研 究 ノ ー ト
中 国 に お け る環 境 会 計 の あ り方 に 関 す る一 考 察 一CRS会 計 との統 合 を 中心 と して 一
張 本 越 柳 田 仁
は じ め に
中 国 の 「環 境 問題 」 が 一 般 に認 識 され て か らま だ 十 年 も経 たず 、 そ れ 以 前 は環 境 汚 染 ・公 害 問題 が 考 慮 され て い な か った 。1995年 に 当時 の 国 家 環 境 保 護 総 局局 長 で あ っ た 曲格 平 氏 が初 め て発 表 した 見 解 、 い わ ゆ る環 境 意識 は地 球 環 境 問題 時 代 に対 応 す る もの で あ った 。 しか し、 中 国 は こ の点 に お い て他 国 に 遅 れ を 取 っ て い る。 国 民 と政 府 の 間 に は 、 問題 意 識 ・原 因 意 識 ・保 護 意 識 に雲 泥 の 差 が あ る とい っ て も過 言 で は な い。
中 国政 府 は科 学 的発 展 観 とい う戦 略 を打 ち出 して い る。 そ して 、 そ の利 害 を 国 民 に 正確 に伝 え るた め に 、 環 境 情 報 開 示 を行 う上 で 、 環 境 会 計 ・CSR (CorporateSocialResponsibilityの 略 称 、 以 下 同)会 計 とい うツー ル を活 用 す る こ とは、 環 境 意 識 ・倫 理 感 を向 上 させ 、 よ り適 切 な 意 思 決 定 を行 うた め に 有 効 な手 法 で あ る と考 え る。 この こ とは 中国 政 府 が 十 分 に認 識 しな けれ ば な らな い こ とで あ ろ う。 本 稿 で は 中国 に お け る環 境 会 計 の今 後 の 展 望 、 及 び 環 境 会 計 とCSR会 計 との統 合 を検 討 す る。
第1章 中 国 に お け る 環 境 問 題 の 現 状 分 析
世 界 で人 口が最 も多 く、広 大 な 国 土 を持 っ 中 国 で は 、 急 速 な 経 済 発 展 と と も に 、深 刻 な 環 境 問題 に直 面 して い る。 大 気 汚 染(酸 性 雨)1、水 質 汚 染 、 固体
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廃 棄 物(産 業廃 棄 物)に よ る汚 染 な ど、 典 型 的 な 公 害 問題 が 日本 の1960年 代 を 彷 彿 と させ る ほ ど深 刻 化 して い る。 水 源 枯 渇 、 耕 地 減 少 、砂 漠 化 な どの 自然 環 境 破 壊 も悪 化 の 一途 をた どっ て い る。
1.環 境 問 題 の 深 刻 化
中 国 で は環 境 問題 にお け る 、 次 の よ うな新 しい傾 向 が発 生 して い る。
① 環 境 問題 が 「点 」か ら 「面 」に広 が っ て い る。 大 気 汚 染 に つ い て は、 二 酸化 硫 黄 が華 北 地 方 に集 中 し、 酸 性 雨 が 西 南 部 に集 中 して き て い る。 そ して 中 国 全 体 が水 不 足 に も か か わ らず 、水 質 汚 染 が深 刻 化 してい る。 潅 河 流域 、 遼 河 流 域 の水 質 汚 染 も依 然 と して 厳 しい ま ま で あ る。
② 都 市 部 の 環 境 問題 が顕 著 に な っ て い る。 中国都 市 部 に お け る 自家 用 自動 車 の急 増 に よ って 、 自動 車排 気 ガ ス に よる大 気 汚 染 が深 刻 化 して い る。 そ の 一 方 で、 都 市 生 活 ゴ ミとい う環 境 問題 も無 視 で き な くな っ て い る。 加 えて 、 都 市 の生 活 排 水 量 が 工業 廃 水 量 よ り多 くな っ て い る。
③ 最 近 の 中国 の 東 北 部 に あ る松 花 江 の 水 汚 染 をは じめ、 そ れ に よ る水 不 足 問題 はか な り深 刻 化 して い る。 これ に 関 連 して環 境 事 故 の 隠 蔽 工 作 が地 方 政 府 にお い て 問題 視 してい る た め 、環 境 情 報 の 開示 との問題 が顕 在 化 して い る。
④ 環 境 問題 は 中 心都 市 か ら農 村 部 へ 移 転 し、 農 村 部 の 環 境 問 題 が深 刻 化 し て い る。 農 薬 物 や 養 殖 場 の ごみ の 氾 濫 に よ る地 下 水 の汚 染 、 乱 伐 に よる森 林 の破 壊 、 放 牧 の不 十 分 な 規 制 に よ る農 耕 地 の減 少 や 砂 漠 化 が挙 げ られ る。
⑤ 「電 子 ゴ ミ」 も急 速 に増 加 して い る。2003年 中国 で 廃 棄 され た 五 種 目の 電 化 製 品 は(テ レ ビ・冷 蔵 庫 ・エ ア コ ン ・洗 濯 機 ・パ ソ コ ン)約2,800万 台 で 、 増 加 ペ ー ス は 「一般 ごみ の 三倍 」 と報 じ られ た。 加 えて海 外 か ら中国 に持 ち 込 ま れ る電 子 ゴ ミ も後 を絶 た な い。 さ らに 、 廃 棄 され た 電 子 ゴ ミの処 理 ・リ サ イ クル 技 術 の 開発 が 遅 れ て い るだ け で は な く、各 地 で 貴 重 金 属 の抽 出 に代 表 され る 「取 り捨 て 」 な どの違 法 処 理 の横 行 、環 境 汚 染 や 人 体 被 害 が続 出 し て い る とい うこ と もあ る。
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⑥ 中国 の 急 速 な経 済 成 長 に 伴 い エ ネ ル ギ ー 供 給 が非 常 に不 足 して い る。 推 計 に よ る と、 年 間 消 費 電 力 は 毎 年3,000万KWず つ 増 え て お り、 これ に対 応 す るに は毎 年 関 西 電 力 を一 つ 、 東 京 電 力 を二 年 で 一 つ 作 る必 要 が あ る とい う。
なお か つ 今 の 中 国 で は 、石 炭 に よ る火 力 発 電 が75%も あ り、 環 境 に 与 え る影 響 が懸 念 され る2。
以 上 の よ うに 中国 の 環 境 問題 は世 界 に注 目され て い るが 、 この件 に関 して は拙 稿 「中 国 に お け る環 境 保 全 政 策 の 一 考 察 」(本学 大 学 院 経 営 学研 究 科 『研 究 年 報 』 第6号 で論 じた の で 、 こ こで 割 愛 す る。
2.環 境 問 題 の 発 生 原 因
中 国 の環 境 問題 の 発 生 の原 因 は、 具 体 的 に は以 下 の よ うに な る。
(1)環 境 汚 染 の進 行
情 報化 が進 ん で い る今 日、政 府 の 環 境 状 況 の公 表 とマ ス コ ミの報 道 に よ る 大 気 ・水 質 ・廃 棄 物 の汚 染 、 自然 生 態 系 の破 壊 等 の 中国 環 境 問題 は 、 か な り 深 刻 な状 況 とな って い る こ とが 窺 え る。 しか し、広 大 な 国 土 で あ る こ と も あ
り、 我 々 が知 り うる の は 、氷 山の 一 角 で あ り、外 部 の 目に触 れ な い もの もか な りあ る。
特 に 、地 方 政 府 の 指 導 者 の 中 に は 、環 境 汚 染 の真 相 が 明 らか にな れ ば 、 経 済発 展 に障 害 に な り、 自分 の評 価 に も繋 が り出世 や 進 退 に影 響 す る た め 、 公 にな る こ とを嫌 うもの もい る。 しか しな が ら、現 実 に公 表 され て い る資 料 だ けで も、郷 鎮 企 業 の汚 染 で 見 られ る よ うに 、 目が行 き届 か な い農 村 部 や 地 方 都 市 を 中 心 に 、深 刻 な 汚染 が 進 行 して い る こ とが 十 分 に窺 え る3。
