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少数派株主保護の法理 : 抑圧および不公正な侵害行為の救済制度と株主代表訴訟制度による救済(二)

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(1)

少数派株主保護の法理 : 抑圧および不公正な侵害

行為の救済制度と株主代表訴訟制度による救済(二

著者

森江 由美子

雑誌名

法と政治

62

4

ページ

1(2044)-43(2002)

発行年

2012-01-20

URL

http://hdl.handle.net/10236/8939

(2)

論 説

少数派株主保護の法理

抑圧および不公正な侵害行為の救済制度と

株主代表訴訟制度による救済(二)

由美子

目 次 はじめに 第一編 イギリス法 第一章 不公正な侵害行為の救済制度 第一節 序論 第二節 概要と沿革 第三節 不公正な侵害行為の救済制度の機能 Ⅰ 不公正な侵害行為の概念 Ⅱ 不公正な侵害行為の要件 Ⅲ 不公正な侵害行為の行為類型 Ⅳ 不公正な侵害行為に関する裁判所の救済命令類型 第四節 2006年不公正な侵害行為の救済制度の改正の経緯とその内容 Ⅰ 概要 Ⅱ 株主の救済に関する諮問書において新たに提案された小規模会 社のための不公正侵害救済制度 Ⅲ 株主の救済に関する報告書における代替的救済案 Ⅳ 1998年以降の改正作業とその内容 第五節 小括 第二章 イギリスの株主代表訴訟制度 第一節 序論 第二節 概要 Ⅰ 従来の株主代表訴訟 Ⅱ 2006年制定株主代表訴訟

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少 数 派 株 主 保 護 の 法 理 第三節 不公正な侵害行為の救済制度と株主代表訴訟制度の関係 Ⅰ 両制度を制定するに至った背景 Ⅱ 両制度を統一する見解 Ⅲ 両制度を維持する事情 (一)法律委員会の見解 (二)不公正侵害救済制度の問題点 (三)比較法的見地 第四節 小括(以上,62巻第3号) 第二編 アメリカ法 第一章 抑圧救済制度 第一節 序論 第二節 概要 第三節 抑圧救済制度の沿革と機能 Ⅰ 制定法アプローチを採用する州の抑圧救済制度 (一)抑圧の沿革および概念 (二)救済手段の拡大 (三)制定法アプローチを採用する州の展開 Ⅱ コモン・ローアプローチを採用する州の抑圧救済制度 (一)抑圧の沿革および概念 (二)救済手段の拡大 Ⅲ デラウェア州法のアプローチ Ⅳ 制定法アプローチの州とコモン・ローアプローチの州の収束 第四節 小括(以上,本号) 第二章 アメリカの株主代表訴訟制度 第一節 序論 第二節 概要 Ⅰ 株主代表訴訟と直接訴訟の従来の区別 Ⅱ ALI の勧告 第三節 閉鎖会社における株主代表訴訟制度の少数派株主保護機能 Ⅰ 従来の代表訴訟要求に従っている州 Ⅱ ALI の方式を採用する州 Ⅲ 判決が一致していない州 第四節 小括 おわりに

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第二編 アメリカ法 第一章 抑圧救済制度 第一節 序論 アメリカの閉鎖会社 (close corporation) (230) における株主間の紛争には, 主につぎのようなものがある。たとえば,経営が好調である場合に,支配 株主が,自らの利益をより多く確保することを目的とし,少数派株主を締 め出しまたは追い出そうとしたために,当該少数派株主が,会社を支配し ている者を訴えるようなケースで (231) ある。 このような紛争は,一般的に,アメリカ会社法上「少数派株主に対する 抑圧」という表題に分類される。 (232) かかる紛争を,制定法および司法判断に よって対処しようとする試みは,アメリカ会社法における当該領域の議論 と同じくらい古くから行われてきている。 (233) 論 説 (230) close corporation は,非公開会社とも称されるが,本稿においては閉 鎖会社と称する。アメリカにおける閉鎖会社とは,株式,少なくとも議決 権のある株式が,一人または数人の者によって所有されている会社 (cor-poration) であり,公開会社 (open cor(cor-poration) に対する語である。閉鎖 会社の株式は,証券市場で取引されることがなく,その株主は経営に積極 的に参加するのが通常であり,所有と経営が合一している。閉鎖会社の多 くは小規模企業であるが,必ずしもそれに限られない。

(231) See, e.g., John H. Matheson & Brent A. Olson, Corporate Cooperation, Relationship Management, and the Trialogical Imperative for Corporate Law, 78 Minn. L. Rev. 1443, 1461 (1994); D. Gordon Smith, The Shareholder Primacy Norm, 23 Iowa J. Corp. L. 277, 31022 (1998) (tracing the history of shareholder oppression cases); John H. Matheson and R. Kevin Maler, A Simple Statutory Solution to Minority Oppression in the Closely Held Business, 91 Minn. L. Rev. 657 (2007), at p. 2.

(232) John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 2. (233) Smith, supra note (231), at 310 ; John H. Matheson and R. Kevin Maler,

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「抑圧」は,コーポレート・ガバナンスにおける多数決原則を起源とす るが,これは,本来,少数派株主によってなされる抑圧の問題に対処する 中で生まれたものである。すなわち,初期のアメリカ会社法は,会社の基 礎的変更について全員一致を要求し (234) ていたため,支配株主の提案に同意す ることと引き換えに,反対少数派株主に予期せぬ利益をもたらすことが可 能となっていた。 (235) そのため,立法府は,会社が全員一致でなくとも,多数 決決議により根本的な決定を行うことができる旨を認めることによって, この問題に対処した。 (236) その後,経営判断の法則および個別法的重要性の法 理(the doctrine of independent legal significance)など,さらに法が精緻 化されることによって,会社は,株主が反対する場合であっても,一層断 固とした行動を取ることができるようになった。 (237) これに対し,不満を有する株主には,主に2つの救済方法があるとされ てきた。それは,株式市場で保有株式を売却するか,あるいは制定法によっ て規定されている場合には,反対株主の権利および株式買取請求権を申し 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理 supra note (231), at p. 2. (234) 19世紀中葉以前,制定法は,会社の基礎的変更に必要とされる総会決 議手続について定めることをしなかったため,これにコモン・ロー上の全 員一致原則が適用されていた。 なお,会社の基礎的変更に関する全員一致原則の緩和について記述され ている文献として,久保田安彦「初期アメリカ会社法上の株主の権利(二・ 完)」早稲田法学74巻4号(1999年)21頁以下。

(235) See Robert B. Thompson, Exit, Liquidity, and Majority Rule : Appraisal’s Role in Corporate Law, 84 Geo. L. J. 1, 1114 (1995); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 2.

(236) Ibid.

(237) See generally 1 F. Hodge O’Neal & Robert B. Thompson, O’Neal and T

hompson’s Oppression of Minority Shareholders and LLC Members 3.3

(rev. 2d ed. 2005 & Supp. 2006); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 2.

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立てることである。 しかし,閉鎖会社においては,多数派株主が上述のような権限を利用し て,とりわけ決議において少数派株主を合法的に取締役から解任し,配当 をなくすことにより「締め出す」場合には,当該少数派株主は有効な救済 が受けられない。というのも,アメリカの閉鎖会社には,株式を売却する 市場が存在せず,さらに,経営判断の法則が多数派株主の意思決定を防御 する役割を果たすため,合法的に決議がなされている以上,制定法上の株 式買取請求権も適用されないからである。 ベンチャー企業または発展段階の会社に参画することを目的として,か かる会社の株主となった者が,証券市場に上場している大規模な会社の株 式を購入する投資家とは何らかの点で大きく異なる地位にいると感じるこ とを,実質的にすべての州が認めている。 (238) 閉鎖会社は相対的に株主数が少 ないため, (239) 株主は,互いに知っている関係であることが多い。したがって, 通常,最終的な解散についての事前の稟議など,ほとんどあるいはまった く用意されずに,かかる会社の人間関係が始まることになる。また,多数 派株主および少数派株主は,衝突の可能性がありながら,ともに会社の経 営に参画することも多い。 (240) それにもかかわらず,閉鎖会社の株式市場は用 意されていない。 (241) その結果,意見の相違が頂点に達した場合には,証券会 社に売り注文を出すことができないため,問題を解決できないのである。 アメリカの裁判所および法律家は,閉鎖会社は特別であるということに 論 説

(238) See Donahue v. Rodd Electrotype Co., 328 N. E. 2d 505, 511 (Mass.

