非営利組織の経営管理の特質(II)
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(2) 第45巻. 第2号. クトを基礎とする特殊な組織と管理の特質を持つものと特徴づけることによって, 組織と 管理の諸制度の2つの理念型を区別して, 両部門を比較対照するという手法を用いてい る。 ー. サ ー ドセクタ. では目標は特殊な曖昧性をもち, それがために, 組織の構成員にとって. は衝突し合う行動基準が存在する結果となる。 このよ うな状況の中での意思決定の過程 は, 別のそうでない組織の意思決定とは異なるのである。 したがって, 目標の曖昧性が サ ー ドセクタ. ー. の紐織と管理の本質的な特性であり, この目標の曖昧性から生ずると考え. られる諸結果が派生的な特性として把握される。 次の表はこれらの諸特性を堀田が編成し て端的に表したものである。. [組織分析の2つの対照的な理念型] [公的・私的セクタ ー ]. [サ ー ドセクタ ー ]. 組織特性 理念型. ウエパー型管理分析. 基準コンフリクト型分析. 目標の性質. 限定• 明確•時限. 不透明な諸目標(主旨•領域· 方向と して示される) 相互に矛盾(ある目標は他の目標を支 えない). 目標設定過程. 目標達成過程. 一. 合理的な目的. 手段の過程. 柔軟な過程(行動の過程や. ・. 後でも目. 目標は行動の前に宣言. 標が規定される). 目標が限定される. 目標が規定されそして発見されてゆく. 組織内部の構成員が目標設定. 構成員と外部の者が目標設定. 合理的な手段. 一. 目的の手続き. 目的と手段が区別できなくなる. 組織はほとんどないしはすべての. 時間ごとにと人ごとにどの目標を達成. 目標を達成するよう貢献する. するかを決定する選択を行う 状況の要請が目標の満足度を決定する (目標の置き換え• 代替が組織の特徴 である). 組織合理性のタイプ. 非公式的•実体的. 公式的・眠能的 管理職能と管理過程は合理化され. 管理職能と管理過程は状況の実存する. る. 特質をめぐって個別化される. 公式的・合理的・分析的:包括的. 状況適合的· 部分的計画化. 計画化/政策策定 システムのタイプ. 限定した目標志向計画化手続き. 主旨•領域・方向の全般的な志向の手 続き. - 2 (222)-.
(3) 非営利組織の経営管理の特質(II) (堀田) 業績評価. 業績遂行は目標達成の機能. 業績遂行は変化に適応し変化を創造す る機能. 総括的評価手続き. 要素的評価手続き 業績達成基準が相互にコンフリクト (ある目標が他の目標の達成に繋がら ない) 業績遂行は特定の目標の達成ではなく 包括的な成功に関係する. 変化の特徴. 組織と管理の特質. 変化への抵抗が間欠的で革命的変. 適応的 ・処理的展開が進化的, 継続. 化に導く. 的, 創造的な変化に導く. 組織支配型の環境関係(組織が環. 組織と環境は弁証法的な関係にある一. 境を変える). 組織と環境の双方が変化する. 安定志向・変化への抵抗・官僚制. 持続的変化・総合的・複合的な組織. 的な組織 制約されたオ ー プン システムの管. 広いオ ー プン システムの管理の視点. 理の視点 (ほとんど• まったく 組織の正当. つねに組織の正当性を問題視する. 性を問題としない) 公式的・戦能的な上下関係. 連合的な上下関係(すべての人が裔度 な選択をする). 合理化された管理手続き:. 過程志向の管理手続き:アク ションリ. PPBS, PERT, MOB. サ ー チ, OD. 官僚的執行経営者一計画化・目標. 実存的経営者一情報収集者・フィ. 達成志向の視点. パック志向. ー. ド. (pp. 448-449.). 1) 組織目標のシステム:目標の性質と目標設定過程の特質 非営利組織が共有している特性は「目標の曖昧性」(goal ambiguity)にあり, さらに, この目標の曖昧性が経営管理者層の間の 「行動基準のコンフリクト」(conflicting stand ards of behavior)という行動パタ. ー. ンをもたらす。 このような状況においては, 意思決. 定の過程は他の状況にある組織とは異なったものとなる。 すなわち,. まず, 目標が曖昧で. あるから, それは組織の構成員の全体の合意と支持を受けられない以上, 目標の設定は 一 般的な方向や主旨の設定によって行われる。 さらに, 目標の設定過程において外部の勢力 が圧力をかけるから, 目標設定の過程には著しく政治的な要素が入り込む。 そこで, 目的 と手段の間の区別がほとんどなく, その設定過程を合理化する努力はほとんどできない。. - 3 (223)-.
(4) 第45巻. 第2号. また, 曖昧な公式の目標は, 複数の目標の中の優先順位を設定しないし, したがって, そ の達成手段の代替的な選択を決定していない。 さらには, 公式の目標は, 組織内部の個人 や集団の追求する非公式な目標に関して何らの規定もしないから, 公式の目標は個人特に 管理者の非公式な操作的目標と衝突する。 これが構成員の行動において業績達成の基準の コンフリ クトをもたらすことになる。 要するに, 目標システムはどの目標を達成すべきかの決定に際して選択の幅が広くて, ある時点やある場所において多数の勢力の総体を通して選択 されるから, その目標システ ムは行動の時間の間にも状況の変化に反応して規定 される結果, それは前後関係に左右 さ れる性質をもつ。 これが次には, 管理者の行動に関して業績達成基準のコンフリ クトをも たらすことになる。 その結果, 管理者は組織の公式の目標を達成するよりも, 自分の業務 遂行上の個別の操作的な活動目標を優先する行動をとる。 そこでは, 公式的で高度に合理 化 された管理用具と管理手続きを有効に利用することが妨げられることになる。 以上から, 目標の曖昧性とそこから生ずる管理に関する含意がサ ー ドセクタ. ー. の組織の. 第1の特質となる。. 2). 計画化と業績評価のシステム 以上の諸特質の展開として, 特に計画化と業績評価に関連する点が表の「組織合理性の. タ イプ」「計画化/政策策定システムのタイプ」「業績評価」に示 される。 私的部門や公的部門では, 計画化の方向は公式的・合理的・分析的に包括的なシステム によって確定 される。 このシステムはその性質上集中化 されるから, 官僚制組織の中の管 理階層制度が不可避的であり, このような状況の下 では, 計画化の過程は, 全体の合意を 基礎にした目標の表明と直結した特定の目的と戦略を具体的に確定する方向に調整される ことになる。 これに対して, 非営利部門では, 目標設定の曖昧性から主旨や ドメインの確 定の範囲の中で, 状況適合的な計画を基礎とした断片的な多様な計画化が同時に設定 され る。 したがって, その計画化過程は分権化 され, 個別化 されており, 本来的に複合階層的 であり分散的である。 その結果は管理手続きも非公式的となる。 次に, このように計画化を理解するのに対応して, 業績評価のシステムも計画化のシス テムそれ自体と関連しなくても, 少なくともその計画化のシステムの合理性と直接に関連 することが指摘 される。 つまり, 業績評価もまた, 特定 されて表明 された目的, 目標, 戦 略などのその個人の業績達成度を基準にした合理的手続きである。 この状況では, 評価シ ステムは「全体的」 であり, 個人やプログラムのある一定期間の活動の全体を総計して期 - 4 (224)-.
