特 集:CME
セ ル フ トレ ー ニ ン グ 問 題 の 正 解 と解 説
問 題1 正 解:c 【解 説1】 尿 蛋 白 のselectivity index(IgGク リ ア ラ ン ス/ト ラ ン ス フ ェ リ ン ク リ ア ラ ン ス 比)で は0.25を 基 準 と し,0.25未 満 を 高 選 択 性 と い う。 Jaffe法 に よ る ク レ ア チ ニ ン 測 定 で は,non-creatinine chromogenに よ る 非 特 異 的 発 色 が 起 こ る た め,真 の ク レ ア チ ニ ン値 よ り も 高 値 と な る 。 ま た,ク レ ア チ ニ ン は 糸 球 体 濾 過 だ け で な く,尿 細 管 か ら の 分 泌 が あ り,特 にGFR 40mL/min/1.73m2未 満 で は,分 泌 さ れ る ク レ ア チ ニ ン の 割 合 が 多 く な る た めCcrはGFRの 約2倍 ま で 高 値 と な る (表1)')。 し た が っ て,ク レ ア チ ニ ン 測 定 をJaffe法 で 行 っ た 場 合 の ク レ ア チ ニ ン ク リ ア ラ ン ス は,Jaffe法 に よ る 血 清 ク レ ア チ ニ ン値 が 真 の ク レ ア チ ニ ン値 よ り も 高 値 で,結 果 的 に 尿 細 管 か ら 排 泄 さ れ る ク レ ア チ ニ ン に よ る 誤 差 が 相 殺 さ れ,真 のGFRに 近 似 し た 値 を 得 る こ と が 可 能 で あ る 。 わ が 国 で は 血 清,尿 中 と も酵 素 法 に よ る ク レ ア チ ニ ン 測 定 が 普 及 し て お り,真 の 血 清 ク レ ア チ ニ ン値 に 近 い 値 が 得 ら れ る 反 面,ク レ ア チ ニ ン ク リ ア ラ ン ス の 値 は,真 の GFRと の 乖 離 が 大 き く な る 。 ま た,腎 機 能 の 評 価 に 体 表 面 積 補 正 が 必 要 な の は,発 達 段 階 の 小 児 の 腎 機 能 の 評 価(個 人,集 団),ま た は 体 格 ・筋 肉 量 の 異 な る 個 人,集 団 を 比 較 す る と き(成 人)で あ る 。 一 方,体 表 面 積 補 正 が 不 必 要 な の は 腎 疾 患 患 者 の 長 期 経 過 観 察,ま た は 見 か け 上 の 体 重 が 多 い と き,す な わ ち 浮 腫,腹 水 が あ る か 疑 わ れ る と き,あ る い は 妊 婦 で あ る2)。 尿 中 の 糖,尿 素 窒 素,ク レ ア チ ニ ン は 蓄 尿 容 器 の 大 腸 菌, 変 形 菌 の 影 響 で 濃 度 低 下 が 認 め ら れ る た め,4∼10℃ の 冷 暗 所 で の 保 管 が 必 要 で あ る 。 表1 【参 考 文 献 】1. Levey AS. Measurement of renal function in chronic renal
disease .Kidney Int 1990; 38 (1): 167-184.
2.折 田 義 正,他.日 本 腎 臓 学 会 腎 機 能(GFR)・ 尿 蛋 白測 定 委 員 会 報 告).日 腎 会 誌2001; 43: 1-19. (山 縣 邦 弘) 【解 説2】 Selectivity indexはIgGク リ ア ラ ン ス を トラ ン ス フ ェ リ ン の ク リ ア ラ ン ス で 割 っ た も の で あ り,0.2以 下 を 高 選 択 性 とす る 。 血 清 ク レ ア チ ニ ン 値 はJaffe法 で 測 定 す る とnon-creatinine chromogenが 測 定 さ れ る た め,酵 素 法 よ り高 値 と な る 。 酵 素 法 で は 真 の 値 に 近 い デ ー タ が 得 ら れ る 。 妊 娠 や 浮 腫 ・腹 水 で はGFRは 低 く測 定 さ れ る が,体 表 面 積 補 正 も正 確 に 行 う こ と は 困 難 で あ る 。 24時 間 尿 を 放 置 す る と カ ル シ ウ ム,リ ン は 沈 殿 し,糖 は 分 解 さ れ る 。 ナ ト リ ウ ム,ク レ ア チ ニ ン,尿 素 窒 素 は そ の ま ま使 用 で き る 。 ク レ ア チ ニ ン は 尿 細 管 か ら 分 泌 さ れ る が,腎 機 能 が 低 下 す る と よ り排 泄 量 が 大 き く な る た め,実 際 のGFRよ り2∼3 倍 ま で 乖 離 し た 数 値 と な る 。 (今 井 圓 裕) 問 題2 正 解:a,d 【解 説1】 ル チ ー ン に 測 定 さ れ な い ア ニ オ ン の 大 部 分 は ア ル ブ ミ ン で あ り,低 ア ル ブ ミ ン 血 症 で は ア ニ オ ン ギ ャ ッ プ(anion
セ ル フ トレー ニ ング問 題 の正 解 と解 説 967 gap: AG)が 減 少 す る 。 ア ル ブ ミ ン1g/dLに つ き,ア ニ オ ン と し て 約2mEq/Lに 相 当 す る 。 近 位 型 尿 細 管 性 ア シ ドー シ ス,遠 位 型 尿 細 管 性 ア シ ド ー シ ス で はAG正 常 の 代 謝 性 ア シ ドー シ ス を 示 す 。 ブ ロ マ イ ド中 毒 で は ブ ロ マ イ ド が ク ロ ー ル の よ う に 測 定 さ れ,し か も ク ロ ー ル よ り mEq当 量 と し て 大 き く測 定 さ れ て し ま う た め,見 か け 上 AGが 低 値 と な る 。IgG型 多 発 性 骨 髄 腫 で は モ ノ ク ロ ー ナ ルIgGが,よ り 陽 イ オ ン で 荷 電 し て お り,AGが 低 値 と な る 。 糖 尿 病 性 ケ ト ア シ ドー シ ス はAGが 上 昇 す る 代 謝 性 ア シ ド ー シ ス で あ る 。 【参 考 文 献 】 1.黒 川 清 水 ・電 解 質 と酸 塩 基 平 衡-Step by Stepで 考 え る-(改 訂 第2版).東 京:南 江 堂,2004. (松 村 正 巳) 【解 説2】 AG=Na+-(Cl-+HCO3-)の 正 常 値 は12±2mEq/Lで あ り,こ の 増 加 は 通 常 測 定 さ れ な い ア ニ オ ン の 増 加 に よ る こ と が 多 く,代 謝 性 ア シ ドー シ ス の 存 在 を 意 味 し,糖 尿 病 性 ケ トア シ ド ー シ ス,乳 酸 ア シ ド ー シ ス,尿 毒 症 性 ア シ ドー シ ス な ど で 認 め ら れ る 。 糖 尿 病 性 ケ トア シ ドー シ ス で は, イ ン ス リ ン 欠 乏 と相 対 的 な 拮 抗 ホ ル モ ン(グ ル カ ゴ ン な ど) の 過 剰 に よ り,中 性 脂 肪 の 分 解 の 亢 進,遊 離 脂 肪 酸 の 増 加 に 続 い て ケ トン 体 の 産 生 亢 進 が み ら れ る 。 AGが 低 い と き は ル チ ー ン に 測 定 さ れ な い ア ニ オ ン が 減 る か,Na以 外 の 陽 イ オ ン が 増 加 す る 病 態 で あ り,低 ア ル ブ ミ ン 血 症,IgG型 多 発 性 骨 髄 腫,ブ ロ マ イ ド中 毒 な ど が あ る 。 ル チ ー ン に 測 定 さ れ な い ア ニ オ ン の 大 部 分 は ア ル ブ ミ ン で あ り,低 ア ル ブ ミ ン 血 症 で はAGが 減 少 す る 。 ア ル ブ ミ ン1g/dLの 低 下 に 対 し てAGは 約2.5mEq/L低 下 す る 。IgG型 多 発 性 骨 髄 腫 で は モ ノ ク ロ ー ナ ルIgGが,よ り陽 イ オ ン で 荷 電 し て い る こ と が 多 い た め で,AGの 減 少 と モ ノ ク ロ ー ナ ルIgG濃 度 と の 間 に 逆 相 関 が み ら れ る 。 ブ ロ マ イ ド 中 毒 で は,ク ロ ー ル 測 定 時 に ブ ロ マ イ ド が ク ロ ー ル の よ う に 測 定 さ れ て し ま う 。 な お,遠 位 型 尿 細 管 性 ア シ ドー シ ス はAG正 常 の 代 謝 性 ア シ ド ー シ ス を 呈 す る 。 (岡 田 一 義) 問 題3 正 解:d 【解 説1】 慢 性 腎 臓 病(CKD)は,腎 臓 の 障 害 を 示 唆 す る 所 見,も し く はGFR60mL/min/1.73m2未 満 の 腎 機 能 低 下 が3ヵ 月 以 上 持 続 す る も の,と 定 義 さ れ て い る 。GFRの 測 定 の ゴ ー ル ド ス タ ン ダ ー ド は イ ヌ リ ン ク リ ア ラ ン ス で あ る が, 非 常 に 煩 雑 で あ る た め,実 地 臨 床 の 現 場 で は 血 清 ク レ ア チ ニ ン 値 を 基 に し た 推 算 式 を 利 用 し て 求 め るeGFRが 使 用 さ れ る こ と が 多 い 。 腎 臓 の 障 害 を 示 唆 す る所 見 と し て は, 蛋 白 尿 な ど の 尿 異 常,多 発 性 嚢 胞 腎 な ど の 画 像 異 常,病 理 所 見 な ど の 存 在 が 含 ま れ る 。 診 断 と病 期 分 類 に はGFRを 用 い,移 植 患 者 に つ い て は 病 期 にtransplantationのTを つ け,ス テ ー ジ5で 透 析 を 受 け て い る 場 合 はdialysisのD を つ け る 。 糖 尿 病 性 腎 症 の 増 加 は 大 き な 問 題 で あ る が, CKDの 診 断 基 準 は 全 世 界 で 簡 便 に 行 え る こ と を 主 眼 と し て 作 成 さ れ,で き る 限 り簡 略 化 さ れ て お り,特 に 疾 患 別 に 項 目 を細 分 化 す る よ う な こ と は し て い な い 。 (南 学 正 臣) 【解 説2】
慢 性 腎 臓 病(chronic kidney disease: CKD)の 定 義 は,
