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財務諸表監査に−おける独立監査人の責任と職能   

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(1)

第36巻 第2号   236  

▲ヱ〝・ト  

資 料  

財務諸表監査に−おける独立監査人の責任と職能   

−AICPA監査手続報告書第80号の解説−−  

∴  

」二 は じ め に  

監査の目的,戯縫および責任虹関する種々の問題を盛諭する場合に,必らずとりあげられ   るのほ,A‡CPA監査手続委員会(CommitteeonAuditingPIOCedure)が1960年9月に発表   した監査手続報告書第30号(StatementsonAuditingProcedure N五.30)「財務諸表監査   における独iz監査人の責任と職能(Responsibilitiesand Functions of theIndependent   Auditorin theExaminationofFinancialStatements)」(以下ステートメント第30号  

(1)  

と略称す孝)であろう。こ・れほ,1951年に発表された 「監査手続報告書総覧(Codifト   cation of Statements AuditingProcedure)」(以下コi7フィ1 L−Vヨンと略称する)」の  

うちの,「独立監査人の責任と職能」と題する部分の改正を目的としている。スデートメ   ソト罪30号ほ,財務諸表監査における独立監査人の責任と職能とを明確にしようとするも   のではあるが,改正の主たる問題ほ.,財務諸表監査における独立監査人の不正紅対する義  

任の明確化であった。   

本稿は.,ステートメント第30号の解説を主たる目的とする。その発表以来.既に二年余を   経過しているが,歪大な問題を含んでいるので,あえて取り上げた次第である。ところ  

で,解説の方法として−は,主たる改正点である不正の問題に関する部分を中心に展開して   いく方法もあろうが,ここでは別の方法に従・う。すなわち,ステ」−トメント第30号を全体と   して取り上げて,その項目の順序に従ってコ汐フィケ」−ンヨンの元の文章と対照させなが   ら,解説を進めて行く。そのさい紅,AICPAの考え方については,ステ−トメントの作   仙 この「監査手続級告富第30号」ほ,39ペ・−ジ′から42ぺ一首までの,総べ−ジ数4ぺ・−   

汐のものである。 なお.39ぺ−ジからはじまっているのほ,「監査手続報告者㈲儲」に    ほ,「監査手続報告嵩」の第24づ・までが,整理されて記載され,節25賢から新しいぺ−   

ジが出発し,以下の号に連続しているためである。   

(2)

財務諸表僅査における独立監査人の畠任と職能   …・‡05一  

237  

(2)  

成に指導的な役割を果したとみられるPL=デブリ−ズの論文を利用した。このような解説   方法をとったのは本稿を資料としての性協をもたせるためであり,財務諸表監査の目的,職   能および責任に対する不正の関係について.の積極的な展開は別稿で行なうことにしたい0  

なお,ヌテ−トメント第30写の原文にほ,項目毎の標題ほつけられていないが,参照の便   宜を考えて」試みにつけ加えてみた。  

止 ステートメント第30号   

〔1〕スデー・トメント第30号の目的  

スデー・トメント第30号ほ,つぎのような前文をもっている。   

「本ステートメン十の目的ほ,財務諸表監査における独立監査人の遥任と職能について   の,±ジフィグーションの当該部分を明確にすることにある。1951年のコジフィケージョ   ンの発表以来,不正(私消およびその他の類似の不正行為を含む)の摘発に・対する監査人   の岩任,および監査が不正の存在の疑惑を生じるような特別の状況を明らかにした場合の   独立監査人の適当な行為匹ついて,コジフィケ−ションがとっている立場について多くの   疑聞が巷じた。   

監査手続委員会は,コジフィグーションの適当な部分の改正によって,明確化がもっと   もうまく達成せられると信じる。従って,コジフィケ−レヨンの11ぺ一汐にほじまり,13   ぺ−ジの上部の終りまでの部分は,つぎのように改正せられる。」  

1951年にコジフィケ−ジョンが発表されてから,今日にいたるまでに,財務諸表監査に  重大な状況の変化が生じたのでもなけれは,その間にAICPAの基本的な主張が変ったので   もない。改正の主たる原因は,コ汐フィケ−ジョンの不正の問題に関する表現が不明瞭で   あり,財務諸表監査における不正摘発の式任を明確に否定も肯定もしていなかったので,  

種々の解釈が生じる箇所が存在したからである0   

監査は,その発生の当初において,不正摘発を目的として.いたので,現在において・も一  般の人々が監査をそのようなものとして誤解するおそれがある。デブリ−ズほり−・般の人  

々の財務諸表監査に対するもっとも大きな障害は,多くの会計士がその問題を依頼人と白  

(3)  

しl舶こ話し合わなかったことであるという。その結果,依頼人が監杏契約の鮎賀と限界とを   

12j PhLDefliese,=TheNew Look at theAuditor,s Responsibility for FraudDete−   

ction ,TheIournalof Accountancy,October1962 

(:引Jむ左dl,p.38・   

(3)

第36巻 第2号   238   ーJ∂6−  

明確に理解していないために問題が坐じることがある。会計士が話し合いを好まなかった   のほ,コジフ1ク−ジョンの表現が不明瞭であって,十分な根拠にならなかったからであ   る。また,監査が種々の目的のために実施されるということが,一戯的に理解されて.いな   かった。しかしながら,依頼人ほ契約において,諸員的のうちでどの目的の監査を要求す   るのかを明確にすべきである。そこでスデー・トメソト第30号ほ,不正摘発を基本的またほ特   別の目的としない通常の財務諸表監査(Ordinary examinationof financialstatements)  

と,不iE摘発を特別の目的とする特別監査(SPeCialexamination)との区別を前提にして,  

通常の財務諸表監査における不正の問題をとりあげるのである。   

ステートメント第30号ほ,その標題に示されるように,通常の財務諸表監査におiナる独   立監査人の喜任と職能について−の全体的な主張を含むが,主な改正点ほ不正の問題に対す  

るAICPAの立場の明確化にある。すなわち,通常の財務諸表監査において,独立監査^  

は不正摘発に対してどのような責任をもつかという問題と,もしも監査の途中において不   正の存在の疑惑を生じるような状況が明らかになった場合には,監査人がどのような行動  

