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ノリ漁場におけるビタミンB_12分布

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Academic year: 2021

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(1)

ノリ漁場におけるビタミンB_12分布

著者

柏田 研一, 金澤 昭夫, 佐々木 一郎

雑誌名

鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of

Fisheries Kagoshima University

13

ページ

52-57

別言語のタイトル

Distribution of Vitamin B_12 in the Laver-farm

URL

http://hdl.handle.net/10232/14333

(2)

52

ノリ漁場におけるビタミンB12分布*

柏田研一・金沢昭夫。佐々木一郎

DistributionofVitaminB12intheLaver-farm

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growthoflaverandthevitaminB12contentinthefarmingwater.

わが国におけるノリの養殖はこれまで主として河口近くか,あるいは河川水の影響を受け

る地域で行なわれているが》このように河川水の注流する水域にノリ漁場が開拓されている

のは,その場所がノリの生育に好適な環境になっているためと考えなければならない.

ノリの生育は水質,水流,温度,光線など色々の環境要素の影響を受けることが知られて

おり,河口に近い場所で一般にノリがよくできるのは,海水に不足しがちな窒素肥料分が河

水によって運ばれてくるためと考えられているようであるが,この考え方に誤りがないかど

うかについては更に研究,実験を行なう必要がある.河川水によって色々の物質が運ばれ,

植物に対する栄養成分の補給が行なわれていることは事実としても,窒素分の補給にのみ重

要な意義があるかどうかはわからない.一般に天然水にはわれわれの既知および未知の多種

類の物質がイオンや化合物の形で存在し,そのうちのあるものは直接間接,ノリの生育,品

質に影響を及ぼしていると思われるが,既知の物質でもそれがどのような形で,又どのよう

な量でノリに影粋を及ぼすかは充分よくはわかっていない.その全貌の究明は至難であるが,

*本研究の大要は1963年9月,日本水産学会九州支部大会(別府)で発表した.

(3)

柏田。金沢。佐々木:ノリ漁場におけるビタミンB12分布 53 少なくとも既知の物質についてノリ漁場における分布とノリの生育状態との関係を吟味する ことは,ノリの栄養要求に関する基礎的研究と相まって,ノリ漁場の開拓および生産力の向 上を図るに当っての有用な資料を与えることになると思われる. この実験は上記のような考えに立って行なったもので,ビタミンB12(以下B12と略記) を実験の対・象としたのは,窒素や燐酸のような既知のいわゆる肥料成分以外に,このビタミ ンが多くの下等藻類,下等生物の生長,繁殖に必要なことが近年の研究によって次第に明ら かにされてきていること,さらに筆者らl)はノリの生長がBl2の存在によって促進されるこ と を 培 養 実 験 に よ っ て 証 明 し て い る な ど の 理 由 に よ る も の で あ る . 実 験 九 州 内 に は 諸 所 に ノ リ 漁 場 が 開 拓 さ れ て お り , 全 国 的 に 有 名 な 盛 漁 場 も あ る が , 今 回 は 予 備 的 試 験 の 意 味 も あ り , 又 人 員 の 関 係 な ど も あ っ て 必 ず し も 最 適 場 所 と は 考 え な か っ た が 本

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Fig.1.ChartofKagoshimacityshowingthe statlonoflaver-farm. 学 部 に 最 も 近 い 鹿 児 島 市 新 川 地 先 の ノ リ 漁 場 を 選 定 し た . な お こ の 地 区 で の ノ リ 養 殖 は 昭 和 35年頃から始められている.Fig.1はこのノリ漁場とその付近の地形を示したものである. 昭和37年11月17日と翌年2月15日の2回,千潮時と満潮時に表面下10-15cmから採水し, 直ちに本学部実験室に持帰りB12を定量し,同時に参考のため亜硝酸態窒素と溶存酸素量を 測定した.なおこの漁場に注ぐ新川についても,河口を起点とし上流約200mの間隔をおい た9地点で採った水について上記の3成分を定量した.各採水地点はFig.2に示した.

(4)

7 54 7 6 結 果 と 考 察 Tablel−(1)は11月17日,Tablel−(2)は2月15日の各試水についての3成分の定量結果 である. 11月中旬のノリ漁場におけるB12の分布は干潮時と満潮時とで多少異なっているが,この 相異は新川の水のB12量から見て,河川水の流入による現象であることがわかる.すなわち St、1は河の主流から外れ,13,14の両点は河口から遠く,したがって河川水の影響が他の地 点よりも少ないと考えられる地域であるが,B12は明らかに他の地点よりも少なく,河口に

近く,河川水の流入が多いと考えられる場所はB12が多い.前記のようにこのB12分布は千

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柏田.金沢.佐々木:ノリ漁場におけるビタミンB12分布

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潮時と満潮時とで異なり,満潮時にはノリ漁場のB12は減少し,又その量の比較的多い範囲

が縮小しているのは,満ち潮によって河川水の流れが幾分せき止められ漁場がB12の少ない

海水によって占められることの現われと解せられる.このことは新川におけるB12分布を見

ると一層明瞭となる.すなわち多少の振れを除けばB12は河口近くが豊富であるが,下流で

は干潮時と満潮時とで分布が異なり,満潮時はやや上流までB12が豊富になっているが,こ

れは揚げ潮のために河川水の流れが停滞したことを示すものと考えられる.上流よりも下流

の水にB12が多いのは,河川水中におけるB12の生成のほか,都市の下水その他陸上からの

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11 *..…・Lowwater **.….、Highwater 55

