研 究論文
グ ロ ー バ ル 金 融 危 機 後 の レバ レッジ比率 によるリスク管理
菅 野 正 春
要 旨
今次金融危機 を教訓にマ クロス トレスを考慮 した金融規制 ・監督手法 として, レバ レッジ 比率による リスク管理が注 目されてい る。 レバ レッジ比率は, リスクベースの枠組み を補 完す る簡易 な指標 であ り,保有資産 の多 くが絶 えず時価評価 され るよ うなバ ランスシー ト
を保有す る金融機 関では,資産価値 の変化 は資本価値 の変化 に反映 され,両者 の変化 は レ バ レッジ比率の変化 として現れ る。 しか しなが ら,現状では当該指標 の利用可能性 に関 し て十分 な定量的検証が実施 されてお らず,業態別 に最適 な利用方法 の検討 が必要である。
本論文では,米国金融機 関 (商業銀行,投資銀行 ,保 険会社 ,お よびその他金融機 関) に 対す る分析 と併せ て,本邦金融機 関 (銀行, 保険会社,お よび証券会社) に対す る業態別 の実証分析 を行い,当該指標 の利用可能性 を考察す る。
キ ー ワー ド :金融危機, リスク管理, レバ レッジ比率,順序 ロジ ッ トモデル JEL Classincation:GOl,G21,G22,G24,G32
1
. は じめに今次金融危機 は,1997年7月か らのアジア通 貨危機,1998年8月か らのロシア財政危機 ・‑ ツ ジフアン ドLTCMの破綻 な ど過去幾度 かの金融 経済危機 を上回る甚大な影響 を金融資本市場や 世界経済に及 ぼ し,"グローバル金融危機"と呼 称 されてい る。
今次金融危機 が発生 した要因 として各種挙げ られてい るが,重要な要因 として, リスクを複 雑 に加 工す る証券化技術 の進展が挙げ られ る。
この技術 によって,サブプライム ロー ンを担保 とした住 宅 ロー ン担保証券 (RMBS)が開発 さ れ,更 にそれ を再証券化 したABS‑CDOが開発 され,世界 中の金融機 関や投資ファン ドは, こ れ ら証券化商品を購入 した。
2005年 以降,取 引量 が増大 したABS‑CDOは シンセテ ィツク (合成)型 といわれ,それ まで
主流であったキャ ッシュ型 とは異な り,取 引 自 体 は原債権 のABSあ るい はRMBSを参 照す るに 過 ぎないオフバ ランスのク レジ ッ ト・デ フォル ト ・ス ワ ップ (CDS)取 引で ある。 菅野[2009] に よる と,BBB格 のサ ブプ ライ ムRMBSの発行 額 に対す るメザ ニ ンABS‑CDOの割合 は, 2006 年 には193%と約2倍 に達 した とされ る。
2007年夏頃にはサブプライム ロー ン問題 が顕 現化 し,当初, 米 国内の住宅 ロー ンや一部 の市 場 内の問題 に とどまっていたが,サブプライム ロー ン関連商品の流動性 が欠如 し,価格 が下落 した。 この結果,2008年 に入 り,全米第 5位 の 投資銀行ベアー ・スター ンズの経営危機 ,同9 月の政府支援機関ファニー ・メイおよびフレディ ・ マ ックの実質的破綻,そ して同9月15日に リー マン ・ブラザーズが破綻 した。この リーマンショッ ク ともいわれ る,機能不全 に陥った金融資本市 場 において,原債権 が不透 明な証券化商品の リ グローバル金融危機後のレバ レッジ比率によるリスク管理 61
ス クが連鎖的 に他 の金融商品にも顕現化 し,信 用収縮 が助長 され た。
現在, 今次金融危機 の反省 に立 ち,vaRに代 表 され る平常時の リス ク指標 を補完す る新 たな リスク指標 ・手法 の開発 が リスク管理上の懸案 課題 となってお り,い くつか検討 され てい る。
例 えば,今次金融危機 では金融資本市場 とマ ク ロ経済が相互 に影響 を及 ぼ した ことを踏 まえ, 各国の中央銀行 ・監督 当局は,マクロス トレス ・ イベ ン トに対す る統合 リスクの管理手法 として, 金融モデル とマ クロ経済モデル を組 み合 わせ , マ クロ経済変数 を金融モデル に取 り込むマ クロ ス トレス ・テス トの開発 を行 ってい る1。
また,Kashyap,A.K.他 が2008年 カ ンザ ス連 銀 主催 シンポジ ウムで提 唱 した資本保 険が挙 げ られ る。資本保 険 とは,今次金融危機 の よ うに 金融 システム全体を震推 させ るマクロス トレス ・ イベ ン トが生 じた ときに,被保 険者 で ある金融 機 関の 自己資本 の増強が予 め約束 され た保 険契 約 で あるが,実現す るには多 くの課題 が指摘 さ れてい る。
ここで,本論文 の主題 であ るレバ レッジ比率 について検討す る。金融安定化 フォー ラム (覗 在 の金融安定理事会) は,2009年4月 にG20ロ ン ドン ・サ ミッ トの開催 に合 わせ て発 出 した勧 告(FinancialStability Forum [2009])で , 「銀 行 システ ムにお ける レバ レッジの積 み上が りの抑 制 を促 し,バーゼル Ⅱの枠組み において資本 の 下限 とな る, リスクベー スでない簡易 な指標 に よ り, リスクベースの所要 自己資本 を補完すべ きであ る」 とバーゼル銀行監督委員会 に提言 し た。 この代表的な指標 が レバ レッジ比率である。
一方,バーゼル銀行監督委員会 は,2009年12月 17El,大手銀行 を対象 に した包括的な規制改革 莱 (Basel Committee on Banking Supervision (BCBS)[2009])を発表 し,バ ーゼル Ⅱ第 1の柱
(規制 資本 ) で の取扱 い‑ の移行 を視 野 に入れ て,第2の柱 の リスクベースの枠組 み に対す る
補完 的指標 として レバ レッジ比率 を導入す る と してい る。
レバ レッジ比率の定義 は複数存在 し,規制上 の定義 は今後協議 の上決定 され るが,本論文 で は レバ レッジ比率 をバ ランスシー ト上 の総資産 額 を純資産額 で除 して計算 され る指標 と定義す る。 この指標 は,決算 のタイ ミングで しか入手 できない とい う制約 はあるものの,一般 に監査 を経た数値 を基 に計算 され るため信頼性 は高い。
