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A グループ B グループ A グループ B グループ 12 月 8 日 ( 火 ) 12 月 9 日 ( 水 ) 12 月 10 日 ( 木 ) 12 月 11 日 ( 金 ) クチクラ観察クチクラ観察 DAB 染色 DAB 染色 : サンプル調整 : 観察 : 採卵 ~ 一次抗体反応 : 二次抗

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実験スケジュール

12

月8

日(火)

12

月9

日(水)

12

月1

0日

(木)

12

月1

1日

(金)

クチクラ観察

クチクラ観察

D

A

B

染色

D

A

B

染色

:サンプル調整

:観察

:採

卵~

一次

抗体

反応

:二次抗体反応~

観察

@実習室

@実習室

@実習室

@実習室

シークエンス

演習D

演習D

演習D

:解析

:準備①

:準備②

:準備③

@各自

@各自

@各自

@各自

12

月1

5日

(火)

12

月1

6日

(水)

12

月1

7日

(木)

12

月1

8日

(金)

シークエンス

演習D

演習D

演習D

:解析

:準備①

:準備②

:準備③

@各自

@各自

@各自

@各自

クチクラ観察

クチクラ観察

D

A

B

染色

D

A

B

染色

:サンプル調整

:観察

:採

卵~

一次

抗体

反応

:二次抗体反応~

観察

@実習室

@実習室

@実習室

@実習室

A

グル

ープ

B

グル

ープ

A

グル

ープ

B

グル

ープ

(3)

3

キイロショウジョウバエ

(Drosophila melanogaster)について

なぜキイロショウジョウバエを使うのか

キイロショウジョウバエ(以下ショウジョウバエ)は,1900 年代初頭, Thomas Morgan の研究室において遺伝学実験に使われ始めた.ショウ ジョウバエがモデル生物として100 年以上も用いられてきたのには, 様々な理由がある.その理由の1 つとして,ショウジョウバエの 1 世 代の短さが挙げられる.25℃で飼育した場合,ショウジョウバエは, 約10 日で卵から成虫まで生育するため,短期間で遺伝学実験を行うこ とができる.また,飼育の簡便さも重要な特徴である.エサは容易に 作成でき,飼育に必要なスペースも少ない.そのため,小規模な実験室でも,ショウジョウバエを用い た研究が可能である.その他にも,染色体数の少なさ(4 対)やゲノム情報が解読されていることなど,モ デル生物として優れた特徴が多い. ショウジョウバエは,長く研究に用いられてきたことにより,様々な実験技術やリソースが開発され てきた.たとえば,世界各地の研究機関で突然変異系統が豊富に保存されており,容易に入手できる. これ以外にも,遺伝子の強制発現や抑制を容易に行えたり,遺伝子組換えを行う際に多数の手法を選択 できたりと,より便利に実験を行うための技術が蓄積され,現在も開発・改良されている. これらの特徴を持つショウジョウバエは,発生学,神経学,行動学など,多くの研究分野で利用され てきた.上述の長所を活かすことで,これまでに,ショウジョウバエを用いた研究に対して 5 回のノー ベル賞が贈られた.特に,2017 年にノーベル賞を受賞した,概日リズムに関する研究は記憶に新しい. また,ゲノム研究の成果から,ヒトとショウジョウバエのゲノムには共通する部分が多いことがわか っている.たとえば,ヒトの病気の原因として知られている遺伝子の 61%は,ショウジョウバエでも保 存されている.すなわち,ショウジョウバエで得られた知識がヒトに応用できる場合が多く,ショウジ ョウバエはヒト疾患を研究するモデルとしても使われている.

ショウジョウバエは生きた試験管だ

!!

ショウジョウバエは“生きた試験管”に喩えることができる. 化学では,試験管内の物質を混ぜ合わせ,その反応を調べる(A とB からできた C を調べる).ショウジョウバエでは,突然変 異体の雄と雌を交配して,二つの突然変異を同時にもったとき にどの様なことが起こるのかを調べる(A と B から生まれた C を調べる).これにより,二つの遺伝子の機能的な関連がわかる. これは,ショウジョウバエを用いた遺伝学的研究手法の一例 にすぎない.100 年ものあいだに積み重ねられたショウジョウ バエの知見は,次々に開発されるショウジョウバエの実験ツー ルと組み合わさり,生命科学の未知の領域を開拓している.

