誘導結合プラズマ発光分析法による水田土壌中の重金属の定量
4
0
0
全文
(2) 2. らゆる環境試料の重金属分析に用いられデータが蓄積. 験に使用した水はすべて蒸留水をイオン交換し,さら. された。しかし,はどなく,分析における共存成分に. に,ミリポア製超純水製造装置(MILLトQLabo)で. よる干渉現象が多大であり,分析値の信頼性への疑問. 精製した。. が数多く報告されるに及び,原子吸光分光装置は金属. 2.3 試料溶液の調整. 元素分析の万能器ではないことを多くの研究者が自覚. 水田土壌中の亜鉛および銅はバックグラウンド含量. した。また,多元素同時測定装置も市販されたが,実. に新たに汚染として添加された成分を分析することを. 用化されるまでにいたらなかった。その結果,バック. 目的としたため,試料溶液は約1gの土壌をビーカー. グラウンド補正などの付属装置が市販されたりしたが,. にはかりとり,0.1M−硝酸100mgを添加し,超音波洗. 分析法の検討も各機種によって異なるため,原子吸光. 浄器で振とう抽出したものを用いた。. 分光法によって測定可能な元素のうち,他成分がある. 2.41CP−AESによる定量. 程度共存していても分析値が信頼できるものは最終的. 測定条件は表1に示す通りである。. には約10元素程度という結論となった。そのため,原 子吸光分光装置に代るものとして誘導結合プラズマ発. Tablel OperatingconditionsforICP−AES. 光分析装置が開発され,多元素が同時に短時間に分析 できるというメリットから環境における多様な現場試 料に対して利用されるようになった。しかし,約10年. 前に市販されたICP装置は現在約800台余り現場分 析で稼働しているといわれているが,台数の割には応 用分析に関するデータがあまりない。また,多品種多 成分が共存する現場試料に対する応用分析法の干渉は 検討されずに,メーカー指定の測定条件を用いて,分. 析値を記録している場合が多く見られる。このような. Frequency PF power Plasma gas Auxiliary gas Carrier gas Observationheightinplasma Integration time Analytica11ines:. 27.1MH l.30kw 161min▼1 0.51min【1 3.8kgcm▲2. 12.Omm 1 x 2times. Zn 213.856nm Cu 324.754nm. 指向は,基礎的研究データをとれる研究技術者を養成 する教育機関が少なくなったためであり,一方,コン ピュータ化し,自動化が著しく進歩し,ボタン操作と キーボード操作のみでデータがとれる高価な装置の前 では,プリントされた数値のみが絶対的なものと信じ る分析装置に使役された現場分析者が多くなったため ともいえる。. 本研究は,水田土壌中の亜鉛と銅をAASとICP− AESで分析し,両者の分析値を比較することにより,. ICP−AESの干渉現象および信頼性について検討 した。. ICP−AESはダイナミックレンジが広いため, 2.3のように調整した試験溶液を希釈せずにそのま亜 ま噴害した。. 2.5 AASによる定量 測定条件は分析線:亜鉛213.8nm,銅324.8nm, ランプ電流:亜鉛8mA,銅10mA,重水素20mA, ガス流量:空気8.01/min,アセチレン流量2.0 1/minで行った。. 原則としては,調整した試験溶液は希釈せずにその まま噴霧したが,AASはダイナミックレンジが狭い ため,金属含有の高濃度溶液あるいは粘性の高い試験. 2.実 験 2.1装 置. 溶液は希釈して,分析干渉の影響を受けない,工場排 水の公定分析法に準じる液性で噴霧した。. ICP発光分析装置:セイコー電子工業製,多元素 シーケンシャル方式SPS1200VR型 原子吸光分光光度計:日立製,バックグラウンド補 正方式170−50A型 2.2 試 薬. 標準溶液は,和光純薬工業の原子吸光分析用標準液. AASにより,亜鉛および鋼を定量した。. .1.﹀−.1∫1.一.■−t.1. 試薬はすべて特級以上の精密分析用を使用した。実. の比較. 土壌試料約160試料についてICP−AESおよび. −. て用いた。. 3.11CP−AES分析値のAASの分析値と. ーー一1・. を(1000ppm)を混合し,0.1M−硝酸酸性に調整し. 3.結果と考察.