近年,わが国の金融機 関 も四半期決算情報 を開 示す るよ うになったが,不 良債権処理 な ど様 々 な要因で,総資産額 な どの四半期決算 の数値 が 本決算 のそれ と大 き く帝離 してい る場合 がある 点は否 めない。 しか しなが ら,監督 当局 がオ フ サイ ト ・モ ニ タ リングに よ り情報収集 しやす い 指標 であ り,かつ,監督 当局以外の第3者で も,
リス ク管理上容易 に入手す るこ とが可能 な指標 である。
さて,今次金融危機 の顕著 な特徴 として,景 気循環増幅効果 (プ ロシク リカ リテ ィ) の影響 が挙 げ られてい る。景気 が後退す る と,金融機 関の融資先 が倒産 して貸 出金 の一部 が回収 で き な くな る信用 リス クが増加 し,会計制度 上は, こ うした潜在 的な損失 に対 して貸倒 引当金 を積 み増す必要性 が生 じて くる。 自己資本 比率規制 上 は,信用 リス クが増加す る と,与信先企業 の 信用格付が悪化す るため, 自己資本比率 の分母 を構成す る信用 リス ク ・アセ ッ トの増加 に繋 が り,同比率の低下を招 くことになる。その結果, 企業‑ の資金供給 を減少 させ るイ ンセ ンテ ィブ が働 き,設備投資や在庫投資 を中心に景気 が一 層後退す るこ とにな る。 この よ うな効果 を景気 循環増幅効果 といい, レバ レッジ比率 は この効 果 の代理変数 で ある。
実際,保有資産 の多 くが絶 えず時価評価 され るよ うなバ ランスシー トを保有す るタイプの金 融機 関では) 資産価値 の変化 は株 主資本価値 の 変化 に反 映 され,両者 の変化 は レバ レッジ比率
ー参考 までに,Antonella,F.[2008]は,2008年末時点の欧州主要 当局 (中央銀行 ,監督 当局) に よる信用 リスクのマ クロス トレス手法 をサーベイ している。
95 100 105
資産価 値A
図
1
資産価値 とレバ レッジ比率 の関係の変化 として現れ る。 しか しなが ら,従来 この 指標 の利用可能性 に関 してほ とん ど定量的検証 が実施 され てお らず ,特 に本邦では,今次金融 危機 で破綻 に至 った事例 はない ものの,いかな る金融業態 に適用可能 であるか とい う点が明 ら かに されてい ない 。
本論文では,米国金融機 関 (銀行, 保険会社 , 投資銀行 ,お よびその他金融機 関) と本邦金融 機 関 (銀行 ,保険会社 ,お よび証券会社) につ いて実証分析 し, レバ レッジ比率 の利用可能性 について明 らかにす る。本論文の構成 は次 の通 りで ある。2節 では, レバ レッジの構造 を概説 し, レバ レッジ比率の変化 とバ ランスシー トの サイズの変化 , レバ レッジ比率 と格付機 関が金 融機 関に付与 してい る信用格付 との依存 関係 に ついて実証分析す る。3節 では,実証分析 か ら 得 られ た結果 を基 に,わが国金融機 関に対す る レバ レッジ比率の活用方法 についてま とめる。
2.
レバ レッジ構造の分析レバ レッジ比率 とバ ランスシー トのサイ ズに つ いて考察す る. 総資産 の市場価値 をA,負債 の市場価値 をLとお くと, レバ レッジ比率
Le
vは,Le v ‑ A/ ( AI L )
と表す こ とがで き,L
を固定 して見 る と,Le v
はAの単調 減 少 関数 とな る (図 1参 照)0 Adrian,T.and Shin,H.S.[2007]に よれ ば,米 国家計 に関 して四半期毎 に レバ レッジ比 率 の成長 率 (以 下, レバ レッジ成長 率)ALe v
に対す る総資産成長 率
AA
の点 を散布 す る と,ALe v
とAA
には強い負 の依存 関係 が見 られ る と 報告 してお り, この実証結果 は理論通 りとなっ てい る。一方,金融機 関に 目を向けると,バ ランスシー トか ら計算 され るレバ レッジ比率 (バ ランスシー ト ・レバ レッジ) は,オ フバ ランス取 引のエ ク スポージャーが考慮 されていない。 したがって, 信 用 デ リバ テ ィブやABS‑CDOな ど複雑 な仕組 信用商品か ら生 じる リスクを捕捉できないため,
リス ク指標 と して使 用す るには制約 が あ る2。
また,会計基準 におけるネ ッテ ィングルール は, バ ランスシー ト ・レバ レッジに影響 を与 えるが, 国際財務報告基準 (IFRS)に基づ くバ ランスシー
ト ・レバ レッジは,米 国会計基準 (US‑GAAP) に基づ くそれ よ りも典型的には高い数値 となる。
更 に,バ ランスシー ト ・レバ レッジは,資産 と 負債 の満期 の ミスマ ッチに よる資金繰 りリス ク を反映す ることがで きない問題 点 も指摘 されて
2 この点に関 して,通常のバ ランスシー ト ・レバ レッジを改善 した もの として,VaR対株 主資本比率や 中核的 自己資 本 で資産価値 を除 して計算 され るレバ レッジな どの リスク調整後 レバ レッジ指標 が考 え られ るが, これ ら指標 は レ バ レッジ比率本来の簡易な指標 とい う点か らは帝離す るものである0
グ ローバル 金融危機 後 の レバ レ ッジ比 率 に よる リス ク管理 63
い る。
このよ うにバ ランスシー ト ・レバ レッジは制 約 のある リスク指標であるものの,金融規制 ・ 監督上 は簡易 な リスク指標 として導入 され る予 定である。 ただ し,金融機 関は業態 によってバ ランスシー トの構成が大 き く異なるため,業態 別 にバ ランスシー ト・レバ レッジの構成や変動 特性 を検証す る意義 は大 きい。特 に,本邦金融 機 関に関す る分析事例 は,著者 の知 る限 り見 当 た らないので,今次金融危機後の リスク指標 と
しての利用可能性 を検討す る必要がある。