をとるのが適当であるかという問題とが,主たる改正の問題である。   

〔 2〕通常の財務諸表監査の目的  

ステートメント第30号第1項はつぎのようにのぺている。   

「1,独立監査人の通常の財務諸表監査の目的は,財務諸表の表示の適正性に対す−る意   見の表明である。報含蓄ほ,監査人がこのような意見を表明する手段である。このような   監査ほ,−・般に認められた監査基準に準拠して行なわれる。一腰に認められた監査基準ほ,  

監査人に,監査人の意見でほ財務諸表が一般に認められた会計原則に準拠して作成されて   いるかとうか,およびこの会討原則が今期と前期の財務諸表の作成において継続的に遵守   されているかどうかを,監査報告書檻記載することを要求する。」   

コジフィケ−・ジョンにおける対応する文章はつぎのようになっていた◇   

「独立の公認会計士による財務諸表監査の基本的目的ほ,財務諸表の適正性,一般に認   められた会計原則の準拠,および同原則の適用の前年皮との継続性について意見を表明で   きるようにすることである。」   

ステートメント第30号ほ,この部分でほ,コジフィケ−ジョンよりも,幾分詳細に表現  

されたのみで,基本的な改正点ほない。ただ,新しい文章ほ,監査目的,意見表明,監査  

報告書の関係を明確にしている。すなわち,通常の財務諸表監査の目的は,財務諸表の適   

(4)

財務諸表監査における独立監査人の責任と職能   −J∂グ山  239  

敵性に対する意見表明であり,監査報告書ほその意見表明の手段である。それ故に,実際   上の監査の目的は,監査報告書の作成となる。その結果,一腰的紅認められた監査基準紅   準拠して瀾務諸表監査を行なうこ.とほ,監査報告書に記載されるぺき一般に認められた会  

計原則の準拠性,その継続的適用に対する意見の表明を目的とすることになる。   

っぎに,注意されねばならないのほ,財務諸表監査の目的が,財務諸表監査の最終段階   の目標によって表現されていることである。それは,意見表明にいたるまでの途中の段階   における監査行為の目標は,たとえそれが意見表明に直接に結びつくものであっても,そ   のすべてを基本的目的とほみなさないとする考え方の,伏線であると思われるからである。   

また,ステートメソt第30号の新しい文章によれほ,通常の財務諸表監査の基本的目的   は,財務諸表の表示の適正性に対する総合的意見表明であり,その総合的意見ほ,財務諸   表作成における−=般に認められた会計原則の準拠性とその継続的適用に対する意見表明に  

/  

よって構成されると考えているようにみえる。これほコジフイデーンヨンの文章でほ財務   諸表の適正性,会計原則の準拠性およびその継続的適用に対する三つの意見を,一並列的に  

並べていたのと相違する。その意味では,新しい文章は意見の構成をより明確に表現する   ものといえる。  

〔3〕財務諸表に対する基本的責任の所在  

ステ∵−・トメソト第30号の第2項ほつぎのようにのべている。   

「2…経営者は,_会計帳簿における取引の適正な記入,資産の保全および財務諸表の実質   的正確性および十分性に対する責任を有する。諸勘定および財務諸表に反映されるべき取   引は,経営者が直接にしっており,かつ遍接に統制しうる範囲の問題である。それに対し  

て監査人の知識ほ,監査を通じてえられるものに書民られている。それ故に,たとえ財務諸  

表が独立監査人の影響を示す場合でも(たとえ・鱒,経営者が監査人の助言を受け入れた結  

果として),財務諸表ほ経営箸の陳述である、。独立監査人の責任は,かれが監査した財務   諸表紅対する専門的意見の表明紅限られる。」   

この点に関するコジフィク」−ションの文章はり つぎのようであった。   

「経営者は,十分かつ能率的な会計組織の維持,会計帳簿への取引の適正な記入および   資産の保全に対する直接的責任を有する。経営者ほ,また,財政状態および営業についての  

財務諸表の実質的正確性および十分陰について,株主および債権者に対する基本的貴任を  

有する。会封記録が取り扱う取引および帳待と諸勘定への取引の記入ほ,会社が直接的に,   

(5)

第36巻 第2せ   240  

一ヱ(畑l−  

またほ基本的にしって.し、る問題である。それに対して独立監査人の知識ほ,かれの監査濫   基づく第二次的知識である。それ故に,たとえ財務諸表の様式が会計士の影響を示す場合   でも−〟そういうことは,会社が会封土の勧告した表示様式を受け入れて採用した場合に   のみありうる一一,財務諸表の実質ほ必らず会社の陳述である。そこで,独立監査人の陳   述ほ,財務諸表に対する報著書,すなわち意見に限られ,かつそこに表現される。協会の  

このような声明ほ,SEC匿よってより大なる−麒的清澄を与えられた。」   

この2っの文童において,遠大な柑嵐点ほ.ない。そこで凝,刑務諸表および諸1助走に対   する基本的責任ほ経営者にあって,監査人にほないという主張が持続されてし、る。経営者  

に何故そのような責任が帰属させられるかという理由についてほ,コジフィグージョンで   は.,経営者は,財務諸表に反映されるべき会社の諸取引および会計記録を直接的に■または  

基本的に.しっているからであると説明した。ステートメント第30号でほ,その表現が強め  

られ,それらの取引ほ経営者が直接にしっており,かつ直接に統制しうる範囲の問題そあ   るとされている。監査人は,それとほ別の立場紅あることが示される。私見によれば,会社  

の翳産の運営およびその結果の報彗の基本的責任の系統を支配するものほ経営者であり,  

監査人はその系統に.入らないことが明らかにせられていると考えられる。それ故に,独立   監査人の経営者に対する財務諸表濫ついての主張ほ,経営者紅対する命令,もしくほノ経営  

者の命令に対する報曽という性栗をもたず,助言とか勧告とかの名前が示すように,それ   自身決定力をもたない。それは,監査人が,経営者の責任・権限の系統の外にあるからで   ある。このような関係の下で,「財務諸表は経営者の陳述であり,独立監査人の責任ほか   れが監査した財務諸表に対する専門的意見紅限られる」といわれるのである。   

