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保育現場における障害児保育の現状と課題

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保育現場における障害児保育の現状と課題

A Study on the Current Status and Issues of Childcare Practice for Children with Disabilities in Nursery School

立 花 直 樹

要 約

内閣府の調査によると年々在宅障害児者が増加しており、総務省の人口統計から推測しても、多数 の障害児が地域で生活している。児童発達支援センター等との並行利用が可能になっている現在、保 育所等におけるインクルーシブ保育の役割は大きく、多様な児童に対応可能な保育実践が求められて いる。 障害児保育を実践している保育所・認定こども園の保育者147名に調査を行い、障害児保育の課題 等について明らかにすると、保育士の年代により考え方の差異があった。また、多くの保育所等で重 度障害のある「医療的ケア児」に対する保育を実施しておらず、多くの保育者の意識に中にも課題と して挙がっていないことが分かった。さらには、医療的ケア児に対する保育を実践していない保育所 等の保育者の方が「インクルーシブ保育を実践できている」という割合が高かった。 キーワード:障害児保育、医療的ケア児、合理的配慮、インクルーシブ保育

⚑.障害児の増加と保育実践の歴史

内閣府(2020)によると、在宅で生活する身体障 害児は1970(昭和45)年に94,000人であったのが 2001(平成13)年には82,000人となり2016(平成28) 年 に は 68,000 人 と 減 少 し て い る(図 ⚑)。一 方、 1995(平成⚗)年に86,000人であったのが2005(平 成17)年には117,000人となり2016(平成28)年に は214,000人と知的障害児は大幅に増加している1) (図⚒)。 徐々に障害児が増加しているにも拘らず、1970年 代までは、先駆的に障害児を受け入れている一部の 保育施設や事業所を除き、国の保育施策から障害児 は除外されてきた。初めて、国の文書に障害児保育 の重要性が明文化されたのは、中央児童福祉審議会 (1978)の「当面推進すべき児童福祉対策について (中間答申)」であり、その中で「最近障害児に対す る一般社会の理解、早期発見、早期指導の施策が向 上してきたことに伴い、障害の種類と程度によって は障害児を一般の児童から隔絶することなく社会の 一員として、むしろ一般の児童とともに保育するこ とによって障害児自身の発達が促進される面が多く (後略)」、さらには「保育所の実情をみると障害児 の保育についての困難、事故発生に対する不安など のゆえに障害児の受入れについてはむしろ消極的な 傾向がみられた。しかし、前述の認識に基づくなら ば、今後は可能な範囲で障害児の受入れに必要な諸 条件を整えて、保育に欠ける障害児の保育が実施で きる方策を具体化することが必要である。」と明記 された2)。この答申を受け、厚生省(現:厚生労働 省)は、「障害児保育事業実施要綱」を制定し、障 害のある児童の保育所での受入れを促進するため、 保育所に保育士を加配する必要経費を国が予算化し 実施してきた3)。この年は「障害児の保育元年」と 呼ばれ、同じ年に私立幼稚園での障害児保育に対す る助成金交付も開始された4)。しかしながら、重度 の障害児に対する保育を実施する保育所は殆どな く、保育所における障害児保育は急速には広がらな かったため、2007(平成19)年度より障害児保育事 業実施(地方交付税の算定)対象を特別児童扶養手 当の対象児童から軽度の障害のある児童に広げる等 の拡充を行い、2015(平成27)年度より施行した子 *Naoki TACHIBANA 聖和短期大学 准教授

【T:】Edianserver/【聖和短期大学】/聖和短期大学紀要/第⚗号/ 立花直樹②

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図⚒ 在宅で生活する知的障害児・者数の推移

出所:内閣府(2020)『令和⚒年版障害者白書』勝美印刷、p 243

図⚑ 在宅で生活する身体障害児・者数の推移

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ども・子育て支援新制度においては、障害のある児 童等の特別な支援が必要な児童を受け入れ、地域関 係機関との連携や、相談対応等を行う場合に、地域 の療育支援を補助する者を保育所、幼稚園、認定こ ども園に配置する等の措置を行うこととした5) 在宅障害児者の増加に伴い、障害児を受け入れる 保育所も増加している。全国保育協議会(2017)に よると、2011(平成23)年には障害児保育を実施し ている保育所は74.8%であったが、2016(平成28) 年には76.6%と増加していた6)(図⚓)。 この様な保育所、幼稚園、認定こども園等での障 害児の受け入れ拡大、保育所保育指針・幼稚園教育 要領の改定、認定こども園教育・保育要領の策定等 に伴い、障害児保育・教育の在り方は見直され、イ ンクルーシブ保育・教育に向け進められている傾向 である。この様な状況を踏まえれば、今後ますます 保育所における障害児保育の実践が重要となる7) ノーマライゼーション社会注⚑)の構築実現を考え れば、障害児を受け入れる保育所や障害児を受け入 れる枠が増加することは喜ばしいが、それは量的な 拡大でしかない。children’s first(子どもの最善の 利益)に鑑みて、文部科学省における特別支援教育 の審議の過程では量と質の問題が審議され、「特別 支援(障害児の教育や保育)」には「量と質の確保 が必要である」ことが明示されており8)、保育にお ける質的充実も同時に必要なことである。障害児保 育の質を高めていかなければ、いつまで経っても重 度障害児は地域の保育施設や教育施設から疎外され る存在になってしまうことが懸念されている。

