実行機能の評価と介入が一体化した支援プログラムの臨床応用に向けた検討
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第67巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 67, No.1. 平 成 28 年 8 月 August, 2016. 実行機能の評価と介入が一体化した支援プログラムの臨床応用 に向けた検討 加藤 順也・北村 博幸* 北海道森高等学校 *. 北海道教育大学函館校障害児臨床教室. Study for the Clinical Application of Support Programs for Assessment and Intervention of Executive Functions KATO Junya and KITAMURA Hiroyuki* Hokkaido Mori High School *. Department of Special Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本研究では,実行機能の評価と介入が一体化した支援プログラム(加藤ら,2013b)を実施し, 発達障害への臨床応用のための基礎的知見を得ることと,その活用性について考察することを 目的とした。対象は公立のA高等学校に在籍している生徒10名であった。対象に実行機能の評 価と介入が一体化した支援プログラムの各課題成績と日本版DN-CAS(前川ら,2007)を実 施し,その成績およびFriedmanら(2008)で示されている課題成績を統計的に分析した。そ の結果,本研究で得られた各実行機能課題の成績とFriedmanら(2008)の課題成績に大きな 差はないと判断することができた。しかし,本研究ではFriedmanらが示している3つの実行 機能コンポーネントは確認できなかった。また,各実行機能課題の成績と日本版DN-CASの 結果を比較・分析したところ,先行研究と一部同様の結果を得ることができた。今後は,各実 行機能課題の実施方法や課題内容の再検討と,対象数を増やし,より詳細な分析をする必要が あると考えられた。. Ⅰ.問題と目的. 機能のひとつである。しかし,実行機能は複雑か つ広範な概念であり(Juradoら,2007),未だ心. 実行機能とは, 「目的をもった一連の認知活動. 理学的構造とその働きに関する合意は形成されて. を 効 果 的 に 遂 行 す る た め の 機 能 」(Lezakら,. いない。様々な実行機能モデルが提唱されてきた. 1982,2004;山口,2008)であり,学習や行動に. 中で,MiyakeとFriedmanの実行機能モデルが注. おいて重要な役割を果たすと考えられている心理. 目されている。このモデルは,他の実行機能研究. 201.
(3) 加藤 順也・北村 博幸. に 最 も 強 い 影 響 を 与 え て い る( 森 口,2008,. Inhibitionは,支配的,自動的,慢性的な反応を,. 2011)とされる理論的なモデルである。. 必要な時に意図的に抑制する機能である。従来か. Miyakeら(2000)は,大学生137名を対象に複. ら様々なレベルで幅広く用いられてきた概念であ. 数の実行機能課題を実施して,その成績について. るが,Miyakeらは優位な反応を慎重に押さえつ. 潜在的変数分析を用いた検討を行った。その結果. けてコントロールする機能として用いている。そ. から, 実行機能が 「Updating」 「 ,Shifting」 「 ,Inhibition」. のため,課題遂行や活動の中では,意図的に抑制. の3つのコンポーネントからなるとする実行機能. を機能させることに重点が置かれている。. モデルを提唱した。. そして,これらの各コンポーネントは,互いに. Updatingは,ワーキングメモリに保持されて. 関連しながらも区別しうるものであるとされる。. いる情報のモニタリングと更新を担う機能であ. その後,Friedmanら(2008)はMiyakeらの研究. る。課題解決に関係する情報の単純な調整ではな. で抽出された3つのコンポーネント間には共通す. く,ワーキングメモリ内の情報をダイナミックに. る因子が存在するという仮説に基づき,Miyake. 活用していくことに重点が置かれている。古い情. らが用いた実行機能課題の一部を変更した9つの. 報に変わる,より新しく適切な情報をワーキング. 実 行 機 能 課 題 を 用 い て 更 な る 検 討 を 行 っ た。. メモリ内に保持するために,課題に関連した入力. Friedmanら(2008)の研究で使用された実行機. 情報のモニタリングと符号化を要求し,入力情報. 能課題と,対応するコンポーネントを表1に示す。. に対し「時系列順の札付け(temporal tagging) 」. Friedmanらは,これら9つの実行機能課題の. を行うと考えられている。. 成績を基にMiyakeらの実行機能モデルを再検討. Shiftingは,課題もしくは教示の間,ルール変. した。その結果,Inhibitionが実行機能コンポー. 更の前後における精神的な構え(mental sets). ネントから外れ, 「common EF (common Executive. を切り替える機能である。この能力は, 「attention. Function)」というコンポーネントが新たに示さ. switch」や「task switching」とも呼ばれること. れた。