と.のような関係は,監査人の財務諸表作成に対する独立性を主張するものとみることが  

■  

できる。マクツ・ジャラフほ,このように財務諸表に対する基本的着任が経営者にあり,  

監査人にはないということを明確に表明することは,独立監査人が財務諸表を公正把監査  

(4)  

しうる立場にあることを示すために重要であるとしている。   

つぎに,これほ改正された点でほないが,監査人の基本的寅任を財務諸表の作成から明   確に切断しながらも,監査人の財務諸表湛対する影響力を認識している点ほ重要である。  

マクツ・レ1ラフはつぎのように指摘する。監査人ほ故意に経邑者のあやまらを探りだそ   うとするものではない。経首者も監査人もともに,財瀞諸表の適正表示に関心をもってい  

(4)RK Mautz and H.A.Sharaf,7he PhiloSOPh.y o.f Audiiing,1961,p.11生   

(6)

刑務諸表監査における独弟監査人の買付と職能   −ヱ∂9−  

241  

る。それ故に,もしも経営者が協力すれほ,財務諸表が満昆.なものであることを確めるこ  

とである。もしも経営者が協力を拒否すれほ,そのときには,監査人は財務諸表の欠陥を  

(5) 報告書で指摘しなけれぼならない。このマクツ・ジャラフの指摘のように,監査人の基本  

的責任を財務諸表の作成から切断することほ,経営者が作成した財務諸表を間違ったまま   に放置して,監査人が適正表示に努力しないことを意味しない。   

しかし,財務諸表の適正表示に監査人が協力す−るとほいっても,経営者とほ貰任・願順   の系列が別であることを忘れてはならない。そこに監査の限界があり,この限界によって   監査人の独立性が明確に位露づけられ,監査が公正に行なゎれることが保証される。それ   故に,監査人は経営者の命令に服する必要ほないが,経営者も監査人の主張を拒否するこ   とは自由である。経営老が監査人の主張に服しなかったことに対する判定は,監査報告番   の読者によって下されるとみるのである。   

なお,コジフィケージョン紅ほ,独立監査人の職能紅ついて,意見表明のために実施さ   れる監査手続およびその性質を,簡単に説明する文茸が含まれていたが,スター†メソト   第30すでほ省かれている。それほつぎのようなものである。   

「独立監査人の職能は,提出された財務諸表の適正性について意見を形成する紅必要な   程度にまで,会社の会引記録と証憑書類を検査し,ある問題においてほ外部の確認を求め   かつ経営者および従楽員から補足的説明を求め,かつ考慮することである。  

全体的にいって」監査人の職能ほ,過去に発生した諸状況に対する報告に限られる。.」   

ヌデー・トメソt・第30号が,これを省略したことについてこは別段の意図があったとほ思わ   れない。ただ,スチャトメソト第30号・としてほ,財務諸表監査の基本的目的が意見表明に  

あり,その日的達成のための監査行為は−厳に認められた監査基準に準拠し宅行なわれる   ことを強く主張し,あえて個々の監査手続檻言及しなかったものと考えられる。  

〔二4〕監査人の判断と監査人の職業的資格  

スタL−t・メソト第30号の第3項ほ,監査人の判断についてつぎのようにのぺている。  

「3.一・般に認められた監査基準の逮守において,独立監査人は.,種々、の状況紅おいで琴   査人の意見の合理的な基礎として必要な監査事績の決定に,判断を行使しなければならな  

(5)乃彿,pP114(一11与,   

(7)

−Jヱ0−   筒36巻 第2号   242  

い。監査人の判断は,有資格の職業人の知的な判断(imfoImediudgbment of a qualif−  

ied pIOfessionalperson)であることが要求される。」   

このような知的判断をなしうる主体としての,監査人の職業的な資格について,ステー   トメント第30号の第4項はつぎのようにのぺている。   

「4・独立監査人に要求される職業的質格は,独立監査人として業務を行なうべく教育さ   れ,かつ資格づけられた人についてのものであって,他の専門またほ職業のために教育さ   れ,またはそれを担当する人の職業的資格を含まない。たとえば,実地棚卸に立会う場合に,  

独立監査人ほ,鑑定人,評価人またほ材料の専門家として活動することを目的としない。  

同じように,独立監査人ほ商法に.ついての一般的知識ほもって−いるけれども,法律家の資   格で活動することほ目的とせず,法律に関するすべて−の問題において1弁護士の助言に依存   す女権利がある。」   

これらの問題について,コジフィケージヨンほつぎのようにのべていた。   

「意見を目的とする職務の遂行において,独立公認会討士は,自己を会計業務およ.び監   査手続に有能なものとして示す。この職業の−・般に認められた基準ほ,技能的訓練および  

能力に,監査の実施および報告書の作成における精神的態度の独立性と正当な職業的注意   が加えられることを要求する。   

意見の表明において\独立監査人ほ重大な貰任を有する。独立監査人ほ,意見の表明を   立証するために,諸勘定の合理的な監査を行なわねばならない。独立監査人ほ意見を明確   かつ明瞭に表明しなけれはならない。独立監査人は意見を正当化する責任をもたねばなら   ないので,自己の職業的判断で適正な手続をとるのほ,独立監査人の究極的かつ不可避的   茸任である。独立監査人の判断ほ絶対に無謬であることほ期待されず,論理的に有資格の   職業人の知的な判断であることが要求される。」   

両者の闇には,大きな論点の相違はない。スデー・トメソト第30号は,コ汐フィケージヨ   ンにおける主張を整理し,かつ・をれを論理的に展開したものといえ.る。第3項ほ,監査に   おける判断の重要性を備掬する。すなわち,監査の目的ほ意見の表明であり,その意見の   合理的基礎として監査手続が実施される。この諸状況において必要な監査手続の決定紅判   断が要求される。このように重要な監査人の判断の性質を「有資格の職業人の知的判断」  

と現定し,監査人の判断に期待されるべき質的水準を明確にしたのである。   

このような判断の水準を,監査人の主体的要件の側から規定したのが第4項である。す  

なわさ,琴3勢で規定された水準の判断を行ないうる主体的要件としての,職業的資格が   

(8)