⚒.乳幼児における障害児の割合と障害

児保育の状況

総務省(2020)によると、2019(令和元)年10月 ⚑日現在の乳幼児の数は⚐歳~⚖歳までの合計が 6,240千人となっている9)(10月⚑日現在の数値で あれば、満⚖歳児は「小学校⚑年生に在籍する10月 ⚒日~⚔月⚑日生れの児童」と「教育施設や保育施 設等の年長クラスに在籍する⚔月⚒日~10月⚑日生 れの児童」が存在することになる。そこで、計算上 は半数を、幼児として換算している)(表⚑)。 内閣府(2020)によると、2016(平成28)年現在、 わが国の身体障害児は72千人で、知的障害児は225 千人となっている10)。学童期以降の各種障害手帳取 得並びに病気や事故等による後天的な障害認定等を 無視して単純に⚖歳区分ごとで考えるなら、2018 (平成30)年現在で乳幼児期(⚐~⚖歳)の身体障 注⚑)ノーマライゼーション 1953年にデンマークのバンク・ミケルセンが知的障害者の親の会の依頼で作成した社会大臣宛の要請書のタイト ルが「ノーマリセーリング(英訳はノーマライゼーション)」という造語を使用したのが起源で、健常者と同様に 障害者の「ノーマルな地域生活」の実現を目的とする概念である26)

保育現場における障害児保育の現状と課題 【T:】Edianserver/【聖和短期大学】/聖和短期大学紀要/第⚗号/ 立花直樹②

― 37 ― 図⚓ 2011年度と2016年度の 障害児保育実施の比較 出所:全国保育協議会(2017)「会員の実態調査報告書2016(平成29年⚖月)」p 87 表⚑ 2019(令和元)年10月⚑日現在の乳幼児の人口 年齢 ⚐歳 ⚑歳 ⚒歳 ⚓歳 ⚔歳 ⚕歳 ⚖歳 合計 人数 894千人 941千人 962千人 1,001千人 961千人 975千人 (1,012千人)506千人 6,240千人 出所:総務省(2020)『人口推計(令和元年10月⚑日現在)』を基に筆者が作成

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害児は約24千人(乳幼児人口の0.38%)、知的障害 児は72千人(乳幼児人口の約1.15%)が存在すると 概算(計1.53%)される。精神障害児も区分として はあるが、精神障害のほとんどが学童期以降に認定 されており、また発達障害児のある乳幼児のデータ が明らかでない為、障害ある乳幼児数からは計算上 除外している。 神尾(2014)は、1,390名の⚔~⚕歳児に対する 調査の結果、ASD(自閉スペクトラム症、アスペ ルガー症候群)の有病率が3.5%であるとし11)、⚕ 歳の ASD 児においてその⚘~⚙割に精神障害の合 併を見出した12)。ADHD(注意欠如・多動症)や LD(限局性学習症)などの発達障害がある児童を 含めれば、より多くの児童が発達障害に該当し有病 率も高くなると考えられる。 つまり、身体障害児・知的障害児に、精神障害児 や発達障害児を加えれば、1.53%よりも多くの障害 認定児が存在することになる。ただ、実際には知的 障害等があっても、障害認定申請を行っていない多 数の乳幼児に鑑みれば、実際にはもっと多くの乳幼 児に何らかの障害がある可能性がある。保育現場に は「障害認定された子ども」いるが、「障害認定さ れていない子ども」や「障害がある程度とは認めら れないがボーダーライン(パステルゾーン)の子ど も」など様々な配慮の必要な児童もいる13) 本郷 他(2003)は、調査の時点では何らかの障 害があるとは認定(診断)されていないが、保育者 にとって保育が難しいと考えられている子ども (『対人的トラブルのある』『落ち着きのない』『ルー ルを守れない』『状況の順応性の低い』)を「気にな る子」として捉え14)、高倉 他(2007)は「障害の ある子ども(障害認定や診断を受けた子ども)」「気 になる子ども(複数の保育者から見て何らかの支援 を必要とする子ども)」と定義している15)。ただし、 保育において「気になる子」という用語を用いた場 合、発達障害だけでなく、その他の特徴をもった多 くの子どもが含まれると指摘している16)。立花 (2019)は学習面だけでなく生活面(貧困、虐待、 DV 家庭など)や医療面(アレルギー、てんかん発 作、精神的疾患など)、新たな課題(不登校、外国籍、 日本語の理解不足、セクシュアリティなど)も含め、 諸種な生きづらさにより多様な支援や配慮が必要な 児童を含んでいることを指摘している17) ま た、佐 久 間・田 部・高 橋(2011)が、全 国 1,419の幼稚園(806の公立幼稚園と613私立幼稚園) を 対 象 に 調 査 を 実 施 し た 所、「ʠ公 立 幼 稚 園 の 85.6%ʡʠ私立幼稚園の80.0%ʡに特別な配慮を要 する児童が在籍しているが、その内で障害診断を受 けているのは、ʠ公立幼稚園の39.0%ʡʠ私立幼稚園 の56.5%ʡしかいないこと」が分かった18)。原口・ 野呂・神山(2013)が、421の保育所を対象に行っ た調査では、気になる子どもが⚑名以上在籍すると 回答した保育所は、公立では95.59%、私立では 91.94%であった。障害児が⚑名以上在籍すると回 答した保育所は、公立では77.94%、私立では30箇 所(48.39%)であった。気になる子どもと障害児 がどちらも在籍していると回答したのは、公立が 82.26%、私立が46.77%、一方、どちらもいないと 回答したのは、公立が1.61%、私立が6.45%であっ た。また公立、私立で比較すると、公立の方が、気 になる子ども、障害児の在籍率が高かった19)。全国 保育協議会(2017)によると、障害児保育を実施し ている保育所は全国平均で76.6%であり、公立保育 所の実施率(85.8%)の方が民間の保育所の実施率 図⚔ 設置・運営主体別 障害児保育実施の有無 出所:全国保育協議会(2017)「会員の実態調査報告書2016(平成29年⚖月)」p 87