(2)資 金 不 足
国 内外 か らの環 境 保 護 事 業 に対 す る投 資 に も拘 らず 、広 大 な 国土 で 進 行 す る各 種 の環 境 汚 染 を食 い 止 め る に は 、 未 だ努 力 が 不 十 分 で あ る。 ま た 、 同 時 に限 られ た 資 金 を効 率 的 、 か つ 有 効 に 活 用 して い く金 融 シ ス テ ム な どの 仕 組 み の 創 設 も重 要 とな るa。
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(3)経 済 至 上 主 義 と地 方 保 護 主 義
経 済 上 の 地方 保 護 主義 の発 生 と企 業 等 の市 場 主 体 が 、 経 済 利 益 を追 求 す る 強 烈 な衝 動 は環=境管 理 者 の 意 思 決 定 を 曲 げ 、行 政 施 行 や 裁 判 に お い て厳 格 な 環 境 法 の軌 道 か ら外 れ て い る とい う実 態 が る。
(4)環 境 法 規 に 関 す る認 識 の 不 足
現 在 、 中 国 の 環 境 保 護 に 関す る法 律 は体 系 的 に形 成 され て は い るが 、そ の 管 理 レベ ル が か な り低 い た め 、 十 分 に機 能 して い な い。 「三 同 時 制 度 」や 「排 汚 費 制 度 」5は定 着 して い るが 、 「環 境 保 護 」 とい う認 識 は 、 国 民 の 間 に行 き 渡 っ て お らず 、 関係 管 理 職 員 自身 も 関連 法 規 を 十 分 に 理 解 して い な い た め 、 法 律 管 理 の レベ ル が低 い とい う問題 が 指 摘 で き る。
(5)環 境 保 全 意 識 の 低 さ
近 年 、 中 国 にお い て環 境 侵 害 に よ る抗議 とい う 「環 境 紛 争 」 が 各 地 で発 生 した 。 しか し、住 民 、特 に農 民 の環 境 保 全 の意 識 が 極 め て低 い た め、 住 民 運 動 や 環境 保 護 団 体 の結 成 とい う形 で 、 政府 や 企 業 に 対 して抗 議 行 動 をす る こ
とが わ ず か で あ る と言 え る。
(6)情 報 公 開 の 不 十 分
上 述 の 環 境 紛 争 は 、イ ン ター ネ ッ トの普 及 に よっ て 、 情 報 開示 を促 され る と考 え られ る。 中 国 の環 境 保 護 法 第11条 に よれ ば 、 定期 的 に 環 境 状 況 を公 表 す る と規 定 して い る に もか か わ らず 、環 境 に 関 わ る事 件 や 健 康 被 害 との報 道 が 少 な く、 極 め て情 報 が 限 られ て い る。 これ は 、 中 国政 府 の 報 道 規 制 が厳 し い こ とに 要 因 が あ る と考 え られ る。
(7)環 境 教 育 の欠 如
中 国で は これ ま で 、 国 土 は広 大 で 、 資 源 が豊 富 とい う 「地 大 物 博 」 愛 国 教 育 を行 っ て き て い る一 方 で 、 環 境 保 護 教 育 、即 ち 、環 境 を い か に大切 にす る か とい う教 育 が欠 如 して い る。 環 境 問題 とはい え 、 国 民 の 意 識 の 中で 、衛 生 問題 とい う認 識 に止 ま っ て い る と言 っ て も よい 。
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3.中 国 に お け る 環 境 問 題 へ の 取 り組 み
環 境 問題 の深刻 化 を 目の前 に して、 中 国政 府 は これ ま で何 に も して こなか っ た の か。 答 え は 、否 で あ る。 中国 で は 、 現在 ま で続 い て い る 高度 経 済 成 長 の 元 年 に あ た る1979年 に、 環 境 保 護 法(試 行)を 制 定 し、 環 境 保 護 へ 本 格 的 取 り 組 み を始 めて い る。 そ して現 在 で は 、 環 境 保 護 が人 口抑 制 とな らん で基 本 的
国策 の1つ と して位 置 付 け られ て い る。
(1)環 境 に係 わ る法 規 制 の 強 化
中 国 で は 、1972年 に ス トック ホル ム で 行 われ た 環 境 会 議 に 出席 した 中 国 政 府 代 表 団 が、初 め て環境 問題 の重 要性 を認 識 し、法 体 系 を急速 に整 備 して い っ た 。1979年 の 環 境 保 護 法(試 行)で は 、i環境 影 響 評 価 制 度 、 三 同時 制 度 、 汚 染 賦 課 金徴 収制 度 が 制 定 され た。 ま た 、1989年 の第3回 全 国環 境 保 護 会 議 で は 、 環 境 保 護 目標 の 責任 制 度 、 都 市 環 境 の 総 合 的 整 備 に 対 す る定 量 的 審 査 制 度 、 汚 染 物 質 の排 出 に対 す る 申告 登 記 及 び 許 可 証 制 度 、 汚 染 の集 中制 御 制 度 及 び 期 限 付 き汚 染 の処 理 制 度 が 提 出 され た 。 ま た 、 管 理 体 制 につ い て も 、1988年
以 来 、 国家 環 境 保 護 局 が 、 国 務 院 が 直 轄 す る独 立 的 な職 能機 関 とな って 、全 国 の 環 境 保 護 の行 政 管理 を行 っ てお り、 地 方 で の環 境 法整 備 も、む しろ 中央 を上 回 る水 準 で進 ん で い る。 近 年 は 、 環 境 白書 も発 行 され 、 情 報 公 開 に 向 け た 努 力 も積 極 的 に行 わ れ つ つ あ る。
こ こ で各 制 度 の 詳 細 は 、筆 者 は 「中 国 に お け る環 境 保 全 政 策 の 一 考 察 」 本 学 大 学 院 経 営 学 研 究 科 『研 究 年 報 』 第6号 で 論 じた 。 小 論 で述 べ た よ うに 、 中 国 は決 して 環 境 問 題 を放 任 して きた わ けで は な い とい うこ とが 、 以 上 よ り 理 解 で き るで あ ろ う。
(2)持 続 可 能 な発 展 の た め の科 学 的 発 展 観
建 国 か ら1973年 ま で の 間 、 中 国 に は 専 門 の 環 境 保 全 機i構や 関係 法 規 が 存 在 しな か っ た。 環境 汚 染 が全 国 的 規模 で加 速 、悪 化 し始 め た の は 、 大 躍 進 期 と 文化 大 革 命 期 で 、経 済 合 理 性 や 科 学 技 術 、 自然 環境 を無 視 した 工 業 生産 、農 地 開 拓 な どに よ っ て都 市 、農 村 と もに 環 境 問題 が進 行 した。
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しか し、 経 済 効 率 や 技 術 、 品 質 をAI711Jl¥¥視した活 動 は 使 い物 に な らな い鉄 を大 量 生 産 し、 資源 や 労働 力 を浪 費 した だ け で は な く、 農 業 、軽 工 業 に大 きな 打 撃 を与 えた。 ま た 、鉱 物 資 源 の無 計 画 な採 掘 や 燃 料 用 の樹 木 伐 採 に よ り、 自 然 環 境 も著 し く破 壊 され た 。
