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大学生の体育実技におけるスポーツ経験と思考力 ・ 判断力との関係

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兵庫教育大学 研究紀要 第54巻 2019年 2 月 pp.127 133

大学生の体育実技におけ るス ポーツ経験 と 思考力 ・ 判断力 と の関係

The Relationship Between the Sport Experiences in Physical Education Classes

and the Thinking and Judgement Abilities Among in University Students

中須賀

巧*

阪 田 俊 輔**

NAKASUGA Takumi

SAKATA Shunsuke

本研究の目的は, 大学体育実技におけ る経験に対す る評価 と 思考力 ・ 判断力 と の関係について検討す るこ と であ る. 大 学生 を対象に体育実技におけ るス ポーツ経験評価尺度 と 思考力 ・ 判断力 の自己評価尺度 を実施 し , データ に欠損がなかっ た150名 (男性52名, 女性98名 ; 平均年齢19.29±.49歳) を分析対象者 と し た. 分析は体育実現経験 を独立変数, 思考力 ・ 判断力 を従属変数と し た重回帰分析 (強制投入法) を行 っ た. 本研究の結果は以下に示す通り である. ( 1 ) 「自己開示」 は 「学び合い」 に正の影響 を与え た. ( 2 ) 「自己開示」 と 「挑戦達成」 は 「学習成立の基盤」 に正の影響 を与え た. ( 3 ) 「楽 し さ実感」 は 「観察 ・ 分析 ・ 解決」 に正の影響 を与え た. 以上のこ と から , 体育実技経験は学生の思考力や判断力 に 異 な る影響 を与 え る こ と が示唆 さ れた .

The purpose of study was to examine the relationship between the sport experiences in physical education classes and the thinking and judgement abilities among in university students. The participants were 150 university students (52 men and 98 women, mean age= 19.29±.49 years) who completed questionnaires on sport experiences in physical education classes, and thinking and judgement abilities. The multiple regression analyses ( forced entry method) were conducted to examine the influence of sport experiences in physical education classes on the thinking and judgement abilities. The results of the study suggested the following processes: (1) The self-disclosure had a positive influence on “mutual learning”. (2) The self- disclosure and challenge had a positive influence on foundation of “learning establishment”. (3) The enjoyment had a positive influence on “observation, analysis and problem-solving”. In conclusion, the sport experiences in physical education classes had di fferent influence on the thinking and judgement abilities in university students.

キーワ ー ド : 大学生, 体育, ス ポーツ経験, 思考力, 判断力

Key words : university students, physical education classes, sport experiences, thinking ability, judgement ability 1 . は じ めに 文部科学省 (2017) によ る第 2 期ス ポーツ基本計画で は , ス ポー ツ の価値 を① ス ポー ツ で 「人生」 が変 わる , ② ス ポーツ で 「 社会」 を変え る , ③ス ポーツ で 「 世界」 と つ なが る , ④ス ポーツで 「未来」 を創 る と い う 4 つの 観点から 説明 し , 「 ス ポーツ参画人口」 の拡大や 「一億 総ス ポーツ社会」 の実現に取 り 組むこ と を基本方針 と し て提示 し てい る . こ れから の大学におけ る体育 ・ ス ポー ツは, こ の方針に対 し , どのよ う に関わる こ と がで き る のかについ て考 え てい く 必要があ る だ ろ う . その関わり 方の一つ と し て, 多 く の大学には全学学生 を対象に開講 さ れる教 養 と し ての体育 あ る い は ス ポー ツ を べ一 ス と し た実技科目がある. 笹原ほか (2006) は多 く の国立大学 に おい て教 養学部が廃止 さ れて以降 , 体育 やス ポー ツ の 実技科目は必修科目から 選択科目 と な っ たが, その履修 者は全国で 7 割程度存在 し ており , こ れらは大学生自身 が体育 やス ポー ツの存在意義 を認め てい るのでは ない か と 推察 し てい る . そ れでは, 大学生は体育やス ポーツの 実技科目に一体何 を求めてい るのだ ろ う か. 大学生が体 育やス ポーツの実技科目に対 し , どう 価値や意義 を感 じ てい る かについ て検討 し てい る研究 では, 動け る こ と が 楽 し い, 仲間づ く り がで き る な ど を感 じ てい る こ と が報 告 さ れてい る (笹原ほか, 2006 ; 多胡, 2006 ; 中野, 2017) . ま た体育実技 を通 し た学生の成長度につい て検 討 し てい る研究 では, 体育実技の中で教員 と 学生で意見 交換す る ための大福帳 を用い た こ と に よ っ て対 人 コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ンが向上 し たこ と (西田ほか, 2009) や, 授 業内で自己調整学習 ノ ー ト を用いて自己の動きや活動内 容 を モ ニ タ リ ン グ し なが ら様々な計画 ・ 目標 を設定 し た こ と によ っ て自己効力感が高ま っ たこ と (須崎 ・ 杉山, 2017) な ど も 報告 さ れてい る . こ のよ う に, 大学 におけ る体育やス ポーツの実技科目は学生自身が受講す る価値 や意義 を理解 し てお り , さ ら には身体活動 を通 じ て心身 の成長に貢献 し てき た重要な科目の一つと 言え るだ ろ う . と こ ろで, 中央教育審議会 (2008) は 「学士課程教育 の構築 に向け て」 の答申 を取 り ま と めてお り , その中で * 兵庫教育大学大学院教科教育実践開発専攻生活 ・ 健康 ・ 情報系教育 コ ース 助教 * * 九州産業大学 平成30年10月19 日受理