従来の「Shifting」と「Updating」は,そ. もあり,注意のコントロール機能を担っている。. れぞれ「Shifting specific」,「Updating specific」. 表1 実行機能コンポーネントと実行機能課題 実行機能コンポーネント. 実行機能課題. Inhibition. Antisaccade, Stroop, Stop signal. Shifthing. Color shape, Number letter, Category switch. Updating. Letter memory, Keep track, Spatial 2-back. 単一性(Unity) Updating Ability. =. Shifting Ability. =. Inhibition Ability. =. common EF. 複合性(Diversity). +. Updating specific. +. Shifting specific. 図1 MiyakeとFriedmanの実行機能モデル. 202.
(4) 実行機能の評価と介入が一体化した支援プログラムの臨床応用に向けた検討. と示された。MiyakeとFriedmanの一連の研究に. 2013)もある。. よって新たに示された実行機能モデルを図1に示. 発達障害と実行機能の関連の強さから,発達障. す。. 害を実行機能という側面から捉え直すことが重要. Miyakeら(2012)によれば,common EFは課. であると考えられる。加藤らは,発達障害児を対. 題目標や課題関連情報の管理と調整を担い,全て. 象とした実行機能の評価と介入が一体化した支援. の実行機能課題に影響を与えるコンポーネントで. プログラムを開発し(加藤ら,2013a;2013b),. ある。Shifting specific,Updating specificについ. その有効性を検討している(加藤ら,2015)。し. ては,それぞれが果たす機能はMiyakeら(2000). かし,加藤ら(2013a;2013b)の開発した支援. が示したものと同一であるが,どちらも個別に取. プログラムは,Friedmanら(2008)の実行機能. り出せる特有のコンポーネントであることが強調. 課題をそのまま日本語化したものであり,その妥. された。Inhibitionに関しては,Inhibition specific. 当性は検討されていない。また,Friedmanらの. として示されず,common EFと事実上完全な相. 研究で示された3つの実行機能コンポーネントが. 関関係にあると示されため実行機能コンポーネン. 日本人にも同様に確認できるのか検討されていな. トから外された。これは,common EFの媒介に. い。つまり,臨床応用のための基礎的知見がいま. よって課題目標や課題関連情報の管理・調整が適. だ十分ではないと考えられる。. 切になされることで結果的に行動レベルでの抑制. そこで,本研究では実行機能の評価と介入が一. 能 力 が 出 現 す る と い う 考 え を 示 し て い る。. 体化した支援プログラムを実施し,臨床応用のた. MiyakeとFriedmanの実行機能モデルでは,Shifting. めの基礎的知見を得ることと,その活用性につい. specificとUpdating specificという特有の機能と,. て考察することを目的とする。. common EFという全ての実行機能に共通した機 能によって,Updating,Shifting,Inhibitionとし ての能力が生じるとされる。. Ⅱ.方 法. 一方で,実行機能研究の領域のひとつに,発達. 1.対 象. 障害を対象とした研究があり,注目されている。. Friedmanら(2008)の研究対象者が平均17歳. 発達障害の実行機能に関する研究の多くはADHD. (SD=0.6,R=16.1~20.11)の健常児者である. (Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder注 意. ため,本研究では公立のA高等学校に在籍してい. 欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)やASD. る生徒10名を対象とした。内訳は,男子生徒4名,. (Autism Spectrum Disorder自閉スペクトラム. 女子生徒6名で,平均年齢は17歳1ヶ月(SD=. 症/自閉症スペクトラム障害)を対象とした研究. 0.75,R=16.0~17.11)であった。. である。ADHDやASDの障害の第一原因が実行 機能の障害と推定するのは困難である (Pennington. 2.時期および場所. ら,1996;Lissら,2001;室橋,2005)という主. A高等学校の教室を使用した。. 張があるものの,発達障害児者が実行機能課題で. 平成26年9月から平成27年9月の放課後実施し. 低い成績を示したという報告が数多くなされてい. た。個別に実施し,一人あたりの実施時間は2時. る。また,実行機能の障害が計画性のなさ,見通. 間程度であった。. しをもつことの困難さ,一貫性を欠いた思い付き の行動といった発達障害の臨床症状を生じさせる. 3.手続き. (加戸,2008)という考えや,脳機能の不全から. ⑴ 実行機能の評価と介入が一体化した支援プロ. 引き起こされる実行機能の弱さが,社会的な生き に く さ に つ な が っ て い る と い う 考 え( 大 村,. グラム 加藤ら(2013b)が示している各課題の中から,. 203.
