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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2022

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(1)

氏 名 山本 裕

授与した学位 博 士

専攻分野の名称 理 学

学位授与番号 博乙第 4529 号

学位授与の日付 2021年 3月 25日

学位授与の要件 博士の論文提出者

(学位規則第4条第2項該当)

学位論文の題目 島嶼性鳥類の地域個体群の変動要因と保全に関する基礎的研究

論文審査委員 教授 富岡 憲治 教授 竹内 栄 准教授 三村 真紀子 教授 宮竹 貴久

学位論文内容の要旨

本論文では,特に保全上の優先度が高い島嶼性鳥類を対象に,伊豆諸島に生息する鳥類の地域個体群の変 動要因を調べると共に,絶滅危惧種に関する現状の把握と生態の基礎情報を集め,今後の保全に資すること を目的とした。

地域の鳥類群集の変動要因には自然要因と人為的要因とがある。本論文では自然要因として,自然移入と,

2000年に発生した三宅島の火山噴火による鳥類群集の変動について調査した。その結果,自然移入に関し ては,本州亜種ヤマガラの三宅島への移入と,インド,中国南部,フィリピン等に生息するルリオハチクイ の伊豆諸島八丈島への移入が観察された。この三宅島へのヤマガラの移入は冬期のみであった。ルリオハチ クイの観察は1回のみであったが,近年,伊豆諸島ではルリオハチクイ以外にもオニカッコウなど南方系の 鳥類が確認されていることから,気候変動により南方系鳥類の本来の分布が変わりつつある可能性が示唆さ れた。一方,三宅島の噴火による影響については,長期的なラインセンサス結果から,火山ガスにより植生 が枯死した南西部の調査地で確認種数が減り,オーストンヤマガラ,ヒヨドリが減少し,シジュウカラが増 加していることが明らかになった。これらの変化は,火山活動開始直後の降灰による鳥類と採餌環境への直 接的な被害や,山頂陥没による生息地消失の直接的な影響に加えて,山頂火口からの火山ガス放出が長期間 継続し,植生が枯死したことによる生息環境の悪化や採餌環境の変化等による間接的な影響によるものと考 えられた。三宅島における人為的要因としては,自動車との衝突によるロードキルが挙げられた。車の前を 横切る鳥類の種類と数を調査したところ,アカコッコ,ホオジロ,ツグミ,ヒヨドリ,ハシブトガラス,イ ソヒヨドリ,メジロの個体数が多く,中でもアカコッコ,ホオジロ,ツグミは車高以下の低い位置を横切る 割合が高かった。実際,これら3種のうち2種についてはロードキルによる死体が確認された。これらに加 えて,ウグイス,ミソサザイなども低い場所を移動することから潜在的リスクがあると考えられた。興味深 いことに,道路を横切る個体数は日の出時刻が最も多かった。この時間帯は三宅島での定期船の入港による 交通量の多い時間帯に一致しており,これがロードキルリスクを高めている原因と考えられた。

絶滅危惧種に関する現状把握に関しては,アカコッコを調査対象とした。調査の結果,伊豆諸島における アカコッコの生息密度はトカラ列島間に比較して高く,中でも三宅島が特に高いことが明らかになった。伊 豆諸島内では,さえずりを構成するシラブル数が,八丈島個体群で三宅島個体群に較べて少ないなど,島ご とに隔離された個体群では,種内変異が進みつつあることが示唆された。

今後,本研究で得られた基礎データを用いて,施策への反映や,負の影響を及ぼす変動要因の軽減を進め ることで,島嶼性鳥類,特に絶滅危惧種の保全を図ることが期待される。

(2)

論文審査結果の要旨

本論文は,保全上の優先度が高い島嶼性鳥類を対象に,伊豆諸島特に三宅島に生息する鳥類の地域個体群の 変動要因を調べると共に,絶滅危惧種に関する現状と生態学的基礎情報を収集し,今後の保全に資することを 目的としたものである。鳥類群集の変動要因には自然要因と人為的要因とがあるが,本論文では,自然要因と して,外部からの自然移入と,2000年に発生した三宅島の火山噴火による鳥類群集の変動について調査してい る。自然移入に関しては,本州亜種ヤマガラの三宅島への移入や,ルリオハチクイの伊豆諸島八丈島への移入 を観察し,気候変動により本来の分布が変わりつつある可能性を指摘した。一方,噴火による影響については,

長期的なラインセンサス結果に基づき,噴火後の確認種数の減少や,オーストンヤマガラ,ヒヨドリ,シジュ ウカラなどの個体数の増減等が地域依存的に生じていることを明らかにした。これらの変化は,火山活動開始 直後の降灰による生息地の消失,火山ガスによる植生の枯死による生息環境の悪化等による直接・間接的な影 響によるものと考察した。顕著な人為的要因として,三宅島における自動車との衝突によるロードキルを挙げ ている。走行している自動車の直前を横切る鳥類の種類と数を調査し,アカコッコ,ホオジロ,ツグミが車高 以下の低い位置を横切る割合が高く,この内2種ではロードキルによる死体を確認した。道路を横切る個体数 は日の出時刻が最も多く,この時間帯は三宅島での定期船の入港による交通量が増加する時間帯に一致してお り,これがロードキルリスクを高めている原因の一つと考察した。絶滅危惧種に関する現状把握については,

アカコッコを対象に調査を進め,伊豆諸島における生息密度がトカラ列島に比較して高く,とりわけ三宅島が 高いことを明らかにした。また,伊豆諸島内では,さえずりを構成するシラブル数が,八丈島個体群で三宅島 個体群に較べて少ないなど,島ごとに隔離された個体群間では,種内変異が進みつつあることを示す結果を得 た。本研究で得られた基礎データは,施策へ反映させるとともに,負の影響を及ぼす変動要因の軽減を図るこ とで,島嶼性鳥類,特に絶滅危惧種の保全に資すると期待される。

本論文は,島嶼性鳥類の地域個体群の変動要因と保全についての理解を大きく進展させるものであり,博士 論文に相応しいと認められた。また,発表および質疑応答の状況からも,申請者は博士の学位に値するものと 判断された。

参照