超音速後退翼上の孤立粗度により励起された横流れ 不安定変動の研究
著者 ?木 正平, 高田 晃輔
雑誌名 室蘭工業大学航空宇宙機システム研究センター年次
報告書
巻 2012
ページ 27‑30
発行年 2013‑07
URL http://hdl.handle.net/10258/00008816
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超音速後退翼上の孤立粗度により励起された横流れ不安定変動の研究
○ 髙木 正平 (航空宇宙機システム研究センター 教授)
高田 晃輔 (航空宇宙システム工学専攻 M2)
1. 研究背景と目的
航空宇宙機システム研究センタでは、大気中を高速で飛行するための基盤技術の創出を目的として プロジェクト研究開発が進められている。その基盤技術創出の一環として主翼表面の操作による境界層 遷移制御技術の研究を進めている。
2. 研究の経緯
超音速機の先端に 10 度円錐模型に圧力センサーを埋め込み飛行試験で確認されているように、大気 中を超音速で飛行する際の大気外乱は一般に小さい。このような飛行環境下での境界層遷移の制御を 念頭に置くならば、風洞実験も同レベルの低乱環境が要求される。低乱環境における亜音速境界層の 振る舞いは大方理解されているが、超音速三次元境界層の遷移についてはほとんど研究報告がないの が実情である。その理由として、境界層遷移研究に耐える低乱(あるいは静粛)超音速風洞が少ないこと が挙げられる。本学中型超音速風洞は大気吸い込み式であるため、測定部上流に調圧弁のような突起 構造がないため低乱が期待される。実際、その気流評価は実施され、測定部のマッハ数が2の場合につ いては、2011 年度の年次報告書にまとめられている。それによると、静粛流の目安である動圧に対する 静圧の変動の実効値が 0.1%以下の条件が満たされる場合もあるが、湿度が高い季節では 0.3%に達する。
すなわち、湿度の高い気流が超音速スロートを通過する際、膨張による水蒸気の凝縮によって自励的な 凝縮振動が起こり、気流の変動を増大するからである。しかし、このような振動が生じない湿度条件であっ ても、水蒸気の凝縮に伴う変動の効果は予想以上に大きく、測定部におけるマッハ数が2の場合につい ては、静粛流の境界の目安は、絶対湿度がおよそ 2[g/m3]であり、室蘭地区でこの条件を満たすのは冬 季のしかも限られ日である。
2011年度は主翼前縁を模擬した斜め円柱模型を用い、滑らかな表面に発達する三次元境界層の遷 移の振る舞いを調べた。その主要な成果は 2011 年度の年次報告書にまとめてあるが、概略を以下に述 べる。三次元境界層遷移は横流れ不安定により不安定化する。その不安定の結果として、境界層の外 部流方向にほぼ平行な軸を持つ定在型の縦渦と位相速度を持つ時間変動(進行波)が成長する。それ らの空間的な振る舞いは線形安定解析結果と概ね一致が確認された。実は、進行波の検出は、絶対湿 度が 2[g/m3]以下の環境で確認されたもので、湿度がそれ以上の条件下では境界層遷移の振る舞いは 明らかに異なることも明らかになってきた。
3. 研究の狙い
斜め円柱模型で存在が確認された定在型の縦渦は、模型表面の粗さに極めて敏感であることから、可
視化のために表面に塗布した薬材で励起された可能性も否定できない。2012 年度は、まず円柱表面を
滑面として縦渦の存在の確認を行うこととした。縦渦は模型表面に定在しているわけであるから、熱線セ
ンサーを円柱表面に沿って移動させれば、その存在は確認できるはずである。そのために1回の通風中
にセンサー円柱表面に沿って 90°回転させ縦渦の存在を確認し、存在していない場合には孤立した粗
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度で縦渦の励起を行い、その波長を確認することとした。また、この波長間隔で粗さを並べると縦渦は共 鳴して遷移は促進されるが、逆に粗さ間隔を波長の 0.75 倍程度に選ぶと縦渦の成長を抑制する可能性 があり遷移の遅延につながると推測し、研究を進めた。
4. 実験装置 4.1 中型超音速風洞
本実験では、室蘭工業大学所有の大気吸い込み式中型超音速風洞を用いた。マッハは2とし、常に湿 度・温度・気圧等気象条件を把握した上で実験を行った。
4.2 斜め円柱模型
本実験では、図 1 に示すような斜め円柱模型を用いた。後退角 60[deg]、直径 40[mm]である。
また、図 2 には熱線プローブを周方向に回転させる機構が示されている。機構はプローブを固定するリン グ状バンドとそれを回転させるステッピングモータで構成され、回転開始と停止は遠隔操作できる。また 図 3 は縦渦を励起するための孤立粗度固定用の穴が前縁よりφ20[deg]の位置に直径 0.7[mm]の孔が空 けられ、直径 0.6mm 以下の針金を突き出すことで粗さを導入する。その高さは微調整可能である。図 4 は座標の定義を示している。
図 1 斜め円柱模型 図 2 熱線プローブ回転機構
図 3 孤立粗度の貼付状況 図 4 座標の定義
5. 実験結果
5.1 熱線計測とオイルフロー可視化
円柱表面に突起や粗度を貼付しない滑面条件では、熱線プローブの回転計測から縦渦の存在は全く 確認できなかった。その理由として2つの可能性が考えられる。本質的に縦渦は滑面条件では成長しな い。もう一つは、気流変動が大きいことによるバイパス遷移の可能性である。いずれも現段階で断定はで
0.13mm
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きない。そこで、孤立粗度の高さを 0.5[mm]に設定し、オイルフロー法により孤立粗度の下流を可視化し た結果を図 5 に示す。粗度の下流には弱いながらも
縦渦の存在を示す筋状の痕跡が確認できる。
5.2 熱線プローブによる縦渦計測
この痕跡を定量計測するために孤立粗度の高さを 0.13 [mm]として、熱線プローブを回転し粗度下流の 3 断面を計測した。すなわち、計測位置は孤立粗度 を原点として、それぞれ Z=16.5、 18.5、 及び 20.5[mm]である。縦渦は模型表面に定在している わけであるから熱線風速計の直流成分に着目す
ればよいわけである。計測結果を図 6(a)と(b)に示す。波形の相似性が確認できることから、計測した 2 断 面で対応した波形の番号を結んだ結果を図 7 に示す。結んだ線群は孤立粗度から起因した縦渦の存在 を示唆している。これらの線群から縦渦の波長λは約 0.2mm である。しかし、線形安定解析の結果によ れば最も不安定な縦渦の波長は 0.8mm であり、大きな不一致が見られる。気流変動のレベルを考慮した 再計測が必要である。
(a) (b) 図 6 熱線で捕らえた孤立粗度から成長した変動
図 7 孤立粗度から延びる変動の波頭線
筋状の痕跡
図5オイルフロー法による円柱表面の可視化
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