• 検索結果がありません。

イ ンセ ンテ ィブの歯止め効果 と企業内配置転換

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "イ ンセ ンテ ィブの歯止め効果 と企業内配置転換"

Copied!
27
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

イ ンセ ンテ ィブの歯止め効果 と企業内配置転換

は じめに

1. 1

期の報酬 システム ・モデル

2.

動学的報酬 システム ・モデル

おわ りに

は じめに

日本の企業組織 には配置転換 と称す る労務管理制度がある。 この制度が存在 す る根拠 は次のよ うに説明されている。組織構成員 に, さまざまな職場でそれ ぞれ異 なる職場訓練を課す ことで,組織を全体 としてみる観点を養成 し,長期 的な意味の調整 コス トを節約す る

.

̲さらには,未成熟な労働市場 に由来す る組 織構成員の固定化を企業内労働移動で肩代わ りす ることで人事の停滞か らくる モラールの低下を防止す る。

しか し,他方で は,配置転換 の制度 は特殊人的資本を犠牲 にす る一面を持

特定の職場での長期訓練によ り習得 された特殊技能 は新 しい職場では十分 に活 用され ることはない。

本稿では配置転換の もつ人事の停滞 とモラールの低下を防止す る順機能 と配 置転換 にともな う特殊人的資本の活用機会の喪失 とい う逆機能の関係をみてい

およそ長期雇用を前提 と している日本企業では,同一職種,同一部署での長

〔 1 2 5 〕

(2)

1 26 44 1 ・2

期間の勤務 はモラールの低下を招 くとい う認識が早 くか らなされてきた。長期 間,同一職種,同一部署での勤務を続けることが前提 となるとき,従業員は, 昇給,昇進の査定のため,毎期業績を伸ば し続けなければな らないという心理 的抑圧を受 ける。 この心理的抑圧を回避ない し軽減す るため,毎期の目標値を 幾分低 く設定 した上で,それを確実に達成 してい くことで見かけ上業績を上げ 続けていることをア ピールする傾向を もっ このコン トロールされた生産努力 がいわゆるイ ンセ ンティブの歯止 め効果

( rat chetef f ect )

と呼ばれるもので ある。

これは,中央集権的計画経済でみ られた典型的現象で もある。国営企業は政 府に申請 した計画値を達成することで基本給の他 にボーナスをえることができ た。そこで,国営企業は,毎期,求‑ナスを獲得できるよう当該企業の生産能 力を下回る計画値を申請 しそれを確実に達成す ることで,毎期のボーナスを保 証 しようとした。

中央集権的計画経済でみ られたイ ンセ ンティブの歯止め効果 も長期雇用慣行 にともなうインセ ンティブの歯止め効果 も,基本的には,報酬 システムが前期 の計画の実現値を もとに更新 され ることに原因がある。すなわち,当期に,高 い実現値を示す ことで自己の生産能力の情報を公開 して しまうと,次期以降, 報酬 システムの設定者,すなわち,本社ない し政府は生産能力に見合 う計画値 杏,計画の執行者,すなわち,事業部管理者ない し国営企業に要求 して くるこ

とになる。 これは,極端な場合,計画の執行者の次期以降の利益を失わせて し まうことに もつなが る したがって,計画の執行者 は自己の生産能力の情報を 報酬 システムの設定者に推測 されないよう生産努力を抑えがちとなる。

配置転換

( j obt rans f ers )はこの問題を解決 して くれ る。配置転換の持っ

重要な機能の一つは,計画の執行者が,例えば,国営企業の経営者ない し事業 部管理者が, もはや従前の生産設備の もとで生産活動を行わな くてすむ ことに ある。計画の執行者が,報酬 システムの設定者,例えば,政府ないし本社 と配 置転換の契約を結 び,したが って,前 もって,配置転換の予定を知 っていれば, 現行部門の生産設備 の生産性 を隠すイ ンセ ンテ ィブはな くな る当該期 に

(3)

イ ンセ ンテ ィブの歯止 め効果 と企業内配置転換 127

高い生産性をあげ,図 らず も当該設備の高生産性の情報を公開 した として も, 次期以降に異なる部門 に配置転換 となれば,従前の生産性を基準 とした報酬 シ ステムは もはや適用 され ることがな くなるか らである。か くして,配置転換 は こうしたイ ンセ ンティブの歯止 め効果を避 ける有効な労務管理制度 といえる。

ただ し, この制度 は,特定の職場で長期訓練 によ り習得 された特殊人的資本

( j ob‑ s pe c i f i chumamc api t a

l)の活用機会を喪失 して しまう欠点がある。

同一部署 に長期間滞留す ることの利点 はおよそ次のような ものであろう 定の職場での長期訓練 はさまざまな技能の習得を もた らす。その一部 は他の部 署で も有効な一般技能であるか もしれない し,あるいは他の部署では役 に立た ない特殊技能であるか もしれない。他の部署‑配置転換 させ られることはこの 後者の特殊技能を無駄 に して しまうことと理解 される この意味で,配置転換

は避 けるべ き労務管理制度 といえ るか もしれない。

本稿では配置転換の もつイ ンセ ンテ ィブの歯止め効果を防止す る順機能 と配 置転換 にともな う特殊人的資本の活用機会を喪失 させ る逆機能の関係をみてい そこでまず,第

1

節では

1

期間のプ リンシパル ・エージェンシー ・モデル を考える。 プ リンシパル とエ‑ ジェン トとの間に情報の非対称性が存在す るこ とを仮定 し,プ リンシパルが どのように最適な報酬 システムをデザイ ンす るの かを考察す るO さらに,第

2

節では

2

期間のプ リンシパル ・エージェンシー ・ モデルを考える。エージェン トは 2期間を考慮 した動学的視点か ら行動を選択 す ると仮定 し,プ リンシパルはどのよ うに最適 な動学的報酬 システムをデザイ ンす るのかを考察す るここで は,まず,エ‑ ジェン トが

2

期間を考慮 した行 動の選択を行 うため,イ ンセ ンティブの歯止め効果が生 じることを説明す る。

そ して, このイ ンセ ンテ ィブの歯止め効果を回避す るシステムとして歯止め価 格および歯止め価格の欠点を補 う配置転換が分析 され る。そ して最後 に,歯止

め価格 と配置転換の比較が考察 されよ う

(4)

