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<論説>オーバーブリンクマンの古典的静態論

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Academic year: 2021

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(1)く論. 説ノ. オーバーブリンクマンの. 古典的静態論 ,し¥. 五. I. 十. 嵐. 山市. 邪. 正. いわば古典的ともいうべき 静態論の発展段階に. 序. ついて,ユニークな説を主張するオーバーブリ. 貸借対照表論 (Bil"n,l。h,e) の直接的な切っ 掛 けとなったのが , 1861 年普通ドイッ 商法. ン クマン (F.Oberbrinkmann). の見解 1,を検討す. ることにしたい. (Allgemeines@Deutsches@ Handelsgesetzbuch)@@ おける貸借対照表規定であ. ったことは周知の 通. りであ る・その意味からすれば ,貸借対照表論 は 元来,貸借対照表に 対する法規制,すなわち 貸借対照表決 (Bilanzrecht) と密接に関係してい たといってよい・そして ,従来この商事貸借対. Ⅱ. オーバーブリンクマンの 基本的立場. まず最初に,論旨を展開するにあ たって必要 な 彼の基本的立場について. ,. あ らかじめ触れて. おく. 貸借対照表法の 解明にあ たって彼が重視する. 照表 (HandeIsbilanz) の解釈に際して 重視されて. きているのが ,いう までもなく静態論 (statis-. のは,次の三つのレベルであ る・第 1 は. che B Ⅱ anzauffassung). 対照表の目的 " (Bilanzzweck) であ. および重力. 哀呉舌令. (dynamis-. る・. " 貸借. 「法律上. che Bilanzauffassune)と 呼ばれる会計思考であ. の 貸借対照表目的は ,立法者ないし法自体に内. る.. 在する意味の 歴史的・心理的意向を 含む (例え ば ,債権 者保護や出資者保護 ). それによって ,. ここで静態論は 一般に貸借対照表に 関して. 何らかの状態表示的側面を あ. る・. 重視する会計思考で. これに対して ,動態論は貸借対照表の利. 益 計算的側面を 重視する会計思考であ る.. ドィ. それは,法が 目指す立法者あ るいは法の意図と ,. それと同時に 規制される趣旨を 特徴づける. 2,. 」. ッ 貸借対照表法は 主としてこの 静態論および動. したがって ,. 態 論に基づいてこれまで 解釈、されてきたのであ. その内容からみて ,商法上の理念を指すと捉え. る. ることができょ. ところで,一口に商事貸借対照表に 対する 解 釈 としての静態論および 動態論といっても , そ. るいは論者によってその 意味する内容に 若干 差異があ る. この小論では ,商事貸借対照表に 関する静的解釈および動的解釈のうちで ,特に 貸借対照表法の 生成以降展開された ,伝統的で. ぅ. .. " 貸借対照表目的 " は ,. その意味では ,. それは一般. 的な貸借対照表の 目的とはやや 異なる用語の. 用. い 方であ るといってよい. 第2 は. の 内容は必ずしも 一様ではない.時代によって , あ. 彼のいう. であ. る・. " 貸借対照表の. 任務 " (B Ⅱ anzaufgabe). これは,既述の " 貸借対照表の 目的 ". を具体的に達成するために ,客観化された立法 者の意図であ る. その結果, 「貸借対照表の 白. 目. りと貸借対照表の 任務は, 目的・手段の 関係に.

(2) 2 (202). 横浜経営研究. 第 3 号 (1993). 第 ⅩⅣ 巻. る. 貸借対照表任務は 意味と目的から 導かれ る 3).」この " 貸借対照表の 任務 " として彼が 例示するのは , 財産測定 (Verm6genser ㎡ ttlung)と利益測定 (Gewinnermittlung)であ る・. クマンの示す 静態論の発展系譜はもちろん ,動 態論の系譜 5)においてもまた ,このシュマーレ. それ故に , 彼の いう. 成していることに 留意すべきであ る. 具体的に. あ. " 貸借対照表の 任務 " は ,. 一般的に用いられている. 貸借対照表の 目的にほ. ぼ相当すると 考えられる. 第3 は. tion)であ. " 貸借対照表の る・. マーレンバッハだからであ. る. オーバーブリン. ンバッハ学説がそれぞれの 発展段階の中軸を 形. いえば, 1861 年普通ドイツ 商法の制定以降シュ マーレンバッハが 登場するまでの 時期が,静態. 構想 " (Manzkonzep-. これは第 2 で触れた. " 貸借対照表. 論の第 1 段階であ る.次に, シュマーレンバッ ハ以降における 静態論の一層の 発展時期がその. の 任務 " から結果的に 生じたもので ,「それに. 第 2 段階であ る. そして,経営経済学における. よって量的枠組みと 金額的枠組み (MengenundWe,tge,dst) が決定される 4).」ここでいう. 静 9 貸借対照表理論 (,t"ti,。heBil"n,th 。o, た) の. 形成時期が古典的静態論の 最終的な第 3 段階で. " 量的枠組み " とは具体的にいえば 貸借対照表. あ る.. 白. に 計上すべき項目の 範囲,すなわち 貸借対照表. 能力論を, また " 金額的枠組み " は貸借対照表. この 2 点を貸借対照表決に 対するオーバーブ. リンクマンの 基本的な視点として 捉えることが. 評価論をそれぞれ 指すと考えられる.彼はこの. できょ. ような. ついて詳述する.. " 貸借対照表の 構想 " の例として,継続. Ⅲ. 企業の構想あ るいは解散の 構想を指摘する. そ して, これが事実上財産の 測定問題を規制する と解されているのであ る. したがって, この " 貸借対照表の 構想 " は , 次の二つの内容を 含. ぅ. ・以下,彼の静態論の各段階の 内容に. 静態論の起点としての 普通ドイツ商法. 静態論の発展に 関する 第 Ⅰ段階が , 彼の解釈 れば, 1861 年普通ドイツ 商法の制定から、ン. む. 一方では彼が 例示する継続企業の 構想や解. に. 散の構想からみれば ,それは貸借対照表作成の. ュ マーレンバッハの 登場するまでの 時期を指す. 前提,つまり 一種の会計公準に 近 い 内容を有す. ことは既述の 通りであ る. このため,静態論の. る・他方では , これが財産の 測定問題をも 決定. 発展段階の内容を 明らかにするためには , あ. すると解されているため ,具体的な会計処理基. かじめその解釈の 出発点ともいうべきこの 1861. 準たる財産の 能力や評価と 密接な関係を 有する. 年普通ドイッ 商法について 言及しておかねばな. のであ る.. らない. これを,彼は既に述べた姉つの 視点か. この. " 貸借対照表の. 務 ", そして. 目的 ",. " 貸借対照表の. " 貸借対照表の. 任. 構想 " の三つを,. ょ. ら. ら以下のように 捉えるのであ る. まず,. " 帳 簿および貸借対照表の. 目的 " とし. 貸借対照表法の 歴史的発展の 解明において オ一. て彼が指摘するのは ,次の 2 点であ る・一 つは ,. バーブリンクマンは 重視するのであ る. これが. 法 取引の信頼性としての 証拠目的 (Dokumentationszweck)であ る・ これに関して ,「法 取引の 信頼性は,商人が 注目すべき証拠目的と 目的・ 手段の関係にあ る・ このため,帳簿と決算書 は. まずはじめに 指摘すべき彼の 基本的立場に 関す る特質であ る. 更に彼の基本的な 立場として指摘すべきは , 、ンュ マーレンバッハ 学説を貸借対照表法の 発展 において重視する 点であ る. その理由は ,. "貸. 借対照表の任務 " や. " 貸借 2% 照 表の構想 ". いて極めて重要な. "Statik" および "Dyna-. にお. ㎞ k" という用語をはじめて 用いたのが、ンュ. 公法的義務として 公益に資する 6). 」他の一 つ は,債権者保護の基盤としての 商人に対する 自 己情報 目断 Selbstinformationszweck) であ る・ これに関して , はじめての貸借対照表法の. 成立,. すなわち 1f673年フランス商事勅令 (Ordonnance.

