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イメージセンサ技術

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(1)

招待論文

イメージセンサ技術

須川

成利

a)

Image Sensor Technologies

Shigetoshi SUGAWA

†a)

あらまし 固体撮像素子の代表格であるCCD イメージセンサ及び CMOS イメージセンサの発展の基礎と なった重要な技術をまとめ,今後のイメージセンサ技術の展開について論じる. キーワード CCD,CMOS,イメージセンサ

1.

ま え が き

センサとは,自然界に存在する物理量を検出して,

電気信号(電荷,電流,電圧など)に変換するデバイ

スのことを指す.センサの中でも,光を検出して画像

信号を取得するイメージセンサは,今日では,スマー

トフォンやディジタルカメラなどの民生機器だけでな

く,防災,防犯,科学・産業計測,車載,医療,生命

科学,農業,食品,材料,資源,宇宙,環境などの分

野において,広く利用されるようになった.この

100

年余の間に,イメージセンサの性能・機能は,電子情

報通信分野の技術の飛躍的な発展の恩恵を受け,大い

に向上した.現在,イメージセンサ技術は,物理限界

に近い性能を極めつつあり,人が静止画や動画を観賞

する目的にとどまらず,人の目で捉えることのできな

い,微弱・微細・広光波長・高速な画像信号を計測・

記録・解析する用途への応用が拡大している.

この度,学会創立

100

周年記念特集号の執筆という

機会をいただき,稽古照今の想いで,先達の業績を改

めて勉強させていただいた.イメージセンサの研究開

発に高々

35

年ほど従事してきただけの筆者にとっては

重責ではあるが,本論文において,現在主力となって

いるイメージセンサの二つの方式,すなわち固体撮像

素子の代表格である

CCD

Charge Coupled Device

イメージセンサ及び

CMOS

Complementary Metal

東北大学大学院工学研究科,仙台市

Graduate School of Engineering, Tohoku University, 6–6–11 Aramaki Aza Aoba, Aoba-ku, Sendai-shi, 980–8579 Japan a) E-mail: [email protected]

Oxide Semiconductor

)イメージセンサを支えている

重要な技術の原点と性能をまとめ,また,今後のイ

メーセンサ技術について論じたいと思う.

2.

イメージセンサを支える重要技術

イメージセンサ技術の歴史については文献

[1]

[27]

に優れた解説がなされている.概説すると,

19

世紀

に発見・発明された撮像の基本原理である光電変換,

画素アレー,信号走査読み出しを基に,

20

世紀に入

り,約

30

年間の機械走査撮像の時代を経て,

1930

頃から様々な撮像管が開発された後,

1960

年代に入

り固体撮像素子が提案されている.日本では,高柳

1926

年にニポー円盤で画像を走査して高速電子回

路で映像を作り,雲母板に書いた「イ」の字を世界で

初めてブラウン管上に表示することに成功し,電子

映像の時代を切り拓いた

[28]

CCD

及び

CMOS

メージセンサの原型が発明されたのは

1960

年代で

ある

[29], [30]

.また

1967

年には,テレビジョン学会

(現:映像情報メディア学会)に固体画像変換装置研

究委員会(現:情報センシング研究委員会)が設置さ

れ,本格的な固体撮像素子の研究討論が開始されてい

る.その後を

10

年ごとに特徴付けると,

1970

年台は

米国を中心とした固体撮像素子の基礎技術の提案の時

代,

1980

年台は日本が先陣となった

CCD

イメージセ

ンサの製品実用化と

CCD

に代わる新たなイメージセ

ンサ技術への挑戦の時代,

1990

年台は

CCD

の普及と

CMOS

イメージセンサの登場の時代,

2000

年台は高

画質

CMOS

イメージセンサの実用化を契機とした主

役の交代(

CCD

CMOS

の出荷個数が逆転したの

(2)

図 1 センサ技術の位置付けを表すユニバーサルモデル図 (文献 [31] に筆者加筆)

Fig. 1 Sensing technology universal model.