(2)

中須賀 巧 阪 田 俊 輔 学士力 に関 し , 学生の知識 ・ 理解, 汎用的技能, 態度 ・ 志向性, 総合的な学習経験 と 創造的思考力 と い っ た資質 能力 を養成 し てい く こ と が重要な課題 であ る と 記 し てい る. 大学教育では, 学生に幅広い知識 を身 につけ さ せる こ と に加え , その身 につけ た知識 を他者に伝え る , あ る いは実生活に役立 て る こ と がで き る力 , さ ら には自身の 考え を整理 し , 新たな課題 を発見 ・ 解決 し てい く こ と が で き る力 な ども同時 に育ま せてい く こ と が必要に な る . こ のよ う な基礎知識の習得や応用力の獲得に対 し , 大学 体育では学生の思考力 ・ 判断力 を養成す る こ と で貢献が 可能である と 考え ら れる. 体育学習場面におけ る思考力 ・ 判断力 に関す る研究では, 小林ほか (2016) が中学生 を 対象に 5 つの下位尺度 (「情報収集」 , 「学び合い」 , 「課 題解決」 , 「運動観察 ・ 分析」 , 「学習成立の基盤」) から 構成 さ れる 「思考力 ・ 判断力の自己評価尺度」 を作成 し てい る . こ の尺度開発に よ っ て, 体育学習中に どの程度 思考力 ・ 判断力 が育成 さ れてい るのか を簡易 に測定す る こ と が可能にな っ た. そ し て, 体育授業での思考力 ・ 判 断力 が生徒の学習意欲 と どのよ う に関連す るのかについ て も検討 さ れてお り , 運動に対す る意欲が思考力 ・ 判断 力 を高め る可能性があ る こ と を示唆 し てい る (小林ほか, 2017) . し か し , こ のよ う に思考力 ・ 判断力が どのよ う な要因 の影響 を受 け て向上 ・ 低下す る のかについ ては, そ れほ ど多 く の知見が蓄積 さ れてい る と は言え ない . し たが っ て, 体育授業の経験が どのよ う に学生の思考力 や 判断力 に貢献す るか判断す る ためには, 思考力 ・ 判断力 と 併せて学生が体育授業 を通 し て どのよ う な ス ポーツ経 験 を し たのか を測定す る必要があ る . 大学体育 でのス ポーツ経験 を測定す る方法 につい て, 例え ば島本 ・ 石井 (2007) は, 学生が どのよ う な ス ポー ツ経験 を し たのか を個人の視点 から 評価で き る尺度 を開 発 し , さ ら に ラ イ フ ス キルと の関係につい て検討 し てい る . その結果, 体育授業 で の ス ポー ツ経験は個人 に よ っ て様 々 で あ り , その経験が ラ イ フ ス キルの獲得 に異 な る 影響 を与 え る こ と を確認 し てい る . ま た, 内田 ・ 橋本 (2016) は, 大学生 を対象 に体育授業経験, 社会的 スキ ル, 向社会的行動の関係につい て検討 し ており , 授業で の挑戦や達成 し た経験が学生の向社会的行動 に影響 を及 ぼす こ と を明 ら かに し てい る . こ れら は, 体育授業 で の 経験 に よ っ て獲得 さ れる ス キ ルや行動 の仕方 が異 な る こ と を示唆す る も ので あ る . し たが っ て, 先述 し た学士力 の資質能力の養成に与え る影響 も異な るこ と が予測 さ れ, その資質能力の一つであ る思考力 ・ 判断力の高ま り に関 す る検討 も 必要 に な る と 考 え る . 以上のこ と から , 本研究では, 大学体育実技 におけ る 経験に対 す る評価 と 思考力 ・ 判断力 と の関係につい て検 討す る こ と を目的 と し た. ま た思考力 ・ 判断力の尺度は, あ く ま で も 中学生 を対象 に作成 さ れてお り , そ こ で確認 さ れてい る因子構造が大学生に も適用可能か否かについ て も 検討 す る .