1975). (239) Ibid. (240) Ibid. (241) Ibid.

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概ね同意している。しかし,特別であることをもって,少数派株主と多数 派株主間の紛争における交戦ルールをどのように変更すべきかを表現する ことについて,関係者らは苦心してきたようである。大会社に適用される 一般的なルールが閉鎖会社にも適用されるべきであり,閉鎖会社の少数派 株主に特別の救済を与える必要はない,とする見解を採る者は,本質的に, 抑圧を「除去」することは,抑圧という病弊そのものよりも悪い結果を招 く,と主張することが多い。 (242) 一方,裁判所の介入を拡大することに賛成す る者の主張は,閉鎖会社の個々の株主は,経済的かつ社会的関係における 継続的なパートナーであり,ある株主が他の株主の利益または期待に反す る行為を行った場合には,閉鎖会社には独自の性質があるため,特別な救 済が必要である,というものである。 (243) その後,アメリカ法においては,まさに,立法と司法による継ぎはぎ細 工とでもいうべき対処方法が出現することになる。すなわち,各州それぞ れが,閉鎖会社における少数派株主に対する抑圧を取り扱う独自の枠組み を有しているのである。かかる現象は,近時,有限責任会社 (Limited Liability Company) (244) の発展および利用により深刻化しているといわれてい 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理

(242) See Dennis S. Karjala, An Analysis of Close Corporation Legislation in the United States, 21 Ariz. St. L. J. 663, 663 (1989); Timothy J. Storm, Remedies for Oppression of Non-Controlling Shareholders in Illinois Closely-Held Corporations : An Idea Whose Time Has Gone, 33 Loy. U. Chi. L. J. 379, 380 (2002); Bryn Vaaler, Scrap the Minnesota Business Corporation Act, 28 Wm. Mitchell L. Rev. 1365, 137475 (2002); See generally Frank H. Easterbrook & Daniel R. Fischel, The Economic Structure of Corporate Law 22843 (1991); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 2. (243) See, e.g., Robert B. Thompson, The Shareholder’s Cause of Action for

Oppression, 48 Bus. Law. 699, 702 (1993); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 2.

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る。つまり,抑圧の問題は,非公開の事業形態に関連する問題であるが, 閉鎖会社だけに関係する問題ではないということである。 (245) そして,この問 題の解決策は,すべての種類の会社の実体に適用できるものでなければな らない。 (246) アメリカ法の当該領域における発展は,閉鎖会社の少数派株主に会社か らの退出方法を提供しようとする,裁判所および立法府の要望に関係して いるといわれている。 (247) 少数派株主の株式を会社または多数派株主が買い取 るという方策は,望ましい解決策である,とほとんどの州は結論づけてい るが,かかる望ましい救済を認める根拠については,一致していない。 各州は,少数派株主に,株式買取による退出という形の救済を提供する 方法を確立することに慎重に取り組んできた。すなわち,不正が行われた 場合にのみ救済が行われるべきである,とする伝統的なコモン・ローの概 論 説

(244) 有限責任会社 (Limited Liability Company) とは,アメリカにおける

最新の企業形態で,連邦所得税法上,組合 (partnership) の利点を確保す ると同時に,州法上,社員の有限責任 (limited liability) の利益を享受す ることを可能にするために,各州立法で認められたものであり,LLC と 称される。社員は,二重課税と無限責任の双方を回避しうる。社員の持分 は株式化されず,社員は組合員と同様な持分を有する。大多数の州では, 2人以上の社員が必要であるが,経営については,これに参加する社員と 参加しない社員がいてもよく,これを社員以外の者に委ねることもできる。 一方,わが国における合同会社は,アメリカにおける有限責任会社と類似 した企業形態であるが,アメリカのように構成員に対する二重課税の回避 は認められていない点で,両者は大きく異なる。

(245) See Douglas K. Moll, Minority Oppression & the Limited Liability Company : Learning (or Not) from Close Corporation History, 40 Wake Forest L. Rev. 883 passim (2005) [[hereinafter Moll, Minority Oppression & the LLC]; John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 2. (246) John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 2. (247) Ibid.

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念が存在したために,かかる退出を救済として認める適切な根拠を決めな ければならなかったのである。しかしながら,かかる救済方法は,少数派 株主の救済の根拠を決定する試みの中で進化し,さらに,立法府が換金可 能性に基づく救済を提供しようと試みる中で収束してきているようであ る。 (248) 以下では,裁判所および立法府が認める抑圧救済の根本的な状況および 性質を究明するために,抑圧救済に関する制定法および判例法の沿革およ び概念について概観し,考察を加えたいと思う。 第二節 概要 少数派株主に対する抑圧に関する請求権の発展については,各州を大ま かに3つのグループに分けることができる。 第一に,コモン・ロー判例の問題として,少数派株主に対する抑圧の救 済を発展させた州がある。 第二に,大まかに包括的な制定法とでも称すべき制定法を採用している 州がいくつか存在する。包括的な制定法は,少数派株主の抑圧に関する請 求権を確定し,大体の流れにおいて,かかる請求権を行使させる行為を規 定している。 (249) 株主が抑圧的な形で行為した場合にのみ救済を認める制定法の文言を採 用する際に,模範会社法 (Model Business Corporation Act)

(250) に倣った多 くの州の (251) 立法府と,コモン・ロー判例の問題として発展させた州の発展は, 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理 (248) Ibid.

(249) See, e.g., N. J. Stat. Ann.14A : 121(1)(a), (c) (West 2003).

(250) See Model Bus. Corp. Act 14.30(2)(ii) (2002), available at http://

www.abanet.org/buslaw/library/onlinepublications/mbca2002.pdf.

(251) 模範会社法 (Model Business Corporation Act) は,アメリカ法曹協会

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ほんのわずかしか異ならない。 (252) しかしながら,一般的に,模範会社法の影 響を受けた州の立法府は,抑圧的な行為の内容を定義しようとせず,ある いは,どれだけの救済手段が利用できるかを規定しようとはせずに,結果 として,かかる問題を裁判所およびコモン・ローに任せてしまっていると 解される。 (253) 第三に,会社法における先導者であるデラウェア州最高裁判所は,閉鎖 会社に関して他の州の裁判所が採る株主抑圧の法理の採用を拒否し,かか る方策を創設することは立法府の役割である,としている。 (254) デラウェア州および同州の不干渉アプローチに倣ったと思われるわずか な州を (255) 除き,さまざまな州の制度が,過去25年の間に収束してきてい る。 (256) その特徴としては,抑圧を決定する規準の収束と救済手段の拡大が挙 げられる。 まず,抑圧を決定する第一の規準として,閉鎖会社の株主は直接相互に 論 説 起草にかかる模範会社法のことである。各州ごとに異なる会社法の統一と, 各州会社法発展のためのモデルを与えるために作成された立法のひな型で ある。1950年に作成された後,しばしば改正され,なかでも1969年の改正 が重要であったが,1984年にはじめての全面改正を受け,Revised Model Business Corporation Act (1984) が公表された。アメリカ合衆国の52の法 域のうち約30の法域が模範会社法に倣い,これらは模範法法域 (Model Act jurisdictions) と呼ばれている。

(252) John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 3. (253) Ibid.

(254) See Nixon v. Blackwell, 626 A. 2d 1366, 1377 (Del. 1993).