図 2 ディジタルカメラの基本構成の一例 Fig. 2 Basic components of a digital camera.

2004

年から

2005

年にかけてである)と飛躍的普

及の時代,

2010

年台は

CMOS

イメージセンサの高性

能化・高機能化と

“sensor everywhere”

と称される大

展開の時代といえる.

1

は,イメージセンサ技術の位置付けをやや抽

象化して表現したユニバーサルモデル図である

[31]

いつの時代も変わりなく,イメージセンサは,

Real

World

から画像信号を切り出し電子機器に取り込む役

割を担っている.図

2

には,一つの具体例として現在

のディジタルカメラの基本構成の例を示す.イメージ

センサは,現在,マイクロレンズアレー,カラーフィ

ルタアレー,画素アレー,ゲインアンプ,ノイズ補正,

AD

変換,一部の信号処理と駆動制御,メモリなどが

集積され構成されている.次に,

CCD

イメージセン

サと

CMOS

イメージセンサの構造とそれを支える重

要技術を説明する.

2. 1 CCD

イメージセンサ

3

に,

CCD

イメージセンサの基本構成を示す

[1]

現在よく使われているのは,

(a)

フレームトランスファ

FT

)方式,

(b)

インターライントランスファ(

IT

)方

図 3 CCDイメージセンサの基本構成.(a) フレームト ランスファ(FT) 方式,(b) インターライントラン スファ(IT) 方式,(c) フレームインターライントラ ンスファ型 (FIT) 方式

Fig. 3 Basic configurations of CCD image sensors.

式,

(c)

フレームインターライントランスファ(

FIT

方式の

3

種類である.

(a)

FT

方式は,構造が簡単

なことから,

CCD

イメージセンサの中で最初に開発

された方式で,

CCD

構造の受光アレーで光電変換,

電荷蓄積を行った後,

CCD

構造の蓄積部に電荷転送

し,水平

CCD

レジスタを介して電荷電圧変換出力か

ら電圧信号を出力する.

(b)

IT

方式は,

PN

ダイ

オード(

PD

)で光電変換と電荷蓄積を行い,

PD

のす

ぐ脇を貫く垂直

CCD

レジスタで電荷転送を行うもの

で,チップサイズを小さくできることから民生用で大

いに使用されている.

(c)

FIT

方式は,受光領域と

水平

CCD

の間に蓄積部を設けた形になっており,明

るい被写体を撮影したときに縦筋状に白飛びするスミ

アと呼ばれる現象を低減した性能が要求される分野で

用いられている.図

4

は,

IT-CCD

イメージセンサ

の画素部と最終段電荷電圧変換部の概略断面構造図で

ある.図では省略しているが

PD

上には画素ごとにカ

ラーフィルタとマイクロレンズが形成される.

現在の

CCD

イメージセンサを支える主な重要技術

[7], [20]

CCD

レジスタをイメージセンサに適用し

た最初の報告

[32]

,マイクロレンズによる集光

[33]

,赤

1

色,緑

2

色,青

1

色の

2

× 2

画素を単位とするカラー

フィルタ

[34]

PN

ダイオードによる光電変換

[35]

,感

度向上のための一定時間の電荷蓄積

[36]

,埋め込みフォ

トダイオードによる暗電流抑制と電荷完全転送

[37]

ブルーミング現象を抑制する縦型オーバーフロードレ

イン

[38]

CCD

レジスタによる電荷転送

[29]

(その

基となるのはバケツリレー電荷転送

BBD

構造

[39]

),

(3)

図 4 IT-CCDイメージセンサの概略断面構造図.(a) 画 素部,(b) 最終段電荷電圧変換部

Fig. 4 Schematic cross sectional views of IT-CCD image sensors, (a) Pixel part, (b) Charge-to-voltage conversion part.

低容量のフローティングディフュージョン(

FD

)を用

いた電荷電圧変換出力回路

[40]

FD

部をリセットし

た際に発生する熱ノイズ(リセットノイズと呼ぶ)を

除去する相関

2

重サンプリング法(

CDS

[41]

などで

ある.

