Title
大学におけるアクティブラーニングを導入した授業の工
夫 ―「教職実践演習」におけるワークショップ型授業を
通して―
Author(s)
上地, 幸市; 嘉数, 健悟
Citation
教職実践研究(5): 9-16
Issue Date
2015-03
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/21829
Rights
沖縄大学教職支援センター
9
1 -<実践報告>
大学におけるアクティブラーニングを導入した授業の工夫
―
「教職実践演習」におけるワークショップ型授業を通して―Ingenuity in University Classes Incorporating Active Learning: Through Workshop-Style Classes in Practical Exercise of Teaching Profession
上地幸市 人文学部国際コミュニケーション学科
嘉数健悟 人文学部福祉文化学科
Koichi Uechi (Faculty of Humanites, Department of International Communication) Kengo kakazu (Faculty of Humanites, Department of welfare and culture)
キーワード:教職実践演習 教育実習指導 アクティブラーニング ワークショップ ディプロ マポリシー 凡事徹底 要 約 本稿は,教育実習後の振り返りの学習として,ワークショップの手法を用いた授業実践の過程 をまとめたものである.その主な結果は以下の4 点である. 1) 新聞記事の要約作業を通して,文章を要約する力や要点を整理する力,疑問点を抽出する力 等が育った. 2) 学級づくり・授業づくりの前提となる 5 つの凡事(①始業時間を守る,②教室の風を読む(風 を作る),③呼ばれたら返事,④授業規律を確立する,⑤シ・マ・ツをつける.)を徹底するこ との重要性を認識できた. 3) ワークショップ型授業への参加・体験を通して,多様な意見や考えを認め合い,立場や視点 を変えてものごとを捉える力が育った. 4) 確かな授業の姿や理想とする教師の姿をイメージし,学び続けるための個々の課題発見につ ながった. 1 実践の背景と目的 標等に照らして最終的に確認するものであり, 大学教育におけるアクティブラーニングの 全学年を通した「学びの軌跡の集大成」として 導入は,近年盛んになっている.本実践は, 位置づけられる. 教育実習を終えた4 年次学生の「教職実践演 習」における実践の成果である. 1.1.2 科目のねらい 科目の履修を通じて,将来,教員になる上 1.1 「教職実践演習」の趣旨とねらい,授 で自己にとって何が課題であるかを自覚し, 業内容,方法 必要に応じて不足している知識や技能等を補 1.1.1 科目の趣旨 い,教員として求められる以下の資質能力の 教職実践演習は,教職課程の授業科目や教 定着を図ることを目的としている. 職課程外の様々な活動を通じて,学生が身に ア. 使命感や責任感,教育的愛情に関する事 付けた資質能力が教員としての最小限必要な 項 資質能力として有機的に統合され、形成され イ. 社会性や対人関係能力に関する事項 たかについて,大学が目指す教員像や到達目 ウ. 幼児児童生徒理解や学級経営等に関する
大学におけるアクティブラーニングを導入した授業の工夫 10 -教職実践研究, 2014, 3, pp. 9-16 教職実践研究, 2014, 3, pp. 9-16 2 -事項 4) 地域,特に沖縄の自然,歴史,文化につ エ. 教科・保育内容等の指導力に関する事 いて関心と深い理解をもち,地域の教育課題 項 に積極的に取り組むことができる.(教員とし て求められる資質能力の,すべてに関連する 1.1.3 授業内容と方法例 事項) 文部科学省のホームページを参照すると, 授業内容とその方法の例として,以下の9 点 2.2 ディプロマポリシーを具体化するための があげられている. 授業方法と内容 ●これまでの学習の振り返りについての講義 本学では,教員に求められる資質能力の定 ・グループ討議 着を図るために,次の方法を取り入れている. ●教職の意義や教員の役割,職務内容,子ど 1) 役割演技(ロールプレイ)はいじめ,不登 もに対する責任等についてのグループ討議 校等の教育テーマに関する場面設定を行い, ・ロールプレイイング 生徒役,教員役,保護者役等を生徒で分担し, ●社会性や人間関係についての講義・グルー 指導教員による実技指導も入れながら演技を プ討議 行わせる.