(255) デラウェア州と同様に,カンザス州およびオクラホマ州は,株式会社

が株式の50%を所有する2人の株主を有する場合の解散を除き,解散に関 する規定を有していない。See Thompson, supra note (243), at p. 711 n. 70 ; John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 3.

(256) But see Karjala, supra note (242), at 70102; John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 3.

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信任義務を負っており, (257) かかる義務に対する違反は,少数派株主に対する 抑圧と認定されることが多くなった。 第二の規準として,多数派株主の行為が少数派株主の「合理的期待 (reasonable expectations)」を侵害する場合には,多数派株主は少数派株 主を抑圧したことになる,という見解を採用する州が増加してきている。 (258) これは,抑圧の最も広い定義となっており,多数派株主の行為に焦点を合 わせるのではなく,少数派株主が株主になった時点において有していた期 待に焦点を合わせるものである。 (259) 裁判所は,従来,抑圧が認められると会社の解散を命じていたが,現在 は,不満を有する株主の株式買取のように,解散よりも過酷でない救済を 少数派株主に与えることをほとんどの州が認めている。かかる傾向は少数 派株主に恩恵を与えている,といわれている。 (260) John H. Matheson 教授らの調査に(261) よれば,2007年時点で,合理的期待 の規準を適用している州は,合計で20州存在し, (262) さらに,要件の一つと 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理

(257) See Donahue v. Rodd Electrotype Co., 328 N. E. 2d 505, 512 (Mass.

1975); James M. Van Vliet Jr. & Mark D. Snider, The Evolving Fiduciary Duty Solution for Shareholders Caught in a Closely Held Corporation Trap, 18 N. Ill. U. L. Rev. 239, 25152 (1998). But see Mary Siegel, Fiduciary Duty Myths in Close Corporate Law, 29 Del. J. Corp. L. 377, 38182 & nn.1920 (2004); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 3.

(258) See e.g., Berreman v. W. Publ’g Co., 615 N. W. 2d 362, 374 (Minn. 2000); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 3.

(259) See Vaaler, supra note (242), at 140506; John H. Matheson and R.

Kevin Maler, supra note (231), at p. 3.

(260) 2 F. Hodge O’Neal & Robert B. Thompson, O’Neal and Thompson’s Close

Corporations and LLCs 9 : 30 (2004); John H. Matheson and R. Kevin

Maler, supra note (231), at p. 3.

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して合理的期待を採用している州がもう1州あ (263) る。一方,12の州が信任 義務の規準を採用しているが,かかる規準は大部分が拡張性のあるもので あり,これを採用して合理的期待の規準と同じ結論に至ることも可能であ る。 (264) 不満を有する株主の株式の買取も,80%の州が採用しており,制定法 またはコモン・ローのいずれかによって,約40州が解散に代替するこの ような救済を与えている。 (265) しかしながら,収束は統一的になされているわけではない。各州は2, 3の重要な規準に収束する傾向がある一方で,制定法またはコモン・ロー 上の採用方法についてさえ合意されていない。 なお,デラウェア州は別の進路を計画しているようであり,デラウェア 州が先導し,ほとんどの他の州はデラウェア州の規準に倣うといった会社 法における典型的なパターンは崩壊したことが示されている。 (266) 第三節 抑圧救済制度の沿革と機能 Ⅰ 制定法アプローチを採用する州の抑圧救済制度 (一) 抑圧の沿革および概念 1970年代半ばから1980年代初頭にかけて,最も顕著なニュージャージー 州をはじめとするいくつかの州において,株主抑圧の請求権を成文化する 法が制定された。これらの州は,当該領域において先駆者と呼ばれていた が,解散に関する制定法上の根拠として抑圧を規定したのは,これらの州 論 説 (262) Ibid.

(263) Kiriakides v. Atlas Food Sys. & Servs., Inc., 541 S. E. 2d 257, 264 (S. C. 2001); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 3. (264) John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 3. (265) Ibid.

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が最初ではない。イリノイ州とペンシルベニア州は,1933年の州法にお いて,解散の根拠として抑圧を規定していた。 (267) しかしながら,このような 初期の制定法には,抑圧が定義されておらず,また,解散に代替する救済 手段も列挙されていなかったために,裁判所が補わなければならない大き な欠陥が残されてしまった。 (268) それゆえに,株主抑圧に適用される広範囲の 制定法を起草しようとするニュージャージー州議会の取り組みは,厳密に 言えば新しいものではなかったが,かかる欠陥を補うという意味において は目新しいものであった。ニュージャージー州法に倣って包括的な制定法 アプローチを採用した州はわずかであったにもかかわらず, (269) 当該制定法は, 非常に影響力があるということが明らかになった。また,ニュージャージー 州の制定法は,閉鎖会社の少数派株主には,大会社の株主に提供されてい る保護を超える特別な保護が必要である,という考え方に弾みを付けた。 ニュージャージー州一般会社法の1972年の改正には,注目すべき条項 がいくつか含まれている。 (270) 第一に,当該改正によって,解散以外に裁判所 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理

(267) See Cent. Standard Life Ins. Co. v. Davis, 141 N. E. 2d 45, 49 (Ill. 1957); Charles W. Murdock, The Evolution of Effective Remedies for Minority Shareholders and Its Impact up on Valuation of Minority Shares, 65 Notre Dame L. Rev. 425, 455 (1990); Thompson, supra note (243), at 70911, 713 n. 84 ; John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 3. (268) See Thompson, supra note (243), at 711 ; John H. Matheson and R. Kevin

Maler, supra note (231), at p. 4.

(269) John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 4.

(270) 25人以下の株主を有する株式会社の場合,支配している取締役または 株主の不正または不法行為,経営の失敗,役員または取締役としての権利 濫用,あるいは,株主,取締役,役員または従業員としての資格において, 1人以上の少数派株主に対し,抑圧的にまたは不公正に行為を行ったこと を証明した場合,上位裁判所は,管理者の指名,仮取締役の指名,または 会社の株式の買取命令,あるいは,株式会社を解散判決を命令することが できる。

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が利用できる救済手段が拡大された。解散という過酷な手段を使いたくな いと考える裁判官は多いため,救済方法の拡大は,株主間の紛争において, 裁判所が積極的に介入するために必要な前提条件であった。 (271) 第二に,当該 制定法は,「株主の数が25人以下の会社」と定義される閉鎖会社について 特別規定を創設しており,その結果,公開会社に対する濫用的訴訟を防止 することを意図した明確な線引きのルールが生まれた。 (272) 抑圧に至らない程 度の問題を認定した場合にも,裁判所は閉鎖会社の解散を命じることがで きることも,当該制定法は明らかにした。すなわち,単に「不公正」であ る行為に対しても救済を行使させることがある。 (273) 最後に,会社内で少数派 株主が果たす4つの役割,すなわち,株主,取締役,役員または従業員の うちのいずれかの地位にある,少数派株主に対する多数派株主の行為が不 公正である場合には,裁判所は,かかる行為を不公正であると判断するこ とができる。 (274) 改正に携わった者の解説によれば,閉鎖会社における抑圧的 な行為として,多数派株主は,少数派株主を職場から追い出し,もしくは 実質的に少数派株主の権限または報酬を減少させることによって,少数派 株主を締め出す形を取ることがある,という事実を反映して,かかる文言 を追加したようである。かかる文言がなければ,裁判所は,抑圧を認定す る際,株主の株式に対する直接的な損害のみに目を向けるように制限され ている,と感じる可能性があるであろう。 (275) それゆえに,新しい制定法は断 固として,不満を有する少数派株主を保護する方向に向かったのである。 論 説

(271) See N. J. Stat. Ann.14A : 127 cmt. (1972 Amendments).

(272) See ibid.

(273) Ibid.,14A : 127(1)(c). (274) Ibid.

