東歌の序詞・枕詞の一考察
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(2) . 第9巻 第2号. 北海道学芸大学紀要 (第一部). 昭和3ラ年12月. 東歌の序詞・枕詞の一考察 土. 田. 知. 雄. 北海道学芸大学旭川分校国文学研究室 ChikaO Tst地r l 工DA : A S tudy on ”Joshi“ and ” Makurakot。ba“ m ”Azumauta“. 東歌を収めて いる万葉集巻十四が, 他の諸巻に比して種々の特異性を有していることは, こ に においては, その序詞と枕詞に即 して考察するに, これらについ. 多言 を要 しな い, しか し, 今 こ. て も, この 巻は 相 当 異彩 を 放 っ て い る, ) 序 詞 の 使用 数 の 多 い 諸 巻 に 先ず, そ の序 詞に つ いて 検 す る こ と に しよ う, 今, 集 中 に お い て, 1 つ いて見 る に, 次 の 如 く で あ る,. 巻 名 目計 F i 歌1相 聞 際 4 7 10. 計. 53 1 41 !. 17%. 70. 77 i. 14%. 171. I71 1. 35%. 111. 117 :. 31日 多. 97. 1〇2 …. 49%. ー 23 i 7 ・. 12. い▲ ヒ率. 17. 53. 11 14. 関. 5. 12%. この表によれば, この巻の序詞の総数は第3位であるが, 頻度数では断然首位を占めている, よ っ て, こ の 巻 で は い か に 多く の 序 詞 が 用 い られ て い る か が 知 ら れ よ う, し か も, こ の 巻 の 序 詞 は,. 量的に超群であるばかりでなく, 質的にも特異なものが少くないのである, 注 1) 今, 便宜上, 万葉集大成 6所収の境田四郎氏の統計に従った. しかし, 筆者の調査によれば, 巻十 べ 03 四の序詞の数は, 1 -とす きであると思う, 2 さ て, 今 一首 に お け る 序 詞 の 位 置 を 見 る に, 初 二 句 に 跨 る も の33首, 初 二 三 句 に 跨 る も の40首,. 三四句に跨るもの5首である, 特殊なものとして, ご を も. ま 小薦 の. 節 の 間近く て. 逢 はな へ ば. 嘆ぞ吾が する. 沖 つ真 鴨 の. (3524). 初旬から二句の中間までと, 四句がともに序詞になるという不規則なものもある, 岡に寄 せ. 我が刈る草の. この序詞は, 四句をへだて 河上の. 根 白高草. さ ね草の. ま こと柔は. 寝る とへな かも. 3499) (. 遥 か に五 句 を起 して い る の で あ る,. あ や あ やに. さ宿 さ寝てこそ. 言 に 出 に しか. (3497). この場合は, 初二句が遥かに四句を起し, 紫 草は. 根 をかも 寛ふる. 人の 児の. がなし な し{ う らが すを うら - 9 -. 寝 を 菟 へなく に. (3500).
(3) . 土. 田. 知. 雄. この 場 合 は, 五 句 を 起 して い る, 駿河 の海 足柄の. 磯辺 に 生ふ る ま ふの小菅 の. 浜つづら 菅枕. 汝を 憾み. 何 か纏かさむ. 母に違 ひぬ 児ろせ手枕. (3359) (3369). 前者は初二三句が誓除で, 自分の周辺の景物を捉え, その伸びまつわっている様子を, 自分が男 にまつわりついている様に讐えた, 環境の景物の提示は, 古代歌謡において常に見られる構成であ る が, こ 〉ではそれを 「汝を悪み」 に続けたのは, 類型的ではなくて気分象徴的なので, 古代性を. 克服して, 作者の情熱を奔出させるのに成功している, 後者は初二三句中に, 「場所+景物」 の提示に止らず 「何か纏かさむ」 の目的語にまで発展さ せ, これに序詞の手法をからみ合わせてある, ロ詞性に富んだ歌でありながら, 発想上古代からの 飛躍 が認め られる, これらは, ともに普通の序詞とはや>趣を異に しているが, やはり序詞の 「種と見なしてよかろ う, このよ う に, こ の 巻 で は 実 に 多 彩 な 序 詞 が 用 い られ て い る,. 