スーパーアグリ「名人の技を科学する」
~人工知能学会 市民共創知研究会に期待すること~
大森 友子
Agriturismo 大森家 代表
Abstract: 遠野市で経営する農業体験型の農家民宿へ訪れる都心部からの学生は、鍬の使い方や 身体の使い方が分からない場合が多い。本稿では、農作業の「名人の技」を科学的に研究するこ とを提案する。また、鍬の使い方の指導に関する仮説を示す。さらに、人工知能学会 市民共創 知研究会の活動の一環として本研究を始める上での期待を述べる。1. はじめに
遠野市は人口2 万 9 千人、総世帯数約 9900 世帯の 小さな町である。その中で田畑を耕作している世帯 は 2860 世帯で 3 千人。農業を業とする世帯は僅か 350 世帯でほとんどが副業的もしくは自給的農家で なお且つ高齢者が農業を担っている。 私は6 年前に農業に転身し、家族とともに農業を 始めた。昨年からは農業体験型の農家民宿を経営し、 学生から一般客に農業体験の場を提供し、農業と食 を理解してもらう活動をしている。 体験に訪れる方のほとんどは都心部からの学生で、 いずれも鍬などの農機具を使った事のない学生ばか り。鍬を持たせて作業をすると、鍬の使い方もさる ことながら、身体の使い方が分からず、上手く耕す ことが出来ないでいる。そのため短い農業体験の中 で、食の大切さは理解しても、農作業が重労働で大 変との感想が聞かれ、農業の楽しさには結びつかな い事を感じている。 また、農作業が重労働であることは自分を始め、 昔から農業に従事してきた高齢者の方々も同じであ り、その事が農業人口の減少の一因でもある。 作業能率が上がり身体に負担がかからない農作業 のあり方を科学的に研究する事で、遠野市の農業人 口が増加し、自給率を高めることきっかけにならな いかと提案してみた。これにより、人工知能学会 市 民共創知研究会の活動の一環として本研究が開始す るに至った[1]。2. 研究の動機
医療や介護の世界では、作業能率や身体への負担 を軽減する動作が研究され、作業能率を高めている が、農作業の身体にかかる負担を軽減する作業のあ り方は研究されていない。そこで第一に鍬の使い方 を分析し、作業能率を高める研究をしたい。第二に、 鍬などの土を耕す農器具について研究する事により、 更に効率の良い農器具が改良される可能性があるの ではないかと考えた。3. 研究の目的
以下に示す2 項目を本研究の目的とする。 (1) 初心者と農業体験者が鍬を使う時の、身体の使 い方を調べる。 (モーションキャプチャ等) (2) 鍬の金属部の形状や重量が、作業能率にどのよ うに影響しているかを調べる。4. 研究の仮説
農業体験にあたり、学生のぎこちない動きや、畝 に対しての立ち位置について良く指導するポイント がある。その指導ポイントを元に進めれば研究が深 まると考えた。指導ポイントに関する仮説を以下に 示す。 仮説1 鍬で畝を作る時、畝に対して適切な立ち 位置がある。 仮説2 適切な立ち位置が決まれば、適切な重心 の取り方がある。 仮説3 身長や腕の長さにより、鍬を持つ手の位 置がある。 仮説4 少ないエネルギーで効率のよい鍬の振 り方がある。 仮説5 作業能率が向上する鍬の金属部の形状 や重量、柄の長さがある。5. 本研究に期待すること
本研究を市民共創知研究会の活動の一環として始 める事で、次の事を期待する。(1) 体力的に辛い農作業にも楽に作業ができ、若者 から高齢者まで楽しい農業をする町として遠野 を発進出来る。 (2) 昔から日本で使われてきた農器具に新たなイノ ベーションが起こるかもしれない。 (3) 農業をはじめ、名人の技を科学する事により、副 産物として科学や数学に興味を持つ学生が増え る事も期待したい。 若者の農業人口が少なく、産直に農作物を販売し 自給率を高めている主力年齢層は、「第二の人生を農 業で」と考えて、定年後から農業を始める人が多い 遠野市。この研究により少しでも活気のある町づく りが出来ればと期待する。