へき地・小規模校における不登校へのアプローチII : へき地・小規模校への転校事例を通して
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(2) へき地・小規模校における不登校へのアプローチ. へき地・小規模校における不登校へのアプローチ. ). ─ へき地・小規模校への転校事例を通して ─ 久. 能. 弘. 道. (北海道教育大学旭川校). 藤. 美. 鶴. プローチの効用を明らかにすることを第. 研究目的 文部科学省(. 佐. (旭川市立近文第二小学校). の目的とす. る。そして,その目的に迫る過程の中で,不登校の予防 ) の学校基本調査によると,国・公・. 私立学校における不登校児童生徒の状況 として, 国・. や援助の在り方について,学校環境の側面から言及する ことを第 の目的としたい。. 公・私立の小・中学校で,平成 年度に“不登校”を理 由として. 日以上欠席した不登校児童生徒は,小学生. 人(前年度比 度比. 人増),中学生. 人増)の合計. 人(前年. 人であり,調査開始以来. 過去最高となっている。 という。 こうした状況から,これまでも不登校については,本. 方. 法. .へき地・小規模校の不登校の実態調査 この調査は,北海道. 市へき地小規模校教育研究連盟. に加盟している小・中学校を対象に実施した。対象学校. 人の性格や精神面といった個人の問題から, 家族の問題,. は,小学校 校,中学校. 教師や学校との関係,さらには学校をとりまく地域や現. 調査方法は,アンケート用紙を加盟校に郵送し,答えを. 代社会のあり方まで,幅広い議論がなされてきている。. 返信用封筒に入れて返信してもらう方法をとり,さらに. さらに,不登校への対応についても,個人やその家族を. 中学校には電話調査も行い, アンケートの補足を行った。. はじめ,様々な機関において行われてきており,また技. アンケートの内容は,. 法においても,カウンセリング,行動療法,箱庭療法な. る不登校の状況,不登校を理由に入学・転校してきた児. ど,幅広く展開されている。. 童・生徒の状況,不登校への対策あるいは予防として効. しかし,山本(. )は,不登校研究において 家庭,. 本人,友人関係の面からのアプローチがほとんどで,学 校環境の面を考えることは極めて少なかった とし,小 野(. )も同様のことを指摘している。. また,北海道における不登校への対応については,相. 校,小中併置校. 校である。. 年度の在籍児童・生徒におけ. 果があったと考えられるへき地・小規模校ならでの取り 組み(自由記述)の 項目からなる。 へき地小規模校教育研究連盟を対象にしたのは,都合 の良い学校だけがアンケート対象校にならないようにす るためである。また,. 市を対象にしたのは,. %,. %に近い回答率を得ることが予想されたた. 談・治療・援助をする機関が都市部に集中しており,都. あるいは. 市部から離れた地域においての相談・治療・援助には困. めである。実施するアンケートが不登校に関する内容で. 難な状況があり,問題を個人が抱えてしまっている状況. あるため,不登校の問題を抱えている学校は回答を回避. がある。. することが予想され,アンケート結果が偏ってしまう可. そこで,本論文では,へき地・小規模校での不登校の. 能性があるため,筆者は. 実態調査と不登校を理由にへき地・小規模校へ転校した. 事実,今回の調査では,. 事例研究から,へき地・小規模校における不登校へのア. どの協力を得て,. ────────── )本研究の一部は,平成 年度科学研究費補助金 課 (研究代表者 久能弘道)の助成を受け 題番号 た。. %に近い回答率を求めた。 市教育委員会,. %の回答率を得た。. 市校長会な.
(3) 久. 能 弘 道・佐 藤 美 鶴. .不登校を理由にへき地・小規模校へ転校した事例. 占める不登校の割合についても比較したかったが,. 研. 教育委員会では非公表ということで,比較することはで. 究. 市. きなかった。 小学校 年生でへき地・小規模校の 小学校へ転校し. これらの結果から,サンプル数が十分でないため統計. た. 男 中学校 年生でへき地・小規模校の 小学校へ転校し た 子. 的分析には適さないが,へき地・小規模校は,それ以外 の学校に比べて,不登校が出現し難い環境にあると考え る。. 事例. は,筆者と. 男との交換ノートなどによる筆者 は,筆者の学校訪問による. の記録から考察した。事例 子の作文と. 不登校児童生徒のへき地・小規模校への転校. 子にかかわった教員の記録から考察し. た。. 不登校であった児童生徒が,へき地・小規模校に入学 あるいは転校した事例について調査した。. 結. アンケート調査と電話インタビュー調査をまとめたも. 果. 童生徒の数は. へき地・小規模校における不登校の割合 北海道. 人いたが,へき地・小規模に入学後には. 全員が不登校ではなくなっている。. 市へき地小規模校教育研究連盟を対象にした. これらの結果から,へき地・小規模校は,それ以外の. %の回答を得た。. アンケート調査を実施し,. 学校に比べて,不登校の児童生徒にとって,登校し易い. アンケートの調査結果と全国・北海道の不登校の人数 を比較したのが表. である。転校前の学校で不登校であった児. のが表. .へき地・小規模校の不登校の実態調査. 環境にあると考えられる。. である。全国の国公私立学校の. %(文部科学省,. へき地・小規模校における不登校への教育実践. %,. 全児童生徒数に占める不登校の割合が,小学校. )であり,北海道の国. アンケートの最後には, 貴校において,不登校への. 公立全児童生徒数に占める不登校の割合は,小学生. 対策,あるいはその予防として効果があったと考えられ. 中学校. %,中学生. %(文部科学省,. )である。. るへき地・小規模校ならではの取り組みや特色ある活動. 市の不登校の全児童生徒数に占める不登校の割合は,小 学校,中学校とも. %であった。. 市の全児童生徒数に. 表 学. 校. 中. 学. 不登校児童生徒 数の合計 (人). 校. 分 全児童数 (人). 全 北. けた。その答えを大きく以下の つに分けて考察する。. 年度の不登校児童生徒( 日以上の欠席者)数の比較. 小 区. がございましたら,お教えください。 という問いを設. 不登校児童数 (人). (%). 全生徒数 (人). 不登校生徒数 (人). (%). 国 海. 道. 市へき地小 規模校教育研 究連盟加盟校 (注)全国および北海道の児童生徒数,不登校児童生徒数は,文部科学省が実施している学校基本調査の結果によるものである。 表. 不登校児童・生徒がへき地・小規模校に転校後の実態. 転校前の学校で不登校であった児童生徒数. なった児童生徒数 (人). (人) 小 学 校. 中 学 校. へき地・小規模校に転校後に不登校でなく. 計. 小 学 校. 中 学 校. (%) 計.