前述のように, 序詞中, 初二句に跨るもの, 初二三句に跨るものが, この集では多く見られる が, ことに後者が多いことは, その成長を示すものとして注意せられる, すなわち, これは初二句 だけのスペースでは, もはや十分でなくなったものと思われる, これに関連して, その枕詞の使用数がきわめて低いことが考えられなければならない, 元来, 序 96は古長歌を含む 詞の使用度数の多い諸巻は, 枕詞のそれも決して少くない, 例えば, 巻十三の 1 巻 で ある か ら 暫 く 措 き, 巻 十一 の 177 , 巻 十 二 の 142 , 巻 十 の 104,. 巻 七 の 103 と い う よ う に, 相. 当の枕詞を用いている. しかるに, この巻において, 序詞の頻出度数の高率なのに反して, 枕詞の 9ときわめて低いのは見逃すことはできない. 使用度数4 思うに, これは束歌の口謡性の豊かさを示すものであろう, すなわち, それは東歌の発想法が中 央の和歌に比して流動性を存して, 未だ固定しなかったことを示すものと考えられる, 序詞・枕詞 に即して言えば, 序詞は比較的流動性に富んでいるのに対して, 枕詞は後世になるに従って固定性 が濃厚になる, この巻において, 序詞中に枕詞を包含するも のはわずかに 4首, 讐輪の歌または誓 1 稔を用いた歌にはまったくこれが用いられていないで, いわゆる直叙式の歌に用いられているもの が 多 い, そ して, 4 個 の 枕 詞 も, 「う ち 目 さ つ」 (3505) は, 「う ち 日 さ す」 の 転 と 見 られ る が, 「薪 樵 る」 (3433) ・ 「しら とほ ふ」 (3436) ・ 「む ろ が や の」 (3543) の よ う に, そ の用 例 は き. わめて少い, 「薪樵る」 は, 実景をそのま 用 い た も の と 思 わ れ る, 「し ら と ほ ふ」 「む ろ が や の」 シラトホル の語義は, 未だ明確ではない, 「しらとを まふ」 は, 枕詞解に白隅掘にて保布は掘るの誤とあり, 折 ロ信夫博士の万葉辞典には, 常1 堕国風土記の 「風俗諺日目遠新治 之国」 とあるのを引いて, 志良登 0 .・ しろ )武田祐吉博士は, 「シラは白か著クかであろうが, 保布はにひ或は寧ろにに続くと説いてある,1 大 き く 目 に 立 つこ と を トホ シロ シ と い う, そ の 語 が 逆 に 接 続 した 語 で も あ ろ う か, も しそ う と す れ ば, トホ フ は通 る, 融 る の 譜 と 通 ず る の で あ ろ う, 新 しいも の は 目 立 つ の で, ニ ヒ (新) に 冠 す る. )武田博士によれば, 「語義は室草で, 室を蔽ってい か.」 と説かれた, 次に 「むろがやの」 は,2 る 草 が, そ の 家 を包 ん で い る と い う の で,. 次 の 句 に 懸 る の だ ろ う,. ま たは 草の 蔓 とツルに 冠する. か.」 とある. 上の如く, いずれも語義未詳で, 用, 例も非常に少い, 直叙式の場合でも, その枕詞は用例が少い, 他にも用例の多く見られる枕詞は, 「あしひきの」 56 34 3 3 48 90 9・34 ) -- これらは左註に柿本朝臣人麻呂歌集 ) 「うつせみの」 ( ) 「梓弓」 ( (462 の 歌 と あ る --, 「草 枕」 (3403) ー--こ れ は 夕 の 一 昔 に か い な も のに 過 ぎな い, 「ネ卒弓」 も 「寄 る」 に か も, や. る と い う 特 殊 な も の で あ る一 一 ぐ ら. つ て い て, そ の用 法 が 屈 折 して い る, 「う つ せ み」. 特殊なものである, o- -l.