(5) 非営利組織の経営管理の特質(II) (堀田) 末に業績の達成を評価することができる。 この評価は公式的な過程であり, 「期末の評価」 の傾向. あるいは指定期間だけ遂行 されるある活動を評価の対象とする傾向に反映してい る。 これに対して, 非営利部門における業績評価のシステムは, 状況適合の基礎をもった 断片的な計画化の型と関連している。 それは, 目標設定と計画化の過程の状況が継続的に 流動的であるので. その評価システムは「要素的」となり, 継続的な業績の向上を期待し て継続的なフィ. ー. ドバックを受ける日常的で継続的な評価過程となる。 管理者は評価期間. を限定した評価過程よりも. 継続的な評価過程を必要とする。 さらに. 目標それ自体が曖 昧性を持ち. したがって行動基準に コンフリ クトがある以上. 目標達成の業績評価の基準 は本質的に多様となり. 相互に対立する性格を持つ。 もちろん. ウエバ ー 型モデルでは, 相互の対立は存在しなくて, ある目標を達成する行動は他の目標の達成を支持するものと 仮定しているのである。. 3). 異なった管理のシステム 最後に, 非営利部門の組織と管理活動の「環境の特性」が挙げられる。 私的部門と公的. 部門では, 官僚制組織は事業と環境の支配関係について, 環境に対して抵抗し環境を変え る方向に管理 される。 これとは対照的に, 非営利部門では, 環境と組織の相互作用の中で 弁証法的に状況適合的に行動するプロセス志向で管理 される。 前者は限られたオ ー プンシ ステムであるのに対して, 後者のほとんどはその組織の正当性をつねに環境から問われる オ ー プンな存在である。 このことは, 外部の圧力による組織目標の方向付けや, 組織の存 続のための現実の要請への高い順応性として具体的に現れる。 このような変化への持続的な適応を求められしたがってより不確実性の高い環境におか れる組織の状況では, その管理制度と管理手続きも安定的なあるいは公式的・課業的なプ ログラム予算制度・目標管理制度・日程管理が適合することができなくて, その管理のシ ステムは状況適応型の「プロセス」志向となり, 非公式を特徴とすることになる。 さらに, 異なった環境の中の管理者それ自体についても, それぞれの理念型を明らかに している。 私的部門と公的部門の管理者は, ウエバーによれば, きわめて機能的な能力を . もち, 目標達成志向の解決を通して問題を理解する能力の人材である。 職能と業績達成が 組織の構造的特質によって, また政策形成がいくぶん政策執行と分離している公式的な上 下関係によって, この能力をもつ人材は階層的組織が規定 されるなかにおいて, 効率的に 活動する。 このような管理者(官僚)に対して, 非営利部門の管理者はある程度は「実存 的執行者」であると定義することができる。 この管理者は促進者であり, 情報収集者であ - 5 (225)-.
(6) 第45 巻 り, フィ. ー. 第2号. ドバックの授受に成功する人材である。 政策形成とその執行が常に分権的組織. のなかで連関しているような構造化されていない環境では, この種の管理者は効果的に活 動する。 この実存的管理者の主たる関心は, 他の構成員が組織を通して高度な選択と反応 を働かせることを可能にすることである。 要するに, サ ー ドセクタ. ー. の組織の特質は, 目標の曖昧性, 相互作用的変化の戦略, 権. 限構造の分散性, 業績達成基準のコンフリクトと業績評価システムの要素性・継続性, 管 理制度と管理手続きのプロセス志向と非公式性にある。 すなわち, 理念型としてのサ ー ド セクタ. ー. の基本的な特質として, 目標の曖昧性があり, これが業績達成の行動基準のコン. フリクトをもたらし, この2つの特質から, 組織の計画化とその執行の過程における「プ ロセス」志向を生みだし, その結果, 業績評価システムも要素的・継続的な性格をもつこ とになる。 以上は, 公的• 私的組織に対比して, 非営利組織の諸特質を極端な二分法による理念型 として示したにすぎない。 したがって, 現実の非営利組織は他の諸部門の組織と管理活動 に関して まったく対極にあることを主張しているのではない。 むしろ彼らの展開は, 私的 部門と公的部門においても, 組織環境のなかに,. またその組織自体のなかに, 非営利部門. の諸特性が多数に見受けられる点を重視しており, 非営利部門の組織が将来の産業社会の 組織の在り方を示唆していると主張するのである叱 最後に, 以上の展開に関して, いくつかの問題点が指摘できる。 • 非営利部門の特性の本質をサ ー ビス供給の目的(これも目標の曖昧性を作り出す)に 求めない点, サ ー ビスそれ自体の性格( 一つにはこれが目標の曖昧性を作り出す)に 求めない点. (2) さらには, このサ ー ドセクタ ー の組織の形態の相違によって. この諸特質はその程度が異なる こと. 反対に. この特質の程度の相違. 特に目標の曖昧性の程度の相違が形態の相違に反映して いることを指摘している。この立場から . 組織の諸形態として. 次のような分類を提示してい る。 この分類はそれ自体がきわめて示唆に富んでいる。「目標の曖昧性」とその目標を達成させ る「経営者の性質」を座標にしている点を特に評価したい。 ・ポランタリ ー 組織:小規模であり. 創設の個人や集団の価値観. 目標. 願望を反映しており. 目標の曖昧性は少ない。したがって, その経営者は「管理人」である。 ・行政的組織:規模の拡大と長期的な存続の条件の中で, 官僚制組織の特質を持つ。専門的管理 技術をもって, 目標達成志向の管理 システムを操作する。経営者は「官僚」となる。 ・専門技術的組織:経営者の文化と専門家の文化の対立による目標の曖昧性と行動基準のコンフ リクトの問題が発生する組織である。ここでは, 決定のほとんどが専門朦によるという点で, 経営者は「家政婦」である。 • 複合的組織:相反する集団, 機能, 価値, 目標が集 まる組織であり, 高度に目標の曖昧性と基 準のコンフリクトが発生する組織である。新しいサ ー ドセクタ ー の類型である。経営者は共通 の目標と目的をすべてが共有する組織間の連合を構築するための新しい企業家精神をもった 「公の経営者」となる。. - 6 (226)-.
(7) 非営利組織の経営管理の特質(II) (堀田) • 非営利部門の特性の属性として. 管理機構の特性, ガバナンスの特性(理事会構成と 理事会一経営者の特殊な関係)を指摘しない点 ・管理作用(管理過程)や組織行動を中心にするあまり, 資源の獲得の特殊性(資金の 獲得・ ボランティ アや専門家の人的資源の確保の特殊性)を重視しない点 後に示す「試論の基礎」 にこれらの問題点も考慮に入れて. 彼らの組織論的視点を重要 な示唆として取り入れてみたい。. 3-2.. W. H. ニュ ー マン 131. すべての種類の目的的な協働努力をする組織においては, 基礎となる共通の経営管理の 過程が存在する。 いかなる組織にもその存続のためには計画化, 組織化, 活性化, 統制化 は本質的な作用でなければならない。 しかし, 組織一般に本質的な要素と過程は存在する としても, 特定の非営利組織の間にはそれぞれの経営管理過程が遂行 されるそのあり方に おいて大きな差異が存在するのである。 したがって, 問題は, 営利企業には有効なある種 の経営管理の諸概念と管理手段(おそらくは利益最大化がモデルの基礎である)が直ちに 非営利組織にも適用可能かどうか, 非営利組織は本来的に適用できない特定の特性をもっ ているのかどうかにある。 今日では, 企業経営管理の制度と方法を非営利組織に適用することは可能であるという 一般化 された信仰があり, その適用が流行のテ ー マとなっている。 しかし, 非営利組織は 多様な種類の大小の事業を包摂しているとしても, それぞれが固有な管理上の問題をもっ ており, どの企業経営管理の概念が有効であるのかを厳しく修正する差別的な「制約」 を いくつか課せられているのである。 著者は, 多くの文献を検討し, さらに自ら多数の実証研究を行った上で, 非営利組織の 経営管理の特異な側面を確認し, それをよく理解するための方法(モデル)を設定した。 そのモデルは大きな政府の制度的側面を除外して, 完成 されたサ ー ビスを生産し配給する 自己管理 された独立の組織を対象としている。 医療, 教育, 社会奉仕, 宗教, 芸術文化, 地方政府のサ ー ビスの事業である。 しかし, 多くの事業の経営管理の過程を比較分析すれば, 非営利組織の分類は余りに幅 が広くて, 経営管理の分析には有効ではないことが直ちに判明する。 次のような理由で本 質的な区別ができないのである。 1) 非営利組織という用語それ自体が 「利益を追求する (3) Newman, H. W. Wallender, ill, Managing Not-for-Profit Enterprises, Academy of Management Review 3, no. I, 1978. - 7 (227)-.