(275) Ibid ; cmt. (1972 Amendments) (citing Ernest L. Folk, Review of the

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3年後,カリフォルニア州議会は,同州の一般会社法を改正し,株主の 数が35人以下の会社と定義される閉鎖会社の株主に対して,会社を解散 させる法的根拠を明示的に与えた。 (276) 当該制定法の下では,「継続的かつ広 範囲の詐欺,経営の失敗,または権限の濫用,もしくはいずれかの株主に 対する継続的な不公正について,会社を支配している者に責任があったか, または会社を支配している者が故意に是認していた場合」には,裁判所は 会社を解散させることができる。 (277) 当該制定法は,取締役,および,会社の 株式の3分の1以上を所有する株主について,会社の解散を求めて訴訟を 提起する権限を,全面的に制限しているが,閉鎖会社の株主については, かかる制限を適用していない。 (278) そして,「株主の数が35人以下の会社の場 合で……,不満を有する株主の権利または利益を保護するために,清算が 合理的に必要である場合」には,解散の根拠があると規定されている。 (279) こ れに関し,州議会は次のように説明している。 非任意解散に関する手続を開始する権限は拡大され,その提訴権者は, 閉鎖会社の株主,すなわち名簿上の株主または実質上の株主が明示的に含 まれている。非任意解散を正当化する根拠には,株主の数が35人以下の 会社において,手続を開始する当事者の利益を保護するために,解散を求 める訴訟が合理的に必要である場合が含まれている。 (280) 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理

(276) Act effective Jan. 1, 1977, ch. 683, 1975 Cal. Stat. 1514, 159798 (codified

as amended at Cal. Corp. Code 1800(b)(5) (West 1990)); John H.

Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 4.

(277) Cal. Corp. Code1800(b)(4).

(278) See ibid.,1800(a)(2). (279) Ibid.,1800(b)(5).

(280) Ibid., 1800 cmt. (emphasis added); John H. Matheson and R. Kevin

(16)

ところで,ニュージャージー州,カリフォルニア州いずれの制定法も, 寛大な「合理的期待」の規準を明示的に採用しなかった。その上,カリフォ ルニア州控訴裁判所は,少数派株主の「合理的期待」を含むものとして当 該制定法を解釈することも拒絶した。 (281) これに対し,ニュージャージー州の 裁判所は,閉鎖会社の多数派株主が少数派株主の合理的期待に反した場合 には,ニュージャージー州法違反と判断できると結論づけた。 (282) いずれの枠 組みにおいても,閉鎖会社の少数派株主は,多数派株主に対して,以前に 比べてかなり緩やかな規準で勝訴できるようになった。 (283) これらの制定法が 次々に他の州に影響を与えた結果,他の州は同様の法律を制定した。 1981年,ミネソタ州は,新しい事業会社法を制定したが, (284) 同法には, ニュージャージー州の制定法を部分的に倣った解散条項が含まれていた。 (285) 最初に制定された法律は,少数派株主を支持することを意図していた。そ の後の2年間における改正によって,州議会は,同法を少数派株主にとっ てさらに有利なものにした。すなわち,裁判所が介入する規準を,「継続 的な不公正」行為から単なる「不公正な侵害」行為に引き下げ,「抑圧」 に一層広い概念を与えたのである。これは,同法の拡大を意図した改正で 論 説

(281) Bauer v. Bauer, 54 Cal. Rptr. 2d 377, 382 (Ct. App. 1996).

(282) Brenner v. Berkowitz, 634 A. 2d 1019, 1029 (N. J. 1993); Exadaktilos v. Cinnaminson Realty Co., 400 A. 2d 554, 561 (N. J. Super. Ct. Law Div. 1979); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 4.

(283) Cal. Corp. Code1800 cmt; Compare 1800(b)(4), with N. J. Stat. Ann. 14A : 127(1)(c) (West 2003); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 4.

(284) Minnesota Business Corporations Act, ch. 270, 1981 Minn. Laws 1141,

1213 (codified as amended at Minn. Stat.302A. 751 (2004)).

(285) Minn. Stat. Ann.302A. 751 & note (West 2004) (Reporter’s Notes  1981).

(17)

あった。 (286) さらに,閉鎖会社の株主にエクイティ上の救済を認めるべきか否 かを検討する場合には,「株主の合理的期待」を裁判所は検討するべきで ある旨の文言も追加した。 (287) 1985年,ノースダコタ州は,非任意解散法を成立させたが, (288) 同法はニュー ジャージー州およびミネソタ州の制定法と同様の規定を置いていた。 (289) ミネ ソタ州の法律と同様に,ノースダコタ州の制定法は「株主の合理的期待」 を検討するように裁判所に要求している。 (290) 1988年,アラスカ州は,解散法を拡大する制定法を成立させた。 (291) 同法 は株主の合理的期待を検討することを裁判所に要求していないが, (292) アラス カ州最高裁判所は以前の制定法に基づいて抑圧を定義する際に,合理的期 待の規準をすでに承認していた。 (293) オレゴン州は,2001年に会社法を改正して,ミネソタ州の法律と同様 の規定を置き,さらに,解散を望まない閉鎖会社の株主に,エクイティ上 の救済を認めるべきか否かを検討する場合には,「株主の合理的期待」を 裁判所は検討することができる旨の文言を追加した。 (294) 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理

(286) Minn. Stat. Ann.302A. 751 note (Reporter’s Notes 1982 to 1984).

(287) Minn. Stat.302A. 751, subdivision.

(288) North Dakota Business Corporation Act, ch. 147,3, 1985 N. D. Laws

41113 (codified as amended at N. D. Cent. Code 1019.1115 (2005)).

(289) See N. D. Cent. Code1019.1115(1)(b)(3).

(290) Ibid.,1019.1115(4).

(291) Act of June 17, 1988, ch. 166,1, 1988 Alaska Sess. Laws 10507 (codi-fied as amended at Alaska Stat.10.06.628 (2004)).

(292) See Alaska Stat.10.06.628(b)(5).

(18)

(二) 救済手段の拡大 ニュージャージー州の制定法は,「継続的な不公正」行為から単なる 「不公正な侵害」行為に引き下げて,「抑圧」に一層広い概念を与えたこ とに加えて,重要な新制度を規定していた。多数派が,「不公正な侵害」 行為を行ったことを少数派株主が立証した場合には,同州の裁判所は,エ クイティ上の救済を少数派株主に与えることができることを,同法は明ら かにした。 (295) すなわち,ニュージャージー州議会は,裁判所が株式買取など の比較的過酷でないエクイティ上の救済を,少数派株主に与えることを認 めることによって,根本的な請求について,少数派株主の主張が認められ やすくなるようにしたのである。理論上の問題として,少数派株主が抑圧 されていたか否かの判断には,いかなる救済が適切であるかという問題と は別の審理を要するが,実際の問題としては,抑圧の最初の認定において, 救済の過酷さが必然的に役割を果たすことになる。つまり,救済手段が拡 大したことにより,当該条文に基づいて開始される訴訟が急増することと なった。 (296) その後,ミネソタ州議会は,一層明確に 302A. 751 条を制定し,裁判所 が会社を解散するか,または,「状況から考えて公正かつ合理的であると 裁判所が判断するエクイティ上の救済を与える」ことを認めた。 (297) 論 説 (294) 2001年,オレゴン州議会は,「合理的な期待」の文言を含む,閉鎖会

社における株主のための株式買取規定を採用した。 See Act of June 5, 2001,ch. 316,58, 2001 Or. Laws 761 (codified as amended at Or. Rev. Stat. 60.661(2)).

(295) N. J. Stat. Ann.14A : 127(1)(c) (2003).

(296) Eileen A. Lindsay, What Can I Do for You? Remedies for Oppressed

Shareholders in New Jersey, N. J. Law., Aug. 2000, at p. 37 ; John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 5.

