宇都宮大学国際学部国際社会学科
2012 年度 卒業論文
待機児童問題と家庭的保育事業の役割と機能
~保育の量と質の両立を目指して~
指導教官 中村祐司
学籍番号 090135A
i
要約
日本では、待機児童が解決すべき大きな課題となっている。この問題の存在により、女 性が子どもを産みづらいと感じ、実際に産むのを控えるという現象が今日の日本にはある。 これは、経済学的・人口統計学的観点から見て大きな損失であると言えるだろう。 本論文では、待機児童問題の現状と、その解決方法の一つとして期待されている家庭的 保育の役割と機能について考察する。さらに、家庭的保育は待機児童問題の解決の切り札 と言えるのか見解を述べる。 1章では、待機児童問題の現状を最新のデータを用い分析し、どうして解決が困難とな るのかを明らかにしていく。合わせて、待機児童問題の存在が日本社会にどのような影響 を与えるのかを考察する。 2章では、待機児童問題に関連深い認可保育所を中心に、日本における様々な保育形態 を見ていく。 3章では、国と地方が実際にどのような子育て支援・待機児童対策を行ってきたか、そ の歴史を示し、さらに、これからどのような政策をとっていく方針なのか調査する。 4章では、家庭的保育に焦点を当て、国が定める家庭的保育ガイドラインを参考にしな がら、家庭的保育の特徴を明らかにする。加えて、宇都宮市と横浜市における現地調査に より、家庭的保育に期待される保育の質を維持するためにどのような努力が現場で行われ ているのかを中心に見ていく。ii
目次
要約 ... i 目次 ... ii はじめに ... v 第1 章 待機児童問題とは 第1 節 待機児童問題の現状 ... 2 (1)待機児童の定義と経年変化 (2)待機児童問題における地域間差異 第2節 なぜ保育所に応募が殺到するのか ... 7 (1)園児数の増減 (2)定員充足率 第3節 なぜ解決が難しいのか ... 9 第4節 待機児童問題が及ぼす影響 ... 10 第2 章 子供を預ける様々な形 第1 節 保育所の形態 ... 13 (1)認可保育所 (2)認可外保育施設 (3)保育所の役割 第2節 認定子ども園 ... 16 第3章 行政による保育制度改革と待機児童減少のための取り組み 第1 節 国の施策 ... 20 (1)国の子育て支援施策 (2)国の待機児童対策 第3節 地方自治体の待機児童対策 ... 22 (1)認証保育所(東京都) (2)幼稚園の活用(仙台市・横浜市) 第4章 家庭的保育の実際 第1節 家庭的保育とは ... 25 (1)家庭的保育の実施について (2)家庭的保育者等について (3)保育内容についてiii (4)安全対策について (5)市町村の役割 第2節 家庭的福祉員の会における家庭的保育制度説明会に参加して ... 33 第3 節 宇都宮市の事例から行政と家庭的保育の関わりを探る ... 36 (1)宇都宮市の待機児童について (2)宇都宮市の家庭的保育について おわりに ... 40 あとがき ... 41 参考文献 ... 43 参考URL ... 44 参考資料 ... 45 インタビュー・調査協力 ... 45
v
目次(図表)
図表 1 待機児童数の増減 ... 2 図表 2 保育所定員数、利用児童数及び保育所数の推移 ... 3 図表 3 待機児童数の多い市区町村 ... 4 図表 4 都道府県別待機児童数集約表... 5 図表 5 待機児童数上位 10 都道府県(2012 年 4 月1日現在) ... 6 図表 6 人口 10 万人あたりの待機児童数上位 10 都道府県 ... 6 図表 7 年齢別待機児童数の差異 ... 8 図表 8 認可保育所の 4 類型 ... 16 図表 9 認定子ども園における国の指針 ... 17 図表 10 保育制度の変遷・規制緩和 ... 19 図表 11 認可保育所と認証保育所の比較 ... 22 図表 12 家庭的保育者の就業前基礎研修カリキュラム ... 26 図表 13 認定研修カリキュラム ... 29 図表 14 家庭的保育の特性 ... 30 図表 15 家庭的保育の形態 ... 33目次(写真)
写真 1 江間・前島保育室の外のスペース ... 34 写真 2 紙芝居の様子 ... 35 写真 3 宇都宮市内の家庭的保育所の様子 ... 381
はじめに
日本は、諸外国と比較して、子どもに対する公的支出割合が低いと指摘されてきた。国 立社会保障・人口問題研究所によると、日本の 2007 年の高齢者向け政策支出は国内総生産 (GDP)の 9.12%と高福祉のスウェーデン並みだが、「家族・児童」向けは 0.79%でスウェ ーデンの 3.35%に遠く及ばない。低負担・低福祉のアメリカをやや上回る程度である1。こ のまま日本の未来を担う子ども達への投資を怠るようであれば、日本に明るい未来など望 めないのではないだろうか。 待機児童が問題になった背景として、不況に伴い共働き世帯が増加したことで、長時間 預けることができる保育所ニーズが増大したことが考えられる。少子化が叫ばれる今、女 性が安心して子供を産み、社会復帰できるような日本にするためには、待機児童問題の解 決が欠かせない。本論文では、待機児童問題の背景と現状について考察するとともに、今 後普及が期待される家庭的保育事業について、待機児童解消の可能性を探る。 家庭的保育事業が国の制度として創設されたのは 2002 年のことであり、国策上は比較的 新しい制度である。さらに、日本では保育所・幼稚園の利用者が圧倒的多数を占め、家庭 的保育事業の認知度・利用者数共に高いとは言えない。保護者の多様な保育ニーズに応え るためにその活用が期待されているが、現状ではその存在自体を認識していない人々が多 いと考えられる。本論文では、家庭的保育事業と認可保育所を比較し、その特徴をまとめ ながら、家庭的保育事業普及のために行政に期待される役割について見解を示す。 1 毎日 jp「負担増の社会:消費税 10%へ 子育て中の親たち」 http://mainichi.jp/feature/news/20120817ddm002040051000c.html (2012/9/28 閲覧)2
第 1 章 待機児童問題とは
第 1 節 待機児童問題の現状 本章では、待機児童問題の現状について、その特徴をまとめる。さらに、待機児童問題 が生じる理由や、なぜ問題解決が難しいのかについて記述する。 (1)待機児童の定義と経年変化 待機児童とは、「国が認可する保育所への入所要件を満たし、申し込みがされているが、 施設の不足や保育希望時間の調整がつかないなどの理由によって入所できないでいる児童2」 のうち、「地方公共団体の施策によって指定された保育所で保育されている児童」と「入所 可能な保育所があるにもかかわらず他の保育所を希望するなど保護者の私的な理由で待機 している場合」を除いたものである3 4。以下、厚生労働省 HP より、2012 年 4 月 1 日現在の 待機児童問題の現状についてデータを示す。 厚生労働省によると,2012 年 4 月 1 日現在、24,825 人の待機児童がおり5、これは、2011 年同時期と比べると 731 人減少しているが、過去最低だった 2007 年同時期(17,926)と比 べると 6,900 人近く増加している6。 図表 1 待機児童数の増減 厚生労働省 「保育所県連状況取りまとめ(平成 24 年 4 月 1 日)」 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002khid-att/2r9852000002khju.pdf より筆 2 大辞泉 3 琉球新報「保育所待機児童、実質増の 1621 人」 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-100592-storytopic-86.html (2012/9/24 閲覧) 4 旧定義=申込人数-認可保育所入所人数 新定義=旧定義の待機児童数-国が定める定義に該当するもの(2001 年に定義変更) 5 厚生労働省 HP「保育所関連状況取りまとめ(平成 24 年 4 月 1 日)」 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002khid.html (2012/9/29 閲覧) 6 厚生労働省 HP 「保育所入所待機児童数(平成 21 年 10 月について)」 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000584s.html (2012/7/21 閲覧) 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 (人)3 者作成 保育所定員は 224 万人で、全年同時期に比べて 36,000 人増加している。