(8) 第45巻. 第 2号. 組織ではないという」 異質の事業領域を包摂する全体を把握する用語にす ぎない。 利益目 的の有無は経営管理の視点からは小さな特質である。 2) 営利企業と非営利組織はその活 動とその経営管理においてまったく同 じ であることがある。 相互生命保険会社の経営管理 は大規模企業のそれとはわずかな点で異なるだけである。 むしろ共通の経営管理の問題を 抱え ている。 非営利組織の間の経営管理上の大きな相違は所有の構造の相違よりもむしろ 事業の性質の相違にある。 3) そもそも利益最大化の原則がきわめて抽象的である。 この 原則はどの行動を選択すべきかを決めるときには価値基準として有効に働くが, どれを検 討するかについてはそれ自体はほとんど指標とはならない。 現実に経営者は, 戦略を考案 し, 手段を選択し, 政策と計画を設定し, 諸資源を動員し, これらの諸力を「 ゴ ー イング コンサ ー ン」 に統合する経営管理の設計を創造しなければならない。 その際, 経営管理の ためのパラメ ー タ を設定するのは, これらの手段に関してその組織がもつ特質である。 し たがって, よい経営管理構造を構築するには, 利益に基づく価値を知るだけではなく,「事 業の特質」 を計慮していなければならない。 したがって, 営利/非営利の二分法では余り に一般的にす ぎて有用ではなく, よい経営管理の実践に対する指標を提供するには無力で ある1410 このように, 非営利組織の特質は容易には一般化できないけれども, これらの多様な事 業の経営管理問題を分析することにより, とりあえずその経営管理の実践に影響を及 ぽす いくつかの特質が明らかになった。 それらは, 単 一の特質である 「非営利」 の影響ではな くて, 多様な特質が多種多様に影響を及ぼし, またそれらの特質が多様に結合し合い, こ のような特質が一般化 された経営管理の制度と方法の適用に制約を加えるのである。 そして, 非営利組織に共通するこのような制約的な特質を摘出した結果, 非営利組織の 経営管理に関する接近方法(モデル) を提示することができる。 すなわち, その諸特質を 確認し, これらの特質がどのようにして多種の経営管理の諸手段の有効性を限定するかを 示唆することができ, こうすることによって, 非営利組織の事業の経営管理に関する概念 を説明するモデルができる。 彼らによれば, 実証研究に基づく共通の制約的特質とは次の ようである。 1). サ ー ビスは有形ではなく, その測定が困難である。 この困難性は複数のサ ー ビス目. (4) 非営利組織の概念 自体が余 り に多種多様な事業を包摂 し て い るので, こ の概念 は経営管理の分 析には有効でない こ と , ま た, 経営管理の分析の視点か ら は, 所有構造の相違 と 営利 と 非営利 と い う 二分法よ り は 「事業の性質」 の相違の方が董要で あ る こ と を留保すべ き 点 と して強調 して い るが, こ の指摘 は, 組織の制度で はな く そ の管理 と い う 動態的な行動を観察する と き に は, 注 目 す べ き 示唆を含ん で い る。 (Newman, H. W., op. cit., pp. 25-26) - 8 (228 )-.
(9) 非営利組織の経営管理の特質 ( II ) (堀田) 的 が存在す る こ と か ら 増幅 さ れ る こ と が少 な く な い 。 2). 顧客の影響力が弱 い こ と が あ る 。 事業 は地域的独 占 で あ り , 顧客か ら の収入 が主 た る 資金源で は な い こ と が少 な く な い 。. 3). 組織参加者の戦業や主義に対す る 強 い 思 い 入 れ が あ り , 事業 に 対 す る 忠誠心を 蝕 む こ と があ る。. 4). 資源 の提供者. 特 に 資金の提供者 と 政府. が 経営管理 に 内 部干渉す る こ と が あ. る。. 5). 報酬 • 制裁を利用 す る こ と が 1) 3) 4) の特性か ら 制約 さ れ て い る 。. 6). 事業 の カ リ ス マ 的 な リ. ー. ダ ー と / あ る い は事業の. ". 神秘性. ”. が 目 的間 の コ ン フ リ ク. ト の 解消 と 制約 の 克服 に 対 し て 重要 な 手段 と な る 1510 そ れ で は, 以上の う ち l つ か そ れ以上 の特質が非営利組織 に み ら れ る と す れ ば. そ れ に よ っ て. そ の 組織の 管理過程 に ど の よ う な 影響 を 及 ぼ し .. し た が っ て. そ こ か ら 特定の事. 業 の 経営者 に と っ て ど の よ う な 問題 が 発生 し . そ れ を ど の よ う に 調 整 す べ き な の だ ろ う か。. 1). 計画の設定 に 対 す る 影響 合理的 な 意思決定 と 制度 的 な 計画策定 は. 非営利組織の 「 目 標 の コ ン フ リ ク ト 」 の特質. に よ っ て制約を受 け る 。 営利企業 で は 一般 に 長期利益 と い う 基準 に 照 ら し て最適化 の選択 が な さ れ,. こ れ を巡 っ て コ ン フ リ ク ト が あ っ て も , そ れ は 考 え ら れ る 結果 に 関 し て 合理的. な判断が な さ れ て 解 消 す る も の で あ る 。 と こ ろ が, 非営利組織で は, 合理的選択 の 基礎 を 提供 す る よ う な 単独 の 基準 は 発見で き な い 。 例 え ば, 看護学校 は働 く 母親の子供の デ イ ケ ア , 子供の社会化. 創造的表現力, 心 理学的 カ ウ ン セ ル , た ん な る 遊 び な ど を 目 的 と す る 。 労働組合 は経済的 ・ 政治的 ・ 社会的 な 目 標 を も つ も の で あ る 。 目 的 が多様な 非営利組織で は単独の 基準が適用 さ れ な い 。 ま た, 特定の専門喘の 目 的が組織の 目 的 の な か に加 わ る こ と も あ る 。 組織の管理者 は こ れ ら の す べ て の 価値体系 を 扱 わ ね ば な ら な い。 目 標の コ ン フ リ ク ト は ど の よ う な 組織 に も 存在す る が, 解消 で き な い 目 的 の 多様性 は非営利組織で は よ り 鋭 い も の が あ る 。. (5) す べ て の組織の管理に は共通の過程が存在す る 。 目 的, 政策, 計画, 喘務の限定. 手続 き , 情 報伝達. 標準化. 執行の動機づ け, 測定. パ ワ ー な ど で あ る 。 こ の上に. 非営利組織で は管理活 動 に 際 し て, 経営者が さ ら に以上の制約的 な 特質を考慮す る 必要があ る と 指摘す る の で あ る 。 ま た, こ れ ら の制約的 な特質は非営利組織 に の み見 ら れ る の で は な く て, 営利企業 に も 見受 け ら れ る 。 た だ. そ の影響の度合い が非営利組織 に 大 き い の で あ る 。. - 9 (229)-.