それは主に,使命感や責任感,教 ●幼児児童生徒理解や学級経営についての講 育的愛情等に関する資質能力や社会性や対人 義・グループ討議 関係能力に関する資質能力を確認・形成する ●学級経営案の作成・グループ討議 方法として用いる. ●学校現場の見学・調査 2) 事例研究はある特定の教育テーマに関す ●教科・保育内容等の指導力についての講義 る実践事例について,学生同士でグループ討 ・グループ討議 議や意見交換,研究発表などを行わせる.そ ●模擬授業 れは主に,社会性や対人関係能力に関する資 ●資質能力の確認、まとめ 質能力や幼児児童生徒理解や学級経営等に関 する資質能力を確認・形成する方法として用 2.本学における教職実践演習のあり方 いる. 2.1 教職課程のディプロマポリシーと教員と 3) 現地調査(フイールドワーク)はある特定 して求められる資質能力との関連 の教育テーマに関する実践事例について,学 1) 児童生徒に対する深い愛情と理解力を持 生が学校現場等に出向き,実地で調査活動や ち,教科等に関する専門的知識・技能を有す 情報の収集を行う.それは主に,使命感や責 る.(教員として求められる資質能力の主とし 任感、教育的愛情等に関する資質能力や幼児 てア、エに関連する事項) 児童生徒理解や学級経営等に関する資質能力 2) 教員,児童生徒相互の助け合い,支え合 を確認・形成する方法として用いる. い,共に学び合う場を大切にするとともに, 4) 模擬授業は教員としての表現力や授業力, 向上心を持ち,生涯にわたって学び続ける意 子どもの反応を生かした授業づくり,皆で協 欲と能力を有する.(教員として求められる資 力して取り組む姿勢を育む力を育成するため 質能力の,主としてア,ウに関連する事項) に行う.それは主に,教科・保育内容等の指 3) 児童生徒のみならず,様々な年代の人 導力に関する資質能力を確認・形成する方法 々と広くコミュニケーションを取ることがで として用いる. き,そこで得られた豊かな人間性を背景に他 実施に当たっては,すべての能力の指導に 者と協働することができる.(教員として求め 関して 3 時間程度の時間計画で行い,残りの られる資質能力の,主としてイに関連する事 時間は,個々の不足している知識・技能等を 項) 補うための時間とする.
11 2 -事項 4) 地域,特に沖縄の自然,歴史,文化につ エ. 教科・保育内容等の指導力に関する事 いて関心と深い理解をもち,地域の教育課題 項 に積極的に取り組むことができる.(教員とし て求められる資質能力の,すべてに関連する 1.1.3 授業内容と方法例 事項) 文部科学省のホームページを参照すると, 授業内容とその方法の例として,以下の9 点 2.2 ディプロマポリシーを具体化するための があげられている. 授業方法と内容 ●これまでの学習の振り返りについての講義 本学では,教員に求められる資質能力の定 ・グループ討議 着を図るために,次の方法を取り入れている. ●教職の意義や教員の役割,職務内容,子ど 1) 役割演技(ロールプレイ)はいじめ,不登 もに対する責任等についてのグループ討議 校等の教育テーマに関する場面設定を行い, ・ロールプレイイング 生徒役,教員役,保護者役等を生徒で分担し, ●社会性や人間関係についての講義・グルー 指導教員による実技指導も入れながら演技を プ討議 行わせる.それは主に,使命感や責任感,教 ●幼児児童生徒理解や学級経営についての講 育的愛情等に関する資質能力や社会性や対人 義・グループ討議 関係能力に関する資質能力を確認・形成する ●学級経営案の作成・グループ討議 方法として用いる. ●学校現場の見学・調査 2) 事例研究はある特定の教育テーマに関す ●教科・保育内容等の指導力についての講義 る実践事例について,学生同士でグループ討 ・グループ討議 議や意見交換,研究発表などを行わせる.そ ●模擬授業 れは主に,社会性や対人関係能力に関する資 ●資質能力の確認、まとめ 質能力や幼児児童生徒理解や学級経営等に関 する資質能力を確認・形成する方法として用 2.本学における教職実践演習のあり方 いる. 2.1 教職課程のディプロマポリシーと教員と 3) 現地調査(フイールドワーク)はある特定 して求められる資質能力との関連 の教育テーマに関する実践事例について,学 1) 児童生徒に対する深い愛情と理解力を持 生が学校現場等に出向き,実地で調査活動や ち,教科等に関する専門的知識・技能を有す 情報の収集を行う.それは主に,使命感や責 る.(教員として求められる資質能力の主とし 任感、教育的愛情等に関する資質能力や幼児 てア、エに関連する事項) 児童生徒理解や学級経営等に関する資質能力 2) 教員,児童生徒相互の助け合い,支え合 を確認・形成する方法として用いる. い,共に学び合う場を大切にするとともに, 4) 模擬授業は教員としての表現力や授業力, 向上心を持ち,生涯にわたって学び続ける意 子どもの反応を生かした授業づくり,皆で協 欲と能力を有する.