128 商 学 討 究 第 4 4 巻 第 1・2 号

1. 1

期 の報酬 システム ・モデル

インセ ンティブの歯止め効果 と配置転換 との関係を分析す る前段階 として, 1期間のプ リンシパル ・エージェンシー ・モデルを考え る。 プ リンシパル ・ エージェンシー関係 として,事業部制組織における本社 と事業部 との関係を設 定す る。すなわち,プ リンシパルは本社であ り,エージェン トは事業部である。

組織は本社 と互いに独立な同質的な

2

つの事業部か ら構成され,さらに各事業 部 は

1

人の事業部管理者 と同質的な

n

人里従業員か ら成 る

1

つの小集団か ら構 成 されるとする (

1.1)

。また,本社 は リスク中立的であるとす る。

図 1.1 :事業部制組織

事業部 と本社間で合意 された 1期の生産計画モデルを考え る。事業部は期首 に生産計画

y

を本社 との問で合意 し,事業部固有の生産性の下で,事業部管理 者が完全 にコン トロールできる

n

人の従業員 (小集団)の労働力を投入 し生産 を行い,労働の生産性に応 じた純報酬を得 るとす る。 このとき事業部の生産活 動 は次の費用構造を持っ とす る

(5)

イ ンセ ンテ ィブの歯止 め効果 と企業 内配置転換 129 C‑

C(A

e)

e

:小集団の努力 レベル

β:

事業部の生産性パ ラメータ

c e < 0

,

cc <0 .

本社 と事業部管理者 は費用

C

を共通に観察できる。 しか し,小集団の努力 レ ベル

e

,事業部の生産性

β

は事業部管理者および小集団の成員 しか観察で きな いとす る。簡単化のため, βは

,β‑β L (

低生産性 レベル),

BH (

高生産性 レベ ル)の 2つの値

びL<BH)

しかとらないとす る。また,本社 は

β

の値 は観察で きないが,事前 に,

βH

の生 じる確率

p‑pr( β

BH)

を知 っている。さらに

,e

,e‑eL (

低努力 レベル),eH(高努力 レベル)の

2

つの値

( eL<eH)

しか と らないとす る. したが って,

C:

L

,

BH ) × ( e L , e H )

‑ Rのように費用の実現 値を与えることがで きる。しか も,それ らの関係 は次のようであると仮定す る。

C

(

βH,eH) < C(

βH

, eL)‑

C(

βL,eH)<

C(

βL ,eL ) <y‑r( C(

βL

,e L)).

c WL ,e L )<y‑r( C( β L,eL)

は事業部が低生産性で しか も小集団が低努力 レ ベルで も,本社 にとって,生産を行 う価値があることを保証 している。

事業部 は,本社 との間で,生産計画

yを合意す るさい,事業部予算

bを本 社 に請求す る。本社 はこの情報 に基づ き,予算

b‑㍗+

Cを事業部 に一括移転 す る。本社は,期末に観察される費用

C

と同額を支払 うと同時に期末に観察 さ れ る費用

C

で測定 した生産性に見合 う純報酬

r‑㍗( C)

を期首 に支払 うすな わち,低 コス ト (高生産性)事業部 には低費用 と高純報酬を高 コス ト (低生産 性)事業部には高費用 と低純朝潮"を移転す る。 したが って,事業部の効用は純 報酬 と投入努力 レベルで決まり,さらにそれ らは分離可能 とする。

(6)

130 商 学 討 究 第 4 4 巻 第 1・2 号 UD‑r( C)‑u( e)

r

:事業部の純報酬 u:従業員の非効用

u' > 0 ,L L "> O r c ≦ 0,r c c ≧0.

他方,本社 は各事業部 に予算

b‑r+

Cを一括移転 した後 の残余利益請求権 を もつ とす る。 したが って,本社 の効用 は次のよ うに仮定 され る (1事業部の みを考え る)

UHQ‑y‑( r( C)

+C).

まず,完全情報 の もとでの本社 の行動 を考察す る。 この とき,本社 は小集団 の努力 レベル

e

を観察で きるので,努力 レベルに見合 う純報酬 を準備す ること が可能 とな る。 したが って,報酬 システムは

r‑㍗( ど)

e

の関数 とな り,本 社 の行動 は次のよ うに表 され る。

max

r

,e y‑i r( e)+

C(β

,e)) S . t . r( ど)一弘( ど) ≧0.

この最大化問題か ら一階の条件 u'

‑c e

を得 る。 しか し,先 に仮定 したよ うに, 本社が費用

C

のみ しか観察で きないときどのよ うに行動す るのであろ うか。

本社 は,情報の非対称性が生 じるとき,報酬 システムを工夫す ることで事業 部か ら望 ま しい生産性 (費用

C)

を引 き出そ うとす る。すなわち,望 ま しい実 現費用

C

の導 出のため,特定のイ ンセ ンテ ィブ ・コンパテ ィ ビリテ ィ制約を報 酬 システムに課そ うとす る。 しか し,それ らのイ ンセ ンテ ィブ ・コンパテ ィビ

リティ制約 を満たす報酬 システムは,同時に,事業部の個人合理制の制約を満 た さなければな らない。か くして,本社 は,事業部管理者の個人合理性 の制約

(7)

インセンティブの歯止め効果 と企業内配置転換

181

の もとで,どのようなイ ンセ ンティブ ・コンパティビリティ制約を選択す るの か,すなわち,どのような報酬 システムを選択す るのかを問題 としなければな

らない。

そこでまず,事業部管理者の個人合理性の制約をみてい くことにする。個人 合理性の制約の最低必要な組み合わせ としては

, (1)

,

(2)

式のいずれかが, および,

(3), (4)

式のいずれかが同時に満たされなければな らない。すな わち,低生産性および高生産性の事業部のいずれ もが低 レベルあるいは高 レベ ルの努力投入を実行す るさい,その少な くとも一方で,非負の効用が保証 され ねばな らない ことを意味 している。(ただ し

, (3)

式が成 り立っ と

(1) ,(2)

式が成 り立ち,

(4)

式が成 り立っ と (

2

)式が成 り立っ。)

r( C ( βH ,e H ) )‑a( e H ) ≧ 0 0r

r ( C ( βH ,eL ) )‑a( eL ) ≧ 0

r( C( β L ,e H ) )‑a( e H ) ≧ 0 0r

r ( C ( βL ,eL ) )‑a( eL ) ≧0 .