また、保育所を 利用する児童の数は 2,17 万 6,802 人で前年から 53,851 人増加している。これは 1994 年の 保育所入所待機児童数調査以降、過去最高の増加数である。保育所数は 23,711 箇所で、前 年から 326 か所増加している7。 図表 2 保育所定員数、利用児童数及び保育所数の推移 厚生労働省「保育所県連状況取りまとめ(平成 24 年 4 月 1 日)」 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002khid-att/2r9852000002khju.pdf より 筆者作成 待機児童がいる市区町村数は 357(全市区町村の 20.5%)で、前年から 20 増加した。保 育計画を策定しなければならない待機児童が 50 人以上の市区町村は 107 で前年から 13 増 加している89。図表 1 を見ると、待機児童数自体はここ 3 年ほど減少傾向と言えるが、その 一方で、待機児童が問題となっている自治体は増加しており、より広く全国的な課題とな ったと言える。 7 厚生労働省 HP「保育所関連状況取りまとめ(平成 24 年 4 月 1 日)」 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002khid-att/2r9852000002khju.pdf (2012/9/29 閲覧) 8 同上 HP 9 2003 年の児童福祉法改正により、当該年度の前年度の 4 月 1 日に新たに待機児童数が 50 人以上になった市区町村は当該年度を始期とする市町村保育計画を策定する。 厚生労働省 HP「児童福祉法に基づく市町村保育計画等について」 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/syousika/030819/dl/4.pdf (2012/9/29 閲覧) 21,800 22,000 22,200 22,400 22,600 22,800 23,000 23,200 23,400 23,600 23,800 1,850 1,900 1,950 2,000 2,050 2,100 2,150 2,200 2,250 2,300 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 (千人) (箇所) 定員 保育所利用児童数 保育所数
4 図表 3 待機児童数の多い市区町村()は 2011 年 4 月 1 日の数字10 待機児童数 市区町村 100 人以上 67(62) 50 人以上 100 未満 40(32) 1人以上 50 人未満 250(243) 計 357(337) 厚生労働省「保育所県連状況取りまとめ(平成 24 年 4 月 1 日)」より筆者作成 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002khid-att/2r9852000002khju.pdf (2)待機児童問題における地域間差異 待機児童問題は、都市部で顕著に見られる問題だとされる。本項では、「都道府県・指定 都市・中核市別 保育所待機児童数集約表」を参考に表を作成し、地域間差異について検 証する。 10 東日本大震災の影響による公表データの取り扱いについて 東日本大震災の影響により、8 市町は平成 23 年 4 月の調査を実施できず、平成 23 年 4 月のデータは8 市町分を除いて集計している。8 市町分の平成 23 年 4 月の結果は「0」 として集計していることから、平成23 年 4 月と比べる際には単純にその増減を表してお り、数値の補正は行っていない。平成24 年 4 月の調査では 8 市町を含め、全市区町村か ら結果を経て集計している。
5 図表 4 都道府県別待機児童数集約表 都道府県 政令指定 都市 中核市 その他地域 合計 人口 (1,000人) 人口10万人あたりの 待機児童数 北海道 929 94 52 1075 5506 19.5 青森 0 0 0 1373 0.0 岩手 48 87 135 1330 10.2 宮城 410 447 857 2348 36.5 秋田 0 22 22 1086 2.0 山形 158 158 1169 13.5 福島 9 46 55 2029 2.7 茨城 320 320 2970 10.8 栃木 0 25 25 2008 1.2 群馬 0 8 8 2008 0.4 埼玉 126 94 855 1075 7195 14.9 千葉 123 316 913 1352 6216 21.8 東京 7257 7257 13159 55.1 神奈川 1038 36 965 2039 9048 22.5 新潟 0 0 0 2374 0.0 富山 0 0 0 1093 0.0 石川 0 0 0 1170 0.0 福井 0 0 806 0.0 山梨 0 0 863 0.0 長野 0 0 0 2152 0.0 岐阜 0 0 0 2081 0.0 静岡 321 193 514 3765 13.7 愛知 1032 26 149 1207 7411 16.3 三重 41 41 1855 2.2 滋賀 147 345 492 1411 34.9 京都 122 30 152 2636 5.8 大阪 1121 325 604 2050 8865 23.1 兵庫 531 140 256 927 5588 16.6 奈良 115 136 251 1401 17.9 和歌山 0 13 13 1002 1.3 鳥取 0 0 589 0.0 島根 32 32 717 4.5 岡山 0 18 13 31 1945 1.6 広島 335 0 0 335 2861 11.7 山口 0 75 75 1451 5.2 徳島 47 47 785 6.0 香川 0 0 996 0.0 愛媛 25 0 25 1431 1.7 高知 31 17 48 764 6.3 福岡 893 13 268 1174 5072 23.1 佐賀 43 5 48 850 5.6 長崎 45 0 45 1427 3.2 熊本 119 0 277 396 1817 21.8 大分 177 9 186 1197 15.5 宮崎 0 0 1135 0.0 鹿児島 53 53 1706 3.1 沖縄 2305 2305 1393 165.5 合計 7100 1702 16023 24825 128057 19.4 人
6 厚生労働省 HP「都道府県・指定都市・中核市別 保育所待機児童数集約表」 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002khid-att/2r9852000002khju.pdf 総務省統計局『日本の統計 2012』p.10 を参考に筆者作成 図表 5 待機児童数上位 10 都道府県(2012 年 4 月1日現在) 図表 4 を参考に筆者作成 全都道府県の待機児童数は、2012 年 4 月 1 日現在で 24,825 人である。このうち約 30%を 東京都が占めており(7,257 人)、沖縄県、大阪府と続いている。待機児童数の多い上位 10 都道府県を合わせると、20,461 人であり、全国の約 82%を占める。この 10 都道府県は、 沖縄県を除き日本の人口が多い都道府県上位 9 都道府県と一致している。このことから、 待機児童問題は大都市圏で生じやすい問題であると言える。 図表 6 人口 10 万人あたりの待機児童数上位 10 都道府県 図表 4 を参考に筆者作成 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 東京 沖縄 大阪 神奈川 千葉 愛知 福岡 埼玉 北海道 兵庫 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 沖縄 東京 宮城 滋賀 神奈川 熊本 千葉 大阪 福岡 北海道
