ソ連企 業 の独立 採 算 制 の理論 的 諸 問題
小 田 福 男
目 次
は じめ に一 ソ連 で の 班究 動 向一
‑繭ワ臼nδ45
独立採算制 に対 す るア プローチ 独立採算制 の発生原 因
独立採算制 と企業 の相対的 な経済的孤立性 独立採算制 と企業 の集団的利益
種 々の環 の独立採算制 お わ りに一 今 後 の 課 題 一
は じ め に 一 ソ 連 で の 研 究 動 向 一
本 稿 の 課 題 は;ソ 連 企 業 の 独 立 採 算 制(xo3pacqeT,econo面caccounting (1)
systemな い しself‑contained且nance)の 研 究 に お い て 議 論 さ れ る べ き 理 論 的 諸 問 題 の う ち 若 干 の 論 点 に つ い て 検 討 す る こ とに あ る 。
そ こ で ま ず ソ連 で の 近 年 に お け る 研 究 動 向 を 簡 単 に 見 て お こ う。 そ れ は 以 下 ・ の 諸 論 点 の 意 味 を 理 解 す る の に 有 益 で あ る 。 第 二 次 世 界 大 戦 以 後 の 研 究 動 向 は 大 き く4つ の ポ イ ソ トに よ っ て 区 分 し う る。 そ れ は,(1)独 立 採 算 制 の 客 観 的 性
、
格 の 承認 …(2)独立 採 算 卸 の発 生 原 因 の究 明,(3)独 立 採 算 制 研究 と政 治経 済 学 と の 関 連 の増 大,④ 各 種 の独 立 採 算 制 の研 究,で あ るQ
'
(1)独 立 採 算 制 の 客 観 的 性 格 の 承 認 原 稿 受 領 日1980年4月30日
(1)そ の 他,self‑supPorting(running),self翁nancingと 訳 さ れ る こ と も あ る。
[89⊃
一 般 に,1950年 代 以 前 は 独 立 採 算 制 が 経 済 運 営 方 式 と し て の み 考 察 さ れ て い た 。 と こ ろ が1950年 代 に 入 っ て そ れ に つ い て 論 争 が か な り広 範 に 行 な わ れ,そ の 結 果,大 多 数 の 経 済 学 者 た ち は 独 立 採 算 制 が 経 済 運 営 力 式 で あ る と 同 時 に 社 会 主 義 的 生 産 諸 関 係 を 表 現 す る経 済 的 カ テ ゴ リー で あ る こ とを 承 認 す る よ うに
(2)
な っ た 。 前 者 の 側 面 は 国 家 の 経 済 政 策 の 要 素 つ ま り独 立 採 算 制 の 主 体 的 側 面 で あ り,後 者 の 側 面 は そ の 客 観 的 な 側 面 で 拳 る 。 つ ま り独 立 採 算 制 が 客 観 的 側 面 を も有 す る こ と が 承 認 さ れ た の で あ る 。
独 立 採 算 制 の 客 観 的 性 格 の 承 認 の た め の 大 き な 契 機 とな っ た の は,シ ビ リ ョ ー フ(A.H.CH6HpeB)に よ れ ば 初 め て の,広 義 の 政 治 経 済 学 教 科 書 の 出 版 で あ る(そ れ は1954年 に 出 版 さ れ た)。 す な わ ち そ れ の 出 版 準 備 過 程 に お い て, 独 立 採 算 制 を 単 に 企 業 を 計 画 的 に 管 理 す る方 式 と して の み 把 握 す る こ と の 不 十 分 性 が 問 題 に な っ た 。 な ぜ な ら,こ の 把 握 で は 独 立 採 算 制 が 主 体 的 な も の と し て の み 把 握 さ れ,客 観 的 な 生 産 諸 関 係 を 主 な 研 究 対 象 とす る 政 治 経 済 学 の 対
(3)
象 の 中 に 入 っ て こ な い か らで あ る 。 ち な み に 当 時 は,管 理 と関 連 して い る す べ (4) て の 事 象,カ テ ゴ リ ー は 専 ら 上 部 構 造 の 要 素 とみ な さ れ て い た の で あ る 。
そ の 後,独 立 採 算 制 の 客 観 的 性 格 の 承 認,し た が っ て 前 述 の よ うな 二 分 法 的 把 握 が 一 般 化 し,シ ビ リ ョー フ に よれ ば そ の よ うな 把 握 が い わ ば 公 理 の 性 格 を
(5)
得 た 。 ・
(2)独 立 採 算 制 の 発 生 原 因 の 究 明
独 立 採 算 制 の 客 観 的 性 格 カミ承 認 さ れ た 後,次 に そ れ の 発 生 原 因 の 問 題 に 研 究 の 焦 点 が 移 っ たQつ ま り,客 観 的 存 在 と して の 独 立 採 算 制 は い か な る要 因 に よ
(6)
っ て 引 き 起 こ さ れ る の か とい う問 題 が 注 目 さ れ た 。 当 初,社 会 主 義 の 経 済 法 則 の 作 用 に よ ・)て生 じ る とい う見 解 が 普 及 した 。そ の 際,い か な る経 済 法 則 を 独 立 採 算 制 の 発 生 原 因 と して 挙 げ る か に よ っ て 若 干 の 相 違 が 見 られ た 。 ま ず 第 一 の
(2)A,K.AraΦoHoB,ToBapHoenpoH3BoAcTBoH3aKoHcTo班MocTHnpHcoH・
Ha』K3Me.《HayKoBaAyMKa》,K匪eB,1975,cTμ116.
