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液体窒素槽内蒸着法によるウィスカーの作成

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Academic year: 2021

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(1)

液体窒素槽内蒸着法によるウィスカーの作成

著者

大園 義久, 末吉 秀一, 大串 哲彌

雑誌名

鹿児島大学工学部研究報告

27

ページ

227-232

別言語のタイトル

Preparation of a whisker by evaporation in a

chamber cooled with liquid N_2

(2)

液体窒素槽内蒸着法によるウィスカーの作成

著者

大園 義久, 末吉 秀一, 大串 哲彌

雑誌名

鹿児島大学工学部研究報告

27

ページ

227-232

別言語のタイトル

Preparation of a whisker by evaporation in a

chamber cooled with liquid N_2

(3)

液体窒素槽内蒸着法によるウィスカーの作成

大 陸 l 義 久 ・ 末 吉 秀 一 ・ 大 串 哲 補

(受理昭和60年5月30H) pREpARATIONOFAWHISKERBYEVAPORATIONINACHAMBER

C()OLEDWITIILIQⅢDN2

YoshihisaOZONQHidekazuSUEYOSHIandTetsuyaOGUSHI

Awhiskerwaspreparedbyevaporatingmolybdenuminanoxygengasatmosphereof0.5

Torr.AllprocesseswerecarriedoutinachambercooledwithliquidN2・

Thewhiskerobtainedwasathinplatel2−25/αminwidthand4mminmaximumlength・

Analyzedwithatransmissionelectronmicroscope,anX-raymicroanalyser(EPMA),andan

X-raydiffractionapparatus,itbecameclearthatthewhiskerisasinglecrystalofMoO3,which

hasanorthorhombiclattice,andgrowslongitudinallyinparalleltothe(()10)plane・

Thisevaporationmethodmaybeusedtopreparethewhiskersofhigh-melting-pointmetals

suchasmolybdenum.

1 . 緒 言 結晶格子の転位を含まないウィスカー(whisker) はその物性が他の状態にあるものとは著しく異なるこ とは良く知られている。一般にウイスカーは気相から の還元で作られており,その成長機構は,蒸気相がウ イスカーの先端で液体となり凝固して成長していくと

されている(')が,まだ十分明確にはされていない。ま

た現在作成されているウイスカーは,一部には数cm という長いものもあるが,ほとんどは直径数ノL、,長 さ数百ノ、程度のものである。 筆者らは,通常の蒸着法と異なる液体窒素槽内蒸着

法'2'によって高融点を有するMoの酸化物のウィス

カーを作成することをこころみたところ,特定の結晶 面が優先的に成長した比較的大きな板状のウイスカー が作成された。 本論文では,このウィスカーの形態および結晶構造 を透過型電子顕微鏡,走査型電子顕微鏡,X線マイ ク ロ ア ナ ラ イ ザ ー お よ び X 線 回 折 装 置 を 用 い て 詳 細 に調べた結果を報告する。 2.実験方法 2 . 1 実 験 装 置 お よ び 試 料 作 成

装置は油拡散ポンプ,ロータリーポとプおよび蒸着

槽から構成されている。蒸着槽の概略図を図lに,そ の 外 観 写 真 を 図 2 に そ れ ぞ れ 示 す 。 ヒ ー タ ー と し て は Mo板を使用し,それを直接Moの蒸着源とした。 実験は以下の方法で行った。まず蒸着槽内の真空度 を1.5×10 7Torrまで排気し,さらにMoヒータを 800℃で10分間加熱して蒸着槽内の脱ガスを行った。 次に純度99.999%の酸素をニードルバルブを通して 0.5Torrまで導入し,実験中はメインバルブを閉じ て酸素圧を0.5Torrに保った。蒸着は,蒸着槽内に 設けられた窒素槽内に液体窒素を連続的に導入しなが ら約20分間Moヒーターに170Aの電流を流して行 った。なお実験終了後約12時間放置してから試料を 取り出した。

(4)

グノ 228 G

2 . 3 X 線 マ イ ク ロ ア ナ ラ イ ザ ー に よ る 分 析 ウィスカーの組成を調べるため,X線マイクロア ナライザー(EPMA,島津EMX−SM)を用い加速 電圧15kV,試料電流0.02,uAで定性分析および面分 析を行った。

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と 聖

2 . 4 X 線 回 折 Mo酸化物を同定するため,島津XD−3A形X線 回折装置を用い,粉末法によって加速電圧20kV, 試料電流10mAでX線回折を行った。 ヨ D E