(4) . ヂ 東部 {の 序 詞 ・ 枕 詞 の 一 考 察 「潮船 の」 (3556) 「庭に 立 つ」 (3454) 「風 の 音 の」 (3453) 「陰 夜 の」 (3371) n まだ薄」 ′. 35 06 35 2 8 3 381・3 34 8 351 7 35 ) 「水鳥の」 ( 99 ) 「夏麻引く」 ( ) 「白雲の」 ( ( ) 「青雲の」 ( ) 3 39 4 7 34 355 68 ) な どは用例の多いものではなく, 「漕ぐ船の」( ) 「山鳥の」 ( 「さ衣の」 ( ) 「浜 35 0 35 33 5 ) 「波の穂の」 ( ) などは, きわめて用例が少い, 「波の穂の」 「浜渚鳥」 「お 渚鳥」 ( 3 488 ) は, むしろ特殊のものと言うべきである, 「浜渚鳥」 は, 「足悩む」 という東国 ふしもと」( 方言にか. り, 「波 の穂 の」 「お ふ しも と」 は, 相 当 に 実 感 が こ も っ て い る, か く て こ れ らの 枕 詞. は, 中央の伝統とは比較的没交渉に用いられたとおぼしく, 多く 実景への関心が認めれ, 彼等の実 生活にかなり連関をもっていることが認められるので, その定着する以前の姿を示すものと言えよ う,. 妃歌謡の中にも類似するも 束歌は東国人 の愛欲や恋愛をテーマとするものが多く, この点では記斉 のが 少くな い のに,. 記 紀 歌 謡 と 同 一 の も の は,, わ ず か に 「あ しひ き の」 「あ らた ま の」 「あ りヲて. の」 (これも人麻呂歌集中の歌にあるもの) 「草 枕」 等に過ぎず, 枕詞の上では記紀歌謡との連関 はあまり認め られない, 右のように, 東歌の枕詞使用法は特異なものがある, このよう な枕詞の未 定着の原因としては, 用言を修飾する枕詞が多いことにも関係があろう, か る枕詞は, 序詞的な 性格をも 有し, 後世まで非固定性を遺存していた, これらは, 記紀歌謡中にあらわれたものを, さ らに発展させたものと思われる, 悩 しけ. 他 妻かもよ. お して 否 と. 漕 ぐ船 の. 稲は春かねど. 忘れは為 せな. 波 の穂 の. も. い や思 、ひ 増 す に 昨夜 ひとり寝て. い た ぶ ら しも と. (3557) (3550). これらになると, その枕詞の置かれた位置も関係があろぅが, 単に修飾句としてばかりでなく, 一首の発想に大いに参与していると言えよう, これらの ダイナミックな用法は序詞の性格と近似す るもので, 形式的な枕詞の発生を必要としなかったものであろう, 自然の景物を用いる場合には, 枕詞よりも序詞の方がスペー スが広く, その修飾する範囲も広 ) 枕詞が呪詞的性格 が濃く, 簡約 く, かつその素材採択の自由も大きいことは明かである, 一方,3 された短小な語に呪力がこもっていると考えられていた時代には, その効果を相当期待されたこと であろうが, こういう信仰白街背景が後退して, かなり自由に実景を切り取って, これを活用し得る ようになると, 枕詞は序詞の前から一往衰退せざるを得ないのである, 薪樵る. 鎌 倉山の. 木 足 る木 を. ま つ と汝 が 言 は ぱ. 恋 ひ っ つ や在 らむ. (3433). この場合, この序詞は即興的に用いられたものであり, 従って 「薪樵る」 も伝統的な枕詞でな く, 実 景をも っ て した と ころ に, 序 詞全 体 と マ ッ チ し, そ こ に 興 味 が 感 ぜ ら れ た の で あ ろ う. こ の. ように, 景物を具体的に表わそうとするならば, 枕詞を使用するよりも, 序言 司として全体を統 一し た 方 が 効 果的 で あ る こ と ば 多 言 を要 しな い と こ ろ で あ る, か く て, 序 詞 の い ち じ る しい 発 達 が東 歌 に お い て見 られ た の で ある . 注 1) 武田祐吉氏 増訂方葉集全註釈十 p .317 2 氏 前掲書 p ) 同 .415~416 3) 折ロ信夫氏 国文学註釈叢書十七, 枕草子解説 p 4~26 .2 3. 次に, 東歌において, 序説の本旨を引き起す形式を検するに, 次のような讐1 輸形式が多く見られ る,. 1 ) 相撲路の (. -ご また. 滴綾の浜の 真砂なす. 私ら は 愛 しく - 11 -. 恩はる るかも. (3372).