(4) へき地・小規模校における不登校へのアプローチ. 筆者も小規模校に勤務していたことがあるので,ここ. 特色ある教育活動について. でのアンケートの答えについては,同じような意見を持 ち,共感できる点が多い。 全教職員が担任であるという意識について 全教職員が担任という意識のもとに指導にあたってい る。 職員室で常日頃から児童の話をし,家庭の状況につい ても全教職員が知っており,予防的な対応に心がけて いる。. の. 全教職員が担任であるという意識について. 地域の環境を十分に生かした体験活動を取り入れ,心 の故郷としての学校づくりを目ざしています。 体験を重視した教育活動 (水稲の栽培・観察, リンゴ・ ブドウ・栗などの果樹栽培,野山の山菜採り,地域の 環境教育,老人会との交流,地域との交流など)に取 り組んでいる。 小中併置校の特色を生かした小中合同の活動(全校花 見給食,運動会,学校祭,体験アウトドア,餅つき集 会など)を実施している。 異年齢による行事を教育課程に位置付けている。 異年齢集団の活動が,教育課程に多く位置付けられて いる。. は,小規模校の場合は,校長をはじめ全教職員が全児 童の名前と顔が一致し,性格までも理解している。学. の. 特色ある教育活動について. は,子供の人数. 校の全教職員が子供一人一人を理解し見つめているこ. が少ないことから,異年齢集団との取り組みや地域と. とで,子供のシグナルに気付く可能性が高く,担任だ. の取り組みが容易にでき,あるいはそうしないと活動. けで抱え込むようなことが起きにくい環境にある。さ. ができない環境にある。従って,異年齢や地域との触. らに,子供一人一人も,担任だけでなく,全教職員あ. れ合い,地域性を生かした体験活動などによる自然と. るいは地域の人に見られていることを認識し,自分を. の触れ合いなどが豊富に行われている。異年齢,地域,. 見失うことが起きにくい環境にあると考える。. 自然などとの実体験としての触れ合いは,現代の生活 に欠けているといわれる部分であり,心の教育の充実. 居場所について. などに果たす役割は大きいと考える。. 不登校にかかわっては,特別な対策をとってはいませ ん。もちろん,教師一人一人が子供たちの良さや個性 を生かすように働きかけていくことについては,どの 学校においても普遍だと思います。また,子供たちの 存在感を自覚させるような学級での取り組みなども行 われているところです。ただし,小規模校の場合は, 障害のある児童においてもそうだと思われますが,子 供が認識する周りの子供の数が少なく,そのために自 分の存在感,あるいは居場所を感じることが,大規模 校や人数の多い学級に比べると自然であることが大き な要因の一つかなと考えております。 一人一人の出番を大事にしている。 生徒会活動で必ず役員を経験させるようにしている。 その子のよさや特性みたいなものを父母とともにさが し,認めている。また,ゆったりとした中で,他の生 徒と比較することなく,住みごごちのよい環境をつく り出してやることを大切にしている。 一人一人が活躍できる場を見つけ,学校での存在感が だせるように各行事の計画を立案し,実施している。. 生活や学習に対する指導について 教職員の親身なかかわりができる。 遅れている学習内容に対する丁寧な個別指導ができて いる。 小規模校,少人数の特性を生かし,日々きめ細かい指 導に努力している。 ひとりひとりの児童を理解したかかわりをとってい る。 児童一人一人が,わかるまで何度でもくり返し教えて います。 友達と競い合うきびしさがないのが不満です。 学校は楽しいところです。 日の日課の中に遊びの時 間を保証し,教師共々汗を出しています。 定期相談を各学期 回ずつ( 月, 月, 月)に実 施している。その他にチャンス相談を常時実施し,生 徒一人一人の実態把握に努めている。. の 生活や学習に対する親身な指導について は, 特に学習では,子供一人一人の進度に合わせた学習が. の. 居場所について. は,児童生徒数が少ないこ. できやすい環境にある。事例研究の 男のように,不. とから,様々な場面で一人一人の出番が多くなり,ま. 登校で学習が遅れてしまったような場合でも,その子. さに一人一人が主役にさせてあげることがきる環境に. 供の進度に合わせた学習指導をすることができ,子供. ある。また,児童会や生徒会でも,高い割合で役員に. にとっても学習が楽しいと思える場面が多くなると考. なれるなど,自分の存在感や居場所を確かめられる場. える。. 面が学校生活の中に多くある環境が考える。.
(5) 久. 能 弘 道・佐 藤 美 鶴. 入学に至るまでの状況. 子供と子供との関係について. ここでの状況は, 大規模の場合,一人一人の子供のよさや個性を伸ばす ために,学級の雰囲気作りや他の子供への働きかけな ど,大きな責任があると思います。しかし,小規模校, 特に子供たちが,大規模校で行わなければならない教 師の役割を,自然な形で行っています。自然な声かけ, 自然な認め合い,など。 子供達のやりとりを大切に育てるようにしている。. 男へのインタビューと,. への転校に至るまでの状況を両親から聞いた. 子供と子供との関係について. は,全校が家. 小学校の. 男の担任の記録をまとめたものである。 男が. 年生で入学した小学校は,山間部にある全校. 児童 名程度の学校であった。出席状況は,年に風邪な どを理由に. 日程度の欠席があるだけであった。. 男が. 年生の時に,父親の転勤にともない都市部の郊外にあ る 小学校に転校した。 年生と. の. 小学校. 年生での出席状況は,. 風邪などを理由に年に 日程度の欠席があるだけであっ. 族のような雰囲気にあり,子供と子供との関係も,兄. た。しかし, 年生の. 弟姉妹のような温かい雰囲気がある。逆に,へき地・. ささいな喧嘩から不登校になった。この契機になった喧. 小規模校ゆえの いじめ. 嘩について, 男は話そうとはしない。筆者と. などもあると思うが,現代. 学期の後半に,. 男は友達との 男との. の学校教育の中では,多くの場合は良い方向に作用し. 交換ノートでも, 小学校の担任やクラスメイトについ. ているのではないかと考える。. て, あまり好きじゃなかった。 と書いてはいるが,そ れ以上のことについては触れようとしない。. その他. に,友人関係が不登校の契機となることは珍しくない。 )は,不登校の契機について,近年になって. 稲村( 数年前に札幌より本校に転入してきた児童が,不登校 の傾向を持っていたということです。今現在,中学校 になっていますが,転入してきたときから,自然に子 供たちにとけ込み,現在は全くそのような様子すら見 せないということです。. 注目されるのは友人関係が多いとする点. からの報告で. であり,比較的に共通に指摘されている と述べている。 当時の 男の担任が家庭訪問などをしたり,適応指導 教室にも通ったりしたが, しなくなった。 男の. の. 男のよう. その他について. 男は. 小学校へ完全に登校. 年生での出席状況は,年に. 日. は,同じような例は少なく. 