(3)(4)(5)A.H.C皿6叩eB,Pa3畷 丁霞ecπcTeMHxo3pacqeTaBnpoMも1置1πeHHocTK (onblTHcTopHH,Teop胚 鉦).《∈)KoHo瓢皿qecK胚eHayKH》,1977,♪&9,cTp.8.
(6)A.K.AraΦoHoB,yKa3.coq.,cTp.116.
ソ連企業 の独立採算制 の理論的諸 聞題 91 噂 か な り普 及 した 見 解 は
,そ の 発 生 原 因 を 社 会 主 義 に お け る 価 値 法 則 の 作 用 に 求 め る 見 解 で あ っ た 。 た と え ば 前 述 の 経 済 学 教 科 書 の 第 二 版,第 三 版 は 明 確 に ご
●の 立 場 を と (7)
っ て い る 。 しか し こ の 見 解 で は,独 立 採 算 制 が 社 会 主 義 に 固 有 な カ (8)
テ ゴ リ ー で あ る こ とが 十 分 に 解 明 さ れ な い と批 判 さ れ た 。
(9) 他 方,若 干 の 経 済 学 者 は 独 立 採 算 制 の 発 生 原 因 を 時 間 節 約 法 則 に 求 め た 。 し か し こ の 見 解 も批 判 を 受 け た 。 つ ま り こ の 法 則 は 社 会 主 義 の み な らず す べ て の 社 会 経 済 構 成 体 に 内 在 して い る 。 した が っ て 前 述 の 見 解 と 同 様 に こ の 見 解 で は 特 殊 社 会 主 義 的 カ テ ゴ リー で あ る 独 立 採 算 制 が 十 分 に 説 明 し え な い 。 さ らに こ の 見 解 で は 二 つ の 異 な っ た カ テ ゴ リー で あ る 独 立 採 算 制 と節 約 制 度 一 こ の 法 則
⑩ の 本 来 的 実 現 形 態 一 とが 同 一 視 さ れ る 危 険 性 が あ る 。
そ こ で 多 く の 研 究 者 は 複 数 の 経 済 法 則 な い し全 て の 経 済 法 則 が 独 立 採 算 制 の
⑪'
発 生 原 因 で あ る とみ な したQし か し独 立 採 算 制 の 発 生 原 因 を 何 らか の 経 済 法 則 に 求 め る 諸 見 解 に 対 して 方 法 論 的 な 根 本 的 批 判 が 提 起 さ れ た 。 ス ピ リ ドー ノ ワ (H.C.CnHP瓢OHOBa)に よ れ ば,経 済 法 則 は 生 産 諸 関 係 に お け る 一 定 の,必, 然 的 な,本 質 的 な 関 連 を 表 現 す る もの で あ る 。 した が っ て 論 理 的 に は,生 産 諸 関 係 が ま ず 存 在 しそ れ が 経 済 法 則 を 生 じ さ せ る の で あ り,そ の 逆 で は な い 。 そ れ ゆ え 経 済 的 カ テ ゴ 璽 一 と して の 独 立 採 算 制 に よ っ て 表 現 さ れ る 一 定 の 生 産 諸 関 係=独 立 採 算 制 諸 関 係 は,経 済 法 則 に よ っ て 引 き起 こ さ れ る の で は な い 。 そ し て 独 立 採 算 制 の 存 在 を 経 済 法 則 の 作 用 に よ っ て 説 明 す る こ とは,独 立 採 算 制 を 経 済 法 則 の 認 識 と利 用 に 立 脚 し て い る 経 済 政 策 の 一 部 と して の み 把 握 す る 前
(7)noJmTHqecKa亘9KoHoMHH(yqe6HHK).BTopoe,Aono丑HeHHoeH3AaHHe,
rocno丑HTH3mT,1955,cTp.500.〔 邦訳 〕 『経 済学 教 科 書 』,増 補 改訂 版,合 同 出 '版 社,1958年,796頁 。no朋THqecKa牙9KoHoMH"(yqe6H照).TpeTbeH3Aa.