11. 方法

1 . 調査対象者 関西地区の 1 大学の大学生155名のう ち, 欠損値のあ る者や回答に誤り のある者を除外 し た150名 (男性52名, 女性98名 ; 平均年齢19.29±.49歳) を分析対象 と し た. 調査は体育実技の一部 を利用 し て集団実施 さ れた. 2 . 調査内容 (1) 体育授業経験 学生が体育授業 の中で どのよ う な経験 を どの程度 し て い る のかに つい ての評価 には, 島本 ・ 石井 (2007) が開 発 し た 「体育授業 におけ るス ポーツ経験評価尺度」 を用 い た. こ の尺度は, ス ポーツ経験 を参加者個人の視点か ら捉え る も のであ り , 4 下位尺度 (「自己開示 : 自 ら の 思いや考え を相手に伝え る」 , 「他者協力 : 友人ら と の協 力 や励ま し合い を表す」 , 「挑戦達成 : 未経験の プ レ ーや 技 に挑戦 し , それを成 し遂げる」 , 「楽 し さ実感 : 友人ら と ス ポー ツ その も の を楽 し む」 ) , 全14項目で構成 さ れて い る. 回答は, 各項目の内容 を体育の実技授業で どの程 度経験 し たかを問う 4 段階 (「 1 点 : なかっ た」, 「 2 点 : たま にあ っ た」 , 「 3 点 : と き どき あ っ た」 , 「 4 点 : よ く あ っ た」 ) の自己評定で求めた. (2) 思考力 ・ 判断力 学生の思考力 ・ 判断力の測定には, 小林ほか (2016) が開発 し た 「思考力 ・ 判断力の自己評価尺度」 を用いた. こ の尺度は, 「 情報収集」 , 「学 び合い」 , 「 課題解決」 , 「 運動観察 ・ 分析」 , 「学習成立の基盤」 から な る 5 つの 下位尺度, 計20項目で構成 さ れてい る. 回答は, 各項目 の内容 を体育の実技授業 で どの程度実施 し てい るかを問 う 5 段階 (「 1 点 : ま っ た く あてはま ら ない」 , 「 2 点 : あま り あ てはま ら ない」 , 「 3 点 : どち ら と も いえ ない」 , 「 4 点 : ま あ ま あ あ ては ま る」 , 「 5 点 : と て も あ てはま る) の自己評定 で求めた. なお, 上記の因子構造は中学 生 を対象 に確認 さ れてい る も ので あ り , 大学生におい て も同様の因子構造が確認 さ れるかについ て検証 を行 っ た. 3 . 統計解析 大学生におけ る思考力 ・ 判断力 の自己評価尺度の因子 構 造 は , ま ず 標本妥当 性 を Kaiser-Mayer-0 lkin の測度 (以下, KM 0 と す る) と Bartlett の球面性検定 (以下, Bs と す る) によ り 検証 し , 続い て探索的因子分析 (主 因子法, バリ マ ツク ス回転) およ び確認的因子分析 を実 施 し , 最後 に ク ロ ンバ ツ ク の a 係数 を算出 し た . な お 探索的因子分析では, 因子負荷量0.40未満 を削除対象項 目 と し た. ま た確認的因子分析におけ る因子構造モ デル の採択判断には, GFI (Goodness of Fit Index) , CFI (Comparative Fit Index) , RMSEA (Root Mean Square

(3)