(19)

その他の州の制定法も,多数派株主が少数派を抑圧した場合には,解散 よりも過酷ではない救済を認めている。不満を有する株主の株式を購入す ることによって,多数派株主が非任意解散を回避することを,アラスカ州 は認めている。 (298) さらに,解散の代替手段として,あらゆるエクイティ上の 救済を認めることによって,アラスカ州はコモン・ローのアプローチを採 用した州の一連の判例に従った。 (299) カリフォルニア州も,多数派株主は公正価格での株式買取によって非任 意解散を回避できると規定した。 (300) (三) 制定法アプローチを採用する州の展開 制定法アプローチを採用する場合,原告に対する要件を緩和しすぎてい るために,不必要な訴訟および予測不可能で不公正な判決が生まれている, との批判が存在する。 (301) 一方で,制定法による制度を有する州の裁判所が, 州議会がおそらく意図したであろう解釈を超えて抑圧の意味を拡大させて しまったことを,示唆する判例も確かに存在する。 例えば,ミネソタ州においては,会社に雇用されている少数派株主は簡 単には解雇できないということを,判例は示唆し始めた。換言すれば,株 主である従業員を解雇することは,本質的に当該従業員の合理的期待に反 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理

(297) Minn. Stat.302A. 751, subdiv. 1 (2004). (298) Alaska Stat.10.06.630(a) (2004).

(299) John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 5.

(300) Cal. Corp. Code2000(a) (2010) (ただし,株式会社は自ら反対株主

から株式を購入する優先権を有している).

(301) See, e.g., Vaaler, supra note (242), at 1383 ; John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 5.

(20)

することになる,という考え方が,判例から生じたのである。ミネソタ州 控訴裁判所は,Pedro v. Pedro (Pedro II) 事件 において,スーツケース 製造会社の2人の兄弟が3人目の兄弟を解雇した場合には,2人の兄弟は 3人目の兄弟の終身雇用に対する合理的期待に反したことになる,と判示 した。 (302) 株主である原告は,45年間従業員として勤務していたが,深刻な 会社の不正経理を発見した後,多数派株主により解雇された。解雇当時, 原告は62歳であった。 (303) かかる事実によれば,株式の買取を行使する抑圧 の請求は,簡単に認めることができたであろうが,Pedro v. Pedro (Pedro II) 事件において,裁判所はさらに踏み込んだ判断を行った。すなわち, 多数派株主は,従業員としての原告のもう一つの利益を侵害しているため, 当該原告は,将来の賃金の損失について別途損害賠償を得ることができる, と判示したのである。 (304) 原告は,解雇の直前に,他の株主の1人に暴行を加 えており,原告もその事実を認めている。しかし,2年後,同裁判所は, 解雇された原告は雇用の継続に対して合理的期待を有していたのであり, 他の株主に暴行を加えた場合であっても,エクイティ上の救済を受ける権 利が与えられる,と判断した。 (305) この判決により,少数派株主の従業員としての業績がどれほど下限に近 いものであっても,従業員の地位にある少数派株主を解雇することはでき ない,と企業の実務家は憂慮するようになった。 (306) さらに,制定法アプロー 論 説 (302) 489 N. W. 2d 798, 802 (Minn. Ct. App. 1992). (303) Ibid., at 799800. (304) Ibid., at 803.

(305) Pooley v. Mankato Iron & Metal, Inc., 513 N. W. 2d 834, 83637 (Minn. Ct. App. 1994); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 6.

(306) See Vaaler, supra note (242) passim (criticizing several aspects of Min-nesota’s corporation act, particularly Section 302A. 751). But see Philip S.

(21)

チを採用する州は問題を不適切なものにしてしまった,との批判が出るよ うになった。一方,コモン・ローアプローチを採用する州はもっと緻密で より適切なバランスを取っている,という評価を得るようになった。しか しながら,制定法アプローチの州とコモン・ローアプローチの州が,まっ たく異なった道を進むという想定は,2つの傾向が土台から崩してしまっ た。 第一の傾向は,制定法アプローチの州における立法の取り組みによって, 制定法の範囲が若干制限されたことである。例えば1994年ミネソタ州議 会は,Pedro v. Pedro (Pedro II) 事件のような判決に対応する2つの点で, 第751条を改正した。まず,「すべての株主の合理的期待」を検討した後 に,救済は認められるべきであることを明確にした。 (307) つぎに,売買契約を 含む書面の契約は,当事者の合理的期待を反映していると推定すべきであ ることを示す文言を加えた。 (308) さらに,ミネソタ州の裁判所の判決は,解雇によって株主の「合理的期 待」が侵害されるという判決に,さらなる裁判上の制限を加えた。 Gunderson v. Alliance of Computer Professionals 事件において,雇用の継 続という合理的期待が解雇によって侵害されたと主張する原告は,2つの 規準を超え,かつ1つの比較衡量テストを通過していなければならない, とミネソタ州控訴裁判所は判示した。 (309) また,裁判所は手続上の規準も引き 上げた。 (310) 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理

Garon et al., Challenging Delaware’s Desirability as a Haven for Incorporation,

32 Wm. Mitchell L. Rev. 769, 79598 (2006); John H. Matheson and R.

KevinMaler, supra note (231), at p. 6.

(307) Minn. Stat. §302A. 751, subdiv. 3a (2004) (emphasis added). (308) John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 6. (309) 628 N. W. 2d 173, 19092 (Minn. Ct. App. 2001); John H. Matheson and

(22)

制定法アプローチを採用した他の州は,ミネソタ州よりも穏健な改善お よび制限を課している。例えば,カリフォルニア州の裁判所は,「継続的 な不公正」という文言が株主の合理的期待に反する,と解釈することを拒 否した。 (311) ニュージャージー州議会は,1988年法を改正して,株式を購入する当 事者の負担を軽減する形で,裁判所が命令する株式買取の条件を変更し た。 (312) 以前の法律の下では,株式買取人は30日以内に現金を支払わなけれ ばならなかったが, (313) 新法の下では,株式買取人は裁判所の裁量により,例 外的に,より長い期間をもって支払うことができ,現金,手形または他の 財産を使用することができる。 (314) 第二の傾向については,以下で検討を行うが,これもまた,制定法アプ ローチの州とコモン・ローアプローチの州は,異なる道を進んでいるとい う想定を,土台から崩している。多くの制定法アプローチの州が,制定法 の改正あるいは判例法によって法律の範囲に何らかの制限を加えている一 方で,コモン・ローのアプローチの州は,抑圧の内容について,かなり広 い概念を採用し始めた。実際に,多くの州の裁判所は,制定法アプローチ 論 説

(310) See Wessin v. Archives Corp., 592 N. W. 2d 460, 46768 (Minn. 1999); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 6.

(311) John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 6.

(312) See N. J. Stat. Ann. 14A : 127 cmt. (West 2003) (Commissioners’

Comments 1988 Amendments); John H. Matheson and R. Kevin Maler,

supra note (231), at p. 6.

(313) New Jersey Business Corporation Act, ch. 94,69, 1988 N. J. Laws 751 55 (codified as amended at N. J. Stat. Ann.14A : 127 (taking effect Dec. 1, 1988).

(23)

を採るミネソタ州,ニュージャージー州およびノースダコタ州が採用して いるものと同様の,合理的期待の規準を採用した。少数派株主の合理的期 待に反する行為を多数派株主が行った場合には,買取制度を通じた退出の 救済に根拠が与えられることになる。 Ⅱ コモン・ローアプローチを採用する州の抑圧救済制度 (一) 抑圧の沿革および概念 初期の株主間紛争事件においては,会社の解散を認めることによって, 閉鎖会社における少数派株主の不満に対応した裁判所もあったが,それは 多数派株主の無節操な行動が特に著しかった場合に限られていた。 (315) 制定法 が存在しない場合には,裁判所は支払能力のある会社を解散させる権限を 有さない,というのが従来のルールであったが,会社を解散し,または他 の救済を与える権限を,制定法が具体的に裁判所に認める以前においても, 裁判所はかかるルールの例外を広く認めていた。 (316) しかしながら,解散は過 酷な救済であるために,多数派株主の行為が甚だしい場合に限り,裁判所 は解散の救済を与えていた。これによって,多くの少数派株主に対する救 済が,事実上排除されていたのである。 (317) その後,裁判所は,少数派株主の請求に多少好意的になった。そして, 抑圧の概念の変化は,三段階に分かれて起こったようである。 最初の段階においては,解散が本当に正当化されるような,多数派株主 の抑圧が顕著な状況においてのみ,厳しい解散の救済は採用されることが 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理

(315) John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 6. (316) 2 O’Neal & Thompson, supra note (237),7 : 10; John H. Matheson and

R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 6.