(3) オーバーブリンクマンの 古典的静態論 (五十嵐. deCommerce) の制定以来,債権 者保護の見地 から破産防止の 予防手段として 商人に対する. 自. 邪正 ). (203) 3. 定 と利益測定とのバランスといっても ,両者が 文字通り厳密な 意味で対等関係にあ ることを意. 己情報の重要性が , この普通ドイッ 商法制定当. 味するわけではないようであ. 時に既に一般に 認められていた・その 結果, 「この目的・ 手段の関係の 達成として,それ 以 前の商法典の 罰則規定に含まれた 規定が帳 簿お よび決算書を 商人に義務づける 7'」と彼は理解 する.. 既述の通り財産測定が 利益測定に先行し 後者 はあ らかじめ前者で 決定された 純 財産上ヒ較によ. 次は普通ドイツ 商法の " 貸借対照表の 任務 ". ほ ついてであ る. これについて 彼は次の二つを. 例示する・ 1 つは情報任務としての 財産測定で あ る・ これ自体は確かに 法律 帝U 定の審議過程で は特に言及されていない・ しかし貸借対照表 法 発展史の面から ,それが暗黙の前提であ るこ とは明らかであ るという・その 場合,財産測定 は実質 りには 純 財産測定を指す.他の 1 つは情 報任務としての 利益測定であ る. その論拠とし 白. て, この普通ドイッ 商法に対するプロシャ 草案 が特に合名会社における 利益分配規制を 中心に. 損益測定の基盤として 関連づけた財産目録およ び貸借対照表を 要求する 点 ,加えてニュルンベ ルク会議の審議過程では ,. この要求の提案に 何. る・なぜならば ,. って事後的に 算出されるからであ る. このよう なわけで,両者の任務の間には 明らかにウェイ. トづけ, のであ. あ. る・. るいは主従関係があ ると考えられる この点に関して 彼は, 「法的な貸借. 対照表任務としての 財産測定および 利益測定は, 商人が考察すべき 貸借対照表目白 9, 何よりも債 権 者保護を確保しその 際に財産測定 ( 真実な 財産状態 ) は利益測定に 優位性を有する 10)」と 述べている. さて,最後は " 貸借対照表の 構想 " であ る.. これに関して 普通ドイツ商法の 生成過程では ,. さまざまな見解が 存在していたことは 周知の通 りであ る・結局,有名な「付すべき価値」の 内 容は取得原価ではなくて ,時価を意味すると解 するのが彼の 考え方であ る・いうまでもなく ,. この場合の時価は 真実価値を意味するので ,具 体的には客観的な 流通価値 (Verkehrswe めを指. ら異議が出されなかった 点を , 彼は指摘する.. すといわれる・. だが, これだけの理由を 以て,普通ドイツ商法. 時価評価に基づいて 純 財産の測定はもちろん ,. 規定のなかに 利益測定任務を 見出しうるかはや や疑問であ ろう・それはともかく ,彼の理解で は, この利益測定面は 貸借対照表法の 生成から. 成果の測定も 行なわれることになるわけであ. この普通ドイツ 商法の制定まで 一貫して継承さ. 異質な面を顕在化させる 結果となることに 留意. れているのであ る.. すべきであ る. この点について 彼は次のように. しかし. したがって, この意味における る. これはこれまでの 伝統的な貸借対照表. 決思考とは必ずしも 相いれず, むしろそれとは. その場合, 問題となるのはその 利益測定の方. 述べる・「その ( ニュルンベルク 一筆者 注 ) 会議. 法であ る・普通ドイツ 商法は,後述するように,. までにさまざまな 発展段階で発展された 原価主 義・低価主義・ 実現主義は貸借対照表作成およ び 利益測定の範囲では 法的に継承されない. し. 特定の簿記システム ,. とりわけ複式簿記を 義務. づけていない・ この点から,彼は「財産目録か ら導かれる 純 財産比較は,測定手段として広く 普及した単式簿記のなかに ,利益計算に対する 前提を示した 8,」と彼は考えるのであ る.その. たがって,普通ドイツ商法以前に展開された 原 則は忘れ去られ 皿祝 される 11). 」別言すれば ,. フランスの商事勅令以来,各国で広く継承され てきた原価主義ないし 低価主義による 財産評価. 結果,「既に 商事勅令に対する 規定のなかで 含 まれた,財産測定および利益測定の間における. が普通ドイッ 商法の制定を 契機に時価主義に 変. バランスは,普通ドイッ商法まですべての 法典. 質してしまい , それまでの伝統的な 原価主義を. において継承された 9,.」ただ,ここで財産 測. 基調とした財産評価との 断絶が生じたというの.