2.1レバ レッジ成長率 と資産価格成長率の 依存関係
以下では,米国お よび本邦の金融機 関につい て,業態別 に レバ レッジ構造 を分析す る。 ここ で,金融機 関を,銀行 (いわゆる預金等受入金 融機 関を指すが,米国の貯蓄金融機 関を除 く。
商業銀行 を含む。),保険会社 ,証券会社 (投資 銀行 を含む。),お よびその他金融機 関 (預金 の 受入 を行 わず投融資のみ を行 うノンバ ンク,栄 国の貯蓄金融機 関 ・政府 支援機 関を含 む。) に 分類す る。
2.1.1米国金融機関
まず,今次金融危機 の発信地である米国金融 機 関について分析す る。表
1
の2 0 0 8
年Ql
(第1
四半期)終了時点の総資産額で上位2 5
金融機 関 (銀行,保険会社,投資銀行,その他金融機 関) について,2 0 0 6
年Q4
(第4
四半期) か ら2 0 0 9
年Q2
(第2
四半期)までの財務指標デー タを用いて,4半期 間の レバ レッジ比率の成長 率 (レバ レッジ成長率) と資産価値成長率 を計 算 し, (レバ レッジ成長 率,資産価値成長 率) の点を業種別 に散布 した図が図2,回帰分析 の 結果 が表2である。ただ し,投資銀行
( 2 0 0 8
年Q
l終了時点で存 在 していた 5大投資銀行)については,2 0 0 8
年 Q3 (第3四半期) までの財務指標デー タを使 用 した。その理 由 として,ベ アー ・スター ンズが
2 0 0 8
年5月3 0
日に, また メ リル ・リンチが2 0 0 8
年9月1 5
日に,何れ も経営危機 によ り買収 され, リーマ ン ・ブラザーズが2 0 0 8
年9月1 5
日 に倒 産 し,残 るゴール ドマ ン ・サ ックス とモル ガ ン ・ス タン レーが2 0 0 8
年9月21
日に,FRB
(米連 邦準備 制度理事会) の支援 と管理 を受 け やすい銀行持株会社 に移行 し,商業銀行 に業態 替えする承認 を
FRB
から受けたことが挙げられる。図 2お よび表 2を見 ると,商業銀行 について は,両者 の間に明確 な依存 関係 はみ られず, 莱 際に単回帰直線 を引 くと,Ⅹ軸 にほぼ一致す る。
保険会社 については
,Ad r i a n
,T.a n dS h i n,H. S . [ 2 0 0 7
]が指摘す るよ うに,米 国家計 と同様 , レ バ レッジ成長率 と資産価値成長率の間には若干 の負 の関係 が見 られ る。投資銀行 については, 他 の業種 とは状況が全 く異 な り, レバ レッジ成 長率 と資産価値成長率 との間には一定の正の関 係 が見 られ,事実, レバ レッジ成長率 を資産価 値成長 率 に単回帰す る と,決 定係数 が0, 5 2 7
, 傾 きが正( 0. 6 2 0)
の回帰直線 が得 られ る。 こ のため,総資産が増加す るとレバ レッジ比率 も 増加す るため,投資銀行 の レバ レッジ比率は景 気循環増幅的な (プロシクリカルな)性質を持っ てい る といえる。その他金融機 関の場合,大部 分 の観測値 はy軸 上 に並ぶ こ とか らもわか るよ うに,貸付資産 の積み増 しに新たな資本の調達 を行 うことで,資産 が増加 して もレバ レッジ比 率を一定に保持す る財務構造 を とってい ると考 え られ る。ここで,業種 によ り異 なる依存 関係 が観察 さ れ る背景 を考察す る (その他金融機 関について は割愛す る。)0
まず,商業銀行 の場合,金融安定化 フォー ラ ム とグローバル金融 システ ム委員会の合 同ワー キンググルー プが
2 0 0 9
年4
月 に作成 した レポー ト( Co mmi t t e e o n t he Gl o ba lFi n a n c i a lS y s t e m ( CGFS )[ 2 0 0 9 ] )
に よれ ば,2 0 0 8
年3
月 時点 で時 価評価 され る資産 ・負債 の割合 は,資産 :3 0. 4
%,負債 :
8. 0%
と報告 され てい る。 よって, 資産価値変化 と負債価値変化 の間には依存関係 がほとん どないため,資産価値成長率 とレバ レッ表1 米国総資産上位25金融機関の リス ト
(総 資産順位 は2008年Ql末 時 点 の もの,単位 :百億 米 ドル)
Ptt
ロー\人\て紗要諦姦藤o)i,/人L,,y,}拝側帯汁かUゝ9噂漣6
5総資産順 位 会 社 名 業種 2総資産額008年Q1 備 考
1 シティグループ 銀行 2,200
2 バ ンク .オブ .アメ リカ 銀 行 1,737
3 JPモルガン .チェース 銀 行 1,643
4 ゴール ドマン .サ ックス 投 資銀 行 1,189
5 モルガン .スタンレー 投 資銀 行 1,091
6 AⅠG 保 険 1,051 2008年9月 に米政府 の管理 下で経 営再建 が決 定 した○
7 メ リル リンチ 投 資銀 行 1,042 2008年9月15日にバ ンク .オブ .アメ リカによ り買収 されたo 8 ファニー .メイ その他金融機 関 (政府支援機 関) 843 2008年9月に米 政府 の管理 下に置かれたo
9 ワコピア 銀 行 809 2008年10月3日にウェルズ .ファー ゴの株 式 取得 による経 営支援 が決 定 した○
10 フレデイ .マ ック その他 金 融機 関 (政府 支援機 関) 803 2008年9月 に米政府 の管理 下に置 かれたO
ll リーマン .ブラザーズ 投 資銀 行 786 2008年9月15日に連 邦倒 産 法第11章 の適 用 申請 により倒 産 した○
12 GEキャピタル その他 金 融機 関 (ノンバ ンク) 684
13 ウェルズ .ファー ゴ 銀行 595
14 メッ トライフ 保 険 557
15 プルデンシャル .ファイナ ンシャル 保 険 478
16 ベアー .スター ンズ 投 資銀 行 399 2008年3月頃経営危機に陥 り,同5月30日にJPモルガン .チェースにより買収 されたo
17 ハー トフォー ド 保 険 344
