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理 科 教

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(1)

理 科 教

 6・3・3制の実施にともない,昭和23年「生活における 現実の問題の解決」との目標のもとに行なわれた理科教育は,

いわば生活単元学習の理科であり,生徒の興味を中心とし身 近な現実の問題を合理的に処理してゆく方法を見出すものと しての特長はあったが,小・中・高校の関連および数学・保 健体育・職業家庭などの他教科との関連において問題点をも

っていた。即ち,理科と他教科の間に重複したところが多く,

また指導要領自身が各々独自に計画された点も見られ,さら に,理科を系統的に学習し発展させてゆくべき性格に欠ける ととろが多く,学問体系はほとんど無視されていた。その上

に轡の琳操作●鍛実験の融」などもその系雛拷慮

されていない状態にあった。

 昭和31年においては,これを改訂し,特に中学校と高等学 校の関連に重点をおいて検討された。この頃より系統性を考 慮する声が次第に強くなってきたが,小学校と中学校の関連 や他教科との問題にはなお検討する余裕もなかったようであ

る。

 昭和35年より,小・中学校の関連について検討がなされ,

さらに,昭和38年よりは高校に関する改訂にすすんできた。

一・桙アこで,小・中・高の関連は再検討され,そこに一連の 関係を見出すことができるようになった。特に中・高の重複 を極力さけ,他教科との関係を考え,大幅に理科の学習内容 より譲るべきものは他教科に回された。ここに,高等学校の 理科学習課程の変更も大幅な動きをみせ,普通科においては 1学年で週2時間の地学と週4時間の生物を全生徒に学習さ せ,物理・化学は2〜3年で履習するようにした。また,物 理・化学は,A及び:Bコースに分け, Aコースは週3時間で 化学は2学年,物理は3学年で履習,Bコースは化学4時間,

物理5時を2学年と3学年に分割して学習させ,しかもA及 び:Bコースは生徒が選択できるように計画された。いわば,

理科学習を複線化して多様性をもち幅のある指導を可能にし ている。そして,小・中・高を通して,基礎事項の理解・実 験観察の徹底・科学的な考え方の指導などを重点的に行なう

よう強張された。

 また,教育制度の上においても,工業高等:専門学校が設立 され,年々その充実がなされそあ制度も軌道にのりつつある。

一方,6・3・3の制度は,制度上の変化はないとしても,

実施面においては6・6制の学校も方々にでき,中等教育を 能率化し重点的な指導を行なわんとする試みがなされてい る。さらに,指導上の問題としては,実験・観察を中心とし た理科の学習に一層重点がおかれ,創造性・発見性の助長,

推理・応用能力の育成に拍車をかけられている。

 このような理科教育の動向にたいして,遍しばらく世界の 状勢を少し分析検討し,さらに我が国の進展すべき方向に批 判検討を加えてみたい。

工 欧米の学校教育制度i)

 昭和20年の敗戦と同時に受け入れた6・3・3・4の制度 は,たしかに理想的な教育制度ではあるが,やはり国情にぴ ったり合わない点も数多くあっtc。優秀な生徒の個性伸長,

生徒に安易感をもたせるなどの点は批判の対称とされている。

ここに我が国の教育制度は,さらに視野を広く欧米各国に向 け,改めて批判検討を加え,とり入れるべきものはとり入れ,

捨てるべきものは捨てて,国情に適したものを再び樹立すべ きであろう。

 (1)アメリカ教育の現状

 1946年より発足した6・3・3制の理想的な教育制度も,

民主主義のアメリカ合衆国においては完全実施は勿論できず,

理想的な制度とは知りながらも古き伝統にとらわれ,小学校 及び中等学校課程を8・4制及び6・6制で実施していると ころも方々に見られる。また,旧校舎をそのまま利用し,小 学校舎で中学校2学年までの教育を,そして旧制中学校舎で 中学校3学年と高校の教育を実施している例も多い。このよ うな学校制度のなかに,国民の注目をひいたのが,ソ連のm ケット打上げであり,コナントレポート (JAMES B.