7 人口 10 万人当たりの待機児童数について調べてみると、図表 6 にあるように、沖縄県が 突出していることがわかる。これは、沖縄県の県民所得が全国平均と比べて低く、女性が 働かざるを得ないため保育に欠ける児童が多いこと、パートタイム等の勤労形態の変化に 伴い保育ニーズが多様化しているが、低年齢児を受け入れる施設が極めて少ないこと、さ らに、沖縄県が長期間米軍占領のもとに置かれ、公立・認可保育所の整備を始めとする児 童の御保育に対する国の対策や支援がなかったことが原因であると考えられる11。 このように、待機児童数には地域間差異が大きい。全く待機児童のいない都道府県もあ れば、東京都のように数千人単位で待機児童のいる都道府県もある。そして、地域により、 保育所の数、保育料、認可保育所を建設するにあたり必要な土地の値段などにも違いがあ り、画一的な待機児童の解消方法はないと考える。そのため、行政には、それぞれの地域 に合致した対策を講じることが求められるのである。 第2節 なぜ保育所に応募が殺到するのか 日本では現在、少子化が大きな問題となっている。しかしながらその一方で、保育所に は子どもを預けるために応募が殺到している現状がある。これはなぜなのだろうか。 (1)園児数の増減 1940 年代後半の第一次ベビーブーム、1970 年代の第二次ベビーブームと共に、幼稚園・ 保育園は爆発的にその数を増加させてきた。幼稚園は、1955 年の約 5,400 園(園児数約 64 万 3700 人)から、1975 年には約 13,100 園(園児約 229 万 2200 人)まで増加した。同様に 保育園も、1955 年に約 8,300 か所(入所児童数約 65 万 3700 人)から、1975 年には、約 18,200 か所(入所児童数約 163 万 1000 人)にまで増加した12。 しかしながらその後、幼稚園は 1978 年の約 249 万 7900 人、保育所は 1980 年の約 199 万 6100 人をピークに園児が減少し始める。特に幼稚園の場合、2008 年には約 167 万 4200 人 まで減少し、30 年間で約 82 万 4000 人の園児が減少することとなった。その一方で、保育 所入所児童数は、1994 年に約 167 万 5900 人まで落ち込んだものの、その後上昇に転じた。 1970 年代には、最も差が大きい時期で幼稚園の方が保育所よりも 70 万人以上も園児数が多 かったが、今日では逆転して保育所の方が 50 万人近く多くなっている13。 11 衆議院 HP「沖縄県における待機児童解消の諸施策と認可外保育施設の対策に関する質問 主意書」 http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a162026.htm (2012/06/25 閲覧) 12 吉田正幸編著『次世代の保育かたち―幼稚園・保育所の可能性と限界―』フレーベル館 2010 年 p.10 13 同上書 p.11
8 (2)定員充足率 保育所の年度途中の定員充足率は、2001 年から常に 100%を超え続けており、定員より も在所児の方が多いというのが現状だ。一方で幼稚園の定員充足率は 70.5%で、県によっ ては 50%を下回る園も存在する14。 かつて、幼稚園も保育所も園児数の減少を受けて徐々に園数も減らしてきた。しかしな がら、保育所は、2000 年の 22,199 か所を底に 2001 年から徐々に増え始めた。これに比べ て幼稚園は 1985 年の 15,220 園をピークに減少し始め、2008 年には 13,626 園にまで減少し ている15。 園児数、定員充足率、園数のいずれも、保育所は増加し、幼稚園は減少している。こう した「保育所志向・幼稚園離れ」は都道府県別の定員充足率を見る限り、都市部よりも地 方で顕著である16。 年齢別に待機児童を見ていくと、3 歳以上とそれ未満の子どもの数にはっきりと差異があ ることがわかる。厚生労働省の HP で年齢区分別待機児童数について調べると、2011 年 4 月 おいて、待機児童数の 83%を 3 歳未満児が占めている。同 10 月においては,なんと 88%が 3 歳未満児である。しかし、0~2 歳児の 7 割以上は保育所に通わず、家庭で育てられてい る17。それでは、どうしてここまで年齢別で差異が見られるのだろうか。 図表 7 年齢別待機児童数の差異 2011 年4月待機児童数 2011 年 10 月待機児童数 ●3歳未満児(0~2歳) 21,109 41,137 ⇒うち0歳児 3,560 17,613 ⇒うち1・2歳児 17,549 23,524 ●3歳以上児 4,447 5,483 全年齢児計 2,5556 46,620 厚生労働省 「(参考資料)1.保育所待機児童の状況 2.年齢区分別の待機児童数) http:/ /www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000022mcp-att/2r98520000022mh2.pdf より筆者作成 少子化の進行にも関わらず、保育所の園児数は増え続けている。その理由は、保育に欠 ける子どもの増加にある。幼稚園は、満 3 歳児から就学前までの幼児を受け入れ、幼児教 育を行うが、保育所は、0 歳から就学前の乳幼児を受け入れ、保育する施設である。幼稚園 は年齢を満たしていれば、入園に際して要件は基本的に何もない。一方で、保育所は「保 育に欠ける子ども」であることが条件となっている。つまり、両親が共に仕事をしている、 14 吉田正幸 前掲書 p.11 15 同上書 16 同上書 17 読売新聞朝刊「子育て支援の体制は?」2012/7/26
9 病気である、などの状態により、乳幼児に十分な保育をすることが出来ないときに限り、 入所することができる。ここから、保育所に応募が殺到する現在の状況は、「保育に欠ける 子ども」の増加が背景にあると考えられる。 第3節 なぜ解決が難しいのか それでは、少子化が社会問題として声高に叫ばれる今、なぜ待機児童問題はなかなか解 決されないのだろうか。 まず設置者側の要因として、ニーズの高い都市部では設置が難しいことがあげられる。 保育所は社会福祉法人が運営することとされていたが、2000 年の児童福祉法改正により、 公設民営の保育所も企業に委託することが出来るようになった18。 2003 年には、地方自治法の改正により「指定管理者制度」ができた。この制度は、公共 施設の管理を自治体が民間の事業者や民間企業、NPO も含めた団体を指定して運営を任せる ことである。この制度ができるまでは保育所を運営できる事業者が限られていたことも、 待機児童問題の改善にブレーキをかけていた要因のひとつだった。指定管理者制度の創設 により、企業や NPO も保育所を運営できるようになったが、都市部で認可基準を満たす土 地を確保するのは非常に難しく、認可保育所の設置はなかなか進んでいない。また、認可 保育所の運営は、国の補助金や自治体からの補助金、そして利用料で賄われているが、こ れらの財源は決して十分ではない。保育所の運営費の金額は、保育所の定員規模、児童の 年齢などにより異なるが、国、県、市町村などが負担する割合が決まっている19。 社会福祉法人などの私立保育所の場合、運営費(子ども一人あたりに必要な額)のうち 保護者の負担分を除いて、全体の 2 分の 1 を国が支出し、残りの 2 分の 1 を自治体(都道 府県と市町村とで各 4 分の 1)が負担する。公立保育所の場合、保育所運営費の一般財源化 に伴い、国の負担分はなくなり、国から自治体へ配分される地方交付税で賄われている20。 保育所の運営費は、大きくは職員の人件費、事務的経費(水道、電気、ガス、印刷機な どの設備維持費、修繕費など)、保育に必要な給食費、保育材料費などに分けられる。この うち、もっとも大きなウェイトを占めるのは、職員の人件費である。最低基準自体が低い ために、それをもとに算出される保育所運営費では、不十分なのが実情だ。そのため、自 治体が独自に補助をしている。また、保護者負担を軽減するなど、自治体の超過負担分が 増えている21。 次に家庭の要因として保育なしに仕事ができないことがあげられる。近年は、結婚後も 働き続ける女性が増え、女性の育児休業取得率及び職場復帰率も高くなり、育児休業取得 18 仲本美央・南野奈津子『子育て支援と保育ママ 事例にみる家庭的保育の実際』 株式会社ぎょうせい 2011 年 pp.19-20 19 同上書 20 同上書 21 近藤幹生 『保育園「改革」のゆくえ 「新たな保育の仕組み」を考える』岩波書店 2010 年 p.21