18 サンフランシスコ連 邦住 宅貸付銀 行 その他 金 融機 関 (政府 支援機 関) 332
19 ワシン トン .ミューチュアル その他 金 融機 関 (貯 蓄金 融機 関) 320 2008年9月25日に業務停止で経営破綻 し,JPモルガン .チェースにより買収 された○
20 バークシャー .ハサ ウェイ 保 険 281
21 GMAC その他 金 融機 関 (ノンバ ンク) 243 2007年に住宅ローン部門で損失が拡大 し,2008年 中に業務縮′卜 人員削減を実施 したo
22
U s
バ ンコープ 銀 行 24223 バンク .オブ .ニュー ヨーク .メロン 銀 行 205
24 カン トリーワイ ド.ファイナンシャル その他 金 融機 関 (貯 蓄金 融機 関) 199 2008年7月 ,バ ンク .オブ .アメ リカによ り買収 されたo
(出典)菅野[2010]
商 業銀行
R2線型 (L)=0002
資産価値成長率資産価値成長率
レバ レッジ成長率
投資銀行
RZ線型 (L)=0527
‑2 0
レバ レッジ成長率
資産価値成長率資産価値成長率
保 険会社
R2線型 (L)=0328
0 2
レバ レッジ成 長率
その他 金融 機 関
R2線型 (L)=0.037
20 40
レバ レッジ成 長率
図
2
米総資産上位25
金融機 関の総資産成長率 とレバ レッジ成長率 との関係 (データ範囲 :2006年Q4‑2009年Q2)表2 業種別 の単回帰分析 の結果
単回帰式 (括弧 内はt値) 決定係数R2デー タ数 商業銀行 AssetGrowth‑0.(0066×Le.357) verageGrowth+0.(2051.491) 0.002 67 保険会社 AssetGrowthニ ー0ー(‑4.8201×Le39) verageGrowth+0.(0002.332) 0.328 50 投資銀行 AssetGrowth‑0.(5620×Le.780) verageGrowth+0.(101.5388) 0.527 32
ジ成長率 の依存 関係 もほ とん どない ことが裏付 け られ てい る。
次 に,投資銀行 の場合,バ ランスシー トの構 成 が商業銀行やその他金融機 関 とは異 な り,質 産 ・負債 ともに主 に短期 の取引で構成 されてい る。資産サイ ドは,時価評価対象 の トレーデ ィ ング勘定の資産, リバース レポ取 引 (売 り戻 し 条件付売買取 引)で構成 され てお り,後者 は短 期取引ゆえに簿価 と時価 との帝離 が小 さいのが 特徴 的である。一方,負債サイ ドは,時価ベー スの短期 ポジシ ョン,短期取 引である レポ取 引 (買い戻 し条件付売買取引),長期負債 な どで主 に構成 され てい る。投資銀行 のバ ランスシー ト 上,長期負債 の比重 は小 さく,2008年9月 に破 綻 した リーマ ン ・ブ ラザーズの場合 ,破綻直前 の2007年Q2‑2008年Q2間の長期負債 の負債 全体 に 占める比率 は約17%〜21%であった。す なわち,バ ランスシー トの資産サイ ド,負債 サ イ ドとも実質的に時価評価 され るため, レバ レッ ジ成長率 と資産価値成長率 との間には正 の依存 関係 が見 られ る。
次 に,保 険会社 につ いて検討す る。AIGは損 害保 険 を中核 とす る会社 であるが,2008年秋 の 経営危機 時には,キャ ピタル マーケ ッ ト ・デ リ バテ ィブ子会社AIGFPが執行 した取 引に よ り, 自己資本700億 ドル に対 して,4,500億 ドル の6
倍 超 のCDOポ ジ シ ョン (CDSの売 りポ ジ シ ョ ン) を保 有 していた。 しか しなが ら, このAIG のケー スは特殊 な例 であ り,一般 に, 保 険会社 の資産サイ ドは,有価証券 ,貸付金,不動産 な どで構成 され てい る。一方,負債 サイ ドについ ては,損害保険 (AIG,バー クシャー ・ハサ ウェ イ3の2社) と生命保険 (プルデ ンシャル ・フィ ナ ンシャル ,ハー トフォー ド, メ ッ トライ フの 3社)では,保険契約期 間の差異はあるものの, 一般 に,保険負債 は時価評価 されない。 したがっ て,資産時価 が上昇 して も,それ に連動 して負 債価値 が上昇す るわけではないので,負 の依存 関係 が見 られ る。
また,今次金融危機 にお ける レバ レッジ比率 の推移 を個別企業別 に作成 した ものが図3であ る。 なお,図3:その他金融機 関で, レバ レッ ジ比率がマイナス となってい る部分 は,資本不 足 に陥 ってい るこ とを示す。 図3を見 ると,経 営危機 に陥 ったベ アー ・ス ター ンズ (06Q4:
29‑ 07Q4:34), メ リル ・リンチ (06Q4:22
‑07Q4:32),AIG (06Q4:29‑ 08Ql:34),倒 産 した リーマ ン ・ブ ラザー ズ (06Q4:26‑ 08Q
l:32),米政府 の管理 下 に置 かれ た ファニー ・ メイ (06Q4:20‑08Q3:97)や フ レデ ィ ・マ ッ ク (06Q4:29‑→08Q l:50)な どの金 融機 関で は,危機 直前 の水準か ら大 き く上昇 してお り, 商 業銀 行
●
レ19
バ 1レ芸1311g5寺 ̲̲̲‑ ■■■llll l 、
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̲ ̲̲̲追 芸三聾 葺き il主狸 ‑i ‑ 蒜 ≡ 芸 歪こ ̲L 蝿
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■‑
I‑
I06Q4 07Ql 07Q2 07Q3 07Q4 08Q1 08Q2 08Q3 08Q4 09Q1 09Q2
シティグループ 16 17 17 19 19 17 15 16 14 13 12
‑‑‑‑ JPモノレガン.チェース 12 12 12 12 13 13 13 15 13 12 13
一一一一一ウェルズ .ファーゴ ll ll ll ll 12 12 13 13 13 13 ll
‑ ‑.