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(70.0%)よりも高かった20)(図⚔)。 つまり、ほとんどの保育所に「気になる児童(「障 害認定されていないが同様の配慮が必要な児童」や 「障害がある程度とは認められないがボーダーライ ンと言われるパステルゾーン(グレーゾーン)注⚒) の児童」)」が存在し、約半数以上の保育所に「障害 認定を受けた児童」が存在する状況と言える。

⚓.合理的配慮と医療的ケア児に対する

保育

(⚑)合理的配慮とは 2006(平成18)年12月に、国際連合で「障害者権 利条約」が採択されたことを受け、2011(平成23) 年に「障害者基本法」が改正され第⚔条に「障害者 差別禁止規定」が盛り込まれた。さらには、2014 (平成26)年⚑月20日付けで日本国の批准は国際連 合に承認されたことを受け、国内法となる「障害を 理由とする差別の解消の推進に関する法律(通称: 障害者差別解消法)」が2015(平成27)年⚖月に成 立し、2016(平成28)年⚔月に施行された。障害者 差別解消法の施行を受け、社会の中で「合理的配慮 (Reasonable Accommodation)」が求められるよう になった。合理的配慮とは、「障害者の権利条約第 ⚒条」に「障害者が他の者との平等を基礎として全 ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使するこ とを確保するための必要かつ適当な変更及び調整で あって、特定の場合において必要とされるものであ る」と、定義されており、公共施設・教育機関・福 祉・保育施設等は合理的配慮を行う法的義務があ り、企業等における合理的配慮は過度にならない範 囲での努力義務が課されている。合理的配慮の具体 的事例は、内閣府のホームページで閲覧できると共 に、「『合理的配慮』を知っていますか?」等のリー フレットが頒布され、啓発活動が行われている21) (表⚒)。 合理的配慮は障害のある児童の為に行うべきもの ではあるが、それだけでなくパステルゾーンの児 童、発達が少し遅れている児童や苦手や課題のある 児童にとっても有用で有益なものである。合理的配 慮を行うことで、より多くの子どもの理解が促進さ れ、過ごしやすくなるのである。 (⚒)医療的ケア児に対する保育とは 社会の変化や障害児の増加によるニーズの増加に 対応するため、障害児を受け入れる保育施設等は 年々増加している。しかしながら、障害児保育を実 施していると言っても、多くの保育施設では軽度の 障害ある児童を受け入れているにしか過ぎず、重度 の障害児を受け入れている保育所は非常に少ない。 2016(平成28)年⚖月に改正児童福祉法が公布さ れた。児童福祉法第56条の中で「医療的ケアを要す る障害児が適切な支援を受けられるよう、自治体に おいて保健・医療・福祉等の連携促進に努めるもの とする」と明記され、重度の障害があっても地域の 保育施設や教育施設で受け入れる最大限の努力を行 ことが義務付けられた。また、同時に厚生労働省 (2016)より、「乳児を⚔人以上保育する施設で、⚑ 人に限り看護師等の医療専門職を保育士⚑人の配置 とみなす」22)、「医療的ケア児の保育ニーズに応えら れるよう、看護師等の配置等について配慮をお願い する」23) と、相次いで通知が発出され、本格的に地 域の保育施設や教育施設で医療的ケア児を受け入れ る体制を整える方向に舵が切られた。 さらには、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化 の促進に関する法律(通称バリアフリー法)」の施 行令の政令改正が、2020(令和⚒)年⚙月に閣議決 定され、2021(令和⚓)年⚔月より全ての公立小中 学校に建築物移動等円滑化基準への適合を義務付け 注⚒)パステルゾーン(グレーゾーン) 「配慮が必要な子ども」「気になる子ども」の多くは診断のつきにくい「グレーゾーン」と呼ばれる子どもたちで ある。しかし、「グレーゾーン」という表現は、障害=黒(灰色)というマイナスな視点であり、泉川良範(沖縄 県名護市の重症心身障害児施設「名護療育園」施設長)は発達障害のある子どもたちの多様性や凹凸を表現するも のとして「パステルゾーン」という言葉を提唱している27)

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― 39 ― 表⚒ 合理的配慮の具体的事例 ⚑.聴覚過敏性の児童の為に、机・いすの脚に緩衝材を付けて雑音を軽減する ⚒.視覚情報処理が苦手な児童の為に、白板や黒板の周りの掲示物や情報量を減らす ⚓.文字認識が難しい児童のために、シンボルマークや写真カードを活用する ⚔.意思疎通を促進するために、絵カードや PECS 等を用いて、構造化する ⚕.障害ある児童に合わせた時間調整(休憩や活動時間の設定)等、ルールやプログラムを柔軟にする 等

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られることになった24)。これまでは、新しく建築す る場合や改築する場合にバリアフリー注⚓)が義務化 されていたが、2021(令和⚓)年⚔月から全ての建 物をバリアフリー化することが義務付けられたので ある。この法改正は今後高校や大学等の高等教育機 関はもちろん、幼児教育無償化対象の保育所・幼稚 園・認定こども園等にも波及すると言われている。 「うちの園は階段があるから車いすのお子様は難し いので…」「うちの施設はエレベーターが無いので …」と、建物のバリアを理由に障害児を排除してき た大義名分は、今後使用できなくなるのである。つ まり、保育施設等にも「心のバリアフリー」等の意 識改革が求められる時代となっているのである。 みずほ情報総研(2017)の調査によると、「医療 的ケア児」を受け入れている保育所は全体の1.6% にしか過ぎず、多くの保育所では重度の障害のある 乳幼児を受け入れていない実態が明らかとなった25) (図⚕)。しかし、「合理的配慮」の義務やバリアフ リー化が求められる現在、各保育施設や教育施設 が、「医療的ケア児の受け入れ」を真剣に考えなけ ればならない状況である。