程度の欠席をし,そのほとんどの理由が登校拒否であっ. ない。転校という環境の変化も要因として考えられる. た。 年生の時の友人との喧嘩が不登校の契機ではある. が,高木ら(. )は, 転校したりしても,登校拒. 否は解決されないことが多い. と指摘していることも. あり,筆者は,事例研究や調査結果から, へき地・ 小規模校. の要因が大きいと考える。. が,その前から いう。. 男を何とか小学校へ登校させたいと考えた両親は, 環境を変えようと考え,自宅に近い にある. .事例研究 小学校. 男は学校へは我慢して登校していたと. 小学校の隣の校区. 小学校への転校を考え,教育委員会へ相談に 男は. 行った。両親は転校に前向きであったが, 年生でへき地・小規模校の. 小学校へ転校. してきた 男 事 例 男。小学校 年生, 歳(入学当時)。 主 訴 不登校 家族構成 父親,母親,中学 年の姉, 男の 人。 地域環境 小学校は,明治 年代の初頭に創立された 学校である。 小学校の校区は,自然に恵ま れ, 落ち着いた雰囲気を残す稲作地帯である。 名を超えたこともあった。昭和 児童数は 年代以降は,離農や家族数の減少によって, 活動や各種 児童数も下降をたどった。 行事には,地域が一体となって取り組んでい る。 ( 男入学当時) 学校規模 全校児童約 名, 年生約 名( 男入学当 時) 。. 小学 小. 校以外の学校であっても登校したくないと主張し, 学校へ通うことも嫌がっていた。 筆者と. 男とのかかわり. 筆者は,担任ではなかったが,. 男と交換ノートをさ. せてもらった。交換ノートをした理由は,不登校を理由 に転校してきた 男の力になりたいと思ったことと, 男の事例研究をしたいと思ったことにある。 筆者が. 男と交換ノートをするにあたっては,担任と. 教頭に相談し,担任からは快く了承を得て,教頭からは 男の負担にならないように. という条件で,了承を. 得た。 男には,学校生活に慣れてきた. 学期になって. から, 転校生や不登校についての先生の研究のために, 交換ノートをしたい. ということを伝え,すぐに了承を. 得ることができた。交換ノートの. 男の了承は,. 入学時から筆者が 男に対して,声かけなど. 男の. 男に対し.
(6) へき地・小規模校における不登校へのアプローチ. ての積極的なかかわりにあったかもしれないと筆者は考. 期待したが,. えている。. る車から降りず,修学旅行には参加しなかった。また,. 交換ノートには,筆者が聞きたい質問をノートの余白 つぐらい書き,その中の. にそれぞれ. つを. 男に選ん. でもらい, 男に答えてもらうようにした。質問に対す 男の答えは,. る. ノートの. ページ程度とし,. 男には, ノートを返す日は,. ということと,筆者と. いつでもいい. 交換ノートをす という. るのがつらいと思ったときには,止めてもいい. 月の運動会も,前日の練習までは参加したが,修学旅 行と同じく学校までは来たが,母親が運転する車から降 りず,運動会にも参加することはなかった。. 男. の答えには筆者も同じく ページ程度の感想などを書く ようにした。さらに,. ことを伝えた。. 第 期. 自立に向けて(. は,この頃の. 年 月. 月). 男は,著者が勤務する. 小学校に,隣の校区の. 始業式では, 転校生の紹介. 小. の場面で,他の. 表. は,筆者と. けど,きゅうしょくとかまだやっていないことでいやなこ とはたくさんある。でも,転校してきた時よりはずーとい い。. 学級では,ひょうきん者の. 男との交換ノートに書いた入学. 男の作文である。 表. 転校して少し経っての気持ち. 人の. 転校生と一緒に全校児童の前で自己紹介をした。 表. 男の気持ちを交換ノートに書いた作文. 初めはいやだったけど,今は少し学校に行きやすくなっ た。クラスの人とかもいい人たちで,けっこうなれた。だ. 学校から不登校を理由に転校してきた(当時 年生)。. 初日の. 日という割合になった。表. である。. 男のへき地・小規模校での様子 出会い(. 月前半). 日という割合であったが,こ. の時期になると,週に. れたので,そのコピーを担任と教頭に渡すようにした。. 期. 年 月. 男の登校日は,週に. 交換ノートが返ってきたときには, 男が了承してく. 第. 男は学校までは来たものの母親が運転す. 男と仲良くなり,休み時. 間などは 男と一緒にいることが多くなった。そして, 学期の最後の給食では,. 男に誘われ,全校児童とつ. いに給食を食べることができた。しかし,給食はこの時. 入学初日についての作文. だけで, 男は. 始業式の時前に出てひとこと言ってといきなり言われた 時は いやだ と思った(その前からも思っていたけど)。 案の定言うときは,すっごくきんちょうした(言ったあと が,またいやだった) 。そのあとの教室でもずっときんちょ うとかでイライラのようなムカツイたような自己けん悪的 な気分。家に帰ってからもイラツキまくっていた。明日か ら行きたくないと強く思った。. 学期に入ってからも給食を食べようと. はしなかった。 男の. 学期の出席状況は,約. 日間のうちの. 欠席した。登校日のほとんどは早退している。 第 期. 安定期(. 年. 月後半. この頃になると,登校日は週に なった。ひょうきん者の 男に誘われ,. 担任は,. 男が学校に来たいと思うまでは,無理に登. 日を. 年. 月). 日という割合に 学期に入って. 初めて給食を食べることができたが,その後は,また. 校を進めたくないと言い,週末に次週の時間割を載せた. 校時後に早退した。. 学級通信を家庭に届けるにとどまった。. えたりして, 男の支えになっているようであった。. 男は,週に. 日程度の割合で登校し,登校には母親. 男は,自ら進んで朝に. 男を出迎. 男は,地域の人や保護者などが多く集まる全校行事 月後. が車で送り迎えをした。登校時間は,朝からの時もあれ. などは,緊張するせいかとても嫌がっていたが,. ば, 校時目からの時もあった。遅刻してくる時の多く. 半に行われた全校マラソン大会には参加した。 男は,. は,母親が強く. 男に登校を促し,. 男が嫌々登校する. 校時後に帰宅することも. 場合であった。下校時間も,. あれば, 校時後に帰宅することもあった。. 校時後の. 給食は,全校一斉に食堂で食べることもあってか,. 男. 運動を得意としているわけではなかったが,楽しそうに 男と並んで走っていた。保護者などの応援などもある ことから,筆者も担任も と考えていたので,. 男は参加しないだろう。. 男のマラソン大会への参加は,. は嫌がった。筆者との交換ノートでも, どうして給食. 男のこれからを期待させるものであった。表. はいやなのかな? という質問に対しては,最後まで何. この頃の 男の気持ちを,筆者との交換ノートに書いた. も書いてこなかった。. 作文である。. 学級では,素朴で素直な. 小学校の児童に囲まれ,他. の児童とともに落ち着いた学校生活を送った。 筆者も担任も, 月の修学旅行を契機に大きな変化を. は,.