(4) 4@ (204). 第 xW 巻. 横浜経営研究. であ る. そして, この ょう な時価を中心とした. 第 3 号 (1993). 表の任務 ". 「普通ドイッ 商法の決算規定が ,それ以前の法 典における継続企業の 構想に基づかない 12L. 普通ドイッ商法解釈とほぼ 同様に証拠目的と. 点に,そこでの " 貸借対照表構想 " の特徴を彼. 己情報目的であ ると彼は解する ,. は 見出すのであ. とりわけ後者との 関連で「その 当時に特に関心. 」. る. また,普通ドイッ商法は特. 第 1 段階の双半では ,. " 貸借対照表の 目的 " は 自. このうちで,. 定の簿記システムを 義務づけず,複式簿記を 強. のあ った証拠力 め 問題,その前提,そしてそれ. 制していないと 考える・. と関連して帳 簿に対する証拠要求に 基づいて, 重点的に企業管理者ではあ るが, しかし債権 者 に対してもすぐに 有用と認められる 決算書の ( 自己 ) 情報任務の方向に ,文献は直ちに向かう. この点に付言すれば ,. 財産目録から 導かれる 純 財産比較は成果測定の 前提として単式簿記と 結合するのに 対して, 収 益 および費用計算による 成果測定は複式簿記体 系と結合すると 解するのが彼の 基本白りな考え 方 にほかならない 13).. 16) 」と述べている. これが,既述の三つの観点から 考察した場合 の 普通ドイツ商法 14)に関する彼の 解釈であ る・ そして, 「貸借対照表 法 上では,厳密な意味で の静的 観 ,すなわち成果測定に対する財産測定 の優位性をもっ 静的 親 は,普通ドイッ商法の可 決までは根拠づけられない.貸借対照表決にお ける静的要素の 強調は,普通ドイツ 商法の評価 構想、をもって晴夫とする 15)」のであ る・この. の当初には当初財産測定のみが重視されていた. 自己情報の内部での 利益測定に何ら 独立した意 義を割り当てない・これ (千 益 測定一筆者 注 ) は, もっぱら第 107 条 (合名会社における 利益測定 ) の注釈の範囲においてだけ 完全性のために 言及 されるけれども ,商人が注目すべき貸借対照表 目的との関連はない 17L」という彼の 表現から. ような考え方から ,. 明らかであ る.. オーバーブリンクマンは. こ. " 貸借対照表の 任務 " については, この時期. その点は , 「この財産測定を 支持する文献は ,. Ⅰ. の 普通ドイッ商法を 静態論の起点とみなすので あ. しかしその後有名な 1873 年帝国高等商事裁 判 所の判決を中心に ,. る. " 貸借対照表の 任務 " に. 関して若干変化が 生じる. 純 財産測定のほかに. W. 利益計算もまた 多少考慮されるからであ. 静態論の第Ⅱ段階. る,. こ. こでの利益測定は , いうまでもなく 二時点間の. 繰り返し述べたように ,普通ドイツ商法制定. であ る・その場合,彼はこれをさらに二つの部. 貸借対照表による 純 財産比較に基づいて 行なわ れる・ このため, この利益測定は 普通ドイツ商 法のなかで触れたのと 同じく,財産測定と全く 対等関係にあ るわけではない. あ くまで 純 財産. 分 に分けている. 1 つは「静的観にとって 決定. の測定が一義的で 且つ先行するのに 対して, こ. 的な最初の貸借対照表法解釈」, もうⅠつは「最. の 財産測定から 派生する成果測定は 二義的であ. 初の静的貸借対照表解釈の 強化」であ る. ここ では, それらを一応前半と 後半 と 名づけること. る点にその特徴があ る・そして,いわば主従関 係を有するこのような 二元的解釈が 静態論の第. にする.前者はおよそ普通ドイッ商法制定から. 1 段階では支配的になるというのであ. 1870 年代頃 まで,後者はそれ以降シュマーレン バッハが登場する 20 世紀初頭までを 指すようで. と密接不可分の 関係にあ るのが,後述する " 貸. からシュマーレンバッハの 登場までが,. オー. バーブリンクマンによる 静態論発展の 第 1 段階. あ. る. 1. 借 対照表の構想. ". る. これ. における単式簿記の 存在であ. る. 第 1 段階の双半 ㈲. " 貸借対照表の. (3) " 貸借対照表の 構想 ". 目断と. " 貸借対照. 静態論の第 1 段階における. " 貸借対照表の 構.

(5) オーバーブリンクマンの 古典的静態論. 想 " は 次のような特徴を 有する, まず第 1 は,財産評価論についてであ る. こ こでは一部の 文献を除き,普通ドイツ 商法と同 じく一般的流通価値による 評価が中心的であ. る. (五十嵐. 邪正 ). (205 5 り. られるのであ る・ この破産法的罰則規定は ,そ の後 1877 年に刑法から 破産法 (Konkursordnung) にそのまま引き 継がれた・後半では 特に その点を重視し 「帳簿および貸借対照表の 規. その根拠は,貸借対照表によって 真実の財産 状 態を表示するという 財産測定任務に 基づく. そ. 義務に対する 説明のなかに ,. れによって, 恐意 的で主観的な 評価を回避する. び破産規定を 密接に関係づける , 0 ,」のである.. ことができ,いわば客観的真実性を 保持しうる. 言い換えれば , 「支払不能の 防止およびそれに. という わ けであ る. その結果, 当期末における. よって債権 者保護の目的に 対する自己情報のこ. 上述の意味の 時価と前期末のそれとの 差額が価. の 解釈を,かつての 罰則規定およびそれの 破産. 値減少を示す. したがって評価の 継続性はここ. 法への移行の 面から説明する , 1,」のが, この. る,. では全く考慮されないのであ. る・. この罰則規定およ. 後半の最も大きな 特徴といってよい.. 第 2 は簿記の体系についてであ る. これは普 通ドイッ商法規定と 同様であ. 定 に関する注解 書は , それとの関連で 自己情報. その点は ,. しかし. このような解釈は ,. クマンによると ,. オーバーブリン. 必ずしも立法者の 趣旨にそう. 「ここでもまた 単式簿記に対しておこりうる 関 係が顧慮されないままであ ってはならない.複 式簿記と対照的に ,貸借対照表は 主として財産 目録から導かれる 18, 」という彼の 論述から 明. 破産法における 罰則規定の面から 定めたもので. らかであ る.. はないというのが 彼の主張だからであ る.. 第 3 は貸借対照表能力論についてであ る. こ れに関してⅡ量的枠組み. ". に 関してほとんど. ものではなく ,妥当とはいえない. なぜならば,. 立法者はあ くまでも支払不能の 防止を経済状態 に関する一般的情報の 形で定めたのであ って,. (2) " 貸借対照表の 任務 " さて,後半の " 貸借対照表の 任務 " に関して. 完全な軽視が 目立つ 19,」と彼は述べる.別言. もまた,前半とほぼ同様に既に述べた 破産法的. すれば, この静態論の 第 1 段階ではもっぱら. な 解釈の面から , 一面的な財産測定だけを. " 貸借対照表の. する立場と,財産測定および 利益測定の両者を. 任務 " や ,それとの関連で財産. 評価に議論が 集中してしま. い,. 彼の いう. " 量的. 重視. 重視する立場とが 混在していた. ただ前者に関. 枠組み ", つまり貸借対照表能力論に 対する関. して財産測定の 中身は一様ではない・. 心がきわめて 薄 い 点を指摘するのであ る. わず. それを総財産とみる 説 ,. かに既述の帝国高等商事裁判所の 判決で客観価 値としての流通価値評価への 言及から,各財産 の個別評価の 可能性が間接的に 示唆されている. 示すとみる 説 ,両者の差額を示すという説など. にすぎないという. 2. 第 1 段階の後半. 財産と負債との 関係を. があ る. また, 1880 年から 1906 年までの期間に. おける帝国高等商事裁判所の 判決も, この一面 的な財産測定を 出発点とした よう であ る. 他方,後者に 関して付言すれば , 同じく二元. (1) " 貸借対照表の 目的 " このような前半に 対して,後半では. 例えば,. 的な貸借対照表任務を 想定するものの , " 貸借対. 暗黙的. に単式簿記に 基づく法文にさかのぼることがで. 照表の目的 " に関して 1871 年刑法典に破産法的. きないため,. 罰則規定が制定された 結果,証拠目的の 重要性. いがあ る.特に成果測定に 関して二時点間の 貸. を. 強調するのがその 大きな特徴であ る. この点 1871 年の刑法第 281 一 283 条にお. この解釈にも 若干ニュアンスの 違. 借 対照表における 純 財産比較を中心とする 説 ,. いて,詐欺破産に よ る支払不能に 際し帳 簿およ. 前期の財産目録とその 変動を基礎とする 説 ,そ して貸借対照表自体によって 算定する一般的な. び貸借対照表義務を 怠るときには ,懲役に処せ. 説などがあ る. この考え方に 即した判決も 少な. に付言すれば ,.