CONANT S REPORT;The American High School Today)の 発表である。Vケットの打上げにより,今迄他国に負けたこと がなく,一等国と自負していたアメリカ国民にとっては,実に 大きな衝撃であり,一瞬にして不安の絶頂におとしいれたこ

(2)

津山高専紀要(第1巻 第2号)

欧米 の 学 校 教育 制 度

(年     今「 )     f  2 3  4     6     85    7    9 iO け 12 13 14 f5 16 17 18 19 20 21 222324才 l    i         l {        1

保盲所幼権園 中学校(3#)七二(3切 工業専修蝉 5年)

アメリカ合衆国 (2耳)(私立)(互L 小学校(6一年)

中学ネ交(6年) 大削2〜6耳)

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初等学校〔4年)

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西ドイツ

 (国民学 賰b学校@(44)

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とであろう。この不安を除くためには,次代を荷う青少年の 教育,特に科学教育の振興が必要であり,これを忘れた今迄 の教育的レベルでは一等国として発展することはできないと 真剣に考えた。また,コナント博:士は,有能な生徒の学習を 反省検討し,これらの生徒の個性の伸長を強張し,外国語教 育・理科教育及び数学教育の向上と徹底を国民に訴え,さら には年々増加してゆく青少年の犯罪にたいしてカウンセラー 制度の実現の必要性を強張した。このレポートが教育界に投 じた波紋は大きく,直ちにその実現の方向に急ピッチに進展 され,大学教授と現場小・中・高校の教師の密接な協力態勢 のもとに,国防法による経費の援助を得て進められ,既にそ の試案の段階を経て実施されている。この実施にあたっては,

特にソ連の教育制度の研究がなされていることは注意すべき である。

 これに関連して,我が国の教育の現状と異なる点を述べ,

日本の教育を反省してみたい。その一つは,公民的教育のあ り方とでもいうか,或は道徳教育とでもいうか,人間関係の 教育の徹底であろう。この教育が幼稚園・小学校,そして中 学校の課程において重要視されている。勿論 日曜日に開か れる日曜学校や教会の宗教教育と密接して実施されているが,

学校教育自身の中にも,基本的な「しつけの教育」が理屈な

しに実施されている点である。「他人の言には耳を傾ける。」

「他人には親切であり他人に迷惑をかけることはしない。」な どといった人間として社会生活に必要な基本的事項(エチケ ット)を強く要請されている。このように人としてあるべき 姿が,低学年において自然にうえつけられている。これは,

我が国でいわれる,道徳教育または社会科教育の徹底とでも 申すべきことではないかとも考える。さらに,小学校の低学 年における国語教育の徹底と音律教育の強張であ。国語教育 においては短時間に文章を読みその内容を把握する訓練,す なわち読解力の養成である。読解力はあらゆる教科の基礎で あり,これを忘れて学習効果の向上は望めないといっても過 言ではない。また,音律教育は,高学年においては余り効果 のないことは常に体験するところであり,これが低学年ほど 最も効果があることは勿論である。このように,必要な教科 や必要なことは,最も効果のあがる時期にしかも徹底的に指 導してゆくという合理的な教育が我が国にも必要ではなかろ うか。このような反面,たしかに数理的な教科のレベルは低 いが,これは止むえないことかと思う。然し,高校より大学 に進むにつれて,これらの取り残されている点に急加速度的 な指導が行なわれているようである。義務教育を終え,本人 の希望によって進学した道や選んだ道については,勿論本人

(3)

杉山 魏  理科教育の動向

が責任をもって勉学すべきであるとの考え方のもとに数理的 な教科の急ピッチの教育がなされる。学校においても勉学が 強制され,実に度々のテストや試験が課されている。高校で は,各教科にわたり2時間の学習後は10分間のテスト,2週 間の学習後は1時間の試験を行なうといった状態である。大 学においても2週聞の学習後には必ずといってよいくらいに,

1時間の試験が実施されている。また,毎週行なわれる大学 の演習には,その時間の終了前10分間はテストにあてるとい った現状である。さらに,大学の単位認定は実にきびしく,卒 業はなかなか容易でない。これらの点は,我が国の場合と全