(10) 第45巻. 第 2号. さらに. 顧客はサ ー ビスコストの一部を支払うのが普通であるが, この際にサ ー ビスの 選択に関して市場のテストを通 さないために, 顧客の影響力が弱く, もっばらサ ー ビス供 給者の多様な価値体系が存続することになり, その結果, 目的の多様性と曖昧性が存在す る。 そこで, 非営利組織では, 多様な目標の中の選択と優先順位の決定に際して, 特有な 2 つのメ カ ニ ズムが働くことになる。 1 つは, カ リ スマ 的リ は, 事業を支配する. ". 神秘性. ”. ー. ダ ー による決定である。 2 つ. を通して決定が行われる。 この神秘性は特定のサ ー ビスの. 使命の重要性とそのサ ー ビスを提供する事業の異常な力に対する強烈な信念である。 この 神秘性が自然に意思決定者が従うように期待 される性格と価値観を設定することになる。 その典型は赤十字社 ・ ロ ー タ リ. ー. クラプ ・ フォ. ー. ド財団である。. さらにまた, 測定が困難であるという制約から, 計画化の過程においては, その焦点は 合理的な判断による結果に当てられるよりも, 計画執行の資源に向けられる性向を持つ。 特に医療 ・ 教育の部門がそうである。 この種のサ ー ビスが有形ではないことと は別に, サ ー ビスが正当かどうかの市場のテストを受けずに助成金を受け取る。 したがって, 結果 ". に関して統合 された計画化は曖昧となる。 計画化において純粋の ボ ト ム ライン. C最終成 果)は存在せず, 計画化の多くは望ましい結果を生み出すであろうと仮定する諸活動のパ フォ. ー. マンスを基準とすることになる。 例えば, 学生が現実に何を学習したのかを測定す. ることは困難であるから, 教授の活動目的は, ク ラス数, 学生との接触時間, 提出 レ ポ ー トなどに表現 されることになる。 そこで, 非営利組織の中の個 々 人の活動が一般に多様であり, 計画の統合化の基礎とし て作用する共通要素が欠けているために, 中心となる計画化はサ ー ビスを創造するサイク ルまで逆戻りして資源のインプットにまで遡る。 資金予算や人事配置が焦点となる。 配分 された諸資源は適切な活動に使用 され, 次には望ましい結果を生み出すであろうという暗 黙の前提があるだけである。 企業の目標管理制度による経営管理とは大きく乖離してい る。 このような曖昧な活動目的の設定がまた内部の政治的な術策の機会を作り出す。 曖昧な 目的が資源の配分だけに関して計画化 されることと結びつくと, 経営者は現実に何をなす べきかについて自由な活動のかなりの裁量範囲を持つことになる。 この活動の余地が個人 的な目的のための政治的操作を可能にする。 さらに, 専門化が詳細な計画化の作業を単純にするのであるが, 同時に硬直性をもたら す。 非営利組織においてもその規模の増大とともに, 政策 • 常規的な職務遂行手続きなど. - 1 0 ( 230 )-.
(11) 非営利組織の経営管理の特質(II) (堀田) 計画策定の必要が高まるが, 多数の専門家がこの計画策定の側面を修正することがあ る。 専門家の伝統や専門家だけの標準的な方法や手続きが制度的に定着しているから, 通常の 管理活動の局部的な計画策定は単純化 されるが, 新しいニ ー ズに適応する際にはこれが硬 直性を生み出すことになる。 病院における診療規則 と慣行, 大学における カ リ キ ュ ラムと 伝統が新しい ニ ー ズに対する適応の障害となることが多い。 要するに, 非営利組織の計画化過程も本質的には営利企業のそれと同じで あ るが, 目標 が多元的であ ること, 結果の測定が困難で あ ること, 資源の提供者の干渉が強いこと. 顧 客の影響力が弱いこと, 専門職の比重が高くそのル ー チ ンによって計画策定が行われるこ となどの制約が, 明確で合理的な計画化を困難にしているので あ る。 これらの制約がみら れる組織では, カ リ スマ的なリ. ー. ダ ー か強力な神秘性がまた存在するときにだけてきばき. とした統合 された計画化が実現 されるようで あ る。. 2). 組織編成に対する影響 また同じ諸制約の集合が組織に対して影響を与え る。 非営利組織においても, 規模の拡大にしたがって意思決定の権限委譲が行われるのは当. 然で あるが, その分権化が複雑で あ る。 例えば医師や教師のように, 組織の構成員が高度な専門的訓練を受け専門的な行動基準 をもっている場合, その専門的な コ ー ドに含まれる職務に関する決定は, 専門家自身が自 己の裁量範囲として主張するし, これを分権化することは容易で あ る。 さらに, サ ー ビス が有形でないからその測定が困難で あ り, 何をどうすればよいかなどの捐要な意思決定に 関して分権化せ ざるをえない。 しかし, 反対に, この種の専門家に対して経営の目的と立 場を伝達することが同時に困難で あ るので, 管理者は広い権限委譲を控える結果となる。 さらに, 業績の測定が主観的で測定尺度がないために, 報酬と制裁の管理手法が制約 さ れる。 販売高や生産性その他を基準にした報酬制度はその実行が不可能で あ り, またそれ は多くの場合に不合理でもある。 むし ろ 昇進 ・ 解雇などの人事管理は伝統的に外部での経 歴や先任性を基礎としている。 そのために, 組織内の業績とその報酬が連結しないから, 管理者の影響力が弱くなり, その結果は, 指示が実行 されるかどうか不明となり信頼でき なくなり, 管理者は権限の委譲を躊躇する。 加え て別の特殊な制約が働く。 外部の利害関係者. 寄付提供者・政府機関 • その他の. _. 資源提供者. が経営に対して特定の条件を強要するから, 経営者は対外的な適応に終始. するので, 外部利害者が反対するような行動を回避するために, 自らの意思決定を強めよ - 1 1 ( 23 1 )-.
(12) 第45巻. うとする。 そこから, "防御のための集権化. ”. 第2号. の傾向をもつ。. さらに, 外部に依存する資金が多額であり同時に多様であるので, 特に非営利組織では 外部と内部の連結 ピンが重要である。 外部の資金提供者の利害と価値観と現実に内部事業 のサ ー ビスを供給する特に専門家集団のそれとは鋭く対立する。 時には両者のコ ミ ュ. ニ. ケ ー シ ョ ンすら困難にする。 この外部と内部の双方に関係することができて, 遂行 される 行動に対する合意を促すことのできる緩衝剤となる人材が特に必要となる。 統合化の管理 活動が重要となる。 この統合化の課業は さらにサ ー ビスが有形ではなく目的が多元的で転 換していくような事業では特に困難となる。 さらに, 専門化によって喘務の拡大や管理者啓発が制約 される。 専門家は さらに細かく 専門化 される。 この種の専門家は特定の教育訓練を経て厳しい資格試験を受けた人たちで あり, 自己の行動, 価値観, 信念を展開して, 自己の行動領域をもっている。 この専門化 傾向は組織編成にとって特殊な制約条件となる。 朦務拡大を阻む キ ャ リ アの硬直化であ り, 経営管理を理解するなどの織務充実を疎外する。 専門化はまた, 内部昇進を制約する。 一般の企業における職務のロ ー テ ー シ ョ ンと昇進制度は多面的な経験が職務遂行の領域と 能力を拡大する機会を提供すると考え られるが, このような内部の ダイナ ミ ックスに基礎 をおく人事・昇進制度は, 非営利組織の専門家集団に適用することは難しい。 利潤動機の 有無よりも, この強固な専門化が組織の特質を規定するのである。. 3). モ チ ベ ー シ ョ ンと統制に対する影響 非営利組織も継続的な活動体である以上は. 組織の管理過程のサイク ルを描くから. 統. 制活動の事後統制—�予定 • 実績統制—指導 • 助言統制の一連の過程をもつ。 しかし. 目的の測定の困難性が制約として強く働く。 サ ー ビスの品質が多種多様な期待をもつ人た ちの直感に依存するために. つまり, 期待 される成果が不確定であり成功の判断は主観的 であるときに. 予知能力のある非人格的で一貫したフィ. ー. ド バックを設定することはでき. ない。 むしろ, ある種の活動の側面—サ ー ビスを受ける人数や直接の資金支出など一一一 は測定可能であるが, この部分的な側面が, 単に測定ができるという理由だけで異常な業 績測定の指標になる危険すら考えられる。 同じく, 測定の困難性が 1つの理由となって, 報酬と制裁は個人の業績と無関係となる。 先に指摘したように. 報酬の増加や昇進は先任制と外部の専門職の資格とに直結している から, 中央で管理 される統制制度の影響が減殺 される。 以上のように, アウトプットの統制が非常に困難であることから, 非営利組織はイン. - 1 2 ( 232)-.