1.腎 障 害kidneydamageが3ヵ 月 以 上 継 続 す る 。 ① 腎 障 害 と は 腎 臓 の 形 態 的 ま た は 機 能 的 な 異 常 を 指 し, GFR低 下 の 有 無 を 問 わ な い 。 ② 腎 障 害 の 診 断 は, ・病 理 学 的 診 断 ま た は , ・腎 障 害 マ ー カ ー に よ っ て 行 う。(こ の マ ー カ ー と し て は 血 液 ま た は 尿 検 査,ま た は 画 像 診 断 が あ る 。) 2.GFR<60mL/min/1.73m2が3ヵ 月 以 上 継 続 す る 。 こ の 場 合 腎 障 害 の 有 無 を 問 わ な い 。 で あ る 。 し た が っ て,正 解 はdの み で あ る 。 腎 移 植 患 者 はGFR別 に ス テ ー ジ1∼5の 後 にT(transplantation)を 付 け る 。 (井 関 邦 敏) 問 題4 正 解:c,e 【解 説1】
腎 性 骨 異 栄 養 症(renal osteodystrophy: ROD)は,現 在 で
は 透 析 患 者 に お け る 骨 の 問 題 に と ど ま ら ず,慢 性 腎 臓 病
(chronic kidney disease: CKD),血 管 石 灰 化,異 所 性 石
灰 化,高 リ ン 血 症,高 カ ル シ ウ ム 血 症 な ど も広 く考 慮 し た
慢 性 腎 臓 病 に 伴 う 骨 ミ ネ ラ ル 代 謝 異 常(CKD-MBD:
chronic kidney disease-mineral and bone disorder)と し て
捉 え ら れ る よ う に な っ て き て い る 。 こ の 考 え 方 か ら,高 リ
ン血 症 や 高 カ ル シ ウ ム 血 症 で は 生 命 予 後 が 悪 化 す る こ と が わ が 国 を は じ め 各 国 か ら す で に 明 ら か に さ れ て い る 。 ま
要 な予 知 因 子 と され る よ うに な っ て きた 。 この血 管 石 灰 化 は,い わ ゆ る 粥 状 動 脈 硬 化 症 に伴 う血 管 内膜 石 灰 化 以 外 に,血 管 内 狭 窄 を呈 さ な い血 管 中膜 石 灰 化 も起 こす こ とが 特 徴 的 で あ る。 内膜 な らび に中 膜 石 灰 化 も と も に生 命 予 後 に 関連 し て い る。 す で に この 観 点 か ら,日 本 透 析 医 学 会 で は2006年 に ガ イ ド ラ イ ン 〔以 下 の1)∼3)〕 を 設 定 し て い る。 1)血 清 リ ン濃 度 の 目標 値:3.5∼6.0mg/dL 2)血 清 カ ル シ ウム 濃 度 の 目標 値:8.4∼10.0mg/dL 3)Intact PTHの 管 理 目標 は生 命 予 後 が 最 も良 好 と考 え られ る60∼180pg/mLと す る。 た だ し,PTH値 管 理 の 前 提 と し て リ ン,カ ル シ ウム の 管 理 が 達 成 さ れ て い る必 要 が あ る。 た だ し,リ ン吸 着 剤 と して の炭 酸 カ ル シ ウ ム 製 剤 は,カ ル シ ウ ム バ ラ ンス の観 点 か ら,3.09/日 以 上 の 投 与 で は血 管 石 灰 化 を促 進 させ る とい う デ ー タ が あ り,日 本 透 析 医 学 会 の ガ イ ドラ イ ン に も3.0g/日 以 下 に と どめ るべ き との 勧 め が 明 記 さ れ て い る。 な お,ビ タ ミンDの 静 注 療 法 の 一 般 化 や,透 析 患 者 で の 糖 尿 病 性 腎 症 例 や 高 齢 症 例 の増 加 に よ り,現 在 で は 血 液 透 析 患 者 を は じ め とす る透 析 患 者 で は,典 型 的 な高 代 謝 骨 回 転 病 変 で あ る線 維 性 骨 炎 を伴 う二 次 性 副 甲 状 腺 機 能 亢 進 症 例 の割 合 は減 少 して お り,低 代 謝 骨 回転 を示 す例 が 多 数 と な っ て い る。 (重松 隆) 【解 説2】 2006年 日本 透 析 医 学 会 よ り発 表 さ れ た ガ イ ドラ イ ン は, 生 命 予 後 を最 も重 要 視 し て管 理 目標 値 を設 定 して い る。 血 清 リ ン濃 度: 3.5∼6.0mg/dL,補 正 血 清 カル シ ウ ム 濃 度: 8.4∼10.0mg/dL,intact PTH: 60∼180pg/mLと な っ て お り,リ ン,カ ル シ ウム 濃 度 を 目標 値 に管 理 す る こ とを優 先 し,そ れ が 達 成 され た 場 合 の みPTHの 管 理 を行 う とい う こ とが 特 徴 で あ る。 この優 先 順 位 の ほ うが 生 命 予 後 が 良 好 な こ とが 示 さ れ て い る。 透 析 患 者 の 血 管 石 灰 化 は,透 析 歴 に依 存 し て お り,若 年 で も高 率 に み られ る。 血 管 内腔 の 粥 状 硬 化 に よ る狭 窄 部 位 の 石 灰 化 よ り,中 膜 の 石 灰 化 が 特 徴 的 で あ る(Monckeberg's medial sclerosis)。血 管 の石 灰 化 は,Electron beam CTの
よ う な最 先 端 の 機 器 だ け で な く,単 純X線 で も評 価 す る こ とが 可 能 で,そ の 程 度 は 生 命 予 後 の 指 標 とな りう る。 ま た,従 来 な る べ く補 充 が 推 奨 され て い た カ ル シ ウム の 負 荷 は,血 管 石 灰 化 の リス ク とな り う る こ と もわ か っ て お り, わ が 国 の ガ イ ドライ ン で も,リ ン吸 着 薬 と して の 炭 酸 カ ル シ ウ ム の 投 与 量 は 原 則1日3g以 下 が 推 奨 さ れ て い る 。 日 本 透 析 医 学 会 の 統 計 に よ る と(2003年 末),透 析 患 者 で 副 甲 状 腺 機 能 亢 進 症 と 考 え ら れ る 症 例 は,intact PTHで 360pg/mL以 上 が12.3%,180pg/mL以 上 が32.3%に す ぎ ず,人 数 の う え で は,現 在 で は む し ろ 少 数 派 で あ る 。 【参 考 文 献 】 1.社 団 法 人 日本 透 析 医 学 会.透 析 患 者 に お け る二 次 性 副 甲状 腺 機 能 亢 進 症 治 療 ガ イ ド ラ イ ン.日 本 透 析 会 誌2006; 39: 1435-1455. (深 川 雅 史) 問 題5 正 解:b,c 【解 説1】 腎 ア ミ ロ イ ドー シ ス は,腎 臓 に ア ミ ロ イ ド蛋 白 の 沈 着 を き た す も の で,原 発 性 お よ び 骨 髄 腫(AL型),二 次 性 ま た は 続 発 性(AA型)に 分 け ら れ る 。 ア ミ ロ イ ド沈 着 組 織 は 易 出 血 性 の た め 腎 生 検 に は 注 意 が 必 要 で あ る 。 光 顕 でHE染 色 で 好 酸 性 の,Congored染 色 や ダ イ ロ ン 染 色 で 榿 色 の ア ミ ロ イ ド沈 着 を 認 め,電 顕 で ア ミ ロ イ ド細 線 維 の 錯 綜 配 列 が 見 ら れ る 。 そ の 径 は 約10nmで,同 様 の ア ミ ロ イ ド様 細 線 維 構 造 を も つ 細 線 維 性 糸 球 体 腎 炎(fibrillary glomerulo-nephritis)(18∼22nm),ま たmicrostructureを 有 す る イ ム ノ タ ク ト イ ド 糸 球 体 症(immunotactoid glomerulopathy) (30∼40nm)と は 径 が 異 な る1)。 な お 後2者 はCongo red染 色 陰 性 で あ る 。 糸 球 体 に 沈 着 す る 場 合,多 く は ネ フ ロ ー ゼ 症 候 群 を 呈 す る 蛋 白 尿(一 次 性 で は75%)を き た す 。 し か し,糸 球 体 に 沈 着 を 認 め ず,血 管 や 尿 細 管 の み に 沈 着 を き た す 場 合 も あ り,こ の 場 合 は 必 ず し も 尿 蛋 白 を 呈 す る と は 限 ら な い2)。 二 次 性 で は,約40%が 関 節 リ ウ マ チ に 伴 う も の で あ る3)。 腎 予 後 は 一 般 に 不 良 で あ る が,原 発 性 お よ び 骨 髄 腫(AL 型)で はMP療 法,VAD療 法,免 疫 抑 制 薬 の ほ か,自 己 造 血 幹 細 胞 移 植 が 試 み ら れ つ つ あ る 。 二 次 性 で は,原 疾 患 の 治 療 に よ り前 駆 蛋 白 の 産 生 を 抑 え る こ と が 大 切 で あ る 。 生 命 予 後 は 心 臓 罹 患 の な い も の が 比 較 的 良 好 と さ れ る4)。 【参 考 文 献 】
1. Rosenstock JL, Markowitz GS, Valeri AM, et al. Fibrillary
and immunotactoid glomerulonephritis: Distinct entities
with different clinical and pathologic features. Kidney Int
2003; 63: 1450.
vascu-セ ル フ ト レ ー ニ ン グ 問 題 の 正 解 と解 説9 69
tar amyloid deposition in the kidney in patients with minimal or no proteinuria. Clin Nephrol 1983: 19: 137. 3. Gertz MA, Kyle RA. Secondary systemic amyloidosis
Response and survival in 64 patients. Medicine (Baltimore) 1991: 70: 246.
4. Moroni G, Banfi G, Montoti A, et al. Chronic dialysis in patients with systemic amyloidosis: The experience in northern Italy. Clin Nephrol 1992: 38: 81.
