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誘導結合プラズマ発光分析法による水田土壌中の重金属の定量

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Academic year: 2021

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(1)横浜国大環境研紀要19:1−4(1993). 誘導結合プラズマ発光分析法による水田土壌中の重金属の定量 DeterminationofMetalsinSoilsofPaddyfieldbyICP−AES 中川 良三*・加藤 龍夫**. RyozoNAKAGAWA■ and TatsuoKATOU** SynopsIS. The application ofICPrAES(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectroscopy)fortherapidandverysensitivedeterminationofzincandcopperinsoils. ofpaddyfieldwasinvesitigated・Themetalsinsoilsofaboutlg wereextractedwith. lOOmPofO.1M−HNO3andultrasoniccleaningmachine..Theextractsolutionshadbeen. previouslyfilteredthroughalFLmMilliporefilter.Thevalues(y)obtainedby the. conventionalICP−AESmethodwerefoundtobelessthanthose(Ⅹ)obtainedbyflame 紗. AAS(AtomicAbsorptionSpectrometry),Whichisspecifiedasthemethodofanalysis formetalsinsolution,WhentheO.1M−HNO3digestedsamplesolutionswereaspirated withoutdilution.Therelationshipsbetweenxandycouldbeexpressedbythefollow−. ingequation:y=0.91Ⅹ−0.01(γ=0.998,n=163)forZn,y=0・83Ⅹ−0・01(γ=0・997, n=168)forCu.Thisdiscrepancyintheanalyticaldataobtainedbythetwomethods. seemedtobecausedbyphysicalinterferencesuchastheviscosityofthesolutions・. 1. 緒 言 本研究は水田土壌中の重金属汚染の指標となる亜鉛. AESによる干渉現象およびその分析値の信頼性を検 討した。 本邦では,1960年代に原子吸光分光分析装置が市販. および銅を誘導結合プラズマ発光法(ICP−AES). されてから約30年間環境試料中の重金属元素の分析は. によって迅速に定量することを検討した。. 一般に原子吸光分光法で定量されてきた。原子吸光分. フレーム原子吸光分光分析法(AAS)では化学干. 光分析装置は市販された当初,物理的な原子スペクト. 渉やイオン化干渉が起こりやすい。ICP−AESで. ル理論から分析目的の成分と共存する他成分による分. はプラズマが高温のため,化学干渉やイオン化干渉が. 析干渉が全くないであろうと考察された。そのため,. 起こりにくいが,物理的干渉及び分光干渉が起こりや. 金属元素の高感度微量分析法の夢の万能器であるかの. すいといわれている1)。そのため,AASでは干渉現. ごとくに宣伝され,もてはやされ,メーカー指定の測. 象がはとんどともなわない試料溶液を用いて,ICP−. 定条件で,あらゆる環境試料の重金属分析に対して干. AESによって同じ液性で亜鉛および銅元素を分析し,. 捗現象を検討することなく,現場分析に応用された。. AASの分析値とを比較することにより,ICP− * 千葉大学 理学部 環境科学研究室,千葉市稲毛区弥生 町1−33,263.. Laboratory of EnvironmentalScience,Faculty of Science,ChibaUniversity,1−33Yayoi−Cho,Inageku, Chiba263.. **横浜国立大学環境科学研究センター環境基礎工学研究 室. Department of EnvironmentalEngineering Science, Institute of EnvironmentalScience and Technology, YokohamaNationalUniversity,Yokohama240. (1992年12月1日受領). すなわち,1953年にオーストラリアの物理学者A. Walshによって原子吸光スペクトルを応用した化学 分析法が提唱され,1955年に論文が発表された2)当時, 原子吸光分光法は発光法と異なり,電子の遷移励起電 圧に関係せず,温度変化や他の放射線や原子間のエネ ルギー交換による分析干渉が全くないというような利. 点が強調された。そのため,1970年代の環境汚染最盛 期において,本邦では原子吸光分光装置は約50機種約 20000台が市販されたといわれており,原子吸光用ホ ローカソードランプの製造可能な69元素について,あ.