HHe,rocnoJIKTH3八aT,1958,cTp、534.
(8)A.1く.AraΦoHoB,yKa3.coq.,cTpド117.
(9)瓢.M」1〈onTeB,HeKoTopbleBoHpocblxo3兄 茸cTBeHHoropacqeTaBnepexoA
、pa3BepHyTorocTPoHTeJ【bcTBaKoMMyHH3Ma.厘.,1961,cTp.34.
⑩OTBe筑pe几A.H.A丑blMoB,BHyTpH3aBo八cKH営xo3曲cTBeHHbl負pacqeT BHoBblxyc丑oBHHx.《HayKoBaAyMKa》,KKeB,1971,cTp.13.
α】)IH.H.TypeuKH益,OqepKKu母Hoo6pa30BaHH兄BCCCP.rocrloπHTH3AaT, 1959,CTF37.
述 の古 い 見 解 に 後 退 す る こ とを 意 味 し,客 観 的存 在 と して の独 立採 算 制,生 産 諸 関係 の環 と して の独 立採 算 制 の 否 定 に通 じ る。 この よ うに ズ ピ リ ドー ノ ワは
⑫ 批 判
して い る。 そ の 結 果,独 立採 算 制 の発 生 原 因 を経 済法 則 に求 め る見 解 の 支 持 者 は減 少 しつ つ あ る。 そ して それ の発 生 原 因,本 質 を生 産 手 段 の社 会 主 義 的
⑬ 所 有 と結 びつ け る見 解 が普 及 をみ せ て い るQ
この よ うな見 解 は既 に1950年 代 の初 期 に存 在 した。 た とえ ば ク ロー ソ ロ ト αφ (只.A.KpOKpo双)は1952年 に 出 版 した 著 作 の 中 で この 見 解 を主 張 して い る。
また 法 学 博 士 で あ る ノ ヴ ィー ツキ ー(H.B.HOB瓢KH恥 も1953年 の論 文 で 述 べ て い る。 「独 立 採 算 制 原 理 に基 づ く社 会 主 義 企 業 の 組 織 化 は ,国 家的な社会 主義 的 所 有 及 び 社 会 主 義 的 生 産 諸 関 係 の 本 性 そ の もの … … に よ って 引 き起 こさ
⑯
れ て い る。」 さ らに1961年 に 出版 され た著 作 の 中 で 前 出 の ス ピ リ ドー ノ ワは 明 確 に次 の よ うに 規 定 した。 「… … … 独 立採 算 制 諸 関係 の本 質,そ の本 性 は生 産 手 段 の社 会 的所 有,そ れ の根 本 的諸 特 性 及 び 社 会 主 義 的発 展 段 階 に おけ るそ れ
⑯
に 固 有 な 諸 特 殊 性 に よ っ て 引 き 起 こ さ れ る 。」 独 立 採 算 制 炉 生 産 手 段 の 社 会 主 義 的 所 有 に よ っ て 引 き 起 こ さ れ た こ と を 承 認 す る 見 解 が 普 及 し た ヒ と は,前 述 の 経 済 学 教 科 書 の 第4版(1962年 出 版)に お い て こ の 見 解 が 採 用 さ れ た こ と に
⑰ 現 わ れ て い る 。
(3)独 立 採 算 制 研 究 と 政 治 経 済 学 と の 関 連 の 増 大
1960年 代 の 半 ば 以 降,経 済 改 革 の 実 施 と い う 社 会 経 済 的 変 動 を 背 景 と し て 独 立 採 算 制 の 研 究 は 大 き く 発 展 ・深 化 し たQと り わ け 政 治 経 済 学 と 独 立 採 算 制 研
⑫H.C.C賜pKAoHoBa,Xo3畷cTBeHHH薩pacqeTBHoBb1xyc刀oB雌xynpaB・
.」IeHH分npoMbl田JleHHocTblo.レ131】 レBo瓢ry,ML,1961,cTμ20‑22.
