資本設備の価値と量
堀 江 義
経済成長の巨視的な分析にあっては,減価償却ほしばしば無視されるのが慣
習であるかに.みえる。そのことは,多分に,分析の関心が均衡の時間的経路に はぼ集中しているという事実に.符合するものであろう(〔2〕p.135)。あるいはま 挺,資本ゐ理論に関わらしめて:も,これを如何に取扱うかほ問題の本質紅影響 を与えないかもしれない(〔5〕p.5)。もしそうであるならば,いたずらに数学 的紅.のみやっかいな,実りの少ない用具は無しですました方がよい。
紅もかかわらずこの問題を−・皮とり上げたのはu4〕),企業の現実の動き に偲した形で理論的な整理をしておくととが主たる理由であった。しかも,り とたび設置された固定設備の現在価値を決定するために.ほ,如何に私意的であ る軋せよ,減価償却の評価が不可欠である。さら紅.,企業行動との関連で考え るならば,租税・配当・企業の可処分所得等への影響,これらを通して−景気変 動への結びつき,など考察すへきことほまだ残されている。
これらのことを背後に.おきながら,この小論では〔4二〕に・於ては触れなかった 生産の技術条件を明示的に.導入することに.よって,いくつかの命題をつけ加え るのが目的である。これらのうちには,すでに広く周知のものでありながら,
主として文脈との閑適でスぺ−スを当てられたものも含まれる。
Ⅰ生産の技術
ある時点れ阻購入され設置された−‥台の資本設備のf時点における物的盈を
∬(ぴ,≠)とし,これと結びつく労働藍をエ(ぴ,f),これらに・よって生産される 生産物の壷をQ(が,≠)とする。このとき我々の仮定する生産の技術は(1)式 である。ここには原材料の存在が明示されていないが,これと生産物との間紅
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Q(ぴ,わ=α∬(む,、g),
エ(ぴ,才)=β麒(ぴ,≠)ここに.αおよぴβほ定数(>0).
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(11
もー・定比率が成立すると仮定すれは,簡単化のために原材料を省いてもよい。
また,この技術は,Sraffa〔9r〕の「効率不変の仮定」とは異なる。Sraffaは,
固定資本がその耐用期間中にあって常に同じ鼠の労働と結びついて同じ鼠の生 産物を生みだす場合を「効率不変」と名づけているが(〔9〕p.65),その場合
に固定資本が時間を通じてどのような磨滅の型をとるのかほ問わない。・−・方,
(1)は固定資本の物的磨滅がすぐさま生産患の減少となることを示す。
次に,′時点に.投下された固定資本の数を∽(ぴ)とすれほ,このときの物的 粗投資は研(が)∬(少,ぴ)となり,一個の固定資本の価値をⅤ(ぴ,が)とすれば,
この阻投資の価値は椚(ぴ)y(が,が)である。これらほ」時点にはそれぞれ
∽(ぴ)斤(が,f),∽(む)y(が,≠)となる。従って,f時点における固定資本の価値 および物的患ほ.それぞれ
£
∽(ぴ)y(ぴ,才)∂が,
′−▲71
£
研(ぴ)∬(ぴ,わ∂ぴ
どIr
(2)叩)=J
(3)g(f)=†
となる。ここに.rは固定資本の耐用期間を示す。
異ったダインデー汐(即ち,異った製作時点)の固定資本を(3)の如く加え るには.,等質の資本であることを前提とする。普通紅.,異質の資本を取り上げ る場合にほ,それらは便宜的にこつのカテゴリ一に分けられよう。(イ)ダイン デージが同じなら等質であるがダインデー汐が異るために・異質な資本,(ロ)同 一のヴィンテージの異質な資本,というぐ凱、に。たとえば,Samuelsop〔6〕
は(ロ)の意味で異質な資本を取り扱ってし、るのに対し,荒〔1〕は(イ)の意味で 異質な資本を考えている。ただし,ここでは資本設備の物理鼠を測定するのに 共通の尺度を用いうるか否か紅・よって等質と異質との区別をして1、る。従っ
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て,生産力が異っても同「・の尺度で測りうるものほ等質の資本と見なせる。そ のような意味でSolow〔 8〕のブインチー・汐・モデルは等質な資本を仮定した ものである。
ⅠⅠ収益
企業の粗収益を∴Ⅳ(わとすれば,それほイ時点に存在する各ダインテ、劇汐の 資本の稼動に.よって得られる収益〃(む,′)の総和であるほずだから,
(4)Ⅳ(f)=一J;讐(即)Ⅳ(が′f)∂が
が成立する。かつ,(1)の制約の下では
(5)Ⅳ(少,≠)=♪(・方)Q(が,わ1一打(りエ(ぴ,才)
=㍉α(才)∬(〃,f),
(6)β(f)=α♪(f)−β紗(f)
こ.こに,♪(わ=生産物の価格
紺(わ=賃金率
の関係が成立しているから,(3)および(5)を用いれほ,(4)は次のよう虹表 現してもよい。
(4)′坤)こα(g).†;讐(ぴ)柚子)∂ぴ=α(g)抑
ここで,資本設備の物的磨滅に.関して次のような仮定をおく。
(A.1) ∬(〝,g)=ノて才一む)./■の′ト1捉〔0;r〕.