10 率は 90%前後と非常に高い数値である。これにより、乳児の保育ニーズが非常に高くなっ ている。加えて、近年の経済不況の影響による就業を希望する母親の増加といった社会の 経済状況も保育ニーズの高まりに拍車をかけている22。 また、世帯の収入によって保育所の利用料が決定される認可保育所では、認証保育所や 認可外保育所よりも数万円は安いことが多く、認可保育所は保育所の数や保育環境などが 国の認可基準に沿って設置されている安心から、認可保育所への希望が殺到する。また、 保育所を増やすと、今まで利用を諦めていた家庭や認可外保育所に預けていた家庭が新た に希望する「いたちごっこ」状態になっている23。厚生労働省は、このような潜在的待機児 童が 85 万人いると推定している。 そして、保育士不足の問題も深刻である。 NHK 生活情報ブログによると、千葉市の淑徳大学では保育士の養成に力を入れているが、 保育士を選ばない学生が目立つようになっている。総合福祉学部のあるゼミでは保育士の 資格を取得した 4 年生は 5 人。しかしながら、いずれも一般企業に就職し、保育士になる 学生は一人もいない。保育士の平均給与は 34 歳で 22 万円。早朝や夜間、週末の勤務もあ る割には待遇が厳しいとして、敬遠する学生が増えている。 女子学生の一人は「勉強したからこそ、子ども一人ひとり発達に合わせた保育をする難 しさを感じました。仕事にするのが大変な割には、給料とか体制が見合わないと思います。」 と話す。東京では保育士不足は年々深刻さを増し、求人 20 人に対し応募は一人しかいない 24。待機児童問題というと、認可保育所などの施設の整備に目が行きがちである。しかし、 保育士の待遇を改善しなければ、保育士のなり手がこのまま増えないだけではなく、事故 や虐待につながる可能性もある。 このように待機児童問題には様々な要因があり、一朝一夕では解決できそうもない。景 気の動向や家族の形の変化、様々な要因が複雑に絡み合っており、これをしたから解決す るというような特効薬は存在しない。そのため、多方面からのアプローチが必要であると 考える。 第4節 待機児童問題が及ぼす影響 それでは、待機児童問題が社会に及ぼす影響にはどのようなものがあるのだろうか。 まず、少子化対策としての一面である。厚生労働省が公表した「平成 23 年度版労働白書」 によると、2010 年の合計特殊出生率25は 1.39 で前年(1.37)を上回った。1970 年代半ば以 降、合計特殊出生率は低下傾向が進んでいたが、2006 年以降やや改善している。しかしな 22 仲本美央・南野奈津子 前掲書 p.20 23 同上書 24 NHK「NHK 生活情報ブログ」http://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/200/112902.html (2012/9/26/閲覧) 25 15 歳から 49 歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、1人の女性がその年齢別 出生率で一生の間に産むとした時の子どもの数に相当
11 がら、人口置換水準26を大幅に下回っており、出生率の低下傾向が変化したとまではいうこ とはできない。さらに、夫婦の間に生まれる子ども数(完結出生児数)は、2005 年で 2.09 であり若干の減少傾向が見られるが、1972 年から 2.2 前後で比較的安定して推移してきて いる。したがって、近年の出生率の低下は、晩婚化や結婚しない人の増加が主因というこ とが出来る27。 しかし、若年世代では、子どものいない夫婦や子どもが一人の夫婦が増加しており、今 後、夫婦の間に生まれる子ども数はさらに減少することも予測される28。また、国立社会保 障・人口問題研究所の調査によると、夫婦の理想の子ども数は 2.42 人、予定子ども数は 2.07 人でいずれも緩やかな減少が続いている。予定が理想を下回る夫婦における理由は、「子育 てや教育にお金がかかること」が 60.4%を占めており29、安価で安全な保育サービスの拡充 は急務であると言える。 つぎに、経済的な効果が考えられる。待機児童問題を解消できれば、将来の労働力不足 に対して女性の労働力率を引き上げることができ、税収も増える。さらに女性の収入水準 が高まることで、現役時代および高齢期の自立につながり、社会保障への依存が減ること が挙げられる。 内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」によると、1992 年当時、もっとも多かっ たのは「子どもができたら職業をやめ、大きくなったら再び職業をもつほうがよい」とい う選択肢で、45.4%の女性が支持していた。ところが 2007 年になると同項目は 33.8%に低 下した。代わって増加したのが、女性も生涯にわたって仕事を続けた方がよいという考え 方である。「子どもができても、ずっと職業を続ける方がよい」とする女性は、26.3%から 45.5%に急増し、現在では、もっとも多くの女性がこの生き方をよしとしている30。しかし ながら、6 歳未満の子どもを持つ母親の就業率を見ると、日本は、諸外国と比較して低い水 準にある31。 そのほかに、保育を受けた子どもの能力向上を通して、将来的に労働生産性が高まるこ と、犯罪率の低下などを通じて社会的コストを節約できるなどの指摘もある他、教育面の 効果として、保育を受けた年数が長いほどその後の成績がよいという関係や、幼児教育の 質によってその後の成績に影響があることが挙げられている32。 26 合計特殊出生率がこの水準以下になると人口が減少することになる水準をいう。おおむ ね2.1 だが年によって変動がある。 27 厚生労働省 HP「平成 23 年度版厚生労働白」 http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/11/dl/01-01.pdf (2012/04/15 閲覧) 28 同上 HP 29 国立社会保障・人口問題研究所 「第 14 回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国 調査) 夫婦調査の結果概要取りまとめ」 http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou14/point14.asp (2012/09/25 閲覧) 30 武石恵美子『女性の働きかた』ミネルヴァ書房 2010 年 p.106 31 同上書 p.226 32 武石恵美子 前掲書 p.226
12 このように、待機児童の解消により日本が得られるメリットは大きい。少子化への対応 や経済的利益だけではなく、保育を受ける子ども自体にも利益がある。逆に言えば、待機 児童を放置することは大きな社会的損失であると言えるだろう。しかしながら、3 節で述べ た通り、待機児童解決への道は険しい。少しずつ確実に数を減らしていくしかない。 次章では、保育所の形態として認可保育所を中心に見ていく。さらに、政府が普及を目 指している認定こども園についても触れ、施設の特徴を比較しながら、待機児童問題解消 の糸口を探る。
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第 2 章 子供を預ける様々な形