(4)

4

実験

I シークエンス解析

実験の背景と原理

自然免疫と獲得免疫

ヒトを含む高等脊椎動物は,大別して 2 つの免疫系をもち,これらは獲得免疫系と自然免疫系と呼ば れる.獲得免疫系は後天性免疫系とも呼ばれ,異物の侵入によって,その異物に対する特異的な免疫応 答がはじめて獲得される.自然免疫系は先天性免疫系とも呼ばれ,多くの生物に遺伝的に備えられた免 疫機構である. 現在,確認されている約120 万種の生物のうち,獲得免疫系と自然免疫系を合わせ持つ生物は 4%ほど である.一方で,地球上の生物種の約80%を占める昆虫は,自然免疫系のみを持つ.これらのことから, 自然免疫系が効率よく機能していることがわかる.

昆虫の細菌に対する感受性

ショウジョウバエは,2 つの異なる NF-κB シグナル経路を持ち,そのどちらの経路も自然免疫系にお いて重要な働きをもつ.ひとつは,Toll 受容体を介する経路であり,ショウジョウバエではじめて発見さ れた(Jules A. Hoffmann, 2011 年ノーベル賞).もう一つの経路が,Imd 経路である.大腸菌などのグラム陰 性菌が感染すると,Imd 経路が活性化し,抗菌ペプチド(ジプテリシンなど)が産生される.

今回の実験Ⅰで用いる Tak1 突然変異体は, Imd 経路の構成因子である TGF-β activated kinase 1 の機能を 欠失している.これにより,抗菌ペプチドが産生されなくなる.

実験

I: DNA シークエンスによる Tak1 突然変異体の同定

実験I では,Tak1 突然変異体が,どのような突然変異を持っているかを調べる.この実験では,実際DNA シークエンサーを用いて解読した Tak1 遺伝子の塩基配列のデータを用いる.野生型系統と Tak1 突然変異系統の配列を,ホモロジー解析ソフトを用いて比較し,Tak1 突然変異体の突然変異箇所を明ら かにする.

実験の目的

系統Ⅰと系統Ⅱのいずれが Tak1 突然変異系統であるかを,塩基配列の決定によって判別する.

実験に用いるショウジョウバエ系統

野生型系統,Tak1 突然変異系統

(5)

5

実験の手順

実験

Ⅰ: DNA シークエンスによる Tak1 突然変異体の同定__________________

● 野生型と

Tak1

突然変異体との

Tak1

遺伝子の塩基配列比較

FlyBase に記載されている CDS (Coding DNA Sequence; タンパク質をコードしている配列のこと.ATG から始まり,終止コドンで終わる) 配列をリファレンスとして,シークエンスで得られた野生型および

Tak1 突然変異体の Tak1 遺伝子を Alignment する.これにより,Tak1 突然変異体の突然変異箇所を同定す

る.塩基配列解析ソフトには様々なものがあるが,今回は,MEGAX(ダウンロード方法は補足①を参照 のこと)というソフトウェアを用いる.この実習書では,例として Myosin31DF(Myo31DF)遺伝子を扱う.

なお,Myo31DFの野生型対立遺伝子(Myo31DF wild type)を Myo31DF,突然変異が起こった対立遺伝子を

Myo31DFL152と表記している.

松野研のホームページから Tak1 遺伝子のシーケンスデータをダウンロードし, 同様の操作を行う. シ

ーケンスデータは6 つあり, 1~3 が系統Ⅰ, 4~6 が系統Ⅱである. 適宜, 配列データに同封されている波形 データも参照にする.

(1) FlyBase(http://flybase.org)にアクセスする.

(2) ページ上部の“Search FlyBase”(下図①)をクリックして“Jump to Gene”を選択し,調べたい遺伝子名 (例: “Myo31DF”)を入力して“Go”をクリックする(下図②).

(3) Myo31DF 遺伝子のページへ移動する.“Gene region”をクリックし(下図①),“CDS”を選択する.続

(6)

6

(4) Myo31DF の CDS 配列情報が記載されたページへ飛ぶので,ダウンロードボタン(次項上図①)をクリ

ックする.複数のスプライシングバリアントがある場合は,異なるバリアントを選択し(次項上図②), 同様にすべて保存する.これらのバリアントは,(5)以降で同時に Alignment をかける.

(5) MEGAX を開き,“ALIGN”をクリックする.

(7)

7

(7) Alignment Editor の”Create a new alignment”(下図①)を選択した後,”OK”(下図②)をクリックする.

(8) Data Type for Alignment で alignment するデータのタイプ “DNA”をクリックする(下図).