(6) 6 (206). 横浜経営研究. 第 xn 巻. 第 3 号 (1993). 「. 定は普通ドイッ 商法の場合や ,既述の双半と 同. 関連性の表現として 解されない 23)」結果とな るのであ る・つまり, ここでの静態論的解釈で. 様に対等関係になく ,. は ,減価償却はあ. く. ない. ・. いずれにせ よ ,. この利益測定と 財産測. この 純 財産測定が主で 利. 益測定がその 派生的存在にすぎないのがその 特. くまでも財産評価の 手段であ って,原価配分手続とは理解されていないので. 徴 であ る.. あ る.. そして,彼は「文献および 判決で通説をなす 二元論に鑑みて ,財産測定の方向のみを指向す. 第 3 に注目すべきは , オーバーブリンクマン に ょ れば, この時期において 評価問題に議論が. る見解は疑問とされるべきであ. ろう.後者が ,. 集中し , 逆に貸借対照表能力論に. 関してはほと. どの程度しかるべき 貸借対照表解釈から 結果的. んど言及されていない 点であ. この点に関し ,. に 生じているか ,. 財産は法的取引の 対象となり ぅ ることをジモン (H.V.Simon)が指摘するにとどまる・ また,負 債についてはその 完全性が要求されるが ,その. しかも成果測定が 自明として. 無意識的に無視されたかどうかは 疑問であ る. この主張のプラスの 材料を提供するのが ,少な くとも貸借対照表 決 発展の検討であ る 22,」と 彼は主張すのであ る・要するに ,. これは貸借対. 具体的内容に 関する説明が 欠如するというので あ る.. 照 表 決 発展の面から ,一面的な財産測定説に 3% する彼の批判にほかならない. (3) " 貸借対照表の 構想 " " 貸借対照表の 自. 構想 " についてもまた ,基本. りには普通ドイッ 商法および静態論の 第 1 段階. る・. かくして,静態論の第 1 段階における. " 貸借. 対照表の構想 " の特徴として ,彼は次の諸点を. 列挙する 24).すなわち,第1 に債権 者保護思考 および客観性思考に 基づく市場価値の 重視, 第 2. にその市場価値評価に 伴. う 貸借対照表評価継. の前半部分と 同様であ る. その特徴は,第1 に企業の真実の 財産表示の 面から,一般流通価値に 基づく客観価値が 重視. 続性の無視, 第 3 に固定資産における 減価償却. される点であ る. この点は 1897 年商法にも同じ. 離した貸借対照表評価問題への 論及, この 4 点. 2 6 に継承されるだけではない.更にそれは 税 法上の普通価値 (gemejnerWert) と呼ばれる評 価にもまた影響を 及ぼす・ここで 普通価値は,. がそれであ る.. に対する市場価値の 減少分としての 把握,第4. に貸借対照表能力論の 軽視およびこれから 切り. V. あ る財がその客観的性質に 基づいてすべての 所. 静態論の第 2 段階. 有 者に対して,主観価値と 対照的に有する 価値. 1. を いい ,. さて, 次は静態論の 第 2 段階であ る. これは. それを一般に 販売価値とみなすのが 通. シュマーレンバッハによる. 静態論解釈. 説であ る. これは 1794 年プロシャ普通国法. 既に触れたように ,. (Allgemeines Preu6isches Landrecht) 第 112 条. が引き継がれず , いわゆる評価の 継続性は無視. 降から第 3 段階,つまり 静態論が貸借対照表決 との関係を離れ ,経営経済的理論として 装いを 新たにする,およそ 1920 年代頃 までの期間を 指 す ・そこで,この第 2 段階で決定的な 影響を及. されることになる.. ぼしたといわれるシュマーレンバッハによる. にさかのぼる. この普通価値でも 時価評価に基. づく客観価値が 重視される結果,以双の 評価額 ここに静態論第 1 段階の大. きな特徴を彼は 見出すのであ る. 第 2 に, その ょ うな財産評価を 前提とするた. め,固定資産における 減価償却は真実価値もし くは時価の減少分と 捉えられる点であ る. それ 故に,そこでは「減価償却は 各期間相互の 評価. シュマーレンバ ,ハ学説以. 静. 態論解釈の妥当性についてオーバーブリンクマ ンは 検討するのであ る. まずは. " 貸借対照表の 目的 " に関してであ る. "ンュ マーレンバッハは ,初期の文献で 商業帳 簿. および貸借対照表規定を. 破産法的に解釈する..