⑬A.1〈.AraΦoHgB,yKa3.co㌦,cTp。118.
⑭ 分.A.1<poHpoA,OcHoBblxo3崩cTセeHHoropacqeTa.rocuo朋TH3AaT,1>1., 1952,CTP。7.
⑮H.B.HoBH旺K旺 茸,OnpaBoBbIxΦopMaxocyHエecTBJ【eHH兄xo3H藍cTBeHHoPo pac竃{eTa.《CoBeTcKoerocyAapcTBoHnpaBo》,1953,♪ 拒5,cTp76.
⑯H.C.CnHpHAoHoBa,yKa3.coq.,cTp,18.
Oオno4HT聾qecKaπ9KoHoMHH(y冤e6HHK).qeTBepToe,nepepa60TaHHoeH
Aono朋eHHoeH3江aHHe,rocno澱T照 双aT,M,1962,cTp.544.〔 邦 訳 〕 『経 済 学 教 科 書 』,改 定 増 補 第4版,合 同 出 版 社,1963年,842頁 。
ソ連企業 の独立採箕制の理論的諸問題 93
究 の結 び つ きが 強 め られ る こ とに よっ て,独 立 採 算 制 が政 治経 済 学 的 に基 礎 付 け られ,そ の結 果,従 来 支 配 的 で あ った 独 立 採 算 制 の 平面 的 な 叙述 か ら,そ れ
⑱ の 内容,構 造 の立 体 的 な解 明へ と進 展 したQ
⑲
シ ビ リ ョー フ に よれ ば特 に次 の 諸 点 に つ い て の研 究 が 深 め られ た 。1)独 立 採 算 制 と社 会 的所 有 諸 関係 との 関連Q2)独 立 採 算 制 と商 品 貨 幣 諸 関係 との 関 連Q3)独 立 採 算 制 と社 会 主i義の経 済 的 諸利 益 との 関 連。1)の 研 究 分 野 は前 述 の よ うに そ れ 以 前 に 一 部 の研 究 者 に よって 注 目 され て い た分 野 で あ るが,こ の時 期 に は そ うした研 究 者 が増 大 した こ と と社 会 的 所 有 諸 関 係 に お け る相対 的 な経 済 的 孤 立 性 の契 機 の研 究 が 進 み,そ れ と独 立 採 算 制 とを 結 び つ け る研究 が 増 えた こ とに 特 徴 が あ る。 彼 に よれ ば,も ち ろん 種 々の,相 互 に対 立 す る諸見 解 が 表 明 され た け れ ど も総 じて 独 立 採 算 制 とそ の よ うな相 対 的 な経 済 的 孤立 性
とが密 接 に結 び つ い て い る とい うこ と1ま多 くの人 々に よ っ て承 認 され たQ2) の研 究 分 野 に つ い て も,独 立 採 算 制 諸 関 係 が 直 接 に社 会 的 な 諸 関係 と商 品貨 幣 諸関 係 との統 一(総 合)で あ る とい うこ とは広 範 な研 究 者 に よ って 承 認 さ れ た 。 また3)の 研 究 分 野 に つ い て も,独 立 採 算 制 が 社 会,企 業 及 び働 き 手 の経 済 的 諸 利 益 の統 一 の確 保 に おい て特 別 に重 要 な 役 割 を 果 た す こ とは 広 く承 認 さ
⑳ れ たQ
(4)各 種 の 独 立 採 算 制 の 研 究
1970年 代 に 入 る と,前 述 の 三 つ の 研 究 分 野 の 研 究 を 中心 と して 引続 き独 立 採 算 制 の理 論 的 研 究 の深 化 ・発 展,そ れ の 政 治経 済 学 的基 礎 付 け が進 む と同時 に 新 しい聞 題 も提 起 され,そ れ が 集 中 的 に 研 究 され た。 す な わ ち1960年 代 以降, 企 業 合 同 の 形 成,そ れ へ の 独 立 採 算 制 の 導 入,省 へ の 独立 採 算制 導 入 の試 み, 企 業 内 独 立採 算 制 の 改 善 ・強 化 が 実 施 され た。 そ れ に伴 って,企 業 を も含 めた
⑱A.H.C睦6即eB,Xo3pac斑eTHeropa3B猟THeBcoBpeMeHHHxyc丑oB四x.
