心臓不整脈の動的コントロールに関する検討
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(2) 58. Memoirs of The Faculty of B. O. S. T. of Kinki University No. 24 (2009). 1000msec. 図 1 ヒトにおいて誘発された心掛田動の実例. ( 1 ). (上段 2列は体表面心電図、残り 4列は右心室から言E 録された心内心電図) 2 対象システムの定式化. 心臓不整脈に関する研究は、心臓電気生理学の観点から物理・化学的レベルで、の詳細モデ、ルの構築・解 析を通じてより厳密に実際の病理的疾患を表そうとする方向と、比較的単純な非線形力学系を心筋細胞の ダイナミクス評価モデ、ルとして採用することにより現象論的に不整脈の原因解明・対策にアブ ローチしよ p. うとする 2方向がある。本研究では医工境界領域問題を理工学の立場から検討するため後者の方法を採用 する。 2. 1 心筋細胞モデル. o n h o f f e r v a n 本研究で、は心筋細胞モテ、ノレとして、不整脈の現象論的解析でしばしば用いられる式(1)の B d e rP o l( B V P ) 方程式. (2). を利用する。 BVP方程式は F i t z H u g h N a g u m o方程式とも呼ばれ、本来神経細胞. 用モデ、ルで、あり心筋細胞の電気生理学的特性を示したものではない。しかし,心筋細胞に見られる興奮性と 振動性の振る舞いを良く記述できること、更には 2変数の単純な微分方程式であるため将来スパイラルウ ェーブ によるリエントリー解析で要求される大規模コンビュータシミュレーションにも取込易い等の理由 F. から BVP方程式を採用する。. 一 千 一 九+ 1 ). 且 'E i. C. ノ . 、、‘・. 九= 1 ( x e + α -byJ 止e = c ( x e. ここで、 Xeは膜電イ立を示し、 Yeは不応性を示す。また Iは外部刺激である。. b, cを変化させることにより種々の活動電位波形を表現できる。 式 (1)においてパラメータ a, 2. 2 アクティブ制御のための制御則. 非線形力学系の立場から見れば心臓の拍動は、非線形振動系における安定なリミットサイクルの実現に 委ねられており絶妙なバランスの上に成立している。このことは逆にバランスが崩れて不整脈が発生した 際には、効果的な対症療法を採り難くしており、この結果、患者への肉体的負担となる ICD、AED等によ る一方的な電気ショック療法となってしまうケースが多い。そこで本研究では患者に優しい対症療法とし て、患者の膜電位を制御力によりアクティブにコントローノレすることにより不整脈からの脱却を図るアク.
(3) 59. ティプ制御技術を提案する。このための制御理論として本研究では非線形システムの制御に高いロバスト 性を有するスライディングモード制御法を利用する。 スライディングモード制御法は安定性が保障された超平面上に応答を拘束することにより、安定性を確 保しながら強制的に振動を制御しようとするものであるが、今の場合、不整脈を不安定な非線形振動の発 生と捉え、その中心的役割を担っている 3次の非線形項による影響を超平面上に拘束して動的安定を確保 することで不整脈からの脱却を図ろうとするのが本研究の基本的考えである。 本研究では心室頻拍や心室細動等の致死性不整脈を主要対象とするが、これにアクティプ制御を考慮し た次式を本研究での対象微分方程式とする。. 九= 1be+a-bye) c. e = { X e千九十川. ( 2 ). X. ここで fは制御信号である。一方 wは、心室性不整脈を引き起こす原因として仮想的に導入したベースメ ーカ細胞等で発生する未知の定常不規則信号とするロ 2 ) の非線形項を次のように線形近 スライディングモード制御による制御信号を導出するため、まず式 (. 似化する。. ÷. = ( h ;. M. 釘 件 叶 . 刊 ベ ( 巳 問 与 引 ) ト ろ. μ. か 仰 o 仇. …. ω 川 吋 n t ゆ t ω ゆ 舟 β ゆ 財 仰 バ r 州 ' l i , F. ( 3 ). 次に式 ( ω 幻)を利用して式 3 ( 幻)を以下の状態方程式に変換する。 ω 2. X=AX+G+Dw+Bf. =. B. AU 咽且. ﹁11111111J. ﹁1111111﹂ 1. -Ell-﹂ AU'i ri--L. ﹁. 2-. 一 一 D , Eli --E﹂ cd rill-EL 一 a 一 一 G. ﹁. Illll111l﹂ 1n-1d. l一cc一 c. ﹁llili---L. r. 、目目目目'、 目目目目'. d dA = 一 ,. 、. ee vd x i 、. r l l Jllι、. 一 一 X. b 一 cc 一一 一. ここで、. ( 4 ). である。 式 ( 4 ) に対して切換超平面の設計を行う。定常項、外乱項を除いた次式. X=AX+Bf. ( 5 ). において、変換行列 T. 廿-?];叩. T. T. を用いて状態変数ベクトルを X. = { x ; r. (mは入力数). ( 6 ). X n. X1= Al1X1+A12X2 X2 =A21X1+A22X2+B2f. のように分割すると次式が得られる。 ( 7 ).