(1)

(2)

(3)

(4)

これ らの個人合理性の制約の もとで,望ま しい生産性 (費用

C)

の導出のた め,特定のイ ンセ ンティブ ・コンパティビリティ制約を覇滑川システムに課そう とす る。そのイ ンセ ンティブ ・コンパティビリティ制約の最低必要な組み合わ せ としては,

(5), (6)

式のいずれかが,および

, (7), (8)

式のいずれか が同時に満たされなければな らない。すなわち,低生産性および高生産性の事 業部のいずれ もが低 レベルあるいは高 レベルの努力投入のどち らか一方を選択 す るよう強制 されることを意味 している。

(8)

1 32 44 1 ・2 号 r(

C

( βH,eH))‑a( eH)≧r( C( β

H

,eL) )‑a( eL ) Or

r (

C

( βH,eL ))‑a( eL )≧r(

C

( βH,eH))‑a( eH)

r( C( β L ,eH))‑a( eH)≧r(

C

( βL ,eL))‑a( eL) ( ) r

r ( C( β L ,eL ))‑a( eL )≧r(

C

( βL,eH) )‑a( eH) .

(5)

(6)

(7)

(8)

以上のイ ンセ ンティブ ・コンパティビリティ制約 と個人合理性制約の下で, 本社 は期待利益 を最大化す る行動 を とる。ただ し

,r( cl )…r( C(

βH

,eH)),r

( C2 ) …r(

C(βH

,eL))‑r(

C

( βL

,eH))

, r( C3 )…r(

C

( βL , eL )),e

l

,e 2 … ∈ l eL

,

e 〟)

と定義する。

ma r ( c x l ) , r ( C2 ), r ( C i ) p b‑ ( r( C(

β

H ,el ) )+

C(

βH,e l))]

+( 1‑p)b, ‑ l r(

C

( βL ,e2 ))+

C(

βL ,e2 )) ] (9)

S . t . ( 1)〜 (8) .

先に,インセ ンティブ ・コンパティビリティ制約 と個人合理性制約の組み合 わせの可能性を述べたが,次に, これ らの制約を満たす報酬 システム

r( C)

可能性を考えることで,最大化問題 (

9

)を解 くことにす る。ただ しこの とき, 簡単化のため, (

4

)式 は常に等号で満たされ るとす る

すなわち,留保効用 条件 は

r( C3 )‑Z L( eL )

とす る。また,報酬tシステムは

r( c l ) ≧r( C2 )≧r( C3 )‑a

( e L )

を満た し,しか も,厳密な不等号が成 り立っ とき

, r( ci )‑r( ci .1) ≧u( eH) 一弘( e

) ,i ‑

1, 2, 3を仮定す る。

インセ ンティブ ・コンパティビリティ制約 と個人合理性制約の組み合わせの 可能性か ら次の

4

つの報酬 システム

r( C)

を得 ることがで きる。

1

)報酬 システム

3

:イ ンセ ンティブ ・コンパティビリティ制約

(5), (7)

および個人合理性の制約

(1)

,

(3)

よ り

, r( cl )>r( C2 )>r( C3 )‑a( eL )

(9)

インセンティブの歯止め効果 と企業内配置転換

13 3

幸紺 Hシステムを得 る

2

)報酬 システム

2

:インセ ンティブ ・コンパティビリティ制約

(5),(8)

および個人合理性の制約

(1), (4)

よ り

,㍗( cl )>r( C2 )‑㍗( C3 ) ‑ α( eェ )

報酬 システムを得 る

3

)報酬 システム

1

:インセ ンティブ ・コンパティビリティ制約

(6), (7)

および個人合理性の制約

(2), (3)

よ り

,㍗( c l )‑㍗( C2 )>r( C3 )‑α( eェ )

報酬 システムを得 る

4

)報酬 システム 0 :イ ンセ ンティブ ・コンパティビリティ制約

(6),(8)

および個人合理性の制約

(2)

,

(4)

よ り

,r( c l )‑r( C2 )‑r ( C3 )‑a( eL )

報酬lシステムを得 る。

ただ し,報酬 システム 0については,比較の簡単化のためおよび事業部管理 者が報酬 システムに何等影響 されないこと,すなわち,高い努力 レベル も低い 努力 レベル も自由に選択可能な報酬 システム (管理が存在 しないこと)を仮定

したいので

,r( cl )‑r( C2 )‑r( C3 )‑Z L( eH)

と設定す るQ

これ らの報酬 システム

0‑ 3

を整理すると次のように表せ る。

r l =r( cl )‑E ( r2 ,r2 + ( a( eH)‑a( eL)H r2=r( C2 )‑E i u( eL),a( eH))

r3…r( C3 )‑a( eL),

ただ し,

c l ≡C( β

H

,e H)

C2 …C

(

βH,eL)‑

C(

βL,eH)

C3 … C

(

β 上 ,e エ)

ci .I‑C

1.

≧r( cz ・ )‑r( c i .

I

)

,

i ‑ 1

,

2

,

3.

ci.ll C I ・ ≧r ( cl )‑r( cz .I ) ,i‑

1, 2, 3が仮定 されているが, この仮定 は, 本社 にとって,費用の節約分

c i .1 ‑ C

z・は報酬匠)支払増加分

r( ci )‑r ( ci.I )

(10)

1 3 4 商 学 討 究 第 4 4 巻 第 1・2 号

よりも大 きくなければな らないことを意味する。

報酬Iシステムは

r( C. )≧r( C2 )≧r( C3 ) ‑a( eL)

を満た し, しか も,厳密な不 等号が成 り立っ とき

, r( ci )‑r( c t l .1 )≧z L( eH)‑L L ( eL ) ,i ‑

1,

2

,

3

を仮定 しているので

, r

L

…L L( e

L)

, r M…u( eH), rH…r2 + ( a( eH)‑a( e

L

) ) ‑ 2r M ‑ rL

と定義すれば,朝潮Hシステム

0‑ 4

は次のように簡単 に表記できる(

1.1)

.

