それぞれ3b:0.59 ( 照射 波長;334 nm), 3c: 0.15( 380 nm), 3d: O. 72 ( 405 nm), 3e: 0.33( 405 nm)であった。 ベンゾチオフェン環上 の5, 5'-位 お よび7,ア-位へのシ アノ基の導入は、その閉環体の吸収スペクトルにほとんど影響を及ぼさなかった。そ れに比べて6,6'-位ヘシアノ基を導入 すると 、無置換体と比較して23nm長波長化する のが観察された。Fig. 2・7, 9 では、等級収点は観察されなかった。これは、開環、閉

環反応に加えて、 シスートランス異性化が起こるためである。 光平衡状態において、

スペクトルには閉環体、 シス体、 トランス体 が含まれている。

2. 4. 2 ハロゲンによる置換基効果

1,2-ジシアノ-1,2 -ビス ( 2・メチ ル ベンゾ[b]チオフェンー3-イノレ)エテン2aの芳香環上に ハロゲンを置換基としてもつ誘導体は、 シアノ基をもっ誘導体と同様に合成した。 合 成した誘導体は、4,4'-, 5,5'-, 6,6'-ジフルオロ置換化合物( 2f, 2g , 2h)、5,5'-ジクロ ロ 化合物( 2i)、 5,5'-ジブロモ化合物(2j)である。 Fig.2 - 10 に化合物2f(えmu:375m,

ε: 4500 M-1cm-1) のベンゼン溶液に 385 nm 光 を照射したときの吸収スペクトル変化 を示す。 光照射により 375nmの吸収が減少 し、482nm(ε: 4800 M-1cm-1)の可視域の吸

収が増大した。ここでも等級収点 が見られないのは、反応中にシス体から トランス体 への異性化が存在していること を示している。1, 10位にフッソ置換した閉環体3f は、

置換基を持たない閉環体3aと比較 して28 nmブルーシフトしていた。同様 なブルー シフトは、1, 10 位にシアノ基を置換した閉環体3bでも観察された。

Fig. 2 - 11, 12に化合物2g (えmax:385I1m, ε:9100 M-1cm-1), 2h(えmu :386IIIR ε:

7100 M-1cm-1) のベンゼン溶液に光を照射したときの紫外光を照射したときの吸収ス ペクトル変化を示す。 化合物2g、2h を 光照射 して生成した閉環体の吸収極大波長は それぞれ 527nm(3g, ε: 7700 M-1cm-1), 499 nm(3h, ε: 7800 M-1cmうであった。 光定常

(24)

NC CN NC CN

一一一一..

w W

w W

2 3

a; X=Y=Z=W=H b; X=CN, Y=Z=W=H c; Y=CN, X=Z=W=H d; Z=CN, X=Y=W=H e; W=CN, X=Y=Z=H f; X=F, Y=Z=W=H g; Y=F, X=Z=W=H h; Z=F, X=Y=W=H i ; Y=CI, X=Z=W=H

j ; Y=Br, X=Z=W=H

1.0

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300 1.00 500 600

Wa velength / nm

(25)

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0.3

〈工

400 500 600 Wa vetength I nm 0

300

Fig. 2-7 Absorption spectral change of benzene solution of

2c (l x l0-4M) ( ), 3c (一一一一),

and photostationary state

(ー一一一ーー一)

under irradiation with 380 nm light.

iハ U

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<{ 0.5

400 500

Wavelength / nm 0

300

Fig. 2-8 Absorption spectral change of benzene solution of

2d

(1 x 10-4 M) ( )

3 d (一一一一),

and photostationary state

(ーーー-一-ーーー)

under irradiation with 405 nm light.

(26)

1.0

0.5

0 300

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400 500 600

Wa velength / n m

Fig. 2-9 Absorption spectral change of benzene solution of

2

e

(1

x

10-4 M) ( ) , 3

e

(一一一一),

and photostationary state

(

一一一一

under irradiation with 405 nm light.