文 化 大革 命 は 、政 治 的 熱 狂 が理 性 を放 逐 し、 むや み に 工業 生 産 の 数値 ば か りを 追 求 して 質 ・効 率 を軽 視 した た め 、 エ ネ ル ギー ・資源 の 浪 費 を一 層 促 し、
環 境 汚 染 に拍 車 を か け た 。
ま た 、 冷 戦 時 代 に は 、 企 業 を内 陸部 に移 転 させ た 「三 線 建 設 」6では 、 大 量 の 有 害 物 質 を排 出す る工 場 が 山 間部 な どで 操 業 され 、 も と も とあっ た豊 か な 自然 環 境 を汚 染 ・破 壊 した 。 更 に 、 都 市 部 で は 「消 費 都 市 を 生 産 都 市 に か え る」とい うス ロー ガ ンが 掲 げ られ 、 北 京 を は じめ 、 重 度 汚 染 型 工 業 が建 設 さ れ た た め 、都 市 の 生 活 環 境 を著 し く損 ね た 。 農 林 業 、 牧 畜 業 、漁 業 で の無 計 画 な 森 林 伐 採 、 開 拓 、 乱獲 な どに よ る生態 系破 壊 は 言 うま で もな い。
中国 の文 化 大 革 命 後 、第 二 代 目の 中 国 の 指 導 部 で あ る郵 小 平 時代 が誕 生 し た。 そ の 時 代 は 、 経 済 や 技 術 の 大 幅 な遅 れ を実感 し、 改 革 開 放 政 策 を打 ち 出
した 。 経 済 最 優 先 の路 線 で 、特 に 「黒 猫 白猫 関係 な く、 ネ ズ ミを掴 めば い い 猫 だ とい う 「猫 論 」」の 指 導 の 下 で 、 経 済 大 躍 進 が 世 界 に 注 目 され た。 外 国 資 本 の誘 致 とい う、効 果 が 否 定 で きな い反 面 、環 境 負 荷 大 きい 産 業 が 中国 に負 担 を か け た とい う実 例 が 多 くな っ て い る。 先 進 国 の 「先 発 展 、 後 環 境 整 備 」 (先 に発 展 した後 に 環 境 整 備)と い う教 訓 が 中国 に警 鐘 を鳴 ら してい た。
大 量 生 産 、 大 量 廃 棄 、 大 量 消 費 とい う方 式 に は 、 賛 同 しな い が 当然 の こ と と され た 。 しか し、世 界 各 国 の 共 通 課 題 と して 「環 境 問題 」 に 中 国 で も取 り 組 ん で い た に もか か わ らず 、 事 実 上 江 沢 民 時 代 の13年 間 に は 、 そ の ま ま郵 小 平 の 「高 度 成 長 路 線 」 を歩 み 続 け て い た の で あ る。 よ うや く1998年 、 長 江 大 洪 水 に 見舞 わ れ 、森 林 乱 伐 が原 因 と認 め られ た こ とに よ っ て 、 第 三 代 目の 江 沢 民 時 代 に環 境 問 題 とい う課 題 を認 識 し始 め る こ とにな っ た とい え る。
第 四代 目の指 導 部 で あ る胡 錦 濤 政 権 が誕 生 した途 端 、SARS問 題 の衝 撃 224国 際経営論集Na.312006
を受 け て 、環 境 意 識 の 向上 が な され た 。 そ して 、 情 報 公 開 の 不 十 分 さが 原 因 で 、 「有 望 」 な 人 事 で あ った 北 京 市 市 長 、 衛 生 部 部 長 な ど高 官 達 が や む な く され た 更 迭 は 異 例 で は あ るが 、 情 報 重 視 、 情 報 公 開 の新 た な試 練 に も迫 られ た の で あ る。 「人 」、 「思想 」、 「考 え方 」とい う問題 を 無 視 で き な い た め 、 そ こ で 、 初 め て 「科 学 的 発 展 観 」と名 づ け た新 た な 指 導 思 想 を打 ち 出 し、 「人 民 の た め の 政 治 」とい う施 政 方 針 を 揚 げ る 「胡 氏 政 権 」 が 約 一 年 半 の 実 績 を踏 ま え 、理 論 面 で も独 自色 を打 ち 出 し始 め た動 き と して 注 目 され る。
(3)科 学 的発 展 観 の意 義
2004年3.月 に 中国 中央 人 口環境 の座 談 会 で 胡 錦 涛 国家 主席 が 「科 学 的 発 展 観 」 とい う重 要 な思 想 を打 ち 出 した。 これ は 中 国 で は新 た な 経 済 発 展 の 方 針 で あ り、 胡 錦 涛 政 権 の新 しい 指 導 思 想 で あ る。
「科 学 的 発 展観 」 とは 、経 済成 長 の み を追 求 せ ず 、 科 学 的 な観 点 か ら、G DPの 数 字 に反 映 され な い部 分 、つ ま り、 人 を主 体 と した 立 場(以 人 為 本) か ら、社 会 全 体 の持 続 的 な均 衡 発 展 を 目指 す とい う考 え方 で あ る。 即 ち 、 科 学 的 な発 展 は 、 「あ くま で 人 を根 本 と して 、 全 面 的 な 、 協 調 す る、 持 続 可 能 な発 展 観 を樹 立 し、 経 済 ・社 会 と人 の 全 面 的 な 発 展 を促 進 す る 」 と し、 ① 都 市 と農 村 の発 展 の全 般 的 配 慮 、② 区域 発 展 の全 般 的 配 慮 、 ③ 経 済 と社 会 の発 展 の 全 般 的 配 慮 、④ 人 と 自然 の調 和 の とれ た発 展 の全 般 的 配 慮 、⑤ 国 内 の発 展 と対 外 開放 の要 求 の 全 般 的 配 慮 とい う 「5つ の全 般 的 配 慮 」 を堅 持 す る こ
とを 打 ち 出 し て い る7。 科 学 的発 展 観 は過 去 の 経 済 発 展 路 線 を 是 正 した 、 中 国版 の持 続 可 能 な肇 展 戦 略 で あ る とい え る。 これ を契 機 に科 学 的発 展 観 の本 格 的 な キ ャ ンペ ー ン と学 習 活 動 が始 ま っ た。
科 学 的発 展 観 の提 起 は、 胡 錦 涛 体 制 の独 自性 と威 信 の確 立 を 目指 す と と も に、 大 局 的 に はす で に 中国 が 経 済 発 展 至 上 主義 で はや っ て い け な くな っ て い る こ とを も示 して い る。 中 国 は 、 毎 年 約10%の 高 い 経 済成 長 率 で発 展 しつ つ あ る が 、 そ の 反 面 、 国 内 にお け る貧 富 の格 差 や エ ネ ル ギ ー 問題 、地 域 経 済 の 格 差 、環 境 問題 な どの 国 内 の 構 造 調 整 問題 も深 刻 化 して い る。 科 学 的発 展 観
中国における環境会計のあ り方に関する225
は、 経 済 成 長 と環 境 保 全 や 社 会 的安 定 性 のバ ラ ンス を取 るた め の新 しい 政 策 指針 で あ り、 持 続 的経 済 成 長 を 目指 そ うと して い る。
周 知 の よ うに 、今 日で は 、環 境 問題 、 地 球 環 境 問 題 は 経 済 学 領 域 にお い て も重 要 課 題 で あ る。 特 に 、環 境 問題 を会 計 の領 域 に取 り入 れ て 、新 しい会 計 学 を構 築 しよ うとす る場 合 、 ま ず 重 視 しな けれ ば な らな い の は 、環 境 問題 の 経 営 経 済 学 的 ア プ ロー チ の策 定 で あ る。
第2章 中 国 に お け る 環 境 会 計 の 展 開
従 来 、 中 国 の企 業 会 計 制 度 は 、 旧 ソ連 を は じめ とす る社 会 主 義 会 計 の 体 系 に含 まれ 、 資本 主 義 諸 国 の 会 計 研 究者 には ほ とん ど関心 が もた れ て い な か っ た。1978年 末 か らの 経 済 改 革 の た め に行 わ れ て き た会 計 制 度 改 革 は 、 この よ
うな状 況 を一 変 させ た。