(5) 加藤 順也・北村 博幸. Friedmanら(2008)の実行機能コンポーネント. Keep trackでは,画面内の下に6つの標的カテ. にそれぞれ対応する実行機能課題を2つずつ抽出. ゴリーが呈示されている。その標的カテゴリーに. して実施した。具体的には,common EF課題と. 該当する模範解答が標的刺激である。課題開始後,. してAntisaccadeとStroop,Updating課題として. 標的刺激を含む15個の単語が1500msごとに順番. Letter memoryとKeep track,Shifting課 題 と し. に呈示される。対象者は,いずれかの標的カテゴ. てNumber letterとCategory switchを実施した。. リーに該当する標的刺激が呈示された場合,その. 全ての実行機能課題はPsyscope Ⅹ B46(Cohen. 単語を覚えなければいけない。全ての単語が呈示. ら,1993) によって作成・実施され,対象者はキー. された後,呈示された標的刺激の中で最後に呈示. ボードを押したり,口頭で答えることで反応した。. された標的刺激の単語を答えるように求められる. 本研究で使用したパーソナルコンピュータはMac. (Friedmanら,2008)。試行開始前に使用する単. Airで画面サイズは13インチであった。. 語リストを見せ,正しくカテゴリー分類できるか. Antisaccadeでは,最初は画面上に注視点が呈. を確認した。その後,練習を3試行実施してから,. 示され,その後黒い四角形が150ms呈示される。. 6試行実施した。. 続けて,その黒い四角形の反対側に標的刺激であ. Number letterでは,画面に示された4マスの. る矢印が呈示されるが,すぐに灰色の四角形で覆. 四角形の中に,文字と数字からなるペアが呈示さ. い隠される。対象者は,最初の黒い四角形への反. れる。上段のマスにペアが呈示されたときはその. 応を抑制し,標的刺激の矢印が向いていた方向を. 数字が偶数であったか奇数であったかを答え,下. 答える(Friedmanら,2008)。標的刺激は左,右,. 段のマスにペアが呈示されたときは,その文字が. 上,下のいずれかの向きで呈示される。練習を22. 母音であったか子音であったかを答えなければい. 試行実施してから,本試行を45試行実施した。. けない(Friedmanら,2008)。本研究で用いた支. Stroopでは,黒い画面の中心に注視点が500ms. 援プログラムでは標的刺激が平仮名(あ,い,う,. 呈示された後,標的刺激が呈示される。標的刺激. え)と片仮名(キ,ク,ケ,コ)になっており,. のタイプは2つあり,⒜中立刺激:数と色名の字. 標的刺激が下段に呈示された場合は,その文字が. 数がマッチされた一連のアスタリスク(例, 「あか」. 平仮名であったか片仮名であったかを答える。. であれば赤色で「**」),⒝不一致刺激:異なる. Block1は上段のマスにのみ標的刺激が呈示される. 色で印刷された色名(例,赤色で印刷された「み. 条件で16試行実施した。Block2は下段のマスにの. どり」 ) であった。使用される色は6色で,赤,青,. み標的刺激が呈示される条件で16試行実施した。. 緑,黄,オレンジ,紫である。⒜と⒝のいずれの. Block3は全てのマスに標的刺激が呈示される条件. 場合でも,標的刺激の色名を答える(Friedman. で64試行実施した。. ら,2008) 。⒜の標的刺激を用いる中立刺激条件. Category switchでは,まず画面上に「✚」か「♥」. で15試行を2ブロック実施した後,⒝の標的刺激. の合図刺激が呈示される。合図刺激の後に16種類. を用いる中立刺激条件で15試行を2ブロック実施. ある名詞のいずれかが標的刺激として呈示される。. した。. 合図刺激が「✚」の場合は,標的刺激の名詞がサッ. Letter memoryでは,最初に注視点が呈示され,. カーボールより大きいか小さいかを答え,合図刺. その後に標的刺激である一連のひらがなが. 