1.1

:報酬 システム分類

報酬 システム 0 報酬 システム 1 報酬 システム 2 報酬 システム 3

C1 r〟 r〟 r〟 r 〟 ‑2 r 〟‑r

C2 r M rM

TIL

r M

宰相 ‑1システム 0はいわゆる管理が存在 しない場合である。すなわち,費用の 節約の程度 (努力 レベル) とは関係な く報酬

r

〟を支払 う この とき,事業部

rM‑a(

e)が最大 になる努力 レベル eLを選択す るo報酬 システム 1は低生 産性事業部のみが高い努力を供給するよう動機付けられ る。 この報酬 システム の もとでは,低生産性の事業部 も高生産性の事業部 も費用の実現値 は

C2

であ り,本社には事業部の生産性

β

の真の値が観察で きないのが特徴である。報酬 システム

2

は高生産性事業部のみが高い努力を供給するよう動機付け られる。

ここでは,本社 は各事業部の生産性

β

の真の値を知 ることがで きる。高生産性 (/低生産性)の事業部 はシグナル

cl(/ C3)

を発するか らである。報酬 シス テム

3

は低生産性,高生産性の事業部 とも高い努力を供給す るよう動機付け ら れ る。本社 は, このとき,各事業部の生産性

β

の真の値を知 ることができる。

高生産性 (/低生産性)の事業部 はシグナル

cl (/ C2)

を発す るか らである。

したが って,それぞれの報酬 システムの もとで供給 される努力 レベルは次のよ うに要約で きる (表 1

.2)

(11)

イ ンセ ンテ ィブの歯止 め効果 と企業 内配置転換 1 35

1.2 :報酬 システム と努力 レベル

産性

β上 β〟

報 酬 シ ス テ ム 0 eL (C3) eL (C2)

報 酬 シ ス テ ム 1 e〟 (C2) eL (C2)

報 酬 シ ス テ ム 2 eL (

C

3

)

e 〟 (cl)

報 酬 シ ス テ ム 3 e〟 (C2) eH (C1)

括弧内は実現費用

最終的に,最大化問題 (

9

)を解 くため,それぞれの報酬 システムの もとで の本社の期待利益を導 出 し比較す ることにす る。まず,報酬 システム 0‑ 3の

もとでの本社の期待利益 は次のように表 され る。

7 T o

Pb,‑1

C2 +rM) ] +

(

1‑p)

b,‑(

C3 +rMI ]

7 T l ‑

Pb,‑(

C2 +rM) ]+( 1‑p)

b‑(

C2+rMI ] 7 T 2‑P

b‑i

cl +rMl ]+( 1‑p)

b,‑(

C3+rL i ]

7 T3 ‑P

b,‑i

c l + 2 rM‑rL) ] + ( 1‑ p)

b,‑(

C2 +rM) ].

管理が存在 しない覇滑川システム 0の もとでの本社期待利益 7Toは,管理が存 在す る他の報酬 システム 1‑ 3の もとでの本社 の期待利益

7 Tl , 7 T2 , 7 T3

と比較 した とき7To≦7Tl

, 7 T2 , 7 T3

であることがわか るさ らに,管理が存在す る報酬 システム

1‑ 3

の比較では次の ことがいえ る

。p‑pr(

β‑PH)に関わ らず,7

T l

<7 T3

が成 り立っので

, 7 T

2と

7 T3

の大小関係で最適な報酬 システムが決 まること がわか る。そ して, その大小関係 は 1

≧p ≧p*‑1‑( r M‑r L )/ ( C3‑C2 )

の と

7 T2

≧7T3であ り

,0 ≦p<p*

の とき

7 T2<7 T 3

となる (図 1

.2)

したが って,本社の観点か らすれば,最適なイ ンセ ンティブ ・システムとし て,潜在的に報酬 システム

2

および

3

が適当であることがわか る。 しか もその 採用のされ方 は次のようである。

(12)

136 商 学 討 究 第 4 4 巻 第 1・2 号

1.2

:報酬 システム と期待利益

命題 1.1 ・.1期間,同質的な

2

事業部モデルにおいて

,p<p*

で報酬 シス テム

3

を採用す る本社の期待利益を最大化 し, また

,p* ≦p

で報酬 システム

2

を採用す る本社の期待利益を最大化す る

p*

∈(0,1)‑1‑(r

M

‑r

L

)/ (

C3‑ C2)

が存在す る。

命題

1.1

は先 にみた報酬 システム

0‑ 3

の比較および図 1

.2

より明 らかで あ る。 また,命題 1.1の意 味は,低生産性の事業部の割合

1‑p

が大 きい と き報酬 システム

3

が最適で,逆 に,高生産性の事業部の割合

p

が大 きい とき報 酬 システム

2

が最適であることを示 している。次にこの

1

期間の報酬 システム

2

期間モデルまで拡張 した場合を検討 してみ る。

(13)

イ ンセ ンティブの歯止め効果 と企業内配置転換 1 37

2.

動学的報酬 システム ・モデル

ここでは,前節でみた

1

期間モデルを

2

期間にまで拡張 した

2

期間モデルを 考察す る。事業部制組織は本社 と同質的な

2

事業部か らな り,各事業部は

1

の事業部管理者 と

n

人の同質的従業員か ら成 る 1つの小集団か ら構成 され る。

本社 は リスク中立的であるとす る。事業部 はそれぞれの期首に本社 との間で生 産計画

yを合意 し,事業部固有の生産性 β

の下で,小集団の努力

e

を投入 し生 産を行 う このとき事業部 は費用構造

C‑ C ( β ,ど)

を持っ。また,本社 と事業 部管理者 は費用

C

を共通 に観察で き, しか し,小集団の努力 レベル

e

,事業部 の生産性

β

は事業部管理者および小集団の成員 しか観察できないとす る。 した が って,本社 は事業部を費用

C

で評価 し純報酬

r‑㍗( C )

を支払 う ただ し, 費用 と純報酬 は事業部予算

b‑r+

Cとして期首に本社か ら事業部 に一括移転 さ れる。 このとき,

2

期の割引率はゼ ロとす る。また,

1

期 に明 らかにされた事 業部の生産性の情報 βは

2

期 にも踏襲 され

2

期の報酬 システムを性格づけると す る。さらに,

2

期に配置転換が行われるとすれば,その対象者 は事業部管理 者のみであ り,両事業部間で これを行 うものとす る。ただ し

, 2

期に配置転換 がないとすれば,事業部管理者の事業部の管理の習熟度が増 し生産性が向上す る。すなわち,費用の節約 はαC

,α <1

となるとす る。他方,

2

期に配置転換 があるとすれば,事業部の生産性は変化 しない。すなわち,費用の節約 は

α

C,

α‑1

となるとす る ただ し,配置転換が行われ るとき,

1

期の期首で事業部

管理者 と契約が交 されているとす る。 この とき,配置転換をともなわない 2期 の純報酬 は習熟度を考慮 した費用

αC

を基準 に

r( αC)で支払われ ることに注

意すべ きである。

本社 は

1

期の時点で,

2

期の報酬 システムにコ ミッ トす ることができないと する。本社は,

2

期の期首で,事業部の

1

期の費用情報を もとに

2

期の最適報 酬 システムを決定す る。他方,事業部は,事業部の真の生産性を発揮す ること で 1期に確実に得 られる純報酬の大 きさと,逆に,事業部の真の生産性を発揮 す ることで (事業部の生産性の真の情報を知 らせ ることで)