(6)

8.1 鹿児島大学水産学部紀要第13巻(1964) 21 (2)rebruaryl5,l963 Thelaver-farm 7.1 6.3 9.0 21 VitaminB12(mγ/J)

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1ワ︼1 9.6 L 、 W 、 | H 、 W 、 | L 、 W , | H 、 W 、 流入などによるものであろうが,いずれにしても,この場合の河川水は海水への重要なB12 補給源になっていることがわかる. 溶 存 酸 素 量 は , 波 浪 な ど に よ っ て 水 の 撹 伴 が よ く 行 な わ れ て い る と 思 わ れ る 浅 海 の , し か も 表 面 近 く の 水 で あ る か ら 豊 富 で , 場 所 に よ る 変 動 も 少 な く , 又 河 川 水 の 影 響 も ほ と ん ど 見 られない.河川水では河口に近い付近の水が,上流の水に比べてやや酸素量が少ないが,あ る 地 点 か ら 上 流 の 水 の 間 に は ほ と ん ど 差 異 が な い . 亜硝酸態窒素のノリ漁場における分布は欠測もあるが,B12の場合のような特に注目をひ く 場 所 的 の 傾 向 は 見 ら れ ず , 干 潮 時 と 満 潮 時 と の 相 異 も 顕 著 で な い . 又 河 川 水 中 の 量 は 場 所 に よ る 変 動 が 大 き く , 同 一 地 点 で は 干 潮 時 よ り も 満 潮 時 の 方 が 高 い 値 を 示 し て い る が , こ れ らの現象の原因は明らかでない. 次 に 2 月 中 旬 の 水 に つ い て も 各 成 分 の 定 量 結 果 と そ の 傾 向 は 1 1 月 の 場 合 に 似 て い る . す な 10.9 10.8 11.3 11.3 11,5 11.2

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(7)

拍 田 ・ 金 沢 。 佐 々 木 : ノ リ 漁 場 に お け る ビ タ ミ ン B 1 2 分 布 57 わちノリ漁場のB12は河川水の注流する路筋に当っている場所が豊富で,沖合になるにした がって少なくなっており,又満潮時の漁場は海水で占められるため,B,2の多い区域が河口 近くに圧縮されていることも11月の場合と同様である.新川におけるB12の分布,潮の干満 によるその変化の状態,B,2の含量そのものも漁場水,河川水とも11月とほとんど差異がな い. 溶存酸素量は,漁場では場所によるはっきりした違いは見られないが,干潮時と満潮時と では後者の方がやや多くなっている.河川水中の溶存酸素量は河口近くでは海水のそれとほ ぼ等しく,上流ではやや量が多いが,これも前回の場合と同様である. 亜硝酸態窒素も前回とほぼ等しい含量で,場所との関係はあまり明瞭ではないが,B12と 同様,河川水によって補給されていることがうかがわれる. 以上は現にノリ漁場としてヒビが建込まれている区域で,その中心部,境界線付近,区域 外の諸地点の水の成分を定量した結果の概要であるが,この漁場におけるノリの生育状態は 概して河口に近く,河川水の影響を強く受けると考えられる場所がよい.このような場所で ノ リ の 生 育 の よ い こ と が 如 何 な る 条 件 に よ る も の で あ る か に つ い て , 今 回 の 僅 か な 実 験 結 果

から推定することは困難であるが,上記のようにB,2のこの漁場における分布は,ノリの生

育状態とよく照応し,又筆者らが過去行なったB,2とノリの生育との関係に関する培養試‘験 の結果とも矛盾せず,天然の漁場においても両者の間に深い関係のあることを暗示する結果 が得られたのは興味深い.このことはさらに年を変え,漁場を変え,研究,実験を重ねて事 実の確認に努めたい. 総 括 ノリがよく生育するためには色々の条件があり,これら諸条件を満たしている場所が良好

なノリ漁場となるわけであるが,現存のノリ漁場について各観点から環境条件を探究するこ

とは,ノリ漁場として具備すべき条件を解明するための一つの行き方と考え,鹿児島市新川

河口のノリ漁場について,まずビタミンB12の分布を明らかにし,このビタミンの豊富なこ とがノリ漁場として必要な条件であるかどうかを判断するための実験を行なった.

昭和37年11月と38年2月の2回,ノリ漁場と,ここに注流する新川の水のB,2,亜硝酸態

窒素,溶存酸素量を測定し,場所による相異,干満による変化を調べ,これらとノリの生育

状態との関係を検討した.その結果,溶存酸素量はあまり差異がなく,亜硝酸態窒素は漁場,

河川水ともその量が比較的少なく,かつまちまちで又漁場における分布にあまり明瞭な傾向

が見られなかったが,B12は河川水がノリ漁場に対する重要な補給源になっていること,し

たがって河口に近くて河川水の流入が多い場所にB12が多く,ノリの生育の旺盛な区域は

B12の比較的豊富な場所と一致した.これはノリの生育が培地にB12を添加することによっ

て促進されることを証明した筆者らの実験結果とも符合するが,このことから直ちにB12の

豊富なことはノリ漁場として具備しなければならない条件の一つであると結論する考えはな

い.今後の研究,実験によって明らかにされると思うが,ノリ漁場とB12とが関係のあるこ

とを肯定する結果が得られたことは一つの収穫であった. 文 献

l)金沢昭夫。柏田研一(1959):藻類の栄養代謝に関する研究一I,本誌7,187-191.

参照

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