く反対の状態である。入試には一生懸命になるが,入学後は 余り勉強しないといった我が国の状態と,入試は,比較的や

さしいが,入学後は勉学を強制されるといったアメリカの現 状とを比較し,反省検討すべきであろう。さらに,大学入試 は,高校3学年在学中において受験でき,その入試も年6回 にわたり,各大学より選出された委員によって最も基本的な 問題について行なわれる。このテストは,平素の勉学で十分 優秀な成績がえられるように作成されてい

る。大学進学希望者は,希望する時期に1

り今や世界の一等国として,技術的にめざましい発展をとげ ている。下の表2)は,現行の普通科課程における一週間の授 業時数を示したものである。我が国のものに比して特長のあ る点は,初等学校低学年において,国語の一町数の多いこと と,理科の学習を省いていることである。国語教育の重要視 は,アメリカにおいても,すべての教科の基礎としてその重 要性が強く主張されていることと並んで見逃せない。

 また,生徒の指導についての基本的方針として,幼少の時 代より,年長者に対する感謝を中心とし,規則を守る習慣を つけさせるなど,その行動に対する習慣ずけを強張してい

る。そして,高学年になるにつれて,勤勉・規則正しさ・高 い文化的行為・人々に対する注意深さや心使い・公共物の取 り扱いを述べ,さらに国家への利益を考え,自分の名誉を尊 重することなどについても,週3〜4時間の労働教育を通じ て学習させている。また,必ず生徒を賞讃することを忘れて いない。反面,家庭における宿題の準備も,表に示したよう に或る程度規定され,無理なものはこれをさけさせている。

ソ連における授業時数(1週について)

度このテストを受け,この成績と高校在学 中の成績及び本人の希望を考慮して,各高 校のカウンセラーが集まり入学校を決定す るといった制度である。したがって入試地 獄の出現は余りみられず,在学している高 校の勉学に専念できる制度になっている点 はうらやましい状態である。現在,我が国 で試案として行なわれている暑湿テストは このような問題点に反省を加えて実施され ているもので,テスト問題の良否・実施の 方法には多くの検討が必要かとも考えられ

るが,何とかして現在実施されている大学 入試制度の問題を解決しなければ,高校教 育がゆがめられるばかりか,その弊害がさ

らに小・中・高校全般にわたる教育にまで 進展することを憂慮するものである。

 (2)ソ連教育の現状

 1958年に発表された教育7力年計画の実

施は,総合科学i技術教育(:Poli七ephnisum)

と称せられ,生産を第一目標として教育計 画が打ち立てられた。その後,産業教育に 関して一部の修正は加えられたが,その計 画は着々として進められ,その成果はあが

学 校 別

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◎国語(ロシア語)教科 \

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歴史と社会  国 語

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(4)

津山高専紀要(第1巻 第2層目

このように,生徒に対する習慣づけは,アメリカとは違った 形ではあるが,教育の場において強く要請されていることは 注目すべきである。

 13)イギリス・西ドイツの教育の現状

 戦前の日本は,ヨーロッパ教育によるところが多く,した がって,現在のイギリスの教育は我が国のものと非常によく 類似している。しかし,戦前の我が国の教育と異なる点は,

ユ944年バトラー法によって打ち立てられた宗教教育の実施で あろう。初等学校においては,私立学校だけでなく公立学校 においても勿論,宗教教育は主要なる役割をしめていたこと は見逃せない。そして,初等学校卒業後の上級学校進学は,

厳正なテストによりその進路が決められるといった制度もイ ギリス教育の特長である。このテスbによって.卒業者の20

%は5年制のグラマースクールへ,大部分の勤労者子弟(約 70%)は4年制のモダンスクールへ,5〜7%は5年制の中 等技術学校へ進学すといった状態である。最近は,コンプリ ヘンシブスクールが設立され,これら3日目課程をもった学 校がつくられている。さらに,私立のパブリックスクールは,