⚔.調査の概要

(⚑)目的 障害児の増加と共に、地域で生活する障害のある 乳幼児が保育施設を利用するケースが著増してい る。また、インクルーシブ保育注⚔)の理念が広がり、 重度障害のある医療的ケア児に対する保育が求めら れている現在、障害児保育を実践している保育施設 の実態や保育者の意識を明らかにすることを目的に 調査を実施することにした。 (⚒)調査方法 ⚑)調査対象 A 県 B 市内で障害児保育を実施している保育所・ 認定こども園(計147施設)で障害児保育の経験が ある保育士及び保育教諭(経験⚓年以上で障害児の 担任経験のある者)で、調査の趣旨に同意した147 名(各園⚑名ずつを対象) ⚒)調査方法 まず、調査は任意であり途中で辞退できることや 調査方法について説明した。自記式質問紙を用いた 郵送調査を実施した。 ⚓)調査期間 2020(令和⚒)年⚒月⚑日~⚖月30日 ⚔)調査項目 ①基本属性:所属種別、性別、年齢、保育者として の経験年数、勤務先での看護師の有 無、医療的ケア児保育の実施の有無、 医療的ケア児支援者養成研修受講の有 無、障害児保育に対する不安度 等 ②実態項目:障害児保育を実践する上での保育者と しての課題、障害児保育を実践する上 での職場の課題 等 注⚓)バリアフリー 全ての人びとの活動や社会参加の促進をめざして、物理的バリアフリー(物理的なバリアを取り除く)、制度的 バリフリー(制度のバリア取り除く)、情報のバリアフリー(情報のバリアを取り除く)、心理的バリアフリー(心 のバリアを取り除く)など物心における除去が求められている28) 注⚔)インクルーシブ保育 インクルージョンとは、「包摂」「包含」を意味する英語であり、1994年にスペインのサマランカで開催された「特 別なニーズ教育に関する世界会議」で採択された「サマランカ宣言」で「障害児を含む多様な教育的ニーズを持つ 子ども達を初めから分離したり排除したりしてしまうのではなく、そうした子ども達をも包含できるように教育や 保育現場等がカリキュラム・プログラムや指導・支援体制を改革する必要がある」と規定された理念を基に行う保 育を表した用語である29) 図⚕ 医療的ケアを必要とする子どもの有無 出典:みずほ情報総研株式会社(2017)「保育所における障害児保育に関する研究報告書(平成29年⚓月)」

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(⚓)倫理的な配慮 日本社会福祉学会の研究倫理指針に従い、関係者 の承諾の下、プライバシーの保護に務め、個人が特 定できないように配慮した。質問項目については園 長会や職員研修会で協議の上、決定したものを用い た。非常にハイセンシビリティな内容も含んでいる ため、調査は無記名で実施し、調査協力は任意とし た。個人を特定できないように各自が調査票を直接 返信用封筒で返送できるよう配慮し、調査票は厳重 に管理した。また、調査票は「集計・分析」が終了 次第、シュレッダーにて破棄した。 (⚔)分析方法 データの集計及び分析に際しては、統計解析ソフ ト「SPSS statistics 25.0 for Windows」を用いた。

⚕.調査結果

(⚑)基本属性に関するクロス集計 調査対象者の性別は女性「計140人[95.2%]」が 男性「計⚗人[4.8%]」より多く、回答者の年代は 30代「計54人[36.7%]」が最も多く、同数の20代 と 40 代「計 41 人[27.9%]」が 続 き、50 代「11 人 [7.5%]」が最も少なかった(表⚒)。 調 査 対 象 者 の 勤 務 先 は、保 育 所「計 101 人 [68.7%]」が認定こども園「計46人[31.3%]」よ り多かった(表⚓)。 (⚒)調査対象者の職場の状況に関する集計 調査対象者の勤務先における看護師の状況は、看 護師がいる園「44人[29.9%]」が、看護師がいな い園「103人[70.1%]」より少なく、保育所「計37 人[25.2%]」が認定こども園「計⚗人[4.8%]」 より看護師のいる割合が多かった(表⚔)。 調査対象者の勤務先における「医療的ケア児支援 者養成研修修了者」の状況は、修了者がいる園「⚖ 人[4.1%]」が、修 了 者 が い な い 園「141 人 [95.9%]」より少なく、保育所「計⚕人[3.4%]」 が認定こども園「計⚑人[0.7%]」より修了者のい る割合が多かった(表⚕)。 調査対象者の勤務先における医療的ケア児保育の 実施状況は、実施している園「13人[8.8%]」が、 実施していない園「134人[91.2%]」より少なく、 保育所「計12人[8.2%]」が認定こども園「計⚑人 [0.7%]」より医療的ケア児に対する保育を実施し ている園の割合が多かった(表⚖)。 調査対象者の勤務先において、「インクルーシブ 保育の実践」について、「実践できている」と答え た保育者「110人[74.8%]」が、「実施できていない」 と答えた保育者「10人[6.8%]よりも多かった。