(8)

8

(10) “insert Sequence From File”(下図赤枠)をクリックして,シークエンスした野生型の Myo31DF 配列フ

ァイルを選択する.同様に,”Edit” → “insert Sequence From File”をクリックし,シークエンスした

Myo31DFL152突然変異体のMyo31DFL152配列ファイル,および(4)で作成した CDS 配列ファイル

(RA,RB など複数ある場合は全て)を選択する.

(11) “MUSCLE(筋肉マーク)”をクリックする.

(9)

9 (13) “OK”をクリックする. (14) 今回はパラメーターの変更はせずに”OK”をクリックする. (15) 処理が完了すると下の図のように,alignment された配列が得られる. (16) CDS 配列が複数種(RA,RB 等)あった場合は,アライメントで一致する配列を残し,それ以外はク リックで選択後, delete で消去する.

(17) 再度alignment((11)~(14))する.Myo31DF の CDS 配列と,シークエンスした Myo31DF と Myo31DFL152

(10)

10

Tak1

突然変異体のアミノ酸レベルでの解析 | 配列の読み枠調整

遺伝子上のどの塩基に突然変異が起こったか分かったので,次に,そのDNA レベルの突然変異が,ア ミノ酸レベルでどのような突然変異を引き起こしているかを調べる.アミノ酸配列の比較を行う前に, シークエンスデータの読み枠調整を行う. 多くの場合,得られたシークエンスデータは,シークエンス反応時や読み取り時に,ランダムなミス が生じている.特に,塩基の挿入や欠失が起こると,アミノ酸配列に変換したとき,読み枠がずれて, 異なるアミノ酸配列データがアウトプットされる.これは,次に行うアミノ酸配列の比較解析を困難に する.そのため.アミノ酸レベルでの突然変異体解析を行う際には,複数のシークエンスデータを比較 して,“確からしい”配列に調整することが必要となる.本来は,統計的に計算を行い,確からしい配列 を求める必要があるが,今回の実習では,目で見て大まかに配列を調整する.

(1) MEGAX を開き,前項(9)の Alignment Explorer を開く.”Edit” → “insert Sequence From File”(前項 (9),(10))から,シークエンスした野生型の Myo31DF 遺伝子配列ファイルを一つづつ追加する.同様に, 前項(4)で作成した CDS ファイルも開く.このとき,異なる系統(今回の場合,Myo31DFL152突然変異体)

の配列ファイルを選択してはならない.突然変異体と野生型を混ぜて比較すると,突然変異によって

生じたかもしれない読み枠のずれを消してしまうおそれがあるためである.

(2) “MUSCLE” → “Align DNA”(前項(11),(12))をクリックする.配列を全部選択するか聞いてくるので OK を押して(前項(13)),その次の Alignment Option も OK を押す(前項(14)).すると Alignment 結果が 表示される.今回のAlignment では,データ 2 の 555 番目に A が挿入され,データ 3 の 609 番目の T が欠失したことがわかる(下図). (3) 挿入された余分な塩基を消去するときは,その消す塩基をクリックして,delete で消去できる.この際, 空白部分(-)も一緒に消す必要がある.一方欠失した配列を復元するには,まず,空白で示された 欠失部分を選択し,delete で消去した後,挿入する配列のアルファベットを大文字で入力する(今回は T).シークエンス解析の特性上, プライマー付近の配列は解析困難であるため,alignment した際に配 列がそろっていない部分はまとめて削除しておく. (4) (3)のようにして修正したシークエンスデータを保存する.”Data”をクリックする.

(11)

11 (5) “Export Alignment”を選択する.

(6) “FASTA Format”をクリックすると window が出現するので,任意の場所に配列を保存する.配列は表 示されているものが全て保存される.

(7) 以上の操作を,全てのシークエンスデータについて行う.データ上で塩基欠失が起こったと推測され る場合は,複数の配列データを比較し,確からしい塩基を挿入して調整する.