(4) 60. Memoirs of The Faculty of B. O. S. T. of Kinki University No. 24 (2009). 一方、切換関数 σは次の形を仮定する。. ,,. σ=SX(=SX +S2X2). ( 8 ). 系がスライディングモードを生じているときは、. 。 ). σ=&=0 であることを考慮し、かっ式 ( 7 )( 8 ) を利用するとスライディングモードの方程式が. , 玄=( A uA ' 2 S ; 'S, ) x. ( 1 0 ). ,. と求まる。 K=S;'S と置くと、 (. ) 1. , 玄=(A -A'2K, x ) l l. が安定な系となるためには安定なシステム固有値を有するような K が存在せねばならない。いまその値が 得られたとすると Sに関する解の一つが. S=~ ~ (切 として求まる。本研究では制御則として最終スライディング制御法(引を採用することにすれば、求める べき制御信号 fは次の形で与えられる。. f=ー. ( S B t S A Xk ( X , t ) s 伊 ( σ ). ( 1 3 ). ここで正( X, t )は非線形制御項をコントロールするスカラ関数であり、. σに関するリアプノフ関数の微分. が負定関数となるように設定される。 ) で得られる制御信号 fを式 ( 2 ) で使用することにより非線形振動系のアクティプ振動制御が 式(13. 実現できる。. z 目. 3 オブザーパの導入. 実際にアクティプ振動制御を実現するためには、制御信号 fをリアルタイムで計算できることが必要で. .のオンラインセンシングが可能である必要がある。しかし Y .に直接 あり、このためには状態変数ろと Y 関係する量をセンシングすることは困難である。このため y , の推定が要求される。システムが非線形であ るため厳密には非線形オブザーパ等の導入が必要であるが、制御によりスライディングモードに突入する と応答は線形的な振る舞いをすることが期待できるので、本研究では線形系における代表的オブザーバの 一つであるノレーエンパーガの同一次元オブザーバ. (4) により状態推定を行う。すなわち近似的に次式によ. りらのみをセンシングして九を推定する。. ジ=AV+Bf+p(x. ま ). ( 1 4 ). z=RV なお式(14 ) におけるベクトル P は、行列 ( A P R )が安定な固有値を有するように設定される。. 3 数値計算例 3. 1 諸定数. (V, s ) である。 w; G a u s s i a nw h i t en o i s e. I単位 数値計算にて使用した代表的な諸元を以下に示す。なお単位系は S. a=0 . 7, b=0 . 8, c=3, h=1, 1のパルス周期=2.
(5) 61. 3. 2 計算結果 試計算としてここでは致死性不整脈の代表である心室細動に対するアクティプコントロールを検討する。 心室細動発生状態を、未知の定常外乱により強制振動させられる非線形振動系として取り扱う。このとき の活動電位波形を図 2に示す。この系に対してアクティプコントロールを実施した場合の活動電位波形を 図 3に示すが、同図より若干のノイズは残るもののアクティプ制御により危険な心室細動から脱出して正 常な拍動に復帰していることが分かる。 図 3はすべての状態量がリアルタイムにセンシングできているとの理想的状態での解析である。しかし に直接関係する量をセンシングすることは困難であり、状態 既に 2. 3節でも述べた通り、現実的には y, 量の推定が必要である。このため本研究では同一次元オブザーパにより状態推定を行っているが、この妥 当性を確認するため y, をセンシングすること無しに推定量のみを用いて図 3と同様のシミュレーション を実施してみた。結果を図 4に記載するが、両者は非常に良い一致を示しており、これによりスライディ ングモード状態にあれば非線形システムに対しても十分に線形オブザーパで代用可能であることが示され た 。 0 . 6. 宮 ) S困OHo-. ー 1 .2 ﹁1 川町l ﹄. ー﹄﹁ 1. ー 1 .4. 111. 111. 1 6 6. 一. 1 0. 20. 25. T i m e ( s e c ) 図 2 心室細動発生時の活動電位波形. 0 . 2. 。 ε-0.2. T 苦. 言-0.4 o. ~. 0 . 6. 一一一一-,一一一一一一一一一. 1 0. 20. T i m e ( s ∞) 図 3 アクティプコントロール作動時の活動電位波形. 25.