保育現場における障害児保育の現状と課題 【T:】Edianserver/【聖和短期大学】/聖和短期大学紀要/第⚗号/ 立花直樹②

― 41 ― 表⚒ 調査対象者の属性(性別と年代) 性別 20代 30代 40代 50代 合計 女性 ( )は行%、[ ]は全体% 37人 (26.4%) [25.2%] 52人 (37.1%) [35.4%] 40人 (28.6%) [27.2%] 11人 (7.9%) [7.5%] 140人 (100%) [95.2%] 男性 ( )は行%、[ ]は全体% ⚔人 (57.1%) [2.7%] ⚒人 (28.6%) [1.4%] ⚑人 (14.3%) [0.7%] ⚐人 (⚐%) [⚐%] ⚗人 (100%) [4.8%] 合計 [27.9%]41人 [36.7%]54人 [27.9%]41人 [7.5%]11人 [100%]147人 表⚓ 調査対象者の属性(施設種別と性別) 性別 保育所 認定こども園 合計 女性 ( )は行%、[ ]は全体% 97人 (69.3%) [66.0%] 43人 (30.7%) [29.2%] 140人 (100%) [95.2%] 男性 ( )は行%、[ ]は全体% ⚔人 (57.1%) [2.7%] ⚓人 (42.9%) [2.0%] ⚗人 (100%) [4.8%] 合計 101人 [68.7%] 46人 [31.3%] 147人 [100%]

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医療的ケア児に対する保育を実施している園の保育 者「⚖人[4.1%]」の方が、医療的ケア児に対する 保育を実施していない園の保育者「104人[70.8%]」 のよりも「インクルーシブ保育を実践できている」 と答えた割合が少なかった(表⚗)。 (⚓)障害児保育を実践する上での保育者自身の課 障害児保育を実践する上での保育者自身の課題に ついて調査した結果、第⚑位は「障害に対する知識 不足:68人[46.3%]」、第⚒位は「療育や支援に対 する技術不足:48人[32.7%]」、第⚓位は「医療機 関(診断機関)との連携不足:⚘人[5.4%]」「地 域施設(療育施設)との連携不足:⚘人[5.4%]」、 第⚕位は「保護者との連携不足:⚖人[4.1%]」、 第⚖位は「保育室環境に配慮や改善が必要:⚕人 [3.4%]」、第⚗位は「保育プログラムの改善が必 要:⚓人[2.0%]」、第⚘位は「他の保育者との共 通認識が必要:⚒人[1.4%]」であった(表⚘)。 各課題について「有り」と回答した保育者を年代 別で分析した結果は次の通りである。 まず、20代の保育者は他の年代と比して、「障害 に対する知識の不足」「医療機関(診断機関)との 連携不足」「地域施設(療育施設)との連携不足」 の項目に関して自己課題と捉えている割合が低く、 「療育や支援に対する技術の不足」「保護者との連携 不足」「保育室環境に配慮や改善が必要」「保育プロ グラムの改善が必要」の項目に関して自己課題と捉 えている割合が高かった。次に、30代の保育者は他 の年代と比して、「医療機関(診断機関)との連携 不足」「地域施設(療育施設)との連携不足」の項 目に関して自己課題と捉えている割合が低く、「障 ( )は行%、[ ]は全体% [43.5%] [26.5%] [70.1%] 合計 [68.7%]101人 [31.3%]46人 [100%]147人 表⚕ 調査対象者の職場の状況(施設種別と看護師の有無) 医療的ケア児支援者養成研修修了者の有無 保育所 認定こども園 合計 いる ( )は行%、[ ]は全体% ⚕人 (83.3%) [3.4%] ⚑人 (16.7%) [0.7%] ⚖人 (100%) [4.1%] いない ( )は行%、[ ]は全体% 96人 (68.1%) [65.3%] 45人 (31.9%) [30.6%] 141人 (100%) [95.9%] 合計 [68.7%]101人 [31.3%]46人 [100%]147人 表⚖ 調査対象者の職場の状況(施設種別と医療的ケア児保育の実施の有無) 医療的ケア児保育 保育所 認定こども園 合計 実施している ( )は行%、[ ]は全体% 12人 (92.3%) [8.2%] ⚑人 (7.7%) [0.7%] 13人 (100%) [8.8%] 実施していない ( )は行%、[ ]は全体% 89人 (66.4%) [60.5%] 45人 (33.6%) [30.6%] 134人 (100%) [91.2%] 合計 [68.7%]101人 [31.3%]46人 [100%]147人

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害に対する知識の不足」「療育や支援に対する技術 の不足」「保育室環境に配慮や改善が必要」「保育プ ログラムの改善が必要」の項目に関して自己課題と 捉えている割合が高かった。さらに、次に40代の保 育者は他の年代と比して、「療育や支援に対する技 術の不足」「保育室環境に配慮や改善が必要」「保育 プログラムの改善が必要」の項目に関して、自己課 題と捉えている割合が低く、「障害に対する知識の 不足」「医療機関(診断機関)との連携不足」「地域 施設(療育施設)との連携不足」の項目に関して、 自己課題と捉えている割合が高かった。最後に、50 代の保育者は他の年代と比して、「障害に対する知 識の不足」「療育や支援に対する技術の不足」の項 目に関して、自己課題と捉えている割合が低く、「医 療機関(診断機関)との連携不足」「地域施設(療 育施設)との連携不足」の項目に関して、自己課題 と捉えている割合が高かった(表⚘)。 (⚔)障害児保育を実践する上での職場の課題 障害児保育を実践する上での職場の課題について 調査した結果、第⚑位は「障害に対する職員全体の 知識不足:49人[33.3%]」、第⚒位は「保育所の環