‑U
Sバンコープp 10 ll ll ll ll ll ll ll 10 10 ll‑.‑.バンク.オブ .アメリカ ll ll ll ll 12 ll ll ll 10 10 9
‑7‑‑ ワコピア 10 ll ll ll ll 10 ll 15
3世界最大の投資持株会社。傘下の保険部門は事業の中核 をな し,世界最大の再保険会社 である。保険部 門は,再保 険の他,損害保険,特殊保険な どの保険業務 を営む。
グローバル金融危機後のレバ レッジ比率によるリスク管理 67
保 険会社
レl
バ 30ジレツ2010 5 【1
‑‑I ‑ ■ ■ ‑ 〜 ‑ ヽ
i
〜ご燃Lここi = 1 1二二二二=ここ=
+ l S‑.M T + ‑ 。 亡.一一1 ‑̲ ̲‑ ‑ ‑.‑ ‑‑‑一一
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0
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7Oルデ ンシャル.ファイナンシャル 20 19 20 21 21 21 22 25 33 33 25・ ,
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‑ ‑‑ Al G 10 10 10 10 ll 13 13 14 16 18 14
投 資銀行
バ 30レレツ 2025
ジ 1510 日 .....
‑
.●‥''ヒ「=訊 ... 守帝lb
も \ 一 塩
06Q4 07Q1 07Q2 07Q.3 07Q4 08Q1 08Q2 08Q3 08Q4 09Q1 09Q2
‑
ベ アー .ス ター ンズ 29 30 32 31 34 34‑ ‑ ....モ ル ガ ン .ス タ ン レー 32 31 30 34 33 33 30 28 13 13 13
‑‑一一‑ リー マ ン .ブ ラザー ズ 26 28 29 30 31 32 24
‑ ‑ ‑ーメ リル リンチ 22 24 26 23 32 29 28 23 33 14 15
その他金融機 関
∫
レ 40
バジ ーレツ.‑110160ーー6010
一 ̲ ̲一 一 ヽ レ′ ′ 一 、 . /
二軍 ‑=コ己コ 二三
一二三 丁半 †三出 ご† 壬ユ∵二 ∵
二∵∵ ∵+I+T十\ / 也̲ ̲ J
\ √ 、 . V
06Q4 07Q1 07Q2 07Q3 07Q4 08Q1 08Q2 08Q3 08Q4 09Q1 09Q2
‑
フ レデ イ .マ ック 29 28 32 31 30 50 68 ‑58 ‑28 ‑155 110‑‑‑‑FHLBサ ンフ ランシス コ 23 22 24 24 24 23 23 31 33 28 27
‑‑‑一一 フ ァニー .メイ 20 20 22 21 20 22 22 97 ‑60 ‑48 ‑85
‑‑‑GMAC 20 18 18 20 17 16 18 23 9 8 7
‑ .‑‑.カントリーワイド‑フィナンシャル 14 14 15 14 14 15 17
‑ ‑‑‑ ワシントン.ミューチュアル 13 13 13 14 13 15 13
‑ .‑GEキ ャ ピタル 10 10 10 10 ll 12 10 ll 9 8 8
図
3
米国金融機 関の レバ レッジ比率 の推移銀行
R2線型 (L)=0.002
資産価値成長率
10 :〜0 3D 40 50
レ/ル ッジ成長率
資産価値成長率 資産価値成長率
証券会社
保 険会社
R2線型 (し)=0.123
1O 20 レバ レッジ成長率
R之線型 (L)=0455
0 1J) 2」】 30
レバ レッジ成長率
図4 本邦金融機 関の資産価値成長率 とレバ レッジ成長率 との関係 (データ範囲 :
2002
年3
月末〜2009
年3
月末)金融規制 ・監督上, レバ レッジ比率が金融機 関 の健全性 に係 る早期警戒機能の役割 を果 た して いた ことを窺い知 ることがで きる。
2.l.2 本邦金融機関
本邦金融機 関 (銀行,保険会社,お よび証券 会社) について,上場企業 を対象 に単回帰分析 を行 う。対象金融機 関は,銀行113行 (主要行 等,地方銀行 ,お よび第2地方銀行),保 険会 社29社 (損害保 険20社,生命保険8社 ,再保 険 1社),および証券会社72社である。財務指標デー
タについては,株式会社イーオーエルが提供す る財務デー タベース (有価証券報告書のデー タ ベース) を活用 し,2002年3月末〜 2009年3月 末までの年次デー タを利用 した。 したがって, 資産価格成長率お よび レバ レッジ成長率は1年 間に対す る数値 である。 なお,社数 のカ ウン ト は証券 コー ドを基準 とした。 また, レバ レッジ 成長率 を計算す る際に使用す る 「純資産の部」
の数値 につ い ては, 自己資本 が貸借 対 照表 に
「資本 の部」として表示 され ていた2006年3月 未以前の年次について も,純資産 の項 目に揃 え グローバル金融危機後のレバ レッジ比率によるリスク管理 69
蓑 3 業種別の単回帰分析の結果
単回帰式 (括弧内は g値) 決定係数
R
2 デー タ数 銀 行 AssetGrowth‑0(1.01.1933×Le) verageGrowth+0(.401.9025) 0.002 651 保 険会社 AssetGrowth‑0(4.1.253×Le44) verageGrowth+0(.101.3457) 0.123 130表4 国内保険会社 の資産構成割合 (2007年3月現在)
貸付金 邦貨建 国内 外貨建 外 国 不動産 短期 その他
債 券 株式 債 券 株式 資金