激が「♥」の場合は,標的刺激の名詞が動物か物. 2500msずつ呈示される。標的刺激が全て呈示さ. かを答えなければいけない(Friedmanら,2008) 。. れた後の画面には「???」と提示される。対象. 名詞については,動物を示す8語(4語がサッカー. 者は一連のひらがなの最後の3文字を覚えるよう. ボールより大きく,4語がサッカーボールより小. に求められる(Friedmanら,2008)。練習を3試. さい)と非動物を示す8語(4語がサッカーボー. 行実施してから,6試行実施した。. ルより大きく,4語がサッカーボールより小さい). 204.
(6) 実行機能の評価と介入が一体化した支援プログラムの臨床応用に向けた検討. を考案して設定した。練習を24試行実施してから. Shifting課題ではMiyakeら(2000)に従い,課. 本試行24試行を4ブロック実施した。. 題開始直後の第1試行,RTが200ms以下の試行, 誤反応および誤反応直後の試行を分析から除外し. ⑵ 日本版DN-CAS(前川ら,2007). た。また,Number letterでは, 「シフトあり試行」. 支援プログラムの終了後,10分程度の休憩を. が含まれるBlock3のみ分析対象とした。Category. 取ってから実施した。. switchでは標的刺激の150ms前に合図刺激が提示. 対象者の負担を考慮し,簡易実施とした。プラ. されるLv2条件(加藤ら,2013b)のみ分析対象. ンニング下位検査は〈数の対探し〉, 〈文字の変換〉. とした。Number letterとCategory switchの分析. を実施した。同時処理下位検査は〈図形の推理〉,. では,反応の判断基準が継続しセットの転換が必. 〈関係の理解〉を実施した。注意下位検査は〈表. 要のない「シフトなし試行」と,判断基準が変更. 出の制御〉 , 〈数字探し〉を実施した。継次処理下. されセットの転換が必要な「シフトあり試行」の. 位検査は〈単語の記憶〉, 〈文の記憶〉を実施した。. 平均RTを算出した。その数値を基に,反応の判 断基準を柔軟に変更する能力を表すセットの転換. 4.分析方法. を算出した。セットの転換は[セットの転換=シ. 各実行機能課題については以下の分析方法によ. フトあり平均RT-シフトなし平均RT]により算. り課題成績を算出した。. 出した。この値が小さければ反応の判断基準が変. Antisaccadeでは正反応率を算出した。正反応. わった際の構え(セット)を切り換える能力が高. 率が高ければ妨害刺激への反応を抑制する能力が. いことを示す。. 高いことを示す。Stroopでは,中立刺激条件での. 日本版DN-CASについては,実施・採点マニュ. 平均Reaction time(以下,平均RTとする)と不. アルに従い簡易実施の標準得点を算出した。. 一致刺激条件での平均RTを算出し,その数値を. これらの方法で算出された各実行機能課題の成. 基に,不一致刺激に生じる競合を解消するための. 績と日本版DN-CASの標準得点について相関係. 能力を反映するコンフリクト効果を算出した。コ. 数による分析と重回帰分析を用いて統計的に分析. ンフリクト効果は, [コンフリクト効果=不一致. した。. 刺激条件での平均RT-中立刺激条件での平均 RT]によって算出した。この値が低ければ,不 適切な知覚情報から受ける干渉を制御する能力が. Ⅲ.結 果. 高いことを示す。. Antisaccade,Keep track,Letter memoryの. Keep trackでは反応を得点化して全試行での. 成績はFriedmanら(2008)に従いアークサイン. 得点率を算出した。得点化に関しては,標的カテ. 変換を行った。各実行機能課題成績の平均値,標. ゴリーに含まれる最後の単語を復唱した場合2. 準偏差,最小値と最大値を表2に示す。また,表. 点,標的カテゴリーに含まれるが最後ではない出. 2には比較のためFriedmanら(2008)に示され. 