第 1 章では、待機児童の定義について、「認可保育所に申し込みがされているが入所でき ないでいる児童」であると記述した。本章では、待機児童問題に最も関係の深い保育施設 である認可保育所を中心に、子どもを預ける様々な保育施設について述べる。 第 1 節 保育所の形態 (1)認可保育所 認可保育所とは、児童福祉法に基づく児童福祉施設で、児童福祉施設最低基準(施設の 広さ、保育士等の職員数、給食設備、防災管理、衛生管理等)をクリアして都道府県知事 に認可された施設33であり、厚生労働省の管轄である。区市町村が運営する公立保育所と社 会福祉法人などが運営する民間保育所(私立)があり、認可保育所は公費により運営され ている34。保育園とは保育所の通称であり、法令上は使用されない35。 児童福祉法36によると、保護者の労働又は疾病などの理由により十分な保育が受けられな い場合において、保護者の申し込みがあった際に、乳児、幼児を保育しなければならない (第 24 条 1 項)。また、特に必要のある時は、乳児、幼児に限らずその児童を保育するこ とができる(第 39 条 2 項)と定められている。 保育が欠ける児童は、保護者の状態について、次の基準37に従って各市町村が定めている。 保護者が ⅰ)昼間労働することを状態とすること ⅱ)妊娠中であるか又は産後間もないこと ⅲ)疾病にかかり、もしくは不種子、又は精神もしくは身体に障害を有していること ⅳ)同居の親族を常時介護していること ⅴ)震災、風水害、火災その他の災害の復旧に当たっていること ⅵ)前各号に類する状態であること 33 児童福祉法 第 35 条 4 項 国、都道府県及び市町村以外の者は、厚生労働省令の定める ところにより、都道府県知事の認可を得て、児童福祉施設を設置することができる。 総務省 法令データ提供システム「児童福祉法」 http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/strsearch.cgi (2012/07/21 閲覧) 34 公益財団法人東京都福祉保健財団 とうきょう福祉ナビゲーション「認可保育所と認証 保育所の違い」 http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/contents/tokushu/ninsyo/ninsyo_02.html (2012/05/14 閲覧) 35 鎌倉市 HP 「保育所(保育園)について」 http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/hoiku/hoiku.html (2012/05/13 閲覧) 36 総務省 法令データ提供システム「児童福祉法」 http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/strsearch.cgi (2012/05/13 閲覧) 37 社会福祉法人日本保育協会 HP「認可保育所について」 http://www.nippo.or.jp/howto/index2.html (2012/05/14 閲覧)
14 のいずれかに該当する場合である。 保育所に入所を希望する場合、入所申込書に家庭状況表、就労証明書や介護証明書など 保育に欠ける証明書、児童状況表、源泉徴収票や確定申告の写しなどを添えて、各市区町 村に申し込む。申し込みの後、入所面接などを経て、保育に欠ける必要の大きい家庭から 入所が決定する。保育園の保育料は、国がその世帯の前年の市町村民税・所得税の納付状 況により、保育所徴収金基準額表によって基準額を決めている。保育料は、世帯の収入に より異なるが、同じ市町村においては、認可保育園であれば、私立と公立で保育料が違う ことはない38。 認可保育所の場合、公立、私立を問わず、市区町村が同じ基準で入所の選考を行い、同 じ基準で保育料を決定する。保育所の開所時間は通常 11 時間で、通常開所以外にも延長保 育を実施している保育所もある。他にも、夜間保育、休日保育、一時的保育、障害児保育 などのサービスがあるが、実施状況は保育所により異なる。開設日数は 300 日以上となっ ており、春、夏、冬休みはない。休日、祝祭日も対応している39。定員は 60 人以上とされ ているが、小規模保育所の場合は 20 人以上である40。 厚生労働省の定める「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」によると、乳児また は満2歳未満の幼児を入所させる保育所には、乳児室、医務室、調理室及び便所を設ける こととされ(第 32 条 1 項)、満 2 歳以上の幼児を入所させる保育所には、保育室または遊 戯室、屋外球戯場も設けなければならない(同条 5 項)。さらに、職員は、保育士、嘱託医、 調理員を置く必要がある(第 33 条 1 項)。そのうち保育士においては、1 人の保育士が見る ことのできる子どもは、乳児は 3 人、1 歳以上 3 歳未満幼児は 6 人、満 3 歳以上の子どもで 1 日に 4 時間程度利用する幼児(短時間利用児)は 35 人、満 3 歳以上 4 歳未満の子どもで 1 日に 8 時間程度利用する幼児(長時間利用児)は 20 人、満 4 歳以上の子どもは 30 人と定 められている(同条 2 項)41。 (2)認可外保育施設 認可外保育施設とは、児童福祉法に基づく都道府県知事などの認可を受けていない保育 施設のことである。2010 年 3 月 31 日現在、全国には 7,400 か所の認可外保育施設があり42、 38 福岡市保育協会オフィシャルサイト 保育のひろば「保育園をもっと知りたい」 http://www.hoiku.or.jp/about/know/ (2012/05/14 閲覧) 39 福井市少子化対策・子育てサイト はぐくむ.net「公立保育所・私立保育所」」 http://www.hagukumu.net/page/hagukumu/s00218.html (2012/05/14 閲覧) 40 公益財団法人東京都福祉保健財団 東京福祉ナビゲーション「認証保育所制度について」 http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/contents/tokushu/ninsyo/ninsyo_02.html (2012/12/15 閲覧) 41 総務省 e-GOV「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23F03601000063.html(2012/12/15 閲覧) 42 内閣府『平成 24 年度版 子ども・若者白書』p.191
15 子どもの入所を希望する保護者は直接認可外保育所に申し込む43。 少数の乳児又は幼児を対象とするものその他の厚生労働省令で定めるものを除き、第 35 条 4 項の認可を受けていないものは、設置から 1 か月以内に都道府県知事に届け出が必要 とされている44。児童福祉法によって都道府県知事に届け出が義務付けられていない施設を 含む、すべての認可外保育施設は、原則として年 1 回以上立ち入り検査が行われる。これ は都道府県が行い、子どもを保育するのにふさわしい内容や環境を確保しているかを確認 することが目的である45。 保育定員が 5 名以下の場合、施設における設備や保育の内容、保育料を自由に設定する ことができ、さらに、運営費が保護者の自己負担であるため、認可保育所に比べて割高で あることが多い46。 (3)保育所の役割 それでは、保育所の役割として期待されているものは何なのだろうか。 2008 年に、「新たな保育所保育指針」が告示され、2009 年より施行された47。これによる と、保育所の役割は 3 つに分類されると言える。 まず第1に、子どもの保育である。保育所は、児童福祉法第 39 条の規定に基づき、保育 に欠ける子どもの保育を行わなければならず、入所する子どもの最善利益を考慮し、その 福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない48。 第2に、入所する子どもの保護者に対する支援である。保育に関する専門性を有する職 員は、家庭との緊密な連携の下に、養護及び教育を一体的に行うことが必要である49。 第3に、地域の子育て家庭に対する支援である。保育所は、家庭や地域の様々な社会資 源との連携を図りながら、入所する子どもの保護者や地域の子育て家庭に対する支援を担 うものとされる50。 43 柊かりん 『認可保育所はこんな所 ―待機児童問題解消への提言―』創英社/三省堂 2012 年 p.12 44 第 35 条 4 項:国、都道府県及び市町村以外の者は、厚生労働省令の定めるところにより、 都道府県知事の認可を得て、児童福祉施設を設置することができる 総務省法令データ提供システム「児童福祉法」 http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/strsearch.cgi (2012/07/21 閲覧) 45 厚生労働省 HP「平成 22 年度 認可外保育施設の現況取りまとめ」 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000023dzr.html (2012/07/21 閲覧) 46 柊かりん 上掲書 p.12 47 社会福祉法人日本保育協会『わかる!できる!新保育所保育指針実践ガイド』中央法規 2009 年 p.2 48 同上書 p.18 49 同上書 50 社会福祉法人日本保育協会 前掲書 p.18