(12)

12

Tak1

突然変異体のアミノ酸レベルでの解析 | アミノ酸配列の比較

読み枠調整を行ったDNA 配列データを用いて,突然変異体で生じたアミノ酸レベルの突然変異を同定 する.今回は,FlyBase から得た CDS 配列を元にして,Myo31DF のアミノ酸配列ファイルを作成する. 同様に,読み枠調整した突然変異体のDNA 配列ファイルからもアミノ酸配列ファイルを作成する.CDS から得られたアミノ酸配列と,突然変異体のアミノ酸配列とを比較し,突然変異の入ったアミノ酸を同 定する.この実習書では,突然変異体についてのみ解析を行うが,実際は,野生型についても同様の解 析を行い,同定したアミノ酸レベルの突然変異が,野生型では生じていないことを確認する. (1) 前項の(7)までで作成したデータをそれぞれ開く(便宜上一つで行っているが、複数同時でも可).DNA 配列は3 つの塩基で一つのアミノ酸を指定するので,一つのデータに対して,読み枠をずらして3つ のアミノ酸配列を作る必要がある.まずDNA 配列をアミノ酸配列に変換する方法を記述する. “translate DNA to protein and vice versa”(下図赤枠)をクリックする.

(2) “Yes”(下図赤枠)をクリック.

(3) すると,DNA の配列がアミノ酸に翻訳される.

(13)

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(5) 一番目の塩基(下図赤枠)を選択して,”delete”で消去する.これにより,読み枠を意図的に一つずらす ことができる.アミノ酸に翻訳((1)~(3))して,その配列を保存(前項(4)~(6))する.読み枠は3種類あ るのでさらにもう一つ塩基を消去し,同じように翻訳,保存を行う.これを各実験データについて行 う.

(6) 生成したアミノ酸のデータを読み込む.MEGAX を開き直し,ALIGN → ”Edit/Build Alignment”を選 択 → “OK”(前々項(5)~(7)).

(7) ”protein”を選択(下図(7))する.

(8) “Edit → Insert Sequence From File” (前々項(9),(10))でさきほど生成したアミノ酸ファイルを追加する. 今回はデータ1から作成した三種類のアミノ酸配列と CDS 配列から作成したアミノ酸配列を比較す る.アミノ酸ファイルを追加すると下図のようになる.

(14)

14

(9) “MUSCLE → align protein→ OK → OK”(前々項(11)~(14))を順番に押す. 以下のようなポップアップが出るので,”ignore”(下図赤枠)をクリックする. (10) すると,アミノ酸が alignment される.ここで下図をみると,3 番目の配列以外は CDS から得たアミ ノ酸配列とマッチしていないことがわかる.したがって,正しいアミノ酸配列は3 番目のものだとわ かる.同様にして他の実験データからも正しいアミノ酸配列を抽出する. (11) Myo31DF の CDS 配列由来のアミノ酸配列と,シークエンスした Myo31DFL152のアミノ酸配列を比較 する.Myo31DFL152は,331 番目のグルタミン(Q)が,終止コドン(−)に変わったことがわかる(下図). *補足①MEGAX のダウンロードについて 以下のURL からダウンロードが可能です. https://www.megasoftware.net/ (注)教育用の version をダウンロードするので,念のため大阪大学のwi-fi(odins-1x 等)からアクセスす ることを推奨します.

(15)

15

実験

Ⅱ 表現型の共通性を指標とした遺伝子解析

実験の背景と原理

順遺伝学

(Forward genetics)

順遺伝学とは,“突然変異の導入→目的となる表現型の探索→表現型の責任遺伝子の同定”という流れで 構成される研究手法のことを指す.多くの場合,順遺伝学は,染色体のランダムな位置に突然変異を導 入し,多数の突然変異体を樹立することから始まる.ほとんどの突然変異体は,ホモ接合体でのみ表現 型を示すため,それぞれの系統の突然変異ヘテロ接合体ショウジョウバエどうしを交配し,次世代で得 られる突然変異ホモ接合体の表現型を観察する.例えば,Notch 情報伝達系の構成因子をコードする遺伝 子の突然変異ホモ接合体胚では,神経過形成の表現型を示すことが知られている.そのため,Notch 情報 伝達系の構成因子を探索する場合は,突然変異ホモ接合体胚が神経過形成の表現型を示す突然変異体の 探索を行う.表皮の形成に関連する因子を探索するならば,突然変異ホモ接合体の表皮が異常な形態を 示す突然変異体を探索する.このように,目的に応じて表現型を設定し,その表現型を示す突然変異体 を探索することで,その表現型に関与する遺伝子を網羅的に得られる.次に,その突然変異体の責任遺 伝子を決定する.責任遺伝子の候補を絞り込むときには様々な手法が用いられるが,最終的には,候補 遺伝子の発現によって,表現型が救済されるかを確認することで,責任遺伝子を同定する. 今回の実習では,この3 つの流れの内の“目的となる表現型の探索”という部分に焦点をあて,実験を行 う.与えられたショウジョウバエ系統A, B について,神経の観察,表皮形成の観察を行う.各系統の示 す表現型にもとづいて,“観察結果のまとめ”を作成する.