2

期 に失 うか もし

(14)

1 38 商 学 討 究 第 44 巻 第 1・2 号

れない純報酬の大 きさを勘案す る。本社は,事業部が このような動学的視点か ら行動 していることを知 っている。 したが って,本社 は,事業部の動学的視点 か らの行動を前提に, 1期の報酬 システムを決定 しなければな らない。

か くして,本社の戦略的選択問題 は,

2

期の報酬 システムは

1

期で得 られた 事業部の生産性の情報を もとにどのように決定すべ きかであり,また,事業部 の動学的視点か らの行動を管理す るため 1期の報酬 システムをどのように決定 すべ きかであ り,さらにまた,事業部管理者の事業部管理の習熟度が 2期 日の 生産性 に影響することか ら,

2

期に

1

期 と同一事業部に同一事業部管理者を雇 用すべ きかあるいは両事業部間で配置転換を行 うべ きかを決定す ることであ

ここでは, これ らの3つの問題を考え る。ただ しこの とき, 2つの事業部 に対す る本社のイ ンセ ンティブ問題 は同一であ り, しか も,本社の もとで 2つ の事業部が活動 している状況では,一方の事業部管理者が他の事業部に配置転 換 されるともう一方の事業部管理者が当該事業部に配置転換 されることを意味 す る。 したが って, ここでの分析は本社の もとに 1事業部が存在す る問題 と同 じであ り,そ して,配置転換の意思決定問題 は

α‑1,α<1

の選択問題 と置 き 換えることができる

以上のことを前提に, しか も,

1

期間モデルの報酬 システムを基準に

2

期間 モデルの報酬 システムを検討する。そ して,

2

期間モデルの報酬 システムのパ ター ンとして次の

4

つを考える

1

期に明 らかにされた事業部の生産性の情報

β

2

期に踏襲 され

2

期の報酬 システムを性格づけると仮定する。か くして, 1期に事業部の生産性の情報が 明 らかになることは

2

期の報酬 システムを決定す ることで もある。そこで,

1

期に事業部の生産性の情報が明 らかになるかどうかを基準 に 2期間モデルの報 酬 システムを整理す ることにす る。だだ し,低生産性の事業部を基準にこのこ

とを考察す る

1期に,低生産性の事業部の生産活動か ら各事業部の真の生産性が明 らかに なるか どうかで報酬 システムを分類す る。1期間モデルの費用構造

C‑

C(

β, e)

か ら明 らかなよ うに,低生産性 の事業部の真の生産性の情報が公開 され るの

(15)

インセンティブの歯止め効果 と企業内配置転換

1 3 9

は,低生産性の事業部が低努力 レベル

e‑eL

を選択 したときである。高生産性 の事業部は費用

C3‑C ( βL ,eL )

を実現す ることはないか らである.そ して, この費用を低生産性の事業部 に実現させ る報酬 システムは宰相 ItシステムⅡ (1 期モデルの報酬 システム 2に相当する)である。 この意味で この報掛目システム

はセパ レーティング ・システムである

他の報酬 システム Ⅰ,Ⅲ (それぞれ,1期モデルの報酬 システム 1, 3に相 当す る)では,低生産性の事業部 は

1

期で

e

e

Hを選択 し,費用

C2 ‑CぴL

,

e H )( ‑ C( βH ,e L))

を実現す る。 したが って,実現費用を観察す ることか らで

は事業部の生産性を特定化す ることはできない。

そこで,低生産性の事業部が費用

C2

を実現す るこれ らの報酬 システムの も とで,高生産性の事業部の努力 レベルの選択行動を観察 してみる。報酬 シスチ ム Ⅰで は,高生産性の事業部 は

e

e

Lを選択 し費用

C 2 ‑C ( βH ,eL )( ‑COL

,

e H ) )

を実現す る。それゆえ, この実現費用を観察す ることか らでは事業部の 真の生産性を特定化す ることはできない。 この意味で,報酬 システム Ⅰはプー リング ・システムである。他方,報酬 システムⅢの もとでは,高生産性の事業 部 は

e

e

Hを選択 し費用

C . ‑CWH,eH )

を実現す る。か くして, この実現費 用の観察か ら事業部の真の生産性を知 ることができる。 この意味で,報酬 シス テムⅢはセパ レーティング ・システムである ただ し,報酬 システム Ⅰ,Ⅲに おいて費用

c

lが実現 されたときの純朝滑

Hr( cl )‑r p ,rR

は,

2

期間モデルの 動学的視点か らの均衡条件を満たすよう修正 されねばな らない。 この ことにつ

いては後 に考察す る。

以上の

3

つのケースは配置転換を考慮 しない場合である。そ もそ も配置転換 の目的はイ ンセ ンティブの歯止め効果を防止す ることにある そこで,先の

3

つの報酬 システムの うち,特に,歯止め効果の防止機能を持つ報酬 システム

との比較で配置転換を ともな う報酬 システムⅣ (

1

期モデルの報酬 システム

3

に相当す る)を考える ここに

2

期間モデルの

1

期の報酬 システムを次のよう

4

分類できる (

2.1)

0

(16)

140 商 学 討 究 第 44 巻 第 1・2 号

2.1:2

期間モデルの

1

期の報酬 システム分類

報酬

シス

テム

実 現 費 用 配置転 換 無 し 配 置転換有 り

ケース 1 ケース 2 ケース 3 ケース 4

seprat i ng pool i ng separat i ng seprat i ng 報酬 システム Ⅱ 報酬 システム Ⅰ 報酬 システム Ⅲ 報酬 システム

C1 r〟 r

f,

rR r〟

C2 rL r〟 r〟 r〟

C3 rL rL rL rL

r

, :

pool i ngpr l Ce

r

R :

r at c he tpr i c e

ケース 1 :低生産性 の事業部が

c l ‑C(

βL

,e L )

を選択す る均衡である。低生 産性の事業部βェは, 1期で真の生産性の情報β‑βを公開するよ うな努力 レベ

e

e

Lを選択す るそ して,朝潮flシステムⅡは低生産性の事業部にこの選択 を実現 させ る報酬 システムである。他方,高生産性の事業部は,いかなる場合 も,費用

C3‑ C

(

βェ, eエ )