1.0

0 300 400 500

Wavelength I nm

ωo

(27)

1.0

〈主

0

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Fig. 2-11 Absorption spectral change of benzene solution of 2g (1 x 10-4 M) ( ) 3 g (一一 一一), and photostationary state (一一一-一) under irradiation with 390 nm light.

0

300 、、 一 \占\- FO ハυ ハU

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Fig. 2-12 Absorption spectral change of benzene solution of 2h (1 x 1 0 -4 M) ( ) , 3 h (一一一一), and photostationary state (ー-一ー一一-) under irradiation with 390 nm light.

(28)

1.0

<! 0.5

0 300

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400 500 600

Wovelength /nm

Fig.2-13 Absorption spectral change of benzene solution of 2 i (1 x 10-4 M) ( ) 3 i (一一一一), and photostationary sta民(一一一一一一) under irradiation with 390 nm light.

0.8

<! 0.4

0 300 400 500

Wavelength I nm

(29)

状態での全異性体中に占める閉環休の割合(閉環体/(閉環体+ シス型開環体+トラン ス型開環体))は、3fに対しては0.50(照射波長385 nm)であり、3gに対しては0.48(390 nm)、 3hに対しては0.32(390 nm)であった。 フッ素置換したものに対しては2, 9-位に 置換基を導入するのが、 吸収を長波長化するのに最も効果的であることが分かった。

ベンゾチオフェン環の5, 5'-位をクロロ化、 ブロモ化すると、それらの閉環体の吸収 帯は長波長化した。 Fig. 2 -13, 14 に紫外光照射による化合物2i(Amx:381m, ε:

9600 M-1cm-1)と2j ( えmax:383 nm, ε: 7300 M-1cm-1)のベンゼン溶液の吸収スペクトル変 化を示した。光照射により生成した閉環体の吸収極大は、それぞれ519nm(3i, ε: 7800 M-1cm-1)と523 nm(3j, ε: 7800 M-1cm-1)に観測された。 光平衡状態で全異性体に対する 閉環体の割合は、 比較的低い値(390 nm の光照射条件で3i が0.30、3j が0.23 )となっ た。 閉環体の吸収極大が長波長シフトする大きさはCl<Br<Fの順であった。 一方、

光定常状態で閉環体の割合が増加する順序は、 Br<Cl < F の順であった。 ブロモ化し た誘導体やクロロ化した誘導体で、閉環体への変換率が低いのは、 重原子効果のためと 考えられる。

2. 4. 3 吸収波長の理論的計算

Table 2・3 に実験により求めた閉 環体の吸収極大波長と計算から予想された吸収極大 波長の値をまとめた。 吸収波長と振動子強度は、 半経験的MO INDO/S法により算出 した。 このINDO/S法の励起エネルギーは、 π電子だけでなくσ電子も含めたすべて の荷電子を考慮、に入れて計算した。 この方法は、非平面分子に対しでも適応できる。加) 計算により求めたシアノ基置換による吸収シフトの傾向は、実験により求めた吸収極大 と定性的に良く一致している。 間環体の1ヲ10位をシアノ基で置換すると吸収帯は短波 長化した。 一方、3, 8 位への置換は吸収帯を長波長化させた。2,9位への置換と4, 7位 への置換は、 吸収極大波長にほとんど影響を与えず、 無置換化合物3aの吸収位置とほ とんど同じであった。

シアノ基の1, 10位への置換により吸収はブルーシフトしたが、 これは1, 10 位のシ アノ基とエチレン部上のシアノ基とが相互作用し、環構造にねじれが生じたことを示唆 している。 これは、 閉環体の立体構造をMOPAC/AM1 計算で最適化した結果より確 認された。 シアノ基を2,9位、3,8 位、4, 7 位に置換した化合物は、 ベンゾ[b]チオフェ ン環が平面になっているのに対し、 1, 10 位に置換した場合は平面性がくずれ、 シアノ 基のN原子はベンゾ[b]チオフェン環の平面から0 .225λ程度離れていた。 エチレン部 上にシアノ基の無い1,2・ビス(2-メチノレー1-ベンゾチオフェンー3-イノレ)エテンの1, 10-位に シアノ基をもっ誘導体を計算してみるとえmaxは、506nmとなり" 2,9-置換体(455 nm)"