2. 2 CMOS

イメージセンサ

次に,図

5

CMOS

イメージセンサの基本形の画

素の等価回路図と概略断面構造図を示す.

(a)

3T

型と呼ばれる方式であり,

PD

とリセットトランジス

タ(

R

),ソースフォロアトランジスタ(

SF

),画素選

択トランジスタ(

X

)の三つのトランジスタからなる.

PD

MOS

トランジスタのソースの

PN

接合を広げ

た形をしている.この方式では,光照射時に

PD

端子

に現れる蓄積光電荷量に比例した信号電圧を

SF

を介

して出力する.

PD

が埋め込み構造ではないので,暗

電流が大きく,光電変換感度も低く,また,次の蓄積

動作に入る前に

R

をオン・オフして

PD

を一定電位に

リセットしたときのリセットノイズが残留し

S/N

が悪くなる.この方式は

CMOS

の標準製造プロセス

で簡単に作成できるという売り文句で米国を中心に

90

年代から開発が始まったが,このリセットノイズの残

留により

CCD

に比べると画質が悪く,主流のカメラ

用イメージセンサには性能が不足しており

PC

周辺機

器や玩具などで使用されるに留まっていた.

(b)

4T

型と呼ばれる方式であり,画素は埋め込み

PD

FD

と転送トランジスタ

T

R

SF

X

4

トランジスタ

からなる.

CCD

イメージセンサの

PD

部と

FD

電荷

図 5 CMOSイメージセンサ画素の等価回路図と概略断 面構造図.(a) 3T 型,(b) 4T 型

Fig. 5 Equivalent circuit diagrams and schematic cross sectional views of pixels of CMOS im-age sensors, (a) 3T Type, (b) 4T Type.

図 6 CCDと CMOS イメージセンサの主なノイズ成分 Fig. 6 Noises of CCD and CMOS image sensors.

電圧変換出力回路を合体して画素を構成した形になっ

ている.

4T

型では,

T

をオフにして

PD

で受光・蓄

積動作を行い,

R

をオン・オフして

FD

に残留したリ

セットノイズ電圧を読み出し,その後

T

をオンして

PD

に蓄積された信号電荷を

FD

に転送し先のノイズ

電荷と重ねて,ノイズ

+

信号電圧を読み出す.この二

つを差し引く

CDS

動作を行い信号電圧を得ることで,

S/N

比の映像信号を得ることができる.

6

CCD

CMOS

イメージセンサの主なノイ

ズ成分の周波数特性の概要を示す.

CCD

イメージセ

ンサにおいては,画素から出力段までの間に混入する

ノイズは極小であり,数

10 MHz

の帯域で信号を点順

(4)

図 7 CMOSイメージセンサの基本構成.(a) 画素 PD か ら走査回路 SC により点順次にアナログ信号を出力, 別チップにアナログフロントエンド AFE と AD 変 換器 AD をもつ,(b) 出力段にオンチップ AD をも つ,(c) 列ごとに AD をもつ,(d) 列ごとに AFE を もったセンサチップと AD・信号処理 SP を搭載し たチップを積層する,(e) 画素ブロックごとに AD・ SPをもつ,(f) 画素ごとに AD・SP をもつ((e)(f) は積層構造も含む)(文献 [5] に筆者加筆) Fig. 7 Basic configurations of CMOS image sensors.

次に読み出す出力段及び

CDS

回路で発生するアンプ

ショットノイズが主なノイズ源となる.