(八 田和 大) 【解 説2】 ア ミ ロ イ ドー シ ス は,病 理 組 織 学 的 にCongored染 色 が 陽 性 で あ る こ と と,電 顕 に よ り幅7∼10nmの ア ミ ロ イ ド 細 線 維 を 確 認 す る こ と で 診 断 す る 。 ア ミ ロ イ ド細 線 維 が 血 管 壁 に 沈 着 す る と,機 械 的 刺 激 に よ り容 易 に 出 血 し,紫 斑 を 生 じ る 。 原 発 性(本 態 性)と 骨 髄 腫 に 合 併 す る免 疫 細 胞 性 ア ミ ロ イ ドー シ ス の 一 部 にMGUS(monoclonal
gam-mopathy of undetermined significance)が み ら れ る 。 免 疫 細
胞 性 ア ミ ロ イ ドー シ ス は,免 疫 グ ロ ブ リ ンL鎖 を 前 駆 蛋 白 と す る ア ミ ロ イ ドALが 沈 着 し,約60∼70%で 腎 ア ミ ロ イ ドー シ ス が み ら れ る 。 続 発 性(反 応 性)ア ミ ロ イ ド ー シ ス で は,ア ミ ロ イ ドA蛋 白 を 前 駆 体 と す る ア ミ ロ イ ド AAが 沈 着 し,そ の 多 くが 慢 性 関 節 リ ウ マ チ に 続 発 す る 。 ア ミ ロ イ ドAAで は,約90%の 症 例 に 腎 ア ミ ロ イ ド ー シ ス が み ら れ る 。 腎 ア ミ ロ イ ドー シ ス は,腎 内 の 小 動 脈,細 動 脈,糸 球 体 (係 蹄 壁,メ サ ン ギ ウ ム),ボ ウ マ ン 嚢,尿 細 管 基 底 膜,間 質 な ど の 細 胞 外 基 質 に ア ミ ロ イ ド細 線 維 が 沈 着 し て 機 能 障 害 を 起 こ す 。 糸 球 体 に 沈 着 す る と,少 量 か ら大 量 の 蛋 白 尿 を 呈 す る が,小 動 脈,細 動 脈,尿 細 管 基 底 膜,間 質 な ど へ の 沈 着 で は 尿 所 見 に 乏 し い 。ALア ミ ロ イ ド ー シ ス の 平 均 生 存 期 間 は12∼18ヵ 月 と 短 く,死 因 は51%が 心 不 全, 15%が 腎 不 全,感 染 症 と さ れ て い る 。AAア ミ ロ イ ド ー シ ス の 平 均 生 存 期 間 は24ヵ 月 と 同 様 に 不 良 で あ る 。 以 上 か ら,b,cが 正 し い 。 (鎌 田 貢 壽) 問 題6 正 解:b,e 【解 説1】 CAPD療 法 で は,経 腹 膜 的 限 外 濾 過 量 に 加 え て,残 腎 機 能 と し て の 尿 量 が 重 要 で あ る 。 経 腹 膜 的 限 外 濾 過 量 は,ブ ド ウ 糖 を 中 心 と し た 腹 膜 透 析 液 と腹 膜 血 管 内 の 血 液 と の 濃 度 勾 配 に よ り な さ れ る 。 こ の 結 果,腹 膜 毛 細 血 管 の 透 過 性 や リ ン パ 管 に よ る ブ ド ウ 糖 吸 収 も 関 与 し て い る 。 低 血 糖 で は腹 膜 透 析 液 との ブ ドウ糖 濃 度 の 差 は拡 大 す る た め,少 な く と も腹 膜 の 限 外 濾 過 量 を低 下 さ せ る こ と は な い 。 残 腎機 能 の低 下 に よ り限 外 濾 過 量 の 増 大 とい う現 象 を 呈 す る こ と は稀 で は な い。 高 コ レ ス テ ロー ル 血 症 は直 接 腹 膜 の 限外 濾 過 量 を左 右 す る とい う報 告 は な い。 腹 膜 炎 は腹 膜 血 管 を 拡 張 させ,透 析 液 の ブ ドウ糖 の 吸 収 を促 進 し,腹 膜 透 析 液 と腹 膜 血 管 内 の 血 液 との 濃 度 勾 配 が 減 少 す る た め,腹 膜 の 限 外 濾 過 量 は大 き く低 下 す る。 腹 膜 炎 の 回 復 と と もに腹 膜 の 限 外 濾 過 量 は 回復 し て く る こ とが 知 られ て い る。 リ ンパ 組 織 の ブ ドウ糖 吸 収 に は個 人 差 が み られ る よ う で あ る が,リ ンパ 組 織 の ブ ドウ糖 吸 収 が 亢 進 した状 態 で あ る と,腹 膜 透 析 液 と腹 膜 血 管 内 の 血 液 との 濃 度 勾 配 が 減 少 す る た め,腹 膜 の 限 外 濾 過 量 は低 下 す る。 (重松 隆) 【解 説2】 腹 膜 透 析 療 法 は,腹 膜 を介 して 物 質 移 動 が 行 わ れ て お り, 限 外 濾 過 の 担 い 手 は,腹 膜 と腹 膜 透 析 液 中 の ブ ドウ糖 で あ る。 この た め,腹 膜 炎 を生 じ る と腹 膜 機 能 が 低 下 し限 外 濾 過 量 は低 下 す る。 また,腹 膜 透 析 液 中 の ブ ドウ糖 が リンパ 組 織 に吸 収 され る な ど し て低 下 す る と,限 外 濾 過 量 はや は り低 下 す る こ とに な る。 (大石 哲 也) 問題7 正 解:a,e 【解 説1】 腎 移 植 患 者 の 腎 不 全 に至 る原 疾 患 に は種 々 の 腎 炎,腎 疾 患 が 含 まれ る。 原 疾 患 の 再 発 は6∼19.4%の 移 植 患 者 に み ら れ,再 発 腎 炎 はgraftlossの 原 因 と して1.1∼4.4%を 占 め る とさ れ る。 近 年,免 疫 抑 制 療 法 の進 歩 に伴 い,急 性 拒 絶 反 応 の頻 度 が 減 少 す る と と も に再 発 腎 炎 のgraft生 着 に 及 ぼ す 影 響 の 重 要 性 が 高 ま っ て い る。 再 発 率 の 高 い 腎 炎 の 代 表 は,IgA腎 症(40∼60%),巣 状 分 節 性 糸 球 体 硬 化 症 (FSGS)(30∼60知,膜 性 増 殖 性 糸 球 体 腎 炎(MPGN) (type Ⅰ: 30∼50%,type Ⅱ: 80∼100%)で あ る。 こ れ に 対 し て,膜 性 腎 症(10∼30%),ANCA関 連 糸 球 体 腎 炎 (10%未 満),ル ー プ ス 腎 炎(5%未 満)は 再 発 率 が 低 い グ ル ー プ で あ る。 再 発 の 臨 床 的 特 徴 と し て,FSGSで は血 流 再 開 直 後 か ら大 量 の 蛋 白尿 を呈 す る例 もみ られ,再 発 の 大 部 分 は移 植1ヵ 月 以 内 に起 こ る。 これ に対 し て,IgA腎 症 の 再 発 は 原 疾 患 と同 様 に 潜 行 的 な 臨 床 経 過 を た ど り,血 尿 ・蛋 白尿 を呈 さ な い 状 態 で もprotocol biopsyに よ って 組 織 学 的 再 発 を認 め る こ とが しば し ばで あ る。IgA腎 症 再 発 に 関 す る 問題 点 は,透 析 導 入 患 者 に お け る腎 生 検 実 施 率 の
低 さ に あ る。1997年 の デ ー タ だ が,糸 球 体 腎 炎 を 原 疾 患 とす る透 析 導 入 患 者 の う ち わ ず か8%が 腎 生 検 を受 け て い る に過 ぎ な い。 原 疾 患 が 確 定 し な け れ ば,再 発 を正 確 に 論 ず る こ と は困 難 で あ り,今 後 の 改 善 が 望 ま れ る。 再 発IgA 腎 症 の長 期 予 後 は,以 前 考 え られ て い た よ り悪 い との報 告 が 最 近 相 次 ぎ,そ の 適 切 な 治 療 は移 植 腎 長 期 成 績 改 善 の た め重 要 な 課 題 で あ る。 【参 考 文 献 】 1.酒 井 謙,他.腎 移 植 と糸 球 体 腎 炎.日 腎 会 誌2004; 46: 798-803
2. Hariharan S, et al. Recurrent and de novo renal diseases after renal transplantation: A report from the renal allo-graft disease registry (RADR). Transplantation 1999; 68 635-641.
3. Gera M, Griffin MD, Specks U, Leung N, Stegall MD, Fervenza FC. Recurrence of ANCA-associated vasculitis following renal transplantation in the modern era of
im-munosuppression. Kidney Int 2007; 71:1296 -1301. 4. Namba Y, et al. Risk factors for graft loss in patients with
recurrent IgA nephropathy after renal transplantation. Transplantation Proc 2004; 36: 1314-1316. (守 山 敏 樹) 【解 説2】 腎移 植 後 の再 発 性 糸 球 体 腎 炎 は,す べ て の 糸球 体 腎 炎 が 再 発 す る可 能 性 を有 し て い る。 そ の な か で,再 発 頻 度 が 高 い もの と,一 度 再 発 す る と腎 生 存 率 が 悪 い もの が あ り,こ れ ら に関 して は 注 意 が 必 要 で あ る。 再 発 頻 度 の 高 い糸 球 体 腎 炎 は,IgA腎 症 と巣 状 分 節 性 糸 球 体 硬 化 症(FSGS)で あ る。 そ れ ぞ れ,再 発 率 の 報 告 に 幅 は あ るが,IgA腎 症10 ∼65%,FSGS30∼50%程 度 と報 告 さ れ て い る。 最 も再 発 率 が 高 い の は,膜 性 増 殖 性 糸 球 体 腎 炎(MPGN)type Ⅱ と い わ れ て お り,再 発 率 は100%に 近 い1)。 膜 性 腎 症,ル ー プ ス 腎 炎 な ど は 移 植 症 例 数 も少 な い た め か,正 確 な 再 発 頻 度 は つ か み に く い が,膜 性 腎 症 はde novo膜 性 腎 症 が ほ と ん ど で,再 発 性 膜 性 腎 症 の 報 告 は 10%程 度 で あ る。 ル ー プ ス 腎 炎 は5∼10%程 度 の 再 発 例 の 報 告 が あ る。ANCA関 連 糸 球 体 腎 炎 の 再 発 に 関 し て は, い くつ か の論 文 が あ る が,腎 外 性 臓 器 の再 発 所 見 は み られ て も,ANCA関 連 糸 球 体 腎 炎 の 再 発 例 は き わ め て 少 な く, 移 植 腎 予 後 も悪 くな い とい わ れ て い る。 な お,再 発 し た 場 合,腎 生 存 率 が 悪 い タ イ プ はFSGSと MPGNと い わ れ て い る。 【参 考 文 献 】 1.相 田 久 美,他.再 発 性,de novo腎 炎.腎 と 透 析2005; 59; 947-950.
2, Deegens JK, et al. Outcome of renal transplantation in
patients with pauci-immune small vessel vasculitis or
anti-GBM disease. Clin Nephrol 2003; 59; 1-9.
(西 慎 一) 問 題8 正 解:b,c 【解 説1】 a.貧 血:改 善 す る。 ミ コ フ ェ ノー ル 酸 モ フ ェ チ ル(セ ル セ プ ト(R))使用 例 で は骨 髄 抑 制 作 用 の た め 改 善 が 軽 度 の こ とが あ る。 b.骨 嚢 胞:改 善 は認 め られ な い 。 c.血 管 石 灰 化:改 善 は 認 め られ な い 。 d.皮 膚 の か ゆ み:移 植 後 早 期 に 改 善 す る。 e.二 次 性 副 甲 状 腺 機 能 亢 進 症:移 植 後 数ヵ 月 でintact PTH値 の 改 善 が 認 め られ る 。 (力 石 辰 也) 【解 説2】 腎 移 植 後 に 腎機 能 が 改 善 す る こ と に よ っ て,エ リス ロ ポ エ チ ンの 産 生(腎 機 能 回 復 後 数 週 程 度 で),ビ タ ミンD・PTH 系 の 正 常 化(副 甲状 腺 腫 の 程 度 に も よ る が,数 週 か ら数 カ 月 で 。 場 合 に よ って 数 年)が 期 待 さ れ,貧 血 や 骨 代 謝 異 常 の改 善 が 得 られ る こ とが 多 い 。 ま た,尿 毒 症 やCa代 謝 の 改 善 に伴 い皮 膚 癌 痒 症 も軽 快 す る。 しか し,透 析 ア ミ ロ イ ドー シス に よ る病 変 や 異 所 性 石 灰 化 は,病 変 の 進 行 や 新 た な 出 現 は抑 制 され る が,移 植 前 に す で に形 成 され た病 変 に つ い て は軽 快 は ほ とん ど な い。 【参 考 文 献 】
. Moe SM, O'Neill KD, Reslerova M, Fineberg N, Persohn S, Meyer CA. Natural history of vascular calcification in dialysis and transplant patients. Nephrol Dial Transplant 2004: 19 (9): 2387-2393.
2. Caplin B, Wheeler DC. Arterial calcification in dialysis patients and transplant recipients. Semin Dial 2007; 20 (2): 144-149.
3. Campistol JM. Dialysis-related amyloidosis after renal transplantation. Semin Dial 2001 Mar-Apr: 14 (2):
99-102.