(5) . 士 あ ず′ .. 崩岸上から 胸の行このす. 旧. 知. 雄. 危はども 人妻児ろを. ま 行 かせ らふも ・. 濡れて捌きなば 汝は恋ふばそも. 2 ( ) 馬来田の. 撮ろの笹葉の. 露霜の. 筑波嶺に. かか鳴く鷲の. 音のみをか. 泣き渡りなむ. 逢ふとはな しに. (3541). 33 82 ) ( (3390). 2 1 1 ) の類は実に31首ある, ( ) の類は, その讐1 稔の種類は明= ) の類は3首, ( 徐に属するこ ( 2 1 ) の類は, 多少問題もあろうが, 明輪に準ずるものとしてい だろう, ( とば, 疑いない. ( ) 2 の類は, 讐除と本旨との関係が, 明快にな の類は記紀歌謡に比 して, さほど発達していない, ( り, 合 理 化 して い る の が 認 め ら れ る, そ こ に, 讐 輪 の 発 達 の 姿 を 見 る こ と が でき る,. か. る傾向は, 序詞以外の讐輪の部分にも認められる. 利根河 の. 河 瀬 も 知 らず. 妹 をこそ. あ ひ 見 に 来 しか. 沖 に 住も. 小鴨 のも ころ. 浪 に遇 ふ のす. ただ渡 り 眉曳の 八尺 鳥. 3413) (. 鹿な す 思 へる. (3531). 置きて来のかも. (3527). 横山辺 ろ の 息づく 妹を. 逢 へる 君かも. こ のよ う に 明壕 が 発 達 して い る の は, 東 国 人 の 自 然 観に 基 づ く と こ ろ 大 で あ ろ う, す な わ ち, 彼. 等の自然観が古代における主客未分化の域から脱し始め, 自然 物象を客観視 し得る方向へ次第に向 連関があると思う. これに伴なって, 表現形式の上でも記紀歌謡に見られる古代性を漸次棄却しようとしている, す )土橋寛氏の即境的景物を提示する前段と, それに本 ) 折口博 なわち,1 ‐土のいわゆる嘱目発想法,2 旨を寄せる後段との二段構造様式 は必ずしも顕著ではない, そして, 序詞において, 即境的ないし ったこと. 隅目的景物か ら, 一般的景物への変遷が見られ, 前段の景物と主想部との連接に見られた唐突感, 飛躍感が失なわれて来ている, すなわち, 両段の飛躍的転換に対する興味よりも, 誓暁の媒材の適 否が主要な関心となって来ているのである, かくて, 自然物象に対する注意を深化して来るのであ る,. さを鹿の 等 夜 の野 の 沼 二つ. 伏すゃ叢. 見えずとも. をき峯おら. 兎窺 は り. 通 は鳥が巣. 児ろが金門よ 寝なヘ児故に. をさをさに 我が心. 二行 く なも と. 行かくし舞 ‐しも. 35 3o ( ). 母 に暗 ば え. 3529) (. 勿 ょ恩は り そね. ) (3526. i目的風物として与えられたものではなくして, これらの歌中の序詞は, 受動的に良川覧的ないし幅 されたものであ の風物の中から選択 ろう 作者周辺 , それゆえに, これらの序詞には, 二段様式の前 26番の序詞の如きは, 彼等の体験に 段にお いては見られない別種の興味と迫力がある, ことに,35 基づいていることは明かであるが, これに加うるに東国人一流の虚構があり潤色があるのではなか )武 田博士は, 「水鳥が沼から沼へ飛び移るのを見て詠んだよう だ. 勿論その両方に巣が ろぅか,3 あるわけではないだろうが, 両方に巣があるように言ったのは, 二個処に行く 処があるわけでない ことをあらわすた )に, 設 け た こ と で あ る.」・と 説 か れ た, そ こ に フィク ション の 存 在 を 考 え る のも あながち根拠のないことを言うのではない.. 紫草は 根をかも費ふる 人の児の うらがなしけを 寝を寛へなくに くへご. 垣越しに. 麦食む小馬の. ′ こ ま つ{ r ノま )℃ と. 相見し子らし あやに愛しも. (3500) (3537). これらは, いずれも初二句が序詞であるが, その表現内容は豊富で森 )る, 彼等の体験が力強く再 現 され, 活用されている, これらの歌の生命を維持するものは, 序詞であるといっても過言ではな い, そ れ ほ ど, 彼 等 は これ ら の 自 然 物 象 を 重 視 して い る の で あ る,. 比 多潟の. 磯の若布の. 立ち乱え. 吾をか待つなも 昨夜も今夜も 2- -1. 356 3 ( ).