(教員として求められる資 力して取り組む姿勢を育む力を育成するため 質能力の,主としてア,ウに関連する事項) に行う.それは主に,教科・保育内容等の指 3) 児童生徒のみならず,様々な年代の人 導力に関する資質能力を確認・形成する方法 々と広くコミュニケーションを取ることがで として用いる. き,そこで得られた豊かな人間性を背景に他 実施に当たっては,すべての能力の指導に 者と協働することができる.(教員として求め 関して 3 時間程度の時間計画で行い,残りの られる資質能力の,主としてイに関連する事 時間は,個々の不足している知識・技能等を 項) 補うための時間とする. 3 -3 アクティブラーニングを導入した授業の ーセッション,ワールドカフェ,実習報 考え方・進め方 告書作成演習,実習報告企画会,論文作 3.1 アクティブラーニングを導入する意味 成演習 等 大学教育におけるアクティブラーニングの 導入は,近年盛んになっている.特に,教職 本稿は,主体的,能動的な学びや協働によ 課程を履修する学生にとって,知識を一方的 る多面的,論理的な思考力を育成することを に伝達する講義などの受動的な学習スタイル 目指して取り組んだ,ワークショップ型授業 ではなく,課題研究やディスカッションなど 実践のまとめである. 能動的な学習スタイルを体験することは,教 師を目指す上で必要不可欠な資質能力である 3.2 ワークショップを授業に導入する意味 と言える. 近年の子ども達の現実は,主体的な学びへの このことをアメリカ国立訓練研究所の平均 関心が薄い子どもや論理的思考から逃避する 学習定着率を示す「ラーニングピラミッド」 子ども,与えられたことのみを学ぶ子ども, (表 1)の研究結果が示しており,アクティブ 自ら創造する力が乏しい子ども,対話力に乏 ラーニングによる主体的,能動的,協働的な しい子どもなど,多くの課題が表出している. 学習ほど学習定着率が高いことがわかる. そのため教師は,そのような子どもの実態 (産業能率大学「大学におけるアクティブラ への対応力をつけるために,生徒の状況や自 ーニング調査報告書」より) らの力量,経験,考え方等に基づいて,アク 表1 ラーニングピラミッド(平均学習定着率) ティブラーニングを各教科や道徳,特別活動 等すべての授業において導入していく必要が 授業で学んだ内容を6 ヶ月後にどれだけ ある. 記憶しているかを授業形態の違いで比較 そこで,本実践では,ある課題に対してア した研究結果 イディアを出し合い意志決定するワークショ 講義による学びの定着率・・・ 5 % ップの手法を用いて,学生の体験的参加型の 資料や書籍を読むこと・・・・10 % 授業に取り組んだ.それは,あらかじめ設定 視聴覚による学び・・・・・・20 % された「答え」を見つけるのではなく,「答え」 実演によるデモンストレーション そのものを参加者が生み出すプロセスを大切 ・・30 % にする授業である.ワークショップ型授業は グループディスカッション・・50 % 次のような特徴と効果が期待できる. 実践による経験・体験・練習・75 % 誰かに教える・・・・・・・・90 % 授業の特徴 授業の利点 グループ単位 ・少人数グループのため, そこで,教職実践演習では,指導内容や教 で運営 意見が言いやすい. 育課題に応じて各種のアクティブラーニング ・コミュニケーション能力 (表 2)を導入した授業を教育実習指導と連携 や社会性が高まる. ・融合を図りながら実施してきた. 互いの意見表 ・全員参加の雰囲気の持続 表2 アクティブラーニングを導入した様々な授業形態 明の跡付けを ・多様な意見交換の場,異 大切に なる視点から考えを深める ワークショップ,グループディスカッシ 場となる. ョン,グループワーク,ロールプレイ, KJ法などの ・情報整理・問題解決能力 ディベート,ペア学習,協同学習,課題 情報整理手法 が高まる. 解決学習,プレゼンテーション,ポスタ 意見を認め合 ・意見を述べることを遠慮
大学におけるアクティブラーニングを導入した授業の工夫 12 -教職実践研究, 2014, 3, pp. 9-16 教職実践研究, 2014, 3, pp. 9-16 4 -うことを前提 しない雰囲気ができる. 生かす上で役立つ情報を得る. とした話し合 ・認められる安心感から活 ○グループディスカッションを通して教育実 い活動 動意欲が高まる. 習における互いの実践や考えを共有したり, 調 整 役 ( フ ァ ・同等の活動の保障や発言 個々の実習を振り返る機会とする. シ リ テ ー タ 機会が確保される. ー)の存在 4.2 時間計画 独自の「気づ ・発表形式に独自性が生ま <1 時間目> き」を発表 れる. 活動1・・個人ワーク・・1.100 字の新聞記事 を 400 字程度に要約する. 