1.中 国 に お け る 会 計 の 変 遷 (1)中 国 の会 計 シス テ ム の 沿 革
中 国 の 会 計 シ ス テ ム は 、 改革 開 放 の進 展 に した が っ て 、 中国 に特 色 あ る会 計 シ ステ ム を構 築 した。 それ ま で に 中 国 の会 計 制 度 は 、3度 改 革 が行 われ た。
①1985年 に 「中外 合 資 経 営 企 業 会 計 制 度 」の 公 布 、 翌 年 「外 商 投 資 企 業 会 計 制 度 」を公 布 ・実 施 した。 中 国 の 伝 統 的 な会 計 制 度 の も とで 、 三段 平衡 式 の 資 金 平 衡 表 を改 革 した こ とは 、外 資 の経 営 管 理 に 対 す る会 計 情 報 の需 要 を満 た す だ け で は な く、 国 際 会 計 慣 行 に も調 和 させ る こ とに あ っ た 。
② 企 業 制 度 の 改 革 に した が っ て 、企 業 の 株 式 化 ブ ー ム に 沿 っ て、 深 別 ・上 海 証 券 取 引所 の 開設 や 、 一 部 の企 業 が 香 港 、 ニ ュー ヨー クな どへ の 国際 証 券 市 場 の 上 場 に よ っ て 、1993年 に 「株 式 制 試 点 企 業 会 計 制 度 」8を制 定 した 。 同 時 に 、 「両則 」・「両 制 」9を中心 に 会 計 制 度 改 革 した。 これ に よ っ て 、 中 国40余 年 の計 画 経 済 の 基 礎 で作 り上 げ た 会 計 シス テ ム を結 束 し、 現 代 的 な会 計 シ ス テ ムへ 転 換 を可 能 と した 。
226国 際経営論集No.312006
③1997年 の ア ジ ア金 融 危 機 が 契機 とな り、 会 計 情 報 の透 明度 に各 国 が 注 目 した。2000年 に 「企 業 会 計 制 度 」(2001年1月1日 に 実 施)を 改 正 し、 会 計 要 素 の 定 義 、資 産 、 負 債 及 び収 入 等 の会 計 要 素 の 確 認 、 測 定 、財 務 報 告 シ ス テ ム な どの会 計 基 準 を公 布 した 。 これ らの 改 革 は 国 際会 計慣 行 の 一 致 や 調 和 な ど を促 進 した。
近年 、 中 国 の会 計 研 究 にお い て は 、社 会 関連 会 計 を は じめ 、社 会 責任 会 計 、 人 的 資 源 会 計 、 と りわ け環 境 会 計 に 関 す る研 究 が 目立 っ よ うに な っ て きて い
る。 そ の所 以 は 中 国 の 改革 開放 に した が っ て 、対 外 の 学 術 交 流 や 、特 に海 外 か らの著 しい 理 論 の 導入 の 影 響 が考 え られ る。
(2)中 国 の 企 業 会 計 制 度 の特 徴
上 述 した よ うに 中国 企 業 会 計 制 度 は 、1993年 よ り大 き く転 換 して き て い る。
これ らの企 業 会 計 制 度 にお け る特 徴 を考 え て み よ う。
中 国 企 業 会 計 制度 の特 徴 の ひ とつ は 、 資 本 会 計 に あ る。 「企 業 会 計 準 則 」 の第5章 所 有 者 持 分 の 第39条 に は 「国家 が 企 業 に拠 出 す る専 用拠 出 金 は 、 別 途 規 定 が あ る もの を 除 き 、 国家 投 資 と して記 帳 しな けれ ば な らな い 」 と して い る。 ま た 同第40条 「資本 準 備 金 は 、株 式 資 本 剰 余 金 、法 定 財 産 再 評 価 益 、 寄付 受 入 に よ る資 産 価 値 等 を含 む 」 と して 、 再 評 価 剰 余金 と贈 与剰 余 金 を 資 本 準備 金 に組 み 込 ん で い る。
も うひ とつ の 特 徴 は 、利 潤 分 配 の順 序 が 明記 され て お り、公 益 金 の積 立 て が投 資 者 へ の 分 配 の前 に きて い る こ とで あ る。 「企 業 財 務 通 則 」 第32条 で は 、
「企 業 の利 益 は 国 家 の 規 定 に 基 づ い て相 応 な調 整 を して か ら、 法 律 に基 づ い て所 得 税 を納 付 す る。 所 得 税 を納 付 して か らの利 益 は 、 国 家 が別 途 規 定 した
もの を除 く」 とな っ て い る。
以 上 の こ とか ら、 資 本 主義 会 計 制 度 に 大 き く近 づ い て い た と され る 中 国 の 企業 会 計 制 度 もそ の資 本 会 計 の部 分 で 幾 つ か は社 会 主 義 的 要 素 を残 してお り、
一般 株 主 以 外 の 持 分 を認 識 す る可 能 性 が 考 え られ る10。
中国にお け る環境 会計 の あ り方 に関す る227
(3)中 国 の 会 計 新 潮 流
中 国 の 環 境 会 計 理 論 に 関す る最 初 の提 示 は 、1990年 代 初 頭 に 、葛 家 澄徽 授 の 論 文 に よ っ て な され た11。そ れ を契 機 と して 、 環 境 会 計 は 、 中 国 の会 計 理 論 研 究 会 で 反 響 を 呼 ん だ 。 環 境 会 計 の研 究 に つ い て 、 中 国 は 遅 れ て い る。 こ の 研 究 領 域 に対 して 一 層 成 果 を 向 上 させ るた め に、 会 計 の 学者 ・研 究者 ・実 務 家 、 そ して そ の 関係 者 らが共 同 して 努 力 して い くこ とが必 要 で あ る。
筆 者 は 中 国 の 主 な会 計 月 刊 誌 で 掲 載 され た 国 内研 究 文 献 を検 索 した結 果 、 2003年12,月 ま で に 、 中国 国 内 で 発 表 され た 、 環 境 会 計 に 関 す る205部 の 文 献 の 存在 を確 認 して い る。 そ の 内 訳 を 、概 述 して お く。 環 境 会 計 の 基本 的理 論 研 究 と理 論 の 紹 介 等 の 文 献 は 多 く、 両者 あ わ せ て113部 で 、 文 献 総 数 の55%
を 占 めて い る。 ま た 、環 境 会 計 の 生 成 と発 展 や 、 環 境 会 計 の計 算 体系 お よび 環 境 情 報 の 開示 な どに 関 心 が 強 い とい う傾 向 が あ る。 しか しな が ら、海 外 の 環 境 会 計 の実 務 と中 国 の実 情 を 結合 し、企 業 環 境 会 計 の側 面 か ら、環 境 会 計 の実 務 的 方 法 に ま で 論 及 した文 献 は 、残 念 な が ら見 当た らな い 。
2.中 国 の 環 境 会 計 情 報 開 示 に 関 す る 諸 規 制
中 国 で は 、 環 境 会 計 の研 究 ・進 行 に伴 っ て 、 環 境 会 計 情 報 の 開 示 に 関す る 規 制 され て い る。 こ こで は 、 一般 企 業 と上 場 企 業 に対 して 関連 規 制 を検 討 す
る こ と とす る。
(1)一 般 企 業 の 環 境 情 報 開 示 の 規 制
「中華 人 民共 和 国 清 潔 生 産促 進 法 」(以 下 、 清 潔 生 産 促 進 法 と略 す)に 基 づ い て 、2003年9月 に 、 国家 環 境 保 護 総 局 が 企 業 の 環 境 情 報 開示 をす る よ うに 通 達 した 。 この 通 達 は各 省(自 治 区 ・直 轄 市)の 環 境 保 護 部 門 は 「清 潔 生 産 促 進 法 」の規 定 に沿 っ て 、 自主 的 に メデ ィ ア で 定 期 的 に 汚 染 物 や 、 汚 染 物 の 排 出 総 量 の 規 定 や 、 そ れ を超 え た厳 重 汚 染 企 業 の リス ト(ブラ ック リス ト)な どを 開 示 す る よ う指 示 す る こ とで あ る。 ブ ラ ッ ク リス トに載 った企 業 は 、 この 通 達 に よっ て 、2003年10月 末 ま で に 、2003年 上 半期 の 環 境 情 報 、 そ して2004年