(6) 62. Memoirs of The Faculty of B. O. S. T. of Kinki University No. 24 (2009). 0 . 2. ド ロ. _c. ー. &a-. , 。n u n u. g z. 宮)官官. 2 5. 1 0 s e c ) T出巴(. 図 4 オブザーバを用いたアクティプコントロール作動時の活動電位波形. 4 まとめ 心室頻拍や心室細動等の致死性不整脈に対する臨床学的療法として、従来 ICD、AED等、電気ショック 治療が行われている。しかしこれら一方的な生体への電気ショックは時として患者への精神的・肉体的な 負担となる。そこで本研究では電気的刺激を与えると言う観点では前述の治療法の流れを汲むものではあ るが、より患者に優しい治療法として愚者心臓の時々刻々の応答量(活動電位)を考慮して各個人に見合 った適度の電気刺激を与えるためのアクティブ制御技術の可能性について検討した。特に本研究では、非 線形カ学系を心筋細胞のダイナミクス評価モデルとして採用することにより現象論的に不整脈にアプロー チしながらアクティブコントロール適用可能性を検討しているところに特徴がある。 アクティプコントロール手法としてロバスト性に優れたスライディングモード制御法を適用することで、 非線形系である BVP方程式に対応可能な能動的制振手法を提案した。限定された範囲内ではあるが提案手 法の有用性を確認するシミュレーションにおいては、アクティプコントローノレにより致死性不整脈状態か らE常拍動状態への復帰に成功しており、将来の臨床学的療法の一分野としての可能性を今後議論すべき 価値があるか否かに関連して初めて定量的データを提供できたものと考える。 今後はより多くの心筋細胞群に対する多入出力系の大規模解析を通じて、機能的リエントリーの成立機 序と考えられているスパイラルウェープのメカニズムの解明とアクティブ制御適用の可能性について検討 を行いたい。. 参考文献. (1) 岡 本 良 夫 編 著 ( 2 0 0 3 ) 心臓のフィジオーム、第 1版 、 p p . 2 6 9 、森北出版 (2). F i 位Hugh , R .( 1 9 6 1 )Im pu I s e sa n d p h y s i o l o g i c a l由 国 恒 曲 目r e t i c a lmodelsofn e r v emem 耐a ne.B 旧が明. J . ,. 4 “ -. 1 , 445 (3) 野波健蔵、田宏奇. (4). ( 1 9 9 4 ) スライディングモード制御、第 1版 、 p p . 9 1 9 3、コロナ社. Lueti加炉,D . G .( 1 9 71 ) A n 凶 叫c t i o n加 o h s e r v 聞 .I EEET m n s .Ai血m組cC佃肋,~AC- 16, 596. { i ( ) 2 ..
(7) 63. Application of Active Vibration Control Technique on Cardiac Arrhythmia Takashi Mochio' The most popular cure for the ventricular fibrillation as fatal tachyarrhytbmias is clinically to give a patient some electric extra-impulse assertively such as ICD(Implantable Cardioverter Defibrillator), AED(Automated External Defibrillator) and so forth. Then the patient at treatment feels pain mentallyand/or physically. This paper, therefore, proposes one idea in order to decrease the extra-impulse and supply a milder electric stimulus to ventricular myocardial fibers by real-time sensing and control. This method is based on the feedback control realized at the stage of ventricular myocardial cells, and classified into some active vibration control fields. Some simulations to evaluate the usefulness of proposed idea show the possibility that the active control technique can translate the condition of ventricular fibrillation into the normal condition of action potential at the level of ventricular myocardial cell.. 1. Department of Intelligent Systems, Kink:i. University, Kinokawa, Wakayama 649-6493, Japan.
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