• 検索結果がありません。

セット販売の効率性について 九州工業大学情報工学部大石英貴

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "セット販売の効率性について 九州工業大学情報工学部大石英貴"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

107

セット販売の効率性について

九州工業大学情報工学部大石英貴

1 はじめに

 企業は2種類以上の商品を組み合わせて販売することがある。一般に「セッ ト販売」あるいは「抱き合わせ(バソドル)販売」といわれる。前者では、ハ ソバーガーとポテトとドリソクのセット、ラソチとコーヒーのセットなどがあ る。後者では、コソピュータへの基本ソフト(OS)のプリイソストール、 OS とアプリケーショソソフトのバソドリソグ、ゲームソフトの抱き合わせなどが よく知られている。セット販売と抱き合わせ販売は名前が異なるだけであり、

数種類の商品を組み合わせて販売するという意味で本質的に同じことである。

以後セット販売とよぶことにする。

 一般に消費者は商品を消費することにより効用を得る。それを金銭換算した ものを留保価格あるいは単に評価とよぶ。効用および評価の形態により、セッ

ト販売は以下の3つの特徴で分類される。

   ・効用の相乗効果    ・評価の相関度    ・評価の差

 2種類のセット販売を例に挙げて説明しよう。第1点の効用の相乗効果とは、

商品の補完性ともいえる。2種類の商品をセットで消費した場合の効用と、そ れぞれを単独で消費した場合の効用の和との大小関係についてである。例えば、

ラソチとコーヒーのセットの評価はラソチとコーヒーそれぞれの評価の和にほ ぼ等しいと考えられる。ビールと枝豆のセットでは相乗効果あるいは補完性が

(2)

かなりあるため、セットの評価はそれぞれ単独の評価の和以上であろう。また、

靴は左右ひと組で売られているがこれを広義のセット販売とみると、靴は完全 な補完であり片方だけでは無価値で、1組揃ってはじめて機能する。食べ合わ せが悪いといわれるウナギと梅干しのセットの評価は、それぞれ単独の評価の 和以下となるかもしれない。また、コソピュータとOSは1方向の補完の関係 にある。OSは単独では全く無意味であり、コソピュータとセットになって初 めて使える。OSとアプリケーショソも同様である。

 第2点の評価の相関度とは、2つの商品の評価の相関関係についてである。

これは対象とする消費者の範囲に依存する。例えば、ウィスキーと焼酎の場合、

範囲をすべての消費者とすると、酒好きの人は両方とも評価は高いが、飲めな い人は両方とも評価は低いので、正の相関がある。範囲を酒好きの人に限れば、

ウィスキーを高く評価する人が焼酎を高く評価するとは限らないので、相関は ない。これは、ゲームソフトについても、RPG(ロールプレイソグゲーム)

と格闘ものでは、範囲をすべての消費者とすると正の相関があるが、範囲をゲー ム好きの人に限れば、相関はないであろう。

 第3点の評価の差とは、2つの商品の評価の大小関係についてである。一般 に、評価が高い商品と評価が低い商品のセットは抱き合わせとよばれ、問題視 されている。人気のある商品と人気のない商品の抱き合わせ販売は、人気のあ る商品の売れ行きを利用して人気のない商品をさばくことであるとみなされ、

不当な販売行為であると考えられている。

 この稿では以上の3つの特徴のそれぞれを限定したモデルを検討する。第1 の点については補完がない場合、すなわちセットの評価が単独の評価の和に等

しい場合を考える。第2の点については評価が独立、すなわち無相関の場合を 考える。第3の点については評価には差があるが、そのばらつき方が同じであ る場合を考察する。

(3)

セット販売の効率性について      109

c2+1

C2 V2

    i

V2

O  CI c1+1    0     1

図1評価の分布(一般)        図2評価の分布(標準)

 モデルの分析の目的は、セット販売が企業にとって利益があるのか、消費者 は得をするか損をするか、社会的に望ましいかを部分均衡モデルにより明らか にすることである。

 以下では、2節でモデルの詳細を定義する。3節でセット販売の3つの形態 について分析し、4節でそれらの比較をする。5節で他の文献との比較とまと

めを行う。

2 モデル

 独占企業が2種類の財を消費者に販売している。ゴ財の限界費用(単位費用)