資料・「私の教師学~確かな授業をつくる」 期待される効果 (日本教育新聞九州版 2013/11/18)近藤克巳著 ①学習に向かう姿勢が高まり,自分なりに 活動2・・個人ワーク・・3 つの課題について 考えようとする態度が身につく. 個人の考え・意見等を記述する.(課題1 は水 (関心・意欲・態度) 色の付箋紙,課題2 は黄色,課題 3 は赤色の ②多様な情報を整理する技能や目的に応じ 付箋紙で記述する.) た工夫をして表現する力が高まる. (技能・表現) 課題 1 「文中の 5 つの『凡事徹底』の ③参加・体験を通して,多様な意見や価値 中から最も重要だと思うことについて意 観に触れることにより,立場や視点を変え 見・感想を書きなさい.」 て考えたり、判断したりする力が高まる. 課題 2 「将来,教師を目指すために, (思考・判断) 5つの『凡事徹底』を参考にして理想と ④コミュニケーション能力やリーダーシッ する教師の姿を書きなさい.」 プ,メンバーシップ,協調性や協働意識な 課題 3 「5つの『凡事徹底』について ど,よりよい人間関係を築くために必要な 学生生活に置き換えて,自分の課題を書 資質が高まる. (社会性) きなさい. エコ総合学習「創造を生み出すワークショップ授業」 <2 時間目> 寺本潔・愛知県豊田市立堤小学校(共著) 活動 1・・3 グループによるワークショップ 一部修正引用(下線部分は筆者が挿入) 「ワークショップの進め方」 ○個々の考えを付箋紙に書いて簡単に紹介し 4 実践の概要 あいながら,模造紙に貼る. 本実践は,新聞記事を教材にして教育実 ○類似した意見は,整理・分類し,簡単なキ 習を振り返らせるとともに,自らのあるべき ーワードでネーミングする. 教師の姿をイメージし,学び続ける学生の姿 ○ポスターは完成させることが目的ではなく, を確立させることを目指して,付箋紙を用い 課題を焦点化したり,改善の方向を見いだす たワークショップ型授業を2 時間計画で行っ ツールであり,「共通のメモ」と捉え,自由に た. 書き込む. ○途中でグループワークが行き詰まったりし 4.1 授業のねらい た場合は,ワールドカフェ方式で互いのポス ○教員として求められる資質能力の4 つの事 ターを見せ合ったり,質問・意見交換の時間 項の具現化を図る. をとる. ○確かな授業づくりやよりよい学級づくりに 活動2・・ポスターセッションによる発表会 5 -「ポスターセッションの進め方」 いるが失礼な態度だ. ○グループの学習の成果を模造紙などに表現 ②「教室の風を読む」 (ポスター制作)して発表を行う. ・教師は教室の雰囲気,子どもの状態を把握 ○発表者は各ブースで待機し,視聴者は興味 することが学級を経営していく上で,何より のあるグループのブースを周りながらポスタ も大切である.注意すべき点は,見過ごさな ーを見て質問したり,感想・意見を述べたり いことと見守ること.子どもの言動に少しで する. も違和感を感じたら,本人に直接確かめる必 ○ポスターセッションは,全員が発表する機 要がある.自分なりに行動している子どもに 会を持つと同時に,全員が他のグループの発 対しては,指示的でなく,見守ることも大切 表を自由に聞きに行くことができる. である. 活動 3・・ワークショップ後の振り返り ・教室の風を読むことが最も大切だと思った. 「振り返り活動の進め方」 授業が進められる状態をきちんと整えてから ○5 つの「凡事徹底」の重要性について共有 授業に入ることが大切である. し,学生個々の課題を明らかにする. ・子ども一人一人の良さや課題をしっかりと ○「確かな授業」の姿を共通確認する. 理解するためには,信頼関係を築き,コミュ ○自らの目指す教師の姿を具体的に描き,そ ニケーションを取ることが大切だと思う. の資質能力を確立するために,学び続ける学 ・メンバーの意見を聴いて他の凡事も大切だ 生としての課題を明確にする. と思ったが,教室の風を読むことが最も大切 だと思った.それによって,授業の展開もう 4.3 ワークショップにおける学生の学び まく進めることができると思ったから. 新聞記事・「私の教師学~確かな授業をつ ・「風を読む」→「読んだ上で,新しい風を作 くる」で問題提起された,5 つの凡事徹底に る」が大切だと思う.「風を作る」を具体的に ついて,ワークショップにおける学生の学び どうしていけばいいかもっと話し合いたいと の主な内容は,次のように整理される. 思った. ・教室の風を読むということは,周囲の雰囲 4.3.1 課題 1 における学生の学びの主な内容 気を読むことにつながることから,人間関係 ①「始業時間を守る」 を形成するのに役立つと思う. ・5 つの凡事では,時間を守ることが最も大 ③「呼ばれたら返事」 切だと思う.時間にルーズでは,始業時間を ・呼ばれたら「はい」を当たり前にすれば,学 守ることができず,授業の「シ・マ・ツ」を 級が活性化すると思う.