現した単語を復唱した場合1点,標的カテゴリー. ている成績も示した。. に含まれない単語,もしくは出現していない単語. Antisaccadeの平均値は1.22で,標準偏差は0.26. を復唱した場合0点とした。得点率が高ければ,. であった。Stroopの平均値は183msで,標準偏差. ワーキングメモリ内の情報を更新・削除する能力. は109であった。Keep trackの平均値は0.97で,. が高いことを示す。Letter memoryでは正反応率. 標準偏差は0.13であった。Letter memoryの平均. を算出した。正反応率が高ければ,ワーキングメ. 値 は1.11で, 標 準 偏 差 は0.27で あ っ た。Number. モリ内の情報を更新・削除する能力が高いことを. letterの平均値は516msで,標準偏差は253であっ. 示す。. た。Category switchの平均値は193で,標準偏差. 205.
(7) 加藤 順也・北村 博幸. は187であった。Friedmanら(2008)の成績の平. た。Letter memoryとNumber letterの間に中程. 均値±1SDを基準として比較すると,全て基準内. 度 の 正 の 相 関 が 認 め ら れ た。Number letterと. に収まっていることが確認された。. Category switchの間に中程度の負の相関が認め. 各実行機能課題成績間の相関係数を表3に示. られた。. す。岡太ら(1995)による相関係数の評価と目安. 日本版DN-CASの標準得点の平均値,標準偏. を参考に.40以上の係数がみられた場合を相関関. 差,最小値と最大値を表4に示す。全検査標準得. 係 が 認 め ら れ る と し た。 そ の 結 果,Stroopと. 点の平均値は91で,標準偏差は18であった。プラ. Keep trackの間に中程度の負の相関が認められ. ンニングの平均値は96で,標準偏差は18であった。. 表2 各実行機能課題の成績. Antisaccade Stroop Keep track Letter memory Number letter Category switch. 平均値. 標準偏差. 最小値. 最大値. 1.22. 0.26. 0.73. 1.57. (1.04). (0.20). (0.47). (1.57). 183. 109. 39. 338. (212). (89). (0). (483). 0.97. 0.13. 0.73. 1.10. (0.93). (0.18). (0.37). (1.50). 1.11. 0.27. 0.80. 1.57. (1.09). (0.24). (0.38). (1.57). 516. 253. 254. 1146. (336). (190). (-14). (953). 193. 187. -100. 554. (343). (193). (-34). (941). ( )内はFriedmanら(2008)より引用 表3 各実行機能課題成績間の相関係数 Antisaccade. Stroop. Keep track. Letter memory Number letter Category switch. Antisaccade. 1. Stroop. 0.097. 1. Keep track. -0.178. -0.461. 1. Letter memory. 0.200. -0.088. -0.120. 1. Number letter. -0.034. -0.247. 0.208. 0.569. 1. Category switch. 0.159. -0.168. -0.208. -0.263. -0.564. 表4 日本版DN-CASの標準得点. 206. 平均値. 標準偏差. 最小値. 最大値. 全検査標準得点. 91. 18. 73. 116. プランニング. 96. 18. 76. 124. 同時処理. 90. 13. 73. 112. 注意. 95. 18. 69. 118. 継次処理. 92. 16. 66. 114. 1.