CMOS

イメー

ジセンサにおいては,画素で発生する熱ノイズ(リセッ

トノイズ)

,読み出し回路系で発生する

1/f

ノイズ,及

びアンプショットノイズが主なノイズ源となるが,

4T

型を用いて列ごとに

MHz

オーダの帯域で

CDS

動作

を行えば,ノイズを極小化することができる.ただし,

画素内に四つのトランジスタと埋め込み

PD

を置くこ

とから,

4T

型を利用して民生製品のイメージセンサ

で求められる画素サイズを実現するには,半導体微細

化技術が

0.35

0.25

µm

に達する

1990

年台を待たね

ばならなかった.また,現在では,図

6

に破線で示す

画素

SF

トランジスタで発生するランダムテレグラフ

ノイズ(

RTN

)の影響が,感度の向上とトランジスタ

サイズの縮小により,顕在化している

[42]

7

に,

CMOS

イメージセンサの基本構成を示

[5]

CMOS

イメージセンサは,画素を

X

方向・

Y

方向に設けた走査回路(

SC

)によって選択すること

から

XY

アドレス型,または,画素内にアンプ回路を

設置していることから増幅型(アクティブピクセル型

とも呼ぶ)に分類される.

(a)

は画素

PD

から走査回

SC

により点順次にアナログ信号を出力し,別チッ

プにアナログフロントエンド(

AFE

)と

AD

変換器

AD

)をもつ構成,

(b)

は出力段にオンチップ

AD

もつ構成,

(c)

は列ごとに

AD

をもつ構成,

(d)

は列

ごとに

AFE

をもったセンサチップと

AD

・信号処理

SP

)を搭載したチップを積層する構成,

(e)

は画素

ブロックごとに

AD

SP

をもつ構成,

(f)

は画素ごと

AD

SP

をもつ(

(e)(f)

は積層構造も含む)構成

である.人間が観賞する画質を追求してきたカメラ用

途では,

(a)

の構成から始まり,

(b)(c)

を経て,現在

では

(d)

が量産,

(e)

が開発段階として進化を続けて

いる.一方,ロボットや機器画像入力で

1000

/

程度の高速なフレームレートの画像を扱う用途では,

(f)

の構成から開発が始まっている

[43]

CCD

イメー

ジセンサと

CMOS

イメージセンサの画質を比較する

と,

(a)(b)

の構成では,

CDS

動作の帯域が数

10 MHz

CCD

と同等にあったため,両者の

S/N

比は同等

であったが,

(c)

以降の構成からは,

CDS

動作の帯域

MHz

オーダに下がり

CMOS

の方が

CCD

よりも

S/N

比が良く高画質になっている.

現在の

CMOS

イメージセンサ技術は,

CCD

イメー

ジセンサの重要技術の上に成り立っている.それ以外

の重要技術を挙げると,増幅型の原形となる

XY

アド

レスパッシブ型

MOS

イメージセンサ

[30], [44]

3T

の原型となる

AMI

イメージセンサ

[45]

(他に増幅型に

SIT

CMD

BASIS

BCAST

などがあった

[6]

),

画素からリセット後のノイズ信号と蓄積後の光信号を

読みそれらの差分演算を行い高

S/N

比信号を得る増

幅型イメージセンサ

[46]

,フォトゲート型の

PD

をも

4T

CMOS

イメージセンサ

[47]

,埋め込み

PD

をもつ

4T

CMOS

イメージセンサ

[48]

,ディジタル

一眼レフカメラ用高画質

4T

CMOS

イメージセン

[49]

,画素サイズを縮小化する画素共用化技術(

[10]

に解説),列に設置した

AFE

AD

変換技術(

[50]

解説),感度と光入射角特性を向上させ画素設計の自

由度を高める裏面照射構造

[51]

,高機能・小型・低消

費電力などを実現する積層構造

[52]

などである.