をc,とする。市場には多数の消費者がいる。ある消費者の 財に対する評価 をび、とし、消費者の評価の組@1,〃2)は[C1,C1+1]×[C2,C,+1]

上に密度∂で一様に分布しているとする(図1)。つまり、消費者の評価が企 業の限界費用を下限に独立かつ一様に分布しているケースである。しかし、こ の設定で得られるすべての結果は、 財の限界費用が0で、評価が[0,1]×

[0,1]上に密度1で一様に分布している標準的な場合(図2)を1次変換す

(4)

れば、すべて適用可能である。ゆえに以下ではこの標準的な場合について議論

する。

 企業の目的は収入を最大化することである。販売方法(価格付け)は以下の 3つの選択肢がある。

   ・個別販売    ・純粋セット販売    ・混合セット販売

 個別販売とは、 財に価格ρ、を付けて独立して販売することである。純粋 セット販売とは、2つの財のセットに対して価格αを付けてセット販売のみを することである。混合セット販売とは、i財の単独の価格♪、とセット価格α を付け、消費者に選択させることである。企業はこれらの販売戦略の中から収 入を最大化する方法を選択する。

 消費者は各財をたかだか1単位購入する。2種類の財があるときの消費パター ンは、以下の4通りある。

   ・両財とも消費する。

   ・1財のみ消費する。

   ・2財のみ消費する。

   ・何も消費しない。

2種類の財の消費から得られる効用は各々の財の消費から得られる効用の和で あり、支払は負の効用として同じく加えられるとする、すなわち、クを企業へ の支払としたとき評価(〃1,〃2)の消費者の効用を

μ(♪,ω1,〃、))=

防一ヵ   (両財とも消費する)

〃2一ヵ   (1財のみ消費する)

仇十〃2一ρ (2財のみ消費する)

0     (何も消費しない)

(5)

       セット販売の効率性について       111 とする。消費者はこれらのうち、企業の提示によって可能な選択肢の中から効 用を最大化する選択をする。

3 販売戦略

3.1 個別販売

 個別価格の場合、企業も消費者も2つの財の問題を独立に考えることができ る。企業はゴ財に価格♪,∈[0,1]を付ける。なお、0未満の価格は企業に とって損失になり、1以上の価格は需要が0になる。企業の価格に対して評価 がび、〉ヵ、の消費者が購入し、需要は1一ρ,となる。企業のi財からの収入 はρ、(1一ρDとなる。

 収入を最大化する価格は♪、=1/2である。そのときの企業の総収入は       R−2・丁(    11}万)一丁一・・5

である。総需要は各需要の和であり       1       D=2 万=1

となり、消費者の効用の総和である消費者余剰は        

      cs−2∫(・一丁)吻一÷一α肪        丁

である。企業の収入と消費者余剰の和である社会余剰は       τS一号一・・75

である。

(6)

V2       V2

α

のとき

α一r

1≦α≦2のとき

  l  l     ・

    

一 一 ■ 十 一 一 ■ −

  l  I

・ α1v1 ・α一1

  

1v1

      図3 純粋セット販売の需要 3.2 純粋セット販売

 純粋セット価格の場合、企業がセット価格α∈[0,2]を付ける。なお、2 以上のセット価格は需要が0になる。このとき評価が〃1+砺〉αの消費者が 購入する。需要は図3より、0≦α<1のとき1一α2/2、1≦α≦2のと

き(2一α)2/2である。

企業の総収入は

       α(   α21−−   2)・≦α≦1

       1〜=

       α(2三α)21≦α≦2

となる。

 図4より、総収入を最大化する価格は0≦α≦1の極大点α=⑯/3〜

0.816である。そのときの企業の総収入は        R一乎一・・544

である。総需要は、2つずつ売れるので

(7)