財務諸表監査匿おける独立監査人の責任と職能  

−エり∵¶  

243  

説明される。すなわち,独立監査人としでの職業的資格であって\他の織業人,たとえば   鑑定人,評価人またほ材料の専門家の飯米的資格を含まなじ、。ここ.におけるステートメソ  

t第30号の論理ほ,監査人の資格要件に−・定の限界を置くことにより,監査の限界を示そ   うとしているように思われる。なるはど,ステートメント第30ぢでほ,コジフィケーショ   ンにあったような「監査人の判断ほ絶対に無謬そあることほ期待されず」の文句が省かれ   ているが,この第4項ほ同じ趣旨が含まれて言いると考えられる。すなわち,監査人の要求   される職業的資格が眼界のあるものであれば,その結果として,監査人ほすべての事項に   っいて万能な判断をなしうるものでなく,監査において当然に問恋となる・一定領域の事項  

について論理的に信頼しうる判断を行ないうるだけである。このように監査判断にほ服罪   があり,それ故にまた監査にほ鰐艮男があるのである。  

〔 5一)不正に関する監査人の責任  

ヌテ一トメソト筍30号の第5項ほつぎのようにのべて.いる。   

「通常の監査を実施サーる場合に,独立監査人ほ不正が存在するかもしれないという可能   性をしっている。すなわち,財務諸表ほ私消およびその他の類似の不正,経営者による故   意の不正表示,またはその両方の結果として,間違った表示が行なわれるかもしれない。  

独立監査人ほ,どのような不正でも,もしもそれが十分に重大であれは,財務諸表の表示   の適正性に対する意見に影響するかもしれないということ,および−・般に認められた監査  

基準に準拠して行なわれる監査はこの可能性を考慮することを・認識する。しかしながら,  

財務諸表に対する意見の表明に関する通常の監査ほ,私消およぴその他の類似のネ正の発   見を結果す惑かもしれないが,不正の摘発卑基本的また転備別の目的としておらず,かつ   その目的のため紅依存されえない。同じように,経営者の故意の不正表示の発見ほ,通常   の監査の目的により密接紅結びついているのが筒であるけれども,こ.のような監査はその  

発見を保証するため紅依存されえない。不正摘発の失敗紅対する独立監査人の責任(その   責任は依頼人とその他のものとで相違する)ほ,このような失敗が一腰に認められた監査   基準の非準拠から明確に生じたときにのみ生じる。」   

この点は改正の主たる問題点であり,コジフィグーづ/∃∴/では.非常に簡単にしかのペら   れていなかった部分である。コジフィケ−ションのその部分ほつぎのようであった。   

「財務諸表に対する意見の表明を目的とする通常の監査は,私消およびその他の類似の  

不正の摘発をしばしば結果するけれども,そのことを目的としていないし,またその目的   

(9)

244  

第36巻 第2号   

ーー・JJクーーー  

のために依存されえない。」   

このコジフィケ−・ションの文章は,不正に関して.不明瞭な表現を用いているので,多く   の疑問を生じた。まず第1に,この表現によれば,コジフィケ−ションは,すべての監査   手続が不正摘発を目的としていないということを主張しているようにも読みとれる。しか  

し実際には,財務諸表監査の多くの手続のうちには,重大な不正摘発を目的としているも   のが含まれているので,このようなコジフィケ−・レヨンの表現ほ矛盾するのでほないかと  

いう疑問がある。つぎに,重大な不正の存否を無視して,財務諸表の適正性に対しで信頼   しうる意見を表明することは,不可能でほないかという疑問が生じる。さらに,コジフィ   ケーションほ「私消およびその他の類似の不正」という表現を用いているが,この表現は   不正の種類についてあまりに莫然している。それほすべての種類の不正を含むのか含まな   詳   いのか,また経営者の故意の不正表示を含むのか含まないのかなどの疑問を起させる。   

不正の概念についてほスデーサメント第30一号ほ,コジフィケーショソよりも範囲を拡張   している。すなわち,不正を基本的に2つの種類匿分けている。第1の種類の不正ほ,株   主,債権者およびその他の利害関係者紅対して行なわれる,経営者の故意の不正表示であ  

る。この種の不正は,従来でほ,監査における不正摘発の問題としてとりあげられていな   かった。従来,主として問題にされていたのは第二の種類の不正である。それほ何らかの   形による会社の資産の流用を目的とする不正である。これほコジフィケ−ジョンが「私消   およびその他の類似の不正」とのべていたものである。   

ステートメント第30号は,この二魔の不正のいずれをも財務諸表の適正憧匿関係づけて   いる。財務諸表を監査しているときに,監査人は不正の存在の可能性を認識しなけれほな  

らない。そして−,もし重大な不正を発見しないまま匹して−おけば,財務諸表の適正性に対   する監査人の意見ほ間違ったものになる可能性のあることを認識しなければならない。な   お∴スデー・トメソト第30号ほ,すべての重大な不正が必らずしも財務諸表に影閣しない場  

(¢)  

合をも考えて,「かもしれない」という表現を用いている。   

従って,一般紅認められた監査基準に準拠して行なわれた通常の財務諸表監査ほ,不正   の存在の可能性およびその財務諸表に対する影響の可能性を考慮しなければならないもの   である。   

このように通常の財務諸表監杏ほ不正を考慮しなければならないが,それには眼界のあ  

(6)P、LDef1iese.,OP.:Cii,p39   

(10)

財務諸表監査における独立監査人の茸任と職能   −ヱJ3J−  

245  

ることが注意されねばならない。このことは先にあげた2つの種類の不正に,同じように   あてはまることである。財務諸表監査が実施されたその結果として」私消およびその他の   類似の不正の発見が行なわれるかもしれないが,財務諸表監査はそれらの摘発を基本的な   または特別の目的としていないし,その日的のために依存されえないきされる。この表明   によって,財務諸表の多くの監査手続のうちには,藍大な私消およびその他の顆似の不正   の摘発を目的とするものが含まれることが明らかにせられると同時に,財務諸表監査紅お   いてはそれは基本的または特別の目的ではないことが明らかにせられた。   