セ ル フ ト レ ー ニ ン グ 問 題 の 正 解 と解 説 971 問 題9 正 解:e 【解 説1】 発 症 が 緩 徐 で 蛋 白 尿 が 高 度,成 人 男 性,と い う こ と よ り膜 性 腎症 が 最 も考 え られ る。 一 般 に血 尿 は呈 し に くい とい わ れ て い る。 病 理 所 見 で 病 理 組 織 所 見 はeで あ り,PAS染 色 像 で び ま ん性 の 糸 球 体 係 蹄 壁 肥 厚 を認 め る 。 糸 球 体 基 底 膜 上 皮 下 に免 疫 複 合 体 が 沈 着 し,沈 着 した 免 疫 複 合 体 に よ り補 体 が 活 性 化 され,糸 球 体 基 底 膜 お よ び糸 球 体 上 皮 細 胞 が 傷 害 さ れ 蛋 白尿 が 出 現 す る。PAM染 色 を行 う とス パ イ ク 形 成 が 認 め られ る。 抗IgG蛍 光 抗 体 組 織 像 で は 糸 球 体 係 蹄 壁 に沿 っ て 顆 粒 状 のIgG沈 着 を認 め る の が 特 徴 的 で あ る。aは 微 小 変 化 型 ネ フ ロ ー ゼ 症 候 群,bは 膜 性 増 殖 性 腎 炎,cは 半 月 体 形 成 性 腎 炎,dは 軽 度 の 血 尿 を 示 す 症 例 で,IgA陰 性 で 軽 度 の メ サ ン ギ ウ ム 領 域 拡 大 の み られ た症 例 で あ った 。 (竹本 文 美) 【解 説2】 検 査 デ ー タ よ り,ネ フ ロ ー ゼ症 候 群 を呈 し て い る こ とは 明 らか で あ る。 そ の臨 床 的 特 徴 は,① 高 齢,② 亜 急 性 な発 症,③ 血 尿 が な い,④ 糖 尿 病 は な い(厳 密 に判 断 す る と, 貧 血 が あ る とHbA1cの 評 価 は 難 し い わ け で,こ の 問 題 文 か らは糖 尿 病 は な い もの と判 断 され る)こ とが あ げ られ る。 この 特 徴 を持 つ ネ フ ロ ー ゼ 症 候 群 を鑑 別 す る。 血 尿 が な い ネ フ ロ ー ゼ症 候 群 は,微 小 変 化 型,膜 性 腎 症,糖 尿 病 性 腎 症,ア ミロ イ ドー シ ス に よ る もの,が あ げ られ る。 逆 に血 尿 を伴 い や す い ネ フ ロ ー ゼ 症 候 群 に は,IgA腎 症,膜 性 増 殖 性 腎 炎,巣 状 糸 球 体 硬 化 症,ANCA(抗 好 中球 細 胞 質 抗 体)関 連 腎 炎,ル ー プ ス 腎 炎,紫 斑 病 性 腎 炎,遺 伝 性 腎 炎 が あ る。 年 齢 で 考 え る と,若 年 者 で は微 小 変 化 型,巣 状 糸 球 体 硬 化 症,SLEに よ る ル ー プ ス 腎 炎,紫 斑 病 性 腎 炎 な どが 多 く,高 齢 者 で は ア ミロ イ ドー シ ス,糖 尿 病 性 腎 症 が 多 い 。 ま た30∼40歳 頃 か ら膜 性 腎症 やIgA腎 症 が 増 え て くる。 以 上 よ り,臨 床 的 に は膜 性 腎 症 を疑 う こ とに な る。 一 方,病 理 組 織 で は,aは,血 管 極 に若 干 の メサ ン ギ ウ ム 領 域 の 拡 大 が あ るが,ほ とん ど正 常,bは 一 部 の 係 蹄 壁 に 二 重 化 が 認 め られ る係 蹄 壁 の 肥 厚 と細 胞 の増 加 が あ り,膜 性 増 殖 性 腎 炎,cは,糸 球 体 周 囲 の 著 明 な 間 質 障 害 を伴 う 半 月体 を もつ 糸 球 体(半 月 体 形 成 性 腎 炎),dは6時 の 方 向 に メ サ ンギ ウ ム領 域 の 拡 大 を認 め る軽 度 の メ サ ン ギ ウ ム 増 殖 性 腎 炎(IgA腎 症 疑 い),eは 係 蹄 壁 の肥 厚 が あ り,そ の 係 蹄 に空 胞 形 成,微 細 顆 粒 が 認 め られ膜 性 腎症 の 組 織 と思 わ れ る。 よ っ て,こ の 症 例 の 病 理 組 織 はeで あ る 。 【参 考 文 献 】
1. Up To Date: Overview of heavy proteinuria and the
ne-phrotic syndrome 2.黒 川 清,松 澤 佑 次(編).内 科 学,14.ネ フ ロ ー ゼ 症 候 群 患 者 へ の ア プ ロ ー チ,東 京:文 光 堂,2003. (宮 崎 正 信) 問 題10 正 解:c 【解 説1】 Wegener肉 芽 腫 症 は,わ が 国 で は 比 較 的 稀 で あ る。 Wegener肉 芽 腫 症 は,上 気 道(E),肺(L),腎(K)の 主 要 症 状,お よび 血 管 炎 に よ る症 状 の 主 要 症 状 を示 し,血 清 中 にC-ANCAを し ば しば認 め る疾 患 で あ る。 わ が 国 の 本 症 の 診 断 基 準 を表2に 示 す 。 設 問 に呈 示 した 図2は 典 型 的 な cytoplasmicパ タ ー ン で あ る。 本 例 は 主 要 症 状 の う ち の E:口 腔 潰 瘍,L:咳 漱,K:血 ・蛋 白尿 の3項 目 を認 め, C-ANCA陽 性 で あ る こ と か ら,definiteなWegener肉 芽 腫 症 と診 断 され る。 この よ う な 患 者 で は,高 度 炎 症 所 見 (CRP高 値,白 血 球 増 多),急 速 進 行 性 腎 炎 を呈 し,貧 血 と腎 機 能 の 低 下 を しば し ば伴 うが,補 体 値 は炎 症 所 見 に伴 い 軽 度 増 加 す る こ と は多 い もの の,低 下 は し な い 。 ル ー プ ス 腎 炎,顕 微 鏡 的 多 発 血 管 炎 で は,同 様 の尿 所 見 を 認 め る も,ル ー プ ス 腎 炎 で は通 常,血 清 中 に抗 核 抗 体,抗 2本 鎖DNA抗 体 を 認 め,顕 微 鏡 的 多 発 血 管 炎 で はP-ANCAを 認 め る こ とが 多 く本 例 とは 異 な る。 ま た,紫 斑 病 性 腎 炎,結 節 性 多 発 動 脈 炎(古 典 的PN)は 臨 床 症 状,経 過 か ら考 え に くい。 表2 Wegener肉 芽腫 症 の診 断基 準(厚 生労 働省 難 治 性血 管炎 分科 会1998年)
② 臓 器 症 状:紫 斑,多 発 関 節 炎(痛),上 強 膜 炎, 多 発 性 単 神 経 炎,虚 血 性 心 疾 患,消 化 管 出 血, 胸 膜 炎 2.主 要 組 織 所 見 ①E,L,Kの 巨 細 胞 を伴 う壊 死 性 肉 芽 腫 性 血 管 炎 ② 免 疫 グ ロ ブ リ ン 沈 着 を 伴 わ な い 壊 死 性 半 月 体 形 成 腎 炎 ③ 小 細 動 脈 の 壊 死 性 肉 芽 腫 性 血 管 炎 3.主 要 検 査 所 見 Proteinase-3(PR-3)ANCA(蛍 光 抗 体 法 でcytoplasmic pattern,C-ANCA)が 高 率 に 陽 性 を 示 す 。 4.判 定 (1)確 実(difinite) (a)上 気 道(E),肺(L),腎(K)の そ れ ぞ れ 一 臓 器 症 状 を 含 め 主 要 症 状 の3項 目以 上 を 示 す 例 (b)上 気 道(E),肺(L),腎(K),血 管 炎 に よ る 主 要 症 状 の2項 目 以 上 お よ び,組 織 所 見 ①,②,③ の1項 目以 上 を 示 す 例 (c)上 気 道(E),肺(L),腎(K),血 管 炎 に よ る 主 要 症 状 の1項 目以 上 と 組 織 所 見 ①,②, ③ の1項 目以 上 お よ びC(PR-3)-ANCA陽 性 例 (2)疑 い(probable) (a)上 気 道(E),肺(L),腎(K)の そ れ ぞ れ 一 臓 器 症 状 を 含 め 主 要 症 状 の2項 目以 上 の 症 状 を示 す 例 (b)上 気 道(E),肺(L),腎(K),血 管 炎 に よ る 主 要 症 状 の い ず れ か1項 目 お よ び,組 織 所 見 ①,②,③ の1項 目 を 示 す 例 (c)上 気 道(E),肺(L),腎(K),血 管 炎 に よ る 主 要 症 状 の1項 目 とC(PR-3)-ANCA陽 性 を 示 す 例 5.参 考 と な る検 査 所 見 ① 白 血 球,CRPの 上 昇 ②BUN,血 清 ク レ ア チ ニ ンの 上 昇 6.鑑 別 診 断 ①E,Lの 他 の 原 因 に よ る 肉 芽 腫 性 疾 患(サ ル コ イ ドー シ ス な ど) ② 他 の 血 管 炎 症 候 群(顕 微 鏡 的 多 発 血 管 炎,ア レ ル ギ ー 性 肉 芽 腫 性 血 管 炎)な ど 7.参 考 事 項 ① 上 気 道(E),肺(L),腎(K)の す べ て が 揃 っ て い る 例 は 全 身 型,上 気 道(E),肺(L)の い ず れ か あ る い は 双 方 に と ど ま る場 合 を 限 局 型 と よぶ 。 ② 全 身 型 は 上 気 道(E),肺(L),腎(K)の 順 に 症 状 が 出 現 す る こ と が 多 い 。 ③ 発 症 後 し ば ら くす る と,上 気 道(E),肺(L)の 病 変 に 黄 色 ブ ドウ 球 菌 を 主 と す る 感 染 症 を合 併 し や す い 。 ④E,Lの 肉 芽 腫 に よ る 占 拠 性 病 変 の 診 断 にCT,MRI が 有 用 で あ る 。 ⑤PR-3ANCAの 力 価 は 疾 患 活 動1生 と平 行 しや す い 。 【参 考 文 献 】 1.厚 生 科 学 研 究 特 定 疾 患 対 策 研 究 事 業 難 治 性 血 管 炎 に 関 す る 調 査 研 究 班(班 長;橋 本 博 史).難 治 性 血 管 炎 の診 療 マ ニ ュ ア ル(2002年3月) (山 縣 邦 弘) 【解 説2】 蛍 光 顕 微 鏡 写 真 で は 多 核 白 血 球 の 細 胞 質 がIgGで び ま ん 性 に 染 色 さ れ て い る 。 こ れ は 抗 好 中 球 細 胞 質 抗
体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody: ANCA)のcytoplasmic
パ タ ー ン と い わ れ る 所 見 で,患 者 血 清 中 にcytoplasmic ANCA(C-ANCA)が 存 在 す る こ と を 示 す 。 選 択 肢 の な か でC-ANCAが 陽 性 に な る の はWegener肉 芽 腫 症 で あ る 。 本 症 例 の 上 気 道 症 状(副 鼻 腔 炎),肺 症 状 (咳,痰),腎 症 状,発 熱 な ど の 臨 床 所 見 もWegener肉 芽 腫 症 に 一 致 す る 。 ANCAは 好 中 球 の 細 胞 質 成 分 に 対 す るIgG型 の 自 己 抗 体 で,間 接 蛍 光 抗 体 法 の 染 色 パ タ ー ン に よ っ て 上 記 のC-ANCAと,好 中 球 の 核 周 辺 の 細 胞 質 が 強 く 染 色 さ れ る perinuclear ANCA(P-ANCA)と に 分 け ら れ る 。 い ず れ の ANCAに も 複 数 の 標 的 抗 原 が あ る が,C-ANCAの 主 な