大学生の体育実技におけ るスポーツ経験と 思考力 ・ 判断力 と の関係 Error of Approximation) を採用 し た (豊田ほか, 1992 ; 室橋, 2003) . ま た各測定尺度の記述統計量 と し て, 平 均値, 標準偏差, 相関係数 を算出 し た. そ し て, 体育授 業経験の下位尺度 を独立変数, 思考力 ・ 判断力の下位尺 度を従属変数と し た重回帰分析 (強制投入法) を実施し, 変数間の関係 につい て検討 を行 っ た. なお全 ての分析 に は, 統計パ ッ ケ ー ジの IBM SPSS Statistics 24.0 な ら び に IBM SPSS Amos 24.0 を使用 し , 有意水準は 5 %未 満, 有意傾向は10%未満 と し た.

m. 結果

1 . 体育授業におけ る大学生の思考力 ・ 判断力評価尺度 の因子構造 ま ず標本妥当性 を確認す る ための KM 0 と BS の値は, いずれも統計的基準 (KM0 = .86, BS= 1399.35, p<.05) を満 た し てい た. 次に小林ほか (2016) が開発 し た思考 力 ・ 判断力自己評価尺度20項目に対 し て探索的因子分析 (主因子法, プロ マ ッ ク ス回転) を実施 し , 因子負荷量 の絶対値が.40未満の項目 を削 除 し た結果, 最終的 に 4 項目 (「学 び合い : どう し た ら も っ と 上手 く な るのか を 友だちに伝え てい る」 , 「課題解決 : 自分と周り の人 (友 だち) の動 き の違い を見つけ よ う と し てい る」 , 「運動観 察 ・ 分析 : 自分のチームの特徴を見つけよ う と し てい る」, 「学習成立の基盤 : 次の時間の学習課題 (「 めあて」 や 「 ねら い」 ) が言え る」) が削 除 さ れ, 4 因子16項目が抽 出 さ れた (表 1 ) . 中学生 を対象に し た尺度開発の先行 研究 (小林ほか, 2016) と 大学生 を対象に し た本研究 と の違いは, 「課題解決」 と 「 運動観察 ・ 分析」 の項目が 表 1 体育実技におけ る大学生の思考力 ・ 判断力評価尺度の因子構造 因子負荷量 下位尺度および項目内容 第 I 第n 第:m 第rv 共通性 因子 因子 因子 因子 第 I 因子: 観察・ 分析・ 解決(α=.89) X1 どうしたら上手< なるのかを考えながら、体を動かしている X2 楽しく運動するため技のポイントを見つけようとしている X3 いろいろな動きを上手に行うため、どのように体を動かしたら良いのかを考えている X4 動きを身につけるため、技のポイントを見つけようとしている X5 「できない」ことでも、どのように体を動かせば「できるか」を理解している X6 楽しく運動するため、工夫して運動している

12 .28 .09

.67

09 .24 .17

19 .21 .14

29 .22 .14

26 .00 .00

13 .16 .19

66

64

68

48

47

第 II 因子: 情報収集(α=.88) 楽しく運動するため、教科書 (配布プリント) 以外の本で情報を集めている X7 (体育の時間以外を含む) 上手に体を動かすため、インターネットで情報を集めている X8(体育の時間以外を含む) 上手に体を動かすため、教科書 ( 配布プリント) 以外の本で情報を集めている X9 (体育の時間以外を含む) 楽しく連動するため、インターネットで情報を集めている X10

_ _

_ __ _ _ . . . ・ _^ ・ 、

18

6

1

3

2

2

1

8

7

7

0

7

7

7

7

22 -.03

12 .11

22 .08

13 .23

69

69

70

58

第III 因子:学び合い(α=.84) X i i 周りの人 ( 友だち) が上手になるため、技のポイントをf云えている X12 周りの人 ( 友だち) がどのような動きをしているのかを他 の人に伝えている X13 自分が上手にできたら、そのポイントを周りの人 (友だち) に伝えている

29 .34

41 .20

47 .35

2

8

2

8

5

6

3

3

8

1

0

0

8

0

2

7

6

5

第「V因子 : 学習成立の基盤(α=.71) X14 周りの人 ( 友だち) と安全面について考えている X15 自分はいつも安全面について考えている X16 周りの人 ( 友だち) と安全面について話し合っている

16 .05 -.01

07 .07 .05

19 .28 .33

4

3

9

7

7

4

57

54

46

(4)