(3) 5. l. H CP−AES. 432. H CP−AES. 0 1 2 3 4 5 6. p pm 1. Flame AAS Fig.1Relationshipbetweenanalyticaldataby flameAASandthoseICP−AESforZn. Flame AAS. Fig.2 Relationshipbetweenanalyticaldataby flameAASandthoseICP−AESforCu. 3.1.1亜鉛について. したがって,全試料では. ICP−AESとAASの分析値の回帰分析を行っ. y=0.83Ⅹ−0.01,(γ=0.997,n=168)であり,. たところ,亜鉛は図1に示したように両者の関係はは. 回帰直線は全体的に亜鉛より直線性はよいが,その傾. ぼ直線で表された。その回帰直線はAAS分析値が2. きは0.83と亜鉛より低い値であった。 なお,一部の試料について鉛,カドミウム,ニッケ. ppm以下の低濃度の試料では,y=0.98Ⅹ−0.03, (γ=0.994,n=138)であり,その傾きを示す回帰係. ル,マンガン,鉄の分析も行ったが,ICP−AES. 数は0.93であった。. の分析値はAASの分析値と比較して,回帰直線の傾 きが0.9前後の値であった。. 但し,. y=ICP−AESの分析値. 3.2 共存成分の干渉. ICP−AESの分析誤差の原因となる干渉には化. Ⅹ=AASの分析値 γ=相関係数. 学的干渉,イオン化干渉,分光干渉,物理的干渉があ. n=試料数。. るが,とくに分光干渉や物理的干渉には注意する必要. 2ppm以上の高濃度では y=0.88Ⅹ+0.10,(γ=0.997,n=25)であり,. があるといわれている1)。ICP−AESはアルゴン プラズマの温度が6000∼8000Kと高温であるため,導. その傾きは0.88と,AASと比べてICPrAESが. 入された試料はほとんど原子またはイオンに分解され. 高濃度領域になるにつれてより低目の値をとることが. てしまうので,化学的干渉は起こらないと考えられる。. 判明した。. また,ICP中の電子密度は1012cm ̄3とかなり大きい. 全試料では. ので,イオン化しやすいアルカリ金属が1%程度共存. y=0.91Ⅹ−0.01,(γ=0.998,n=163)であった。. しても,イオン化干渉は起こらないと報告されてい. 3.1.2 銅について. る1)。. 銅の関係を図2に示した。. 鋼はAASの分析値が0.5ppm以下の低濃度では, 回帰直線は. y=0.83Ⅹ−0.01,(γ=0.989,n=102)であり, その傾きは0.83であった。 0.5ppm以上では. y=0.83Ⅹ−0.01,(γ=0.996,n=66)であり, その傾きも0.83であった。. 分光干渉は目的元素の分析線の位置に他の元素の発. 光線や分子バンドが重なるため,測定元素の分析に正 の誤差を与える妨害である。分析に使用した亜鉛線21. 3.856nmにはアルミニウム,銅,鉄,ニッケル,チ タン,バナジウムが多量共存すると,そのスペクトル. 線が干渉する。また,銅線324.754nmにはカルシウ ム,クロム,鉄,チタンのスペクトル線が干渉する。 分光干渉の対策としては,干渉成分を分離除去するた.
(4) 4. めに溶媒抽出法,イオン交換法,共沈法などが用いら. れる。しかし,ICP−AESで測定した亜鉛および 銅の分析値は共にAASより低い値を示したことから,. 4.結 語 田土壌中の亜鉛および銅をICP−AESとAAS. 0.1M硝酸溶液によって土壌中から抽出された干渉元. によってその分析値と比較した場合,ICP−AES. 素の試験溶液溶存量は分光干渉への影響はないと見倣. の回帰直線の傾きは亜鉛の場合0.91,銅の場合0.83と. せる。 物理的干渉は試料溶液の物理的性質,すなわち粘性,. ICP−AESの方が低い値を示した。この理由とし て,ICP−AESの物理的干渉によるネブライザー. 溶解量および表面張力などが試験溶液によって異なる. 吸入量の減少と考えられる。干渉除去のためには内標. ために溶液のネブライザー吸引量の噴霧効率が変化し. 準法あるいは標準溶液および試料溶液の液性を一定の. て発光強度に影響することである。物理的干渉除去の. 粘性にする希釈法を用いる必要がある。しかし,迅速. ためには,マトリックスの分離や内標準法などが用い. 性を問題とした場合,必ずしもICP−AESが優れ. られている。. ているとはいえないが,半定量多元素同時分析装置と. 本実験ICP−AESの干渉を検討した場合,亜鉛. しては現場において実戦的に優位といえる。. および銅ともAASより低い分析値を示したことから,. 試験溶液に共存する塩類,とくに土壌組成腐植物の溶. 謝 辞. 存などによる粘性増加のために,ネブライザー吸引量 の減少によるものと考えられる。したがって,水田土 壌のような試料中の元素を迅速に分析するためには,. 本研究に際し,便宜を図ってくれた横浜国立大学環 境科学研究センター・汚染拡散学研究室の方々および. 共存塩類による物理的干渉を除去する必要がある。物. 実験の手伝いをしていただいた横浜国立大学環境科学. 理的干渉の影響を除去するためには,内標準法あるい. 研究センター・環境基礎工学研究室の大学院生槌田. は標準溶液および試料溶液の液性を一定の粘性にする. 博君(現在:生活クラブ検査室)に感謝いたします。. 希釈法を用いる必要があると考える。しかし,迅速性 を問題とした場合,前処理に時間が取られるので,亜 参考文献. 鉛,銅,カドミウム,ニッケルなどAASで干渉の影 響が少ない感度良く分析できる環境汚染元素に対して. は必ずしもICP−AESが優れているとはいえない。 しかし,現場分析の半定量多元素同時分析装置として. 1)原口 紘蒸:ICP発光分析の基礎と応用,共立 出版(1988). ㊦. 2)A.Walsh:Theapplicationofatmicabsorp−. は実践的優位性がある。また,ICP−AESの応用. tion spectra to chemicalanalysis,Spectro−. 分析に関する基礎的データが不足しており,現場分析. chim.Acta,7,108(1955).. のデータを取りながら,他の分析方法でクロスチェッ クする配慮が是非とも必要である。.
(5)
関連したドキュメント
(1)
Combining energy-derived CO 2 emissions (industrial, commercial, residential, and transport sectors) with non-energy-derived CO 2 emissions (others), trends and composition ratios
指針に基づく 防災計画表 を作成し事業 所内に掲示し ている , 12.3%.
②防災協定の締結促進 ■課題
保安業務に係る技術的能力を証する書面 (保安業務区分ごとの算定式及び結果) 1 保安業務資格者の数 (1)
環境局では、これに準拠し、毒性ガス、可燃性ガス、支燃性ガスを取り扱う高圧ガス保安法 対象の第 1 種製造所、第
東京都環境局では、平成 23 年 3 月の東日本大震災を契機とし、その後平成 24 年 4 月に出された都 の新たな被害想定を踏まえ、
高圧ガス製造許可申請等