標 的 抗 原 はpr0teinas e3(PR3),P-ANCAで
はmyeloper-oxydase(MPO)で あ る 。 そ れ ぞ れ の 標 的 抗 原 に 対 応 す る ANCAはPR3-ANCA,MP0-ANCAと 呼 ば れ,ELISA 法 な ど に よ っ て 血 清 抗 体 価 と し て 定 量 的 に 測 定 さ れ る 。 ANCAと 疾 患 と の 関 連 で は,C-ANCA(PR3-ANCA)は Wegener肉 芽 腫 症 に 特 異 性 が 高 く,P-ANCA(MPO-ANCA)は 顕 微 鏡 的 多 発 血 管 炎,Churg-Strauss症 候 群, pauci-immune型 半 月 体 形 成 性 糸 球 体 腎 炎 で 陽 性 率 が 高 い 。 (田 村 展 一) 問 題11 正 解:a 【解 説1】 設 問 か ら,コ レ ス テ ロ ー ル 塞 栓 症(cholesterol crystal
embolism: CCE)が 最 も 疑 わ れ る 。CCEは,剖 検 例 で は
約2.4%の 腎 に み ら れ る と さ れ,男 性,高 齢 者,高 血 圧, 糖 尿 病 に 多 い 。 し ば し ば 虚 血 性 心 疾 患,大 動 脈 瘤,脳 血 管 疾 患,う っ 血 性 心 不 全,腎 不 全 を 伴 い,ま た,腎 動 脈 狭 窄 症 と 腎CCEは 併 存 す る こ と が 多 い 。 本 症 の 特 徴 と し て, 多 くの 例 で 血 管 手 術,動 脈 造 影,血 管 形 成 術,抗 凝 固 療 法 が 先 行 す る と さ れ,先 行 イ ベ ン トの1∼14日 後 に 臨 床 所 見
セル フ トレー ニ ン グ問題 の正 解 と解説 973 toes,toe gangrene),次 第 に 増 悪 す る 腎 不 全,網 膜 内CC正 な ど が 参 考 に な り,皮 膚 生 検 や 腎 生 検 で コ レ ス テ ロ ー ル 紀 晶 の 沈 着 を 証 明 す る 。 CCEに は 確 立 し た 治 療 法 は な い 。 増 悪 の 可 能 性 の あ る 打 凝 固 療 法 は 中 止 す る 。 ス テ ロ イ ド療 法,血 漿 交 換 療 法,ヌ タ チ ン 系 抗 高 脂 血 症 薬,LDLア フ ェ レ シ ス,CAPDな と が 試 み ら れ て い る 。 【参 考 文 献 】
. Scolari F, et al. Cholesterol crystal embolism: a
recogniz-able cause of renal disease. Am J Kidney Dis 2000; 36
1089-1109. (大野 岩 男) 【解 説2】 狭 心 症 な ど高 齢 で動 脈 硬 化 の ハ イ リス ク患 者 に,血 管 内操 作 や 血 管 外 科 的 処 置 直 後 か ら数 日,と き に は2∼3週 間 後 に,末 梢 の 虚 血 性 皮 斑 や 好 酸 球 血 症 と と もに急 速 進 行 性 の 腎 機 能 低 下 で 発 症 す る の が コ レ ス テ ロ ー ル 塞 栓 症(CCE) で あ る。 男 性,喫 煙 者,や せ 型,60歳 以 上 に多 く発 症 し, ほ とん ど は胸 部 大 動 脈 に プ ラ ー ク の形 成 を認 め る。 本 症 例 の よ う に,何 らか の 血 管 処 置 後 に医 原 性 に発 症 す るの が 大 部 分 を 占 め るが,動 脈 硬 化 症 に 対 す る抗 凝 固 療 法 中 に もプ ラ ー ク の遊 離 が 起 こ り,と き に発 症 す る。 腎 の み が 標 的 臓 器 に な る こ とは稀 で,腸 間 膜 動 脈 な どの塞 栓 症 で は腹 痛 を 訴 え る こ と もあ る。 皮 膚 症 状 は必 発 で,本 症 例 の よ う に網 状 皮 班(livedo reticularis)やblue toeな どが典 型 的 で あ る。 病 理 学 的 に は,血 管 内 に針 状 の コ レ ス テ ロー ル 結 晶 が 小 ・ 細 血 管 に認 め られ る。 急 性 型 で は腎 機 能 低 下 は急 速 で,高 血 圧 も伴 う が,蛋 白 尿 や 血 尿 は稀 で あ る。 治 療 に 関 し て は,根 治 術 は望 め な い が,診 断 が つ い た ら早 急 に抗 凝 固 療 法 を 中止 し,血 圧 の コ ン トロー ル をARBな どで 十 分 に行 い,透 析 や 血 液 濾 過 で 水 分 管 理 を施 行 す る 。LDLア フ ェ レ シ ス の 施 行 で 腎 機 能 の 低 下 が 改 善 し た とい う報 告 も あ る。 さ ら に 少 量 の ス テ ロ イ ド療 法 の 効 果 は報 告 さ れ て お り,ス タ チ ン も使 用 され る。 抗 血 小 板 薬 に つ い て は症 状 を 悪 化 させ る とい う報 告 は な い。 (武曾 恵 理) 問題12 正 解:b 【解 説1】 胃 癌 手 術 後 に定 期 的 な 経 過 観 察 を行 わ れ て い な か っ た 患 者 で あ り,右 水 腎 症 と左 萎 縮 腎 を認 め る こ とか ら,胃 癌 の 後 腹 膜 リ ンパ 節 転 移 に よ る両 側 尿 管 の 閉 塞 を きた して い る可 能 性 が 高 い 。 まず は水 腎 を きた し て い る右 に 腎瘻 を造 設 す べ き で あ る。 選 択 肢 の な か に尿 管 ス テ ン ト挿 入 が あれ ば そ れ を選 ん で もよ い が,消 化 管 の 悪 性 疾 患 の リ ンパ 節 転 移 に よ る尿 管 狭 窄 は,ス テ ン トを挿 入 して も短 期 間 に 詰 ま る こ とが 多 い 。 a:腎 瘻 に よ っ て 腎 機 能 の 回復 が 得 られ な い場 合 に行 う次 の 手 段 と考 え る。 b:正 しい 。 c:尿 路 の 通 過 障 害 を解 除 す る前 に水 分 負 荷 を行 って も利 尿 は得 られ な い。 d:無 尿 の 状 態 で尿 道 留 置 カ テ ー テ ル を挿 入 す る こ とに意 味 は な い 。 e:腎 瘻 に よ っ て 利 尿 が 得 られ れ ば カ リ ウ ム 値 は 下 降 す る。 (力石 辰 也) 【解 説2】 尿 素 窒 素98mg/dL,ク レ ア チ ニ ン8.9mg/dLと 高 度 の 腎 不 全 の状 態 で あ る が,本 エ ピ ソー ド以 前 の 腎 機 能 が 正 常 で あ った の か,す で に 腎 機 能 が 悪 化 し て い た の か は わ か ら ず,急 性 腎 不 全,慢 性 腎 不 全 の 急 性 増 悪,い ず れ も考 え う る。 急 性 腎 不 全,慢 性 腎 不 全 の 鑑 別 に お い て,腹 部 超 音 波 所 見 は重 要 な 情 報 を与 え る。 腎臓 の萎 縮 が 認 め られ れ ば, 慢 性 腎 不 全 が 存 在 して いた こ と を推 定 さ せ る。 また,急 性 腎 不 全 の場 合 に は,ま ず,腎 後 性 腎 不 全 を除 外 す べ きで あ り,そ の 点 か ら,水 腎 症 の有 無 を確 認 す る必 要 が あ る。 本 症 例 で は,右 水 腎症 を認 め る こ とか ら,腎 後 性 の 急 性 腎 不 全 と考 え,ま ず,右 腎 痩 の造 設 を行 うべ きで あ る。 左 腎 は 萎 縮 し て い るの で,あ る程 度 の 慢 性 の 腎 障 害 が あ っ た と こ ろ に,何 らか の 尿 管 の 閉 塞 機 転 が 生 じ,腎 後 性 急 性 腎 不 全 が 生 じ た こ とが 推 定 され る。 腎 痩 の造 設 に もか か わ らず, 尿 量 が 増 え ず,ク レア チ ニ ン値 が 上 昇 す る よ うで あ れ ば, 血 液 透 析 も必 要 とな るで あ ろ う。 ま ず は,腎 瘻 の造 設 を優 先 す べ き で あ る。 高 齢 の 患 者 の 発 熱,下 痢 とい う こ とで,脱 水 に よ る腎 前 性 の 急 性 腎 不 全 も考 慮 す べ き だ が,腹 部 超 音 波 検 査 で 下 大 静 脈 の 虚 脱 を認 め な い こ とか ら否 定 的 で あ る。 そ の こ とか ら 「点 滴 に よ る水 分 負 荷 」は不 正 解 と考 え る 。 膀 胱 は虚 脱 し て お り,尿 道 留 置 カ テ ー テ ル は効 果 が な い と考 え られ る。 ま た,血 清 カ リ ウ ム値 はや や 高 い が,「 イ オ ン交 換 樹 脂 投 与 」 を 急 ぐ必 要 は な い。 (門川 俊 明)
問 題13 正 解:c,e 【解 説1】 Alport症 候 群 の 症 例 で あ る。 本 症 は 遺 伝 形 式 の 約70 ∼80%の 大 多 数 がX染 色 体 連 鎖 性 優 性 遺 伝 形 式 を示 す。 そ の他,常 染 色 体 型 劣 性 遺 伝 に よ る も の(10∼15%),ま た 孤 発 例(10∼15%),常 染 色 体 優 性 遺 伝 形 式 の も の も報 告 さ れ て い る。X染 色 体 連 鎖 性 優 性 遺 伝 形 式 を 示 す も の の 病 因 はⅣ 型 コ ラー ゲ ンの α5(Ⅳ)で あ る こ とが 明 らか に な っ て い る。 本 症 例 で は,発 症 や 臨 床 所 見,症 状,兄 が 腎 不 全 で 難 聴 が あ る こ と よ りAlport症 候 群 で あ る可 能 性 が あ り, X染 色 体 連 鎖 性 優 性 遺 伝 形 式 で あ る こ とが 考 え ら れ る。 し た が っ て,Ⅳ 型 コ ラ ー ゲ ン の α5(Ⅳ)の 遺 伝 子 異 常 が あ る こ とが 考 え ら れ る。Ⅳ 型 コ ラ ー ゲ ン の α5(Ⅳ)は,他 の コ ラ ー ゲ ン と同様 に糸 球 体 の 基 底 膜,ボ ウ マ ン嚢 の 基 底 膜 の構 成 成 分 で あ る。 本 疾 患 で は,幼 少 期 よ り持 続 す る血 尿 を認 め,そ の後 蛋 白尿 が 出 現 し次 第 に増 加,進 行 性 の 腎 機 能 障 害 を呈 し,10∼20歳 代 後 半 ま で に は この 症 例 の よ う に末 期 腎 不 全 へ と進 行 す る。 特 徴 的 な の は,両 側 性 の進 行 性 の4,000∼8,000Hzの 高 音 域 の 感 音 性 難 聴 を伴 う こ とで あ る。 一 般 にヘ テ ロ とな る女 性 で は軽 症 例(血 尿,軽 度 の 蛋 白尿)が 多 い が,な か に は腎 機 能 障 害 を起 こ す 例 も報 告 さ れ て い る。 腎生 検 で は未 熟 な 糸 球 体 が み られ,メ サ ン ギ ウム 細 胞 お よ び基 質 の 増 加,進 行 す れ ば 巣 状 お よび 分 節 性 の 糸 球 体 硬 化 を示 す 。 