(2) 2. らゆる環境試料の重金属分析に用いられデータが蓄積. 験に使用した水はすべて蒸留水をイオン交換し,さら. された。しかし,はどなく,分析における共存成分に. に,ミリポア製超純水製造装置(MILLトQLabo)で. よる干渉現象が多大であり,分析値の信頼性への疑問. 精製した。. が数多く報告されるに及び,原子吸光分光装置は金属. 2.3 試料溶液の調整. 元素分析の万能器ではないことを多くの研究者が自覚. 水田土壌中の亜鉛および銅はバックグラウンド含量. した。また,多元素同時測定装置も市販されたが,実. に新たに汚染として添加された成分を分析することを. 用化されるまでにいたらなかった。その結果,バック. 目的としたため,試料溶液は約1gの土壌をビーカー. グラウンド補正などの付属装置が市販されたりしたが,. にはかりとり,0.1M−硝酸100mgを添加し,超音波洗. 分析法の検討も各機種によって異なるため,原子吸光. 浄器で振とう抽出したものを用いた。. 分光法によって測定可能な元素のうち,他成分がある. 2.41CP−AESによる定量. 程度共存していても分析値が信頼できるものは最終的. 測定条件は表1に示す通りである。. には約10元素程度という結論となった。そのため,原 子吸光分光装置に代るものとして誘導結合プラズマ発. Tablel OperatingconditionsforICP−AES. 光分析装置が開発され,多元素が同時に短時間に分析 できるというメリットから環境における多様な現場試 料に対して利用されるようになった。しかし,約10年. 前に市販されたICP装置は現在約800台余り現場分 析で稼働しているといわれているが,台数の割には応 用分析に関するデータがあまりない。また,多品種多 成分が共存する現場試料に対する応用分析法の干渉は 検討されずに,メーカー指定の測定条件を用いて,分. 析値を記録している場合が多く見られる。このような. Frequency PF power Plasma gas Auxiliary gas Carrier gas Observationheightinplasma Integration time Analytica11ines:. 27.1MH l.30kw 161min▼1 0.51min【1 3.8kgcm▲2. 12.Omm 1 x 2times. Zn 213.856nm Cu 324.754nm. 指向は,基礎的研究データをとれる研究技術者を養成 する教育機関が少なくなったためであり,一方,コン ピュータ化し,自動化が著しく進歩し,ボタン操作と キーボード操作のみでデータがとれる高価な装置の前 では,プリントされた数値のみが絶対的なものと信じ る分析装置に使役された現場分析者が多くなったため ともいえる。. 本研究は,水田土壌中の亜鉛と銅をAASとICP− AESで分析し,両者の分析値を比較することにより,. ICP−AESの干渉現象および信頼性について検討 した。. ICP−AESはダイナミックレンジが広いため, 2.3のように調整した試験溶液を希釈せずにそのま亜 ま噴害した。. 2.5 AASによる定量 測定条件は分析線:亜鉛213.8nm,銅324.8nm, ランプ電流:亜鉛8mA,銅10mA,重水素20mA, ガス流量:空気8.01/min,アセチレン流量2.0 1/minで行った。. 原則としては,調整した試験溶液は希釈せずにその まま噴霧したが,AASはダイナミックレンジが狭い ため,金属含有の高濃度溶液あるいは粘性の高い試験. 2.実 験 2.1装 置. 溶液は希釈して,分析干渉の影響を受けない,工場排 水の公定分析法に準じる液性で噴霧した。. ICP発光分析装置:セイコー電子工業製,多元素 シーケンシャル方式SPS1200VR型 原子吸光分光光度計:日立製,バックグラウンド補 正方式170−50A型 2.2 試 薬. 標準溶液は,和光純薬工業の原子吸光分析用標準液. AASにより,亜鉛および鋼を定量した。. .1.﹀−.1∫1.一.■−t.1. 試薬はすべて特級以上の精密分析用を使用した。実. の比較. 土壌試料約160試料についてICP−AESおよび. −. て用いた。. 3.11CP−AES分析値のAASの分析値と. ーー一1・. を(1000ppm)を混合し,0.1M−硝酸酸性に調整し. 3.結果と考察.