(7) 久. 表. 能 弘 道・佐 藤 美 鶴. 学校に行きたくない気持ちを書いた作文. 進学させたいと思っている。. 最初は,きんちょうとか不安で行きたくないと思ってい たけど,今はどうなんだろうな……。不安な事とかはある けど,それはそんなにないし。朝に あぁ学校だぁ 。 と目覚めないと行かないとか,すっごくいやな夢を見たり すると行きたくないと思うから,朝のなりゆきかなぁ。. また,. 月に行われた秋祭りでは,異学年とともに秋. 祭りの出店の準備をしたり,グループの仲間と楽しそう. は,中学校への進学について交換ノートに書. 表. いた作文である。 表. 中学校への進学について書いた作文. 中学校は, 中学校は行きたくないと思ってて,附属も なんとなくだけど行きたくないです。けっきょく,いやな 学校はたくさんあるけど,行きたい学校はいまのところな いです。. に作業をしたりしていた。秋祭りも,地域の人や保護者 が多く集まるので, 持っていたが,. 男の参加について筆者は不安を. 男は秋祭りに参加し,地域の人たちと. の会食タイムにも参加し,. 学期に入って. 回目の給食. 学期の出席状況は,約. を欠席した。. は,秋祭りの感想を交換ノートに書いた作文. 日のうち,約. 退は約 日となっている。 男は 年生を代表して,全校児. 童の前で 冬休みの思い出と. 学期にがんばること. 発表した。 男が発表者になったのは,. である。 表. 学期末のお楽 男. は,発表をとても嫌がっていたので,担任は出席できる. さらに, 月に行われた学芸会でも, 男は 劇・歌・ 全校合唱 の全ての種目に参加した。筆者には,楽しそ うに取り組んでいたように見えたが, 交換ノートには 楽 しいとは思わなかった と書いている。筆者は,. 男が. 毎日のように登校していることや,学芸会などの行事に 楽しそうに参加している姿を見て,大きな期待を持って いただけに,交換ノートの内容を見たときには,とても 残念に感じた。まだまだ 男の心の中には学校に対する わだかまりがあることを感じた。さらに,この交換ノー 男の中学校への進学についての話. が始まった時期と重なっていたので,. を. しみ会のプレゼント交換の中で,偶然に決まった。. 秋祭りの感想を書いた作文. 秋祭りの感想は,まぁまぁ楽しかったです。かな 。あ と 年生とかもちゃんと動いてくれたし(動いていないの は,ぼくだけ?)。いかったんじゃないでしょーか。準備 はけっこー大変だったけど,みんながやってくれたから楽 だったし(さっきは大変って書いていたくせに)。. トを渡した時期が,. 日. 学期に比べて欠席日数は激減したが,早. 学期の始業式で,. を食べることができた。 表. 男の. 男の進学に対す. かを心配していたが,始業式に出席をして発表した。 表. は, 男が始業式の時に発表した内容である。. 表. 始業式の中で 年生を代表して発表した内容. 冬休みは,九州から夏休みにホームステイに行った家の 友達がきました。あとは,札幌に行ったりしました。宿題 をためてしまい,あとの方でかなり苦しくなってしまいま した。冬休みが終わる 日前とかに,自由研究をかなりあ せってやっていました。でも, 自由研究をやるのもこれ で最後なんだよなぁー。 と思ったりしていてなかなか進 まず,本当にギリギリで,ぐちゃぐちゃのヤツができてし まいました。 学期は, , 学期にできなかった,たくさん発表す るということを,なるべくがんばりたいです。あと,これ も , 学期にできなかったことですが,家庭学習をやり たいです。 , 学期は,本当におどろくほどやっていま せんでした。冬休みもそういう習慣がなかったので,毎年 困っていたから,ここらへんでそういう習慣をつけておか ないといけないと思い始めたからです。. る何らかの訴えを表現したものなのかとも感じた。 表. は,学芸会の感想を筆者との交換ノートに書. いた作文である。 表. そして,. 学期は,欠席・遅刻・早退がほとんどない. 状況で,卒業式を迎えた。卒業式にも出席し,卒業証書 を受け取る前の言葉では,. 学芸会の感想を書いた作文. 小は楽しかったです。卒. 業するのが残念です。 と発表した。. 学芸会の感想というか,終わってよかったって感じです。 練習もいやだったし,当日行くのもいやだったし,楽しい とは思わなかったです。. 考. 察. 筆者は,. 小学校では登校できなかった. 男が,. 小. 学校で登校できるようになった要因について,学校規模 中学校への進学については, このままの通学区域だと, 不登校になった 小学校の児童と同じ. 中学校への進学. になる。担任は,現在の仲間がいるのだし,. 中学校へ. と地域要因があると考えている。このことは, 男も筆 者との交換ノートで書いている。表 小学校と比較して. は,. 男が. 小学校について筆者との交換ノート.