(6) . 東歌 の序 詞・枕 詞の 一考 察. この歌に比較すオ観ぜ, 前段における 「場所十景物」 の素朴な形式から 明かに脱していることが , わ か る,. やさ め ,. 伊香保ろの. わで. のじ. 八尺の堰塞の 立つ虹の. あ ら は る ま でも. さ寝をさ寝てば. (3414). 上り毛野 ま ぐはしまどに 朝日さ し まぎらはしもな. ありつつ見れば. 34 07 ( ). いずれも古代的な景物の提示から解放されて, 特異な環境を序の内容と している これだけ印象 , 的に風物を提示することに成功しているのは, 現実において生々しい体験があったに相違ない し , かも, か る用法が偶発的なものではなく して 非常に増加 して多様に発達 しているの である か , , くて, 東国の地名・風物を中心とする序詞も, 彼等の生活の現実性を基盤としていることに注意し た い,. そもそも, 東歌の制作動機は恋愛生活の細部を詳細に描くことよりも 主として夫婦相会の情熱 , を鮮烈に表出しようとするにあったろう, その表現 しようとするテーマはほとんど大同小異なので あるから, 彼等の興味はむしろ序詞の構造にあると言ってもよいと思う, それゆえ, これらの作者 の努力もこれに注がれたであろう, そこに風物に対する独特の関心が認められ 聴衆の前に具体的 , 感覚 的 に 描 こ うと して いる の で ある, 小 筑波 の. 繁 き木 の 間 よ …. 春李野 に 草食む駒の. 立つ鳥の. 口息まず. 目ゆか汝 を見む しの. 吾を思ふらむ. さ寝 ざ らな く に. 家の児ろはも. (3396). 35 32 ) (. 前者の序詞中の光景は, この地方の農民が常に接しているところで, 彼等の共鳴をかち得たもの であろう, 後者は彼等の農耕生活中に目撃したところであろう, それゆえ, それらには彼等の生活 の反映が明かに見られる, こづ. 鳴瀬ろに 木屑の寄すなす 大船を. ′ 、. とも. 紬ゆも櫨ゆも. いとのきて. 愛し 愛しげ夫ろに / 人さへ寄すも. こそ. 堅めてし 許曽の… 人 里人. 頭 さ め かも. 35 48) ( (3559). こ れ らの歌 も, 讐 暁によ っ て 生 き て い る こ と は 多 言 を 要 しな い, こ れ ら の 讐1稼も そ れ ら の 媒 材 ,. に 対する観察なく しては生れなかったであろう, しかも, かなり詳細な注視をしているのである, かはと たちど 青楊の 萌らる川門に 汝を待つと 清水は汲まず 立処ならすも 3546 ) ( ま 愛 しみ. さ寝に吾は行く く. 鎌倉の 美奈の瀬川に. 潮満つなむか. これらに見られるように, 彼等の恋愛が自然の環境の中で行われた. 33 66 ) (. めに, 対象への注視も相当. に進 ん で来 たも ので あ ろ う,. 児毛知山. へ6で 力 .. 若鶏冠木の もみっまで 寝もと否は思ふ 汝は何 どか思ふ. 34 94 ) (. 時 の 久 しい こ と を 表 わ す に用 い た 「若 鶏 冠木 の も み っ ま で」 の 句 は, こ の 歌 の 生 命 で あ ろう こ ,. の句の表現は, 素朴ではあるが 現実的であり 具体的であり なかなか印象的である こ にお , , , , いては, 風物への注視は相当進んでいることが認められる, か る段階に到達することになると , 風物を煤材とした讐ー 檎は, かなり迫真の力を有 して来る, かくて, 記紀の恋愛歌に見られた序詞と, 束歌のそれとと ば極を異にしている, 前述のように, 記 紀歌謡においては, 二段形式による序詞の技法が少く ないが, 主客分化の傾向は, 東歌の序詞に進 展を促したものであろ , そして, そこに独特の現実性や写実性を付与する結果になったものと考 え られ る, 1) 折口信夫全集第一巻 p 注 . .345~351 2) 土橋 寛氏 序詞の源流 (万葉30年10月号) 3) 武田ネ 有吉氏 増訂万葉集全註釈十 p 01 .4 一 13 -.