電 顕 で は不 規 則 な肥 厚,緻 密 層 の 層状 化,菲 薄 化 や 断裂 が み られ,成 人 で は広 範 に認 め られ る。 蛍 光 所 見 は 通 常 陰 性 。 抗 α5(Ⅳ)抗 体 に て 基 底 膜 が 染 色 さ れ な い こ と が診 断 に有 用 で あ る。 尿 細 管 間 質 病 変 は間 質 に多 数 の 泡 沫 細 胞 を認 め,進 行 す る と間 質 の線 維 化 を認 め る。 (竹 本 文 美) 【解 説2】 若 年 男 性 に発 見 され た蛋 白尿,血 尿 を伴 う腎 機 能 障 害 で, 難 聴 を伴 う腎不 全 の 家 族 歴 が あ る こ とか ら,遺 伝 性 腎疾 患 の う ち最 も頻 度 が 高 いAlport症 候 群 を強 く疑 う。 Alport症 候 群 は,Ⅳ 型 コ ラ ー ゲ ン α 鎖 遺 伝 子 の 異 常 が 原 因 で あ る進 行 性 の 遺 伝 性 糸 球 体 疾 患 で あ る。 頻 度 は数 千 人 に1人 と考 え られ て お り,X染 色 体 連 鎖 性 優 性 遺 伝 型 が 全 体 の80%以 上(cは 正 解),常 染 色 体 劣 性 遺 伝 型 が10% 程 度 を 占 め る。 孤 発 例 も10%近 くあ り,稀 に 常 染 色 体 優 性 遺 伝 型 も存 在 す る。X染 色 体 連 鎖 性 優 性 遺 伝 型 はⅣ 型 コ ラー ゲ ン α5鎖 の 異 常 が 原 因 と され て い る(dは 誤 り)。 男 性 患 者 は 幼 少 期 よ り尿 所 見 異 常 を伴 う こ とが 多 く,30 歳 前 後 まで に は末 期 腎 不 全 へ と進 行 す る(bは 誤 り)。 経 過 中 に ネ フ ロー ゼ症 候 群 や 肉 眼 的 血 尿 を伴 う こ と も多 い。 ど の 遺 伝 形 式 で も腎 外 病 変 を合 併 す る こ とが 多 く,特 に感 音 性 難 聴 の 合 併 が 多 い(aは 誤 り)。 病 理 所 見 は,光 顕 上 糸 球 体 に特 徴 的 な 所 見 は な く,初 期 に は変 化 が 乏 し い。 しだ い に増 殖 性 糸 球 体 腎 炎 を呈 し,進 行 す る と硬 化 に 陥 る。 間 質 に は泡 沫 細 胞 を認 め る こ とが 多 い (問題 文 に記 載 あ り)。 免 疫 染 色 で は補 体 や 免 疫 グ ロ ブ リ ン の 沈 着 は認 め な い こ とが 多 い。 電 子 顕 微 鏡 所 見 は 特 徴 的 で,基 底 膜,特 に緻 密 層 の 不 規 則 な肥 厚 と菲 薄 化,網 目状 変 化 や 層 状 の 断裂 を認 め る(eは 正 解)。 症 例 に よ っ て は, こ の所 見 が 軽 微 な こ と もあ り,菲 薄 基 底 膜 病 と の鑑 別 が 困 難 な こ と もあ る。 (内 田 啓 子) 問 題14 正 解:c 【解 説1】 プ ロ トン ポ ンプ 阻 害 薬 に よ る薬 剤 性 の 慢 性 尿 細 管 間 質 性 腎 炎 を想 定 して い る。 尿 毒 症 の 症 状 は な く,血 液 検 査 か らみ て も,透 析 の適 応 で は な い 。 Na排 泄 率(FEN。)か ら は腎 前 性 の もの は考 え に く く,生 食 負 荷 に よ る強 制 利 尿 の適 応 もな い 。 まず 行 うべ き こ とは原 因 とし て可 能 性 の あ る薬 剤 の 中 止 で あ る。 な お,ASNの2005年 のNESPの 解 説 で は,慢 性 尿 細 管 間 質 性 腎 炎 を起 こす 代 表 的 な もの と して,環 境 中 の有 毒 物 質(鉛,揮 発 性 炭 化 水 素 な ど),薬 物 中 の 毒 性 物 質(ア リ ス トロ キ ア 酸 な ど),ヘ ロ イ ン,プ ロ トン ポ ン プ 阻 害 薬,鎮 痛 薬(フ ェナ セ チ ン,ア セ トア ミ ノ フ ェ ン,ア ス ピ リ ン, NSAID)を あ げ て い る。 この 他,シ ク ロ ス ポ リ ンや リチ ウ ム に よ る慢 性 間 質 性 腎 炎 も有 名 で あ る。 (南 学 正 臣) 【解 説2】 腎 生 検 所 見 で病 変 は 間 質 に限 局 し,リ ンパ 球 主 体 の細 胞 浸 潤 を認 め る こ と よ り,間 質 性 腎炎 と診 断 で き る。 本 症 例 の 治 療 方 針 と して,薬 剤 性 の 可 能 性 を否 定 で き な い た め,ま ず 第 一 に 内服 中 の 胃薬 を中 止 す る こ とが 必 要 で あ る。 間 質 性 腎 炎 は原 因不 明 の こ と も多 い が,薬 剤 中止 後 に 腎機 能 が 改 善 す れ ば薬 剤 性 と診 断 で き る こ と もあ る。 薬 剤 性 腎 障 害 の場 合,原 因物 質 の体 外 へ の 排 出促 進 の た め 血 液 透 析 や 血 液 吸 着 な どが必 要 とな る場 合 もあ るが,本 症 例 で の適 応 は な い。 また,体 液 過 剰 な ど もな く,透 析 を必 要 とす る状 態
セ ル フ トレーニ ング 問題 の正 解 と解 説 975 と は言 え な い 。ARB投 与 は,高 血 圧 出 現 や 糸 球 体 高 血 圧 の 是 正 を長 期 的 に考 慮 す る場 合 に投 与 す る。 血 清 ク レ ア チ ニ ン値 上 昇 の 原 因 と して,血 圧 正 常 やFEN。>1 .0か ら腎 前 性 の 要 素 は な く,生 食 負 荷 に よ る強 制 利 尿 は適 応 と な らな い 。 間 質 性 腎 炎 の場 合,ア レ ル ギ ー 症 状 の 存 在,間 質 浸 潤 細 胞 に好 中球 や 好 酸 球 を伴 う場 合 な どは,過 敏 性 の 急 性 間 質 性 腎 炎 が考 慮 さ れ,副 腎 皮 質 ス テ ロ イ ド薬 の早 期 投 与 に よ り早 期 軽 減 を図 れ る可 能 性 が あ る。 しか し,免 疫 抑 制 薬 の 投 与 に 関 して は エ ビデ ン ス が な い。 (藤垣 嘉 秀) 問 題15 正 解:e 【解 説1】 左 腎 下 極 に 腫 瘤 影 を認 め る。 長 期 透 析 患 者 に 出現 す る後 天 性 嚢 胞 腎(acquired cystic disease of the kidney: ACDK)に
腎 細 胞 癌 を併 発 した症 例 で あ る。 腹 部 エ コ ー,腹 部CTに てACDKを 認 め,腎 エ コ ー に て 左 腎 下 極 に 約3cmの 内 部 不 均 一 な充 実 性 腫 瘤 を,CTに て 同 様 に 左 腎 下 極 に 等 吸 収 域 の 腫 瘤 影 を認 め る。 また こ こで は示 さな いが,本 例 の MRI画 像 で はT2強 調 画 像 に て 嚢 胞 の部 分 が 高 信 号 域 に, 充 実 性 腫 瘤 の部 分 が 低 信 号 域 を示 して い た 。 本 例 は根 治 的 左 腎 摘 出術 を 行 い,病 理 組 織 で は 腎 細 胞 癌(tubular type, clear cell type)で あ っ た 。
ACDKは 透 析 開 始 時 に も透 析 患 者 の12%に 存 在 し,透 析 10年 以 上 で は90%に 存 在 す る 。 ま た,透 析 患 者 の 腎 癌 年 間 発 生 率 は146∼191人/10万 人 と報 告 さ れ て お り,一 般 人 と比 較 した 標 準 化 発 生 比 で は14.8倍 で あ る とさ れ て い る。 【参 考 文 献 】 1.石 川 勲.多 嚢胞 化 萎 縮 腎 と腎 癌-長 期 透 析 合 併 症,石 川:金 沢 医科大 学 出版局,2006. 2.石 川 勲.透 析 患 者 に み られ る 腎 癌 の 現 況-2002年 度 (2000年3月 か ら2年 間)ア ンケ ー ト集 計 報 告-.透 析 会 誌2004; 37: 1606-1615. (大 野 岩 男) 【解 説2】 腹 部 エ コー で は,左 腎 に複 数 の 嚢 胞 が 見 られ て お り,ま た,1つ の嚢 胞 の 後 方 に 内部 エ コ ー を有 す る腫 瘤 が 認 め ら れ る。 造 影CTで は右 腎 に も多 数 の 嚢 胞 が あ り,左 腎 の 腫 瘤 は 不 均 一 な 造 影 薬 増 強 効 果 が あ る。15年 間 の 血 液 透 析 歴 の あ る症 例 で あ る こ と よ り,多 嚢 胞 化 萎 縮 腎 に お け る腎 癌 の 合 併 が 最 も考 え られ る。 ウ イル ム ス 腫 瘍 は小 児 の疾 患 で あ る こ と,腎 結 核 で はCT 上 石 灰 化 を呈 す る こ とが 多 く膿 瘍 形 成 や 空 洞 が 見 られ る こ と,ま た 腎 梗 塞 と は造 影 分 布 の 異 な る こ とな どか ら,こ れ ら の 疾 患 の 可 能 性 は低 い。 血 管 筋 脂 肪 腫 は,血 管,平 滑 筋,脂 肪 か ら成 る 腎 実 質 内 に 発 生 す る 過 誤 腫 で,CTや MRIに て 内 部 に脂 肪 を有 す る不 均 一 な軟 部 腫 瘤 と し て見 られ る。 本 例 で はCTで 脂 肪 濃 度 が 見 られ な い の で,可 能 性 は低 い 。 多 嚢 胞 化 萎 縮 腎 は,萎 縮 した 両 腎 に嚢 胞 が 多 発 した 状 態 を い う。 透 析 開 始 前 よ り10数%に み られ,3年 で 約80%, 10年 で90%の 頻 度 で み られ る。 透 析 患 者 で は腎 癌 の 年 間 発 症 率 は0.1∼0.4%と 高 い が,多 嚢 胞 化 腎 萎 縮 を伴 う もの が 腎 癌 全 体 の 約80%で あ り,多 嚢 胞 化 腎 萎 縮 で は数%に 腎 癌 を合 併 す る とさ れ て い る。 (安 田 隆) 問題16 正 解:a,c 【解 説1】 IgG 4関 連 疾 患 の 問 題 で あ る。 IgG 4関 連 疾 患 は,本 例 の よ う に後 腹 膜 線 維 症 に て水 腎 症 を起 こ して 腎 機 能 低 下 を きた した り,間 質 性 腎炎 を起 こす こ とが あ り,腎 臓 医 も知 っ て お くべ き疾 患 概 念 と思 わ れ る。 副 腎 皮 質 ス テ ロ イ ド薬 が 有 効 で あ り,本 例 で も顎 下 腺 腫 脹,後 腹 膜 線 維 腫 の 著 明 な縮 小 が あ り,線 維 腫 に よ る尿 管 の 圧 排 が解 除 され,水 腎 症 も改 善 し,腎 機 能 も正 常 化 し た。 組 織 所 見 で はIgG 4免 疫 染 色 陽性 の リ ンパ 球 浸 潤 が 認 め られ る。IgG 4関 連 疾 患 で は 自己 免 疫 性 膵 炎 の 合 併 が 最 も多 い が,ほ か に唾 液 腺 炎,間 質 性 肺 炎,縦 隔 リ ンパ 節 腫 大,硬 化 性 胆 管 炎,胆 嚢 壁 肥 厚,肝 炎 症 性 偽 腫 瘍,間 質 性 腎 炎,後 腹 膜 線 維 症,慢 性 甲状 腺 炎,関 節 リウ マ チ,関 節 炎,糖 尿 病 な どの 合 併 症 が 認 め られ る。Sjogren症 候 群 と の鑑 別 が 問題 とな る が,Sjogren症 候 群 と異 な り80%以 上 でIgG 4が 高 値 で あ り,抗SS-A抗 体,抗SS-B抗 体 の 陽 性 率 は低 い。 (竹本 文 美) 【解 説2】 本 症 例 は水 腎症 と大 動 脈 周 囲 の腫 瘤 病 変 が確 認 さ れ て い る こ と よ り,後腹 膜 線 維 症(retroperitoneal fibrosis, Ormond's disease)と 考 え ら れ る。 後 腹 膜 線 維 症 に は特 発 性 と二 次 性 の も の が あ り,約2/3は 前 者 と さ れ て い る。 特 発 性 は40 ∼60歳 の 男 性 に多 い と され て い る。 原 因 は不 明 で あ るが2 つ の病 因 仮 説 が提 唱 さ れ て い る。 一つ は大 動 脈 の 粥 状 硬 化