これは学校だけでな つける時間の確保ができないと思う. く,社会に出ても重要なことであり,対人関 ・「時間のゆとりは心のゆとり」という言葉 係を築いていく際にも大切なことである. があるように,時間どおりに事をなすことが ・「呼ばれたら返事」がないということは,「反 とても大切だと思う. 応がない」ということなのかと思った.「はい」 ・子どもが定時に席に着かないのは,そこに という返事と同時に呼ばれたら反応する,さ 教師がいないからだ.教師が見本となり行動 せるということはとっても大切であると思う. することで,子どもたちも行動するようにな ④「授業規律を確立する」 る. ・授業の規律を確立することが最も重要だと ・「5 分待ち合わせに遅刻するということは, 思った.私語や居眠り,立ち回りなど,他人 待ち合わせていた人の人生の5 分間をどうで に迷惑がかからないように見えて,小さな気 もいいとしか考えていない」という話がある. の乱れがゆるい空気を生み,自然にクラス全 仲閒が模擬授業をする時でも遅れてくる人が 体に伝わり,学習の妨げになり,授業に支障
- 13 - 5 -「ポスターセッションの進め方」 いるが失礼な態度だ. ○グループの学習の成果を模造紙などに表現 ②「教室の風を読む」 (ポスター制作)して発表を行う. ・教師は教室の雰囲気,子どもの状態を把握 ○発表者は各ブースで待機し,視聴者は興味 することが学級を経営していく上で,何より のあるグループのブースを周りながらポスタ も大切である.注意すべき点は,見過ごさな ーを見て質問したり,感想・意見を述べたり いことと見守ること.子どもの言動に少しで する. も違和感を感じたら,本人に直接確かめる必 ○ポスターセッションは,全員が発表する機 要がある.自分なりに行動している子どもに 会を持つと同時に,全員が他のグループの発 対しては,指示的でなく,見守ることも大切 表を自由に聞きに行くことができる. である. 活動 3・・ワークショップ後の振り返り ・教室の風を読むことが最も大切だと思った. 「振り返り活動の進め方」 授業が進められる状態をきちんと整えてから ○5 つの「凡事徹底」の重要性について共有 授業に入ることが大切である. し,学生個々の課題を明らかにする. ・子ども一人一人の良さや課題をしっかりと ○「確かな授業」の姿を共通確認する. 理解するためには,信頼関係を築き,コミュ ○自らの目指す教師の姿を具体的に描き,そ ニケーションを取ることが大切だと思う. の資質能力を確立するために,学び続ける学 ・メンバーの意見を聴いて他の凡事も大切だ 生としての課題を明確にする. と思ったが,教室の風を読むことが最も大切 だと思った.それによって,授業の展開もう 4.3 ワークショップにおける学生の学び まく進めることができると思ったから. 新聞記事・「私の教師学~確かな授業をつ ・「風を読む」→「読んだ上で,新しい風を作 くる」で問題提起された,5 つの凡事徹底に る」が大切だと思う.「風を作る」を具体的に ついて,ワークショップにおける学生の学び どうしていけばいいかもっと話し合いたいと の主な内容は,次のように整理される. 思った. ・教室の風を読むということは,周囲の雰囲 4.3.1 課題 1 における学生の学びの主な内容 気を読むことにつながることから,人間関係 ①「始業時間を守る」 を形成するのに役立つと思う. ・5 つの凡事では,時間を守ることが最も大 ③「呼ばれたら返事」 切だと思う.時間にルーズでは,始業時間を ・呼ばれたら「はい」を当たり前にすれば,学 守ることができず,授業の「シ・マ・ツ」を 級が活性化すると思う.これは学校だけでな つける時間の確保ができないと思う. く,社会に出ても重要なことであり,対人関 ・「時間のゆとりは心のゆとり」という言葉 係を築いていく際にも大切なことである. があるように,時間どおりに事をなすことが ・「呼ばれたら返事」がないということは,「反 とても大切だと思う. 応がない」ということなのかと思った.「はい」 ・子どもが定時に席に着かないのは,そこに という返事と同時に呼ばれたら反応する,さ 教師がいないからだ.教師が見本となり行動 せるということはとっても大切であると思う. することで,子どもたちも行動するようにな ④「授業規律を確立する」 る. ・授業の規律を確立することが最も重要だと ・「5 分待ち合わせに遅刻するということは, 思った.私語や居眠り,立ち回りなど,他人 待ち合わせていた人の人生の5 分間をどうで に迷惑がかからないように見えて,小さな気 もいいとしか考えていない」という話がある. の乱れがゆるい空気を生み,自然にクラス全 仲閒が模擬授業をする時でも遅れてくる人が 体に伝わり,学習の妨げになり,授業に支障