実験

Ⅱ−1: 表皮の観察

ショウジョウバエの表皮は,1 層の上皮細胞シートからなり,クチクラ(Cuticle)と呼ばれる体表を保護 する物質によって守られている.幼虫期のクチクラには,短い毛状の突起が帯状に密集した構造があり, これは歯状突起帯と呼ばれる.歯状突起帯は,胚発生の終わり頃に,胚の腹側に形成される.それぞれ の帯を形成する歯状突起の向きと配置は,遺伝的に厳密に決まっており,その形成には,Hedgehog シグ ナル,Wnt シグナル,EGF シグナル,Notch シグナル経路などが関与することが分かっている.これらの シグナルは,表皮の形態を指標の一つとして研究されてきた. 胚の表皮を観察するには,胚を乳酸処理する.これにより,表皮のクチクラ構造は無傷のまま,胚の 内容物のみを分解することができ,クチクラ構造の観察や保存が容易になる. 実験Ⅱ−1 では,乳酸処理した胚のクチクラ形態を顕微鏡で観察し,表皮の形成異常を示す突然変異体 を探索する.

実験

Ⅱ−2: DAB 染色による神経の観察

抗体は,様々なタンパク質を特異的に認識できる.発生学の研究においても,任意の組織や細胞を観 察し,その発生機構を解析する上で無くてはならないツールとなっている.例えば,特定の細胞だけで 発現しているタンパク質を,抗体を用いて特異的に染色することで,突然変異体におけるその細胞の有

(16)

16

無や空間的配置の異常といった表現型を明確に判別できる.

実験 II-2 では,1 次抗体として,Elav タンパク質を特異的に認識する抗 Elav 抗体を用いる.elav 遺伝 子は,分化した神経系で特異的に発現する. Avidin-Biotinylated enzyme Complex(ABC)反応によって, 抗 Elav 抗体を Hourse Raddish Peroxidase(HRP)で標識する. 発色基質である 3,3’-DiAminoBenzidine(DAB)の 酸化還元反応によって, 神経細胞を可視化することで, 神経の形成異常を示す突然変異体を探索する.

実験の目的

配布されたショウジョウバエについて,胚期の表現型を観察する.その観察結果をもとに,突然変異系 統を表現型ごとにグループ分けする.

実験に用いるショウジョウバエ系統

野生型系統(CS; Canton-S の略), Delta(Dl)突然変異系統, wingless(wg)突然変異系統

廃液の分類

ヘプタン(Heptane),メタノール(Methanol, MtOH) … 有機廃液 パラホルムアルデヒド(PFA) in PBS … 固定廃液 その他 … 一般廃液

実験手順

実験

Ⅱ−1: 表皮の観察_____________________________________________________

● 採卵の準備(TA が行う)

羽化後25℃で飼育したショウジョウバエ成虫に,酵母ペーストを 2 日間食べさせる.その後,25℃の採 卵ケージ内で飼育する.

● コリオン膜の除去

2 系統のショウジョウバエ(CS(野生型), wg/CyO)のどちらかが配られる. (1) 採卵用寒天プレートをファルコンチューブから取り出す.胚は,寒天表面にあり,全長 0.5mm 程度 で白い.ポイフル型をしており,2 本の突起がある. (2) 採卵用寒天プレートに PBT をかける.筆を用いて,胚をプラスチック皿内に洗い落とす. (3) ナイロンメッシュを付けたプラスチック管を,空のプラスチック皿の中に置く. (4) プラスチックケース内で PBT に懸濁した胚を,プラスチック管に注ぎ入れる.プラスチック管から 溢れさせないように注意する.プラスチック皿をPBT ですすぎ,プラスチック皿に張り付いた胚を プラスチック管に移す. (5) 50% ハイターを新しいプラスチック皿に入れ,胚の入ったプラスチック管を浸ける. (6) プラスチック管を 4 分間 振盪する(コリオン膜が除去された胚は浮かび上がってくる).

(17)

17 (7) 洗ビンの PBT で,プラスチック管の底にある卵を,5 秒間 洗う. (8) 採卵が終了したショウジョウバエは,TA にわたす.