保育現場における障害児保育の現状と課題 【T:】Edianserver/【聖和短期大学】/聖和短期大学紀要/第⚗号/ 立花直樹②

― 43 ― 表⚗ 調査対象者の職場の状況(施設種別と医療的ケア児保育の実施の有無) インクルーシブ保育 医療的ケア児保育 実践できている どちらとも言えない 実践できていない 合計 実施している ( )は行%、[ ]は全体% ⚖人 (92.3%) [4.1%] ⚕人 (92.3%) [3.4%] ⚒人 (7.7%) [1.4%] 13人 (100%) [8.8%] 実施していない ( )は行%、[ ]は全体% 104人 (77.6%) [70.8%] 22人 (16.4%) [15.0%] ⚘人 (6.0%) [5.4%] 134人 (100%) [91.2%] 合計 [74.8%]110人 [18.4%]27人 [6.8%]10人 [100%]147人 表⚘ 障害児保育を実践する上で、保育者自身の最大の課題 順位 課題内容 20代 30代 40代 50代 合計 ⚑ 障害に対する知識の不足 ( )は行%、[ ]は全体% 12人 (17.7%) [8.2%] 29人 (42.7%) [19.7%] 26人 (38.2%) [17.7%] ⚒人 (2.1%) [1.4%] 68人 (100%) [46.3%] ⚒ 療育や支援に対する技術の不足 ( )は行%、[ ]は全体% 20人 (41.7%) [13.6%] 18人 (37.5%) [12.2%] ⚘人 (16.7%) [5.4%] ⚒人 (2.1%) [1.4%] 48人 (100%) [32.7%] ⚓ 医療機関(診断機関)との連携不足 ( )は行%、[ ]は全体% ⚐人 (⚐%) [⚐%] ⚑人 (12.5%) [0.7%] ⚓人 (37.5%) [2.0%] ⚔人 (50.0%) [2.7%] ⚘人 (100%) [5.4%] ⚓ 地域施設(療育施設)との連携不足 ( )は行%、[ ]は全体% ⚐人 (⚐%) [⚐%] ⚑人 (12.5%) [0.7%] ⚓人 (37.5%) [2.0%] ⚔人 (50.0%) [2.7%] ⚘人 (100%) [5.4%] ⚕ 保護者との連携不足 ( )は行%、[ ]は全体% ⚕人 (83.3%) [3.4%] ⚑人 (16.7%) [0.7%] ⚐人 (⚐%) [⚐%] ⚐人 (⚐%) [⚐%] ⚖人 (100%) [4.1%] ⚖ 保育室環境に配慮や改善が必要 ( )は行%、[ ]は全体% ⚒人 (40.0%) [1.4%] ⚓人 (60.0%) [2.0%] ⚐人 (⚐%) [⚐%] ⚐人 (⚐%) [⚐%] ⚕人 (100%) [3.4%] ⚗ 保育プログラムの改善が必要 ( )は行%、[ ]は全体% ⚒人 (66.7%) [1.4%] ⚑人 (33.3%) [0.7%] ⚐人 (⚐%) [⚐%] ⚐人 (⚐%) [⚐%] ⚓人 (100%) [2.0%] ⚘ 他の保育者との共通認識が必要 ( )は行%、[ ]は全体% ⚐人 (⚐%) [⚐%] ⚐人 (⚐%) [⚐%] ⚑人 (50.0%) [0.7%] ⚑人 (50.0%) [0.7%] ⚒人 (100%) [1.4%] 合計 [27.9%]41人 [36.7%]54人 [27.9%]41人 [7.5%]11人 [100%]147人

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境や設備に改善が必要:46人[31.3%]」、第⚓位は 「医 療 機 関(診 断 機 関)と の 連 携 不 足:18 人 [12.2%]」「地域施設(療育施設)との連携不足: 18人[12.2%]」、第⚕位は「他の保育者との共通認 識が必要:⚙人[6.1%]」、第⚖位は「チェックリ ストの活用:⚗人[4.8%]」であった(表⚙)。 まず、20代の保育者は他の年代に比して、「医療 機関(診断機関)との連携不足」「地域施設(療育 施設)との連携不足」「他の保育者との共通認識が 必要」の項目に関して職場課題と捉えている割合が 低く、「障害に対する職員全体の知識不足」「保育所 の環境や設備に改善が必要」の項目に関して職場課 題と捉えている割合が高かった。次に、30代の保育 者は他の年代に比して、「他の保育者との共通認識 が必要」の項目に関して職場課題と捉えている割合 が低く、「障害に対する職員全体の知識不足」「保育 所の環境や設備に改善が必要」「医療機関(診断機 関)との連携不足」「地域施設(療育施設)との連 携不足」の項目に関して職場課題と捉えている割合 が高かった。さらに、次に40代の保育者は他の年代 に比して、「障害に対する職員全体の知識不足」「保 育所の環境や設備に改善が必要」の項目に関して職 場課題と捉えている割合が低く、「医療機関(診断 機関)との連携不足」「地域施設(療育施設)との 連携不足」「他の保育者との共通認識が必要」の項 目に関して職場課題と捉えている割合が高かった。 最後に、50代の保育者は他の年代に比して、「障害 に対する職員全体の知識不足」「保育所の環境や設 備に改善が必要」の項目に関して職場課題と捉えて いる割合が低く、「医療機関(診断機関)との連携 不足」「地域施設(療育施設)との連携不足」「他の 保育者との共通認識が必要」の項目に関して職場課 題と捉えている割合が高かった(表⚙)。