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鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 2 7 号 ( 1 9 8 5 ) 図 1 蒸 着 装 置 の 概 観 図 A : 試 料 ホ ル ダ E : 絶 縁 板 B : サ フ ァ イ ヤ 板 F : 液 体 窒 素 槽 C : M o ヒ ー タ ー G : マ グ ネ ッ ト D : N b タ ー ゲ ッ ト H : ヒ ー タ ー ホ ル ダ ー

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液 体 窒 素 槽 内 蒸 着 法 に よ っ て 得 ら れ た M o 酸 化 物3 . 実 験 結 果 お よ び 考 察 の形態を走杏副電子顕微鏡によって観察した結果を図 3に示す。図に見るように形態は大きく3種類((a), (c),(e))に分けられる。(a)は平板状の結晶の例を示す< これはある特定の方向に優先的に成長したものと考え られる。幅は12∼25‘し、,長さは最大約4mmであ った。(b)は(a)の拡大写真である。表面はかなり平担で あることがわかる。(c)は棒状に成長した結晶の例を示 す。巨視的な成長方向は(a)と同様であると考えられる が,(c)の拡大写真(d)に見るように,微視的には成長方 向の異なるいくつかの結晶で構成されている。結晶全 体としては,幅が100ノum程度,長さが最大約4mm であった。(e)に示される結晶も棒状の様相を呈してい るが,結晶の先端付近の拡大写真(f)に見るように(c)よ りもさらに多くの微細結晶で構成されている。結晶全 体としては,幅は120,(、で(c)の結晶とほぼ同じであ ったが,長さは700,44mとやや小さかった。以上のよ うにこの蒸着方法では,特定の方向に優先的に成長し た平板状のものから,成長方向の異なる結晶で構成さ れた棒状のものまで種々の形態の結晶が得られた。 ウイスカーとしての観点からは平板状の結晶が特に 興味深い。そこでこの平板状の結晶に注目して検討を 行 っ た 。 ま ず こ の 結 晶 の 組 成 を 明 ら か に す る た め E P M A を 用 い て 分 析 を 行 っ た 。 定 性 分 析 を 行 っ た と ころMoとOが検出された。MOLα線とOKα線に よる面分析の結果を図4に示す。2次電子線像(a)の平 板状の結晶の部分では,MoとOが多くなっている。 こ の こ と は , こ の 結 晶 が M o の 酸 化 物 で あ る こ と を 示唆している。次に結晶構造を明らかにするため,サ ンプルを粉末にしてx線回折を行った。その結果を

図5に示す。Mo酸化物の特性値をASTMカード(3)

か ら ぬ き 出 し て 図 5 の ピ ー ク 位 置 と 比 較 し た 結 果 , 表

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図 2 蒸 若 装 置 の 外 観 写 真 2 . 2 電 子 顕 微 鏡 に よ る 観 察 ウ ィ ス カ ー の 形 態 は 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 ( 日 立 H-700H(200kV))および走査型電子顕微鏡(明石 ISl-30)で観察し,成長面の結晶学的関係は電子線 回折によって調べた。 金 I

(5)

火園・末吉・大巾:液体窒素槽内蒸着法によるウィスカーの作成 229 (a) ( ぺ 」 蔦 (c) (d) (e) (f) 図3走査型電子顕微鏡によるウイスカーの2次電子像

(6)

各 230 ずぱさ 一 −1云

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図 5 ウ イ ス カ ー の X 線 回 折 図

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表1MoO3のX線回折値(3)

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(7)

大園・末吉・大串:液体窒素槽内蒸着法によるウィスカーの作成 231 1 に 示 す よ う に M o O 3 の ピ ー ク 位 置 と 良 い 一 致 が み られた。それぞれのピークの面指数は図5中に併記し た。なお図5において各ピークの強度比I/1,は表1 の値と異なっているが,これは結晶の配向性と関係が あるので後で再び検討する。平板状の結晶が単結晶で あるか否か,また単結晶の場合どの結晶面が優先的な 成長面であるかを調べるため平板の上下面に垂直に雷 (b) (a) 子 線 を 透 過 さ せ る よ う に し て 電 子 線 回 折 を 行 っ た 。 そ の結果を図6に示す。(a)は透過電子顕微鏡像である。 転位などの結晶欠陥はほとんど認められない。(b)は電 子線回折像であるが,明瞭なNパターンが現れてお り,この結晶が単結晶であることを示している。(c)は (b)の回折斑点を指数付けしたものである。これによる と入射電子線は〔010〕方向と平行に入射している 蟻 鯵 参 ⑤