中須賀 巧 阪 田 俊 車南 統合 さ れた点 であ る . そのため, 本研究 ではそ れら 両因 子名 を併せて 「観察 ・ 分析 ・ 解決」 と し た. ま た 「学 び 合い」 と 「学習成立の基盤」 の 2 つの因子から は 1 項目 ず つ削 除 さ れ, そ れぞれ 3 項目 と な っ た. な お , 「 情報 収 集」 の因 子 か ら 削 除対 象 項 目 は な く , 小 林 ほ か (2016) の先行研究 と 同様の 4 項目 と な っ た. 続い て, 確認的因子分析によ る 4 因子16項目の因子構造モ デルの 妥当性 につい て検討 を行 っ た (図 1 ) . その結果, GFI がやや低い値 ではあ っ たが, 許容 さ れる範囲内 であ り , そ の 他 の 適 合 度 指 標 は 基 準 値 を 満 た す 値 で あ っ た (GFI= .86, CFI = .92, RMSEA = .08) . 最後に信頼性 を

確認す る た め ク ロ ンバ ツク の a 係数 を算出 し た と こ ろ , 「観察 ・ 分析 ・ 解決」 は a = .89, 「情報収集」 は a = .88, 「学 び合い」 は a = .84, 「学習成立の基盤」 は α

= .71で

あ り , そ れぞれ基準値 を満たす値であ っ た. 以上のこ と から , 体育授業内での思考力 ・ 判断力に関 し て, 中学生 と 大学生で若干の因子構造に違いは認め ら れた も のの, 小林ほか (2016) の思考力 ・ 判断力の自己評価尺度 を大 学生対象 に用い て も信頼性 と 妥当性は概ね確認す る こ と がで き たのでは ない か と 考え ら れる . し たが っ て, 大学 生の思考力 ・ 判断力 と し て構成 し た 4 因子16項目の因子 構造で以降の分析 を進め る こ と と し た. 2 . 各尺度の基本統計量 各下位尺度の平均値, 標準偏差な ら びに相関係数は表 2 に示す通り で あ る. 体育授業経験の各下位尺度 と 思考 力 ・ 判断力 の各下位尺度 と の相関係数につい て述べ る. まず体育授業経験の 「自己開示」 は, 「観察 ・ 分析 ・ 解 決」, 「学び合い」, 「学習成立の基盤」 にそれぞれ有意な 正の相関 (順に r= .19, .35, .20) を示 し た. 続い て, 「他者協力」 と 「楽 し さ実感」 は, 「観察 ・ 分析 ・ 解決」

(順に r= .20, .29) と 「学び合い」 (順に r= .20, .31)

にそ れぞれ有意な正の相関 を示 し た. 最後に 「挑戦達成」 は, 「 学 び合 い」 , 「 学習成立の基盤」 に そ れぞれ有意な 正の相関 (順に r = .22, .22) を示 し た. 体育授業経験 の下位尺度 と 「情報収集」 と の間には有意な相関係数が 認め ら れなか っ た . 注) 潜在変数(構円)から観測変数(長方形)へのパス, 潜在変数間の共分散 を示すパスはすべて5%水準で有意である. 図 1 体育実技におけ る大学生の思考力 ・ 判断力評価尺度の確認的因子分析

(5)

大学生の体育実技におけ る スポーツ経験と 思考力 ・ 判断力 と の関係 表 2 各調査内容の基本続計量 (平均値, 標準偏差, 相関係数)