もう1つの嘩類の不正,すなわら経営者の故意の不正表示に関しても同じ関係であるこ   とが明らかにせられる。この種の不正の発見と財務諸表監査の目的ほ密接な関連をもって   いるが,財務諸表監査の限界は先の種類の不正と同じようにあてはまるのである。   

上にのべたような財務諸表監査の基本的または.特別的目的から生ずる限界ほ,不正発見   に対する監査人の責任に限界を設定する必要を生ぜしめる。監査人の青任について現在あ   る判例では,依頼人檻対し七ほ過失の場合紅賞任があるが,第三者紅対して−ほ監査人の側  

に不正が推定されるような妥過失の場合にのみ責任があるとされている。ステートメント   第30号は,監査人の不正発見の失敗の責任を,その失敗が明白に−・般に認められた監査基  

準紅準拠しなかったことから生じた場合にのみに限っている。なお,この場合紅不正が生  

(7)  

じた領域以外の領域での監査基準の非準拠ほ,単なる過失であって,責任を生じない。ス   デートメソト第30号は,責任ほ基太的目的から生じ,またそれによって限界づけられると   考えている。そこで財務諸表に対する意見に影響する重大な不こ正発見のみが,監査人の資  

任紅含まれるのである。   

スデーt・メソト第30号は,不正発見の失敗が監査人の貴任であるか香かの決定の基準と   して,−・般に認められた監査基準の準拠という要件を設定し,監査人の責任を監査基準の  

非準拠の場合のみ紅限って.いる。この場合の非準拠は,監査人の故意または過失紅よるも   の紅限ら 

たほ不正陳述などの結果として生じた非準拠の場合には,監査人ほ依頼人に対して安住を  

(8)  

もたない。しかし,監査報告書に監査範囲の制限を明記しなけれほ,監査人ほ第三者紅対   する貴任を免れない。   

とこ.ろが,このように責任限定の基準として,−・般紅認められた監査基準を用いる点に  

(7)∫∂査d.,p.40  

(8)乃よd.,p、40   

(11)

246  

第36巻 第2号   

・−・ユノ4−  

ついては反対がある。すなわち,マクツ・ジャラフは.,一般に認められた監査基準が監査   人の貴任の限界を正確に示すはど十分ではないと主張する。そして1それは非常にニー・般的  

(91  

な方法で,監査人の仕事について期待されるペき性質と範囲を示すだけであるという。従   って1不正の問題軋ついても,一腰に認められた監査基準は監査人の責任の限界を示すた  

く10)  

めに役立つほど明細でないという。マクツ・ジャデフによれば,.ステートメン1・第30号が   一般に認められた監査基準をもらだしても,それは責任の軽減を意図する防衛的態度を示   すのみで,責任の明確化に役立窄ないのである。  

川二〕不正の問題における内部統制への依存   ステー・トメソト第30号の第6項はつぎのようにのぺている。   

「6.不正の予防と摘発ほ,旗本的紅,適当な内部統制を備えた十分な会計組織匿儲存し   なければならない。会計記録および関係費料の試査によって,内部統制の十分性と有効性  

とを評価すること,およびその他の監査手続の選択とタイミングの決定のためにこの評価   と試査に依存することについて.の,独立監査人のよく確立された実務は,意見の表明の目  

的のために十分なものであることが立証せられた。もしも独立監査人の監査の目的がすべ   での不正の摘発紅あるならば,監査人は費用が禁止的になる程度まで監査業務を拡張しな   ければならないであろう。そのようなときでさえも,監査人ほすべての種類の不正が発見   され挙こと,または不正が叫つも存在しないことを保証することはできない。何故なら   ば,脱漏取引,偽造,共謀的不正などは必らずしも発見できないからである。展好な内部   統制および誠実保険が,より経済的かつより能率的に保全を与えることが承認されてい  

る。(原文注。誠実保険の場合にほ,保全は単に発見された私消の損害賠償によってばか   りでなく,従業員に対して期待される阻止的効果によっても与えられる。しかしながら,  

誠実保陵の存在ほ,通常の監査の範囲に影響を与え.ない。)」   

この問題に関するコジフィケ−−ションの文章は,つぎのようなものであった。   

「会計記録と関係資料の試査,および適当な検討によって内部統制の十分性とその有効  

な機能とを調査したのらに,内部統制に依存するというよく確立された慣行は,意見表明   の目的のために,非常に僅かの例外を除いて,十分なものであることが立証された。」   

「展好な組織の会社では,不正の摘発は主に適当な内部統制を備えた十分な会計記録組  

(9)R.K.Mautz and H.,A.Sharaf,Ob..Cii ,pl113小  

(10)∫み多d…,p.117   

(12)

財務諸表監査における独立監査人の責任と職能   −ヱ75−  

247  

織の維持紅依存する。もしも監査人が私消およびその他類似の不正の摘発を目的とするな   らば,監査人ほ費用が禁止的に.なる程度にまで業務を拡張しなければならないであろう。  

良好な内部統制および誠実保険がずっと安価に保全を与えることが−・般に認められてい   る。」   

不正の予防および摘発ほ基本的に内部統制に依存すること,意見表明を目的とする財務   諸表監査ほ内部統制の有効性と十分性の評価に基づいて試査によって行なわれること,す   べての不正の摘発を目的とする監査手続の拡張ほ監査の費用を禁止的なものとすること,  

内部統制および誠実保険の方がずっと安価に保全を与えることなどの諸点ほ,ステートメ   ント第30号においても,コジフィケ岬ションにおけると同じよう把主張されて−いるもので   ある。   

マクツ・ジャラフによれば,スデー・トメソ†第30号ほその欝5項において,明らか紅叫   定の不正摘発に対する茸任をひきうけた点において,コジフィケ−レヨンより進歩しでい  

(11)  

るが,欠点を含んでいるといわれる。すなわち,欝6項の表現でほ「オール・オア・ナッ   シング」という考え方が示されていて,合理的ではない′といわれる。ステ−†・メソト第30   号は,すべて.の不正を追求するか,または不正を全然追求しないのかという両極端を   考え,そしてこもしもすべての不正を追求する場合にほ,費用は禁止的になって実施出来な  

いので,財務諸表監査ほ不正の摘発を基本的な目的としないという。なるほど,すべての   不正を追求するための監査の費用が禁止的になるのは正しいことであるが,監査計画を必  