セット販売の効率性について      113

R

0.5

0.唖

⑪.ヨ

0.2

0.1

α

       図4 純粋セット販売の収入       D−2・誓一丁一・・333

である。消費者余剰は、セットを購入する消費者の範囲をAとすると

c 

轣轣i一一砕鋤

  乎      1

  一27−8・信〜0.274      27

吻1

(8)

であり、社会余剰は

TS−27O裡一・・8・9

となる。

3.3 混合セット販売

 混合セット販売の場合、企業がゴ財の価格ρ,∈[0,1]とセット価格α∈

[0,2]を付ける。消費者は、以下の4つの選択肢がある。

   (o)何も購入しない。

   (1)1財のみを価格ρ1で購入する。

   (2)2財のみを価格ρ2で購入する。

   (s)両財のセットを価格αで購入する。

この中から効用を最大にする選択をする。混合セットが意味を持つのは、以上 4つがすべて起こる場合であり、セット価格が個別価格の各々より高く、個別 価格の和より低い場合、すなわち

      カ1,カ、≦α≦カ1+ρ,

のときに限る。

 1財のみを価格ρ1で購入する消費者は選択肢(1)の効用が最も大きい場合、

すなわち

〃1一力1≦max@一ρ、,仇+〃,一α,0)

より、

(〃1,〃、)∈[♪1,1]×[0,α一ク1]

(9)

セット販売の効率性について      115

V2

1

ρ2

    α一ρ1

      ・      み    1のみ購入        Vl

      Oα一ρ, ク1 1

      図5 混合セット販売の需要

であり、図5のB1の部分である。同様に、2財のみを価格ρ2で購入する消費

者は、

         (η1,〃2)∈[0,α一ρ、]×[ヵ,,1]

であり、図5のB2の部分である。両財のセットを価格αで購入する消費者は、

選択肢(s)の効用が最も大きい場合、すなわち

         〃、+び、≦max@一力1,〃,一力、,0)

より、

  (η1,η2)∈{(ψ1,〃,)1・一ヵ,≦〃1≦1,・一ヵ1≦び、≦1,・≦〃1+〃・}

であり、図5のAの部分である。これより、企業の総収入は

(10)

  R=ρ1(1−♪1)(α一ρ1)+ヵ、(1一ρ,)(α一ヵ、)

   +α(・一α+♪・(1一α+か)一(讐一α)2

となる。

 総収入を最大化する価格の組は

       旦=遮=旦=0

       ∂カ1 ∂ρ2 ∂α

をみたす必要がある。これをρ1,♪1≦α≦ρ、+ρ2の範囲で解くと、

      2

       ρ1=ρ・「∫〜0・667・

       α一4宍一一・・862

となる。そのときの企業の総収入は

      R−2(6評)一一・・549

であり、総需要は

        D−2・4薯一8㌔2⑫一1.2・3

である。消費者余剰は

(11)

セット販売の効率性について       117

c5−

阮m一:)一∬←一:)一+∬(    4一厄〃1十〃2−     3)−

   Bl      B2      A

        

−2・2

пi…:)耐

       』

  旦  ヨ      ユ

  2一厄一「一肋        号「「

 一41⑫一18〜0.247     162

であり、社会余剰は

τS−54 [厄一・・796

である。

4 余剰分析

 以上の3つの販売戦略の結果は表1にまとめられている。これをもとに、3 つの販売戦略の特徴を概説しよう。

 価格については、純粋セット販売では、個別販売の価格の和より低い価格を 付けている。混合セット販売では、個別価格とセット価格の両方とも、さらに 高い価格がつけられる。需要については、対称性より表の数値の半分が個々の 財の需要であるが、純粋セット販売での需要が最も大きくなっている。企業収 入については、混合セット販売が最も大きな収入をもたらしている。これは戦

(12)

個別販売 純粋セット販売 混合セット販売

個別 0.5 0,667

価格

セット 0,816 0,862

総需要 1 1,333 1,203

企業収入 05 0544 0,549

消費者余剰 0.25 0,274 0,247

社会余剰 0.75 0,819 0,796

表1 販売戦略による結果

略の多様性から考えて予想できるものである。消費者余剰は、純粋セット販売 で最も大きく、混合セット販売で最も小さくなっている。これは意外な結果で ある。純粋セット販売は、消費者にとっては選択肢が買うか買わないかの2つ