鯵 鰯

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(c) 図6ウイスカーの透過型電子顕微鏡による観察結果 (a)透過龍子顕微鏡像 (b)電子線回折像 (c)回折斑点の面指数

(8)

232 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 2 7 号 ( 1 9 8 5 ) ことになる。このことは電子顕微鏡像(a)の表面すなわ ち平板の上下面は(010)面で構成されていることを 意 味 し て い る 。 な お 図 5 で 示 し た よ う に , X 線 回 折 を行った際,ASTMカードの値と異なり(020), (040)および(060)面の強度が高かったが,これは 結晶が特定の面((010)面)に沿って優先的に成長し た平板状のものであるため,微粉末にすることが難し く,平板状のものがかなり残留し,結果的に(010) 面に関連のある上記の一連の指数面のx線強度が高く な っ た こ と に よ る も の と 考 え ら れ る 。 こ の よ う な x 線回折の結果はまた,平板状の結晶が(010)面に沿 って優先的に成長したことを裏付けるものである。以 上 の 結 果 よ り , 平 板 状 の 結 晶 は , 完 全 結 晶 に 近 い MoO3のウイスカーと結論される。 Mo板をヒーターとして0.5Torrの酸素圧下で行 った液体窒素槽内蒸着によって,このようにMo酸 化物のウィスカーが作成されたことは,高い沸点を有 するMo(l気圧での沸点は5100℃)が蒸着槽内の 酸素によって酸化されて沸点が低下し,蒸着源となり 得たことによるものと考えられる。 現在,気相法で結晶を形成する方法として注目を集

めているものに分子線エピタキシー法がある(4)。この

方法では,結晶構成分子のエネルギーは極度に小さく 抑制されている。その結果,数原子層の厚さのオー ダーで単結晶の製作が試みられていて,三次元LSI を作るための有力な手段と考えられている。一方通常 の蒸着法では,かなり大きな分子エネルギーを有する。 しかし本実験で用いた液体窒素槽内蒸着法では,液体 窒素シュラウド内でしかも真空ではなく0.5Torrの 酸素圧中での蒸着である。蒸着中に起こり得る現象と し て は , 高 温 蒸 着 源 お よ び そ の 周 囲 を と り ま く 約 −200℃のシュラウド壁の存在によって粒子の対流が 発生し,結果的に粒子エネルギーは非常に低くなって いることが考えられる。本論文で述べたような完全結 晶 に 近 い ウ ィ ス カ ー の 作 成 が 可 能 と な っ た こ と も こ の ことに起因するものと考えられる。この蒸着方法は, Moのみならず,他の高融点金属にも適用することが 可能と思われる。 4 . 結 言 通常の蒸着法と異なる液体窒素槽内蒸着法を用いて, 0.5Torrの酸素圧下でMoをヒーター兼蒸着源とし て蒸着を行ったところ,幅12∼25ノL、,最大長さ約4 mmの平板状のウイスカーが作成された。透過型電子 顕微鏡,X線マイクロアナライザーおよびX線回折 装置を用いてこのウィスカーの組成と結晶構造を調べ た結果,ウイスカーは斜方晶のMoO3であり,(010) 面に沿って優先的に成長したものであることが明らか になった。 この液体窒素槽内蒸着法では,高温蒸着源とその周 囲をとりまく低温シュラウド壁の存在によって粒子の 対流が発生し,結果的に粒子エネルギーが低くなり, ウイスカーの生成が容易になったものと考えられる。 この蒸着法は,広く他の高融点金属にも適用すること が可能と思われる。 おわりに分析にご協力いただいた応用化学科福重安 雄講師,電子顕微鏡室椿輝実技官,X線マイクロア ナライザ一室新山透技官ならびに実験にご協力いただ いた大学院生東幸司君に謝意を表します。 文 献 l)三浦維四:金属複合材料,共立出版(1973),112. 2)H・Nagai,T・OgushiandT、Numata:

J・MaterialsScience,17,(1982),1591.

3)ASTM:パウダーデイフラクションファイル, ル55−0508. 4)高橋清:分子線エピタキシー技術,工業調査会 (1984).

参照

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