(13) 非営利組織の経営管理の特質 ( II ) C 堀田) プットの統制(支出額や人員数の統制) と 活動量. ・. 活動率の統制に依存する。 しかし, こ. れらの統制は上限を定めるもの と して設定 されるから, 統制の標準を満たしたこ と に対す るプラスの報酬にはほ と んど結 びつかないかまったく関係しない。 その結果, 構成員のモ チ ベ ー シ ョ ンヘの反応は消極的 と なる。 そこでは, 積極的なモチ ベ ー シ ョ ンは個人的な目 標への執着心に依存するこ と になる。 管理者が個人的にはアウトプットの量 と 質に執着するこ と はできる。 組織の成果を評価 して正しく行動するこ と はできる。 しかし, この種の統制は必然的に個人化 され主観的 と なる。 それでは. 中規模 ・ 大規模な組織では広く受認 される行動の諸基準を開発する際に きわめて重要な一貰性 と 予知性に欠ける。 このよう な性質の統制の下では, 管理下にある 構成員は正しい行動は独断的であり保証のない性質である と して受け取る結果 と なる。 結局. 積極的なモチ ベ ー シ ョ ンは, 構成員の分担目標に対する熱意ある個人的な執着心 と 組織参加に大きく依存せ ざるをえない。 このよう な性向は専門家の間に存在するが, こ の執着心は, カ リ スマ的 リ. ー. ダ ー と 事業の神秘性によって高揚する。 しかし, これも組織. の規模が拡大すれば, 次第にそれを維持するこ と ができなくなる。 専門家は特にこの性向 をもつかもしれないが, 一般の構成員は仕事の喜 びや奉仕の喜 びを感じなくなる。 ここに こそ, 建設的な統制の伝統が欠如している結果がみられるのである。 以上で, 非営利組織の経営管理を制約する諸特性_無形の諸目的 ・ 顧客の弱い影響 カ ・ 専門化 ・ 資源提供者の干渉 ・ 報酬制度の利用の限界 ・ カ リ ス マ的 リ. ー. ダ ー と 事業の神. 秘性への依存性—ーを指摘して, これらの諸要因がどのよう に有効な管理活動の実践を歪 めているかが説明 された。 ただ, このよう な制約 と その影響については, 彼ら自身が最初 に切り込むだけでありなお一層の研究が必要である と 留保しているが, 少なく と も彼らは 次の点を示唆している限りにおいて貴重な拠り所を与えている と いう べきである。 1). 非営利組織の経営管理を基本的な経営管理モデルの変形 と して扱う こ と. 2). 非営利組織の性格があまりに曖昧であるから, その変形の特質を規定するこ と がで きないこ と. 3). それに代わって, いずれかのあるいはすべての摘出した制約が作用するかどう かを 確認するこ と. 4). それが確認 されたら, それに関連する管理諸手法を求めるよう 注意するこ と. 以上から, いくつかの批判すべき点が明らか と なる。 ・ 保健. ・. 教育 ・ 社会奉仕 ・ 芸術文化・ 共同組織 • その他宗教, 研究所, 協会, ク ラ プ, - 1 3 (233 )-.
(14) 第45巻. 第2号. 組合などの非営利組織のなかから, 病院・学校 • 福祉機関・美術館に関する文献を渉 猟し, 22の事業体 ( 8 保健事業, 5 芸術文化事業, 3社会援助, 2宗教組織, 2研究 所, 2政府都市サ ー ビス事業)に関する現実の経営管理の実体を研究した。 しかし, このよう な広い範囲のなかから, 非営利組織の経営管理の特質を摘出するこ と には無 理がある。 論者自身も留意しているよう に, これらの対象 と なった非営利組織には利 益を追求しない と いう 一点だけが共通であるが, 利益動機の有無が経営管理活動に大 きく影響するこ と はないのであり, 営利/非営利の区別よりも, 経営管理の視点から はむしろ 「事業の性質」 によって分類 されるべきである と している。 そう であれば, 研究調査対象の選択において,「事業の性質」 に基づいて分別しておくべきである。 • さらに, 非営利組織のなかにまったく共通の「いくつかの制約的特質」 を発見した と. . . . . . . . . . . . .. しながらも, そのう ちの 1つかあるいはそれ以上の制約が作用して 特殊な経営管理の 問題をもたらす と 言う 。 これでは, 制約的特質の厳密な適合性が疑わしくなる。「いく つかの制約」 の間の関連性, 重要性, あるいは本質 と 属性の区別などの検討が必要で ある。 そのためには, やはり 「事業の性質」 によって非営利組織を分類し, それぞれ の事業体が非営利組織であるが ゆえに一般の経営管理 と は異質の特殊な制約が働く と いう 特質を指摘しなければならないであろう 。 • したがって, 少なく と も, 事業が供給するサ ー ビスの性質について, 公共的サ ー ビス や社会的サ ー ビスなどの一般的なサ ー ビスの概念を超え る性質の摘出が求められる。 さらには, 公共財や準公共財などの経済学的な非営利組織のサ ー ビスの概念を基礎 と しながら, 経営管理を実践する上での事業間のサ ー ビスの性質の特質を明らかにしな ければならないであろう 。 現実に照らしても, 病院や大学の事業のサ ー ビスの経営管 理に対して ボランテ ィ ア団体や社会改革団体のサ ー ビスのそれは峻別 されるべきであ る。 • さらには, 少なく と も, 環境 と の相互関係の特殊性, 組織の管理機構の特殊性, 資源 の特質 と その資源の調達の在り方 と その方法の特殊性を頂要な要素 と して考慮に入れ る必要がある。 ・ 「経営管理 と は個人の努力をよく指導, 統率, 統制して共通目的を達成 させるこ と で ある」 と する代表的な「経営管理過程論者」 である ニ ュ. ー. マンであるから, 特異ない. くつかの制約が管理過程ないしは管理作用のそれぞれにどのよう に影響を及 ぼすかに 焦点を当 て て非営利組織の経営管理の特質を摘出するのは理解できる。 だから と いっ て , 経営管理の他の諸側面. 環境適応行動・経営管理機構・組織行動・ 経営諸資源 - 1 4 ( 234)-.
(15) 非営利組織の経営管理の特質(II) ( 堀田) の調達活動・経営諸朦能の管理一ーを等閑視することはできない。 1つは, 非営利組 織のこれらの諸側面それ自体の特殊性を探索すべきであり, 1つは, 非営利組織のこ れらの諸側面がもたらす経営活動に対する影響を観察すべきである。 そうでなけれ ば, 全体としての非営利組織の「経営管理活動」 の特質をみることができないのであ る。. 3-3 .. S. M. オ ス タ ー(6). 今日, どのような非営利組織でも, その程度には違いがあるが, なんらかの側面で営利 企業と政府機関と市場を共有しているから, ますます市場の競争に直面している。 このた めに効果的な経営管理の方法に関する理論と実践の論議が高まっている。 そういう状況の なかで, 非営利組織に関する多くの研究業績が豊富になって, 非営利組織において, 営利 企業で開発 された経営管理の諸原則を適用できる可能性と適用ができない限界を知ること ができるようになった。 現実には, 特に大規模非営利団体が営利企業の経営制度と経営管 理技術を採用してきているが, その際には, 営利企業と非営利事業の類似点とともにその 相違点に留意することが肝要である。 そのためには, まず, 非営利組織は何によって区別 されるかを明らかにしなければならない。 非営利組織は, 事実において, 特殊な優遇課税(連邦政府の所得税の免除・地方税の免 除 • 寄付金の課税控除など)と法律上(契約 ・ 労働 ・ 保証 ・ 反ト ラストに関する法律)の 優遇措置と特別の規制(収益の使用状況など)を受けているがゆえに, 非営利組織として 別の存在なのである。 とりわけ多くの免税措置を受けているがために, とくに営業活動か ら生じる剰余金は組織を統治する者やその構成員に配分 されてはならない。 これが「非分 配の拘束」の規定であり, 非営利組織の他と区別 される第1の特質である。 この特質の影 響から, その経営管理過程において大きな相違が生まれるのである。 非営利組織において は, 株主や所有者が存在しない以上, どのような ガ バ ナ ンスの構造が作られるのかが問題 となる。 財務目標はどのように設定 されるのか, 経営者はどのように動機づけ されるのか, 組織の機構とその活動について誰の意思が優位にあるのかなどである。 第 2に, 非営利組織の事業の種類は社会公共的な「サ ー ビス」 に集中している。 この提 供する財 · サ ー ビス ミ ッ クスの評価の困難性という特性から, 活動計画と活動業績の測定 と評価の困難性が生じる。 さらに, 業績の評価は, 多元的な組織目標, 複数の異なった利. (6). S. M. Oster, Strategic Management for Nonprofit Organizations, 1 995.(pp. 5-9). - 1 5 (235)-.