228国 際経営論集No.312006
か ら毎年3月31日 ま で前 年 度 の環 境 情 報 を 開示 す る こ と とな る。
上 述 した 規 定 は 強 制 的 な環 境 情 報 開 示 と 自主 的 な環 境 情 報 開示 とに分 け ら れ る が 、 前者 の強 制 的環 境 情 報 開 示 で は 、 内 容 の 真 実性 、 正 確 性 と、 内容 に 関 連 した3年 以 上 連続 性 の あ るデ ー タ が要 求 され る。
(2)上 場 企 業 の 環 境 情 報 開 示 に関 す る規 制
中 国 の 環境 保 護 法規 制 の 強 化 や 、 国 民 の環 境 保 護 へ の 関 心 が 高 ま る に した が っ て 、 中国 国 内 の 証 券 取 引 に も影 響 が及 ぼ され て い る。1997年 に 中 国証 券 監 督 委 員 会(以 下 、 証 監 会 と略 す)が 「株 式 発 行 の 企 業 に 関 す る情 報 開 示 の 内 容 と格 式 準 則 第1号[株 発 行 の 説 明 書 の 内 容 及 び 格 式]の 通 達 」の 中 に 「株 発 行 の説 明 書 の 本 文 に お け る リス ク 要 因 とそ の対 策 」 につ い て の 規 定 を公 表 し た。 それ は発 行 人 の所 在 業 界 の特 徴 、趨 勢 の 中 に業 界 の競 争 状 況 、 特 に環 境 保護 要 因 の け ん 制 や 自然 資源 の依 頼 度 な どを含 めて 公 表 す る こ とを 要 求 して い る。 さ らに、1999年 に証 監 会 は 「株 式 発 行 企 業 の 情 報 開示 の 内容 お よび 格 式 準 則 第 六 号[法 律 意 見 書 の 内容 と格 式](修 正)に つ い て の 通 達 」 の 中で 「発 行 人 の重 大 な 債 権 ・債 務 関係 」 を規 定 した 。
そ して2003年 に 国 家 環 境 保 護 総 局 が 「上 場 企 業 の 申請 や 上 場 企 業 の 再 融 資 の 申 請 に 関 す る環 境 監 査 につ い て の 通 達 」 を公 表 した(環 獲[2003]101号)。
そ の 中 に 冶 金 、 石 油化 学 な ど13重 度 汚 染 業 界 を 暫 定 した'2。申請 企 業 が30日 (勤務 日)以 内 に環 境 保 護 管 理 部 門 の 監 査 を受 け 、 そ の 結 果 、 国 家 環 境 保 護 総 局 のHPで10日(勤 務 日)間 公 表 し、 公 示 の状 況 に あわ せ て 、 最 終 の 監 査 結 果 を中 国 証 監 会 に通 報 す る。 同 通 達 は 、汚 染 業 界 に お け る上 場 企 業 の 環 境 法 規 制 の 遵 守 や 、 上 場 企 業 の環 境 汚 染 に よ る投 資 リス クの 回 避 、社 会 資 金 調 達 の 投 資 方 向 の統 制 な ど、重 要 な役 割 を果 た して い る。
世 界 が 中 国 の 環 境 問題 を重 視 しつ つ あ る状 況 の 下 で 、ISO14000シ リー ズ を実 施 す る こ とや 、WTOの 加 盟 に よ っ て 、 そ して 中 国企 業 の 国 際 化 の進 展 に伴 っ て 、 環 境 会 計 の研 究 が必 要 とな る。 そ の際 、 先 進 国 の 経 験 を参 考 に し、 早急 に 中国 の 実情 に適 合 す る環 境 会 計 制 度 を設 置す べ きで あ る。 そ して 、
中国における環境会計のあ り方 に関する229
先 進 国 の 経 験 ・実 務 を 中 国 に 導 入 し、 活 用 す る こ とは 、 非 常 に重 要 な こ とな の で あ る。
第3章 環 境 会 計 とCSR会 計 と の 統 合
中国 の 環 境 問題 が 深 刻 化 して い る今 日、 資 源 の浪 費 、 設備 の陳 腐 、環 境 意 識 の欠 乏 、非 効 率 的 開 発 な どは 、WTOの 加 盟 、会 計 国 際 化 とい う潮 流 に適 合 しない。 そ れ に 中 国の持 続 可能 な発 展 戦略 に も合 致 しな い とい う状 況 とな っ
て い る。 この状 況 を改 善 す るた め に 、環 境 会 計 を推 進 し、 そ して 国家 環 境 保 護 総 局 ・財 政 部 を は じめ 、 関連 の機 構 が 連 合 し、 早 急 に環 境 会 計 の フ レー ム ワー ク を確 定 し、環 境 会 計 ガ イ ドライ ン導 入 に 関 して検 討 す べ き で あ る と筆 者 は 考 え る。
1.現 行 の 環 境 会 計 の 改 革
多 くの 国 が 「先 に発 展 した後 に環 境 整 備 」 とい う過 程 を経 験 した。 しか し、
それ で は 環 境 回 復 コス トが 環 境 予 防 コス トよ りは るか に 高 くな る。 中 国 で は そ の経 験 を参 考 に し、持 続 可 能 な発 展 戦 略 に 沿 って 、 環 境 と経 済 発 展 を有 効 に配 慮 す る環境 会 計 を認 識 す るべ きで あ る。
環 境 会 計 の 実 行 に よっ て 、 企 業 の 環 境 汚 染 を 防止 し、 汚 染 対 策 へ の積 極 的 な取 り組 み を促 す こ とが で き る。 まず マ ク ロの 面 に お い て 、 中 国 の伝 統 的 な 企 業 の発 展 モ ー ドは 高投 入 ・低 産 出 で 、高 い汚 染 で低 い 効 率 の モ ー ドで あ る。
これ らは持 続 可 能 な 発 展 戦 略 とは相 反 す る こ とで あ る。 正確 に企 業 の環 境 問 題 へ の 貢 献 を計 算 し、 企 業 に お け る環 境 保 護 に 関す る費 用 ・収 益 ・資 産 と負 債 を 考慮 しな けれ ば な らな い。 次 に ミク ロの 面 にお い て 、環 境 会 計 の実 施 は 企 業 の競 争 力 の強 化 に対 し必 要 な こ とで あ る。 企 業 に とっ て 、 ク リー ン な製 品 を 開発 す るだ け で は な く、環 境 保 護 対 策 の公 表 に よ るイ メ ー ジ 向上 や 、 環 境 効 果 の 計 算 をす る こ とで 企 業 の意 思 決 定 に も有 益 で あ る。
230国 際 経 営 論 集No.312006
2.環 境 会 計 とCSR会 計 と の 統 合 (1)CSRの 意 義 とそ の 背 景
企 業 の 社 会 的 責 任(CSR)と い う概 念 は 、 新 しい 概 念 で は な い 。 こ の概 念 は 、 日本 で は 、1960年 代 に お け る産 業 公 害 に対 す る企 業 不 信 か ら生 じ、70年 代 の第2次 オ イ ル シ ョ ック後 、企 業 の利 益 至 上 主 義 へ の批 判 、80年 代 の バ ブ ル 拡 大 、90年 代 バ ブル 崩 壊 と、 地 球 環 境 問 題 とい った 問 題 と関連 して い る も の で あ る。 こ の 間 、企 業 の 社 会 的 責任 とい う問題 は 世 間 に 注 目 され 続 けて き た も の で あ る。 従 来 の い わ ゆ る社 会 責任 会 計 は 、 企 業 の短 期 的 な利 益 追 求 に か か わ る弊 害 を強 調 す る と共 に 、公 害排 除 、社 会 貢 献 に 関す る諸 側 面 を視 野 に入 れ た 会 計 で あ る。