らずしも費用が禁止的になる■まで拡張しなくても,藍大な不正を合理的に発見できること   を忘れている。それ故に,監査においてそれはどの費用を追加しなくても,依頼人に有用   なサ−ビスを提供できることを主張すべきであるといわれる。このようにマクツ・ジャラ   フは,スデー・トメント第30号のように,監査人の責任をできるだけ回避しようという防衛   的態度をとるよりも,むしろ依頼人紅有用なサービスの責任を積極的にひきうけるぺきで  

(12) あると主張するのである。   

ステートメント第30号の第6項で注意すべき点ほ,すべての不正の摘発を目的として,  

費用が楽止的になるはど監査手続を拡張したときでさえ・それは必らずしも決定的でない   ことを主張していることである。その例として,脱漏取乱偽造および共謀的不正の場合   があげられて:いる。しかしこの限界ほ,監査の目的から生じる限界でほなくて,監査に闇   m)j甘緑,,p‖116い  

q2)乃紘,pp‖127〜129.   

(13)

希36巻 第2号   248   ーヱJ6・−  

有の限界を意味するものと解しなければならない。   

また内部統制の保全に対する効果紅ついてほ問題はないけれども,誠実保険が監査より   より経済的かつより能率的に保全を与えるという主張についでほ反論がある。マクツ・ジ   ャラフは,誠実保険は単に損失の社会的な移転を行なうだけであって,このような社会的  

(13)  

損失を減少させるものではないことを指摘する。また保険は通常損失を十分カバ−しない  

(1・t)  

ことも指摘する。それ故に,このような主張に根拠のないものであるといわれる。   

マクツ・レヤラフの基本的立場は,社会的紅重大な損害である不正の摘発を,監査人ほ   有用な職能として:引き受けるぺきであるとすることにある。それほ通常の監査にそれほど  

(15)  

の費用を追加しなくても,社会が必要とする不正の摘発が出来るからである。   

〔7r〕不正の疑惑が生じた場合に監査人がとるべき行為    ステ−トメソト第30号の第7項ほつぎのようにのべている。   

「7・財務諸表に対する意見を目的とする独立監査人の監査が,不正の存在についての廃   惑を生ぜしめるような特別の状況を明らかにしたときは,監査人は,もしも不正が実際に   存在するならば,それが財務諸表に対する意見に影響するはど重大なものであるかどうか   を決定しなければならない。もしも独立監査人が,意見に影野するほど藍大でありうる不   正が生じたかもしれないと信じれば,藍査人は依頼人の適当な代表者と話しあって,独立   監査人またはかれの検討をうけつつ依頼人が,不正が実際に・発生したか密か,およびもし  

実際紅発生したのであれぼその金額の決定のために,必要な調査を実施するかどうか紅つ   いて了解に達しなければならない。他方紅おいて,もしも独立監査人がこのような不正が   意見虹彩響するはど重大でないと結論すれば,独立監査人ほその問題が究明されるぺきで   あるという勧告をつけて,依頼人の適当な代表者に報告しなければならない。たとえば,  

受取勘定のたらいまわしの不正,または棚卸資産の過大表示の不正は重大でありうるが,  

小額前渡基金の費い込みの不正は通常あまり歪大ではない。というのほ,基金の運営紅お   いて一定の限度が設定される傾向があるからである。」   

これに関連するコ汐フィケージヨンはつぎのようになっていた。   

「内部統制粗放の検討および試査紅基づく試査および照合による監査において,疑惑を   仕謝 ∫み紘,p.128.  

(ⅧJ∂よd.,p.129 

個乃粛.,p、129 

(14)

財務諸表監査における準立監査人の責任と職能   −−ユノ7−  

249  

生ぜしめるような状況がなければ,監査人は依頼人の組織の誠実性に依存する。疑惑を生   ぜしめるような状況が発見された場合には,監査人はこのような疑惑が正しいかどうかを   決定するために監査手続を拡張しなければならない。」   

この文章においでステートメソ†第30号ほ,コジフィケージヨンで不明瞭であった多く   の重要な点を明確にしている。   

スデー・トメソト第30号ほ,まず第1に,どのような場合に監査手続が拡張されねぼなら   ないかを明らかにする。それほ単にすべての不正の存在の疑惑が生じた場合ではなくて1   財務諸表に対する意見紅影響するはど重大な不正の存在の疑惑が生じた場合に限定され  

る。すなわち,すべての不正の存在の疑惑に対して監査手続の拡張が自動的に要求される   のではなくで,通常の財務諸表監査の基本目的の達成のための手段として必要である程度   において:のみ,不正に閲し監査手続が拡張されることが明らか紅せられる。   

っぎに,監査手続の拡張は「不正の存在について監査人の疑惑を生ぜしめるような特別   の状況」が明らかになった場合に限定される。それ故に,監査手続の拡張は,単なる虫の   しらせとか,あいまいな状況に基づいて実施されるぺきではなく,それ相当の十分な根拠   に基づいて実施されねばならないことが明らかにせられる。すなわち,監査人が不正の存   否およびその影響を決定するため紅監査手続の拡張を実施する前紅∴不正の存在に疑惑を   もつに.正当な理由となるような十分な事実的証拠が,特別の状況として発見されねばなら  

ない。   

この点に関し,デフリーズは,たとえ内部牽制を全く欠いたワンマン記帳組織でも,不   正を示す要素が他粧発見されなけれは,監査人は不正に関する疑惑を生ぜしめないという  

(1$) 例をあげている。これは監査人の不正の存在の疑惑ほ,十分な事実的証拠を含む特別の状  

況を要求することを例証したものである。   

スデー・トメソト第30号は,何が財務諸表に重大な影響を与える不正であり,何が重大で   ない不正であるか紅ついて例をあげているが,何が不正の疑惑を生ぜしめる「特別の状況  

」であるかについては例を示さなかった。それは疑惑の原因にほ多くの要素が複合されて   いるのが通常で,その例示は非常に困難であるからである。デフリ−ズは,この問題に関   する手引として,つぎに列挙した諸要素が特に結合してあらわれたとき,および貧弱な内   部会計統制または貧弱な内部牽制のいずれか,または両方を伴なっている場合が,監査人  

uO P..L.Defliese,(ゆ‖Cit.,p.41 

(15)