(3) 5. l. H CP−AES. 432. H CP−AES. 0 1 2 3 4 5 6. p pm 1. Flame AAS Fig.1Relationshipbetweenanalyticaldataby flameAASandthoseICP−AESforZn. Flame AAS. Fig.2 Relationshipbetweenanalyticaldataby flameAASandthoseICP−AESforCu. 3.1.1亜鉛について. したがって,全試料では. ICP−AESとAASの分析値の回帰分析を行っ. y=0.83Ⅹ−0.01,(γ=0.997,n=168)であり,. たところ,亜鉛は図1に示したように両者の関係はは. 回帰直線は全体的に亜鉛より直線性はよいが,その傾. ぼ直線で表された。その回帰直線はAAS分析値が2. きは0.83と亜鉛より低い値であった。 なお,一部の試料について鉛,カドミウム,ニッケ. ppm以下の低濃度の試料では,y=0.98Ⅹ−0.03, (γ=0.994,n=138)であり,その傾きを示す回帰係. ル,マンガン,鉄の分析も行ったが,ICP−AES. 数は0.93であった。. の分析値はAASの分析値と比較して,回帰直線の傾 きが0.9前後の値であった。. 但し,. y=ICP−AESの分析値. 3.2 共存成分の干渉. ICP−AESの分析誤差の原因となる干渉には化. Ⅹ=AASの分析値 γ=相関係数. 学的干渉,イオン化干渉,分光干渉,物理的干渉があ. n=試料数。. るが,とくに分光干渉や物理的干渉には注意する必要. 2ppm以上の高濃度では y=0.88Ⅹ+0.10,(γ=0.997,n=25)であり,. があるといわれている1)。ICP−AESはアルゴン プラズマの温度が6000∼8000Kと高温であるため,導. その傾きは0.88と,AASと比べてICPrAESが. 入された試料はほとんど原子またはイオンに分解され. 高濃度領域になるにつれてより低目の値をとることが. てしまうので,化学的干渉は起こらないと考えられる。. 判明した。. また,ICP中の電子密度は1012cm ̄3とかなり大きい. 全試料では. ので,イオン化しやすいアルカリ金属が1%程度共存. y=0.91Ⅹ−0.01,(γ=0.998,n=163)であった。. しても,イオン化干渉は起こらないと報告されてい. 3.1.2 銅について. る1)。. 銅の関係を図2に示した。. 鋼はAASの分析値が0.5ppm以下の低濃度では, 回帰直線は. y=0.83Ⅹ−0.01,(γ=0.989,n=102)であり, その傾きは0.83であった。 0.5ppm以上では. y=0.83Ⅹ−0.01,(γ=0.996,n=66)であり, その傾きも0.83であった。. 分光干渉は目的元素の分析線の位置に他の元素の発. 光線や分子バンドが重なるため,測定元素の分析に正 の誤差を与える妨害である。分析に使用した亜鉛線21. 3.856nmにはアルミニウム,銅,鉄,ニッケル,チ タン,バナジウムが多量共存すると,そのスペクトル. 線が干渉する。また,銅線324.754nmにはカルシウ ム,クロム,鉄,チタンのスペクトル線が干渉する。 分光干渉の対策としては,干渉成分を分離除去するた.

(4) 4. めに溶媒抽出法,イオン交換法,共沈法などが用いら. れる。しかし,ICP−AESで測定した亜鉛および 銅の分析値は共にAASより低い値を示したことから,. 4.結 語 田土壌中の亜鉛および銅をICP−AESとAAS. 0.1M硝酸溶液によって土壌中から抽出された干渉元. によってその分析値と比較した場合,ICP−AES. 素の試験溶液溶存量は分光干渉への影響はないと見倣. の回帰直線の傾きは亜鉛の場合0.91,銅の場合0.83と. せる。 物理的干渉は試料溶液の物理的性質,すなわち粘性,. ICP−AESの方が低い値を示した。この理由とし て,ICP−AESの物理的干渉によるネブライザー. 溶解量および表面張力などが試験溶液によって異なる. 吸入量の減少と考えられる。干渉除去のためには内標. ために溶液のネブライザー吸引量の噴霧効率が変化し. 準法あるいは標準溶液および試料溶液の液性を一定の. て発光強度に影響することである。物理的干渉除去の. 粘性にする希釈法を用いる必要がある。しかし,迅速. ためには,マトリックスの分離や内標準法などが用い. 性を問題とした場合,必ずしもICP−AESが優れ. られている。. ているとはいえないが,半定量多元素同時分析装置と. 本実験ICP−AESの干渉を検討した場合,亜鉛. しては現場において実戦的に優位といえる。. および銅ともAASより低い分析値を示したことから,. 試験溶液に共存する塩類,とくに土壌組成腐植物の溶. 謝 辞. 存などによる粘性増加のために,ネブライザー吸引量 の減少によるものと考えられる。したがって,水田土 壌のような試料中の元素を迅速に分析するためには,. 本研究に際し,便宜を図ってくれた横浜国立大学環 境科学研究センター・汚染拡散学研究室の方々および. 共存塩類による物理的干渉を除去する必要がある。物. 実験の手伝いをしていただいた横浜国立大学環境科学. 理的干渉の影響を除去するためには,内標準法あるい. 研究センター・環境基礎工学研究室の大学院生槌田. は標準溶液および試料溶液の液性を一定の粘性にする. 博君(現在:生活クラブ検査室)に感謝いたします。. 希釈法を用いる必要があると考える。しかし,迅速性 を問題とした場合,前処理に時間が取られるので,亜 参考文献. 鉛,銅,カドミウム,ニッケルなどAASで干渉の影 響が少ない感度良く分析できる環境汚染元素に対して. は必ずしもICP−AESが優れているとはいえない。 しかし,現場分析の半定量多元素同時分析装置として. 1)原口 紘蒸:ICP発光分析の基礎と応用,共立 出版(1988). ㊦. 2)A.Walsh:Theapplicationofatmicabsorp−. は実践的優位性がある。また,ICP−AESの応用. tion spectra to chemicalanalysis,Spectro−. 分析に関する基礎的データが不足しており,現場分析. chim.Acta,7,108(1955).. のデータを取りながら,他の分析方法でクロスチェッ クする配慮が是非とも必要である。.

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