(7) . 土. 田. 知. 雄. 4. 次に, 東歌には地名, 国名が多く詠みこまれていることはすでに先人の指摘しているところであ ) 国名, 地名を詠みこんだ歌は実に134首 (国名, 地名ともにあるものは19首, 国名のみの るが, 1 ) 児山信一 氏の も の10首, 地名 の みの も の 105 首) に 上 り, 実 に58% の 高 率 を 示 して い る, こ れ は2. )武田博士 の指摘のよ うに, 説のように, 東歌の民謡性がこれを要請したもの であろう, さらに,3 東歌の採集記録という立場が, か る地名を有する歌に重点がおかれたも のと考えられる, 先ず, 序詞における地名提示の形式は, 上っ毛野 伊香保の嶺るに 降る雪の 行き過ぎかてぬ 足柄の. 箱根の嶺ろの. にこぐ巻. 和草の 花つづまなれや. 妹が家のあたり. 紐解かずねむ. 34 23 ) ( (3370). このように, 初句に大地名, 二句に小地名を提示し, 三句 に景物を据え る形式が多く, 約25首あ り, これに準ずるもの6首を 教える, 初二句にまたがる序詞においては, 伊豆の海に 立つ白波の 伊波保ろの. 傍の若松. 継ぎなむも のを. ありつ つも. か ぎりとや かぎりとや. 乱れ始めめや. う うらもとなくも. 君が来まさぬ. (3360). 34 95 ) (. ずるものが3首 これに準 言 このように, 初句に地名, 二句に景物を出すものが多く, 21首を教え, こ あ る,. 2首の多きを数える, さ ら に, 次 の よ う 直叙式の歌においても, 初旬に地名 の提示があるもの2 に, 初句に大地名, 二句に小地名を提示するもの10首を教える, 信濃なる. 須賀の荒野に. ほととぎす. 下っ毛 野. 安 蘇 の河 原 よ. 石踏まず. 鳴く声きけ ば 空ゆ と来 きと. 時すぎにけり. 汝 が心告れ. 3352 ) ( (3425). 地 名 の 提示 法 か ら 見 る と, 「地 名 十景 物」 の 形 式 に よ っ て い る こ と が っかり, この点では記紀歌. 謡以来の伝統を守 っていると言えよう, しかし, 東歌においては, すでにこれらの伝統形式に変化 が始まっている, 筑波嶺に. 真金吹く. 石 も と どろ に に.. まal. 丹生の真朱の. 世 に も た ゆ らに. ′ こ わ が 念 は な くむ. (3392). 色に樹で 言はなくのみぞ. 我が恋ふらくは. (3560). 落つ る水. 前者においては, 初二三句の序詞は伝統形式と の推移が見られ, ことに 「石もとどろに」 によっ て具体的に景物を描こうとする意図が見 られる, これを 「足柄の刀比の河内に出づる湯の世にもた 33 68 ) に比較すれば, その相違が明かに認 められる, 後者において よらに児ろが言はなくに」 ( は, 初 句 にお い て そ の 地 の 説 明 を 試 み よ う と して い る, 薪樵 る 鎌 倉山 の 木足 る木 を まつと汝が 言は ば. 恋 ひ つ つ や 在 らむ. (3433). 「枕詞十地名十景物」 も古い形式であるが, 初句の枕詞の写実性とい , 三句と四句との連続の 方法とい , こ にも新傾向への推移が見られる, さらに, 次の詣作においては, 一段と伝統形式からの離脱が顕著である, わ が夫 子 を. うけ らが 花の. 時無 きものを. (3379). - 乎郡のー 拳の 洲につくまでに -. 為もがも 君が=. 34 4 8 ) (. 何 どか も い は む. 潅の 花散らふ、 この向っ-. 武蔵 野 の. そこにおいては, 古代的用法から脱して, 地名や景物をかなり自由に選択して使用していること が認められる, これは, やはり対象への注視が然らしめたものであろう, 次の如きは, すでに季感 が明かに認められる, これの前提としては, 自然への凝視が考え られなければならない, - 14 一.