標準

相関係数

平均値

-偏差

① 自己開示

② 他者協力

③ 挑戦達成

④ 楽しさ実感

10.51

2.40

12.39

2.17

.52 *

7.50

8.99

2.00

1.72

37 * .21 *

53 * .72 * .37 *

⑤ 観察・分析・解決

⑥ 情報収集

⑦ 学び合い

19.23

4.56

9.09

3.43

8.19

2.68

19 * .20 * .09

.29 *

15

.04

.14

.12

.46 *

35 * .20 * .22 * .31 * .65 * .56 *

⑧ 学習成立の基盤

9.31

2.18

.20 * .03

.22 * .11

.36 * .32 * .33 *

表 3 体育授業経験と 思考力 ・ 判断力 と の関係

*

p < 05

独立変数

自己開示

他者協力

挑戦達成

楽しさ実感

決定係数

R 2値

観察・分析・解決

属 情報収集

学び合い

学習成立の基盤

07

-.04

-.04

.30 *

.09 *

12

-.13

.08

26 *

19 †

-.11

-.13

07

16 †

11

23 †

04

15 *

04

.07 *

3 . 体育授業経験と 思考力 ・ 判断力 と の関係 体育授業経験の下位尺度 を独立変数, 思考力 ・ 判断力 の下位尺度 を従属変数と し た重回帰分析 (強制投入法) を実施 し た (表 3 ) . その結果, 「自己開示」 は 「学び合 い」 (β= .26, p<.05) と 「学習成立の基盤」 (β= .19, p<. 10) に正の関係 を示 し , 「挑戦達成」 は 「学習成立の基盤」 (β= .16, pく.10) に正 の関係 を示 し , 「楽 し さ 実感」 は 「 観察 ・ 分析 ・ 解決」 (β= .30, p<.05) と 「学 び合い」 (β= .23, p<.10) に正の関係 を示 し た. 「 他者協力」 か ら 思考力 ・ 判断力 の下位尺度への有意あ るいは有意傾向 を示すパス係数は確認 さ れなか っ た. ま た 「 情報収集」 に関係 を示す体育授業経験の下位尺度 か ら の有意あ るい は有意傾向のパ ス係数 も 確認 さ れなか っ た. なお独立変 数が従属変数 を説明す る値であ る決定係数 (以下, R2 と す る) は, 上記の結果順 に R2= .09, .15, .07であり , 10 %前後の説明力 で あ っ た.

IV. 考察

本研究では, 大学体育実技におけ る経験に対す る評価

*

p < 05 tp< 10

と 思考力 ・ 判断力 と の関係につい て検討す る こ と を目的 と し た. ま たそ こ で使用す る中学生版の思考力 ・ 判断力 に関す る尺度の因子構造が大学生に も適応可能かについ て検討 を行 っ た. まず, 使用尺度であ る思考力 ・ 判断力 に関す る尺度は, 分析の結果, 最終的に16項目 4 因子構 造 と なり , 小林ほか (2016) が示 し た中学生での因子構 造 と そ れを構成す る項目 と は若干 の違い (「課題解決」 と 「 運動観察 ・ 分析」 の統合) が認め ら れた. 続い て, 大学体育実技におけ る経験に対す る評価と 思考力 ・ 判断 力 と の関係につい て検討 を進めた. その結果 「自己開示」 は 「学び合い」 と 「学習成立の基盤」 に, 「挑戦達成」 は 「学習成立の基盤」 に, 「楽 し さ実感」 は 「観察 ・ 分 析 ・ 解決」 と 「学 び合い」 にそれぞれ正の関係 を示 し た. 以上の結果 を そ れぞれ 「学 び合い」 を高め る体育授業経 験, 「学習成立の基盤」 を高める体育授業経験, 「観察 ・ 分析 ・ 解決」 を高める体育授業経験の順に考察 し てい く . 1 . 「学 び合い」 を高める体育授業経験 「学 び合い」 には 「自己開示」 が正の関係 を示 し た. こ れは 「自己開示」 の経験が豊富 な者ほ ど, 「学び合い」

(6)