⚖.考察

(⚑)調査対象者の職場の状況に関する集計 「医療的ケア児に対する保育」を拡大していくの であれば、看護師が勤務する保育施設が29.9%とい うのは少なく、今後積極的に看護師の雇用を増加さ せるための各保育施設の努力はもちろん必要である が、国のさらなる助成策が必要となる。また、「医 療的ケア児等支援者養成研修」を修了している保育 者は4.1%しかいなかったが、「医療的ケア児に対す る保育」を拡大していくのであれば、看護師だけを 増やせばよいというのではなく、保育施設全体の質 を高めていくためには、多くの保育者が「医療的ケ ア児等支援者養成研修」を受講し、知識や技術に加 え意識の向上を図っていく必要もある。 さらには、「インクルーシブ保育の実践」につい ては74.8%の保育者が「実践できていると思う」と 回答しているが、「医療的ケア児に対する保育」を 実施していない保育者も「インクルーシブ保育の実 ( )は行%、[ ]は全体% [11.6%] [11.6%] [7.5%] [0.7%] [31.3%] ⚓ 医療機関(診断機関)との連携不足 ( )は行%、[ ]は全体% ⚑人 (5.6%) [0.7%] ⚙人 (50.0%) [6.1%] ⚕人 (27.8%) [3.4%] ⚓人 (16.7%) [2.0%] 18人 (100%) [12.2%] ⚓ 地域施設(療育施設)との連携不足 ( )は行%、[ ]は全体% ⚑人 (5.6%) [0.7%] ⚘人 (44.4%) [5.4%] ⚖人 (33.3%) [4.1%] ⚓人 (16.7%) [2.0%] 18人 (100%) [12.2%] ⚕ 他の保育者との共通認識が必要 ( )は行%、[ ]は全体% ⚑人 (11.1%) [0.7%] ⚒人 (22.2%) [1.4%] ⚓人 (33.3%) [2.0%] ⚓人 (33.3%) [2.0%] ⚙人 (100%) [6.1%] ⚖ チェックリストの活用 ( )は行%、[ ]は全体% ⚒人 (28.6%) [1.4%] ⚒人 (28.6%) [1.4%] ⚒人 (28.6%) [1.4%] ⚑人 (14.3%) [0.7%] ⚗人 (100%) [4.8%] 合計 [27.9%]41人 [36.7%]54人 [27.9%]41人 [7.5%]11人 [100%]147人

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践ができている」と思っており、「障害児保育の実 施=インクルーシブ保育」という短絡的な考えに留 まっている可能性がある。「インクルーシブ保育」 について正しい認識を啓発していくと共に、「障害 児保育」に対する意識と質を高めていく必要性を強 く感じる。 (⚒)障害児保育を実践する上での保育者自身の課 障害児保育を実践する上での保育者自身の課題に ついては、以下のような年代別の保育者の特徴が見 られた。 まず、20代の保育者は専門学校・大学・短大等の 養成校を卒業して時間が経っていない為、「障害に 対する知識の不足」を感じていない可能性が高く、 40代・50代の保育者は養成校を卒業して長期間が経 過し法律や制度等が変化している状況から「障害に 対する知識の不足」を感じている可能性が高いと考 えられる。反対に20代の保育者は専門学校・大学・ 短大等の養成校で最新の知識を学んでから時間が たっていない為、「保育室環境に配慮や改善が必要」 「保育プログラムの改善が必要」と感じている可能 性が高く、30代・40代・50代の保育者は養成校を卒 業して長期間が経過しそれぞれの保育観や保育の方 法が確立されており限られた環境や資源の中で上手 く工夫することに慣れている為、「保育室環境に配 慮や改善が必要」「保育プログラムの改善が必要」 と感じていない可能性が高いと考えられる。 また、20代・30代の保育者は経験が浅いために職 場内の状況に意識が集中しているために「療育や支 援に対する技術の不足」「保護者との連携不足」を 自己課題として感じている可能性が高く、40代・50 代の保育者は経験が長いため「療育や支援に対する 技術の不足」「保護者との連携不足」を自己課題と して感じていない可能性が高い。 さらに、20代・30代の保育者が「医療機関(診断 機関)との連携不足」「地域施設(療育施設)との 連携不足」の項目に関して自己課題と捉えている割 合が低いのは、目の前の保育や施設内の業務に意識 が集中しているからではないだろうか。一方で40 代・50代の保育者は経験も積み視野が広くなってい る為、施設外にも意識が向き「医療機関(診断機関) との連携不足」「地域施設(療育施設)との連携不 足」を自己課題として捉えている割合が高かったと 考えられる。 (⚓)障害児保育を実践する上での職場の課題 障害児保育を実践する上での職場の課題について は、以下のような年代別の保育者の特徴が見られ た。 まず、20代の保育者が「医療機関(診断機関)と の連携不足」「地域施設(療育施設)との連携不足」 の項目に関して職場課題と捉えている割合が低いの は、施設内の業務に意識が集中しているからではな いかと考えられる。一方で30代・40代・50代の保育 者は経験も積み視野が広くなっている為、施設外に も意識が向き「医療機関(診断機関)との連携不足」 「地域施設(療育施設)との連携不足」を職場課題 として捉えている割合が高かったと考えられる。 また、20代・30代の保育者は「他の保育者との共 通認識が必要」の項目に関して職場課題と捉えてい る割合が低いのは、目の前の保育に意識が集中して おり、職場の組織全体に十分に意識が向いていない からではないかと考えられる。一方で、40代・50代 の保育者は経験も積み視野が広くなっている為、組 織全体が見えている為「他の保育者との共通認識が 必要」を職場課題として捉えている割合が高かった と考えられる。 さらに、20代・30代の保育者は「障害に対する職 員全体の知識不足」「保育所の環境や設備に改善が 必要」の項目に関して、職場課題と捉えている割合 が高かったのは、養成校で最新の知識を学んでから 時間が経っていないことや他の保育施設の保育者等 の情報交換等をする機会があるからではないかと考 えられる。 なお、「チェックリストの活用」の項目について は、どの年代にも課題として挙げている割合が少な く活用している保育施設が少数であった。国が活用 を推奨している状況も踏まえれば、保育者の養成カ リキュラムでも学ぶべきことであり、保育者の各種 研修でも学ぶ場が設けられる必要がある。