(317) Ibid.,7 : 10 n. 3; John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 6.

(24)

主張された。 第二段階では,抑圧の概念は,会社を支配している株主の信任義務違反 に当たる行為を含む,現実の不正を表すものとして,適用されることが多 くなった。 第三段階では,会社を支配している株主の不正行為に注目するのではな く,かかる株主による会社の統治によって,会社を支配していない株主の, 会社への参画に対する合理的期待が満たされているか否かに,焦点が合わ せられた。 (318) このように,上述の各段階において,少数派株主の権利は拡大されていっ た。 これに伴って,裁判所は3つの主な規準を決定した。 (319) 第一に,初期の最 も厳格な規準は,多数派株主による著しい違反が必要とされ,「会社の破 産」が起きる可能性があるか, (320) または会社の破産に至らないまでも,少な くとも深刻な事態が生じることを証明することが必要とされることもあっ た。 (321) 第二に,信任義務の規準は,抑圧的であると見なされる可能性のある行 為の範囲を全体的に拡張した。当該規準の下では,閉鎖会社は,本質的に 会社の形態を取ったパートナーシップであり,株主はパートナーシップと 同様の義務を負う,と裁判所は類推した。会社を破産に至らしめることが 論 説

(318) Storm, supra note (242), at 38889; John H. Matheson and R. Kevin

Maler, supra note (231), at p. 6.

(319) See Douglas K. Moll, Reasonable Expectations v. Implied-in-Fact

Contracts : Is the Shareholder Oppression Doctrine Needed?, 42 B. C. L. Rev. 989, 100102 (2001).

(320) See, e.g., Barnett v. Int’l Tennis Corp., 263 N. W. 2d 908, 918 (Mich. Ct. App. 1978); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 7. (321) See Cent. Standard Life Ins. Co. v. Davis, 141 N. E. 2d 45, 50 (Ill. 1957).

(25)

なくとも,多数派株主が,パートナーシップ型の信任義務に違反する可能 性があるために,この方法によって初期の規準は拡大された。 第三の規準は,合理的期待の規準であるが,これはさらに広い規準であ り,多数派株主の行為が義務に違反したか否かではなく,少数派株主の期 待が阻害されたか否かに焦点を合わせるものである。 (322) もちろん,すべての州が第三の最も寛容な規準にまで進んだわけではな い。しかしながら,各州は,少数派株主と多数派株主間の利益調整を適切 に行おうと,1970年代および1980年代から苦心してきたことは明らかで ある。すべての州が該当するわけではないが,多くの州は少数派株主に有 利な形で調整を行った。 株主の抑圧に関する合理的期待のモデルは,マサチューセッツ州および ニューヨーク州のコモン・ローアプローチを採用した,2つの州で発生し たといわれている。 マサチューセッツ州最高司法裁判所は,1976年の Wilkes v. Springside Nursing Home, Inc. 事件において,正当な理由なく,従業員の立場にある 少数派株主を解雇した場合には,会社を支配している株主は,少数派株主 に 対 す る 信 任 義 務 に 違 反 し た こ と に な る , と 判 示 し た。

(323)

Wilkes v. Springside Nursing Home, Inc. 事件において,裁判所は,「合理的期待」 という文言を明示的に使わなかったが,少数派株主の観点から,当該株主 の利益が阻害されたことに対して裁判所は注目した。少数派株主は,一般 的に,自らの職に頼っていることが多く,給与の形態で擬制的な配当を受 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理

(322) See Moll, Reasonable Expectations v. Implied-in-Fact Contracts, supra note (319), at p. 1002.

(323) 353 N. E. 2d 657, 66465 (Mass. 1976); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 7.

(26)

け取っている,という事実を論じた上で,「つまり,少数派株主を解雇し, もしくは少数派株主を役員または取締役から解任することによって,多数 派株主は,事実上,少数派株主が当該会社の事業に参画した目的を阻害し たことになり,少数派株主の投資に対して,平等な利益を与えなかったこ とにもなる」と同裁判所は指摘した。 (324) 法廷意見の別の部分において, 「Wilkes は,養護施設事業の4人の創業者の1人であり,他の創業者と 同様に,Wilkes は15年を超える期間自らの資金と時間を投資したのであ り,会社の決定に参画し続けることについて期待を有していた」と同裁判 所は述べた。 (325) かかる文言は,明示的な合理的期待の規準の前兆となってい るが,合理的期待の規準では,多数派株主の不正な行為ではなく,少数派 株主が予想しかつ信じていたと考えられる事柄に,焦点が合わせられる。 4年後,ニューヨーク州高位裁判所は,Topper 事件において,明示的 に「合理的期待」のアプローチを適用して,マンハッタン薬局を所有する 会社を解散させるべきか否かについて判断した。当該事件は,2人の株主 が,3人目の株主を追い出したが,その3人目の株主は,当該事業に参画 するために別の州から転居してきていたというものであった。 (326) この事件に おいて,同裁判所は,F. Hodge O’Neal 教授の論文の一節を次のとおり引 用した。 閉鎖会社の多くの参画者は,「一般人」であり,事業および財務の問題 に精通していない。閉鎖会社の参画者が,会社の重要な従業員となり,会 論 説

(324) Ibid., at 66263 (emphasis added); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 7.

(325) Ibid., at 664 (emphasis added); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 7.

(326) In re Topper, 433 N. Y. S. 2d 359, 365 (Sup. Ct. 1980); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 7.

(27)

社の決定に対して発言権を有することについて明示の契約がない場合であっ ても,状況から考えて,通常,合理的な期待を有して,自らの財産を事業 にすべて投資することは珍しいことではない。 (327) かかる規準の下では,少数派株主が,事業に投資し参画した時点で,起 こるであろうと合理的に期待していた事柄を,多数派の行為が,いかに阻 害したかということに焦点を合わせることによって,裁判所は抑圧を認定 することができた。 Topper 事件における理論は,他州の裁判所の共感を得た。モンタナ州 最高裁判所は,1982年,Topper 事件判決および O’Neal 教授の論文を引用 して,モンタナ州の解散法の目的の範囲内での「抑圧的な」行為は,少数 派株主の合理的期待を検討することによって解釈することができる,と判 示した。 (328) 1983年,ノースカロライナ州最高裁判所は,同じ典拠を引用して,よ り広い解散法の解釈に合理的期待の概念を使うことができる,と判示し た。 (329) 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理

(327) Ibid., at 365 (quoting F. Hodge O’Neal, Close Corporations : Existing Legislation and Recommended Reform, 33 Bus. Law. 873, 884 (1978)) (em-phasis added); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 7.

(328) Fox v. 7L Bar Ranch Co., 645 P. 2d 929, 933 (Mont. 1982); John H.

Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 7.

(329) Meiselman v. Meiselman, 307 S. E. 2d 551, 56163 (N. C. 1983) (con-struing N. C. Gen. Stat.55125(a)(4) (1975) (current version at N. C. Gen.