(7) オ -- バ ー- ブリンクマンの. 古典的静態論. つまり,企業の 破産時に債権 者にとって存する 危険は,財産状態の 概観によって 取り除かれる はずであ るというのが 彼の考え方であ る. これ. (五十嵐. 郡王 ). の 論文から出発し , 白. (207. Ⅰ. 7. しかもその後において 決定. りな説明モデルとして 関係づけられる 静的貸借. いわば破産法的な 解釈と軌を一とするといって. 対照表 親 は。 この理由から 貸借対照表任務とし て単に財産測定だけを 含む. この時点までに 広 範囲に認められた 二元論は,成果測定の任務に. よい. よって発展全体では 正当化されず ,. は,既に触れた 第 1 段階の後半で 示唆された,. 次は " 貸借対照表の 任務 " についてであ る. しかも限定. された財産測定面に 狭められる.静態論と 動態. 普通ドイッ商法第 28 条では,確かに「財産の 状 態」, また第 29 条では「財産と 負債の関係を 示 す 決算書」という 財産概念が示されている. し かしその財産概念は 多義的で必ずしも 明らか. 論の対立だけによって. ではなく,それ故にシュマーレンバ、 ,ハは . ,法. つくにちがいない. それに関してシュマーレン バッハの批判,彼の法解釈や文献の 検討は ,最. 文自体から明確な 財産測定重視の 貸借対照表仕 務を見出すことはできないと 結論づける. この 貸借対照表法解釈との 関連で , 彼が財産測定重. ,. シュマーレンバ , ハ の. やり方が正当化されるわけではない.法の発展 マーレ ンバ,ハは 認められた二元論の 正当性にたどり. や文献の見解を 正しく検討すると ,. 、ンュ. 終 的に動的構想もまた 同様に,それによってそ の時までに論議された 貸借対照表任務, すなわ. 視の貸借対照表任務を 静的貸借対照表 観 とはじ めて規定する. この点はきわめて 重要な指摘と. 誤った解釈に 支えられている. なる. なぜならば, このシュマーレンバッハの. 述で重要なのは 次の諸点であ る.すなわち, 第. 解釈がそれ以降決定的な 影響を及ぼし. 1 に財産測定任務だけをシュマーレンバ. 急速に. 浸透するからであ る.. ち財産測定の 一面的な考察と , 付すべき価値の. 25,. 」この彼の論 ,ハ. が. はじめて静的 観と 規定したこと , 第 2 に, しか. " 貸借対照表の 構想 " に関して, シュマーレ. ンバッハは財産測定に 対して真実価値に. よる財. 産 評価を想定する. ところが, その後, 当初彼. しそれが必ずしもそれ 以前の貸借対照表法の 伝 統,つまり貸借対照表法の 発展史からみると ,. は貸借対照表法解釈、との関係で生- まれたこの静. 成果測定を無視する 点で妥当とはいえないこと , 第 3 に, シュマーレンバッハの 理論による「付. 的貸借対照表 観を ,. すべき価値」の 解釈についても 不当な要素が 含. この貸借対照表法解釈から. 分離させ, その独自の解釈を 試みるのであ る・ つまり,財産測定に 対する真実価値をもはや 市 場 価値の意味で 捉えずに,それを 将来収益価値 の意味に捉えるのであ る. この彼の解釈が 貸借 対照表決とは 別の方向を示すことは 多言を要し ないであ ろう. なぜならば,元来貸借対照表決 では, そのような解釈はなされてきていないか. このように,. その点はともかく , 解釈のうちで ,. オーバーブリンクマンは 特に. " 貸借対照表の. 任務 " に関して次のように 批判. する. 「貸借対照表法の 当初から存続する 利益 シュマーレンバッハの 著作にお. いて決定的な 誤った判断として 形成される. 彼. シュマーレンバ. , ハの 貸借対照. 判するのであ る. シュマーレンバッハによる 静. 態論解釈はそのような 問題点を含むにもかかわ らず,結果的にはその後において多大な 影響を 及ぼすことになるのであ. る.. シュマーレンバ. ,ハ. による静態論解. 釈の普及. このようなシュマーレン. バツ ハ による貸借対照表法解釈、 に関する静態論. この 3 点がこれであ る・. 表 法解釈を, オーバーブリンクマンは 厳しく批. 2. らであ る.. 測定の無視は ,. まれていること ,. このシュマーレンバッハの 影響を受けたと 解 されるのは, パッ ソウ (R.Passow),. コ フェロ. (I.Ko"e,0), リオン (M.Lion), オスバール (W.Osbah,) などの論者であ る・ そこでの特徴 は,第1 に既述のように 彼らが等しく 貸借対照 表決上の. " 貸借対照表の. 任務 " に関してもっぱ.

(8) 8 (208). 横浜経営研究. 第 X Ⅳ巻. る.言い換えれ. ら純 財産表示を重視する 点であ. ば, この 純 財産測定を強調するあ. まり,逆に利. 益測定を全く 無視するのであ る.第2 に ,貸ィ安 対照表決上の「付すべき 価値」について 前述の 普通ドイツ商法や 静態論の第 1 段階と同じく 客 観的な時価を 想定する点であ る.それを販売時. 第 3 号 (1993). 返しであ. る. 28). 」つまり,この段階では静的な. 貸借対照表法解釈として. 財産評価について 再調. 達原価を重視する コ フエロを除けば ,販売時価 が総じて重視され ,取得原価を 基調とした財産 評価は何ら意義をもたないのがその 特徴であ る. だけは例外的にそれを 購入時価と捉える. 第 3. それ故に, 「時価で測定された 純 財産は純財産 比較の範囲で 朱実現利益の 把握にもまた 通じる 29)」ことになるわけであ る.. に, オーバーブリンクマンは ,パッソウ学説を. 要するに, オーバー ブリンクマンによる 静態. 価と捉えるのが 一般的であ る・ただ, コ フェロ. この段階の代表者とみなす 点であ る.債権者保 護の見地から 破産法的に商人の. 自己情報を解釈、. 論の第 2 段階では,財産測定だけに 表の任務. ". " 貸借対照. を限定するシュマーレンバッハの. 主. 張する考え方が 徐々に浸透していく 過程と捉え. ソウ自身は静態論という 名称を用いていないけ れども, 「彼の説明が 静的観の説明にとって 代 表 的な意義をもっ 26)」とオーバーブリンクマ. られているのであ る.. ンは述べている・. しかし. W. する パッ ソウ学説の問題点を 別とすれば,パッ. この パ,ソゥ学説の. 解釈はやや問題を 含んで い る・. というのは, パ. ,ソゥは 純 財産測定と並んで 損益の測定をも 貸. 借 対照表の任務と 明言するからであ. る 27). " 貸. 静態論の第 3 段階. さて,最後が静態論の第 3 段階であ る・ これ は, いわば経営経済学における. 静的貸借対照表. 借対照表の任務 " に関して 純 財産の測定を 主に,. 理論の時期であ ると彼は捉える. その代表者と してみなされているのが , テア・フェーン. それに基づく 純 財産の差額による 損益測定を従 と解するのがオーバーブリンクマンの 静態論解. (A.terVehn) とル ・クートル (W.leCoutre) であ る. したがって,その面からいえば , 確. テア ,フェーンはさまざまな利益概俳との 関. か はパッ ソウ学説は彼のいう 二元的な任務を 有. 連で,静的貸借対照表が 未実現の価値増加をも 考慮する財産計算であ ると解する. これは経営 経済学者として 静的貸借対照表観にはじめて 言. 釈であ. る・. する静態論の 系列に属すると 解すべきであ ろう かかる静態論の 第 2 段階における. " 貸借対照. 表の任務 " と " 貸借対照表の 構想 " について,. 及した見解であ るとオーバーブリンクマンはみ. 彼は次のように 述べる.Ⅱ静的貸借対照表 " と. なす. ル ・クートルに. いう名称がシュマーレンバッハによって. る貸借対照表は 財産判断にとっては 役立たず, むしろ消費可能利益の 測定を目標する. その結 果,企業に投下された 資本維持思考と 結合した. 確立さ. れた後,直ちに貸借対照表法の 論文のなかで 受. ょ. れば,実務で 作成され. け入れられないとしても ,それに関係した 貸借 対照表決任務および 構想の解釈がその 後の期間. 静的貸借対照表論がそこでは 展開される. いず. にとって見逃すことができない. れにせ よ ,. 基準を設定する. 20 世紀以降に現われた 論文は,その当時に最も. このような テア ・フェーンやル・. クートルなどの「論者は 貸借対照表法の 解釈門.