すなわち,設備の物理量ほそれが設置された時点からの経過時間の連続関数で ある。この場合,Ⅳ(ぴ,f)もまた(わーぴ)の連続関数となるための必要十分条 件はα(f)が・一・定となることである。従って,ク(才)および抑(わが一・定である
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ことは∴Ⅳ(ぴ,りが(トぴ)の連続関数であるための十分条件である。
(A.2) α(わ=α(=−・定>・0).
【■pl)仮定(A.1)および(A.2)のもとで,Ⅳ(が,g)ほ(トぴ)の連続 関数である。
〔P2〕(A.1)および(A.2)が成立すれば,新しい資本設備の価値 lてち g)ほfの如何にかかわらず−−・定である。
上の命題〔ヤ2〕は,【.Pl〕およぴ〔4〕におけるTheor・em2に.よって導か れる。
/\● 次に・,・ガを・一般的な変数として−,.方=.方/方,.方=d.方/dfの記号を用いれば,
/\ 桝(g)=gのときほ
(7)Ⅳ(′)=∽(fり;β方♪(−gg)ゐ(z)dち
ただし ゐ(g)=ゐ(トーが)=Ⅳ(ぴ,才)
が得られるから(〔4〕p.90),次の命題が成立する。
〔P3〕(A.1)およぴ(A.2)のもとで,品(≠)±gならば舟(才)=g.
ⅠⅠⅠ資本設備の価値と畳
允の(6)式に見られるよう紅,α(才)は生産物市場や労働市場の状態に.よって 影響を受けるので,Ⅳ(む,わと∬(ぴ,′)とは同じ型の時間径路を持つとはか
ぎらない。しかるに・,(1)の技術条件の下でほ,(A.2)によって,Ⅳ(ぴ,才)
は、∬(〝,g)と同じ型の関数となる。さらに,利子率をγ(定数)とすれば,価 値の定義式
ひ+r
Ⅳ(ぴ,.方)β.方♪【r(トー.わ〕∂∬
(8)y(〝,f)= £
資本設備の価値と豊 ー 6∂−
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に.よって
γ・Ⅴ(〃,g)−トか(ぴ,f)=〃(ぴ,g),
ただしヱ)(即,f)…∂Ⅴ(ぴ,g)/∂f が得られ,個別償却を前提とすれば
(9)仰)+坤)=岬),ここに・相可■;讐(即)抽f)∂が
が成立する。従って,次の命題が導かれる。
〔P4〕仮定(A.1)および(A.2)が成立しているときほ,物的磨滅の
/\/\ 型の如何にかかわらず,沼(g)=gならばg(才)=g
なぜなら,(A.1)によって
∬(≠)/研(∠)=,†;ノ・(g)嗅(−gZ)dg
/\ が得られ,かつ右辺はfの値とは独立であるから∬(f)=桝(f).特に・,
d./てg)/dぞ=−ヤプてぞ)を仮定すれは,
(10)∬(才)=研(わ(ノて0)−ノてr)β,方♪(−g7、)〉/(g+ヤ).
/\ 〔P5〕仮定(A.1)および(A.2)が満たされているとき,桝(′)=gな
らば∂y(g)=か(J)∴ただし,∂=定数(>0).