大学におけるアクティブラーニングを導入した授業の工夫 14 -教職実践研究, 2014, 3, pp. 9-16 教職実践研究, 2014, 3, pp. 9-16 6 -を来す原因になると思った.例えば小さな乱 上手な授業よりは確かな授業づくりが大切だ れを始めに注意しなかったため,学習用具を と思う. 取るために立ち歩くのが当たり前になり,人 ・確かな授業とは,教科内容を上手に教える が動くたびに集中が途切れてしまう.また, だけでなく,授業に取り組む姿勢や生活規律 居眠りは一見自分自身だけの問題であるよう の指導も同時に行うことである.また,子ど に見えて,隣の人の集中力の妨げになったり, もとの信頼関係を築いていくものだと思う. 空気の乱れになると思う. ・子どもは教材研究や資料作成など確かな授 ・授業規律を確立することはとても良いこと 業展開を工夫する教師の姿を見ていると思う. だと思う.その場で思いついたことをその時 ・子どもの教師への信頼は,その教師の授業 だけ行うのではなく,日頃から習慣づけてお への信頼から始まる.子どもはじっと教師を くことで授業が円滑に進むと思う. 見ている.確かな授業を展開することで,子 ・私語については,見極めが必要だと思う. どもは先生を頼り,教師もコミュニケーショ 「ここが分からない,教えて」というような ンを大切にするということで互いの信頼関係 子ども同士の学び合いもあるし,「意味がわ が深まると思う. からない・・」といったつぶやきなどもある. ・学校生活で子どもが教師と関わる時間の大 状況をしっかり把握する必要があると思う. 半は,授業である.子どもの興味を引きつけ ⑤「シ・マ・ツをつける」 分かりやすく教えられるかは子どもが教師を ・教育実習の時,50 分で終われそうになく 見抜く大切なポイントである. 鐘が鳴るギリギリまで「展開」をしてしまい, まとめをすることができなかった.授業をつ 4.3.3 課題 2 における学生の学びの主な内容 くる時大切なことは,「時間配分」をしっか ・5 つの凡事は当たり前のように聞こえるが り計画することだと思う.まとめをしないで 徹底している教員はどれくらいいるのか,気 終わることは,子どもが何を学んだかを確認 になるところである.この5 つが意識的に守ら しないで授業を終わることであると反省し れている学級は,どのような雰囲気なのか想像 た. がつく.だからこそ,当たり前のことを守れる ・「シ・マ・ツ」をつけることが大事である. 教員の学級は,とても充実していると思う. つまり,「締め」「まとめ」「詰め」がないか 子どもの学習規律,生活規律を定着させるこ ら授業が流れて「1 時間の授業の重み」がなく とにより,学習意欲や持続力も比例して向上 なって,授業を大事にしない子どもができる すると思う.当たり前のことが当たり前にで という著者の意見に納得した. きる教員になりたい. ・理想とする教師の姿は,「シ・マ・ツ」をつ 4.3.2 「上手な授業と確かな授業」の違い ける教師.授業をまとめる教師.子どもとの ・上手な授業とは,誰にでも伝わる平均的な やり取りをうやむやにせず,一緒に考えてい 授業であり,お手本みたいなもの.確かな授 く教師.失敗や反省に向き合う姿勢を見せる 業とは,子どもの実態を把握し,どのような 教師です. 工夫をしたら,授業目標が達成できるかを考 ・子ども一人一人が仲閒を思いやる学級づく えて作られた授業であると思う. りができる教師.そのために,自分で良い環 ・上手な授業とは,塾の先生とか,家庭教師 境を作っていくリーダー的な子どもを育成す でもできるけど,確かな授業は,一日のほと ること.そこで,教師自身が凡事徹底を実践 んどを子どもと過ごす教師にしかできないと し,子どもに影響を与える教師を目指す. 思う.子どもの個性,能力を理解して,子ど ・メリハリがつけられる教師.始業,終業時 もと教師の信頼関係を円滑にするためには, 刻を守ることができる教師.分かりやすく面 7 -白い授業ができる教師.クラス内ルールの明 むり,スマホ,中抜けする学生の存在が気に 確化と徹底ができる教師. なる. ・授業をたんたんとこなす教師ではなく,教 ・「チャイムが鳴ったら授業スタート」という 室の小さな変化や子どもたちの表情にも気を 学生生活をしていたので,先生はチャイムが 配り,授業への雰囲気づくりをした上で,け 鳴る前に教室に入るべきだと思う.授業規律 じめをつけて授業ができる教師. にゆるい先生は,物分かりのいい先生を演じ ・マナーやルール,規律なども教えながら, ているという意見に賛成である. 子どもの良さを延ばしていける教師. 5 授業後の学生の学びの主な内容 4.3.4 課題 3 における学生の学びの主な内容 ・前時にまとめた自分の考えをグループに分 ・教師という「私」より、学生という「私」 かれて話し合い,まとめたり発表をしたけど, の方が強い.