(9) ブリンクマンの 古典的静態論. オーバー. (五十嵐. 邪正Ⅰ. (209) 9. 貸借対照表は ,経営管理目的の 一手段であ り, ここでは,資本の維持およびそれと 同時に厳格 な付帯条件としての 分配可能な資本維持的利益 の測定が存在する.従来一義的に 静的と解され た ,市場価値の方向を示す財産測定およびもっ ぱら 純 財産比較によって 実施された 副次自 りな利 益測定の任務は ,経営経済学者によって 構想さ. い わゆる一般的な 意味での貸借対照表の. れたこの貸借対照表理論では , ない 3".. 的 " としては,それ以前の伝統 りな貸借対照表. もはや考慮され. いし見方,そして. " 貸借対照表の. 目的な. 構想 " が具体. 的な貸借対照表作成上の 基準とその前提とも い うべき会計公準をそれぞれ 指す. 第 2 に , 彼の静態論解釈の 原点が 1861 年普通. ドイツ商法規定に 存すると解されている 点であ る. この規定に関して 彼は ,. " 貸借対照表の 目 白. 決と同様に法取引の 信頼性を確保するための 証. 」. 静態論では, " 貸借対照表の 任務 " として経営. 桝目白りと,債権者保護の基盤たる 商人の自己情 報目的とを指摘する. これらは 1673 年フランス. 管理の面から 資本維持を考慮した 消費可能利益. 商事勅令の伝統と 軌を一にする.. の測定が, また " 貸借対照表の 構想 " では特に. の任務 " としては,上述の情報目的との 関連で ,. 財産評価として 取得原価が重視されるのであ. 一方では 純 財産測定と,他方では 利益測定とを. この ょう に, この第 3 段階における フイブ の. る. " 貸借対照表. その結果, 「それによって 新たに定義された 貸 借対照表任務は ,財産測定および 利益測定に対 する貸借対照表決上の 方向性を越える・ 取得原 価への方向づけは ,構想上,静的貸借対照表 理 論を ,静的貸借対照表法解釈から 完全に分離す る 32, 」とオーバーブリンクマンは 結論づける. 想定する. この 2 つの " 貸借対照表の 任務 " も. のであ る.要するに, この静態論発展の 第 3 段. はこの任務の 間にウェイトづけがなされている. 階がそれ以前のものとは 本質的に異なる 性格を. からであ る. いうまでもなく ,. 有するのは,両者の. 測定が主であ り一義的であ るのに対して ,利益 測定は副次的で 二義的関係にあ るというのであ. び. " 貸借対照表の. " 貸借対照表の. 任務 " およ. 構想 " に関して決定的な 差異. ンス商事勅令以来の 伝統的な考え 方を継承する. しかし両者は 実質的に全く 同一というわけで はない. フランス商事勅令では 両者の任務間に 対等関係があ るのに対して ,普通ドイツ商法で ここでは 純 財産. る. それ故に, この普通ドイッ 商法によっては じめて静態論が 事実上成立したとオーバーブリ. が存するためであ る. これが彼の静態論発展の. また二元的であ る点で, これもまた 1673 年フラ. 第 3 段階であ る. オーバー ブリンクマンの 古典的静態論の 発展. 段階の素描は 以上の通りであ る.. ンクマンは理解するのであ る. そして, " 貸借. 対照表の構想. ". では, まず継続企業に 基づいて. おらず, 「付すべき価値」に 関し流通価値とし. W. オーバーブリンクマン 古典的静態論の 特質 とその評価 1. オーバーブリンクマン 古典的静態論の. 彼が " 貸借対照表の 目的 ", " 貸借対. 照 表の任務 ",. " 貸借対照表の. の角度から貸借対照表法を. 構想 " という. 3. つ. 分析するという 立場. に立っ点であ る. その内容は ,. 前提とし単式簿記を. 予定する. この ょう な考え方は, もはやそれ以前の 貸借対. 照表 法の伝統と相いれない 結果をもたらしたと 考えるのであ る. なぜならば,継続企業に基づ. き,原価主義および低価主義を前提とし しか も暗黙のうちに 複式簿記を予定するのが 普通ド. 特質 その特質を整理すれば ,次の通りであ る・ 第 1 に,. ての時価評価を. " 貸借対照表の. 目的 " が立法の趣旨, " 貸借対照表の 任務 " が ,. イツ商法以双の 貸借対照表法の 伝統であ ると オーバーブリンクマンは 解するからであ る. な. お,財産測定のみを 強調する一元的解釈がはじ めて登場するのは , 以降であ る.. この普通ドイツ 商法の制定.