優秀な生徒の集りで,その教育にも特長があり世界的に有名 である。

 西ドイツにおいては,義務教育として8年制を実施してい るが,その中で4年制の基礎学校は合科教授法を採用してい る点に特色がある。したがって,基礎学校には理科という教 科はなく,上級国民学校において初めて教科としての理科学 習が実施されている。そして,大学教育をうけようとするも のは,基礎学校卒業後はそれぞれの専門分野に分かれて,9 年制の理数科・近代語・古典語などのギムナジウムや経済中 学校などに進学するといった制度になっている。この中等教 育を完全に終了するものは,入学者の25%(同年齢の生徒の 5%にあたる)といわれ,学問的に相当高いレベルのものが 課せられ,落伍者も非常に多い状態である。この点は,現代 の日本やアメリカに見られないところである。

III理科教育の現状

 東京工業大学の田中実教授は,中共・ソ連・欧州各国の理 科教育を視察され,「自然科学教育は動きつつある3)。」と述 べられている。このことは,アメリカ合衆国においても当然 いえることであり,日本の理科教育にも反省検討の時期が来 ていることを痛感する。

 (1)アメリカの理科教育4)

 小・中学校の理科教育は大体において,我が国と同様であ るが,幾分細かい点で異なっている。現地において私の見た 感じでは,教師による示範実験が生徒実験に比して非常に数

多く実施されている点である。これは,理科の学習は生徒実 験によることが最も効果的であるという考え方に検討反省を すべきことを示している。また,これらの示範実験の方法は,

どこに行っても同じであるが,これは良き理科教師であり能 率のよい理科指導を行うためには,最もよいすぐれた方法で 示話するべきであり,その方法は教師用書に示されたもので あると考えているからである。一方,このような教師中心の 指導体制の中にも,実にうまく生徒の発言・質問が折りこま れているのには感心させられた。また,教科書は読物的であ り,非常に詳細に記載されていて,読めば理解できるように 編集されている。ここにも,特に理科教育と読解力の必要性

との関連が考えられる。

 一学級の生徒数は何れも,30人前後でありその指導は容易 とも考えられるが,教師の受持時間は週25〜30時間という状 態で,しかも理科教師といえども大抵の場合,助手は使って いない。したがって,理科の指導にも,最も手経に実施でき る方法が要望されるのである。これと関連して,設備面もい ろいろと研究されてはいるが,準備室などをみても余り十分 な実験器具や材料が用意されているとは思われないし,部屋 の状態に比して薬品や器具の少ないことには驚かされた。ま た,最近の設備としては,実験装置を組み立て,これを実験 室の壁にはめこみ,簡単に示範実験ができるようにしたり,

いろいろな標本や図を用意したり,さらに映写用フィルムや テレビによる学習指導が実施されている。テレビによる理科 学習は,主として困難で技術を必要とする実験や学習の指導 について,その地区の教育委員会が計画立案して実施してい る。また,特殊な実験は,地区的に技術者が巡回して生徒i「

実験を公開するといった方法などが採用されている。これら に加えて,ティーチングマシン(Teaching machine)や示範 実験用器具・移動式実験テーブル(Mobile Table)などとい った新しい教授用器具が次々につくられ,理科指導を容易に している。さらに,見逃してならないものは,博物館の完備 であり,これにより日常生活の場において常に理科の学習が おこなわれるといった社会的環境や,家庭の地下室につくら れた工作室などの設備である。これらの背景のもとに理科教 育がなされ,その成果を発揮していると思われるので,その 中の一つのみを取り出してアメリカの理科教育を考えること はできない。

 なお,高等学校の理科教育振興のために,理科教育の本質 に立脚し,科学的な能力や考え方を養成する新しいカリキュ ラム5)が研究され,これを中心として,アメリカ全体が強力 な研究体勢のもとに着々とその成果をあげていることを忘れ

(5)

       杉山 観 てはならない。

 (2)ソ連の理科教育

 「総合科学技術教育」の示すが如く,理科学習に重点がおか れていることは論をまたないが,その理科教育も適切な年齢 や知識段階において,必要なことを重点的に指導するといっ たことは注目すべきであろう。したがって,小学校の段階で は余り理科の学習は行なわないで国語教育に重点をおき,理 科の学習は中学校や高等学校の段階で十分な時間をかけ、て急 速度に学習効果をあげるといった考え方は,我々に大きな反 省の材料をあたえている。また,化学教育者であるヴェルホ フスキー氏6)は,概念発達の原理・多面的な研究の原理・発 展する矛盾の原理などといった言葉で,科学史的な考え方・