自分の弱さに甘えてしまったり すごく楽しかった.発表は,それぞれグルー 自分を律することができないところも多々あ プの個性が出ていて飽きないグループワーク る.学生として,教師になる者としての自覚 だった.オーソドックスにまとめるのではな と行動を行う必要がある. く,個性をいかに出すかがグループワークの ・指導要領や教育行政,地方自治体から出さ カギだと実感した. れる計画などをしっかりと理解し,授業をつ ・どのグループも同じことを書いているわけ くることが大きな課題だと思っていたが,凡 ではなく,グループの特色があった.最も重 事徹底することが前提になるんだと感じた. 要だと思うことが人によって違っていて驚い ・自身の中に不満や不安を抱えた時,周りに た.みんなの意見を聴くとどれも重要で,一 目が行き届かなくなる.どういう状態であっ つに決めることはできないと思った. ても,周囲に目を向けられる力を養う.外的 ・他のグループでは,学級崩壊の問題も取り 要因,内的要因に分けてものごとを考え,捉 上げていて,起こりうるすべてのことを予測 える力を養いたい. して対応策を練ることの大切さを学んだ. ・高校時代に行っていた部活動は,凡事徹底 ・メンバーの中から,学習態度が悪く学習意 することは当たり前の環境にあった.そのた 欲がないクラスに対して,どうすれば授業規 め,行動にもメリハリがあり,時間の使い方 律を確立させることができるかという質問が もムダがなく,一人一人が目配り,気配りを あった.教育実習でそのようなクラスに配属 行い,集中して練習に取り組めた.この体験 され,授業以前にやるべき事がたくさんあっ を今の学生生活に生かし切れていないことが たので,効果的な方法についてみんなの意見 課題である.時間厳守,返事などを心がけて を知りたいということであった. いきたい. ・実習の時に感じたジレンマ等についてグル ・私は 5 分,10 分くらいなら大丈夫という ープで話し合うことができた.いろいろな視 甘い考えがある.「少しなら遅れてもいい」 点からの意見があり,多面的にものごとを考 と自分で決めつけているが,遅れてもいいと えることの大切さを学んだ. いうことがあるわけがないこともわかってい ・話し合いを進める中で,当たり前のことを る.しかし,遅刻してしまうということは, 当たり前にすることはとても難しいと感じた. 自分に悪い習慣が身についているからだと思 課題3 で立てた計画を実行していきたい. う.今後は、考えて行動できるようにしたい. ・社会に出ると時間を守ることは常識なので 6 成果と課題 5 分前行動を徹底する. 6.1 成果 ・大学では授業規律が甘い部分があり,いね 6.1.1 新聞記事の教材化による成果
- 15 - 7 -白い授業ができる教師.クラス内ルールの明 むり,スマホ,中抜けする学生の存在が気に 確化と徹底ができる教師. なる. ・授業をたんたんとこなす教師ではなく,教 ・「チャイムが鳴ったら授業スタート」という 室の小さな変化や子どもたちの表情にも気を 学生生活をしていたので,先生はチャイムが 配り,授業への雰囲気づくりをした上で,け 鳴る前に教室に入るべきだと思う.授業規律 じめをつけて授業ができる教師. にゆるい先生は,物分かりのいい先生を演じ ・マナーやルール,規律なども教えながら, ているという意見に賛成である. 子どもの良さを延ばしていける教師. 5 授業後の学生の学びの主な内容 4.3.4 課題 3 における学生の学びの主な内容 ・前時にまとめた自分の考えをグループに分 ・教師という「私」より、学生という「私」 かれて話し合い,まとめたり発表をしたけど, の方が強い.自分の弱さに甘えてしまったり すごく楽しかった.発表は,それぞれグルー 自分を律することができないところも多々あ プの個性が出ていて飽きないグループワーク る.学生として,教師になる者としての自覚 だった.オーソドックスにまとめるのではな と行動を行う必要がある. く,個性をいかに出すかがグループワークの ・指導要領や教育行政,地方自治体から出さ カギだと実感した. れる計画などをしっかりと理解し,授業をつ ・どのグループも同じことを書いているわけ くることが大きな課題だと思っていたが,凡 ではなく,グループの特色があった.最も重 事徹底することが前提になるんだと感じた. 要だと思うことが人によって違っていて驚い ・自身の中に不満や不安を抱えた時,周りに た.みんなの意見を聴くとどれも重要で,一 目が行き届かなくなる.どういう状態であっ つに決めることはできないと思った. ても,周囲に目を向けられる力を養う.