(16) 第45巻. 第 2号. 害をもつ選挙人, 市場の選別の欠如によって複雑となる。 第3 に, 非営利組織は「労働集約的」 な組織であり. しかも, ボランティ アと有力な技 術専門職を擁する特殊な組織である。 ここから, 人事管理の重要性が高くなるが. さらに ボランティ ア組織における補助労働と無償労働が存在し. あわせて専門家が集中している ことから, ス タ ッ フ の動機づけと統制管理の特殊な問題が複雑になる。 例えば, ス タ ッ フ は組織よりも専門喘や信念 • 主義に誠実であるという問題が発生する。 第 4 に, 非営利組織は収入源として.. 一. 部の収益を寄付行為に依存する。 ここから, 営. 業収入以外の募金活動が重要な経営問題となるから. 組織の ガバナンスの複雑性. 取扱い 製品 ・ サ ー ビスの選択の多元性, 財務報告会計制度の特殊性と複雑性が生じる呪 以上の諸特質から. 次のようないくつかの経営管理の特殊な領域と特殊な側面が作り出 される。. 1) 「使命の宣誓」(営利企業における ドメインの確定)の特殊な諸機能とそれがもたらす 使命の特殊性181 そもそも非営利組織の形成とその存在は, 「契約の失敗」「公共部門の失敗」「特定のイデ オ ロ ギ ー ヘの参加」 のいずれかの理由によることが明らかであり, これらは, 評価の困難 な財, 集合財, イデオ ロ ギ ー を供給する「 ニ ッ チ 」 の領域である以上は, 「誰に何を供給す るのか」 「組織の中核となる価値は何か」 という組織の使命が明確であることが必要であ る。 非営利組織は評価の困難なサ ー ビスの監視と信頼の問題から発生している以上, 資源 の供給者とサ ー ビスの受領者の焦点と信頼を確保するには, 明確な使命の宣哲が本質的に 重要なのである。 次いで, 非営利組織の特質から, 使命の宣誓に関する 1) 境界を限定する機能 タ ッ フ と資源提供者を動機づける機能. 2) ス. 3 ) 業績の評価の基準となる機能という 3 つの機. 能の重要性を高めることになる。 これが, なぜ非営利組織では使命の宣誓に関して多くの 議論が集中するのかの理由を説明してくれる。 まず, 集合財や評価の困難な財を生産する 非営利組織では, 業績の達成や成功に対する統制と基準に曖昧性があるために, 「使命との 整合性」 が収益性に対する 一部の代替効果をもつことになる。 また, 所有権が明確でない 非営利組織では, 組織参加者(役員 ・ ス タ ッ フ. (7). ・. 資金提供者. ・. ボランティ ア. ・. ク ライアン. オ ス タ ー は こ の著作において, 非営利組織の経営管理の理論 と 実践の展開を試みてお り , そ れ は, ま さ に私が次に取 り 組む課題で あ り , 本稿で は最小限に触れるに止めてお く 。. (8) S. M. Oster, o p. cit., pp. 17 - 28.. - 1 6 ( 236 )-.
(17) 非営利組織の経営管理の特質 ( II ) ( 堀田) ト)が組織の支配権を巡って行動する。 この際, 支配権の争奪の場として使命の宣誓の限 定に関する議論が戦わ される。 明確な使命の宣習があれば, それに貢献する者を吸 引 し, 意思決定の基礎を明確にするので, 支配権の闘争を制約する役割を果たす。 さらに, 組織 の多様な参加者 (ステ ー ク ホ ル ダ ー )を動機づけるには明確な使命の宣誓が役立つ。 最後 に, 成功の基準として収益性が適用 されない以上, これに代わる評価の基準としてとくに ス タ ッフと資源提供者にとって使命の宣哲が役立つのである。 使命の宣誓の重要性が l つの特質であるが, さらに, その使命の宣誓の性質がまた特異 である。 それは, 先に述べた非営利組織の構造的ないくつかの特性から, 使命の宣誓に中 心をおく傾向があると同時に, 多種多様なステ ー ク ホ ル ダ ー を吸引 で き る必要があるため に, 組織が拡大するにしたがって, 使命の宣誓はそれらの参加者のより広い共同作業とな り, その中の状況や要求によって使命の宣誓が変遷するという傾向をもつ。 このような広 い境界限定では動機づけや評価に関する機能を失う結果となる。 他方では, 狭い使命の宣 誓の議論が非効率な活動を隠蔽したり, 有効な経営管理制度の採用を阻むことがあり, 変 化への適用を阻害することになる。. 2) 「計画達成の評価」191 非営利組織は利益を最終的な測定基準として設定することがで き ない。 組織のアウト プットの価値は市場で購入 されないことが多いから, その価値は不透明である。 多様な選 挙人に奉仕する性質から, 計画の達成過程は本来的に対立することになり, 例えばクライ アン ト は他のステ ー ク ホ ル ダ ー とはまったく異なるサ ー ビスに価値を認めるかもしれな い。 さらに, 活動過程の効率性の分析と結果の業績達成の有効性とは著しく異なる性質を もつが, とくに最終の有効性を数量的 ・ 計数的に測定で き ないことから, 活動過程の効率 性の測定に傾斜する性質をもつ。 特に留意すべ き 点は, 非営利組織の複合的な選挙人の存在と業績評価の複雑性の関係で ある。 有力者の基準が組織の業績達成の基準になることはすでに明らかであるが, それぞ れの選挙人が異なった測定基準を選好することが軍要である。 寄付提供者は財務的な測定 基準 経営者は組織活動の測定基準, ク ライアントは成果の測定基準に関心をもち, 基準 の分散が常態であることである。 要するに, 非営利組織では, 目標それ自体が分散しており, その目標は数量化が困難で. (9) S. M. Oster, op. cit., pp. 139-147. - 17 (237)-.