を実現す ることはない。 したが って,本社 は当該事 業部の真の生産性を知 ることがで きる。 しか も, 1期に明 らかにされた事業部 の生産性の情報 は

2

期 に踏襲 され

2

期の報酬 システムを性格づ けるOか くし て,本社は,

2

期において

,r( α・

C(β

,e H ) )‑ a( e H ) ‑0 ,β

u 3 L

,

GH )

となる よう報酬 システムを設定す る (

2.2)

0

2.2

:報酬 システム Ⅱと事業部予算

期間

第 1期 2

PI . β

II

cl( α C1) C 1 +r〃 αc ュ+r〟

C2( αC2 ) C2 +r⊥ aC2 +rM aC2 +rL

括弧 内は 2 期の実現費用

この報酬 システムの もとで各事業部に選択 され る努力 レベルは,低生産性の 事業部では

1

期で

e‑e L, 2

期で

e

e

Hであり,高生産性の事業部では 1

, 2

期 とも

e‑e H

である (

2.3)

。また, この ときの本社の期待利益 7tsは次の ように表 され る。

(17)

イ ンセ ンテ ィブの歯止 め効果 と企業 内配 置転換 1 41

2.3

:報酬 システム Ⅱと努力 レベル

期間

第 1期 2

βエ eL ( C3) el I ( a c2)

括弧内は実現費用

7 T s ‑P[ bJ‑ (c l +r M)) +也‑ ( acl +r M))]

+( 1‑ p) [b, ‑ ( C 3 + r L )) +

b,

( α C 2 +r M)) ] .

ケース2,3 I.低生産性の事業部が

C2‑C ( β L , eH)

を選択す る均衡である。低 生産性の事業部βェは,

1

期で真の生産性の情報を結果 と して非公開にす るよ うな行動を選択す る すなわち,努力 レベル

e

e

〃をとる。そ して,報酬 シス テム Ⅰ,Ⅲは低生産性の事業部にこの選択を実現 させ る報酬 システムである。

この とき,高生産性の事業部が費用

cl‑C ( βH , e H)

を実現す るのか,ある いは

, C2‑C ( βH, eL)

を実現す るのかで,当該事業部の真の生産性を判定でき るかどうかが決まる

したが って,本社 は高生産性の事業部に費用

c l ‑C

(βH,

e〟)

を実現 させ る報酬 システムを準備す るのか,あるいは,費用

C2‑C( β

e ェ)

を実現 させ る報酬 システムを準備す るのかの選択を迫 られる。 ここに,高 生産性の事業部に費用

C . ‑C

(βH

, eH)

を選択 させ る宰相 "システムを報酬lシス テムⅢとし, さらに費用

C2‑C(

βH

, eL)

を選択 させ る報酬lシステムを報酬 シ ステム Ⅰとす る。

まず,高生産性の事業部 に費用

C2‑C(

βH

, eL)

を選択 させ る報酬 システム

Ⅰを考える。 このとき,

1

期 において,低生産性の事業部 も高生産性の事業部 も費用

C2‑C( β L, eH)(‑C( β H, eL))

を実現す るため, これより本社 は当該事 業部の真の生産性を知 ることができない。 したが って,

2

期の報酬 システムは

1

期で得 られた情報 により更新されることはない。か くして,

2

期の幸細 目シス テムは,基本的には

,1

期間モデルの報酬 システムその もの となる(

2.4)

0

ただ し, 1期間モデルの仮定よ り, この朝潮Hシステムは

,p<p*

のときに限

(18)

142 44 巻 第 1・2

り,最適であることがで きる。

2.4

:報酬 システム Ⅰと事業部予算

1 p <p 2 '

cl( α C1 ) c l +r

P

α C 1 +r 〟

C2 ( α C2) C2 十 r 〟 α C2 +r 〟

C3 ( α C3) C3 +rエ a C3 +rL

括弧内 は 2 期 の実現費用

2.5

:報酬 システム Ⅰと努力 レベル

1 p <p 2

*

βL eH ( C2 ) eH ( aC2 う

β〟 eL ( C2 ) e H ( aCl )

括弧内は実現費用

この報酬 システムの もとで各事業部に選択 され る努力 レベルは,低生産性の 事業部では

1

期で

e‑e H , 2

期で

e‑e H b <p* )

であ り,高生産性の事業部 では

1

期で

e‑eL

, 2期で

e‑e H

(

p<p

*)である (

2.5)

。また, このとき の本社の期待利益

7 T p

は次のように表 され る.ただ し

, r p

については rRととも に後 に言及する

7 T P ‑P[ b, ‑ ( C2 +r M)) + b, ‑ ( α ct +rH)) ]

+

(1‑p)

[b, ‑ ( C2 +rM)) + b, ‑ ( ac 2 +rM)) ] f or p<p*.

次に,高生産性の事業部が費用

cl ‑C( β

H

,e H)

を実現する報酬lシステムⅢを 考える。 この とき, 1期 において,低生産性の事業部 は費用

C2

を,そ して, 高生産性の事業部 は

c

lを実現す るので, これよ り本社 は当該事業部の真の生 産性を知 ることができる。 しか も, 1期に明 らかにされた事業部の生産性の情 報 は

2

期に踏襲 され

2

期の報酬 システムを性格づける。か くして,本社 は,

2

期において

,㍗( a ・

C(β

,e H ) )‑a( e H )‑

0

,β‑ WL

,

βH )

となるよ う報酬 システ

(19)

イ ンセ ンテ ィブの歯 止 め効 果 と企業 内配 置転 換 143

ムを設定す る (

2.6)

2.6

:報酬 システム Ⅲと事業部予算

期間

1 2

βL βH

cl ( αC1 ) c l +T ‑ R αC 1 +r 〟

C2 ( α C2 ) C2+r 〟 a C2+r M aC2 +r

I,

括弧内は 2 期の実現費用

2.7

:報酬 システム Ⅲと努力 レベル

1 2

βエ e 〟( C2 ) e 〟 ( α C2 )

括弧内は実現費用

この報酬 システムの もとで各事業部に選択 され る努力 レベルは,いずれの事 業部で も,

1

,

2

期 とも

e

e

〟である (

2.7)

。 この とき,高生産性の事業 部 は 1期 において費用

c

lを実現 し,真の生産性

β

β

〟の情報 を公開す ること

にな り, したが って,本社 は

2

期 において事業部の効用がゼ ロ

( ㍗( α ・ C(

β〃,

e 〟 ) )一弘( e 〝 )‑0 )

となるよ うに報酬 システムを設定す る。か くして,

1

期 に おける純報酬

I r( cl )‑rR

は,高生産性の事業部が

2

期で失 うか もしれない利益 を保証す る必要が ある。す なわち,次の均衡条件が満たされなければな らない。

高生産性の事業部が

1

期で真の生産性の情報を公開 した ときに得 られ る

1

期の 効用 (この とき

2

期の効用はゼ ロ)が,

1

期で真の生産性の情報を非公開に し た ときに

2

期間に渡 り得 られる総効用 と少な くとも同等でなければな らない。

これが高生産性の事業部が努力 レベル

e

e

〟を選択す ることで,その生産性の 情報を公開す るための均衡条件である。

ところで,高生産性 の事業部 β〝

c

lの費用を実現 した ときの 1期の効用 は 次のよ うである。

(20)

14 4 商 学 討 究 第 4 4 巻 第 1・2

βH事業部の効用

(J e‑e H )‑rR‑a( e H ) .