3,8-置換体(491 nm)、4,7-置換体 (48 7 nm)と比べて長波長に吸収をもっ計算結果となっ た。1,10-ジシアノ置換体3bで観察されたブルーシフトは、その立体障害に起因すると 考えられる。

(30)

Tab1e 2-3 Experimenta1 and Ca1cu1ated Àmax Va1ues of C1osed-Ring Forms

Experiment

んax/nm (ε) 486 (4800) 506 (4500) 530 (4800) 505 (7700)

482 (4800) 527 (7700) 499 (7800) 519 (6700) 523 (5100)

507 (0.72), 327 (0.12)

502 (0.73), 318 (0.09) 501 (0.74)

HHHHHH

HHFHHH

H F H C1 Br

FHHHHH

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Ca1cu1ated

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(31)

2. 5 実験

融点(m.p.)は、ヤナコ機器開発研究所(株)製微量融点 測定装置 MP-5 00Dで測定 し、未補正で記録した。lHNMRスペクトノレはノくリアン社製Gemini-200 (199.975MHz) および日本電子J NM-EX270(270. 05阻1Z)を用いてTMSを内部標準として測定 した。

質量 スペクトルは、日本電子JM S-01-S G - 2型質量分析装置を用い、直接導入方式で 75 eVのイオン化電圧で測定した。 元素分析は、目立026 CH N 微量分析 計及びヤナ コ製CHN コーダ-Mf-5 型を用いた。また、紫外可視吸収スペクトルは、目立

U -3410分光光度 計を用いて測定した。

2.5. 1 計算方法

各々の異性体の立体配置 は、半経験的MOAM 1法を用いて対称性の制約をかけず‘に 最適化した。21) 最適化過程は、グラディエン トが1.0以下になるま で続けた。 吸収 波長とオシレーター強度は、半経験的MO悶DO/S法辺〉を用いて計算した。この方 法 は、INDO/1 法をスペクトルの算出用に改訂したバージョン である。 二中心電子

反発積分はM ataga - Nishimoto 式お〉により見積もられた。単一励起により生成する 19 7 に及ぶコンフィギュレーション のコンフィギュレーション相互作用(C 1 ) は、13 個の HOMOと13個のLUMOを用いて計算した。Table 2-3に示したえmax の 計算値(え 叫吋)は、最初に算出された 値(え叫)を以下 の式に従って補正したものである。

え伺lcd= 2. 63 xえo均一481

この関係式 は、 測定されたえmaxに合うように最小二乗法を用いて決定した。

2. 5. 2 合成

3-クロロメチル-2-メチルベンゾ[b]チオフェン(7a)

チオエーテルのチオクライゼ、ン転位により生成した2-メチルベンゾ[b]チオフェン (2.0 g, 14 mmol)をクロロメチルメチル エーテル(33.0 g, 41 mmol)と26 0 ml のジク ロロエタン からなる溶液に加えた。この混合溶液に、塩化亜鉛(50 mg, 0.37 mmol)を 添加した後、室温で1時間撹枠した。この反応混合物を水に あけ、クロロホルムで抽 出した。 抽出液を硫酸マクOネシウムで乾燥後、固形物を鴻別し、鴻液を留去して2.4 g の3 - クロロメチルー2- メチルベンゾ[b]チオフェンを得た(収率90%)。

1H Nl\侭(CDCI3)δ2.5 7 (3 H, s, CHム4.78( 2H, s, CHム7. 2 - 7.9 (4H, m, aromatic protons).