Stat. 551430(2) (2005)); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra

(28)

1984年,ニューヨーク州上訴裁判所は,Kemp & Beatley, Inc. 事件にお いて,「合理的期待」の法理を承認した。 (330) 同裁判所は,Topper 事件判決を 引用して,徹底的な分析を行った。「会社に対する所有権を有しているこ とによって,株主に職,会社の収益の分配,会社の経営に関する地位,ま たは他の何らかの形の保証に対する権利を与えられる,と合理的に期待し ていた」当該株主は,「会社の他の者が当該期待を阻害しようとした場合 には,本当の意味で抑圧を受けたことになる」と同裁判所は説明した。 (331) 「合理的期待の規準を適用する裁判所は,特定の事業に参画する際の原告 の期待について,多数派株主が知っていたか,または知っているべきであっ た事柄を調査しなければならない」。 (332) 単に,当事者の「主観的希望および 欲求」が満たされなかったからといって,抑圧が生じるわけではない,と いうことを指摘して,同裁判所は合理的期待の法理に制限を加えた。反対 に,多数派の行為によって,「客観的に見て状況からすれば合理的であり, かつ原告が当該事業への参画を決断する上で主要なものであった期待が, 実質的に阻害されて」いなければならない。 (333)

Kemp & Beatley, Inc. 事件判決は,法律家の言葉によれば「大いに影響 力がある」ことが判明した。 (334) 模範会社法に倣った解散法を有するいくつか の州において,合理的期待の法理は,抑圧という文言の意味を効果的に解 論 説

(330) 484 N. Y. S. 2d 799, 805 (1984); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 7.

(331) Ibid. (332) Ibid. (333) Ibid.

(334) Douglas K. Moll, Shareholder Oppression & Reasonable Expectations : Of Change, Gifts, and Inheritances in Close Corporation Disputes, 86 Minn. L. Rev. 717, 717 (2002); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 8.

(29)

説する役割を果たしている,と裁判所は結論づけた。

例えば,1987年,ノースダコタ州最高裁判所は,Kemp & Beatley, Inc. 事件判決に賛意を表して当判決を引用し,模範会社法の抑圧という文言の 解釈に同判決の理論を採用した。 (335) Davis v. Sheerin 事件において,テキサス州控訴裁判所は,ニューヨー ク州を含む他州の判決に注意して,テキサス州事業会社法において使われ ている抑圧という文言の意味を定めた。「客観的に見て状況からすれば合 理的であり,かつ少数派株主が事業への参画を決断する上で主要なもので あった期待が,多数派の行為によって実質的に阻害された場合にのみ,抑 圧は発生すると見なすべきである」と Wiedy’s 事件においてニューヨーク 州の裁判所は判示した。 (336) テキサス州控訴裁判所は,ニューヨーク州の規準 を適用して,多数派株主は抑圧的な行為を取ったとする第一審裁判所の認 定を支持した。 (337) 同年,アイオワ州控訴裁判所も上述テキサス州やニューヨーク州等と同 様の結論に至った。 (338) なお,ニューヨーク州の判決は,一巡して包括的制定 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理

(335) Balvik v. Sylvester, 411 N. W. 2d 383, 387 (N. D. 1987); See Ibid. at 385 n. 2 ; John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 8. (336) 754 S. W. 2d 375, 381 (Tex. App. 1988) (citing In re Wiedy’s Furniture

Clearance Ctr. Co., 487 N. Y. S. 2d 901, 903 (App. Div. 1985)); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 8.

(337) Ibid., at 383 ; John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 8.

(338) Maschmeier v. Southside Press, Ltd., 435 N. W. 2d 377, 37981 (Iowa Ct. App. 1988); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 8.

(30)

法を定めた最初の州であるニュージャージー州に影響を与えることとなっ た。 (339) 合理的期待の規準は,完全に多数派のルールになったわけではないが, 少なくとも21の州の裁判所が何らかの形で合理的期待という文言を適用 している。 (340) いくつかの州の裁判所は,制定法自体には「権限を付与する」 文言がない場合でも,合理的期待の規準を採用した。つまり,行為が「抑 圧的」である場合に,解散させることができるとしか制定法が規定してい ない場合であっても,裁判所は合理的期待の規準を適用したのである。 (341) そ れゆえに,抑圧の問題に対する3つの主な規準について,「合理的期待」 の規準はほとんどの承認を得ており,抑圧的な行為が発生したか否かを決 定するために当該規準を使用する裁判所は増えてきたようである。 (342) (二) 救済手段の拡大 多数派株主が,抑圧的に行為した場合には,州裁判所は,一連のエクイ ティ上の救済を与える広い権限を有すると結論づけることによって,制定 法アプローチの州と類似の方法をとるコモン・ローアプローチの州は多かっ た。すでに指摘したように,解散よりも過酷でない救済を与える権限が, 株主間の紛争において,少数派株主に利益を与えている。 (343) 唯一の選択肢が, 事業に成功している会社を解散させることである場合には,従業員,顧客, 論 説

(339) John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 8. (340) Ibid.

(341) See Fox v. 7L Bar Ranch Co., 645 P. 2d 929, 93334 (Mont. 1982); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 8.

(342) Moll, Reasonable Expectations v. Implied-in-Fact Contracts, supra note (319), at p. 1002.

(31)

および供給業者への影響が避けられないために,裁判官は,非常に十分な 抑圧の立証を要求する傾向がある。救済手段がさほど過酷ではない買取で ある場合には,裁判所は比較的不十分な抑圧の立証でも容認することがあ るようである。制定法アプローチを採用する州の裁判所は,比較的過酷で ない救済手段を与える権限について,制定法の規定を挙げる場合が多かっ た。これに対し,コモン・ローアプローチを採用する州の裁判所は,一般 的に,裁判所の命令による買取のような救済を与えるために,固有のエク イティ上の権限に依拠しなければならない。 (344) オレゴン州最高裁判所は,少数派株主が抑圧を立証した場合には,解散 よりも過酷でない救済を当該株主に与えるエクイティ上の権限を裁判所は 有していることを,1973年の Baker v. Commercial Body Builders, Inc. 事 件に (345) おいて明らかにした。「閉鎖会社における『締め出し』または『追い 出し』からなる『抑圧的』行為に関する,制定法に基づく訴訟において, 裁判所は,解散の救済に限定されず,代替手段として,他の適切なエクイ ティ上の救済を検討することができる」という以前の判決を同裁判所は再 び支持した。 (346) 勝訴した原告が受けることができる10の救済の一覧を, Baker v. Commercial Body Builders, Inc. 事件における裁判所は提示して おり,その中には,特別財務代理人の選任,配当決議,裁判所の命令によ る少数派の株式の買取,および金銭による損害賠償等が含まれていた。 (347) 当 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理

(344) See, e.g., Bedore v. Familian, 125 P. 3d 1168, 1172 (Nev. 2006); But see Model Bus. Corp. Act §14.34 (2002), available at http://www.abanet.org/ buslaw/library/onlinepublications/mbca2002.pdf ; John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 8.

(345) Baker v. Commercial Body Builders, Inc., 507 P. 2d 387, 395 (Or. 1973). (346) Ibid., at p. 395 (citing Browning v. C & C Plywood Corp., 434 P. 2d 339,

(32)

該判決は,非常に影響力を有していたことが明らかになった。

アラスカ州最高裁判所は,1980年の Alaska Plastics 事件において,「裁 判所は,抑圧の事件において,固有のエクイティ上の権限を使って,解散 よりも過酷でない救済を与えることができる。」と判示した,オレゴン州 最高裁判所の Baker v. Commercial Body Builders, Inc. 事件判決を支持し た。 (348) 同裁判所は,当該紛争に対する最も効果的な解決策は,少数派株主に 換金可能性を与えることであり,以下の4つの方法のうちの唯一1つの方 法により換金可能性を与えることが可能である,と認めた。当該会社の基 本定款または附属定款における条項の設定,非任意解散,根本的な会社の 変更後の株式買取請求権,裁判所が信任義務の違反を認定した場合におけ る裁判所の命令による買取が当該4つの方法である。 (349) 解散による救済は制 限されることがあり,全当事者にとって不公正な結果となる場合がある, と同裁判所は述べた。「清算は極端な救済である。ある意味で,強制的な 解散を認めた場合には,少数派株主が多数派株主に対して報復的な抑圧を 行うことを許してしまう。やむをえない事情がなければ,裁判所は非任意 解散を命令しようとはしないのが通例である」。 (350) それゆえに,アラスカ州 最高裁判所は,株主の抑圧の事件においては,比較的過酷でない救済が利 用可能である,と結論づけ,Baker v. Commercial Body Builders, Inc. 事 件判決の一節に賛意を表して当該判決を引用し,裁判所の命令による株式

(347) Ibid., at pp. 395396.