(8) 実行機能の評価と介入が一体化した支援プログラムの臨床応用に向けた検討. 同時処理の平均値は90で,標準偏差は13であった。. 比較した結果,全て±1SDの範囲内に収まってい. 注意の平均値は95で,標準偏差は18であった。継. たことから,大きな差はないと判断することがで. 次処理の平均値は92で,標準偏差は16であった。. きた。しかし,本研究で得られた各実行機能課題. 次に,各実行機能課題の成績を独立変数,日本. 間の成績の相関係数を見ると,Friedmanらが示. 版DN-CASの標準得点を従属変数として強制投. している3つの実行機能コンポーネントは確認で. 入法による重回帰分析を繰り返し行った。全検査. きなかった。本研究では,対象数が少ないため,. 標準得点を従属変数として分析した結果,調整済. Friedmanらと同様の方法で分析することができ. み重決定係数は.82であり,有意確率は.058であっ. なかった。そのことが結果に影響している可能性. た。プランニング標準得点を従属変数として分析. もあるが,各実行機能課題の実施方法や課題内容. した結果,調整済み重決定係数は.90であり,有. を再検討する必要もあるのではないかと考えられ. 意確率は.025であり5%水準で有意な値であっ. た。. た。同時処理標準得点を従属変数として分析した. 例えば,呈示刺激として使用する文字や矢印の. 結果,調整済み重決定係数は-.58であり,有意確. 大 き さ を 調 整 す る こ と が 有 効 か も し れ な い。. 率は.813であった。注意標準得点を従属変数とし. Friedmanらが実施したAntisaccadeでは妨害刺激. て分析した結果,調整済み重決定係数は.74であ. として呈示される黒い四角形の大きさは一辺が. り,有意確率は.099であった。継次処理標準得点. 3.1mmで,標的刺激として呈示される矢印の大き. を従属変数として分析した結果,調整済み重決定. さは7.9mmとなっている。また,これらはどちら. 係数は.82であり,有意確率は.059であった。これ. も中央の注視点から7.62cm離れた位置に呈示さ. らの結果から導かれたパス図を図2に示す。. れる。一方,本研究で使用した支援プログラムの Antisaccadeは, 妨害刺激の四角形の一辺が2.4cm, 標的刺激の矢印の大きさは1.5cm,注視点からの. Ⅳ.考 察. 距離は12cmと,全て大きくなっている。標的刺. 1.Friedmanら(2008)の結果との比較分析. 激が小さくなれば,刺激の見落としは増加し,課. まず,本研究で得られた各実行機能課題の成績. 題 成 績 は 低 下 す る と 予 想 さ れ る。 本 研 究 で の. をFriedmanら(2008)の実行機能課題の成績と. Antisaccadeの成績はFriedmanらの成績より若干. Antisaccade .77*. Stroop. 全検査. R²=.82. プランニング. R²=.90*. 同時処理. R²=-.58. 注意. R²=.74. 継次処理. R²=.82. -1.00* .48*. -.46*. Keep track. -1.31**. Letter memory .57*. -.92*. Number letter. .64*. .87*. -.71*. -.56*. Category switch 図2 各実行機能課題の成績と日本版DN-CASの標準得点の関係. 207.