他方,高生産性の事業部 PH

C2

の費用を実現 したときの

2

期間の総効用 ( 酬 システム Ⅰの下でのβ〃事業部の

2

期間の総効用)は次のようである。

βH事業部の総効用

(I e‑eL )‑i r M‑u( eL ) ) + f r H‑a( e H )) p<p* .

か くして

,r R

の備えなければな らない均衡条件は次のようである。

rR‑a( e H )≧f r M‑L L ( eL ) ) +

i

r H‑u( e H ) ) p<p* .

この式を整理する,最終的に,均衡条件を得 る

rR‑3 r M‑2 rL>r H P<p* .

このとき

, r p

についての十分条件をいうことができる

r♪ =r 〟 p<p * .

高生産性の事業部に純報酬

r R

を支払 うことでは じめてイ ンセ ンティブの低 下を防止で き,それよりも低い純報酬

rp

,たとえば,

( rR‑3 r M12 rL > )rp‑

r H

b

<p

*)の もとでは必ずイ ンセ ンティブの低下が起 こる。 したが って,本 社 は特殊人的資本を活用す るために同一部署に同一人材を長期間貼 り付けてお くことにも弊害があることを知 る この とき,インセ ンティブの低下の防止策 として,本社 は高生産性の事業部に,少な くともr〃よ り高い純報酬の支払い を申 し出る (

2.8)

。 この高い純報酬

r R

がいわゆる歯止 め価格

( rat che t

pr i c e )

と呼ばれるものである。

(21)

イ ンセンティブの歯止め効果 と企業内配置転換

1 4 5

2.8

:報酬 システム Ⅲと歯止め価格

期間

1 2

p <p

*

βL βH

c

l(α C

1) c

l + 3 r〟‑2 r

α

c

l 十r 〟

C

2(

α C2) C2 +r 〟 α

C 2

+r 〟 α

C 2

+r

括弧 内は 2 期 の実現費用

本社が,イ ンセ ンテ ィブの低下 を防 ぐため事業 部 に歯止 め価格

( rat c het pri c e )

を支払 うときの本社の期待利益 7TRは次のように表 され るO

7 T R ‑P[ ♭‑ ( c l + 3 T ・ M‑ 2 r L )) + 也‑ ( acl +r M)) ]

+ ( 1 ‑p) [b, ‑ ( C 2 +r M)) + 也‑ (αC2 +r M))] f or p<p*.

以上みたよ うに,特殊人的資本のイ ンセ ンティブを高い レベルで維持 してい くにはそれな りの費用,すなわち,歯止め価格を支払わなければな らない こと がわか る。 これに対 し,一方で,特殊人的資本の活用機会 は失われ るが,他方 で,歯止 め価格 にともな う費用を節約で きしか もイ ンセ ンティブの低下を防 ぐ 方法が,いわゆる,配置転換である。そこで,歯止め価格が働 く報酬 システム

Ⅲに対 し,配置転換の労務管理が とられた ときその報酬 システムが どう変化す るのかを次にみてみる

ケース

4 :1

期モデルが

2

度繰 り返 され る均衡である ただ し,

1

期 に明 らか にされた事業部の生産性の情報 は

2

期 に踏襲 され

2

期の報酬 システムを性格づ ける点 は異なる。ケース

2

の報酬 システム Ⅰでは事業部の報酬 に対す る動学的 視点がイ ンセ ンティブの歯止め効果を生 じさせた。 したが って,本社 はこれを 防止す るため高生産性の事業部 に歯止め価格を支払 う報酬 システムⅢを採用 し た。 しか し, ここではこの歯止め価格を避 けるため, 1期の期首 に本社が事業 部管理者 と配置転換の契約を結ぶ とす る。契約 によ り,事業部管理者 は 2期の 期首 に別の事業部 に配置転換 させ られ ることが分か っているので,現行の事業

(22)

146 商 学 討 究 第 44 巻 第 1 ・2 号

部の生産性パ ラメータを非公開にす るイ ンセ ンテ ィブはな くなる。 したが っ て,本社 は高生産性の事業部 βHに,もはや歯止め価格

r R

を支払 う必要 はな く,

r

〟を支払 うことで十分 に現行の事業部か ら高努力 レベル

e

e

〟の供給を引 き

出す ことを保証 される。この とき,報酬 システムは次のようになる(

2.9)

0

2.9

:報酬 システムⅣ と事業部予算

1 2

費 用 βL βH

C .( α C1 ) c l + r〟 c l + r〟

C2 ( α C2) C2 + r〟 C2 + rM C2 + rL

括弧内 は 2 期の実現費用

この報酬 システムの もとでの本社の期待利益

7 T T

は次のように表 される。

7 T T‑P[b, ‑( cl +r H))

+

b, ‑( cl +r M))]

+( 1‑p) [b, ‑ (C2 +r M)) + 玩‑ (C2 +r M))

].