学習方法・指導方法を強張し,さらに観察するだけでなく,

観察した事実をもとにして,目に見えないことや外面に表わ れない内面の現象までも洞察・推論するように指導すること を強張している。いわゆる,理科教育においては科学教授法 の出域をさらに拡げた科学方法論・認識論まで発展させるべ きことを意味していると思う。そして最後に,教師実験の重 要性を提起し,このことにより,生徒実験よりえられない細 かい観察推理(洞察力)の養成が期待できると述べている。

 {3)西ドイツ・イギリスの理科教育

 西ドイツの基礎学校(小学校)においては,合科教授法の 採用のため,理科という単独な教科を置かず,いわゆる生活 の巾において理科も学習させている。これが,上級国民学校

(中学校)になると理科を設け,系統的な学習を行なってい る。このように,西ドイツにおける理科教育は,ソ連のもの と類似する点が多いように思われる。

 また,イギリスにおいては,最近新しい理科教育に一歩ふ み出している。アメリカにおける物理・化学・生物の新しい 試みは,ともすれば各論的なものを大幅に削除しているが,

この点が批判の材料となっていて,今少し各論をとり入れた カリキュラムが必要とされている。この点をおぎなうべく,

イギ]」スにおいてはNuf fiel cl:Funda七ionよりの経費の援助 をえて,新しい物理や化学のカリキュラム構成の研究がなさ れているようであり,我々の大いにその成果を期待している ところである。

盃 日本の理科教育とその進むべき方向

 我が国の教育は,敗戦と同時に6・3・3・4制の教育に切 り代えられたが,敗戦前の教育の中にも大いに参考とすべき 長所をもっていた。特に,小学校教育につづいて国民学校教 育においては,読み・書き・・そろばん(算数)の教育を重点

的に指導し,理科の学習は4学年より実施するとか,また理

理科教育の動向

科の学習においては,自然の観察実験を重視した指導を強張 し,実験・観察に多くの時間をかけていたことなどがあげら れる。さらに,中学校においては,一般理科と称して,理科 を広く全般的に学習させると同時に,能力・志望に応じては 更に物理・化学・生物を深く専攻できるように考慮がはらわ れていた。また,入試においても,旧制の中学校より高等学 校への進学が最も困難であったが,受験資格は中学校4学年 終了以上であり,受験は4学年終了時と5学年終了時(中学 校卒業)の2回の機会があったので,現在の如き多数の浪人 はなく生徒にとっては何かと好都合であった。

 さて,現在の学校教育をゆがめているものは,何としても 高等学校及び大学への入学試験制度である。しかし,この問 題点の解決への歩みは遅々としてはいるが,多方面より検討 が試みられていることは喜ばしい。一方,理科教育も単に理 科の学習効果をあげることだけを考えたのでは返って効果が あがらない。何としても,他教科との関連を考慮してはじめ て,本当の意味の理科教育が向上される。指導の時問数を多 くすることは,何はともあれ理科教育を一層徹底する近道で はあるが,他教科との関連を考慮した場合,余り多くの時間 数を理科学習にとることはできない。従って,最も効果のあ がる年掛段階に,必要な教科を重点的に学習させることが必 要である。このためには,理科の学習は中学校と高等学校に おいて,重点的に指導することが能率的であると思う。たし かに,小学校における理科の学習も必要であるが,小学校低 学年で行なう遊びの中での理科学習または観察などは,小学 校高学年に実施したほうが能率的で効果があがり,決して学 習内容が低下するとは考えられない。むしろ,小学校低学年 においては理科学習の基礎となる読解力の養成に更に学習指 導の時間をまわす必要を痛感する。学校において学習する内 容のみの知識⑱理解は僅かなものであり,この外のいろいろ な生活環境や書物などから得られるものが非常に多い。この ためには,読解力こそ最も必要である。ここに低学年におけ る国語学習の徹底を望んで止まない。