● ビテリン膜の除去

(1) P1000 を用いて,900μL のヘプタンと,900μL のメタノールを,2mL チューブに加える. (2) 【● コリオン膜の除去(7)から続き】プラスチック管をペーパータオルに載せ,ナイロンメッシュや キャップに付いたPBT を除く. (3) 筆の水分を拭った後,2mL チューブ上層のヘプタンに筆先を浸け,筆をヘプタンで湿らせる. (4) ナイロンメッシュをプラスチック管からはずし,ヘプタンで 湿らせた筆を用いて,胚をヘプタンとメタノールが入った 2mL チューブに沈める(使用したプラスチック管とナイロン メッシュは捨てない). (5) 30 秒間 強く振る. (6) 30 秒間 2mL チューブを静置し,上層(ヘプタン)と下層(メタ ノール)が分離するのを待つ.チューブの底に約 2/3 の胚が沈 む(右図).この沈んだ胚は,ビテリン膜が除去されており, 観察に適している.P1000 を用いて,できる限りの液と沈ん でいない胚を除く. 【注意】ヘプタンとメタノールは有機廃液に捨てる. (7) P1000 を用いて,1mL のメタノールを加える.P1000 を用いて,メタノールを除く. (8) (7)の作業を,さらに 2 回 繰り返す(合計 3 回). (9) P1000 を用いて,1mL の mild PBT を加える.P1000 を用いて,mild PBT を除く. (10) (9)の作業を,さらに 2 回 繰り返す(合計 3 回). (11) P1000 を用いて,1mL の mild PBT を加える.

● 乳酸処理

(1) 先端を切断したチップを装着した P200 を用いて,胚を適量スライドグラス上に載せる. (2) コヨリ状にしたキムワイプを用いて,スライドグラス上の mild PBT を吸い取る. (3) P200 を用いて,50μL の 75% 乳酸液を胚に垂らす. 【注意】乳酸液は入れる前にボルテックスする. (4) その上からカバーガラスをかぶせる.この際,胚が重なっていると,クチクラを観察しにくいので, イエローチップでつつき,胚をスライドグラス上で散らばらせる. (5) スライドグラスを 60℃インキュベーターに入れ,1 時間 静置する.

● ショウジョウバエ胚のクチクラの観察

(1) 自分で染色した胚を観察・スケッチした後, 隣の人とサンプルを交換し, もう一方の系統について観 察・スケッチを行う. 【注意】突然変異体系統は,ヘテロ接合体で維持しているため, 生まれてくる胚の4分の1が突然変異体の ホモ接合体である. 観察時は, 数匹の表現型を観察し, 適切な胚を観察する.

(18)

18

実験

Ⅱ−2: DAB 染色による神経の観察_______________________________________

● 採卵の準備(TA が行う)

羽化後25℃で飼育したショウジョウバエ成虫に,酵母ペーストを 2 日間食べさせる.その後,25℃の採 卵ケージ内で飼育する.

● コリオン膜の除去

2 系統のショウジョウバエ(CS(野生型), Dl/TM6B)のどちらかが配られる. (1) 採卵用寒天プレートをファルコンチューブから取り出す.胚は,寒天表面にあり,全長 0.5mm 程度 で白い.ポイフル型をしており,2 本の突起がある. (2) 採卵用寒天プレートに PBT をかける.筆を用いて,胚をプラスチック皿内に洗い落とす. (3) ナイロンメッシュを付けたプラスチック管を,空のプラスチック皿の中に置く. (4) プラスチックケース内で PBT に懸濁した胚を,プラスチック管に注ぎ入れる.プラスチック管から 溢れさせないように注意する.プラスチック皿をPBT ですすぎ,プラスチック皿に張り付いた胚を プラスチック管に移す. (5) 50% ハイターを新しいプラスチック皿に入れ,胚の入ったプラスチック管を浸ける. (6) プラスチック管を 4 分間 振盪する(コリオン膜が除去された胚は浮かび上がってくる). (7) 洗ビンの PBT で,プラスチック管の底にある卵を,5 秒間 洗う. (8) 採卵が終了したショウジョウバエの親を,TA にわたす.