(8) . 東歌 の序詞・枕 詞の一考察. 春へ咲く. う川手. 藤の末葉の うら安に. .. さ寝る夜ぞなき 子ろをし恩へば. (3504). i) 柴生田稔氏 東歌及防人の歌 (万葉集大成i o) 5 2 4 3 4 ~ 〕 児山 信一氏 新説和歌史 1 〕 . 3) 武田棺吉氏 上代国交学の研究 p .338~379 5. 』詞が以上のようにきわめて精彩に富んでいるのに対して 枕詞は貧寒の感を免れない その素 , , . を検するに, 植物関係が圧倒的に多い, 夏 麻 引く … … … 2 はだ薄………… 1 草蔭の………… 1. 庭 に 殖 つ …… … 1. 草 枕 …… …… … 1. 薪樵 る …… …… 1. 蔓 ふ葛 の ……′ ・ ・1. お ふ しも と … … 1. 山 菅 の …… …… 1. む ろ が や の …… 1. これらを見ると, 草類が多く, 花な どはない, これらは彼等の現実生活に必要なものから選んだ のであろう, この意味では, 花は無縁の存在であったのである, 動物では, 次のように鳥だけが用いられて, 獣類は見出されない, これらの傾向は, お むね記 歌謡に同じである, 八尺 鳥 …… … … 1. 水 鳥の …… …… 1. 浜 渚 鳥 …… …… 1. 山 鳥の …… …… 1. 鳩 鳥 の … … …‐ ‐1. 夫象関係が少くないのも, やはり記紀のそれと傾向をひとL く して い る, 白 雲 の…… … … 1. うち日 さっ…… 1. 青 雲 の …… … … 1. う ち 日さす …… 1. 風の 音 の …… … 1. 日 の 暮に ……… 1. 陰夜 の…… … … 1. 地儀関係 あ しひ き の… … 1. 波 の穂 の ……… 1. 奥旦 -の …… …… 1 .. 被服関係 韓 衣 … … …… … 1. あ り 衣 の… … … 1. さ衣 の… … …・ ・1. 梓 裳 … …… … … 1. 器具関係 梓 弓…… …… … 1. あ らた ま の … … 1. 剃 刀 …… …… … 1. 鈴 が音 の…… … 1. 漕 ぐ船 の… … … 1. 選列拝 十の … … … … 1. よ の他 しら と ほ ふ …… 1. 眉 曳の ………… 1. うつせ みの …… 1. )枕詞の素材に, 草類がきわめて多く, 動物では鳥類が圧倒的であること, 天象 前述のように,1 係が比較的多い点などでは, 記紀歌謡の世界と同様である, しかし, 「玉」 関係のものがまつた ) 「玉」 関 係 の も の が な い の は, 東 国 の 庶民 に と なく, て服 関 係 の 意外 に 多 い のが 注 意 さ れ る, 2 - 15 -.
(9) . 土. 田. 知. 雄. って, これらは遠い存在だったのであろうか, 「玉」 が祭紀に用 いられていたとするならば, 東国 の農民にとっても関係のないものとは言えないであろう, しかL, これらが見られないのは 当時 , すでに装飾品としての用法が多くなったものであろうか, 以上の如く, 記音 記歌謡の枕詞に比較するに, 東歌のそれは お むね素材の傾向はひとしく してい る, しかし, その造語法においてはや>異る. さらにその用法においてはかなり相違がある, これ は, 東歌においては, 枕詞を具体的, 写実的に用いようとしたことがその要因であろう, これは, 古代歌謡における枕詞の呪術的用法とは, 懸隔のあることである, かくて, 東歌においては, お むね枕詞が非固定的に用いられたのである, それゆえ, 枕詞の使 用回数はいずれも低いのである, また, 一 方において, か る枕詞の用法は, 序詞の用法にかなり近接した め 東歌の活発な, , そして多彩な序詞の用法に圧せ られて, 枕詞の広 汎な発展を阻止したものと考えられる, 以上の如くして, 東歌においては, 序詞の盛行に比して, 枕詞が萎縮 した理由をほぼ明かにする こ と が で き た と 思 う, ) 高木市之助氏 日本文学の環境 p 注 1 .23~28 同 氏 記紀時代の生活 (短歌研究 昭和9年9月 号) 2 ) 高 崎正 秀 氏 万葉集の枕詞 (万葉集講座第2巻) (33 .9 .30). - 16 -.
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