 さらに,理解の指導も,実験・観察を通して科学的な考え 方や科学的な能力を養成することに特に重点をおき,基本的 な知識をもととして新しいものを創造してゆく教育すなわち 発展性をもった理科学習でなくてはならない。単に,多くの 知識を暗記しているだけでなく,それらを基にして新しいも のを創造し応用できる方向7)に進めるべきであろう。この指 導のためには,現在より更に多くのまとまった指導時間を必 要とするが,余り多くの知識内容の指導にのみ専念するとい った考えは一応捨て去り,徹底した科学的な考え方や能力を

(6)

津山高専紀要(第1巻

養成する方向の指導に向けられなくてはならない。また,理 解させるためには,理科教育においても討論の時間をもつ必 要がある。適当な理科内容について意見を発表させ,その問 題について検討を重ねることが,真の理解に近づく。そして,

理解の程度をたしかあるためには,前述したテストや試験が 必要である。余り自主制にまかした勉学は,理想の教育では あるが現実の社会に適合した方法ではなく,現実の人間性を 忘れた教育・指導である。人間のもっている安易性は本能で あるが,これを指導し努力させてゆくことが教育である。

 以上の如き観点より,我が国の理科教育の方向を検討すべ きであると思う。このたあには,単に理科教育のみでなく,

入試制度は勿論のこと,小・中・高・大学を通じた全教科の学 習指導と教科目の配分,そしてその指導時間数を率直に批判

・検討・反省しなくてはいけない。適切な年齢段階において,

必要な教科を重点的に指導することこそこの問題点を解決す る方策と考える。最も基本的な教育は,何としても小学校教 育にあり,音楽教育・国語教育・社会科教育の徹底こそ必要 であろう。従って,このためには,理数科の指導は高学年に 廻し,高学年において能率的に指導する必要を痛感する。返 って,ここに理科教育の振興があり,更に国語教育・社会科 教育・音楽教育を中心としてすべての教科の向上が考えられ

る。すべての教科を万遍に学習させることは理想の教育であ り,返ってその効果が望めない。

 我が国の理科教育も,いろいろとそのカリキュラムや指導 法の改訂もあったが,更に教育課程全般にわたる総合的な改 訂も必要であろう。そして,理科の学習においては,今少し 指導内容を少なくし,学校における指導は最:も必要な面を重 点的に指導し,他の部分は読解力によるべきである。すべて の内容を指導することは理想であるが不可能なことである。

それと同時に,指導法の再検討がなされなければならない。

立派なカリキュラムもその指導によってはじめて立派な理科 教育が成立するもので,このためには,科学史的な発展段階 を重要視し,実験観察を中心にして,更に創造力・推理力を 養成する方向に進めるべきである。この指導法の実際的研究 が今後に残された重要な問題である。単なる理論による指導 法でなく現場に立脚したものでなくては役立たない。このた めには,単に他国の制度や指導法をとり入れるだけでなく,

日本の国情や社会環境に十分に合致した教育全般より考えら れた理科教育でなくてはならない。これは,理科教育にたず

さわるものだけでなく,教育者全般,広く国民一般の教育に たいする反省と理解の上に立ち,全面的な協力がなく不可能 である。これこそ,広い立場に立った理科教育の反省であり,

  第2号)

新しい理科教育の樹立である。

を期待して止まない。

この日の一日も早からんこと

参考文献

1)ソビエット教育科学辞典参照,ソビエット教育学研究会編訳   (明治図書)

2)Education in七he USSR:U. S. Department of Hea1七h, Edu−

 cabion, and Welfare, Office of Education 3)化学教育Vol.11, N・.3〜4,1963日本化学会

4)中学校教育研究 私のみたアメリカ教育,1961年第9集,広   島大学教育学部附属中学校中等教育研究会

5)物理,PSSC;Physical Science Study Committee.

  化学,CBA;Chemical Bond Approach.

    CHEMS; Chemical Education Materials Studies.

  生物,BSGS;Biological Science Curriculum Sdudy.

6)化学実験教授法,ヴェルホフスキー著 大竹三郎訳,明治図   書

7)CBA化学のBlack BoxやCHEMS化学のBlue Bo七tleの   指導や適切なモデルによる内容の理解などの指導方法

参照

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