● 胚の固定

(1) 2mL チューブに,900μL の 4% パラホルムアルデヒド(PFA) in PBS を加える. (2) (1)の 2mL チューブに,900μL のヘプタンを加える. (3) 【● コリオン膜の除去(7)から続き】プラスチック管をペーパータオルに載せ,ナイロンメッシュや キャップに付いたPBT を除く. (4) 筆の水分を拭った後,(2)の 2mL チューブ上層のヘプタンに筆先を浸け,筆をヘプタンで湿らせる. (5) ナイロンメッシュをプラスチック管からはずし,ヘプタンで湿らせた筆を用いて,胚を 4% PFA in PBS とヘプタンが入った 2mL チューブに沈める(使用したプラスチック管とナイロンメッシュは捨 てない).PFA(下層)まで筆を挿し込むと胚が筆から離れないので注意する. (6) 40 分間 室温で振盪する(水平方向に振盪する装置を使用する). (7) P1000 を用いて, 胚を吸わないように注意しながら,ヘプタン(上層)と PFA(下層)を除く. 【注意】ヘプタンは有機廃液に,PFA は固定廃液に捨てる.

● ビテリン膜の除去およびブロッキング

【注意】以下の(1)と(2)の順番を守る. (1) P1000 を用いて,900μL のヘプタンを,胚が入った 2mL チュー ブに加える. (2) P1000 を用いて,900μL のメタノールを,胚が入った 2mL チュ ーブに加える.30 秒間 強く振る. (3) 30 秒間 2mL チューブを静置し,上層(ヘプタン)と下層(メタノ

(19)

19 ール)が分離するのを待つ.チューブの底に約 2/3 の胚が沈む(上図).この沈んだ胚は,ビテリン膜 が除去されており,染色に適している.P1000 を用いて,できる限りの液と沈んでいない胚を除く. 【注意】ヘプタンとメタノールは有機廃液に捨てる. (4) P1000 を用いて,1mL のメタノールを加えて, 転倒混和する.P1000 を用いて,メタノールを除く. この作業を,さらに1 回 繰り返す(合計 2 回). 【注意】メタノールは有機廃液に捨てる. (5) P1000 を用いて,1mL の PBT を加える. (6) 胚が沈んだら,P1000 を用いて,PBT を除く. (7) (5)と(6)の作業を,さらに 2 回 繰り返す(合計 3 回). (8) P1000 を用いて,1mL の PBT を加える.室温で 5 分間 振盪する. (9) 胚が沈んだら,P1000 を用いて,PBT を除く. (10) (8)と(9)の作業を,さらに 1 回 繰り返す(合計 2 回). (11) P1000 を用いて,1mL の 2% Block Ace を加え,室温で 30 分間 振盪する.

● 1 次抗体反応

(1) 以下に示した 1 次抗体反応液(マスターミックス)を調整する. 1 次抗体液 □ PBT 90 μL □ 2% Block Ace 10 μL □ mouse anti-Elav antibody (IgG) 0.2 μL

Total 100 μL (2) P1000 を用いて,チューブから 2% Block Ace を除く. (3) P200 を用いて,チューブに 100μL の 1 次抗体液を加える. (4) 4℃で一晩 振盪する.

● 2 次抗体反応

(1) P200 を用いて,一晩 振盪させたチューブから 1 次抗体液を除く. (2) P1000 を用いて,1mL の PBT を加える. (3) 胚が沈んだら,P1000 を用いて,PBT を除く. (4) (2)と(3)の作業を,さらに 2 回 繰り返す(合計 3 回). (5) P1000 を用いて,1mL の PBT を加える.室温で 5 分間 振盪する. (6) 胚が沈んだら,P1000 を用いて,PBT を除く. (7) (5)と(6)の作業を,さらに 1 回 繰り返す(合計 2 回).待ち時間に,以下に示した 2 次抗体反応液(マ スターミックス)を調整する. 2 次抗体液 □ PBT 90 μL □ 2% Block Ace 10 μL □ Biotinylated Anti-mouse antibody 0.5 μL

(20)

20 (8) P200 を用いて,チューブに 100μL の 2 次抗体液を加える. (9) 室温で 1 時間 振盪する.

● ABC 反応

(1) P1000 を用いて,チューブから 2 次抗体反応液を除く. (2) P1000 を用いて,1mL の PBT を加える. (3) 胚が沈んだら,P1000 を用いて,PBT を除く. (4) (2)と(3)の作業を,さらに 2 回 繰り返す(合計 3 回). (5) P1000 を用いて,1mL の PBT を加える.室温で 5 分間 振盪する. (6) 胚が沈んだら,P1000 を用いて,PBT を除く. (7) (5)と(6)の作業を,さらに 1 回 繰り返す(合計 2 回). (必ず以下の ABC 反応液を調整する). ABC 反応液 □ □ PBT 2% Block Ace 440 50 μL μL □ A 液(アビジン) 5 μL □ B 液(ビオチン化ペルオキシダーゼ) 5 μL Total 500 µL (8) P1000 を用いて PBT を除き, P1000 を用いて ABC 反応液 500μl を加える (9) 室温で 40 分振とうさせる(この間に[発色反応-(1)]の試薬を調整する).