筆者は,

1982

年からバイポーラトランジスタ増幅型

イメージセンサ

BASIS

技術を用いたオートフォーカ

スセンサ,イメージセンサなどの製品開発に従事して

いたが,その際,電子と正孔の再結合が確率的にゆら

(5)

ぐことがバイポーラ型で

S/N

比が上げられない原因

であることを実験的に見出し,もしもバイポーラトラ

ンジスタを

MOS

トランジスタに置き換えられればバ

イポーラで課題となっていた再結合ノイズを原理的に

排除でき,更に埋め込み

PD

FD

を画素に入れ,画

素レベルで

CDS

ノイズ除去を行えれば,

CCD

イメー

ジセンサを上回る

S/N

性能をもったイメージセンサ

を実現できるという着想を得ていた.その後,

90

年代

に入り「

CMOS

CCD

を凌駕できる」時代が来た

と経営陣を説得し,多くの関係者・仲間達の努力のも

と,

0.35

0.25

µm

の半導体製造技術を導入し,

2000

年に世界で初めてディジタル一眼レフカメラ用高画質

4T

CMOS

イメージセンサ

[49]

の製品化に成功し

[15], [16]

.当時,

CMOS

イメージセンサの画質は

CCD

には及ばないという常識の中で,画質に対する

要求が最も厳しい一眼レフカメラにそれを搭載したこ

とから大いに話題を集めた

[15]

.その後,

2004

年のア

テネオリンピックで報道プロカメラマンの

9

割以上が

開発した

CMOS

イメージセンサを搭載したカメラを

使用しているという記事

[53]

を見たときには,ようや

CMOS

が認められたという技術者冥利に尽きる感

慨を味わった.こうした経験は,技術開発においては,

常に,原理原則を突きつめ,現状の問題・限界の原因

を明らかにし(目の前にある課題の中にこそ将来につ

ながる新しい種がある),次のコアとなる技術を産み

育て,協力者を得て,機が来たら果敢に勇気と責任を

もって行動することが,きわめて重要であることを教

えてくれた.

2. 3

現在のイメージセンサの性能

現在のイメージセンサ技術の到達点を主な基本性

能としてまとめると,画素サイズ:約

1

µm

角(フラ

ウンホーファ回折の第

1

半径(エアリーディスク)以

下)

,量子効率:ほぼ

100%

(入射フォトンをロスなく

電子・正孔対に光電変換),暗時ノイズ:

0.4

電子程度

(フォトンカウンティングレベルのノイズまであと

1/2

程度),光波長帯域:

190 nm

1100 nm

(下限は空気

吸収,上限はシリコンのバンドギャップで決まる)

,飽

和・ダイナミックレンジ:同時露光で

100 dB

超,多重

露光で

140 dB

超(人間の目を超える)

,速度:フレー

ムレート

1000

万コマ

/

秒超(チップ内信号伝送速度と

配線材料の信頼性が律速)などとなる.

現在のイメージセンサは,個々の性能では,このよ

うに物理限界に近い性能を極めつつあるが,全ての性

能を兼ね備えたイメージセンサは未だ実現されていな

図 8 イメージセンサの基本性能

Fig. 8 Fundamental performances for image sensor.

い.それは,基本性能の間にトレードオフ関係がある

ことによる.トレードオフとは,一方の性能を上げよ

うとするともう一方に課題が生じることを意味する.

イメージセンサの基本性能をトレードオフ関係にある

ものを対角に並べて図示すると図

8

のようになる.こ

れらのトレードオフ関係を解消する技術を開発してい

くことが,イメージセンサの更なる基本性能向上への

指針となる.

筆者らは,こうした状況に鑑み,現在,

S/N

比,ダ

イナミックレンジ(

DR

),速度,光波長帯域などの基

本性能を,製品を実用化して真の課題をフィードバッ

クしつつ,材料・プロセス・デバイス技術の原理段階

から追及している.図

9 (a)

は,開発した高感度・広

DR CMOS

イメージセンサを用いた微弱光下から高

照度光下の撮影例である.このイメージセンサは,横

型オーバーフロー蓄積容量(

LOFIC

)を画素内に設け

ることで,同一露光動作における高感度化と高飽和信

号化の原理的なトレードオフを解消している

[54], [55]

LOFIC

技術を用いることで,飽和性能を犠牲にせず

FD

容量を極小化でき,室温で

1

光子を検出でき

るレベルの高感度性能と

10

万電子程度の高飽和性能

を両立することに成功している

[56]