/\〈〈 桝(才)ニgならばⅤ(才)=g(Theor・em8,in〔4〕)およびⅣ(f)=g(〔P3■〕)
が成り立つから,(9)によって∂(才)/V(g)〒一・定となる。
〔P6〕(A.1)および(A.2)が満たされているとき,∂∬(が,g)/∂才=−
∂g(が,わならば∂y(ぴ,ヂ)/∂ヂ=−∂y(が,′).すなわち,物的磨滅率と価値の 磨滅率は等しい。
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【 66■− 350
なぜならば,上の二つの仮定が宿されているときほ
J
′(g)β一方♪(−γg)dg
£一U
y(ぴ,f)=α・β一方♪〔γ・(才一ぴ)〕・
となり,ここでノ′(g)=−8ノ (z)とおけば,
J;ノ(g)β一方♪(−γg)=ノー(∂)・β尤♪(−−γ・∂),
ただしノてr)=0
であるから,か可トⅧ とおくこ.とにより lてぴ,f)=αノー(トが)/(γ+∂).
この式の両辺を才で偏微分することに・よって
∂(〃,f)===▲−−∂y(ぴ,f)/∂f=∂・αノ■(才一が)/(γ−ト∂)=∂y(が,≠).
かくして,命題【p6〕ほ証明されたが,このとき同時にβ(f)=∂Ⅴ(才)も導か れることは容易に示される。次いでながら,E:のような未発的減耗(depreci−
ation by evaporation)の場合にf(T)=0となるのはT=∞a)ときである。
ⅠⅤ おわりに
資本設備の価値を評価するために.ほ,その定義によって,必然的に将来収益 の時間的な流れを予想トなけれぼならない。その場合,もし生産の技術的な制 約条件(あるいは生産関数)が明確なものであれば,収益を予想する、ことは価 格(♪(g),紺(≠)など)を予想することに等しい。我々の上記の命題は,基本的
にほ価格K.対する静学的な期待(stationary expectation)を前提K.して:L、る。
より正確に云えば,♪(f)と∽(才)との間に・線形的な関係があれば上記の命題ほ成 立する。このあたりにまだ−・般化されるべき余地を残しているものの,企業に 於ける減価償却の取り扱いの実際にあっても,新資本設備の価格を・一・定と見徹
したやり方をしている革もまた事実である。
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我々の分析の枠組でほとらえきれないもう一つの対象は,異質の資本設備が 並存する場合の資本財の価値をどう測定するかという問題である。等質的な資 本財を前提とする限りに.おいて∴仔(才)ほ−▲つの物理最として意味を持ち,しか
/\ もこのとき資本設備の平均価値す(f)…Ⅴ(わ/∬(′)ほ,研(わ=gならば劇定と なる。このことは,均衡成長に考察の対象をしぼるならば,分析な・極めて容易 にする。しかるに.,異質な資本が同時に.存在するときには,それらの総和とし ての資本は物理的な意味を持たない。そのような状態を取り上げたSamuelson
〔二6〕の巧妙なやり方も,生産の技術を特殊化している点で説得力を弱めてい る。いずれにしても,総和としての資本は価値でしか表現できない。とすれ ほ,あたかも「熱力学の法則」(〔7〕p.舶4)のように投入患と産出量との間を 関数で結びつけうる,と考え.るのは極論であろう。
かくして,残された課題ほ,異質の資本を明示的軋とり上レデる事によって,
そこに.含まれている(かもしれない)、重要な理論上の問題を整理すること,さ らに.より進んでほ,それ紅代るより有効な理論があるのかどうかを抹ること,
などであろう。
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− 6β − 352
参 考 文 献
(1)荒意次郎「経済成長論」岩波沓店,1972
(2)Iiicks,.丁R‖,C(Z♪よJαJα〝d G70ぴfカ,0Ⅹford,1965
(3)菱山泉l一発本と分配の理論についで」『経済論叢』貨109巻・寛1弓,1972年,1月
(4)Ho工ie,Tり,Dep工eCiationin A Growing FiIm,Fl香川大学経済論叢Jl第47巻 第2・3弓,1974年8月
(5)Lutz,F., The Essentials of CapitalTheory in The Theor.y qF Capital
(ed…by DLC.Hague),New York,1968
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(7)− , Rejoinder:Agreements,Disagreements,Doubts,And The Case of Ind11Ced Harrod−Ne11tral Technical Changeけ,The Rez)iew qf Economics and
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(8)Solow,R…M。, Investment and Technical Progressり,in MaihematicalMe・
thodin the SocialSciences(ed..by Kへ丁…Arrowetal.),1960.
(9)Sraffa,P..,Producii∂nqf−Commodities b.yMeanspfCommodities,CambIidge,
1960小(菱山泉・山下博訳,「商品による商品の生産」,有斐閣)