● 発色反応

【注意】危険な試薬が多いので,手袋をして操作すること. (1) 以下に示す, 試薬を調整し, 氷上で保存する. DAB 溶液 □ □ 5 mg/ml DAB PBS 40 360 μL μL Total 400 μL 反応開始液(1 班分) □ □ milliQ H2O2 95 5 μL μL Total 100 μL 【注意】DAB 溶液は, 発ガン性あり. H2O2に絶対に素手で触れない. (2) P1000 を用いて, 40 分振とうさせたチューブから ABC 反応液を除く. (3) P1000 を用いて,1mL の PBT を加える. (4) 胚が沈んだら,P1000 を用いて,PBT を除く. (5) (3)と(4)の作業を,さらに 2 回 繰り返す(合計 3 回). (6) P1000 を用いて,1mL の PBT を加える.室温で 5 分間 振盪する. (7) 胚が沈んだら,P1000 を用いて,PBT を除く.

(21)

21 (8) (6)と(7)の作業を,さらに 1 回 繰り返す(合計 2 回).(この間に(9)の作業を行っておく). (9) 4 穴プレートで使用する穴に 500μl の PBT を加える. また, どのサンプルを入れるかが分かるように ラベルを書いたテープを張っておく. (10) 4 穴プレートの穴に入れた PBT を, P1000 を用いて除く. 先端を切ったチップを使用して, P1000 を用 いて, 胚を PBT と一緒にラベルした 4 穴プレートの穴に移す. (11) P1000 を用いて, 胚を吸わないように PBT を除去し, DAB 溶液 400μl を加える. (12) 室温で 10 分振とうする. (13) 実体顕微鏡下に 4 穴プレートを移動させ, 胚に焦点を合わせる. 【注意】この後の反応は非常に速いので手際よく作業を進められるように, 反応に使用する試薬, ピペッ トマンの目盛りの準備などを済ませておく. (14) P2 を用いて, 反応開始液を 1μl 加え, プレートをゆすり反応開始液がよく混ざるようにする. (数 10 秒後には茶色の発色が見られる.発色が薄い場合は,さらに反応開始液をもう 1μl 加え, プレ ートをゆすり反応開始液をよく混ぜる.) (15) シグナルが十分と判断したら P200 を用いて, 胚を吸い込まないよう DAB 溶液を除く. 【注意】DAB 溶液は, DAB 廃液に捨てる. (16) P1000 を用いて,1mL の PBT を加える. (17) P1000 を用いて,PBT を除く. 【注意】1 回目の洗浄液は, DAB 廃液に捨てる. (18) (16)と(17)の作業を,さらに 2 回 繰り返す(合計 3 回). (19) P1000 を用いて,1mL の PBT を加える.染色を終えた胚を, チップの先端をハサミで切った P1000 を用いて, PBT と一緒に 1.5ml チューブに移す. (20) PBT を除き, 1ml の 50%グリセロール/PBS を加える.

● 神経形態の観察

(1) 22 x 22mm のカバーガラス 2 枚を,スライドガラスの両端にビニールテープで貼り付ける. (2) 先端を切ったチップを装着した P200 を用いて,サンプルをスライドガラスへ適量(約 65μL)乗せ,22 x 32mm のカバーガラスをかぶせる(下図). (3) 自分で染色した胚を観察・スケッチした後, 隣の人とサンプルを交換し, もう一方の系統について観 察・スケッチを行う. 【注意】突然変異体系統は,ヘテロ接合体で維持しているため, 生まれてくる胚の4分の1が突然変異体の ホモ接合体である. 観察時は, 数匹の表現型を観察し, 適切な胚を観察する.

(22)

22

レポートに関して

生物学実験: □ 実験Ⅰ: シークエンス解析結果・考察 □ 実験Ⅱ: 観察結果の考察 をレポートに記載する. 演習D: 4 本の論文のうち、各自が担当する論文の内容をまとめてレポートに書いてください。 実習お疲れ様でした.よいお年を!

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参考資料

ショウジョウバエの胚発生の過程

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Figure Source: “Atras of Drosophila Development”

参照

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