16 第2節 認定子ども園 政府が待機児童対策として設立を推進するものの一つに認定子ども園がある。 文部科学省は 1997 年に「預かり保育推進事業」を予算化するなど、幼稚園の保育所化と 呼べる政策を進めてきた。その後、地域のニーズに応じ、就学前の教育・保育を一体とし て捉えた一貫した総合施設の設置を目指し、2006 年に「就学前の子どもに関する教育、保 育等の総合的な提供の推進に関する法律」が成立した。これにより、認定こども園が創設 されることになった51。 以下、文部科学省・厚生労働省が設置した幼保連携推進室 HP「認定こども園概要」52より、 認定子ども園の概要について要約する。 認定こども園は 2006 年 10 月にスタートした制度である53。幼稚園、保育所等のうち、以 下の機能を備え、認定基準を満たす施設は、都道府県知事から「認定子ども園」の認定を 受けることができる。 ①就学前の子どもに幼児教育・保育を提供する機能 (保護者が働いている、いないにかかわらず受け入れて、教育・保育を一体的に行う機能) ②地域における子育て支援を行う機能 (全ての子育て家庭を対象に、子育て不安に対応した相談活動や、親子の集いの場の提供 などを行う活動) 認定こども園の設置件数は、2012 年 4 月 1 日現在で 911 件となっており54、地域の実情に 応じて次のような多様なタイプが認められる。 図表 8 認可保育所の 4 類型 幼保連携型 認可幼稚園と認可保育所とが連携して、一体的な運営を行うことにより、 認定子ども園としての機能を果たすタイプ 幼稚園型 認可幼稚園が、保育に欠ける子どものための保育時間を確保するなどして、 保育所的な機能を備えて認定子ども園としての機能を果たすタイプ 保育所型 認可保育所が、保育に欠ける子ども以外の子どもを受け入れるなど、幼稚 園的な機能を備えることで認定子ども園としての機能を果たすタイプ 地方裁量型 幼稚園・保育所のいずれの認可もない地域の教育・保育施設が、認定子ど 51 中村強士『戦後保育政策のあゆみと保育のゆくえ』2009 年 新読書社 p.167 52 幼保連携推進室 HP「認定こども園概要」http://www.youho.go.jp/gaiyo.html (2012/06/30 閲覧) 53 幼保連携推進室 HP「ごあいさつ」http://www.youho.go.jp/aisatsu.html(2012/06/30 閲覧) 54 内閣府『子ども・若者白書 平成 24 年度版』p.190
17 も園として必要な機能を果たすタイプ 幼保連携推進室HP「認定こども園概要」http://www.youho.go.jp/gaiyo.html より筆者作成 認定子ども園の設置基準は、文部科学大臣と厚生労働大臣が協議して定める「国の指針」 を参酌して、各都道府県が条例で定める。 図表 9 認定子ども園における国の指針 所管官庁 文部科学省・厚生労働省 対象児 0~就学前の全ての子ども。親の就労の有無は問わない。 1 日の保育・教 育時間 4 時間にも 8 時間にも対応 保育料 設置者が決定できるが、市町村への届け出が必要。 契約 利用者と施設との直接契約。ただし、幼保連携型、保育所型については、 市町村が保育に欠ける子どもの認定を行う。 職員配置 0~2 歳児:保育所と同様の体制55 3~5 歳児:学級担任を設置。長時間利用児には個別対応が可能な体制。 職員資格 0~2 歳児:保育士資格保有者 3~5 歳児:幼稚園教諭免許と保育士資格の併用が望ましい。しかし、学 級担任には幼稚園教諭免許保有者、長時間利用児への対応は 保育士資格保有者を原則とし、片方の資格しか有しないもの を排除しないように配慮。 教育・保育の 内容 ●幼稚園教育要領と保育所保育指針の目標が達成されるよう、教育・保 育を提供。 ●施設の利用開始年齢の違いや、利用時間の長短の違いなどの事情に配 慮 ●認定こども園としての一体的運用の観点から、教育・保育の全体的な 計画を編成 ●小学校教育への円滑な接続に配慮 子育て支援 ●保護者が利用したいと思った時に利用可能な体制を確保(親子の集う 場を週3日以上開設するなど) 55 乳児 3 人につき職員 1 人以上、1 歳以上 3 歳未満幼児 6 人につき 1 人以上。 満3 歳以上の子どもで 1 日に 4 時間程度利用する幼児(以下短時間利用児)については、 35 人につき 1 人以上。満 3 歳以上 4 歳未満の子どもで、1 日に 8 時間程度利用する幼児 (以下長時間利用児)20 人につき 1 人以上、満 4 歳以上の子ども 30 人につき 1 人以上。 総務省 e-GOV「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第 33 条 2 項 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23F03601000063.html(2012/07/08 閲覧)
18 ●さまざまな地域の人材や社会資源を活用 幼保連携推進室HP「認定こども園概要」http://www.youho.go.jp/gaiyo.html 吉田正幸『次世代の保育のかたち―幼稚園・保育所の可能性と限界―』2010 年 ブレーベ ル館 p.55 を参考に筆者作成 ここまで認可保育所・認可外保育施設・認定保育園の特徴について見てきたが、これら について比較していきたい。 まず保育料について、認可保育所は世帯の所得に応じて基準が決まっているが、認可外 保育施設と比較して安価であることが多い。そのため、認可保育所の利用希望者は後を絶 たない。しかしながら、認可外保育施設の中には延長保育・24 時間保育などを実施する施 設もあり、認可保育所では満たすことのできない保育サービス需要に対応していると言え る。一方で認定こども園の場合、保育料は利用者に応じて設置者が決定することができる。 そのため、著しく高額な保育料が定められることのないように、市町村長は施設から届け 出のあった利用料が不適切である場合には変更を命じることができるとされている。 次に保育対象について、認可保育所は保育に欠ける要件が大きい家庭から優先的に入所 が決まるため、入所したくてもできない家庭が生まれ、その結果待機児童が生まれる。一 方で認可外保育施設の場合、サービス内容は施設が決めることが出来るため、待機児童の 受け皿となっている。一方、認定子ども園の場合は、図表 9 にあるように、親の就労の有 無は問わない。そのため、母親がフルタイム勤務から専業主婦に変わるという場合でも、 転園する必要がなく、認定子ども園に通い続けることができるというメリットがある。 しかしながら、認定子ども園は十分に普及しているとは言い難い。横浜市にある初音丘 幼稚園の渡辺真一園長によると「事務手続きが煩雑でメリットがない56」ため、認定子ども 園の申請はしていないのだそうだ。認定子ども園を普及させるには、手続きの簡略化、さ らに、幼稚園、もしくは保育所設置者に、認定子ども園設置に対するメリットを感じさせ る政策が必要だと言えそうだ。 また、認可外保育所は保育料が高く、国の基準を満たした施設ではないため、認可保育 所に比べ利用をためらう保護者もいる。しかしながら、認可外保育所は認可保育所では補 えない保育ニーズを満たしており、さらに、待機児童の受け皿にもなっている。そのため、 認可外保育施設を積極的に活用することは重要であると考える。それでは、認可外保育施 設を活用するために必要なことは何なのだろうか。私は、行政による補助と監視ではない かと考える。認可外保育所に積極的に補助金を交付し、保育料を下げるよう働きかけるこ と、さらに、立ち入り検査の回数を増やし、保護者の不安を軽減させることで、認可外保 育施設を活用する保護者を増加させる。これにより、無認可保育所に安全性の向上を促し、 保護者に認可外保育所を活用してもらうことで、待機児童を減少できると考える。 56 朝日新聞朝刊 「待機児童を減らせ 幼稚園の活用 探る自治体」2012/5/16