中須賀 巧 阪 田 俊 車南 の得点 も 高 く な る こ と を意味 し てい る. 自 ら の思いや考 え を相手に伝え る行為 であ る自己開示の経験は, 学習者 に どう し た ら も っ と 上手 く な るのか を考え さ せ る だけ で な く , さ ら にそ れを相手 にわかり やす く 伝え る ための言 葉の選択 や注目 さ せたい動 き の部分 につい て伝え よ う と す る力 (他者に何かを伝え る力) を養う のではないかと 示 唆 さ れ る . 2 . 「学習成立の基盤」 を高める体育授業経験 「学習成立の基盤」 には 「自己開示」 や 「挑戦達成」 が正の関係 を示 し た. こ れは 「自己開示」 や 「挑戦達成」 の経験が豊富 な者ほ ど, 「学習成立の基盤」 も 高い と い う こ と を意味 し てい る. つま り 授業中の安全面につい て 考え てい る と い っ た 「 学習成立の基盤」 は, 自 ら の思い や考え を相手に伝え た と い う 経験や新 た な プレ ーや技 に 挑戦 し , そ れを成 し遂げるこ と がで き た と いう 経験によ っ て培 われてい く こ と を示唆 し てい る. 例え ば, 新た な プ レ ーに挑 戦す る こ と で , こ れま で にはなか っ た危険性や 困難な部分が学習者には見え るのではないかと 考え る . その危険性や困難 さ に対 し て学習者は仲間あ るいは教員 と 意見交換 し なが ら , どのよ う に安全面が保 た れるのか や, どこ に注意 し なが ら プ レ ーす るのかと い っ た安全 に 運動がで き る場につい て考え る力 が養われるのではない か と 推察 さ れる . 3 . 「観察 ・ 分析 ・ 解決」 を高める体育授業経験 「観察 ・ 分析 ・ 解決」 には 「楽 し さ実感」 が正の関係 を示 し た. こ れは 「楽 し さ実感」 の経験が豊富な者ほ ど, 「観察 ・ 分析 ・ 解決」 の得点 も高い こ と を意味 し てい る . 仲間の動 き を見 て, その動 き を ヒ ン ト に どう や っ た ら自 分に も同 じ よ う な動 き がで き るのか を考え る力 は, 仲間 と ス ポー ツ その も の を楽 し む こ と がで き た と い う 経験の 中で培 われてい く こ と が示唆 さ れた. 楽 し さ実感の経験 は共感や対人関係づ く り な ど仲間 を理解す るために必要 な力 を身 に つけ る う え で有効的 で あ る (内田 ・ 橋本, 2016) . こ のよ う な楽 し さ 実感 を作 り 出す和気あいあい と し た雰囲気やの びの び プ レ ーで き る雰囲気は, 自分の 体 を自由 に動かすこ と に留 ま ら ず, 仲間の動き を観察 し たり , 自分の動き に対す る意見 を気軽に仲間に求める こ と に よ っ て, そ こ での様々な意見 を集約 し てい く 力 が養 われてい く ので は ない か と 示唆 さ れる . V . ま と め 体育授業におけ る経験と学生の思考力 ・ 判断力 と の関 係につい て検討 を行 っ た結果, 以下の 3 点 にま と める こ と がで き た. ①運動上達のためのポイ ン ト を学生同士が 伝え合 う と い っ た 「 学 び合い」 は, 自 ら の思い や考え を 相手に伝え る行為 であ る 「自己開示」 の経験が必要にな る. ②授業中の安全面につい て考え てい る と い っ た 「学 習成立の基盤」 は, 自 ら の思いや考え を相手に伝え た と いう 「自己開示」 の経験や新たな プレーや技に挑戦し, そ れを成 し遂げ る こ と がで き た と い う 「挑戦達成」 の経 験 に よ っ て培 われてい る . ③仲間 の動 き を見 て , そ の動 き を ヒ ン ト に どう や っ た ら自分 に も 同 じ よ う な動 き がで き るのかと い う 「観察 ・ 分析 ・ 解決」 は, 仲間 と ス ポー ツ その も の を楽 し むこ と がで き た と い う 「楽 し さ実感」 の経験の中で培 われてい る. こ のよ う に体育授業におい て どの よ う な経験が どの程度 あ る のかに よ っ て , 向上す る学生の思考力 や判断力 に異な る影響 を与え るこ と が示 唆 さ れた .

VI . 今後の課題

本研究は, 1 つの大学の学生に対 し て質問紙調査 を実 施 し た も のであり , 広 く 大学生全体に当 てはま る知見で あ る と は言え ない . し たがっ て今後は複数の大学の学生 に対 し て も同様の質問内容につい て調査 を実施 し てい く 必要があ る と 考え る. ま た他の独立変数の存在や媒介変 数の問題 も あ る. 例え ば, 本研究では体育授業経験 を独 立変数と し, 思考力 ・ 判断力 を従属変数と し た重回帰分 析 を実施 し たが, 変数同士の説明力 を示す決定係数は10 %前後 と 決 し て高い値 と は言え ない . つま り , こ れは独 立変数 と し て体育授業におけ る経験以外に さ ら に大き な 影響 を与 え る変数の存在 を示唆す る も ので あ る . あ るい は経験と 思考力 ・ 判断力の間にスポーツに対す る内発的 ・ 外発的動機づけ と い っ た心理変数や行動のと り 方 と い っ た行動変数な ど何 ら かの媒介す る変数が存在す る可能性 も あ る. 以上 を今後の課題 と し て, 大学体育の意義につ い て さ ら な る検討 を深 めてい く こ と が必要に な る . 謝辞 本研究は JSPS 科研費 (課題番号16H03227, 研究代表 者 橋本公雄教授) の助成 を受け た も ので あ る.

参考文献

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参照

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