(18) 第45巻 第 2 号 あり, 必ずしもすべての利害関係者に共有 される目標でもない。 財 ・ サ ー ビスの価値は市 場のテストを通過しない。 所有権は多様なステ ー ク ホ ル ダ ー によって共有 されている。 こ のような状況の中では, 業績の測定基準は統一的に収敏することは困難である。. 3) 「人的資源の管理」0� まず, 非営利部門は労働集約的な事業が多 く , 組織に 占める人件費比率が極めて高 く , またそれ以外の無償のボランティ アも多数を 占める。 さらに, 明確な所有権が存在しない から, 組織内部のスタ ッフと ボランティ アが有力な「ステ ー ク ホ ル ダ ー 」 集団を構成し, 合法的かつ強力な圧力集団を形成して組織の意思決定に参加する。 また, 提供する財 · サ ー ビスの性質が複雑であるから, ル ー チ ンな職務ではな く て, 技術的 ・ 専門的な朦務能 力を必要とするが, これらの職務の業績評価が困難である。 このような諸点から, 非営利 組織における人事管理は特殊な動機づけと特殊な統制を必要とする。 このような特殊な人事管理の状況の中で, スタ ッフに対する誘因と動機づけ, 統制管理 の集権化と分権化, ボランティ アの管理統制が重要な具体的課題である。 1). スタ ッフに対する誘因と動機づけ. 高度に専門的なスタ ッフにおいても 一 般に金銭的な報酬は異常に低いが, それは 一方 に, 統制を受けないという眠務遂行の独立性と柔軟性が作業環境として存在し, 低い報酬 とその作業条件とがト レ ー ド オ フの関係にあるからである。 しかしまた, さらに, このト レ ー ド オ フは組織の使命の価値への貢献とい う イデオ ロ ギ ー によって補完 される。 なお, このような報酬の一部が寄付 されている状況では, ステ ー ク ホ ル ダ ー としてのスタ ッフの 地位は さらに高まることになる。 したがって, 以上のように特殊なスタ ッフに対する「インセンティ プ契約」 は適用性が 少ないということができる。 それは先のスタ ッフの誘因と動機づけの特殊性とは別に, 組 織への信頼を失う危険があり, 他方で, 組織内部の個別的 ・ 部分的な業績達成と組織全体 のそれとの相克を持ち込む危険があるためである。 だからといって, 業績の評価が困難で ある点から, インプット統制(例え ば時間と費用の統制)が試みられているが, この方法 も高度に専門的な独立的な労働力には適合しない。 独立性と報酬のト レ ー ド オ フがある限 りは, むしろこの種の統制は裏目に出る可能性が高い。. (10) S. M. Oster. op. cit., pp. 65-74.. - 1 8 ( 238)-.
(19) 非営利組織の経営管理の特質 ( II ) ( 堀 田 ) 2). 統制管理の集権化と分権化. 非営利組織は高度に訓練 された専門家によって編成 されている典型的な専門家組織であ る。 いわ ゆる 「専門家的官僚制」 を特徴としている組織である。 このような官僚制では, 戦務特性として, 特定の組織の外の峨業規律が支配的な統制力をもち, 組織の中の独立性 が高い価値をもつのである。 このような職業規律と独立性という朦務特性のために, 組織 は「管理の幅」 を拡大して組織階層を増やす傾向をもつ。 それは, フ ラットな階層は個別 の支配と自治を増加 させるからである。 いわゆ る分権化の傾向である。 分権化はまたス タ ッフの動機づけにも作用する。 しかし, この分権化は, 専門家の哉務気質によって個別 の利害を優先 させる危険, 組織全体の利害とのコンフリ クトをもたらす危険を伴うのであ り, このことは組織の規模が拡大するにしたがってその度合が増すことを意味する。 3). ボランテ ィ アの管理統制. ボランティ アに対する誘因と動機づけは さらに複雑でかつ菫要である。 ボランティ アは 「投資利得」 ( ボランティ アの努力が自分の経験と技能とその後の経歴を高めるという期 待) と 「消費利得」 (組織の使命に関心がありその目標の達成を支援することで効用を得 る) の双方を内にもつ存在であり, したがって, 利他的であると同時に利 己的な動機を もっている存在である。 この双方に働 き かける剌激制度が必要である。. 4 ) 「資金調達」1111 非営利組織は資金の調達源泉として, サ ー ビスの販売収益や公的機関の助成金の他に多 かれ少なかれ 「寄付資金」 に依存する。 この寄付資金は個人・企業 • 財団と多様であるが, 経済的な変化 (所得), 人 口 統計的な変化 (養育程度 ・ 年齢・性別 ・ 地域差), とりわけ課 税構造の変化 (限界税率 . 控除諸法) の影響を強く受けるという特徴をもつ。 また, 寄付 金の募金活動に要する「費用」 は獲得収益に対してかなりの比率である点から, その寄付 金募集活動が制約 される。 さらには, 寄付資金への依存性は, 組織の使命と将来の方向に 対して闘争を持ち込む結果となる。 総資金に 占める寄付金の比率は低くても. その提供者 の意向が組織のプログラムの編成に大 き な作用を及ぽす。 とくにかれらの使命の変更に対 する圧力は大 き く. 組織の目標優先順位を覆す可能性が高い。 この事実は, 決してすべて が障害となるものではない。 市場の作用が欠如していることや業績測定が数量化で き ない ことを特徴とする非営利組織では. 市場の価格制度に代わって. 寄付提供者の圧力が業績. (11). S. M. Oster, op. cit., pp. 107-12 1 .. - 19 (239)-.
(20) 第45 巻. 第2号. の監視をする決定的な役割を果たし, これによ っ て組織の変革を促す重要な誘因となるの である呪 以上, 百数十 ペ ー ジ に及ぶ著作の内容を「特質」に関連づけて要約した。 しかし, 著者 の意図 は 「戦略的な経営管理」の「実践理論」を展開することにあり, 「経営管理」 の「特 質論」を構築することで はない。 したが っ て, その関心 は 「使命」の形成とその遂行過程 にあり, 戦略的な経営管理の実践に は, 結局のところ, 「使命の確定」とその「遂行過程」 とその結果の 「業績評価」のあり方を問うことになる。 したが っ て, 多くの示唆を与える 研究も, 直接に は 「特質論」に は 結 び つ かない。 筆者が内容を編成して特質を示したので ある。 他方 で, 著者が特質であるとして示しなが ら , 特に非営利組織の ガバナ ン スの特質 などそれに言及していない点がいくつ か見受け ら れる。. 3-4 .. 試論 の基礎. どのような組織でも. 管理活動 は基本的に共通の諸側面をも っ ている。 しかし. 次の諸 点の相違がある以上, 特定の組織の特殊性がその本質を形成するものである。 ・ 価値(目的)の相違 : 経営管理の過程(意思決定の過程) は価値的前提と事実的前提 の 2 つ によ っ て制約される以上 は, 経営管理の過程がそれ自体の価値要素をも っ てい るか ら . 価値(目的)が異なれば, それを達成するための管理の過程(管理の手続き) に影響を与え , その管理のあり方と管理用具 · 管理手段も当 然に異なる。 ・ 受託責任の相違 : 行為の及 ぼ す影響の大きさと広さの程度. 受託責任の方法が異なれ ば, それ ら が管理の相違をもた ら す。 資本の維持と増殖以外の多様な責任が課せ ら れ る。. し か し , 以上は 一般的な特質を指摘 し たが. 実はこの非営利組織は極端に多様な組織を包摂 し ている。 し たがって, 経営管理の理論と技術も多様であ り , そこで事例研究が大いに意義をもつ のであるが, 使命や組織の規模や事業範囲が相違すれ ば, 経営管理の問題の種類と性質が ま た 大 きく異なることになる。 例 え ば. 非営利組織が一般に労働集約的であると し ても, 労働の利用範 囲と作業者のタイプは組織によって 大きく異なる。 有給のスタッフとポランテ ィ アの混合による 非営利組織. 多くはもっ ぱら 専門的なスタ ッ フ による非営利組織. ほとんど完全にポランテ ィ ア 労働に依存する非営利組織がある。 あるいは. 寄付金に依存すると し ても, その依存度とその源 泉は著 し く異なる。 ほとんどを個人の寄付と会社の寄付に依存する非営利組織. 営 業収入を基礎 と し てその他の基本財産や贈与と寄付に依存する非営利組織. 政府と個人の寄付に依存する非営 利組織がある。 これらの相違は, 資金調達の戦略に影響する だ けでなく て, 経営管理統制の構 造 , 製品 ミ ックスの選択. 会計制度の設計などに影響を与える。 さらに. 政府 (内国歳入庁) の法 律上の分類に し たが え ば, 別の相違点が明らかにな り . そ の 結果, 多くの構造上の相違点が浮か び上がる。 すなわ ち . 構成員の相互利益を求める非営利組 織, 一般的なポランテ ィ ア ・ 学校 ・ 教会 ・ 病院などの非営 利組織. 財団などの非営 利組織であ る。 これらの区別から , 組織の目的, 課税上の地位, 規制当局の監視· 統制に関する相違が比較 できる。 これによって, さらに, 経営管理の個別の諸問題に接近 し てよ り 豊かな議論ができる。. (1�. - 20 ( 240 )-.