外的 ・他のグループでは,学級崩壊の問題も取り 要因,内的要因に分けてものごとを考え,捉 上げていて,起こりうるすべてのことを予測 える力を養いたい. して対応策を練ることの大切さを学んだ. ・高校時代に行っていた部活動は,凡事徹底 ・メンバーの中から,学習態度が悪く学習意 することは当たり前の環境にあった.そのた 欲がないクラスに対して,どうすれば授業規 め,行動にもメリハリがあり,時間の使い方 律を確立させることができるかという質問が もムダがなく,一人一人が目配り,気配りを あった.教育実習でそのようなクラスに配属 行い,集中して練習に取り組めた.この体験 され,授業以前にやるべき事がたくさんあっ を今の学生生活に生かし切れていないことが たので,効果的な方法についてみんなの意見 課題である.時間厳守,返事などを心がけて を知りたいということであった. いきたい. ・実習の時に感じたジレンマ等についてグル ・私は 5 分,10 分くらいなら大丈夫という ープで話し合うことができた.いろいろな視 甘い考えがある.「少しなら遅れてもいい」 点からの意見があり,多面的にものごとを考 と自分で決めつけているが,遅れてもいいと えることの大切さを学んだ. いうことがあるわけがないこともわかってい ・話し合いを進める中で,当たり前のことを る.しかし,遅刻してしまうということは, 当たり前にすることはとても難しいと感じた. 自分に悪い習慣が身についているからだと思 課題3 で立てた計画を実行していきたい. う.今後は、考えて行動できるようにしたい. ・社会に出ると時間を守ることは常識なので 6 成果と課題 5 分前行動を徹底する. 6.1 成果 ・大学では授業規律が甘い部分があり,いね 6.1.1 新聞記事の教材化による成果
大学におけるアクティブラーニングを導入した授業の工夫 16 -教職実践研究, 2014, 3, pp. 9-16 教職実践研究, 2014, 3, pp. 9-16 8 -・新聞記事の要約作業を通して,文章を読み 6.2 課題 込み,内容を把握・分析したり,疑問点を抽 ・ポスターセッションによる発表会に向けた 出する力が育った. 個々の役割や発表方法,進行の仕方,プレゼ ・教師としての資質能力を高める手立てとし ンテーションの工夫等についてきめ細かい指 て,新聞記事を教材として取り上げ学級づく 導の必要がある. り,授業づくりの前提となる5 つの凡事につ ・ワークショップに時間を要したため,教育 いて協議を深めた. 実習を総括し課題解決に向けて熟議するまで ・教育実習を振り返る具体的な指標(5 つの には至らなかった. 凡事)を提示したため,活発な意見交換がで ・ワークショップ型授業後の振り返り学習と き考えを深め合い,各自の課題発見につなが して,課題レポートを課す必要がある. った. ・フィールドワークやロールプレイなど,能 ・5 つの凡事を徹底することは,子ども理解 動的な学習スタイルとしてのアクティブラー や学習規律,生活規律の確立につながり,確 ニングを教育実習の振り返りまたは進化・発 かな授業の基盤となることを確認できた. 展学習としてより積極的に導入する必要があ る. 6.1.2 ワークショップを導入した授業の成果 ・ワークショップ型授業の導入により,学習 <参考・引用文献> 意欲の低い子どもなど,実態に応じた授業づ 1) 中央教育審議会・教員養成部会資料「教 くりの大切さを共有できた. 職実践演習の進め方及びカリキュラム例」 ・参加・体験を通して,多様な意見や価値観 2) 溝上慎一「アクティブラーニングとは」 に触れることにより,立場や視点を変えて考 京都大学高等教育研究開発推進センター えたり,判断する力の育成につながる. 3) 小林昭文 「アクティブラーニング型授 ・ポスターづくりを通して,多様な情報を整 業をいかに始めるか」 理する技能や目的に応じた工夫をして表現す 4) 寺本潔・愛知県豊田市立堤小学校(共著) る力が高まった. エコ総合学習「創造を生み出すワークショッ ・コミュニケーション能力やゆるやかなリー プ授業」 ダーシップ,メンバーシップ,協調性や協働 5) 伊勢みゆき 「ワークショップ型授業を 意識など,よりよい人間関係を築くための基 スムースに行うために」WEB版日本語教育 礎を培うことにつながる. 実践研究フォーラム報告 ・学級づくり,授業づくりの前提となる5 つ 6) 秋田県総合教育センター紀要「付箋紙を の凡事(①始業時間を守る,②教室の風を読 用いたワークショップ型授業研究会の進め方」 む(作る),③呼ばれたら返事,④授業規律を 確立する,⑤シ・マ・ツをつける.)を徹底 することの重要性を共有できる. ・確かな授業とは,子どもとの信頼関係を深 めるとともに,子どもの個性や能力等に応じ た授業目標を設定し,その達成を目指して行 われる授業であるという共通認識ができる. ・ワークショップを用いたグループワークに より,理想とする教師の姿をイメージし,学 び続ける学生としての課題発見につながる.