250−  

第36巻 欝2号   一∵ムほト∵  

(17)  

の疑惑を坐ぜしめる特別の状況であるとしている。しかし;それほまた完全なリス寸でほ  ないとことわっている。   

1‖ 原因不明の試算表の不一・致。   

2.統制勘定と補助薄との不一一・致。   

3確認により発見された原因不明の相違,またほ確認に対する相当数の無回答。   

4一.原因不明の諸営業比率の変化。   

5.重大な脱漏取引b 

ステートメント第30骨では,不正の存否およびその金額の追求のための調査は,監査人   でなくて依頼人が,実施する場合のあることが示される。基本的に,経営者は木正に射す  る責任を有する。従って,不正の存在の疑惑が生じたときほ,監査人は依頼人と話しあっ  て,依頼人に追求を任かせて,それを監査人が検討するという形をとってもよいし,ある   いほ監査人がその追求を行なってもよい。会社紅は会社自身の特殊事情があるであろうか   ら,叫がい把監査人が追求した方が合理的な結果がえられるとはいえない。そこで,この   ような選択的な措置を認めたのであろう。   

従ってまた,不正の存在の疑惑が生じたときに,監査人がそれを追求すべく自動的に監   査手続を拡張するのではなくて,そのまえに依頼人の適当な代表者と十分話しあって,ど   のような措露をとるかについて了解に達しなければならないとされる。この場合に,依頼   人の適当な代表者とは一体誰を指すのかという問題がある。社長か,取締役会カゝ,あるい  

は株主かということは,そのときどきの状勢に応じて,監査人の適当な判断によって決定   されなければならない。デフリ−ズは,諸条件を考慮したのちに,不正が行なわれた階層   よりエつ上の経営階層のものと話しあわねばならない,そしで異常な場合には棟主に報告  

(18)  

されねばならないとしている。   

さらにスデートメソt・第30号ほ,不正が財務諸表に影響するはど番犬でない場合にも,  

それほ追求されるべきであるという勧告をつけて,依頼人の嘩当な代表者に報告しなけれ  ぼならないとする。これは財務諸表監査の基本目的より生じるものではないが,職業人と  

しての正当な注意を示すものであろう。   

しかし,ステートメント第30号は,財務諸表に影響するはど重大な不正について,監査   人と依頼人との間で,とるぺき行為について了廃に達しなかった場合のことに言及してい   はでJわ紘,p.42.  

圧倒 謝♂.,p.42..   

(16)

財着諸表監査における独立監査人の責任と職能   −ヱヱタ・− 

251  

ない。もし依頼人が不正の追求のたやの監査手続の拡張を拒否すれは,当然に監査範囲の   制限として監査報告書に・明記しなけれぼならないであろう。ま牢,依頼人自身が不正の追  

求の調査を行なったときに.,監査人がその結果紅満足できなかったときも,同様であろう。  

〔8〕監査人の責任と監査の限界  

ステートメント第30号ほ,その第8項でつぎのようにのぺている。   

「8,.不正が独立監査人の監査の範囲の年度紅存在していたことが後で判明しても,その   こと自身は監査人の側の過失を意味しない。監査人ほ保険者でも保証者でもなく,もしも   l監査が−・般に認められた監査基準に準拠して,かつ正当な職業的注意を備えて実施された  

ならば,監査人ほ自己の業務に必然的匿含まれているすべての義務を果したこと紅なる。」   

コジフィケーレヨンのむすぴの文章はつぎのようになっていた。   

「いかなる意味においても,独立の公認会計士は保険者でも保証者でもなく,また全般   的鑑定人評価人,または材料の専門家として感動するにふさわしい教育および経験を草   するものではない。明らかに.監査人の職能ほ弁護士の判断を必要とする法律の問題を含  

まない。」   

コジフィケ、−ジョンほ,監査がすべての南紀おいて有効なものでないし,ま牢絶対的な  

ものでもないことを,類似する多くの職業と対比させて一説明する。Lれほ監査に固有の限   界のあることを表明したものである。ステートメソト第30号でほ.,このことは第4項の監   査人の判断および職業的資格のところでのべられて−いる。   

ステ「寸メソト第30号の欝8項は,ステ一トメソト第30号の全体的結論の部分であっ   て,これまで主張してきたものと別の問題をとりあげているのではない。、すなわら,財務   諸表監査にほ基本目的から生じる限界があり,監査自体にほ屈有の限界があり,従って不   正発見およびそれに対する監査人の費任の限界が当然に生じることを,結論的に強調した   犯すぎない。そこでステ−トメソト第30号でほ,結論として,監査は絶対紅間違いないと   いうことを保言正できるという性質のものではなく,従って監査人が一L般に認められた監査   基準に準拠し,かつ正当な職業的注意をもって監査が実施されているかぎり,監査人は貴   任を追求されないことが主張される。  

Ⅱ む  す  び  

ところで,このステ」−トメソ†・第30号は,全体としてどのように評価されるであろう   

(17)

252:  

第36巻 第2写   

−Z20−  

か。デブリ−ズはトその起草者の側として,それが財務諸表監査の目的と限界を明らかに   表明したものとして高く評価し,つぎのようにのぺている。  

「スター†メソt第3岬は,通宙の監査の目的と,通常の監査を行なう場合にひきうけ   ねばならない着任に焦点をあてている。一般に認められた監査基準ほこの目的の達成を蕊   図するものであり,もしも監査が不正の可能性と確率に注意する監査人紅よって,このよ   うな基準紅準拠して適正に行なわれれは,未摘発の重大な不正の可能性は減少される。しか  し,−叫・般公衆は,監査人が保険者またほ保証者ではないこと,および大規模な共謀,偽造   および脱漏取引の可能性があるので,マッケソン事件のような重大な不正(それほ全く発   生しそうでないが)が,監査人の責任でほなしに発生する可能性がある。   

この間題のよりよい理解は,依頼人および公衆に,通常の監査の目的と限界をしらせる   計画に.よってのみ達成せられる。この不正の問題においですぐれたステートメントが存在  する現在,一この間題を依朝人と率直虹議論するのを嫌うぺきではない。小さい会社は,し  