(10) 10@ (210) 第3. 横浜経営研究. 第 x Ⅳ巻. に,かかる普通ドイツ 商法との関連で 古. 第3号. (1993). 評価. 踏襲したのが , この普通ドイツ 商法制定から. さて,最後にそれをさまざまな角度から検討 することにしたい. ㈲古典的静態論の 根拠 まず最初に検討を 要するのは,古典的静態論. 、ンュ. の原点とその 根拠についてであ る.既に彼の特. 典的静態論は 三つの発展段階を 有すると解され る点であ る. 第 4 に,かかる普通ドイツ 商法の特徴をほぼ マーレンバッハの 動態論までの 期間に相当. する静態論の 第 1 段階であ る. これには前半と. 質の第 2 点で触れた よう に , 彼は古典的静態論. 後半とがあ る. " 貸借対照表の 構想 " について. の原点を 1861 年普通ドイッ 商法に求めている.. はこの前半と 後半では大差なく ,普通ドイツ商. 問題はその根拠であ る.彼によれば, 1673 年 フ. 法 と同様であ. ランス商事勅令を 噌 矢 とする貸借対照表法の 成. や. る・. " 貸借対照表の. ただ, " 貸借対照表の 目的 ". 任務 " に関しては若干変化が. 立以降, " 貸借対照表の 任務 " に関して財産測. 生じる.特に後半部分において ,一方では罰則. 定と利益測定との 対等的な二元的関係が 継承さ. 規定や破産法との 関係から支払不能防止および. れていた. しかし. 債権 者保護目的に 対する自己情報が重視される. 定によって,それに重大な変化が 生じたとみる わけであ る.つまり,確かに 二元的な関係は 保. 他方では財産測定だけを 強調する一面的な 静的 観 が登場するが , しかし依然として 二元的解釈 が総じてその 当時において 支配的であ ったとい. 1861 年普通ドイッ 商法の制. たれているけれども ,. この二つの任務の 間に明. 確な主従関係が 生じたのであ る.その結果,財. う. なお, この静態論の 第 1 段階では財産評価 に 議論が集中し 逆に貸借対照表能力論が 軽視. 産測定が主で 利益測定が従であ るという, い わ. される傾向にあ ったとされる.. て,古典的静態論の成立を主張するのであ る.. 第 5 に, シュマーレンバ , ハ 登場後の静態論. ば ウェイトづけされた 政行的な二元的関係を 以 この彼の主張において 問題となるのは 次の点. の第 2 段階では, " 貸借対照表の 任務 " に関して. であ る・すなわち ,普通ドイツ商法は果たして ,. 、ンュ マーレンバッハの 影響から徐々に 一面向りな. 想 " については, 内容上既に触れた 第 1 段階と. 彼の指摘する 通りに利益測定を 貸借対照表の 副 次的 あ るいは二義的な 任務と捉えていたかどう かという点であ る.彼はこの点について次のよ うに述べる. 「既にプロシャ 草案は明確に 損益. ほとんど大差ない.. 測定の基礎として 関係づけられるように ,財産. 財産測定だけを 中心とする見解が 支配的となっ ていくのがその 特徴であ る. " 貸借対照表の 構. 第 6 に, 1920 年代以降の静態論第 3 段階では, これまでの段階と. 性格を異にし. 貸借対照表法. 目録と貸借対照表への 要求を行なっている. ニ ュルンベルクの 審議過程では ,. この要求を問題. から離れ,経営経済的な面から静態論の 理論化 を目指すと解されている 点であ る.その結果,. バッハ (W.Auerbach) はそれに関連して『ニュ. " 貸借対照表の 任務 " についていえば ,. ルンベルク会議は 損益部分の明確な 年次計算を. 貸借対. とする提案は 何ら行なわれていない.. アオアー. 照 表は主に経営管理の 手段 や ,消費可能利益計. 根本的に知っていた・』たとえ ,. 算が重視されるのであ. に含まれていた 実現利益の表示に 関する規定が. る・. また,. " 貸借対照表. プロシャ草案. の構想 " については従来の 時価主義は完全に 放. 継承されなくても ,. 棄され,継続企業に基づく原価主義を 基調とす. して決算の機能には 関係しない 33).」しかし. るのであ る.. これだけの面から ,果たして普通ドイッ商法は,. この 6 点が彼の古典的静態論に 関する特質と. みなすことができる. 2. オーバーブリンクマン. この点は成果の 測定基礎と. 副次的あ るいは二義直りとはいえ ,利益測定を想、 志していたと 解しうるかはやや 問題であ. 古典的静態論の. ろう.. また,前掲の「財産の状態」と いい ,あるいは.

(11) オーバーブリンクマンの 古典的静態論. オ. ぅ. るかは. (2) " 貸借対照表の 構想 " に関するドバマ --- バ一 ブリンクマンの 古典的静態論に 関す. 構想 " を概観するとき , その 内容のなかに 1 つ め ドバマが存在しているよう る. " 貸借対照表の. に思われる. 一方では,清算思考づ 単式簿記 (財産目録 ). + 時価という図式. 第 1 図式という.). これを であ る.他方では,継続思考. + 原価という図式. (以下,. 邪正 ). (.21 ) 1l Ⅰ. (3) 静態論の各段階に 属する論者の 検討. 「財産と負債の 関係を示す決算書」といい , そ. の一般条項から 利益測定任務を 導出し きわめて困難であ ろう.. (五十嵐. ここでまず第 1 に触れる必要があ るのは, 、ジ. モンが意図的に 静態論の第 1 段階に属する 論者 から除外されている 点であ る. このジモンは 主 観的価値論を 主張するので ,. オーバーブリンク. マンは彼を古典的動態論の 第 1 段階に属すると 解している, しかし この点はやや 問題であ ろ う. ジモンは, この主観価値論を 主として貸借 ヌサ照表の財産測定の 面から論じているからであ る.. しかし実際には 必ずしもそのように 単純では なく,いささか複雑な様相を 呈するのが普通で あ る・例えば, 1873 年の有名な帝国高等商事裁. 第 2 に,時代的には彼の いう 静態論の第 1 段階 から第 2E支階 にかけて,ユニークな 貸借対照表 法の考え方を 王 摂 するシュタ ウ力 H.St"ub)や レーム (H.Rehm), さらにはクナッ ペ (c).Knappe ルめ 論者が完全に 無視されている 点であ る・ というのは,彼らはいずれも株式会社の貸借対 照表を利益分配貸借対照表ないし 利益測定貸借. 判所の判決は 基本的には第 1 図式に属するが ,. 対照表と規定するだけでなく. しかしそこで 想定される時価は 清算思考ではな くて,継続思考を前提とすることが 明言されて いる. また,静態論の経営経済的な 理論化を目. 益 というよりはむしろ 未 処分利益に類する 利益 概念を前提とするからであ る 田 .このような 考え方もまた ,貸借対照表法の解釈上少数 説 な. 指すとされる ル ・クートル学説は 基本的には. がら,軽視すべきではなかろう・. + 複式簿記 2. (以下,. これを第. 図式という,) であ る.確かに,そのような 考. え方は理念型を 問題とするときに ,単純ィヒ に. よ. る 村上ヒとしては 重要な指摘であ るといってよ い. 2 図式を基調とするが ,. 成基盤として 複式簿記. 第. しかし貸借対照表の 作 よ. りはむしろ財産目録を. , そこでは期間利. 第 3 に, オーバー ブリンクマンによれば , 段階に属する 論者として パ , ソゥ ,. 重視する. したがって, オーバーブリ ク リオン, オスバールらが ,. 第2. コ フェロ,. また第 3 段階に属す. の 前提とする図式だけを 以て,古典的静態論の. る論者としては テァ ・フェーンと か ・クートル. 全容を整理するには ,一定の限界が存する よう に 思われる.下記に 示す よう に,それ以外の組 合せもあ ぅ るであ ろう. ただ,それぞれの組 合せがもっ理論的な 意味については ,十分検討. が挙げられている.確かに ,第2 段階に属する 論者の多くは 貸借対照表 決 に関する詳細な 検討. されねばならない. この点は本稿の 域をこえる. パ ,ソウらの多くは, その貸借対照表 決 だけを. ので, これ以上立ち 入らない. 中心に論じているわけではない.. り. を試みている. その意味からすれば ,. ブリンクマンの 解釈に特に問題はない・. オーバー. ただ,. それとは異な. る実務の貸借対照表の 解釈の仕方を ,貸借対照 表 法 に関する部分よりも 相当多くの紙数をさ い て 論じていることも 注目すべきであ ろう・ これ. はオスバールも 同様であ る.筆者は,これらの 論者のかかる 傾向のなかに ,既に経営経済的 思、. 一 @. ・」. 考が反映していると 2 段階の論考の. 解している・それ 故に,第. 多くは第 3 段階のそれに 明確に区. 別されるべきであ るというよりは , むしろ向股.