3-シアノメチル-2-メチルベンゾ[b]チオフェン (8a)

3-クロロメチノレー2-メチルベンゾ[b]チオフェン (1 .4 g, 7 .7 mmol)を10 ml のベンゼ

(32)

ンに溶解し、これにシアン 化ナトリウム (2.5 g, 51 mmol) とテトラ ブチルアンモニウ ムブロマイド(50 mg)を溶解した 水 溶液 10 mlを加えた。この混合液を激しく撹鉾 しながら 60 ocで2時間加熱した。この反応混合物を水に入れ、 ベンゼンで抽出した。

抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥後、固形物を鴻別し、 鴻液を留去した後、 シリカゲ ルクロマトグラフィー(ベンゼン:ヘキサン、20 : 80)により精製し、 1.07 gの 3-

シアノメチルー2-メチルベンゾ[b]チオフェンを得た(収率74%)。

lH N�侭(CDC13)δ2.53 (3H, s, CHふ3.79 (2H, s, CHム7.2 ・7.9 (4 H, m, aromatic protons).

L 2-ジシアノ-1,2-ビ ス (2-メチ ルベン ゾ[b]チ オ フ ェ ン -3-イ ル)エテン (2a)

テトラブチルアンモニウムブロマ イド(30 mg, 0.1 mmol)を含む 10 mlの50%水 酸化ナトリウ ム 水溶液に3・シアノメチルー2・メチルベンゾ[b]チオフェン (1.0 g, 5.3

mmol)、ベンゼン(10 g)、四塩 化炭素(10 g)からなる混合溶媒を添加し、 この混合液 を50 ocで1時間加熱しながら激しく撹排した。この反応混合物を水 に入れ、 ベン ゼンで抽出した。抽出液を硫酸マグ、ネシウムで乾燥後、固形物を鴻別し、濡液を留去

した後、 シリカゲルクロマトグラフィー(ベンゼン:ヘキサン、30: 70)により精製 し、0.39 gの子シアノメチルふメチルベンゾ[b]チオフェンを得た(収率39 %)。

この化合物はシス体 とトランス体を3: 2の割合で含む混合物であった。薄層クロマ トグラフィーによりシス体を単離し、構造を同定した。

シス体2a :mp235・236 oC, MS m/z 370 (M+); IR (KBr) 2300 cm-1 (CN);

1 H NMR (CDC13) δ1. 98 (3H, s, CH3), 2.37 (3H, s, CHム7.ト7.9 (8H, m, aromatic protons). Anal. Calcd for C2jIl�2S2: C, 71.32; H, 3.81; N, 17.31. Found: C, 71.46; H,

3.62; N, 17.04.

2,3-ビス(2-メチルベンゾ[b]チオフェン-3-イル〉マレイン酸無水物(4 ) 化合物2a シス体 (0.83 g, 2.2 mmol)と 2 ー メトキシエタノール(2.5 ml)を3.0 mlの 50%水酸 化カリウム水 溶液に加え、その混合溶液を30時間加熱還流した。

反応混合物を室温まで冷却後、 この反応 混合物を水に入れ、10%塩酸を加えて液を 弱酸性にした後、生じた黄色の沈殿をベンゼンで抽出した。抽出液を硫酸マグネシウ

ムで乾燥後、固形物を鴻別し、11養液を留去した後、 得られた 固形物をシリカゲルクロ

(33)

J=9, 1 Hz). Anal. Calcd for C♂1403S2: C, 67.67; H, 3.61; S, 16.42. Found: C, 67.40; H,

3.66; Nヲ16.45.

1,2ージシアノ-1, 2-ビス(4-シアノ -2-メチルベンゾ[bJチオフェンー3-イル) エテン(2b)

MS m!z 420 (M+). 1 H NMR (CDC13)δ2.02 (3H, s, CH3), 2.08 (3H, s, CH3), 7.0 - 8.0 (6H, m, aromatic protons). Anal. Calcd for C24Hl�人: C, 68.57; H, 2.86; N, 13.33. Found:

C, 68.85; H, 3.01; N, 13.09.