こ の数 年 、 エ ン ロ ン事 件 に代 表 され る よ うな 法令 違 反 に よ って 社 会 的 責 任 が 問題 視 され る よ うに な り、 日本 に お い て も社 会 法 令 違 反 と企 業 倫 理 の 問 題 を惹 起 した。 中 国 にお い て も、 ミル ク偽 装 事 件 な ど、 「企 業 に お け る倫 理 」 が 問 われ る よ うに な っ た の で あ る。 こ う した企 業 活 動 に 、社 会 的 公 正 性 や 倫 理 、環 境 へ の 配 慮 を取 り入 れ 、 ス テ ー ク ホル ダー に対 し、倫 理 的 に 責任 あ る 行 動 を と るべ き とい う社 会 責 任 の 考 え方(CSR)が 、 再 び登 場 して き た。 今
日、CSR経 営 、CSR会 計 とい っ た 用 語 を無 視 して 企 業 経 営 は 語 れ な い。
企 業倫 理 を無 視 した こ とに よっ て発 生 す る不 祥 事 が頻 発 して い る こ とを背 景 に 、 当該 企 業 の社 会 的責任 とは何 か を、 ど う捉 えて ど う行 動 し、様 々 な ステ ー クホ ル ダー と、 い か に対 話 して い い の か とい っ たCSRへ の 取 り組 み が事 業 者 にお い て活 発 化 して い る13。
(2)CSRの 本 質
企 業 の社 会 的 責任(CSR)の 定 義 は 、今 日通 説 的 な もの は な く、 時 代 と共 に進 化 す る も の で あ る19。こ こで 、 現 時 点 に お け る各 団 体 か ら発 行 され た各 種 報 告 書 ・書 籍 な どか ら以 下 の よ うにCSRを 定 義 づ け て うる。
「・CSRと は、 さま ざまな ステ ー クホル ダー を視 野 に 入 れ なが ら企 業 と社 会 の利 益 を高 い次 元 で調 和 させ 、 企 業 と社 会 の相 乗 効 果 を図 る経 営 のあ り方
中国における環境会計のあ り方に関す る231
・CSRと は 事 業 の社 会 的 な位 置 づ け を原 点 に 立 ち 返 っ て確 認 す る こ と、 即 ち経 営 理 念 の 実 現 に あ る。'5」
今 日に議 論 され て い るCSRは 主 に経 営 倫 理 の側 面 と社 会 的 責任 投 資(Soci allyResponsibleInvestment,SRI)の 側 面 が 挙 げ られ る。 経 営 倫 理 を 企 業 の 実 際 の行 動 に移 す 側 面 、 即 ち企 業 が 実施 す る具 体 的 な社 会 的 責任 活 動 の側 面 が あ る と筆 者 は 考 え て い る。 い ず れ に して も、CSRは 、事 業 者 ご との経 営 理 念 の 中 に あ る と考 え るの で 、 それ に基 づ き 、実 施 して き た社 会 との 共 生 の あ り方 、行 動 そ の も の で あ る と考 え る。
また 、 中 国 はISO(国 際標 準 化 機 構)に お け るCSRの 規 格 化 に 関 して も、SAC(中 華 人 民 共 和 国 国 家 標 準化 機 構)を 中 心 に、 積 極 的 に取 り組 む 姿 勢 で あ る。 現 在 、 国 内 の検 討 委 員 会 を設 置 して 、 中国 の 視 点 か ら、 あ るべ き 規格 化 へ の道 を 探 っ て い る。
(3)環 境 会 計 とCSR会 計 との統 合
中国 は環 境 保 護 法 、 労 働 法 、 社 会 保 障 法 な ど、CSRに 関 す る法 制 は整 備 され て い る もの の 、執 行 面 で の 問題 や 、 法律 ・規 制 の 内容 が す ぐに変 更 され る 、法 の解 釈 が 地 方 政 府 に任 され て い るな ど、 法令 遵 守 に 関 わ る様 々 な 問題 が 指 摘 され て い る。 これ らを解 決 す る こ とが 中国企 業 の 国 際 競 争 力 の 強 化 に 繋 が る との認 識 か ら、 中 国 政 府 はCSRに 積 極 的 に取 り組 む 姿 勢 を示 して い る。
中国 企 業 連 合 会 で は 、 国連 グ ロー バ ル ・コンパ ク トを は じめ とす る国 際 的 なCSR基 準 を踏 ま えつ つ 、 中 国 の実 情 に合 わ せ たCSRの 取 り組 み を推 進 す るた め、CSRに 関 す るセ ミナ ー の 開催 、 中 国企 業 の 取 り組 み に 関 す る実 態 調 査 や 事 例集 の作 成 な どを行 って い る。 ま た 、 国 務 院 発 展 研 究 セ ン タ ー で は 、CSRを 持 続 的 な経 済 成 長 や 企 業 価 値 の 向 上 に繋 が る取 り組 み と捉 え 、
CSRに 関す る情 報 提 供 や研 修 を実 施 して い る。
そ の た め に は 、 各 国 の経 験 を吸 収 し、 環 境 会 計 と合 わせ 、 中 国 の 実 情 に適 合 す るCSR会 計 の 実 施 が必 要 不 可 欠 で あ る筆 者 は考 え る。
232国 際経営論集No.312006
第4章 中 国 に お け る 環 境 会 計 ・CSR会 計 の 課 題 と 展 望
上 述 した 現 状 認 識 に基 づ い て 、 い か に有 効 的 に導 入 し、 よ り迅 速 に 、 中 国 の 実 情 に適 合 す るCSR会 計 を展 開す れ ば よい か を提 案 した い 。
21世 紀 の最 大 の 課 題 で あ る 「持 続 可 能 な 発 展 」 に お い て 、 環境 経 営 は企 業 存続 の必 須 の 条 件 にな る可 能 性 が あ る。 企 業 が 持続 的 に発 展 す るた め に は 、 経 済活 動 と環 境 対 策 の 両 立 が 必 要 不 可 欠 で あ り、 環境 保 全 活 動 につ い て も財 務 面 か ら管 理 す る こ との重 要性 が認 識 され つ つ あ る。 こ う した環 境 経 営 にお い て 、 進 む べ き方 向性 を正 し く示 す 羅 針 盤 の よ うな働 き をす るの が 環 境 会 計 で あ る。 しか し、 現 段 階 で は環 境 会 計 は未 だ 発 展 途 上 に あ り、解 決 す べ き多
くの課 題 を抱 え 、今 後 の 検 討 や 実務 の 成 熟 が 期 待 され て い る。
中国 に お け る環 境 会 計 ・CSR会 計 を展 開 す る際 に 、 次 の4点 が 考 察 され うるで あ ろ う。
1.環 境 思 想 体 系 の 樹 立
2005年10 .月に 、 中国 の共 産 党 第16期 第5次 に今 後5年 の経 済 社 会 発 展 の指 針 が 明確 に され た。 即 ち 、 これ は 、2010年 ま で に 、 中 国 の科 学 的 発 展 へ の 路 線 を歩 む こ とを正 式 に公 表 した の で あ る。 この こ とは 、 中 国 の環 境 会 計 の 実 施 を促 進 す る こ とに繋 が る と考 え られ る。 環 境 思 想 体 系 は 、 一切 の経 済 活 動 を行 う際 に、 環 境 ・ク リー ンGDP・CSR・ 清 潔 生 産 ・循 環型 経 済 な どを追 求 す る こ とを 重 点 と して 置 く こ とで あ る。 しか し、現 時 点 で は 、 地 方 政 府 ・企 業 関係 者 ・国 民 は 、 環 境 意 識 が低 い だ け で は な く、 経 済 至 上 主 義 、 地 方 経 済 保 護 の傾 向 が あ るた め、 環 境 を 中 心 とす る社 会 責 任 へ の 追 求 を は じめ、 科 学