に 伴 う 炎 症 が 周 囲 に 波 及 す る 慢 性 の 動 脈 周 囲 炎 で あ る と の 説,も う 一 つ は 全 身 性 の 自 己 免 疫 現 象 で,自 己 抗 体 や 自 己 免 疫 疾 患 を 伴 う も の と の 説 で あ る 。 一 方,近 年 わ が 国 を 中 心 に 自 己 免 疫 性 膵 炎(autoimmune pancreatitis: AIP)の 存 在 が 明 ら か に さ れ,他 の 自 己 免 疫 疾 患 と の 合 併 が 報 告 さ れ て い る 。 こ れ ら に は 関 節 リ ウ マ チ,Sjogren症 候 群,サ ル コ イ ド ー シ ス,硬 化 性 胆 管 炎, 原 発 性 胆 汁 性 肝 硬 変,後 腹 膜 線 維 症,尿 細 管 間 質1生 腎 炎 な ど が 報 告 さ れ て い る 。 画 像 上 で は,膵 臓 癌 あ る い は リ ン パ 腫 と の 鑑 別 が 要 求 さ れ る 。 興 味 深 い の は,AIPの 膵 組 織 の み な らず 他 の 病 変 組 織 に もIgG 4産 生 形 質 細 胞 の 浸 潤 が 観 察 さ れ る こ と で あ る 。 こ れ ら の 患 者 で は 血 清IgG 4レ ベ ル の 上 昇 も 観 察 さ れ,平 均660mg/dL(正 常140以 下)と の 報 告 も あ る 。AIPは 副 腎 皮 質 ス テ ロ イ ド薬 に 劇 的 に 反 応 し,膵 腫 瘤 の 縮 小 と血 清IgG 4の 低 下 が 得 ら れ る 。 本 症 例 で は 後 腹 膜 線 維 症 に よ る 水 腎 症 と と も に,両 側 顎 下 部 の 腫 脹 と膵 管 狭 窄 が 観 察 さ れ て い る こ と よ り,「 後 腹 膜 線 維 症 を 伴 っ た 自 己 免 疫 性 膵 炎 」と 考 え ら れ る 。 し た が っ て,解 答 選 択 肢 の な か で はIgG 4高 値 と副 腎 皮 質 ス テ ロ イ ド薬 有 効 が 正 解 で あ る 。 【参 考 文 献 】
1. Hamano H,Kawa S, Ochi Y, et al. Hydronephrosis
associat-ed with retroperitoneal fibrosis and sclerosing pancreatitis. Lancet 2002; 359 (9315): 1403-1404. (遠 藤 正 之) 問 題17 正 解:c 【解 説1】 ガ ド リ ニ ウ ム 系 造 影 剤 を 用 い たMRI後 に 皮 膚 の 腫 脹 と拘 縮 が 出 現 し た 透 析 患 者 がCowperに よ っ て2000年 に 初 め て 報 告 さ れ た 。 そ の 後 の 報 告 を ま と め て,現 在 は 腎 性 全 身 性 線 維 症(NSF)と し て 提 唱 さ れ て い る 。 ガ ド リ ニ ウ ム 系 造 影 剤 使 用 直 後 よ り倦 怠 感 や 痛 み な ど さ ま ざ ま な 症 状 を 訴 え る 症 例 も あ る が,多 く の 場 合,皮 膚 の 肥 厚 や 疼 痛 に よ り 関 節 運 動 が 抑 制 さ れ,重 症 例 で は 歩 行 が 困 難 に な り,20% 以 上 の 症 例 が 死 に 至 る と さ れ て い る(選 択 肢a:誤 り,c: 正 解)。 剖 検 例 で は 筋 肉,心 臓,肺 な ど の 臓 器 に 線 維 化 が 見 ら れ る 。 赤 沈 とCRPが 亢 進 す る 以 外 に は 特 異 的 な 検 査 所 見 は な く,各 種 の 自 己 抗 体 も 患 者 に よ っ て 所 見 が 異 な る (選 択 肢b:誤 り)。 血 液 透 析 患 者 だ け で は な く,腎 機 能 低 下 症 例 で も 発 症 し(選 択 肢d:誤 り),保 存 期 腎 不 全 患 者 で は 腎 機 能 の 回復 と と も に疾 患 の 進 行 が 遅 延 す る が,透 析 患 者 で は排 泄 が で き な い た め に,検 査 施 行 後 に透 析 を行 う以 外 の対 処 法 が な い。 現 在 の と こ ろ治 療 法 は見 つ か って お ら ず,血 漿 交 換 や イ ンタ ー フ ェ ロ ン,免 疫 グ ロ ブ リ ン投 与 な どが 試 行 さ れ て い る(選 択 肢e:誤 り)。 本 例 で はMR angiographyに 用 い る通 常 量(20mL)が 使 用 さ れ た が,造 影 剤 の使 用 量 と発 症,重 症 度,予 後 に 関 す る デ ー タ は まだ な い た め,減 量 に よ り予 防 で き る か ど うか は 不 明 で あ る。2007年3月 に,日 本 医 学 放 射 線 学 会 か ら透 析 患 者 を含 む 腎 障 害 患 者,肝 移 植 患 者 に対 す る ガ ド リニ ウ ム含 有 造 影 剤 の 使 用 につ い て,使 用 禁 忌 を含 む安 全 情 報 が 出 され て い る。 (菅野 義 彦) 【解 説2】
Nephrogenic systemic fibrosis (NSF)/nephrogenic fibrosing dermopathy (NFD)は,腎 不 全 患 者 にの み報 告 され て い る, 近 年 確 認 され た 新 しい 線 維 性 疾 患 で あ る。 特 に透 析 患 者 で 多 く報 告 され て い るが,急 性 腎 不 全 や保 存 期 腎不 全 症 例 で も発 症 し,2006年 末 まで に 国 際NSF研 究 セ ン タ ー(エ ー ル 大 学)に215例 が 報 告 され て い る。 ガ ド リニ ウ ム を 含 む 造 影 剤 がNSFの 発 症 と関 連 す る こ とが 知 ら れ て お り,重 度 の 腎 不 全 患 者 で は,ガ ドリニ ウ ム に 曝 露 さ れ る とお よそ 5%にNSFが 発 症 す る と予 測 され て い る。 診 断 は,ガ ドリ ニ ウム の 曝 露 歴 と皮 膚 生 検 に よ る皮 膚 線 維 芽 細 胞 の 増 殖, 皮 膚 の 肥 厚 に よ りな さ れ る。NSFの 皮 膚 病 変 は,典 型 的 に は,左 右 対 称 性 に,両 側 の 線 維 性 硬 化 性 丘 疹,皮 下 結 節 を下 腿,躁 や 手 に認 め,さ ら に大 腿 や 前 腕 な ど近 位 部 が 障 害 され て くる。 皮 膚 病 変 は さ ら に肥 厚 し固 くな る。 関 節 も 冒 され る と可 動 性 が 失 わ れ機能 障 害 を生 ず る。 抗 核 抗 体, 抗Scl-70抗 体,リ ウ マ チ 因 子 な どは 陰 性 で あ る。 確 立 し た 治 療 法 は現 段 階 で は な く,発 症 予 防 が 最 も大 切 で あ る。 CKDス テ ー ジ5や 透 析 症 例 で は,基 本 的 に ガ ド リニ ウ ム を含 有 す る造 影 剤 を使 用 しな い こ とが 望 ま しい 。 止 む を得 ず 使 用 す る場 合 は,十 分 な イ ン フ ォー ム ド ・コ ン セ ン トを 行 う こ と と,使 用 後 速 や か に 血 液 透 析 を行 う こ とな どが 推 奨 され る。 残 存 腎機 能 が どれ だ け あ れ ば安 全 な の か 今 後 検 討 が 必 要 で あ ろ う。NSFは,慢 性 で 軽 快 し に く く,30% の 症 例 で死 亡 す る予 後 の悪 い 疾 患 で あ る。 日本 腎 臓 学 会 で は,日 本 人 に お け るNSFデ ー タ の 収 集 に 努 め て い る。 症 例 を経 験 した 医 師 は,日 本 腎 臓 学 会 に 経 過,病 理 組 織 所 見 な どの報 告 を お願 い し た い 。 (平和 伸 仁)
セ ル フ ト レ ー ニ ン グ 問 題 の 正 解 と 解 説 977 問 題18 正 解:b 【解 説1】 先 行 す る出 血 性 腸 炎,特 にO-157陽 性 の大 腸 菌 で あ れ ば, ベ ロ毒 素 関 連 の 溶 血 性 尿 毒 症 症 候 群(HUS)を 考 え た い 。 一 般 に 大 腸 菌 感 染 か らHUS発 症 ま で7日(3∼15日)と い わ れ て い る。 HUSは,① 非 免 疫 的,機 械 的 溶 血 に よ る貧 血,② 血 小 板 血 栓 形 成 に よ る 血 小 板 減 少,③ 腎 障 害,を 主 症 状 と し て い る。 原 因 と して は細 菌,特 にベ ロ毒 素 を持 つ 大 腸 菌 が有 名 で あ る が,薬 剤(シ ク ロ ス ポ リ ン,タ ク ロ リム ス,マ イ トマ イ シ ンCな ど),妊 娠,骨 髄 移 植 後 な どで も起 こ る。 病 態 はベ ロ毒 素 な ど種 々 の 原 因 に よ る内 皮 細 胞 の 障 害 に よ る血 栓 形 成 と考 え られ て い る。 溶 血 性 貧 血 の た め,尿 中 にfreeヘ モ グ ロ ビ ン が 出 現 し, 尿 潜 血 が 陽 性 に な る が,沈 渣 に は 赤 血 球 は認 め られ な い (赤 血 球 陰 性 の 尿 潜 血 陽 性 例 を み た ら,ヘ モ グ ロ ビ ン尿, ミオ グ ロ ビ ン尿 な ど を考 え る)。 自 己 免 疫 性 溶 血 で は な く,機 械 的 血 管 内 溶 血 の た め, Coombs試 験 は陰 性 で あ り,末 梢 血 塗 抹 標 本 で の 破 砕 赤 血 球 の存 在 が 特 徴 的 で あ る。 血 小 板 減 少 も自 己免 疫 機 序 で は な く,機 械 的 消 耗 の た め抗 血 小 板 抗 体 は認 め な い 。