(9) 加藤 順也・北村 博幸. 高いため,呈示刺激の大きさを調整することで成. こ と も 影 響 し て い る と 考 え ら れ る。 ま た,. 績が低下すれば,よりFriedmanらの研究と近い. Friedmanら(2006)はUpdatingの機能と知的な. 成績になる可能性がある。また,呈示刺激が小さ. 能力の関連を指摘しているが,そのような線引き. くなれば標的刺激を見落とさないように画面をよ. が臨床的にそれほど明確ではないという指摘もあ. り注視しなければならず,この課題が評価する. る(Rocaら,2010)。いずれにせよ,今後は対象. common EFの性質をより正確に反映する可能性. 数を増やし,より詳細な分析をする必要がある。. がある。 Antisaccadeのみならず,他の実行機能課題に. 3.臨床応用へ向けた検討. おいても呈示刺激の大きさや位置を再考し,調整. 以上の結果より,加藤ら(2013a,2013b)が. していくことが有効であると考えられた。. 開発した実行機能の評価と介入の支援プログラム は,実行機能のアセスメントとして一定の妥当性. 2.日本版DN-CASの結果との比較分析. は認められるが,より精度の高いアセスメントと. 各実行機能課題の成績と日本版DN-CASの結. するための改善が可能であると考えられた。. 果の重回帰分析の結果を見ると,まず,Number. また,この実行機能の評価と介入が一体化した. letterは日本版DN-CASの全検査標準得点,プラ. 支援プログラムの臨床応用のための研究を今後と. ンニング,注意そして継次処理と有意な負の相関. も継続する意義は大きいと考えられる。それは,. となっている。これは,課題の指標の値が低けれ. この支援プログラムが実行機能のアセスメント. ば,その能力が高いことを示すという成績の算出. と,アセスメントに基づく介入の両者の役割を有. 方法の特性から得られた結果であると考えられた。. している(加藤ら,2013b)ことが重要な意味を. 次に,全検査標準得点に強い影響を与えている. もっている。大村(2015)は発達障害に対する実. のはKeep TrackとNumber letterであった。Keep. 行機能の認知トレーニングは,従来の薬物療法や. TrackはFriedmanらの示す実行機能コンポーネ. 行動療法に加えて,今後の発達障害の代替治療・. ン ト のUpdating specificに 関 す る 課 題 で あ り,. 支援の一つとしてより広く活用されていくことが. ワーキングメモリに保持されている情報のモニタ. 期待できると述べている。そして,将来的には統. リングと更新が必要となる。. 合的なプログラムとして,複数のトレーニングを. Updating specificが知的な能力と強い相関を示. 組み合わせて実施する効果的なトレーニングバッ. すという結果は先行研究と同様の結果であった。. テリー・プログラムを個人毎の特性に合わせて用. Friedmanら(2006) は,234人( 平 均IQ=103,. 意することが重要であると指摘している。また,. R=73~142)を対象に流動性知能,結晶性知能,. 実行機能の認知トレーニングに際しては,何より. 実行機能の関連を調べ,流動性知能,結晶性知能. もまず初期状態の各人の障害の程度を適切に把握. のいずれとも有意な関連をもつのはUpdatingの. するアセスメントのあり方が重要であるとも指摘. みであると明らかにしている。しかし,Friedman. している。加藤ら(2013b)の実行機能の評価と. ら(2006)の研究ではInhibitionおよびShiftingの. 介入が一体化した支援プログラムは,個人の実行. 機能については流動性知能や結晶性知能との間に. 機能の特性に合わせてトレーニングバッテリーを. 有意な関連が認められなかったことに対し,本研. 組むことができるように構成されており,その点. 究でShifting specificに関する課題であるNumber. からも臨床的な効果は期待できる。そのため,大. letterが全検査標準得点と有意な相関を示してお. 村の指摘を踏まえ,まずは実行機能のアセスメン. り,先行研究とは異なる結果となった。これは,. トとしての精度を高めることが,将来的な臨床応. Friedmanらがウェクスラー成人知能検査を使用. 用のために重要であると考えられた。. しているため,使用した心理検査が異なっている. 208.