生命保険会社 20.60% 45.00% 17.70% 9.50% 2.80% 2.30% 2.20% 0.00%
損害保 険会社 15,90% 64.00% 0.10% 5.40% 1.10% 0.00% 12.50% 1.00%
た。 図4に業種別の散布 図,表3に単回帰分析 の結果 を示す。
銀行 の場合 ,図4お よび表3を見 ると, レバ レッジ成長率による資産価値成長率の説明力 は ほ とん どない ことがわか る。 これを裏付 けるも の として,CGFS [2009]によれば,2008年3月 時点で時価評価 される資産 ・負債 の割合 は,餐 産 :24.9%,負債 :2.2%と報告 されてお り, 何 れの数値 も米 国の商業銀行の数値 より大分小 さ いものとなっている。 このため,資産価値変化 と 負債価値変化 との間には殆 ど依存 関係がなく, 資産価値成 長率 とレバ レッジ成長 率 との依存 関l 係 も小 さい とい う点は分析結果 と符合 している。
また,保 険会社の場合,2007年3月時点の本 邦の生命保 険会社 と損害保険会社 の各資産構成 の平均的な割合 は表4の通 りである。何れ も有 価証券 (邦貨建債券,国内株式,外貨建債券, 外国株式) と貸付金が大宗 を占めてお り, この 他 ,損害保 険会社 の短期資金12.5%,生命保 険 会社 の不動産2.3%が特徴 的であ る。 したが っ て,生命保険会社,損害保険会社 とも有価証券
(出典)金融庁HP
の ウエイ トが高い こと (生命保 険会社 :75%, 損害保険会社 :70.6%)がわか るが,時価評価 され る資産割合 は会計上の保有 目的割合 に依存 す る4。 一方 ,負債 サイ ドを見 る と,15社 の う
ち12社 を占めてい る損害保険会社 の場合,負債 は 1年以内の損害保険契約 で構成 されてい る。
現状,損害保険負債 は時価評価 されていない も のの,責任準備金 の算定 を通 じて時価 との罪離 は大 き くはない と考 え られ る。以上の よ うな状 況 を反映 して, レバ レッジ成長率 と総資産価値 成長率 との間に, 弱い正の依存 関係 が見 られた
もの と考 え られ る。
また,証券会社の場合, レバ レッジ成長率 と 資産価値成長率 との間に正の依存関係 が見 られ
る。 これは,米国投資銀行 と同様 に,バ ランス シー トの構成が資産 ・負債 ともに主に短期 の取 引で構成 されてい るためである。 したがって, レバ レッジ比率の水準お よび成長率 をモニタ リ ング して,上限を課す ことに よって, リスクの 潜在的な増 嵩を早期 に警戒 し,機動的 に制御す
ることが可能である。
4 時価評価 の対象 となる有価証券 は,売買 日的有価証券 とその他有価証券 である。 この他 の区分 として,満期保有 目 的有価証券 (償却原価 で評価),責任準備金対応債券 (償却原価 で評価),お よび子会社 ・関連会社株式 (原価 で評 価)がある。
2009年3月末のR&Ⅰ信用格付
図5 銀行の信用格付別度数分布 (2009年3月末時点)
2.2レバ レッジ比率 と信用格付の依存関係
信用 リスクは今次金融危機 のよ うなマ クロス トレス時 に顕現化す る主要 な リス ク5である。
金融機 関の信用 リスクを推計す る指標 として, スタンダー ド・アン ド ・プアーズ,ムーデ ィー ズ, あるいは投資格付情報セ ンター (R&Ⅰ) な どの格付機 関が付与す る信用格付 がある。信用 格付 の変更 とレバ レッジ比率の推移 にはタイ ム ラグがあるものの,一般 に信用格付 とレバ レッ ジ比率は負 の依存関係 があ り, レバ レッジ比率 が低 いほ ど信用格付が高い と言われている。実 務上,銀行 の融資審査や信用 リスク管理で使用 され る信用スコア リングモデルでは, レバ レッ ジ比率は信用ス コアを表す共変量の1つ を構成 す る場合が多いが,本節 では, レバ レッジ比率 のみ による信用 リスクの説 明力について分析す る。 そ こで,本邦金融機 関 (銀行,保険会社, お よび証券会社) を対象 として,信用格付が順 序尺度であることか ら,順序回帰モデル による 分析 を行 う。
財 務指標 デー タ と して,2.1節 で使用 した も の と同一のデー タを活用 し,格付デー タに関 し ては,本邦企業の信用格付データが最 も多 く揃
う格付機 関R&Ⅰのデー タを利用 し,2002年 3月
末〜2009年 3月末の年度末毎 に財務指標デー タ と格付デー タの双方 が揃 う先 を抽 出 した。 その 結果,例 えば,2009年 3月末時点で両方 のデー タが揃 う先は,銀行41社,保険会社8社,証券 会社 8社 である。参考までに,2009年 3月末時 点 のR&Ⅰの格付 が付 与 され てい る銀行 の度数分 布 を図 5に示す (保 険会社,証券会社 について は社数僅少 のため省 略)。 図5を見 る と,A+格 が最頻値 となっているが, この傾 向は,全期 間 通 して見て も大 き く変わ らない。
順序回帰モデル によ り,順序性 のある信用格 付 を被説明変数 とし,連続的な値 をとるレバ レッ ジ比率 を説 明変数 (共変量) として分析す る。
まず ,R&Ⅰの定義 に従 い,信用格付 の順序性 を 表5の よ うに定義す る。
この とき, 被 説 明変数 (信 用格 付 )yが値 j(j‑0,1,...,19)を とることを,説 明変数ベ ク トル x‑ (xl,x2,‥リ
X , ∫
)を用 い て , 連 続 的 な潜 在 変 数 (信用 ス コア)Y暮
:Y' ‑B・ Ⅹ+
E(Bは係 数ベ ク ト ル , Eは誤 差項) が, 区間 (k , , k , .