1, 2-ジシアノー1, 2-ビス(5-シアノー2-メチルベンゾ[bJチオフェン-3-イル) エテン(2c)

MSm危420 (M+). 1 H NMR (CDC13)δ2.01 (3H, s, CHふ2.04 (3H, s, CHよ7.0 - 8.0 (6H, m, aromatic protons). Anal. Calcd for C24H♂人: C, 68.57; H, 2.86; N, 13.33. Found:

C, 68.78; H, 2.57; N, 13.60.

L 2-ジシ アノー1, 2-ピス(6-シアノ-2-メチルベンゾ[bJチオフェン-3-イル) エテン(2d)

MSm危420 (M+). 1 H NMR (CDC13)δ2.12 (3H, s, CHム2.41 (3H, s, CHム7.2・8.0 (6H, m, aromatic protons). Anal. Calcd for C24H♂人: C, 68.57; H, 2.86; N, 13.33. Found:

C, 68.49; H, 2.93; N, 13.42.

L 2-ジシアノ-1, 2-ビス(7-シアノ-2-メチルベンゾ[bJチオフェン-3-イル) エテン(2e)

MS m!z420 (M+). lH NMR (CDC13)δ2.10 (3H, s, CHム2.36 (3H, s, CHよ7.2・8.0 (6H, m, aromatic protons). Anal. Calcd for C24Hl�人: C, 68.57; H, 2.86; N, 13.33. Found:

C, 68.60; H, 2.92; N, 13.55.

L 2-ジ シア ノー1, 2-ビス(4-フルオロ-2-メチ ルベンゾ[bJチオフェン-3-イ ル)エテン(2f)

MS m!z 406 (M+). lH NMR (CDC�)δ2.05 (6H, s, CHム7.1・7.6 (6H, m, aromatic protons). Anal. Calcd for C2fi♂2F2S2: C, 65.01; H, 2.98; N, 6.89. Found: C, 64.77; H,

3.22; N, 7.19.

1, 2-ジシア ノー1, 2-ビス (5-フルオロ-2-メチルベンゾ[bJチオ フェン-3-イ ル)エテン(2g)

MS m々406 (M+). 1 H NMR (CDC13)δ2.11 (3H, s, CHム 2.33 (3H, s, CHム7.0 ・

(34)

7. 65 (6H, m, aromatic protons). Anal. Calcd for C22Hl�2F2S2: C, 65.01; H, 2.98; N, 6.89.

Found: C, 64.87; H, 2.87; N, 7.06.

L 2-ジシア ノー1,2-ビス(6-フルオロ-2-メチ ルベンゾ[bJチオ フェン-3-イ ル)エテン(2h)

MS m危406 (M+). lH N恥1R (CDC�)δ2.12 (6H, brs, CHム 6.8・7.8 (6H, m,

aromatic protons). Anal. Calcd for C2fi♂九S2: C, 65.01; H, 2.98; N, 6.89. Found: C,

65.24; H, 2.92; N, 6.59.

L 2-ジシアノー1,2-ビス(5-クロロ-2-メチルベンゾ[b]チオフェン-3-イル) エテン(2i)

MS m/z 438 (M+). lH N服(CDC�)δ2.33 (6H, s, CHム7.2・8.0 (6H, m, aromatic protons). Anal. Calcd for C2fi♂2C�S2: C, 60.01; H, 2.86; N, 6.15. Found: C, 60.14; H,

2.73; N, 6.38.

1,2ージシアノー1,2-ピス(5-ブロモー2-メチルベンゾ[b]チオフェンーかイル〉

エテン(2j)

MS m危526 (M+). 1 H N民1R (CDC�)δ2.12 (6H, brs, CH3), 6.8 - 7.8 (6H, m,

aromatic protons). Anal. Calcd for C22Hl�2B杭: C, 50.02; H, 2.29; N, 5.30. Found: C,

50.16; H, 2.32; N, 5.51.

2. 6 まとめ

1 . アリール基としてベンゾチオフェン環を導入することにより、繰り返し耐久性に 優れたジアリールエテンが合成できた。

2. ベンゾチオフェン環の6位にシアノ基、 5位にハロゲンを導入した時、閉環体の 吸収帯は長波長化した。

(35)

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