(21) 非営利組織の経営管理の特質(II ) ( 堀田) ・. 計画化の相違 : 合理的 ・ 統一的意思主体の下では, 計画化は組織の統制手段として機 能するが, 多数の利害関係者の集合体の下 では, 計画化は意思決定への参加の過程と して用いられる。 その結果, 計画化が管理活動を収敏 させる機能を果た さない。. ・. 意思決定の基準 : どのような組織においても, 公式的な意思決定の過程は技術的に同 じであるが, その意思決定の基準=論理. ・. 思考様式=が異なる以上, 意思決定の技術. (目的に対する接近方法)が異なる。 経済性, 効率性, 合理的結果の基準を基礎とした 意思決定の過程=管理過程は, 社会的サ ー ビスを供給する目的から, 政治性, 有効性, 妥協を基礎とする意思決定過程となる。 ・ 評価技術 (評価方法)の相違 : 存在目的が異なれば, したがってその最終成果 ( ボト ム ライン)の求めるものが異なるから, 損益計算による効率性とその結果の業績評価 ではな く て, 目的達成の有効性の評価が必要となる。 そこでは, 経済的な費用便益分 析による原価管理や数量的で短期的な利益管理は適用できない。 したがって, 企業で 採用する業績測定の方法を直ちに適用することはできない。 そこから, 受託責任を犠 牲にして非合理・不合理な行動や偽装や技術選好の行動をとる可能性が生じる。 以上の諸点を考慮の基礎として, 非営利組織の多種の特殊性が経営活動, 特に管理活動 にどのように作用して, どのような管理活動の特殊性をもたらすのであろうか。 これが最 終的な関心事である以上, 上記の諸特質をどのように区別するのが最適な方法なのかが問 題となる。 ニュ. ー. マンは経営管理の活動に影響する「一般的な経営の特質」 を摘出した上で, それ. らの特質が主たる管理過程のそれぞれの要素にどのように作用し, その結果, どのような 特殊な管理過程を作り出すのかについて,. 1 つのモデルを提示している。 この限りで, 私. の意図する「非営利組織における経営管理の特質論」 · にとって大いに学ぶところがある。 しかしながら, 経営管理の特質はなにも「経営管理過程」 の特質に止まるもの ではない。 この点について, オ スタ. ー. が経営管理活動の及ぶ範囲として, 「経営管理の構成図」 に示し. ているように回 外部環境, 使命, 目標, 資源の決定と配分, 刺激制度と管理統制, 業績評 価を含めていることは高く評価することができる。 非営利組織には, 特殊な経営管理の環 境と制度があり, 特殊な経営管理の主体があり, 特殊な経営管理の目的があり, そして特 殊な経営管理の職能があり, 特殊な経営管理の過程があると考えなければならない。 したがって, 非営利組織に関するこれらの経営管理の諸側面について, まず, それぞれ. (13) S. M. Oster, Str ategic Manag ement for Nonprofit Organizations , 1 995, p. 12.. - 2 1 (24 1 )-.
(22) 第45巻. 第2号. にどのような特殊性が認められるかを明らかにしておかなければならない。 つまり, 多く の非営利組織の特質を こ れらの諸側面に振り分けて分類する作業をする こ とである。 その 後に. それぞれの側面の特殊性が, 全体としての経営管理の活動にどのように作用するの か, 言い換えれば, 非営利組織の行動モデルは何かを構築する こ とになる。 本稿では. こ れらの諸側面に従って. 非営利組織の諸特質を区別する試論の基礎をまず 提示してお き たい。 1). 環境と制度の特殊性 ・ 環境 : 外部依存性 ・ 外部状況への高い柔軟な適応性・政治性が大 き いために広いオ ー プン性がある, 生存維持のために適応的な相互作用が激しい。 • 制度 : 非分配の拘束 ・ 事業範囲の限定など法的規制が厳格であり同時に免税 ・ 設立免 許などの法的保護の下にある。. 2). 主体の特殊性 · 受託責任 : 多数で多様な資源提供者が存在しかつ社会的サ ー ビスを供給する こ とか ら. 広くかつ異質である。 • 最高経営機関 : 多種多様なステ ー ク ホ ル ダ ー 集団が参加して, 意思統 ーが困難であり 複合的な計画策定になる傾向が強い。 ・経営者集団 : 技術専門家と経営管理者との二重構造をもち意思決定のラインと権限関 係が複雑になる。 ・組織構成 : 専門家集団に権限委譲する分権的組織と複合する利害関係者のなかのリ. ー. ダ ー シップが必要とする集権的組織の分極化と対立が起 こ る。 ・人的資源 : 技術専門家と ボランティ アの経営参加とその圧力が強く指揮系統を混乱 さ せる。 3). 目的の特殊性 ・ 事業目的 : 社会的サ ー ビスの提供, 価値(価値観)の実現を目的としているから, 有 効性基準によって管理活動が遂行 され業績の測定が困難となる。 サ ー ビス供給とその 対価(収益 ・ 報酬)は関連性をもたない。 サ ー ビス供給と財務均衡の目的の二重性を 有する。. 4). 経営喘能の特殊性 • 財務活動 : 資金調達が多元であり, 状況により変動するので, 不安定性と政治性が強 く働く。 効率的な財務運用による業績の達成を志向しないで, 確定予算の確保に集中 する予算中心主義に陥る。. - 22 ( 242 )-.
(23) 非営利組織の経営管理の特質 ( II ) ( 堀田). ・人事活動 : 労働集約的活動であるので頂要な管理活動であるが, 技術専門家・ ボラン ティ ア労働の比重が高いので, かれらの特殊な管理が必要となる。 動機づけや報酬 ・ 制裁の制度や方法の特殊性が生じる。 ・ マ ー ケ ティ ング活動 : 市場のテスト(顧客満足) を受けないでサ ー ビス配給をするの で, サ ー ビス選択の恣意性・高コスト性が避けられない。 4). 管理過程の特質 4-1 .. 目標. • 目標の性質 : 目標の曖昧性を特徴とし, それらは主旨 • 領域・方向として表明 され, 相互に矛盾したままであり収飲しない。 また環境に応じて変更 される程度が大きい。 • 目標設定過程 : 経営活動の遂行中にも柔軟に設定 される傾向があり, 外部のステ ー ク ホ ル ダ ー の積極的な参加を持ち込む。 • 目標達成過程 : 時・人 ごとに達成目標を選択する傾向があり, 状況の要請によって目 標の満足度が決定 され, 目標の置き換えや代替が頻繁に行われる。 4-2 .. 計画化/政策策定制度. ・状況適合的・部分的計画化が特徴であり, 統一的計画化は一般的な主旨 • 領域 ・ 方向 の手続きに傾斜する。 4-3 .. 組織化 ・ 指揮. • 分権的階層 · 事業部制は選択 されないで, 集権的階層・集権的組織(集権的職能組織) の傾向をもつ。 参加者が高度な選択をする連合的な上下の関係が形成 され, 管理組織 と専門識能組織・ ボランティ アの分離・対立が常態化する。 指揮活動はプロセス志向 の性質をもつ。 4-4 .. モチ ベ ー シ ョ ン. • 技術選好 · 使命の達成感 • 自己の信念の達成=自己実現の欲求満足などの技術専門的 パフ ォ ー. 4-4 .. マンス, 広い自由裁量範囲, 物的充足よりも心理的充足の童要性が高い。. 統制(評価と統制). • 目標が数量化・計数化できないサ ー ビスを有効性の基準で供給するから, さらに, フォ. ー. パ. マンスは組織の目標達成よりも自己実現として理解 され遂行 されるから, 業績. 測定の困難性とそれに伴う統制の困難性が生じる。 統制基準が欠如し, 従来の評価方 法と統制制度と統制方法は適用できない。 さらに, 統一的基準が存在しないから, 業 績評価が相互に矛盾し, 全体的評価のシステムよりも要素的評価システムに傾斜する ことになる。 - 23 (243)-.
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