(12) 横浜経営研究. 12 (212). 階 には重なる部分があ ると解されるのであ. 第 XIV 巻. 時期であ る.第2 段階はシュマーレンバ ,ハ の時 代 における動態論の 発展時期であ る・ そして, 第 3 段階は,そのようなシュマーレンバ ,ハの 動. る・. 私見ではオーバーブリンクマンの いう 第 2 段階 のなかに既に 第 3 段階的要素,すなわち 新静態. 態論がその後の 文献や判決に 広く普及し浸透す る時期であ る. これがオーバーブリンクマンの. 論 (neuestatische 別 anzauffassung) の系譜を見 出すことができると 考えられるのであ る 35),. 動態論に関する 3 つの発展段階であ る. ここから も明らかなように , 動態論の発展段階において もまた, シュマーレンバ , ハ 学説を中軸として. 古典的静態論. 以上がオーバーブリンクマンの. 第 3 号 (1993). その成立前と 成立後とが整理されているといっ. に関する検討結果であ る.. てよい.. そして,それは,貸借対照表法の発展 史 との 関係で静態論の 発展段階を整理する 点にその意 義を見出すことができるのであ る. ともすれば, 貸借対照表決もまたもっぱら 動態論の発展過程 の一環として 取り上げられ ,静態論更 に関して はこれまで必ずしも 十分な検討が 試みられてこ なかったのが 実情であ る. この面から。 動態論. 自体の発展と 並んで古典的静態論固有の 発展 段 階を , 彼が膨大な文献や 資料を渉猟した 結果と. にと. す解 関理. 史の. でと. 静し. 煮 よ. 味ぅ. るめ. 輪郭. は分ょ. き. る. め る す. 古徳. して導出した 点は高く評価しうるであ ろう・前 節で指摘したように 彼の所論には 若干の問題点 が存するにせよ ,貸借対照表法 に関連づけた 彼. -=-. 古年Ⅱ Ⅰ. 1) 本稿は , 次の彼の著書を 中心に論じる・ F.Ober.. brinkmann,Statische und dynamische Inter. pretation derHandelsbilanz,DUsseldorf,1990 年・ 彼は, この小論で論及する 古典的静態論のほか に, シュマーレンバッハ (E.Schmalenbach) によ る動態論はもちろん , モックスター (A.Moxter) や レフソン (U.Leffson)等を中心として 近年展開 されている静態論および 動態論の新しい 解釈に. ついても論及し ,その妥当性について検討を加 えている, かなり多岐にわたる 彼の見解の全容 は他日を期したひ. なお, このオーバーブリン クマンの古典的静態論のうちでその 第 1段階にっ. いては,倉田幸路 「初期静態論の 再検討 一 特に. オーベルブリンクマンの 所説によせて - 」『正数 経済学研究 J (立教大学 ) 第 4f 巻 第 2 号, 1992 年. 10 月参照. 2) F.Oberbrinkmann, 前掲 書 ,序文1 頁・ 3)4) F.Oberbrinkmann, 前掲 書 ,序文2 頁・ 5) 動態論の古典的な 文献および判決における 発展 段階は本稿の 範囲外であ るが,簡単に彼の考え 方を略述する. 動態論発展の 第 1 段階は, シュ マーレンバ,ハ までのアンチ 静態論の台頭する. 6) F.Oberblrinkmann, 前掲 書 , 52 頁 7) F.Oberblrinkmann, 前掲 書 , 53 頁 8) F.Oberblrinkmann, 前掲 書 , 61 頁 9) F.Oherbrinkmann, 前掲 書 , 62 頁・ 10) F.Oberbrinkmann, 前掲 書 , 304 頁・ 11) F.Oberbrinkmann, 前掲 書 , 63 頁・ 12) F.OberbrinkInann, 前掲 書 , 305 頁・ 13) F.Oberbrinkmann, 前掲 書 , 61 頁・ 14) なお, 1897 年商法もこの 1861 年普通ドイッ 商法 とほぼ同様であ るが, ただ,複式簿記の 普及の. 結果,前者は「付すべき価値」を,後者のよう に時価としてだけ 解釈せず,取得原価とも両立 し ぅる 点に遠いがあ るという (F.Obe,b,inkmann, 前掲 書 , 68.305 頁 ). 15) F.OberblrinkInann, 前掲 書 , 305 頁・ 16) F.Oberblrinkmann, 前掲 書 , 88 頁・ 17) F.Oberbrinkmann, 前掲 書 , 83 頁・ 1819). 20) 2l) 22) 23) 24). 25) 26) 27). F.Oberbrjnkmann, 前掲 書 , 89 頁 前掲 書 , 90 頁・ 前掲 書 , 91 頁・ 前掲 書 , 95 頁・ 前掲 書 , 104 頁・ F.Oberb 「inkmann, 前掲 書 , 106 一 107 頁, F.Oberbrinkmann, 前掲 書 , 110 頁・ F.Oberbrinkmann, 前掲 書 , 113 頁・ この点について ,パッ ソウ は貸借対照表の 第 3 の. F.Oberbrinkmann, F.Oberbrinkmann, F.Oberbrinkmann, F.Oberbrinkmann,. 意義として 純 財産の増減としての 損益の算定を (R.Passolv, 団 e 別 anzen der privaten Unternehmungen, 第 1 版, Leipzje。 l910 年・ 6 頁 ). また,実務上では貸借対照表が 一義的に成果測 定の見地から 考察されることを 指摘する 侭 Passow, 前掲 書 , 118 頁 ), なお, この学説について は ,渡辺陽一『貸借対照表論コ 森山 書店,昭和 59 年。 第 W 章 および拙著, 『静的貸借対照表論Ⅰ 指摘する. ・. 森山書店,平成元年,第 7 章第 2 節参照. 28) F.Oberb.rinkmann, 前掲 書 , 111 頁 2g) F.Oberbrinkmann,. 前掲 書 ,. 120 頁. 30) F.bberbrinkmann,前掲 書 , 121 頁 3l) F.Oberblrinkmann, 前掲 書 , 122 頁 32) F.Oberbrinkmann, 前掲 書 , 124 頁 33) F.Oberblrmnkmann, 前掲 書 , 61 頁 34) シュタ タブ およびレームの 学説については ,拙 著,前掲書 ,第5 章参照. 35) この詳細は拙著,前掲 書 ,第6 章参照. [ いがらし. くにまさ. 日本大学商学部教授 ). I. Ⅰ-.

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