⚗.おわりに

本調査における幾つかの研究課題について述べて おく。 今回の調査では、年代別の課題が浮き彫りになっ た。2017(平成29)年度より「保育士等キャリアッ プ研修」がスタートしたが、全国一律で全保育者に

保育現場における障害児保育の現状と課題 【T:】Edianserver/【聖和短期大学】/聖和短期大学紀要/第⚗号/ 立花直樹②

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課題等については、専門職になってから研修に導入 するのではなく、専門学校・短期大学・大学等の保 育士養成校のカリキュラムに組み込み、学生時代か ら課題を解決できる仕組みを構築する必要がある。 謝辞 最後に、各保育現場で業務多忙の中、本調査にご協力 頂いた、A 県 B 市内で保育所・認定こども園(147施設) の保育士及び保育教諭147名の皆様に、心から御礼を申し 上げます。 【引用文献】 1)内閣府(2020)『令和⚒年版障害者白書』勝美印刷、 p 243 2)中央児童福祉審議会(1978)「当面推進すべき児童福 祉対策について(答申)」 3)内閣府(2018)『平成30年版障害者白書』勝美印刷、 p 69 4)西村重稀・水田敏郎(2001)『障害児保育』中央法規 出版、p 15 5)再掲⚑)(2020)『令和⚒年版障害者白書』勝美印刷、 p 243 6)全国保育協議会(2017)「会員の実態調査報告書2016 (平成29年⚖月)」p 87 7)新川朋子(2019)「第⚒章ノーマライゼーション社会 の実現」『障害児の保育・福祉と特別支援教育』ミネ ルヴァ書房、p 41 8)文部科学省初等中等教育局長(2007)「特別支援教育 の推進について(通知:19文科初第125号)」 9)総務省(2020)「人口推計(令和元年10月⚑日現在)」 (2021.2.26確認)

https: //www. stat. go. jp / data / jinsui / 2019np / index. html 10)再 掲 ⚑)『令 和 2 年 版 障 害 者 白 書』勝 美 印 刷、p 239-241 11)神尾陽子(2014)「就学前後の児童における発達障害 の有病率とその発達的変化:地域ベースの横断的お よび縦断的研究」『厚生労働科学研究費補助金障害者 対策総合研究事業平成23年度~平成25年度総括・分 担研究報告書』厚生労働省、p 3 12)再掲11)『厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合 研究事業平成23年度~平成25年度総括・分担研究報 告書』厚生労働省、p 8 13)立花直樹・波田埜英治(2018)「特別支援と特別な配 慮が必要な児童に対する教育・保育の現状と課題」 『障害児保育』第⚓号、聖和短期大学、p 35 14)本郷一夫・澤江幸則・鈴木智子・小泉嘉子・飯島典 子(2003)「保育所における『気になる』子どもの特 16)佐山智洋・新妻里紗・村上功二・齊藤信哉・永吉敏広・ 佐藤千代子・緒方明子(2016)「保育所における発達 障害児に関する実態調査」『研究紀要第37号』国立障 害者リハビリテーションセンター、p 28 17)立花直樹(2019)「プロローグ:障害児の保育・福祉・ 特別支援教育の俯瞰」『障害児の保育・福祉と特別支 援教育』ミネルヴァ書房、p 6 18)佐久間庸子・田部絢子・高橋智(2011)「幼稚園にお ける特別支援教育の現状:全国公立幼稚園調査から みた特別な配慮を要する幼児の実態と支援の課題」 『東京学芸大学紀要(総合教育科学系)』第62巻⚒号、 東京学芸大学、p 153-173 19)原口英之・野呂文行・神山努(2013)「保育所におけ る特別な配慮を要する子どもに対する支援の実態と 課題」『障害科学研究(第37巻)』障害科学学会、p. 104-105 20)再掲⚖)「会員の実態調査報告書2016(平成29年⚖月)」 p 87 21)内閣府(2016)「障害を理由とする差別の解消の推進」 (2021.2.26確認) https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html 22)厚生労働省雇用均等・児童家庭局長(2007)「保育所 等における保育士配置に係る特例について(通知: 雇児発0218第⚒号)」 23)厚生労働省・内閣府・文部科学省合同通知(2007)「医 療的ケア児の支援に関する保健、医療、福祉、教育 等の連携の一層の推進について(通知:雇児発0603 第⚔号)」 24)建通新聞(2020)「公立小中学校のバリアフリー化 基準適合を義務化」2020年⚙月29日記事(2021.2.26 確認)

https: //www. kentsu. co. jp / webnews / view. asp? cd = 200929590016&pub=1&su=1 25)みずほ情報総研株式会社(2017)「保育所における障 害児保育に関する研究報告書(平成29年⚓月)」 26)一番ケ瀬康子・小川政亮・真田是・高島進・早川和 夫 監修(2002)「ノーマライゼーション社会」『社会 福祉辞典』大月書店、p 429 27)西村重稀・水田敏郎(2002)「パステルゾーン」『障 害児保育』中央法規出版、p 10-11 28)成清美治・加納光子 編集代表(2015)「バリアフリー」 『現代社会福祉用語の基礎知識』学文社、p 315-316 29)再掲26)(2002)「インクルーシブ保育」『社会福祉辞 典』大月書店、p 28-29

参照

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