ばしば不正の摘発を基本的な目的とする監査を希望する。このような監査が通常の財務諸   表監査に結合できないという理由ほない。このような二重目的の監査に要する追加的費用   は,ある場合にほ少額であろう。こ.の問題は注意深く分析され,かつ依頼人と十分議論さ  

れるべきであるムしかしどのような決定が行なわれても,契約の性質とその限界ほ,文書   に作成しておくことが望ましい。   

またノ,監査人は良好な内部統制および誠実保険の利用の必要性を強調すべきである。多  

くの場合に,これらほ独立監査人の拡張された監査よりも,より少ない費鳳で不正に対す  

し191  

る予防(および損害賠償)を提供する。」   

とれに対し,マクツ・ジャラフは,このようなステートメント第30号に表明された態度   は質明ではないと主張する。従来から独立的監査が不串の摘発および予防をその目的の1   つとしてきたのに対し,ステートメン1第30号はこれに対する責任を回避しようとしてい   る。このようなことが実際にこのスデートメソトまたは契約紅よって可能かどうか分らな   いし,もし可能であったにしても,そのことから生じる利益と不利益を検討しなければ,  

(20)  

茸任の回避が果して澄明であるかどうかいえないという。  

マクツ・ジャラフは,その利益は面倒かつ負担の大きい貴任から直接紅解放されること   であるが,不利益ほそれよりもずっと重大であるという。第1紅,監査人は自分紅能力   n9)∫朗d。,pp43′−44.  

別トR.KMautz and H.A.Sharaf,Ob.ciri.,p.129.,   

(18)

財務諸表監査における独立監査人の責任と職能   TJ2J− 

253  

があり,かつサービスを提供できる領域紅おける権利を放棄しているように思われること   である。第2に,1つの職業団体としての監査人が,経済社会に有用であるサ−ゼスの提   供を搾否することである。第3に,監査人は依頼人と社会全体把対して,小さくても事業   を相当に衰退させる患を処理する有用なサービスの提供の意志のないことを強禍しつつあ   ることである。このことは職業としての監査の名声を減少させることになるといわれるの  

(21)  

である。   

この間題に関する結論として1マクツ・ジャラフは,必要なことほスデートメソト籍30   号のとった防衛的な態皮とは逆に,監査が引き受けることが出来,そして−引き受けるべき責  

(22) 任の明確かつ率直な表明を行なうことであるとする。このような観点から,マクツ・シヤ  

デフは,スデー・トメソt・第30号とは別に,責任の明確化を試みている。すなわら,マクツ  

・Vヤラフほ,「正当な監査注意(dueauditcare).」の概念を形成するために 

(如)  

実務家(prudent practitioner)」の概念を想定して,詳細な展開を試みてこいる。そして不   正に関してつぎのように結論している。なおこの境合の不正とほ,いわゆる説謬をも含む   広いものを指している。   

「独立監査人は,思慮深い実務家による正当な監査注意の行使が,通筒発見するような   不正の摘発の茸任をひきうけるぺきである。思慮深い実務家ほ.,監査の理論および実務に  

?いての知識をもち,不正の兆候を認識する能力をもら,不正の方法および摘発における   進歩におくれないことが予想される。正当な監査注意は,被監査会社の営業方法と会社お   よびその会社が属する産業に特有の慣行を熟知し,質問およびその他の望ましい方法紅よ   って,被監査会社で運営されて−いる内部統制方法を検討し,被監査会社の会計および財務   の問題に利用される知識を習得し,異常な事件および異常な状況に買任をもら,かれは重   大隋不正の存在紅ついて合理的な疑惑をはらすまで追求し,補助者の指示および補助者の  

(24)  

菜務の検討紅おいて注意をはらうことが想定される。」   

このマクツ・レヤラフの結論は,スデーt・メソト第30号の見解に類似するよう紅思われ   るかもしれないが,基本的に大きな相違がある。すなわら,スデートメソF・第30号は責任   の明確化を−・般に認められた監査基準に依存するが,マクツ・レヤラフは現在の監査基準  

肌.撒d.,pp.129〜130.  

闘.撒d..,p▲130  

㈹.肋d.,ppい131〜139巾  

朋l州南.,p..140..   

(19)

254   第36巻 第2号   

−・∫22−・  

を不十分なものとして利用せず,かれらの表現のカがより有用であるとして小る。責任の   明確化において■,どちらの見解がより有用であるかについて.ほここにと 

既にのぺたように,マクツ・レヤラフほ,監査における貴任の明確化自体に反対してい   るのではない。しかし,マクツ・ジャラフがステ∵−トメソト第30号に強く反対しているの  

は,それが監査人の責任の軽減または回避を意図する,あまりにも防衛的な態度をとって   いる点である。ステートメント第30号とマタツ・ジャラフとの見解の相違は,かれらの監   査の目的観が生じたものといえ.る。すなわち,スター・トメソト第30号が,財務諸表監査を   抽象的にとりあげ,その基本目的より責任を限定しようという方法をとったのに対し,マ   タツ・ジャデフほ,監査の目的を社会的制度的に規定し,責任を別の論理で限定してい   る。 

なるはど,ステートメソ1第30号は,財務藷表監査における監査人の責任と職能を,と   くに不正の問題に関して,明確にする点において,コジフィグーレヨンより相当進んだも   のであることは認めなければならない。しかし,マクツ・ジャラフのような反論に接する   とき,ステートメソt・第30号は,必らずしも十分満足すべき解決をえ.たものとほいえない   ようである。すなわら,スデー・トメソト第30号がとりあげた2つの問題はり1さらに検討す   べき闇題として,なお残されていると考えねばならない。第1の問題である,財務諸表監   査の目的をどのよう紅理解せねほならないかについては,監査制度の発展に伴なって一企業  

の利害関係者が,監査に何を要求しつつあるかを検討するとともにり会計および監査の理  

論と技術がこれらの要求にどこまで応えられるものかということを考察しなけれぼならな  

い。また,・第2の監査人の責任の明確化の問題については,責任の限界をより有効に規定  

することのできる概念または基準の形成に向って努力されねばならない。   

参照

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