Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
№26:がん診療連携拠点病院の周術期口腔機能管理と
展望
Author(s)
山内, 智博; 福田, 仁; 木村, 昇義; 川上, 真奈; 小川,
千晴; 千葉, 綠
Journal
歯科学報, 115(5): 483-483
URL
http://hdl.handle.net/10130/3841
Right
目的:口腔がんに対する外科的または放射線治療後 に は,咀 嚼 障 害 や 嚥 下 障 害 な ど の た め,患 者 の QOL が著しく低下し,うつなどの精神神経障害の 原因ともなる。上顎骨切除症例においては,これま でに顎補綴治療により患者の QOL が向上すること が報告されているが,その他の部位への顎補綴の効 果は明らかでない。そこで,本研究は種々の口腔が んに対する顎補綴治療が患者の口腔関連 QOL へ及 ぼす影響の評価を行うことを目的に,顎補綴治療前 後の口腔関連 QOL の変化と,その変化に影響を及 ぼす患者背景の因子の調査,検討を行った。 方法:対象は東京歯科大学口腔がんセンターにて顎 補綴治療を行った上顎欠損患者25名および下顎・ 舌・口底欠損患者25名の計50名(男性34名,女性16 名,平均年齢72.4±8.7歳)とした。補綴治療前後 に OHIPJ54を用いて8つのサブドメイン(機能の 制限,痛み,心理的不快感,身体的障害,心理的障 害,社会的障害,ハンディキャップ,日本語版追加 事項)と合計のスコアを算出し,口腔関連 QOL を 評価した。また,患者背景として年齢,性別,咬合 状態,欠損部位を調査した。治療前後の各サブドメ インおよび合計のスコアの比較を Wilcoxon の符号 付き順位検定にて行った。また,治療による口腔関 連 QOL の変化に影響を及ぼす患者背景の検討を, ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)にて 行った(α=0.05)。本研究は東京歯科大学市川総 合病院倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認 番号 I−14−46)。 結果および考察:上顎欠損症例においては,機能の 制限,心理的不快感,身体的障害,ハンディキャッ プ,日本語版追加事項および合計スコアについて治 療前後で統計学的有意差を認めた。一方,下顎・ 舌・口底欠損症例においては,社会的障害と合計ス コアとについて統計学的有意差を認めた。またロジ スティック回帰分析により,治療による口腔関連 QOL の変化に影響を及ぼす因子として心理的不快 感には性別が,身体的障害とハンディキャップには 欠損部位がそれぞれ抽出された。これらの結果か ら,上顎欠損症例,下顎・舌・口底欠損症例ともに 顎補綴治療は口腔関連 QOL の向上に有効であり, 口腔関連 QOL の改善には,性別,欠損部位が影響 を及ぼすことが示唆された。上顎欠損は鼻口腔漏を 生じ,下顎欠損に比べて複数の口腔機能変化を同時 に起こしやすいため,より多くの項目において口腔 関連 QOL の向上が認められたと考えられた。 目的:平成24年に「周術期口腔機能管理」が歯科・ 口腔外科診療報酬に収載されてから,全国の病院歯 科は対応に翻弄している。また,歯科医師会も保険 請求の方法,実際の患者の見方などの研修会を企画 するなど歯科診療上避けては通れない事項となって いる。 「周術期口腔機能管理」は,主にがん・血管外科 疾患患者の周術期での口腔機能管理を行うもので, 支持療法に分類され治療の継続による生存率の向 上,入院期間の短縮による医療費の減少がその最終 目標である。がん・感染症センターである当院も, より多くの患者への口腔管理を通した支持療法を行 うための方策を講じてきたので報告する。 方法:当院はがん診療連携拠点病院としての指定要 件充足のため,PDCA サイクル(計画,実行,評価, 改善)の体制の構築を目標とし,①がん患者指導管 理料算定件数の増,②がん患者に対する身体的,精 神心理的,社会的苦痛のスクリーニング実施体制の 構築,③キャンサーボード・合同カンファレンスの さらなる充実,④口腔ケアプロトコール実施件数の 増,以上のような4項目をあげた。このように病院 全体の目標の1つに口腔ケア件数の増加を加えるこ とで,周術期口腔機能管理の必要性について院内各 部署への周知を行った。 PDCA サイクル構築前の平成25年度と構築後の 平成26年度の比較を,依頼件数,依頼元の主科につ いて検討した。 結果および考察:平成25年度の「周術期口腔機能管 理」の依頼件数は369名であった。対して平成26年 度は倍増し680名にのぼった。 依頼元の主科は,平成25年度は血液内科108名, 化学療法科59名,食道外科41名で,全依頼数の半数 以上である56%(208名)を占めていた。平成26年 度に入ると,依頼総患者数の大幅な増加にともな い,血液内科125名,化学療法科84名,食道外科84 名と増加を示した。その他,乳腺外科70名(前年 度:16),大腸外科56名(2),胃 外 科46名(1), 呼吸器内科47名(17),婦人科38名(3)と,著し く増加した。 当院は病院方針の1つとして採用されるという チャンスがあったため院内での周知の徹底が可能で あった。今後はエビデンスを提唱できるようにする ことや,研修会・見学会を主催するなど(平成26年 度実績:6回53名受講),しっかりとした病診連携 の構築を行うことが期待される。