(8) へき地・小規模校における不登校へのアプローチ. 表. 小学校と比較して書いた 小学校. 入学に至るまでの状況. えーと, 小学校の時は, クラス 人ぐらいいたから, やっぱり少ない人数の方がいい。あと,前の先生はあまり 好きじゃなかったから,今の方がいい。クラスの人も前の 学校よりは, 小学校の方がずっといいと思う。あと,学 校も,パソコンとかがなかったから,こっちの方がいい。. ここでの状況は, 小中学校の. 子が転校したへき地・小規模校の. 子にかかわった中学校教員からのインタ. ビューによるものである。 子は,小学校の高学年の時に,血液検査の結果から, 自分が里子であることを偶然に知り,大きなショックを 受けた。そして, 子は何に対しても投げやりになった。. に書いた作文である。. 子は,. 男と同様に,へき地・小規模校の良さによって登校 できるようになった事例が 北海道新聞 (. 年. 月. 日付朝刊)に載っている。娘のいじめ被害を契機に,へ. 中学校に入学したが,同性のクラスメイト. との人間関係はあまりうまくいかなかった。誰にでも良 い顔をすることが,うまくいかなくなった理由だと考え られる。 子は,. き地・小規模校に転校した家族の記事である。この記事. 年生になると,. 年生から始めたバスケッ. の中に, 何より,いじめに悩んでいた優香さんに明る. ト部の同性の先輩と夜遊びをするようになった。 タバコ,. い笑顔が戻ったことがうれしかった。優香さんと,三女. 窃盗などで,何度か警察に補導された。 年生の. の真香さん,五女の愛香ちゃんが通う瑞穂小学校は,児 童・生徒が. 人。 みんな優しいし,学校もすごく楽し. い 。全員が兄弟姉妹のような雰囲気に,優香さんはす ぐなじんだ。 とある。 須田(. 月からは,完全に学校に行かなくなった。. 母親は精神的に不安定になり,寝込んだりした。母親は, 子の現在の友達と. 子を隔離することが良いのではな. いかと考え,隣町にあるへき地・小規模校の. )の調査によると, いじめ,不登校,学. 小中学校. への転校を決意した。. 級崩壊,対教師暴力,教師による懲戒行為は,もちろん 子のへき地・小規模校での様子. 僻地校にも存在するが,しかしその割合からみて,僻地. 年. 月. 年. 月). 校ではない学校の方が明らかに多い。同様に,全校生徒. 自立に向けて(. 数は,不登校や学級崩壊,対教師暴力の発生と関係があ. 通学区域制があるので隣町からの通学は認められない. り,全校生徒数が多くなるほど,こうした問題が生起し. ということで,母親はへき地・小規模校の 中学校の近. ていることがわかる。 と指摘している。. くに家を借り, 子と. 男は,不登校になった契機や学校での様子から,対 人不安が高いと考えられる。. 男の対人不安というスト. レスは,へき地という地域性による優しい学校環境,小 規模という学校規模による自分の居場所という. つの要. 因によって軽減されたと筆者は考えている。. 子の母親だけ住民票を移し,. 中学校へ転校した。転校については,母親が積極的だっ た。 子の. 中学校への転校は. 月. 日に手続きが終わっ. たが,しばらく 子の欠席が続いた。担任のはたらきか けで,中学 年生の学級へ登校したが,. 時間目が終了. すると腹痛を訴えた。次の日からは,校長室に登校をす .事例研究 中学校. るようになった。校長とは,作業などを一緒にしたりし 年生でへき地・小規模校の. 中学校へ転校. してきた 子. て過ごした。校長室登校はできるようになったが, 何 日か登校しては休む の繰り返しであった。 子は,. 事 例 子。中学校 年生, 歳(入学当時)。 主 訴 不登校 家族構成 父親,母親,兄,姉, 子の 人。 地域環境 中学校は,昭和 年代の初頭に創立された。 その後,小中併置校になった。 小中学校の 校区は,稲作などを営む純農村地帯であり, 豊かな森林を有する丘陵と水田と畑が広がる 自然に恵まれた地域である。多くの地域活動 を通した住民の連帯感は強い。 学校規模 全校児童生徒約 名,中学校 年生年 名 ( 子入学当時)。. 月末の修学旅行には行きたいし, 修学旅. 行前には,みんなと仲よくなりたいし,友達を作りたい と言い,学校の中を散歩することから始め,ついには修 学旅行の自主研修計画の授業に参加するようになった。 最終的に,修学旅行に参加し,一緒に行った. 年生とも. 話したりするなど,楽しく修学旅行を終えることができ た(生徒数が少ないため修学旅行は ・ 年生合同の隔 年実施になっている) 。表 行の思い出作文である。. は,. 子が書いた修学旅.
(9) 久. 表. 能 弘 道・佐 藤 美 鶴. 修学旅行の思い出作文. 表. 文化祭の感想. 私は,修学旅行に行って,一番心にのこったことは,恥 ずかしがっていた私に,みんな優しく話しかけてくれたこ. 私にとっての最初で最後の文化祭は,すごくうまくいき ました。. とです。 最初は,全然話ができなくて,困ってしまいましたが, 時間が経つにつれて,すこしずつみんなと話ができるよう. 小学生とやる文化祭は,産まれて初めての体験で,すご く不思議な感じでした。 でも,それなりに,みんなにとけこんで,楽しく,おも. になり,しまいには,トランプやウノをみんなで楽しくや れるまでになってました。自分でも,こんなにはやく仲よ くなれるとは思ってなかったので,少しビックリしました。 初めて 年生と話して,すごく緊張したけど,みんな優し くて安心しました。. しろくできました。 係りの仕事は,放送で,アナウンスをやりました。とちゅ でひっかかったりしたけど, うまく読めてよかったです。 以上. 次に心に残ったことは,遊園地のゼッキョウマシーンに のって,みんなでさけんだことです。最初の方は,怖くて 声が出なかったけど,何回ものっているうちに,怖くなく なって,みんなと キャァー。 とか, ウオー とか,色々 さけんで,楽しくあそびました。 私は,修学旅行に行けてよかったです。. 学期に入り,他の生徒が高校受験に向けて取り組み 始めると,高校への進学意欲のない. 子は,学校での居. 場所がなくなり,受験が終わるまで学校を休むことが多 くなった。高校へは進学をしないと決めていたが,担任 の勧めもあり, 通信教育ができる高校への進学を決めた。 表. 月の運動会が近づくにつれて,. 子はまた欠席する. ようになった。 子は,運動が苦手ということもあり,. 表. みんなの前で恥をかきたくなかったということが欠席理 由と考えられる。しかし,運動会当日には競技に楽しく 参加した。 運動会が終わると,また学校に来るようにはなったが, テスト期間など,自分が苦手としているものがあるとき には,学校を休んだ。表. は,. 子の. 学期をふ. りかえって という作文である。 表. 学期をふりかえっての作文. 学期をふりかえって 番心にのこっていることは,運 動会と支庁大会です。 運動会では, 色リレーでおもいっきりこけて,足をす りむいて,とても痛かったです。でも楽しかった。 次に思い出にのこっていることは,支庁大会です。支庁 大会では,応援に行ったつもりだったんですが,ビックリ のハンバーグのせいで,お腹がいっ ドンキーで食べた になって,お昼寝をしてしまいした。でも, 子 ぱい. は,卒業に向けて書いた. の思い出 未来への目標. 子の作文. 年間. である。. 年間の思い出と未来の目標. 私は,この 年間をふり返って,一番思い出にのこって ることは,修学旅行とスノーフェスティバルです。 修学旅行は,すごくきんちょ したり,友ダチとうまく 話ができないなど,こまったこともあったけど,すごく楽 しかったです。 スノーフェスティバルでは,初めての体験が多くて,少 しとまどったり,みんなの足をひっぱったりすることが いっぱいあったけど, 自分なりに一生懸命ガンバレたので, よかったと思っています。 この先,何があるかわからないけど, (小中学校)で 覚えたことを生かして,ガンバって行こ と考えてます。 以上. 考. 察. 最初に,前の事例とも共通するが,筆者の. 中学校の. 教頭(中学校)へのインタビューの中で, 子が登校で. の試合の時に,しっかり応援できたので,よかったです。 学期は,部活がないので,少しずつガンバって受験勉. きるようになった大きな要因として, 小規模校という. 強をしていきたいと思う,今日このごろです。 学期より, 学期の方が,楽しい学校生活を まっ おくれるように,ガンバりたいと思います。. 任だけではなく,学校全体,地域全体が, 子を見守る. ことで,学校が一つのファミリー的な雰囲気を持ち,担 体制をとることができたこと を指摘している。学校は もちろん,地域の方の温かい指導が大きいという。. 子. の入学に際しての地域の反応は,最初はあまり良いもの 月の中体連の支庁大会では,. 子は,転出校の仲間. と会うことを嫌い,予定していた応援には行かなかった。. ではなかった。地域が強くまとまっていることもあり, 理由付きで転校してきた 子に対しては,地域の人たち. 月の文化祭では,進んで放送の仕事をした。やりた. の憶測や疑いなどがあり,地域の理解を得ることが難し. 子はがんばっ. い状況であったという。 子のような形での転校が,こ. 子が文化祭を終えての感想を書いた. の地域にとって初めてのことなども理由にあげられる。. い事があれば,自分の居場所があれば, た。表. は,. ものである。. しかし,学校行事や体験活動などで地域の人と. 子がか.