的 発 展 観 を徹 底 的 に実 施 しな けれ ばな らな い。
2004年 の10月 か ら、 中 国 で は 「ク リー ンGDP」 の 測 定 ・計 算 の モ デ ル 都 市 が指 定 され た。 そ して 、現 行 のGDP計 算 か ら 「ク リー ンGDP」 計 算 へ の転 換 が 順 調 に行 わ れ る か ど うか 注 目 され て い る。
現 在 、 中国 政府 は急 速 な 経 済成 長 に伴 う環 境 問題 の深 刻 化 を痛 感 してお り、
中国における環境会計のあ り方に関する233
持 続 可能 な発 展 に 関す る政 策 を相 次 い で打 ち 出 して き た。 しか し、 現在 のG DPを 重 視 す る経 済 社 会 で 、 「成 長=業 績 」、 「外 国 資 本 の投 資 額 の 増 大=開 放 度 」 とい う方 式 で 、 ノル マ を か け 、各 級 政 府 要 人 達 は そ れ に対 して必 死 に 努 力 して い る とい う状 況 で あ る。 投 資 に よ る経 済成 長 を 目標 と して い るた め、
「環 境 無 視 」 とい う活 動 は 日常 茶 飯 事 な の で あ る。 そ こ で 、 ク リー ンGDP の 測 定 ・計 算 を徹 底 的 に施 行 し、企 業 外 部 の 「環 境 」(社 会 体 制)を 整 えれ ば 、 企 業 の環 境 外 部 要 因 が 企 業 へ 圧 力 を か け る こ とに な り、企 業 環 境 会 計 の実 施 に有 利 に 展 開 す る こ とに な るだ ろ う。
2.環 境 管 理 体 系 の 再 編
現行 の 環 境 保 護 体 制 は 国 ・省 ・市(県)環 境 保 護 局 とな っ て い る。 各 省 ・市 (県)の 環 境 保 護 局 は 国 とそ の 所 在 地 の 政 府 が 二 重 管 理 を して い る。 国側 は、
業 務 指導 との 関係 で 、各 級 環 境 保 護 局 の行 政 ・予 算 ・人事 な どそ の 所 在 地 の 政 府 に 直 接 管 理 させ て い る。 そ の た め 、 環 境 保 護 に 関 連 す る 司 法 や 監 査 な ど、
経 済 至上 主 義 と地 方 経 済 保 護 主 義 が あ る限 り、 環 境 監査 業 務 、特 に 環境 関連 法 及 び基 準 が 司法 に左 右 され て い る。
更 に 、 地 方 の環 境 局職 員 の 質 、 各 地 の環 境 法 令 に 関す る認 識 の差 異 が あ る な どの要 因 で 、 適 切 な 法 律 執 行 が な され ず 不 正 が発 生 し、 統 一 性 の欠 如 が起 こ る とい っ た 問題 が生 じる。 そ こで 、組 織 機 構 体 系 の改 革 、 即 ち環 境 管 理 体 系 の再 編 は 、 各 級 の環 境 保 護 局 の 行 政 業 務 、 予算 権 、人 事 権 な どを 、す べ て 国 に統 括 管 理 させ るべ きで あ る。 そ の メ リッ トは 、 人 件 費 との 予 算 の削 減 だ け で はな く、基 準 の照 合 に対 す る統 一性 、 公 正 性 な ど もつ な が る。 それ を実 現す れ ば 、 中央 官 庁 に 直属 す る職 員 達 は独 自の 司法 活 動 が 実施 で き る。
加 えて 、組 織 機 構 体 系 の 改 革 の 際 に、 国 家 環 境 保 護 局 の 職 員 は 資 格試 験 に よ り採 用 す る。 更 に環 境 管 理 士 とい う資 格 が 制 定 し、 当該 資 格 の 「免 許 」 取 得 者 を採 用 す るべ きで あ る。 しか し、 単 に 資 格 取 得 者 を採 用 す れ ば よい とい うもの で は な い。 資 格 取 得 者 の 知 識 を常 に 最 新 の もの に 保 つ た め 、 有効 期 間 234国 際経営論集No312006
を 五 年 と定 め 、 更 新 時 に再 試 験 を課 し、不 合 格 者 に は 補 講 を受 講 させ る体 制 を整 え るべ き で あ る。
3.環 境(法 規 制)保 障 体 系 の 改 善
まず 、 現 行 の環 境 関連 法 規 制 の 整備 を行 う。 こ こで排 出汚 染 費 用 の 課 徴 金 (排汚 費)の 管 理 を 定 め た 条 例 に 関 して 、 改 正 す べ きで あ る と筆 者 が 考 え る。
この 法律 は汚 染 者 負 担 原 則 に基 づ い て制 定 され た が 、 あ る程 度 中 国 の 汚 染 物 質 の抑 制 に対 して 有 効 な条 例 で あ る。 しか し、 課 徴 金 の徴 収 の根 拠 は 汚 染 物 の 濃 度 に よ っ て 、徴 収 した が 、 実 際 に は曖 昧 で あ り、殆 ど監 査 を行 わ ず に実 施 され る。
ま た 、課 徴 金 の額 が 小 さい た め 、 企 業 の 多 くは課 徴 金 を 「払 う方 が 得 だ 」 とい う認 識 が 強 い。 そ れ ゆ え に 、企 業 の環 境 保 全 関連 の投 資 を増 大 させ る外 的圧 力 が 効 力 を失 うこ と とな る。 さ らに 、課 徴 金 の使 用 に も問 題 が あ る。 課 徴 金 が少 な い た め 、 す べ て環 境 保 護 局 の経 費 に 用 い られ て しま う(中 国 の現 行 の法 規 制 の 規 定 で はそ の一 部 が 当該 環境 保 護 局 に回 され 、利 用 可能 で あ る)。
そ の た め、 課 徴 金 の 限 度 を上 げ 、 徴 収 と費 用 が 明確 に 区分 され るべ き で あ る と筆 者 は考 え る。
中 国 の 環 境 保 護 法 規 の形 成 は 、 環 境 会 計 の 発 展 の た め に必 要 な基 礎 を 打 ち 立 て た 。 「環 境 保 護 法 」、 「大 気 汚 染 対 策 法 」、 「海 洋 保 護 法 」 な どが 相 次 い で 公 布 され 、1997年 中 国 の 「刑 法 」修 正 に よ って 、環 境 汚染 罪 の 条 項 が 追加 さ れ る こ とに な った 。 しか し、 環 境 法 規 は 会 計 の事 項 に対 して 可 操 作 性 を 持 た
な い た め 、企 業 の 会 計 制 度 と実 務 の連 携 が うま くい か な い の で あ る。
環 境 会 計 の 実 務 は 中 国企 業 にお い て少 数 の事 例 が 見 られ る よ うに な っ て き た が 、具 体 的 実 務 的 な 作 業 が 行 われ て い な い の が 現 状 で あ る。 また 、 環 境 原 価 計 算 と環 境 会 計 に 関連 す る専 門 の 規 定 ・標 準 が未 だ に 制 定 され て い な い と
い うの が 実情 で あ る。
加 えて 、 国 家 環 境保 護 総 局 を は じめ 、 財 政 省(財 政 部)、 証 券 監 察 委 員 会 、 中国にお ける環境会計のあ り方 に関する235
中 国会 計 学 会 な ど を連 合 させ 、 環境 会 計 ガイ ドライ ン を 早急 に制 定 す べ きで あ る。 具 体 的 方 法 の 一 提 案 と して は 、 現 行 の清 潔 生 産 促 進 法 を改 正 し、環 境 情 報 、特 に環 境 会 計 の 情 報 を 開示 す る とい う条 項 を取 り入 れ る こ とも考 え ら れ る。 この促 進 法 に よ って 、企 業及 び そ の管 理 機 関 の 清 潔 生 産 の推 進 に 関す