.図

9 (b)

は,開

発した超高速

CMOS

イメージセンサを用いて

2000

万コマ

/

秒の速度で撮影したプラスチック球の打ち込

み時にガラスに生じた亀裂進展の様子である.この

イメージセンサはチップ内に記録コマ数分のメモリを

設置し,撮影中はチップ内部に映像信号を高速に記録

し,撮影後にチップ外部に読み出す方法をとることに

よって,外部回路による速度制約を受けない超高速の

撮影性能を達成している

[57], [58]

.このイメージセン

サにより,材料,生命科学,機械,電子,航空宇宙な

どの研究開発現場で,今までに見ることのできなかっ

た様々な超高速現象を可視化することに成功している.

(6)

図 9 (a)高感度・広 DR CMOS イメージセンサを用い た微弱光下から高照度光下の撮影例,(b) 超高速 CMOSイメージセンサを用いて 2000 万コマ/秒 の速度で撮影したプラスチック球の打ち込み時に ガラスに生じた亀裂進展の様子,(c) 広光波長帯域 CMOSイメージセンサを用いたタンポポの分光撮 影の例

Fig. 9 (a) Images captured with high sensitivity and wide DR CMOS image sensor, (b) Images cap-tured with Ultra high speed CMOS image sen-sor, (c) Images captured with wide spectral CMOS image sensor.

9 (c)

は,開発した広光波長帯域

CMOS

イメージセ

ンサを用いたタンポポの分光撮影の例である.このイ

メージセンサは,波長約

190

1100 nm

の広い光波長

帯域に高い感度をもち,かつ長期間の紫外光照射に対

する感度劣化と暗電流増加を抑制した高い信頼性を有

する

[59], [60]

.この技術は,科学計測や生体,農作物

などの分光イメージング装置などに利用できる.

3.

今後のイメージセンサ技術

現在,国内外の様々な機関でイメージセンサの研究

開発が活発に行われるようになっている.図

10

に,イ

メージセンサ技術の今後の応用展開分野の例を示す.

イメージセンサの出荷数量は,

2020

年には,スマー

トフォンやディジタルカメラなどのカメラ用途で使用

される数量を,その他の分野で使用される数量が上回

ると予想され,更に今後の

30

年間で

10

倍以上の出荷

量に増加すると推算されている

[61]

図 10 イメージセンサ技術の応用展開分野 Fig. 10 Various application fields of image sensor

technologies.

図 11 積層型イメージセンサの構成 Fig. 11 Structure of future stacked image sensor.

そのような中で,イメージセンサの構造は,今後,

微細なバンプ接続や

Through-Silicon Via

TSV

,金

属配線直接接続などの実装技術の発展により,図

11

に示すような,センサ,

AD

変換,信号処理・駆動制

御,メモリなどのチップが列単位や画素ブロック単位,

一画素単位で

3

次元方向に接続された積層構造に進化

していくことが予測される

[62]

.積層構造により,そ

れぞれのチップを最適なプロセス技術を用いて製造で

きる,信号や電源の経路の長さの短縮と信号の並列処

理によって高速化・低消費電力化できる,モジュール

の小型化ができるなどの長所が発現できる.更に積層

構造では,

3T

CMOS

イメージセンサでも画素ノイ

ズ除去技術

[63]

などが適用しやすいことから,シリコ

ン以外の材料を用いたセンサを組み合わせても高

S/N

化できる道が拓け,シリコンでは達成できなかったよ

り広範囲な分光感度をもつイメージセンサを実現する

こともできる.また,センサ部は

CCD

を用いても構

成できることから,電荷加算,グローバルシャッタ,低

RTN

などの

CCD

の利点を活かしたイメージセンサ

が発展する可能性もある.更に,センサ部にフォトン

カウンティング技術

[22]

を搭載すれば,ノイズを増加

(7)

させないで高フレームレートの読み出し動作を繰り返

して信号を積算することで感度とダイナミックレンジ

性能を向上させるといった新しいアーキテクチャも生

かせる.