1]の値 を とるこ とと同値 である と仮定す ると,次の対応 関係 を得 る。
Y‑j⇔ k ノ<Y' ‑B・ x+E
≦kJH⇔k , ‑B・ x<
E≦k,十1‑B・x(j‑0,i,...,19;
k
。ニー∞, k 2 0
‑…)ここで,信用 ス コアの誤差項 Eの分布 関数 をF
5 この他,市場 リスク,資金繰 りリスクな どが挙げ られ る。
グ ローバル金融危機 後 の レバ レッジ比率 に よる リス ク管理 71
表
5
信用格付 の順序性R&Ⅰ格付 格付 区分1 格付 区分2 R&Ⅰ格付 格付 区分1 格付 区分2
AAA 0 0 BB+ 1
0
2AA+ 1 BB ll
AA 2 BB‑ 12
AA‑ 3 B+ 13
A+ 4 1 B 14
A 5 B‑ 15
A‑ 6 CCC+ 16
BBB+ 7 2 CCC 17
BBB 8 CC 18
BBB‑ 9 C 19
表6 順序 ロジ ッ ト分析 の結果 銀 行
McFaddenの疑似決 定係数 0.073
係数 (B) 標 準誤 差 Wal° 有意確 率 しきい値 [格付 区分2
=
0] 0.003 0.380 0.000 0.994[格付 区分2
=
1] 3.930 0.467 70.764 0.000***McFaddenの疑似決定係数 0.131
係数 (B) 標 準誤差 Wal° 有意確 率 しきい値 [格付 区分2
=
0] 0.773 0.357 4.686 0.030**[格付 区分2
=
1] 2.335 0.429 29ー627 0.000***McFaddenの疑似決定係 数 0.145
係数 (B) 標 準誤差 Wal° 有意確 率 しきい値 [格付 区分2
=
1] ‑1.623 0.719 5.095 0.024***:10%有 意 ,**:5%有 意 ,***:1%有 意
表
7
説明変数の定義区分 説 明変数の候補 計算式
規 模 業務純益 LoglO(1+業務純益) 業務純益≧0の場合 Log10(1/(1‑業務純益)) 業務純益<0の場合 コア業務純益 Log10(1+コア業務純益) 業務純益≧0の場合
Log.o(1/(1‑コア業務純益)) 業務純益<0の場合 自己資本 Log10(1+純資産) 純資産≧0の場合
Log10(1/(1‑純資産)) 純資産<0の場合
安全性 レバレッジ比率 LogLog1100((11+総資産/自己資本) 総資産/自己資本/(1‑総資産/自己資本))総資産/自己資本<0≧0の場合の場合
自己資本比率 自己資本/総資産
自己資本貸倒 引当金比率 貸倒 引当金/自己資本 収益性 総資産経費率総資産 当期利益率 営業経費/総資産当期純利益/総資産
総資産コア業務純益比率 コア業務純益/総資産
とす る と,信用格付 Yがjを とる確 率 pは次式 で表 され る。
P(
Y
‑j)‑F(k , . i ‑Bx )
‑F(k , ‑Bx )
なお,本論文では リンク関数 として ロジ ッ ト 関数を選択 したため,分布関数Fにロジスティッ ク分布 を仮定 して分析 を行い,共変量は レバ レッ ジ比率のみである。 また,
AA
A格〜C
格 の2 0
区 分で分類す ると,保険会社 と証券会社 において, デー タ数 が僅少 な区分がい くつか生 じることから,
AAA〜AA‑
,A+〜A‑
,BBB+〜C
の3
区分 に集約 して分析 した。分析結果は表6の通 りで ある。信用格付 の説 明変数 として レバ レッジ比率 を 考 える場合,係数の符号が負 になると予想 され るが,表6を見 ると,実際には,証券会社 のみ が全 ての係数 の符号が負 にな り,銀行お よび保 険会社 については,全ての係数が正 になった。
また,順序回帰モデル の説明力 を表す代表的な 指標 であるMcFaddenの疑似決定係数 6は,証券
会社 の場合0.145,保 険会社 の場合0.131とな り, 相応 の相 関を示す数値 となった。
以上 よ り,本邦金融機 関の場合,証券会社 に ついては,信用格付 とレバ レッジ比率は一定の 負 の依存関係 があると考 え られ るが,銀行 と保 険会社 については,負 の依存関係 を支持す る結 果 は得 られなかった。
2.3銀行の信用 リスクに影響 を与える変数の 選択
2 . 2
節 の分析結果 よ り,本 邦金融機 関の信 用 リスクを推計す る際, と りわけ銀行 の信用 リス クを レバ レッジ比率のみで説 明す ることは困難 であることが明 らか となった。 そ こで,本節 で は,重回帰モデル によ り本邦銀行 の信用 リスク を説 明す る変数 の選択 を行い,説 明変数 の 1つ
として レバ レッジ比率が有用であるかについて 検証す る。
離散選択 (順序回帰)モデルがデー タの変動 を どの程度 良 く説 明す るかを表す指標 である。離散選択モデル は最尤 推定法 を用 いて推定 され るので,対数尤度 関数 がモデル適合度 の指標 にな るO疑似決定係数 は,[0,1]区間の値 を と り,大 きい値 ほ ど適合度 が高い。従 って疑似決定係数の大小 を通 じて,同 じデー タ,同 じ選択集合 を持つ複数のモ デルの適合度 を比較す るこ ともできる。 しか し,疑似決定係数 は数値 がかな り低 めに出るため,最小二乗法の決定 係数 とは直接比較で きない点に留意す る必要 がある。 なお,順序 回帰モデル では,疑似決 定係数 が0.2で も十分 に 高い適合度 を表す。
グ ローバル 金 融危機 後 の レバ レッジ比 率 に よる リス ク管 理 73
表
8
重回帰分析 (ステ ップワイズ法)による変数選択 第1段 階 :説明変数4個区分 説 明変数 符 号の向き 係数標 準化されていない係数(B) 標 準偏差 標 準化係数ベータ r値 有意確率 VⅠF (定数) 0.014 2.947 0.005 0.996
規模 自己資本
‑
‑1.070 0.153 ‑0.335‑7.000 0̲000*** 1.001 安全性 レバレッジ比率+
8ー217 1.718 0.740 4.781 0.000***10.459自己資本比率
‑
25,258 ll.57 0.338 2.183 0.030** 10.473第2段 階 :説明変数3個