ADAMTS-13 (von Willebrand factor-cleaving protease: VWF-CP)は 血 管 内 で作 られ る フ ォ ン ウ ィル ブ ラ ン ド因 子 (vWF)を 切 断 す る酵 素 で あ る 。 血 栓 性 血 小 板 減 少 性 紫 斑 病(TTP)で は 活 性 が3%以 下(ほ ぼ0)に な り,同 時 に イ ン ヒ ビ ター を 認 め る(抗ADAMTS-13抗 体)。HUSで は ADAMTS-13の 活 性 は 少 し 低 下 す る の み で あ り,抗 ADAMTS-13抗 体 は認 め難 い 。 (吉 田篤 博) 【解 説2】 腸 管 出血 性 大 腸 菌(O-157)感 染 後 に血 尿,蛋 白尿,急 性 腎 不 全,貧 血,血 小 板 減 少 を発 症 した10歳 女 児 の 症 例 で あ る。 溶 血 性 尿 毒 症 症 候 群(HUS)は,O-157感 染 者 の 約1∼10% (特 に小 児)に お い て,下 痢 あ る い は発 熱 出現 の通 常4∼10 日後 に発 症 す る志 賀 毒 素(Stx)な ど に よ っ て 惹 起 され る血 栓 性 微 小 血 管 障 害 で あ る。 乏 尿,浮 腫,出 血 斑,頭 痛,傾 眠,不 穏,痙 攣,血 尿 ・蛋 白尿 な ど の症 候 を呈 す る。 平 成12年 に改 訂 され た 日本 小 児 腎臓 病 学 会 の 「腸 管 出 血 性 大 腸 菌 感 染 に伴 うHUSの 診 断 ・治 療 の ガ イ ドラ イ ン」で, HUSは 臨 床 的 に は下 記 の3主 徴 を も っ て診 断 す る と さ れ て い る。 経 過 か ら,本 症 例 はHUSが 最 も考 え られ,特 徴 的 な検 査 所 見 と して 破 砕 赤 血 球 が あ げ られ る。 な お,他 の 選 択 肢 に つ い て は,赤 血 球 円 柱 は糸 球 体 か らの 出 血 を示 唆 す る尿 所 見 で あ り,抗 血 小 板 抗 体 は特 発 性 血 小 板 減 少 性 紫 斑 病,全 身 性 エ リテ マ トー デ ス,ま た 輸 血 や 妊 娠 な ど に よ っ て産 生 され,Coombs試 験(直 接)は 自己 免 疫 性 溶 血 性 貧 血,抗ADAMTS-13抗 体 は血 栓 性 血 小 板 減 少 性 紫 斑 病 で 認 め られ る。 表3 日本 小 児 腎臓 病学 会 「腸管 出血性 大 腸 菌感 染 に伴 う HUSの 診断 ・治 療 のガ イ ドラ イ ン」 (平 成12年6月 改 定 版 よ り抜 粋) (小 原 ま み 子) 問 題19 正 解:a 【解 説1】 治 療 と して は 1)大 腸 菌 感 染 に対 す る殺 菌 的 抗 菌 薬 の 経 口投 与 が 推 奨 さ れ る。 経 口 が 無 理 な場 合 に は 静 脈 内投 与 を行 う。 2)水 ・電 解 質 の 管 理 ・補 正 を厳 重 に行 う。 3)輸 血:(Ht<25%の 症 例),血 小 板 輸 注:(血 小 板<3 万 の 症 例) 4)高 血 圧 が あ れ ば,降 圧 薬 治 療 5)透 析 療 法:水 分 貯 留 の管 理 が で きな い 高 血 圧 例 で は早 め に透 析 を行 う。 進 行 例 で は よ り早 期 の 透 析 導 入 が 必 要 で あ る。 腎機 能 の 回 復 は,通 常,2週 間 以 内 に認 め られ る。 6)脳 症 の 治 療:抗 痙 攣 薬,脳 圧 降 下 薬 非 感 染 性,遺 伝 性,再 発 性 溶 血 性 尿 毒 症 症 候 群(HUS)に は 血 漿 交 換 療 法,血 漿 輸 注 が 有 効 で あ る が,感 染 性HUS に は不 必 要 で,有 効 とい うエ ビデ ン ス は な い 。HUSと 類 似 の 病 態 を示 す 血 栓 性 血 小 板 減 少 性 紫 斑 病(TTP)に 対 す
る血 漿 交 換 療 法 は 有 効 で あ る と報 告 され て い る。TTPは 中枢 神 経 障 害 を起 こ しや す く,血 漿 交 換 療 法 が 普 及 す る前 の 死 亡 率 は ほ ぼ90%で あ っ た が,血 漿 交 換 療 法 を 行 う よ う に な り,救 命 率 は著 し く改 善 した 。 逆 に出 血 性 大 腸 炎 に よ る典 型 的 なHUSに お い て は,そ の91%が 対 症 療 法 の み で 救 命 可 能 で あ る とい わ れ,こ の 場 合 は 血 漿 交 換 療 法 の適 応 は な い と され て い る1)。 γ-グ ロ ブ リ ン治 療,ス テ ロ イ ド治 療 も有 効 性 の デ ー タ は な い 。 治 療 と し て は,支 持 療 法+適 切 なHDの み が 良 い と い わ れ て い る。 一 時,抗 菌 薬 投 与 がHUSを 誘 発 す る の で は と の 懸 念 もあ った が,Safdar Nら の メ タ ア ナ リ シ ス で,抗 菌 薬 使 用 に よ りHUS発 症 の リ ス クが 上 昇 す る とは 考 え られ な い と結 論 され た2)。 【参 考 文 献 】
1. Garg AX, Suni RS, Barrowman N. Long-term renal
progno-sis of diarrheaassociated hemolytic uremic syndrome: a
systematic review, meta-analysis, and meta-regression.
JAMA 2003; 290:1360-1370.
2. Safdar N, Said A, Gangnon RE, et al. Risk of hemolytic
uremic syndrome after antibiotic treatment of Escherichia
coli 0157: H7 Enteritis: A Meta-analysis. JAMA 2002;
288: 996-1001. (吉 田 篤 博) 【解 説2】 HUSの 重 症 度 は さ ま ざ ま で あ る が,急 性 期 の加 療 を受 け た 患 者 の 多 くの 予 後 は良 好 で,HUSの 治 療 法 の 基 本 は 支 持 療 法 で あ る。 急 性 期 の 死 亡 率 は約2∼5%と さ れ て い る。 支 持 療 法 は,輸 液 を 中 心 と し た体 液 管 理 が 基 本 で,急 性 腎 不 全 の 溢 水,ア シ ドー シ ス,電 解 質 異 常,尿 毒 症 症 状 な どが 保 存 的 治 療 で コ ン トロ ー ル で き な い場 合,透 析 を 施 行 す る。 また,ほ か に は 高 血 圧 に対 す る 降 圧 療 法,貧 血 に対 す る輸 血,脳 症 に 対 す る 抗 痙 攣 薬 や 脳 浮 腫 対 策, 合 併 す るDIC治 療,経 腸 栄 養 不 能 期 間 が 遷 延 す る場 合 の 中 心 静 脈 栄 養 な どが 支 持 療 法 と して あ げ られ る。 特 異 的 治 療 法 と し て,血 漿 交 換 療 法 や 血 漿 輸 注,γ-グ ロ ブ リ ン製 剤,抗 血 小 板 薬,プ ロ ス タ グ ラ ン ジ ン12,ビ タ ミ ンE,ハ プ トグ ロ ビ ン な どが あ げ ら れ る が,腸 管 出 血 性 大 腸 菌 に よ るHUSで の 有 効 性 は確 立 さ れ て い な い 。 よっ て,初 期 治 療 と して,補 液 の み が 適 切 で あ る。 【参 考 文 献 】 1.日 本小 児 腎臓病 学会.腸 管 出血性 大腸 菌 感染 に伴 う溶 血性 尿 毒症 症候 群 の診 断 ・治 療 の ガイ ドラ イ ン.(平 成12年6 月改定 版): http://www.jspn.jp/pe-gakujyutsu.html (小原 まみ 子) 問題20 正 解:d 【解 説1】 妊 娠 は最 終 生 理 を0週 と して 数 え,40週0日 で 出 産 す る。 1/29∼ 妊 娠4週,2/26∼ 妊 娠8週,3/26妊 娠12週,4/23 ∼ 妊 娠16週,5/21∼ 妊 娠20週,6/18∼ 妊 娠24週,7/16 ∼ 妊 娠28週 ,8/13∼ 妊 娠32週 ・ ・ 本 例 は8月1日 で は 妊 娠30週2日(妊 娠8ヵ 月)で あ り, 予 定 日は10月8日 頃 で あ る。 体 重 増 加 は妊 娠 末 期 まで に8∼10kg程 度 で あ り,こ の 週 数 で 多 す ぎ る と は言 え な い 。 本 例 の場 合,妊 娠 高 血 圧 症 候 群 の な か で,妊 娠 高 血 圧 腎症 と診 断 され る。 古 くは,妊 娠 経 過 中 に起 こ る す べ て の 浮 腫,蛋 白尿,高 血 圧 を含 め て 妊 娠 中 毒 症(toxemia of preg-nancy)と よ ん で い た が,時 代 を経 る ご と に 諸 外 国 で は 二 次 性 の もの は 削 除 され,高 血 圧 を そ の 病 態 の 中 心 に お い た も の に 変 わ っ て きて い た 。2005年 日本 産 婦 人 科 学 会 で 新 た に用 語 の 統 一 が 図 られ,浮 腫 は定 義 か ら削 除 され,妊 娠 中 毒 症 の 基 本 病 変 は妊 娠 時 に起 こ る血 管 の収 縮 が 主 体 で あ り,こ れ に よ る高 血 圧 が 主 徴 で あ る との認 識 に基 づ い て, 妊 娠 高 血 圧 症 候 群 と名 づ け られ た 。 定 義 と し て は,"妊 娠 20週 以 降,分 娩 後12週 まで 高 血 圧 が み られ る場 合,ま た は高 血 圧 に蛋 白 尿 を伴 う場 合 の い ず れ か で,か つ これ らの 症 状 が 単 な る妊 娠 の 偶 発 合 併 症 に よ る もの で はで な い もの を い う"と さ れ た 。 分 類 と し て,妊 娠 高 血 圧 腎 症(preeclampsia)は 妊 娠20週 以 降 で初 め て 高 血 圧 が 発 症,か つ 蛋 白尿 を伴 う もの で,分 娩 後12週 ま で に 正 常 に 復 す る場 合 を い う。 妊 娠 高 血 圧 (gestational hypertension)は 妊 娠20週 以 降 で 初 め て 高 血 圧 が 発 症 し,分 娩 後12週 ま で に 正 常 に復 す る場 合 をい う。 terminationの 適 応 指 針 と して は, ● 母 体 側 因 子:1.治 療 に関 わ らず 病 態 が 改 善 し な い 。 2.母 体 合 併 症(子 癇,重 症 常 位 胎 盤 早 期 剥 離,眼 底 出血,高 度 の 胸 ・腹 水,肺 水 腫,頭 蓋 内 出 血,HELLP症 候 群 な どの併 発) 3.腎 機 能 の 悪 化 4 .血 液 凝 固 異 常 の 出 現(血 小 板10万/μL 未 亢満,DICス コア 上 昇 傾 向 な ど) ● 胎 児 側 因 子:1.胎 児 発 育 停 止 妊 娠28週 以 降 で2週 間 の発 育 停 止 2.胎 児 心 拍 モ ニ タ ー の異 常 所 見 3.胎 児 胎 盤 機 能 の 悪 化(biophysical