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第3章 行政による保育制度改革と待機児童減少のための取り組み
本章では、待機児童問題に対する国及び地方の政策についてどのような変遷をたどって きたのかをまとめ、それらの成果について検証する。 図表 10 保育制度の変遷・規制緩和 1995 年 ●エンゼルプラン(低年齢児保育、延長保育、病後児保育、学童保育などの 充実)が5ヵ年計画でスタート 1997 年 ●横浜市の横浜保育室がスタート ●改正児童福祉法が成立、社会福祉基礎構造改革中間まとめ ●文部省、幼稚園の預かり保育の助成制度を創設 1998 年 ●児童福祉法改正、認可保育所の0歳児保育の一般化が謳われる。学童保育 (放課後児童健全育成事業)が法制化される ●認可保育所の短時間保育士の定数への導入(定数の2割まで) ●認可保育所の入所定員の弾力化(育休復職者の上の子の再入園、兄弟同園 入園の場合に限って、定員を 25%まで上回って受け入れてもよい) ●文部省・厚生省から「幼稚園と保育所の施設の共用化等に関する指針」と いう通知が出され、幼保の一体的運営への道が開かれる ●『厚生白書 少子社会を考える』発行.仕事と子育てが両立できる社会シス テムの必要性を述べつつ、保育サービスを効率よく柔軟に提供する必要があ るとして公立保育園の民営化にもふれる 1999 年 ●「保育所保育指針」9年ぶりに改訂(11 月、多様な機能、子育ての相談・ 助言も保育園の業務に) 2000 年 ●新エンゼルプランが5ヵ年計画でスタート ●認可保育所の土地・建物自己所有の規制がはずれ、賃貸施設も可となる ●認可保育所の「30 人以上」定員の規制がはずれ、「20 人以上となる」 ●児童福祉法改正.認可保育所に苦情解決の仕組みを設ける義務 2001 年 ●認可保育所について、園庭は近くの公園を代わりにしようしてもよい、さ らなる入所定員の弾力化(125%、年度後半は制限なし)などの通知が出され る ●児童福祉法改正を公布(一部施行).認可外保育施設の届け出制・指導強化、 市町村財産の貸付等保育所整備のための促進策、保育士資格の名称独占(法 律資格化、保護者の指導も職務に.公布後2年以内に施行)等 ●東京都の認証保育所制度がスタート(5月) 2002 年 ●認可保育所の短期時間保育所の割合は制限なし(ただしクラスごとに常勤 1名以上等の条件),分園の民間委託を可とする通知(5月)20 ●「福祉サービスの第三者票基準(保育所)」発表 ●待機児童ゼロ作戦 2004 年 ●「福祉サービス第三者評価ガイドライン(保育所)」(社会援護局)発表 ●子ども子育て応援プラン 2006 年 ●認定こども園制度スタート(5月法案成立、10 月施行) 2007 年 ●「子どもと家族を応援する日本」重点戦略 2008 年 ●新待機児童ゼロ作戦 ●「保育事業者検討会」(次世代育成のための新たな制度体系の設計に関する 保育事業者検討会)設置 2009 年 ●家庭的保育事業ガイドライン策定 2010 年 ●子ども・子育てビジョン ●「待機児童ゼロ特命チーム」発足 ●家庭的保育事業が法令上に位置づけられた改正児童福祉法が施行される 2011 年 ●家庭的保育者になることのできる人材要件が緩和される 2012 年 ●社会保障・税一体改革 普光院亜紀『変わる保育園 量から質の時代へ』岩波書店 2007 年 p.21 仲本美央・南野奈津子『子育て支援と保育ママ 事例にみる家庭的保育の実際』 p.26 内閣府編『平成 24 年度版 子ども・若者白書』2004 年 pp.186-192 を参考に筆者作成 図表 10 に見られるように、政府及び地方自治体は、保育に対する様々な政策を行ってき た。中でも待機児童問題に注目して見ていくと、認可保育所入所定員の弾力化や、家庭的 保育保育者の要件緩和から見てとれるように、近年の政府の方針は規制緩和の傾向にある。 さらに、横浜市の横浜保育室や東京都の認証保育所など、待機児童の多い自治体を中心 に、独自の保育所制度をつくる自治体も現れた。これらは、国の本格的な待機児童対策で ある「待機児童ゼロ作戦」に先駆けて実施されており、自治体の危機感の表れであると言 えるだろう。 第 1 節 国の施策 (1)国の子育て支援施策57 子育て支援施策に影響を与えたのが 1.57 ショックである。「1.57」とは、1989 年の合計 特殊出生率である。「丙午」の年に生まれた女性は気性が激しいという俗信があり、それを 伝えたメディアの影響もあり、丙午の年である 1966 年の合計特殊出生率は過去最低の 1.58 に落ち込んだ。しかし 1989 年にはそのような特殊な事情がなかったにも関わらず、1.58 を 57 仲村美央・南野奈津子『子育て支援と保育ママ 事例にみる家庭的保育の実際』 ぎょうせい 2011 pp.27-28
21 下回る 1.57 となったことは、少子化が本格的に進行している衝撃的事実として受け止めら れた。これがいわゆる「1.57 ショック」である。 これがきっかけとなり、政府は「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」 (エンゼルプラン)を策定した。エンゼルプランでは①安心して子どもを産み育てること ができるような環境の整備、②家庭における子育てを基本としつつも、あらゆる社会の構 成メンバーが子育てに協力していくシステム(子育て支援社会)の構築、③子どもの利益 が最大限尊重されるような配慮をした子育て支援施策の 3 つの基本的視点、そして「仕事 と育児との両立のための雇用環境の整備」「多様な保育サービスの充実」「母子保健医療体 制の充実」「子育てに伴う経済的負担の軽減」等 7 つの重点施策が挙げられた。 これを受けて、1995 年度から 1999 年度までの 5 年間の計画である「緊急保育対策等5カ 年事業」が策定された。この事業では、低年齢児(0~2 歳児)保育や延長保育、一次保育、 放課後児童クラブなどの数の整備、多機能化保育所の施設・設備の整備、地域子育て支援 センターの整備などが掲げられた。 エンゼルプラン策定後も合計特殊出生率は上昇せず、政府は 2000 年度から 2004 年度ま での計画と目標を新たに設定した「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画につ いて(新エンゼルプラン)」を策定した。新エンゼルプランでは、保育サービスなど子育て 支援サービスの充実や、仕事と子育ての両立のための雇用環境の整備など 8 分野での具体 的な事業に対し目標値を設定した。その中でも、ニーズの高い低年齢児の受け入れ拡大、 延長保育、休日保育、一時保育、ファミリーサポートセンター事業の実施の強化を掲げ、 それまでの約 2 倍から 3 倍にあたる目標設置数を設定した。これらは新エンゼルプランの 計画期間内にほぼ達成され、子育て中の女性の就業率の上昇もみられたことから、一定の 効果はあったといえる。しかし、合計特殊出生率の改善はみられなかった。 (2)国の待機児童対策 本格的な待機児童対策は、2002 年の待機児童ゼロ作戦に始まった。待機児童ゼロ作戦では、 保育所、保育ママ、幼稚園の預かり保育等の活用により、受け入れ児童数を 2004 年度まで に合計 15 万人増やし、待機児童の解消を目指した。しかし、実際には待機児童数の改善は 見られず、2008 年に新待機児童ゼロ作戦が策定された。新待機児童ゼロ作戦では、「働きな がら子育てをしたいと願う国民が両立の難しさから仕事を辞める、あるいは出産を断念す ることのないよう、①働き方の見直しによる仕事と生活の調和の実現、②新たな次世代育 成支援枠組みの構築、の二つの取り組みを進めていく」ことを目標にして、10 年後の目標 として保育サービス(3 歳未満児)の提供割合を 20%から 38%へ、保育所利用児童数 100 万人増(0~5 歳)にしたいとしている58。 2010 年には「待機児童ゼロ特命チーム」が発足した。このチームは「国と自治体が一体 的に取り組む待機児童解消『先取り』プロジェクト」という、2013 年度から実施の待機児 58仲村美央・南野奈津子 前掲書pp.35-36