しかないため選択の機会が奪われるにもかかわらず、最も有利である。社会余 剰は、純粋セット販売で最も大きく、個別販売で最も小さくなっている。これ は需要の大きさを反映している。

 企業が自由に販売戦略を決定できる場合は、収入を最大化する混合セット販 売を採用する。そのとき消費者余剰は最も小さくなる。したがって、企業に自 由を与えることは消費者には最も不利となる。一方、社会余剰を最大化する販 売方法は純粋セット販売であり、そのとき消費者余剰も最大となる。しかし、

純粋セット販売は2つの財のセット販売のみを認めることであり、現実的な運 用は難しい。また、個別販売は消費者にとっては2番目に望ましいが、企業に とっては最も収入が低い。個別販売を強制することは企業の利益を不当に低く

(13)

セット販売の効率性について       119

押さえることとなる。したがって、現実的には企業に自由を与えて、社会余剰 が2番目に大きい混合セット販売をさせることは妥当であろう。

5 関連する研究とまとめ

 セット販売あるいは抱き合わせ販売は、Stigler(1968)で最初に提示された。

最近でもBrandenburger and Nalebuff(1996)の8章にも言及されている。

理論的には、消費者の効用が線形の場合、すなわち効用が個々の財の消費から 得られる効用と支払の不効用との和で表される場合の分析が進み、McAfee and McMillan(1988)で、販売戦略の決定を最適なメカニズムデザイソの設 計問題としてみたときに、消費者の評価の分布がある正規性条件(この稿のモ デルも該当する)をみたすとき、確率的な販売方法は企業にとって最適にはな り得ないことが示された。またMcAf㏄, McMillan and Winston[1989]で、

個別販売は企業にとって最適ではないことと、消費者の評価の分布がある条件 をみたすときには混合セット販売が企業にとって最適であることが示されて

いる。

 これらを踏まえて、この稿では消費者の評価が独立かつ一様に分布する場合 にモデルを限定することによって、3つの販売戦略のそれぞれについて消費者 余剰と社会的余剰を計算できた。結果として、企業にとって収入を最大化する 混合セット販売は社会的に非効率的であることが分かった。

参考文献

Brandenburger, A. M.,and Nalebuff, B. J.(1996).Co−0ρθτ偽oη.

 Doubleday.(嶋津祐一、東田啓作(訳)「コーペティショソ経営」(日本経  済新聞社(1997年))

McAfee, R、 P.,and McMillan,」、(1988)、 Multidi血enti◎nal Incentive

(14)

  Compatibility and Mechanism Design, ノ0解ηα10∫Ecoκo勿ゴc 7¶カθo  46, 335−354.

McAfee, R. P.,MCMillan, J.,and Winston, M. D.(1989). Multiproduct

  Monopoly, Commodity Bundling, and Correlation of Vales, 丁舵

 Qzノαγ ε71y ノと)z4γ多2α1 0∫Ecoγ20〃∬cs 104, 371−383.

Stigler, G. T.(1968). A Note on Block Booki㎎, inτ舵0γg翻泌加  o∫1κ4μs〃夕(Stigler, G. T.,ed.). Irwin.

参照

関連したドキュメント

実際, クラス C の多様体については, ここでは 詳細には述べないが, 代数 reduction をはじめ類似のいくつかの方法を 組み合わせてその構造を組織的に研究することができる

我が国においては、まだ食べることができる食品が、生産、製造、販売、消費 等の各段階において日常的に廃棄され、大量の食品ロス 1 が発生している。食品

[r]

排出量取引セミナー に出展したことのある クレジットの販売・仲介を 行っている事業者の情報

排出量取引セミナー に出展したことのある クレジットの販売・仲介を 行っている事業者の情報

再エネ電力100%の普及・活用 に率先的に取り組むRE100宣言

「特殊用塩特定販売業者」となった者は、税関長に対し、塩の種類別の受入数量、販売数

設備がある場合︑商品販売からの総収益は生産に関わる固定費用と共通費用もカバーできないかも知れない︒この場