(10) へき地・小規模校における不登校へのアプローチ. かわることによって,地域の方も. 子を理解し,温かく. 子を見守ってくれるようになったという(. 子は地域. との活動などを通して理解を得ることができたが,. うことである。 と指摘している。表. は,. 子の職. 場体験学習についての作文である。. 子. の母親はこの地域の外に仕事を持っているせいもあり, 地域行事などに参加することも少なく,最後まで地域の. 考 . へき地. 一員にはなれなかった) 。 次に,異年齢集団での取り組みが挙げられる。前の つの事例においても異年齢集団での取り組みが積極的に. 察 という地域性. へき地教育の現場でよく登場する言葉に, へき地に ). こそ教育の原点がある(全国へき地教育研究連盟,. 中学校は特に小学校との併置校であ. というのがあるが,へき地には,教師と子供,子供と子. るため,異年齢集団の幅がさらに広い。学習などは,小. 供,子供と地域,教師と地域など,人と人との触れ合い. 学生と中学生が異年齢集団で取り組む活動が多くあり,. があり,心と心が触れ合える教育がある。家庭・地域・. 子も多くの行事で小学生などの異年齢集団と活動をと. 学校が信頼関係に結ばれて,学校があるいは地域が一つ. 行われていたが,. もにした。. 子は,小学生に人気があり,. には優しく接していたという。玉井(. 子も小学生 )は,子供と. 子供との関係において, 一般的に少人数であることに. のファミリーのようになっている。 村山・内山(. )は,文部省の学校基本調査の. 校ぎらい の統計を分析し,小学校における. 学. 学校ぎら. とし, 発. い の出現率が高いのは神奈川・千葉・埼玉などの東京. 達段階における異年齢集団の集団的な遊びが,子どもの. 周辺の人口集中が起きている地域であり,出現率が低い. いじめや非行の防止・相互理解と協力の意識に果たす役. のは秋田・石川・富山などの過疎地域であると報告して. 割は大きい と報告している。. いる。. よって,こどもが相互の関係を熟知できる. 最後に,事例. とも共通するが,. 中学校には,へき. 地・小規模校だからこそできる地域とともに特色ある教. 菱山・古川(. )および栗栖・藤井(. )は,文. 部省の学校基本調査に基づいた分析から, 学校ぎらい. 中学. の出現率が高いのは人口が集中している地域であり,逆. 校での特色ある教育活動の多くは 子にとっての初めて. に出現率が低いのは過疎の地域であると報告している。. 育活動(体験活動など)が多く推進されている。 の体験であり,楽しい体験であった。どの活動にも. 子. 玉井(. )は, 都市部等の大規模校と農村部等の. は積極的で,楽しく活動ができ,特色ある教育活動は学. 小規模校を比較してみると,大規模校では,校内暴力や. 校の魅力となり, 子にとっての登校意欲を高めるもの. 非行などの発生件数が増加しているが,他方,農村の小. であり,学習が苦手な 子にとっての居場所にもなった。. 規模校では,都市の大規模校に比してこの問題はほとん. このような体験活動について,玉井(. )は, 近年,. ど顕在化していない。例えば,文部省の. 年調査でも,. 偏差値と狭められた学力を鑑み,自然体験学習・勤労体. 大規模校は小規模校に比して,対教師暴力の発生率が. 験学習の必要性が強調されている。デューイの言葉を待. 倍,生徒間暴力が. つまでもなく,生活科の新設がその教育的危機の一端を. ど問題行動の発見がなされにくいため,実際の格差はさ. 語っている。無論この自然体験学習・勤労者体験学習は. らに開いている と指摘する。さらに,農村部の小規模. へき地でなければできないというものではなく,へき地. 校において問題が少ない理由の一つとして, 地域住民. であればできるというものでもない。だがへき地の環境. が日常的に学校運営や子ども達の世話に関わる機会が多. には,それらを総合的に体験できる条件が存在するとい. く,それらを通じて地域の大人達が子どもの人格形成に. 表. 職場体験学習の感想. 私は,初めて郵便局の仕事をしました。最初は,すごく きんちょうして,恥ずかしくて話をしたりできなかったけ ど,配達をしたり,まど口で切手をうったりしているうち に,きんちょうもほぐれて仕事をするのが楽しくなってき ました。局長さんに, 世紀記念の切手を見せてもらった り, 子さん(郵便局の職員)と,いっぱいお話しして, すごく楽しかったです。 機会があれば,また郵便局で仕事がしたいなあ と思い ました。 私にとって,職場体験は,とてもいい経験になりました。. 倍となっている。一般に大規模校ほ. 大きな影響を与えていること を挙げている。 須田(. )は,児童生徒・教員・保護者などへのア. ンケート調査などから, いじめや不登校などの問題状 況が生起する社会的要因として,へき地校の指定の有無 が重要な要因として作用している. と指摘している。. 以上のことからも,心と心の触れ合いがある へき地 という地域性は,不登校という問題が生起しずらく,事 例研究で取り上げた児童生徒が登校するようになった要 因の一つであると考える。.