22 童解消対策の前倒し事業である。事業には家庭的保育の拡充、認定こども園の普及促進、 幼稚園での預かり保育の拡充、最低基準を満たす認可外保育施設への公費助成や公園・賃 貸物件の活用、整備費補助の引き上げによる場所の確保などが盛り込まれている59。 さらに、2008 度第 2 次補正予算において「安心こども基金」を都道府県に設置した。こ れは、保育所整備やその他地域子育て支援事業、ひとり親家庭の支援などに使用されるこ とを目的とし、国が都道府県に交付している財源である。これを 2011 年度第 4 次補正予算 において積み増しし、保育所の整備や認定こども園への支援等を重点的に進めている60。 そして 2012 年、政府は社会保障・税一体改革で取り組む子育て支援策として保育の「質」 と「量」の改善に取り組む方針である。 一体改革政府原案によると「質の改善」では、保育士の配置を現在の 3 歳児 20 人に 1 人 から 15 人に 1 人に引き上げ、保育施設などへの支援に 400 億円をあてる。年 5 日程度の研 修も実施する。保育士らの待遇改善に関しては、職員の定着・確保に努めている施設に人 件費の約 1 割分を支援する。この費用には 180 億円分を見込んでいる。学童保育の希望者 が増えている実情を踏まえ、放課後児童クラブ指導員 1 人の常勤化も検討する。 「量の拡充」は、認定子ども園の定員増に年約 3,000 億円を充て、これにより、3 歳未満 の保育利用者を 2012 年度の 86 万人から 2017 年度に 122 万人としようとしており、支援策 は、2015 年 10 月に消費税率が 10%に引き上げられるのに伴って実施される61 第3節 地方自治体の待機児童対策 (1)認証保育所(東京都) 認証保育所は東京都が独自に定めた基準により運営される保育所である。国の基準によ る従来の認可保育所は、大都市圏では設置が困難であり、また、0 歳児保育を行わない保育 所もあるなど、必ずしも東京都民のニーズを満たすものではなかった。そのため、東京都 は独自に基準を定め、多くの企業の参入を促し事業者間の競争を促進することにより多様 化するニーズに応えることを目指している62。 図表 11 認可保育所と認証保育所の比較 認可保育所 認証保育所 定員・対象年齢 60 人以上(小規模の場合 20 人以上)。 A 型:駅前に設置することを基本とし、定員 20~120 人、そのうち 0~2 歳を 2 分の 1 以 上 59 仲村美央・南野奈津子 前掲書 p36 60 内閣府『平成 24 年度版 こども・若者白書』pp.188-189 61 読売新聞朝刊『保育士支援に 3000 億円』2012/9/4 62公益財団法人東京都福祉保健財団 東京福祉ナビゲーション「認証保育所制度について」 http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/contents/tokushu/ninsyo/ninsyo_02.html (2012/12/15 閲覧)
23 B 型:保育室制度からの移行を中心とし、小 規模で家庭的な保育。定員 6~29 人。0~2 歳児対象。 0 歳児保育 0 歳児枠のない保育所があ る。 0 歳児の保育は必ず実施。 基準面積 0 歳児・1 歳児の 1 人当た りの基準面積が 3.3 ㎡。 0 歳児・1 歳児の 1 人当たり基準面積を 2.5 ㎡まで緩和。 保育料 区市町村が徴収。 認証保育所が徴収。料金は認証保育所が独自 に設定できる。(上限あり) 申し込み方法 区市町村に申し込む。 認証保育所と保護者で直接契約。 改修経費の補 助 株式会社を対象とする補 助制度はない。 A 型のうち、駅の改札口から徒歩 5 分以内の 者には改修費補助。 開所時間 11 時間を基本としている。 すべての保育所に 13 時間以上の開所を義務 づけている。 公益財団法人東京都福祉保健財団 東京福祉ナビゲーション「認証保育所制度について」 http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/contents/tokushu/ninsyo/ninsyo_02.htm を参考に筆 者作成 図表 11 にあるように、認証保育所は、待機児童の最も多い 3 歳未満児の保育に特化し、 さらに、本来設置困難な駅前にも保育所が設置できるよう、基準面積の緩和も行っている。 これこそ、待機児童数の 30%近くを占め、加えて、新しく認可保育所を建設するのも困難 である東京都に合致した制度と言えるのではないだろうか。 (2)幼稚園の活用(仙台市・横浜市) 2011 年 4 月、498 人の待機児童がいた仙台市は、3 歳児以上の待機児童対策として幼稚園 の預かり保育を充実させている。市内の私立幼稚園のうち、28 園に計約 7,000 万円の補助 金を交付し、幼稚園が終わった後に子どもを預かる時間を延長させた。さらに、夏休みも 開園する。これにより、昨年度までは毎日利用すると月平均約 1 万 1,000 円かかったが、 今年度から、待機児童に該当する場合は月 5,000 円以下で子どもを預けることができるよ うになり、これまでの利用者も含め、300 人以上の申し込みがあった。加えて、認可保育所 も増設し、2012 年 4 月の待機児童を 88 人減少させた63。 待機児童の多くは 0~2 歳児であるが、仙台市は「保育所をつくりすぎると、幼稚園の経 営を圧迫する」との見解を示しており、施設整備費などを補助して幼稚園に認可保育所を 併設し認定子ども園になってもらう事業を計画し、今年度は 2 園を募っている64。 63 朝日新聞「待機児童を減らせ 幼稚園の活用 探る自治体」2012/05/16 64 同上
24 2011 年 4 月の待機児童数が全国 2 位の横浜市は、1997 年度から市が独自に補助する「横 浜保育室」を増やしている。横浜保育室とは、横浜市が独自に設けた基準を満たし、市が 助成・認定している認可外保育施設であり、利用者には保育料の軽減制度やきょうだい減 免制度がある。基本的に 3 歳未満児を対象としており、利用できるのは認可保育所の入所 要件を満たす者である65。 加えて、昨年度から横浜保育室と連携するモデル幼稚園を指定し、幼稚園の活用方法を 探っており、初音丘幼稚園もその一つである。初音丘幼稚園は、園所の向かいに横浜保育 室「ピッコリーノ」を開設した。市から認定を受けた 0~2 歳児 28 人が通い、3 歳になると 幼稚園へ進級する。午後 7 時半からと午後 7 時までの預かり保育もあり、共働きの親を持 つ園児を中心に約 100 人が利用しており、市からは 1 人あたり月 2 万 3,800 円の補助が出 ている66。 このように、国・地方に様々な政策を行っており、一定の効果を得られたものもある。 特に、東京都・横浜市をはじめとする地方自治体がつくる、その地域の実情に合わせた独 自の基準を設けた保育所や、認可保育所をいたずらに増設するのではなく幼稚園を活用す る政策は、今後期待できるのではないだろうか。 65 横浜市こども青少年局 HP「横浜保育室のご案内」 (2012/12/17 閲覧) http://www.city.yokohama.lg.jp/kodomo/unei/hoikuseido/file/ysitufutankeigen.pdf 66 朝日新聞『待機児童を減らせ 幼稚園の活用 探る自治体』2012/05/16
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