区分 説 明変数 符号の向き 係数標 準化されていない係数(B) 標 準偏差 標 準化係数ベータ r値 有意確 率 VⅠF (定数) 5.995 1.092 5.489 0̲000*** 規模 自己資本 ‑ ‑1.057 0.154 ‑0.331‑6.877 0.000*** 1.000 安全性 レバレッジ比率 + 4.653 0.540 0.419 8.620 0.000*** 1.018
辛:10%有意,**:5%有意,***:1%有意 重 回帰分析 の, 目的変数 として,R&Ⅰの信 用 格付 をス コア化 した数値 を使用 し,また,説 明 変数 として,表7の規模指標 ,安全性指標 ,収 益性指標 の3つの指標 区分 に分類 され る各3個 の代表 的 な指標 (レバ レッジ比率 を含 む。) 計 9個 か ら,ステ ップ ワイズ法 によ り変数選択 を 行 う。 なお, レバ レッジ比率の特性 を考慮 し, 同比率 を安全性指標 に分類す る。
財務 指標 デー タ と して,2.1節 お よび2.2節 で 使用 した もの と同 じ財務デー タベースを活用 し, 2002年3月末〜2009年3月末 までの年次デー タ を利 用 した。 信用格付デー タ として,R&Ⅰの格 付デー タを利 用 し,R&Ⅰの信用格付 が付 与 され てい る銀行 お よび年度 のみ を対象 として,表5 の格付 区分 1に従 うもの とす る。 なお,財務指 標データと格付データの両方 とも揃 っているデー
タ件数 は延べ285件 で ある。
最初 に,表7の財務指標9個 を説 明変数 とし, ステ ップ ワイ ズ法 に よ り'重回帰分析 を行 った と ころ,表8上表 (第1段階) の4個 の財務指標 が抽 出 され た。 しか し, 「自己資本 比率」の符
号の向きが逆 であることか ら, この指標 を除外 し,更 に残 った3個 の財務指標 を説 明変数 とし て重 回帰分析 を行 った ところ,表8下表 (第2 段 階) の通 り符号の逆転 は解 消 され た。
また,一般 にVIF (分散拡 大係数 ) が10を超 える と多重共線性 が疑 われ るが,表8下表 の3 個 の説 明変数 のVIFは何れ も1程度 であるので, 多重線形性 の可能性 は低 い とい える。 この他 , 選択 され た3個 の財務指標 の標 準化偏残差 の散 布 図 :図6を見 る と,外れ値 は少 ない。
なお,順序 ロジ ッ トモデル に選択 した3個 の 変数 を投入 して分析 す る と (表9参照),係 数 の符号 の向きは全 て正 しく出力 され た。 また, 変数 の説 明力 を表 すMcFaddenの疑似 決 定係 数 は0.112とな り,2.2節 の0.073よ り大 き く向上 し
た。
最終的 に選択 され た3つ の財務指標 は,規模 指標 ,安全性指標 ,お よび収益性指標 の各 区分 か ら1つずつ選択 され,バ ランスの とれ た組み 合 わせ となった。 しか も, この中には レバ レッ ジ比率が選択 されてお り, レバ レッジ比率が銀
格付スコア
C ,V やZI B息
自己資本
0
oQ0.〇
?
00
..〇
〇〇 o
0o
レバ レッジ成長率
∫l一.ヰ書
J.+
,OrIIJ00000
‑DDI 0O1 003 【105
総資産 当期 利益率
図6 標準化偏残差の散布図
表
9
順序 ロジ ッ ト分析 による確認結果 McFaddenの疑似決 定係 数 0.112係 数 (B) 標 準誤差 Wal° 有意確 率 しきい値 [格付 区分1=2] ‑9.942 1.356 53.74 0.000*** [格付 区分1=3] ‑8.277 1.316 39.567 0.000*** [格付 区分1=4] ‑6.164 1.278 23.269 0.000*** [格付 区分1=5] ‑5.203 1.265 16.913 0.000*** [格付 区分1=6] ‑3.86 1.252 9.514 0.002*** [格付 区分1=7] ‑2.875 1.251 5.286 0.021** [格付 区分1=8] ‑1.491 1.280 1.358 0.244 位置 レバ レッジ比率 0.154 0.019 67.468 0.000***
自己資本 ‑1.574 0.234 45.201 0.000*** 総資産 当期利 益 率 ‑76.52 17.524 19.066 0.000***
*:10%有 意 ,**
:
5%
有 意 ,***:1 %
有 意グローバル金融危機後の レバ レッジ比率による リスク管理 75
行 の信用 リスクを表す重要な指標 であるとい う 結果が得 られた。 よって,他 の財務指標 との組 み合 わせ で, レバ レッジ比率単独 の場合 よ りも 説明力 を向上 させ ることが可能であると考 え ら れ る。
3.
おわ りに本研究の分析結果 よ り,本邦金融機 関の レバ レッジ比率 による金融規制 ・監督 に関 して,吹 の通 り纏 めることができる。
・銀行 に関 しては, レバ レッジ成長率 と資産価 格成長率 との間に明確 な依存関係 は見 られ な い。 また, 信用 リスクを レバ レッジ比率のみ で説 明す ることは難 しいが,他 の財務指標 と の組み合わせ で, レバ レッジ比率単独 の場合 よ りも説明力を向上 させ ることが可能である。
・保険会社 に関 しては, レバ レッジ成長率 と資 産価値成長率 との間に若干 の正の依存関係 が 見 られ る。 また,信用 リスクを レバ レッジ比 率のみで説 明す ることは銀行同様 に難 しい。
・証券会社 に関 しては, レバ レッジ成長率 と資 産価値成長率 との間に正の依存 関係 が見 られ る。 また,信用格付 とレバ レッジ比率には, 相応 の負 の依存関係 がある。す なわち,資産 サイ ド,負債サイ ドとも実質的に時価評価 さ れ るバ ランスシー トの構成 のため, レバ レッ ジ比率の水準お よび成長率 をモニタ リング し て,上限を課す ことは, リスクの潜在的な増 嵩を早期 に警戒 し,機動的に制御す る上で一 定の有効性があると考 え られ る。
この他,資産 と負債 の満期 のズ レによって生 じる資金繰 りリスクについては, レバ レッジ比 率では捕捉できないため,当該 リスクを調整 し た レバ レッジ指標 の開発 が今後の課題 である。
参考文献
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jp/jpn/
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