(11) 久. 能 弘 道・佐 藤 美 鶴. .豊富な地域素材. 規模校では,都市の大規模校に比してこの問題はほとん. へき地という環境において,重要な特性の一つに自然. ど顕在化していない。例えば,文部省の. 年調査でも,. の豊かさがある。子供たちは,自然の中での具体的な体. 大規模校は小規模校に比して,対教師暴力の発生率が. 験をもとに,感動したり,驚いたりしながら, なぜ,. 倍,生徒間暴力が. どうして と考えを進め,本物の自然や社会の在り方を. ど問題行動の発見がなされにくいため,実際の格差はさ. 学んでいく。そして,そこで得た知識や考え方をもとに,. らに開いている と指摘する。また,学校と地域との連. 自らを高め,心豊かな生活を創り出していくことができ. 携についても, 都心部では既に,学校はどんどんマン. る。. モス化されており,マンモス化すればするほど,学校や. 倍となっている。一般に大規模校ほ. 来年度から実施の新学習指導要領には,生活体験や自. 子どもをめぐる地域との協力関係は取り結びにくくな. 然体験の重要性について書かれているが, 生活体験や. る。自然体験学習や地域と行う行事も,数百人単位の児. 自然体験の豊富な子どもほど,“友達が悪いことをして. 童数では,日常的に行うことは不可能になってくる と. いたら,やめさせる” “バスや電車で席をゆずる”といっ. 指摘する。. た道徳観や正義感が身についているという調査結果が出. 須田(. ている (文部省,. )という。. )は, 全校生徒数は,不登校や学級崩壊,. 対教師暴力の発生と関係があり,全校生徒数が多くなる. 以上のことからも,知識の詰め込みではなく,地域を 生かした自然体験活動や特色ある教育活動は,新しい経. ほど,こうした問題が生起している. と指摘している。. 以上のことからも,小規模という学校規模は,不登校. 験による自己の広がり, 新しい能力や興味・関心の発見,. という問題が生起しずらく,事例研究で取り上げた児童. 対人関係の学習,自信の回復などの様々な効果とともに,. 生徒が登校するようになった要因の一つと考える。. 欠席を願望を抑制する要因としての. 学校の魅力. にも. なっていると考えられ,事例研究で取り上げた子供たち が登校するようになった要因の一つであると考える。も. 教師と児童・生徒との関係 )は,教員への調査から, 日頃から生徒. 久冨(. ちろん,この自然体験学習などは,へき地でなければで. との人間的な触れ合いを大切にする という項目に対し. きないというものではなく,へき地であればできるとい. て,学校規模によって教員の回答が大きく違い,小規模. うものでもない。しかし,へき地という環境には,それ. 校の教員の方が大規模校の教員よりも 十分だと思う. らを総合的に体験できる条件が存在する。. と感じていると報告している。実際,大規模の中学校で は,週当たりの授業時間数の多い主要教科では,学校全. .学校規模. 体としても,学年としても複数教員が必要となり,その. 小規模という学校規模 板谷と藤田( 発生状況. 教科の教員は全校生徒の一部しか教えないことになる。. )は, 中学校における登校拒否の. についての分析を行い,登校拒否発生数の多. 人当たり生徒数. 教員が全校生徒にあたる以上, 授業で教えていない。従っ て,多くは名前も分からないような関係の希薄な生徒と. が多いとし, 今日の学校規模・社. の関係であってもやっていかなくてはならない難しさが. 会規模の拡大が,正常な人間生活の営める“適正規模” を越えて過密化していることを再認識した. と述べてい. ある と指摘する。 玉井(. )は,農村部の小規模校において,問題の. 少ない理由の一つに, 教師と生徒との関係及び子ども. る。 山本(. )は, 生徒指導は全. 教員. い地域では,他に比べて,. 校当たりの生徒数. 中学校教員でもある河原(. )は,ある市の中学校を対象に不登校の発. 生率を調査し, 学校による発生率の差を見ると,学校. どうしの関係が密であること を指摘している。 以上のことからも,教師と児童・生徒との人間的触れ. の生徒数が多く,先生の平均年齢が低い学校ほど,その. 合いが自然に近い形で行える 小規模. という学校規模. 発生率が高いという現象が見られたのである。そして面. は,不登校という問題が生起しずらく,事例研究で取り. 白いことに,ある中学校の登校拒否発生率は,その学校. 上げた児童生徒が登校するようになった要因の一つであ. があまりにもマンモス校になったので,近くに新しい中. ると考える。. 学校をつくり生徒数を減らしたところ,その発生率は %近く減少した現象が見られている。 と報告してい る。. 教師と教師の関係 久冨(. )は,教員への調査から, 教師集団がひ. )は, 都市部等の大規模校と農村部等の. とつにまとまる という項目に対して,学校規模によっ. 小規模校を比較してみると,大規模校では,校内暴力や. て教員の回答が大きく違い,小規模校の教員の方が大規. 非行などの発生件数が増加しているが,他方,農村の小. 模校の教員よりも 教師集団がひとつにまとまる. 玉井(. と感.
(12) へき地・小規模校における不登校へのアプローチ. じていると指摘する。 八並(. 部科学省の通学区域制緩和などにともない,へき地・小. )は,不登校生徒を進路達成に導いた協働. 体制の用件として, 第. に,学級担任だけが彼を抱え. 規模校への入学・転校は,不登校へのアプローチとして 有効であると考える。. 込むのではなく,教師全員が情報を共有し,それぞれの )という協働. 持ち味を生かし共に働く( 規範が必要 と指摘している。. へき地・小規模校でのアプローチの限界 最後に,ある一つの要因と不登校の出現の強い関連が. 以上のことからも,小規模校の方が大規模校よりも,. 示されたからといって,それは因果関係を証明するもの. 学級担任や教科担任の枠内で孤立しがちな態度を乗り越. ではない。筆者がかかわった事例や調査においても,へ. え,他の同僚教師との距離を縮小し,同僚教員間連携が. き地・小規模校でのアプローチということだけで説明で. 目指しやすい環境にあると考えられる。教師同士のまと. きるものではない。. 小規模 という学校規模. 従って,限られた条件化でのアプローチであるため,. は,不登校という問題が生起しずらく,事例研究で取り. へき地・小規模学校における不登校へのアプローチが,. 上げた児童生徒が登校するようになった要因の一つであ. 決して万能な方法ではないことを申し添えておきたい。. まりが自然に近い形で行える. ると考える。. これからの学校教育に望まれるもの. 学校環境における仲間関係 玉井(. )は,子供と子供との関係において, 少. 人数であることによって,こどもが相互の関係を熟知で. 文部科学省(. )の生徒指導資料第. 校拒否を防止するための指導. として,. 集には, 登 全教師の共通. とし, 発達段階における異年齢集団の集団的な. 理解と連携・協力を図ること, 生徒指導の計画と組織. 遊びが,子どものいじめや非行の防止・相互理解と協力. を充実すること, 教育活動全体の見直しを図ること,. きる. の意識に果たす役割は大きい と報告している。. 一人一人の生徒を大切にする指導を行うこと,が挙げ. 