一方で,イメージセンサ技術は,半導体プロセス・

デバイス・回路・ソフトウェア・オプティクス・実装

技術の領域にまたがる総合システム技術を結集し,今

までにない新規なイメージセンサを実現することも可

能になり,物理的な理論検討,回路システム設計はも

とより,基幹となる材料・プロセス・デバイス・設計・

ソフトウェア・計測評価技術が総合的に革新されてい

くであろう.例えば,ファンクショナル・アパーチャ,

マルチ・アパーチャ,レンズレス光学系,画像処理,

実装も含めたシームレスな技術融合を行った多機能な

カメラ,人間が観賞することにはとらわれない分光・

認識・距離計測などの機能をもつ高性能な画像入力装

置などは,それほど遠くない将来に実現されていくと

思われる.

また,極限性能の追求と連動して,今後更に進化し

ていくイメージセンサ技術は「見る世界」を根本から

変えると同時に,既存市場の付加価値向上と,新規市

場の創造展開により,研究開発及び産業競争力の強化,

予防医療,先進農業,機器設備・環境保全などの発展,

豊かで安全・安心な社会の実現に向けて大きく貢献す

ると期待される.

4.

む す び

自分で作ったイメージセンサが動き絵が出ると研究

室の学生達は涙を流して喜ぶ.いつの時代にもこんな

純粋な感動を味わわせてくれるのがイメージセンサ技

術である.

新しい発想・着想は,その時点で,大抵の場合,将

来コアになるものかどうかを見極めることは難しい.

原理原則的に正しい発想・着想であっても,それでも,

無理だと思われたり,事業的意義は高くないと判断さ

れたりするのは,その時点で,使用できる技術,とり

まく環境・社会情勢,すなわち境界条件に左右される

ことになる.換言すれば,境界条件が変われば(変え

れば)よい技術となり得る.ここに取り上げた技術が

イメージセンサ

100

年余の歴史を支える全てではない.

限られた紙面の中で,ほんの一部の技術にしか言及で

きなかったことをお許しいただきたい.最初は個人の

優れた着想から始まった技術であったかもしれないが,

境界条件を変えるべく,実用化までの多くの人たちの

ぎりぎりまでの努力の積み重ねがあり,それらがまた

次の着想につながり更なる製品普及のスパイラルを生

み出してきたからこそ,今日の大きな発展に至ったと

実感している.

イメージセンサは,近い将来に到来する生体レベル

から宇宙を含む地球規模のセンサ・ネットワーク社会

で中心的な役割を担うデバイスとなる.イメージセン

サ技術は,今後更に加速的に進化し,豊かで安全・安

心な生活・環境を提供し,未来を切り拓いていく原動

力となると確信する.

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須川 成利

1982東京工業大学大学院理工学研究科 修士課程修了.1996 東北大学大学院工学 研究科博士課程修了.1982 キヤノン株式 会社入社.1999 東北大学に移籍.現在,同 大学工学研究科教授.CMOS イメージセ ンサの研究に従事.

Fig. 3 Basic configurations of CCD image sensors.
Fig. 5 Equivalent circuit diagrams and schematic cross sectional views of pixels of CMOS  im-age sensors, (a) 3T Type, (b) 4T Type.
図 7 CMOS イメージセンサの基本構成. (a) 画素 PD か ら走査回路 SC により点順次にアナログ信号を出力, 別チップにアナログフロントエンド AFE と AD 変 換器 AD をもつ,(b) 出力段にオンチップ AD をも つ,(c) 列ごとに AD をもつ,(d) 列ごとに AFE を もったセンサチップと AD・信号処理 SP を搭載し たチップを積層する,(e) 画素ブロックごとに AD・ SP をもつ,(f) 画素ごとに AD ・SP をもつ((e)(f) は積層構造も含む)(文献
Fig. 8 Fundamental performances for image sensor.
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