(348) Alaska Plastics, Inc. v. Coppock, 621 P. 2d 270, 27475 (Alaska 1980) (citing Baker, 507 P.2d at 396); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 8.

(349) Ibid., at 274 ; John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 8.

(33)

の買取を承認した。 (351) アラスカ州最高裁判所は,「不満を有する株主の観点から見れば,最も 良い結果となる救済は,公正な価格で会社が当該株主の株式を買い取るこ とである可能性が高い」と述べていたが, (352) 現在では,裁判所がすべてのエ クイティ上の救済を命じることを認めるか,最低限でも裁判所の命令によ る株式買取を認めている州がほとんどである。 (353) 例えば,アイオワ州控訴裁判所は,オレゴン州最高裁判所の Baker v. Commercial Body Builders, Inc. 事件判決において挙げられた10の救済を そのまま引用し,「解散よりも過酷でない救済を命令することができると いう地方裁判所の結論は正しい。」と判示した。この事件においては,部 分的に会社を清算し,原告の有する株式を会社が買い取る旨の命令が出さ れた。 (354) Balvik v. Sylvester 事件において,ノースダコタ州最高裁判所は,同州 の以前の抑圧に関する制定法の解釈に際して,オレゴン州最高裁判所にお ける Baker v. Commercial Body Builders, Inc. 事件判決の救済をそのまま 引用し,制定法が,「抑圧的な行為に対する救済として解散にしか言及し ていない場合であっても,同様の制定法の規定は,制定法に具体的に規定 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理

(351) Ibid., at 27475. (declining to express an opinion on whether the facts of the case established oppression and remanding the case to the trial court); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 8.

(352) Ibid., at 274 ; John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 9.

(353) 2 O’Neal & Thompson, supra note (237), 9 : 30:31 ; John H.

Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 9.

(34)

されていない代替的なエクイティ上の救済も容認している,と解釈した裁 判所に当法廷は賛成する。」と述べた。 (355) 同裁判所は,「状況から考えて裁判 所が公正かつ合理的であると判断するエクイティ上の救済を与えることが でき,または会社を解散させることができる。」と述べたが,これを明確 にする新法を,ノースダコタ州はすでに制定していたために,当該判決は 若干制限されたものとなった。 (356)

しかしながら,すべての州が Baker v. Commercial Body Builders, Inc. 事件判決の理論に従ったわけではない。バージニア州最高裁判所は, Giannotti v. Hamway 事件において,収益の多い養護施設事業の多数派株 主が,少額の配当を決議する一方で,自らには過剰な給与を支払うことに よって少数派株主を抑圧したとする第一審の認定を支持した。 (357) 第一審は解 散を命令した。上訴の段階において,被告は,「会社の死刑」を存続可能 な,支払い能力のある会社に科すべきではない,と主張した。 (358) 最高裁判所 は,その主張に動かされなかった。「立法府が指定している救済は『唯一』 であり,第一審裁判所が他のエクイティ上の救済のようなものを作り出す ことは認められていない。」 (359) 抑圧に関するバージニア州のコモン・ローの 状況においては,非常に高い水準の立証が依然求められており, (360) 当該判決 論 説 (355) 411 N. W. 2d 383, 388 (N. D. 1987).

(356) John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 9. (357) 387 S. E. 2d 725, 733 (Va. 1990); John H. Matheson and R. Kevin Maler,

supra note (231), at p. 9.

(358) Ibid., at 733 ; John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 9.

(359) Ibid., (citing White v. Perkins, 189 S. E. 2d 315, 320 (Va. 1972)); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 9.

(360) Ibid., at 73031 (citing White, 189 S. E. 2d at 31920); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 9.

(35)

は理にかなっている。原告は抑圧の請求において勝訴するためには非常に しっかりした立証を行わなければならないために,解散の救済は不適切で はない。しかし,バージニア州のような見解は少数派である。Baker v. Commercial Body Builders, Inc. 事件判決の法理が広く受け入れられ,さ らに,他の州には買取を認める制定法が存在していることを考えると,バー ジニア州のアプローチが多数派のルールになる可能性は低いであろう。 (361) 実 際,2007年時点で,約40州が制定法かコモン・ローのいずれかによって 買取を認めていることからすれば,バージニア州のアプローチは少数派で あると考えられる。 Ⅲ デラウェア州法のアプローチ 通常は,会社法を先導していると考えられているデラウェア州法が,お よそ過去30年間に生じた株主抑圧判例の形成において,先導者であった であろうと考える者もいるかもしれない。しかしながら,抑圧の請求に比 較的寛大な「合理的期待」の規準で対応するべきか否かではなく,閉鎖会 社における少数派株主が本来抑圧の請求を行うことができるか否かの問題 について,デラウェア州最高裁判所は,1993年に入って初めて考察を行っ たのであり,これはニュージャージー州が画期的な改正法を成立させてか ら20年後のことであった。全国的な傾向に抵抗して,同裁判所は,Nixon v. Blackwell 事件において,否定的な判断を示した。 (362) すなわち,デラウェ ア州法によって具体的に授権されていない救済を認めるならば,「個別法 的重要性の法理(the doctrine of independent legal significance)の精神に 矛盾することになり,不適切な司法による立法となるであろう」。 (363) 少 数 派 株 主 保 護 の 法 理

(361) See Harry J. Haynsworth, The Unified Business Organizations Code, at 41 ; John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 9. (362) Nixon v. Blackwell, 626 A. 2d 1366, 1380 (Del. 1993).

(36)

しかしながら,判決の遅れ,最終的な結果のいずれもが衝撃を与えなかっ た。Robert Ragazzo 教授が述べているが,最新の問題を取り扱うことに 相対的に長い時間がかかった理由は,デラウェア州の裁判所における会社 の被告は,閉鎖会社ではなく,公開会社がほとんどであるという事実によっ て部分的に説明できる。 (364) 実際の判決も,いくつかの要素を考慮に入れると, 理にかなっている。第一に,ニューヨーク州を含むほとんどの州と違い, デラウェア州の制定法は抑圧を立証した場合の非任意解散を具体的に認め ていない。第二に,デラウェア州法には閉鎖会社に関する特別の規定があ る。 (365) 積極的な選択決定が必要な規定であり, (366) 裁判所の承認を要する。実務 家には知られていないことが明らかになった規定である。 (367) それゆえに,閉 鎖会社に関する特別ルールを認めることを求める原告の主張に応じるため には,Nixon v. Blackwell 事件の法廷は,コモン・ローにおいて抑圧に関 する請求権が存在し,デラウェア州一般会社法第14節の規定は当該コモ ン・ローに優越しない,と結論づける必要があったであろう。 さらに,方針の問題として,典型的な抑圧の事件においては,多数派株 主は会社法の具体的な規定を侵害していないために,抑圧の請求権は一般 的に個別法的重要性の法理(the doctrine of independent legal significance) に反するということに,デラウェア州最高裁判所は気づいていたと思われ る。 (368) かかる法理は「閉鎖会社」に関する事件には適用しないと結論づけて 論 説 (363) Ibid., at pp. 13801381.

(364) Robert A. Ragazzo, Toward a Delaware Common Law of Closely Held

Corporations, 77 Wash. U. L. Q. 1099, 1101 (1999); John H. Matheson and R. Kevin Maler, supra note (231), at p. 9.

(365) Del. Code Ann. tit. 8,34156 (2001). (366) See Ibid.,34344.

(367) Nixon, 626 A. 2d at p. 1376, supra note (362). (368) Ibid., at pp. 13801381.

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