以上のことからも,仲間関係においても,児童生徒は 学年を越えて兄弟姉妹のような関係にある. 小規模. と. られている。 稲村ら(. )は,全国. 地域で比較調査をした結果. いう学校環境は,クラス替えなどの学校環境の流動性に. にもとづいて, 家庭の人間関係を密にし,家庭の教育. 伴う不登校という問題が生起しずらく,事例研究で取り. 力を高めることにある。親子関係はもとより,同朋関係,. 上げた児童生徒が登校するようになった要因の一つであ. 祖父母との関係も,現状はあまりに希薄であり,機器が. ると考える。. 人間におき代わっている , 地域の人間関係を密にし, 地域教育力を高めることである , 学校は人間関係を重. .へき地・小規模校でのアプローチ. 視し,また人間関係を推進する絶妙の場として位置づけ. へき地・小規模校への入学・転校. ることである。そのためにカリキュラムや,指導のあり. 筆者は,学校で,児童生徒が不登校などの困難にぶつ. 方に工夫が望まれる , 祖父母ないし老人のあり方の見. かったとき,へき地・小規模校にすぐに入学・転校すれ. 直しである。現状では,単に関係が希薄なだけでなく,. ばよいと主張しているわけではない。安易な入学や転校. むしろ負のイメージやマイナス効果を果たしている場合. は,良い結果を生まないことはいうまでもない。しかし,. があり,老人側の意識の変革や柔軟性を獲得するための. 学校教育の立場から見れば不適応である不登校も,子供. 工夫とともに子どもや親世代の側も高齢者に対する認識. の立場から見れば一種の防衛反応であり,子供が自分に. を高め支援する努力が必要といえる , 問題行動の対策. 合う学校を捜して入学や転校する場合などは,環境(学. については,まだまだ不備が多く,諸機関や諸活動の整. 校)との調整作用としての適応行動とはいえないだろう. 備,その間の連携が不可欠といえる。そのための社会の. か。大人が安易に環境を変えようとするのではなく,子. 啓蒙と支援対策を地域毎につくることが望まれる. 供が環境(学校)との調整作用を図る機会としての入学. 摘している。. や転校などは,不登校へのアプローチとして有効である と考える。 さらに,都市部以外の地域においては,適応指導教室. と指. どちらの報告も,これからの学校教育に大切なことが 述べられているが,これらのことは,本論文で述べてき た へき地・小規模校の良さ. の多くに共通してはいな. や親の会などの不登校に対する援助機関が少なく,子供. いだろうか。一人一人を大切にした教育,全教職員によ. も親も孤立してしまう傾向になることを考えるとき,. る共通理解や生徒指導,地域との連携,親密な人間関係,. つの事例のように,へき地・小規模校が不登校の子供に. 自然などを生かした体験的な学習などは,まさに,へき. 対する援助機関的な役割をはたすことが期待できる。文. 地・小規模校の得意としている教育である。もちろん,.
(13) 久. 能 弘 道・佐 藤 美 鶴. これらのことは,へき地・小規模校でなければできない. ,. .. というものではなく,へき地・小規模校であればできる. 河原 功(. というものでもない。ただ,へき地・小規模校の環境に. 出版.. は,それらを総合的に取り組める条件が存在している。. 栗栖瑛子・藤井賢一郎(. そして,上記のような教育活動を,より自然に行うた めには,既に一部の学校で導入されている. ・. の導入,. )学校はなぜ変わらないか.. による長期欠席の経年推移と社会的要因と関連につ ,. いて.社会精神医学. 少人数学級の実現が考えられるが, 学校規模についても,. 久冨善之編著(. 学校規模を 教職員などが全校児童の顔と名前が一致で. 賀出版.. にしていくことが大切なのではない. 文部省(. きるぐらいの規模. )いわゆる学校ぎらい .. )教員文化の社会学的研究.多. )生徒指導資料. 生徒指導研究資料. 生徒の健全育成をめぐる諸問題. かと考える。 学校規模の問題には財政的条件という大きな問題があ )の. る。しかし,山本(. ある中学校の登校拒否発. 文部省初等中等教育局小学校課(. 生率は,その学校があまりにもマンモス校になったので,. 指導要領で学校は変わります.. 近くに新しい中学校をつくり生徒数を減らしたところ,. 村山正治・内山喜久雄(監修)(. %近く減少した現象が見られている。. その発生率は. という報告にもあるように,大規模校の学校環境が長期. 害児 小野. 修(. 理学研究. からの学校教育において何らかの措置を考えなくてはな. 佐藤. )や上野(. ). が,生徒の基礎集団を確保するために,一つの学校をい. )新しい学習 )講座情緒障. 登校拒否児.黎明書房.. 欠席の背景要因として予想されることを考えると,これ らないと考える。例えば,佐藤(. 登校拒否問題. を中心に・中学校高等学校編.. )不登校の学校要因仮説.人間性心 ,. 学(. . )カリキュラム批評.公共性の再構. 築へ.世織書房. 須田康之(. )教師の日常的教育活動に関する研. 北海道における教師の意識と現状の把握.北. くつかの学校(ハウス)に分割して組織するアメリカの. 究. 試みなどを紹介している。 これは,一つの建物の学校を,. 海道教育大学附属教育実践総合センター紀要創刊. 名ほどに分割し独立した教師と生徒の組. 通常生徒数. 織で運営して,少人数の共同体としての学校を実現し, 一つの学校に多様性も保証する改革を実現している. と. 学級規模についても,諸外国では,アメリカ(オハイ オ州) 人,ドイツ 年. 人,ロシア. 人などがあり,日本. 月の 公立義務教育諸学校の学級編成及. び教職員定数の標準に関する法律. が改定されたことも. あり,都道府県で独自の学級人数を定めている例がある。 年度から,秋田県や新潟県で 年対象),広島県で 年,中学校 対象),さらに の全学年で 年. 北新報. 人程度(小学校. 人以下,愛媛県で. 年対象),鹿児島県で. ,. 人(小学校. 人(小学校. ,. .児童青年. .. )北海道の学校と地域社会.東洋館. 出版社. 上野. 淳(. )未来の学校構築. 教育改革をささ. える空間づくり,岩波書店. 山本和郎( 教育心理 八並光俊(. )学校環境から登校拒否を考える. ,金子書房,. .. ) 柔軟にかかわり続ける. 導体制の構築.月間生徒指導. 生徒指. ,学事出版,. 年度からは,山形県で全ての小学校. 全国へき地教育研究連盟(. )効率的な学習指導. 人とする少人数学級を実施する( 河. と学校・学級経営 へき地・小規模・複式学級を有. 月. する学校の実践的事例.全国へき地教育研究連盟.. 日付け朝刊より)という。. 菱山洋子・古川八郎(. )学校ぎらいの統計研究. 全国における出現率の推移と社会的要因の考 察.児童青年精神医学とその近接領域 博(. )学校恐怖症の典型像. 精医と近接領域. 年. 引用文献. 稲村. 高木隆郎( 玉井康之(. いう試みである。. でも,. .. 号,. ,. .. )児童の問題行動についての家庭・. 地域要因.全国母子健康センター連合会. 板谷幸恵・藤田禄太郎(. )中学校における登校. 拒否の発生状況についての分析 .女子栄養大紀要.
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