る責 任 が規 定 され た が 、 そ れ に 関連 す る情 報 の公 開 を求 め て い ない た め、 制 定 され た法 律 の認 知 度 に問 題 が あ り、 企 業 とそ の 関 連機 関 しか 開示 情 報 を認 識 しな い とい う状 況 を 招 い て しま っ た 。 よ っ て 、情 報 公 開 を加 え、 よ り広範 囲 へ 知 らせ る こ とが必 要 不 可 欠 で あ る。 さ らに 、 日本 の よ うな 「環 境 情 報 の 提 供 の促 進 等 に よ る特 定 事 業 者 等 の 環 境 に配 慮 した 事 業 活 動 の促 進 に 関す る 法 律 」 とい う単行 法 も制 定 す べ きで あ る と考 え る。
4.環 境 会 計 基 準 体 系 の 確 立
環 境 会 計 の基 準 は 、 世 界 的 に統 一 され て お らず 、 各 国 が独 自 に展 開 して い るが 、 将 来 的 に は 統 一 され るべ き で あ る。 現 時 点 に お い て 、 中国 で は 、 資源 の 浪 費 と無 序 的 、 か っ 非 効 率 的 な 開発 に よ る環 境 悪 化 の 中 で 、環 境 会計 とい う有 効 な 手 法 を実 行 す べ き で あ る と考 え る。 そ の た め に は、 環 境 会 計基 準 の 設 定 は必 要 不 可 欠 で あ る。 日米 独 先 進 国 の経 験 を参 考 に し、 中 国 の 実情 に適 合 す る環 境 会 計 基 準 を制 定 す べ き で あ る。 た と え ば 、 環 境 原 価 、 環 境 費 用 、 環境 負 債 な どの項 目に 関連 す る規 定 を、 国家 環 境 保 護 総 局 を は じめ、財 政部 、 証 券 監 察 委 員 会 、 中 国 会 計 学 会 な どが 参 加 す る研 究 会 で 検 討 し、 そ れ らを
「基 準」 に織 り込 む べ きで あ る。 これ には法 規 ・通 達 ・ガ イ ドライ ン・ガイ ドブ ッ クな どを包 含 し、 そ の 内容 、 測 定 ・計 算 、伝 達 、 開示 に 関 して 、 い か に 実施 す るか を 明確 に記 述 す べ き で あ る。 さ らに 、 環 境 会 計 情 報 の 開示 方 法 も明記 す べ きで あ る。
環 境 報 告 書 等 に よ る環 境 情 報 の 開示 を進 め る と と もに 、 そ の情 報 が社 会 全 体 と して積 極 的 に活 用 され る よ う促 す た め 、環 境 情 報 、特 に環 境 会 計 情 報 の 提 供 に 関す る条令 ・規 定 を早 急 に制 定 す べ き で あ る。
236国 際経営論集No.312006
最 後 に 、 中 国 の 環 境 会 計 の 今 後 の 展 望 につ い て 述 べ る。 今 日議 論 され て い るCSRは 、 主 に経 営 倫 理 の側 面 と社 会 的 責 任 投 資 の 側 面 が 挙 げ られ る。 こ こで 、特 に 問題 とな るの は 、経 営 倫 理 を企 業 の実 際 の行 動 に移 す 側 面 、即 ち 、 企 業 が 実 施 す る具 体 的 な社 会 的 責任 に 関す る活 動 の側 面 で あ る と筆 者 は 考 え
て い る。 い ず れ に して も、CRSは 、事 業 者 ご との 経 営 理 念 の 中に あ る と一 般 的 に は認 識 され て お り、 そ う した認 識 に 基 づ き 、社 会 との共 生 の あ り方 を 模 索せ ね ば な らな い 。
そ して さ らに広 い概 念 と して 、CSR会 計 、CSR経 営 とい う新 た な コ ン セ ン サ ス が形 成 され っ つ あ る こ とに も触 れ た。 よ うす る に、 中 国 の 実 情 に即
した 、独 自の 環 境 会 計 とCSR会 計 との 統 合 をす る必 要 が あ る と筆 者 は考 え る。
執 筆 分 担
張 本 越 → 第1章 〜第3章 第4章1〜4 柳 田 仁 → 第4章4共 同
中国にお ける環境 会 計 のあ り方 に 関す る237
脚 注:
1酸 性 雨 と は 、 酸 性 の 度 合 い を 示 すpH値 が5.6以 下 の 雨 、 雪 、 霧 な ど の 総 称 、 火 山 噴 火 な ど 自 然 要 因 も あ る が 、 二 酸 化 硫 黄 ・窒 素 酸 化 物 を 放 出 す る 産 業 活 動 が 大 き な 原 因 と指 摘 され る 。
2勝 俣 恒 久(東 京 電 力 社 長)「読 売 新 聞 」2003年9.月29日(朝 刊)掲 載 「エ ネ ル ギ ー の 新 未 来 像 」。
3北 川 秀 樹 著 『病 め る 巨 龍 ・中 国 』 文 芸 社 、2000年 、p.214 4同 上 。 北 川 秀 樹(2000)、p.208。
5現 行 の 中 国 代 表 的 な 環 境 管 理 制 度 で 、 汚 染 物 質 の 排 出 量 に よ る 課 徴 金 制 度 と い う。
6冷 戦 時 代 に 生 ま れ た 用 語 、 い わ ゆ る 国 防 の 配 慮 で 、 内 陸 部 へ 鉱 工 業 、加 工 業 を 山 の 奥 へ 移 転 し、 行 わ れ た 建 設 ブ ー ム と い う。 そ の 最 高 潮 で あ る 第3 次 五 力 年 計 画(1966〜70年)に は 、2000社 以 上 の 重 工 業 ・重 化 学 工 業 が 建 設
され 、 そ の 基 本 建 設 投 資 シ ェ ア は64.7%(西 部 の み34.9%)に 達 して い る。
72003年10月 の16期3中 全 会 で 採 択 され た 「社 会 主 義 市 場 経 済 体 制 整 備 の 若 干 問 題 に 関 す る 中 国 共 産 党 中 央 の 規 定 」 に よ る も の 。
8朱 学 叉 稿 「我 国 杯 境 会 汁 初 探 」 『会 汁 研 究 』1999年 第4期 、p.27。
9「 両 則 」は 「企 業 会 計 準 則 」と 「企 業 財 務 通 則 」 を 指 して い る 、 「両 制 」は 「外 商 投 資 企 業 会 計 制 度 」と 「株 式 制 施 行 企 業 会 計 制 度 」を 指 して い る。
10水 野 一 郎 稿 「中 国 に お け る 社 会 関 連 会 計 に つ い て の 一 考 察 」 『社 会 関 連 会 計 研 究 』7号pp.24‑25。
11葛 家 樹 「90年代 西 方 会 計 理 論 的 一 個 新 思 潮 一 緑 色 会 計 理 論 」 『会 計 研 究 』1 992年 第5期 。
12重 度 汚 染 業 界 の 限 定 は 冶 金 、 化 学 工 業 、 石 油 化 学 、 石 炭 、 火 力 発 電 、 建 築 材 料 、 製 紙 、 醸 造 、 製 薬 、 発 酵 、 紡 績 、 製 革 と採 掘 業 な ど13業 界 を 指 し て
い る。
238国 際経 営論集No.312006
13魚 住 隆 太 ・福 島 隆 史 「CSRを 視 野 に 入 れ た 環 境 報 告 書 の 作 成 実 務 」 『企 業 会 計 』2004.8.P.104。
14前 掲 。 魚 住 ・福 島(2004)P.104。
15前 掲 書 、 魚 住 隆 太 ・福 島 隆 史p.105。
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担 当 箇 所
1節 ・2節 ・3節 は 張4節 は 張 、 柳 田 で 共 同 執 筆 を 行 っ た 。
中国にお ける環 境会 計 のあ り方 に関す る241