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献辞(山川偉也教授退任記念号)

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Academic year: 2021

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ご定年という決まり事とは申せ,山川偉也教授をお送りせねばならぬ時 期に立ち至り,その永年の教育・研究・校務に亘るご業績に酬いるにはま ことにささやかながら,『国際文化論集』本第39号をご退任記念号として 献じさせていただくにあたり,お役目とは言え誠に僭越ではございますが, 一言ご挨拶申し上げます。 学部・大学院ともに同志社でギリシア哲学を専攻された山川教授が博士 課程単位取得修了後,本桃山学院大学経済学部に助教授として就任された のは1975年,今から30有余年前のことになります。その後1977年には同学 部教授に昇任されました。さらに,1989年文学部開設に伴い同学部教授に 就任されると共に一般教育部長を2年間務められております。当時文学部 が全学部の「一般教育」を担っていたことによる重責でありました。 次いで1991年から2年任期で文学部長を務められていらっしゃいますが, 私事を思い返せばこの年4月,つまり開設3年目にして小生は文学部に赴 任致しました。月並みですが,光陰矢の如く,歳月人を待たずではありま す。その節は,いやその後もなおお世話になり有難うございます。小生は ロシア文学就中ドストエフスキー研究を中心としておりますので,専門は 異なりますが,後述のように様々な面でお教えを受けました。 ところが極めて残念なことに「全学部による教養教育体制」確立のため の「文学部教員再配置」により,2002年4月,山川教授は新設の法学部に 移られました。ただし,大学院文学研究科にはご在籍され,とりわけ同研 ― 1 ― 国際文化学会会長

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究科の困難な時期に2004年から2年間,文学研究科長を務められました。 この間,長期の海外特別研修には,1982年10月∼翌年3月,1993年4月 ∼翌年3月の2度,いずれもアテネ大学哲学部客員教授として出かけられ ており,そのご研鑽と寄与もあって,1997年には同大学より名誉博士号を 受けられました(授与式は1998年4月,アテネ大学)。ちなみに,ギリシ ア哲学と文化への寄与に対して,ピュタゴリオン,オリュンピア・レプレ アストス両市から文化功労賞の栄誉を受けられておりますし,1993年7月 には,国際ギリシア哲学協会名誉会長に就任されており,山川教授の教育 ・研究がギリシア本国「公認」の国際的なものであることが明らかです。 さて山川教授のお仕事は,「著作目録」に偉容を見せておられます。す なわち,001−25歳の詩集『落葉する帆柱の下に』から233−[雑篇]「ピュ タゴラスの徒,仏を刻む」に至るまで。中でも詩集3冊を含む12冊のご著 書(70歳の近刊『始原の時へ』は通し番号外)と肩を並べて壮観なのは 026∼153に至る「論文(単著)」実に128本です。著書同様に日本語文,英 語文,ギリシア語文とりまぜてのこのラインナップは,例えば,アクロポ リスのパルテノン神殿を仰ぎ見るような,それは威圧感ではなくてむしろ 秩序だった爽快感をさえ与えるかのようです。さらにその中でも,073, 1992(03)53,フランス文学・思想の故平井啓之先生,数学史の故村田全先 生との鼎談「エレアのゼノン,その光と影:西欧思想史上のゼノン」は懐 かしいものです。ここには『人間科学』第3巻に採録されたものが掲載さ れていますが,赴任初年の身にとって平井先生ご退任を機に企画されたこ の鼎談「ライブ」は極めて知的刺激と示唆に富むものでした。つまり山川 先生による「謎解き『ゼノンのパラドクス 」により,ドストエフスキー の謎を解く鍵へも導かれたのでした。有難いことです。幸運な巡り合せで した。この機会に鼎談を読み返して,末尾に極めて美しい一節があったこ とに気がつきました。引用をご海容下さい。直線的な時間把握に対して, 国際文化論集 №39 ― 2 ―

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別の方向もあるのではないか, それは≪時≫を,「流れる」ものとしてではなく,捻華微笑する菩薩 の笑みのようなものとしてというか,あるいは,寒風にはなひらく一 輪の白梅の蕾のようにとでも申しましょうか,なにかこう心の奥処か ら湧いてくる≪泉≫のようなものとして,直観する方向です。華厳の 時間論における「瞬間」(一念)は,そのようなものとして見られう ると思います。 難解と見えようが,ここには山川教授の詩と哲学と仏像との渾然・重層 が看取されるように思われますが,「しかし,これも私の考えとは少し違 う」と続きます。 アナクサゴラス的連続体論と「九世論」を合体させたような方向で自 分の時空コスモロジーを展開する,それが,エレア学派,とりわけパ ルメニデスの≪有≫の形而上学との対決における,哲学者としての私 の応答の基盤となりましょう。が,この点については,まだ十分な詰 めができていません。了ります。 まだまだ山川先生には教えていただくことが沢山あると身に沁みて感じ られます。先生どうか益々お元気で今後とも後進をお導き下さい。 末筆ですが急いでもう一つ山川教授から学んだことを付け加えさせてい ただきます。かつて「総合講座」という科目があったとき,「世界の言語」 と称して,ヨーロッパ系・アジア系言語に関して1,2回ずつ各々の専門 家に講義してもらう企画を立て,先生には勿論ギリシア語,しかも古代と 現代双方について講義していただいた。その時,先生はチーフの小生より も早く,始業前に教室に入られ,チャイムを聞いておもむろに講義を始め られたのでした。しかるべし,と感服したものです。 2008年12月20日 献 辞 ― 3 ―

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