(10) 実行機能の評価と介入が一体化した支援プログラムの臨床応用に向けた検討. 引用文献 Cohen, J. D., MacWhinney, B., Flatt, M., & Provost, J. (1993): PsyScope: An interactive graphic system for designing and controlling experiments in the psychology laboratory using Macintosh computers. Behavior Research Methods, Instruments & Computers, 25, 257-271. Friedman, N.P., Miyake, A., Corley, R.P., Young, S.E., DeFries, J.C., Hewitt, J.K. (2006): Not all executive functions are related to intelligence. Psychological Science 17, 172-179. Friedman, N.P., Miyake, A., Susan, E.Y., John, C.D., Robin, P.C., & John, K.H. (2008): Individual differences in executive functions are almost entirely genetic in origin. Journal of Experimental Psychology 137(2), 201-225. Jurado, M.B., & Rosselli, M. (2007): The elusive nature of executive functions: a review of our current understanding. Neuropsychol Review 17, 213-233. 加戸陽子(2008) :発達障害をともなう子どもへの神経心 理学的検査.関西大学出版部. 加藤順也・北村博幸(2013a):発達障害児の実行機能の 評価と介入の現状と課題.北海道教育大学紀要(教育 科学編)63⑵,273-283. 加藤順也・北村博幸(2013b):実行機能の評価と介入の ための支援プログラムの開発-小学校に在籍する学習 面及び行動面に著しい困難を示す児童を対象として-. 北海道教育大学紀要(教育科学編)64⑴,365-380. 加藤順也・北村博幸(2015):発達障害のある児童の実行 機能のアセスメント-実行機能の評価と介入が一体化. Organization of Individual Differences in Executive Functions: Four General Conclusions. Current Direction in Psychological Science 21(1), 8-14. Miyake, A., Friedman, N.P., Emerson, M.J., Alexander, H.W., & Howerter, A. (2000): The Unity and Diversity of Executive Functions and Their Contributions to Complex “Frontal Lobe” Tasks: A Latent Variable Analysis. Journal of Cognitive Psychology 41, 49-100. 森口佑介(2008) :就学前期における実行機能の発達.心 理学評論51⑶,447-459. 森口佑介(2011) :児童期における実行機能の発達.上越 教育大学研究紀要30,115-121. 室橋春光(2005) :実行機能からみたLD・ADHD・自閉 症の心理的特異性と共通性.LD研究14⑴,41-45. Pennington, B.F., & Ozonoff, S. (1996): Executive Functions and developmental psychopathology. Journal of Child Psychology and Psychiatry 37, 51-87. 岡太彬訓・都築誉史・山口和範(1995) :データ分析のた めの統計入門.共立出版. 大村一史(2013):個に応じた適切な支援を導く神経教育 学 的 ア プ ロ ー チ.K-ABCア セ ス メ ン ト 研 究15,97107. 大村一史(2015):発達障害児に対する実行機能の認知ト レーニング.山形大学紀要(教育科学)16⑵,93-108. Roca, M., Parr, A., Thompson, R., Woolgar, A., Torralva, T., Antoun, N., Manes, F., Duncan, J. (2010): Executive function and fluid intelligence after frontal lobe lesions. Brain 133, 234-247. 山口修平(2008) :遂行機能障害と前頭葉ネットワーク. 認知神経科学10(3・4),284-289.. した支援プログラムを用いて-.北海道教育大学紀要. (加藤 順也 北海道森高等学校教諭). (教育科学編)65⑵,375-388.. (北村 博幸 函館校教授) . Lezak, M.D. (1982): The Problem of Assessing Executive Functions. International Journal of Psychology 17(1-4), 281-297. Lezak, M.D., Howieson, D.B., & Loring, D.W. (2004): Neuropsychological Assessment, 4th ed. Oxford University Press. Liss, M., Fein, D., Allen, D., Dunn, M., Feinstein, C., Morris, R., Waterhouse, L., & Rapin, I. (2001): Executive functioning in high-functioning children with autism. Journal of Child Psychology and Psychiatry 42, 261-270. 前川久男・中山健・岡崎慎治(2007):日本版DN-CAS認 知評価システム 理論と解釈のためのハンドブック. 日 本 文 化 科 学 社.(Naglieri, J.A., & Das, J.P. (1997): Cognitive Assessment System. Riverside Publishing.) Miyake, A., Friedman, N.P. (2012): The Nature and. 209.
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