以上,

2

期間の報酬 システムの分類 とその問題点を動学的視点か ら考察 し た。特に,その うち,報酬 システム Ⅰにみ られたイ ンセ ンティブの歯止め効果 をいかに避 けるかは重要な問題であった。そ して, この防止策 として歯止め価 格を支払 う報酬 システムⅢがあることが示された。 しか し, この防止策 は通常 よ り割高な純報酬を高生産性の事業部に対 し準備 しなければな らない欠点がみ られた。そこで, これを回避する防止策 として配置転換をともなう報酬 システ ムⅣがあることを示 した。ただ, この事細 目システムにも特殊人的資本の活用機 会を失わせ る難点がみ られた。そ こで,次に, これ らの報酬 システム間の優劣 を動学的視点か ら簡単に考察 してみる。

命題

2.1 :4

つの可能な報酬 システムが

2

期間,同質的な

2

事業部モデルで 生 じる。そ して,p<p*であるか ぎり,報砂川システムⅡは宰相 Flシステム Ⅰより

(23)

イ ンセ ンテ ィブの歯止 め効果 と企業 内配置転換 147

優位である。また

,p <p

*であるか ぎり,報酬 システムⅢ,Ⅳは潜在的に最適 である。

報酬 システム Ⅰの もとでの本社の期待利益

7 t p

と報酬 システムⅢの もとでの 本社の期待利益 7TRを比較す ると

, 7 T R‑7 T P‑P( ( C2 ‑Cl ) ‑( rM‑r L )) >0 ,f or̲p

<p

*を得 る。 また,報酬 システム Ⅱ,Ⅲ,IVは1期 に事業部の真の生産性 の 情報を公開す るシステム(セパ レーティング ・システム)である。したが って, これ らの

2

期の予算 は (事業部管理者の管理習熟度

α

か らの影響 は考慮 しなけ ればな らないが),基本的には相違 はない。か くして,

1

期の本社の期待利益 を比較す ることですむ。 ところが,

1

期間モデルでの,報酬 システム

3

の期待 利益

7 T3

(これ は報酬 システムⅣの 1期の期待利益 に等 しい) と報酬 システム

2

の期待利益 7T2の比較 は,前節 よ り

, 7 T2< 7 T3 f or p<p*

であることを知 っ ている。ただ し

, 2

期の事業部管理者の管理習熟度αか らの影響 は考慮 してい ない。 さ らに,

1

期間モデルでの,報酬 システム

3

の期待利益

7 T3

と報酬 シス テム2の期待利益

7 T2

の比較 は

, 7 T3 ‑ 7 T2 ‑( 1‑p) [ ( C3 ‑C2 ) + ( rM‑r L)] 12( rM

‑r L ) >

O

f or p

<1‑

2( rM‑r L )/ [( C 3 ‑C 2 ) + ( rM‑r L ) ] < p *

で ある。 こ れ らの ことか ら

,p<p

*であるとき,報酬 システムⅢ,Ⅳは潜在的に最適であ る。

命題

2.1

2

期 間モデルのそれぞれの報酬 システム間の優劣の可能性の比 較であった。 さ らにここで,配置転換を ともな う報酬1システムⅣが最適である ためのよ り正確な十分条件を示 してお くことにす る。

命題

2.2: p<p*

の とき,配置転換を ともな う報酬 システムⅣを最適 にす る特殊人的資本の生産性αが存在す る。

( 1‑p) ( C 2 ‑C3 ) + ( rM‑r L)

(rM‑rL)

1 ≧α≧max

pc l + ( 1‑p) C2

1‑

p

c

l+(1‑p)C2

(24)

148 商 学 討 究 第 44 巻 第 1・2

p <p*

の とき,まず

, 7 TR ‑ 7 T P‑P( ( C2 ‑ C 1 )‑( r M‑ T ・ L ))>0

,

f or p<p*

成 り立 したが って

, 7 TT

とZTsの大小関係および

7 T T

と7TRの大小関係が考察 さ れなければな らない。

7 TT ‑ 2 T s ≧

0よ り,

α = >1

+I(

llP)( C2‑C 3) + ( rM‑r L))/ I pc l

+(

1‑p) C2

),

f or p<p*

を得 る

.p *∈(

0,1

)‑1‑( r M‑r L ) / ( C3 ‑C2 )であるので, a

≦1

を満たす aが存在す る。また

, 7TT ‑ 7 ER ≧

0より,a

≧1‑p( r M‑r L)/ ( pc l + ( 1

‑p) C2

)

,f or p<p*

を得 る

。p( r M‑r L)/ ( pc l +

(

1‑p) C2 )>0

であるので, α≦1を満たすαが存在す る。

おわ りに

最後に,配置転換をともなう報酬 システムが有効であるためのい くつかの基 本的視点をあげることにす る。

1) p

が大 きいとき (高生産性の事業部の割合が大 きいとき)

,7 T s> 7 T T ( 2 c l+

3 r 〟‑rェ>

(

1 +α

)

cl +2 r〟)

となる。 これは,高生産性の事業部の特殊人的資 本の継続的活用を保証す る報酬 システム Ⅱを採用 した方が有利であることを意 味す る。報酬 システムⅡは,本社に低生産性の事業部に低努力 レベルを供給 さ せ ることによる機会費用を支払わせ ることになる。 しか し

,p

が大 きい とこの 低生産性の事業部の割合が相対的に小 さいことを意味 し, この ことが この機会 費用を相対的に減少 させ る役割を果 して しまう。

2) p

が小 さいとき (高生産性の事業部の割合が小 さいとき),7

T p> 7 T T ( ( 1 + α) C2+2 r 〟>2( C2+r 〟) )

となる。 これは,低生産性の事業部の特殊人的資本の継 続的活用を保証す る報酬 システムⅢを採用 した方が有利であることを意味す る。報酬 システムⅢは,本社に高生産性の事業部 に高努力 レベルを供給 させ る ことによる歯止め価格を支払わせ ることになる しか し

,p

が小 さいとこの高 生産性の事業部の割合が相対的に小 さい ことを意味 し, このことが歯止め価格

にともな う費用を相対的に減少 させ る役割を果 して しまう

3)α

が大 きいとき(特殊人的資本の確保か らくる費用節約効果が小 さいとき),

表 2.1:2 期間モデルの 1 期の報酬 システム分類

参照

関連したドキュメント

トピックス 統合効果が本格化、営業利益大幅増となり黒字転換を実現 AV事業の回復

また,この領域では透水性の高い地 質構造に対して効果的にグラウト孔 を配置するために,カバーロックと

: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用す る。 :

攻撃者は安定して攻撃を成功させるためにメモリ空間 の固定領域に配置された ROPgadget コードを用いようとす る.2.4 節で示した ASLR が機能している場合は困難とな

評価 ○当該機器の機能が求められる際の区画の浸水深は,同じ区 画内に設置されているホウ酸水注入系設備の最も低い機能

本論文での分析は、叙述関係の Subject であれば、 Predicate に対して分配される ことが可能というものである。そして o

評価 ○当該機器の機能が求められる際の区画の浸水深は,同じ区 画内に設置されているホウ酸水注入系設備の最も低い機能

○当該機器の機能が求められる際の区画の浸水深は,同じ区 画内に設置されているホウ酸水注入系設備の最も低い機能