143双一BO刀ry,1974,CTμ46,
⑲⑳A.q.CH6HpeB,yKa3.coq.,1977,cTp11.な お,経 済改 革の実施に併って いわゆ る完全独立採算制(πo冴Hbl藍xo3pacqeT)が 間題 となったqこの問題は1970 年代に入って も議論 されてい るが,こ れについては次 の拙稿 を参照 のこと。(拙 稿
「完全独立採算制 につい て」,『六 甲台論集』,第25巻第3号,昭 和53年10月。)
社 会 的 生 産 の種 々 の環 の独 立 採 算制 を どの よ うに 統 一 的 に 把 握 す べ き か とい う 問 題 が 提 起 さ れた の で あ る。 この問 題 の 解 決 の た め の ア プ ロー チは 大 き く二 つ に 区 分 し うる。 第 一 の ア プ ロー チ は種 々 の環 ゐ独 立 採 算 制 の内 容 の 同 一 性 か ら 出発 す る。 シ ビ リ ョー フに よれ ば現 在 の とこ ろ,こ の ア プ ロー チが 多 数 説 で あ り,1930年 代 に企 業 内 独立 採 算 制 が本 格 的 に 導 入 され た 際 に 採 られ た ア プ ロ ー
⑳
チに そ れ の原 型 が あ るQも う一 つ の ア プ ロー チは 種 々の 独 立採 算 制 の 内 容 は 同 一 で は な い とい うこ とか ら出発 す る。 した が っ て社 会 的 生 産 に おけ る各 々の環 の 位 置,内 的 構 造 等 々の特 殊 性,差 異 性 が 強 調 され る。 そ して 種 々の独 立採 算 制 を 統 一 的 に 把 握 す る方 法 と して は,独 立 採 算 制 を まず社 会 主 義 企 業 の経 済 運 営 形 態 と して 規 定 し,そ の後 にそ れ か ら派 生 した もの と して そ の他 の環 の独 立
22}
採 算 制 を 規 定 す る の で あ る。
以 上,我 々は 独 立 採 算 制 の最 近 の研 究 動 向 を概 観 して きた 。 次 に 主要 な論 点 に つ い て 詳 し く検 討 す る。
触1.独 立 採 算 制 に 対 す る ア プ ロ ー チ
独 立採 算 制 に ア プ ロー チす る場 合 に,前 述 の よ うに 二分 法 的 ア プ ロ ーチ す な わ ち 経済 的 カ テ ゴ リー と して の側 面 と経 済 運 営 方 式 と して の側 面 に 区分 して論 じ る ア プ ロー チが 一 般 的 で あ る。 そ の際,前 老 は 客 観 的 に 規 定 され た もの と し
㈱
て,後 者 は 意 識 的 に管 理 され る もの と して 把 握 され る。 す な わ ち 前 者 は 客観 的 な 生 産 諸 関 係 の 一 部 で あ るが,後 者 は経 済 政 策,上 部 構 造 の 一 部 とみ な され る。
こ の二 分 法 的 ア プ ロ ーチ の意 味 は次 の こ とに あ る。 す なわ ち経 済 政 策 の 一 部 で もあ る経 済 運 営 方 式 と して の独 立 採 算 創 は 経 済 的 カ テ ゴ リー と して の 独 立採 算 制 に おい て表 現 さ れ る一 定 の客 観 的 な生 産 諸 関 係 を近 似 的 に反 映 す る。 つ ま り
⑳ 両老 は,客 観的存 在 とそれの主体的 ・意識的利恥 形態 とい う関係にあ る。 した
②1N2助A.H.CH6HpeB,yKa3,coq.,1977,cTp.11.
2鋤no1真pe几n.r。ByH四a,HayqHHeocHoもblHHpaKTHKaxo3涯 茸cTBeHHoro
pacqeTa.《9KoHoMHKa》,ハ 八,,1974,cTp.20,
⑳B.rep】 皿KoBnq,B.JIHB】 ∬ πU,Xo3ヨ 蕗cTBeHHb1営pacqeT翼 ∂KoHoMHqecK澱e HHTepecbl.《9KoHoMHqecK皿eHayKH》,1975,♪ 西8,cTp.39‑40.
ソ連企業 の独立採箕制 の理論的諸問題 95
が って 実 践 的 に ば,客 観 的 な 生産 諸 関係 と して の独 立 採 算制 に 最 も完 全 に 合 致 す る よ うに 経済 運 営 方 式 と して の そ れ を形 成 ・運用 して い くこ とが 重 要 に な
㈱
る。 つ ま り経済 的 カテ ゴ リー と して の独 立 採 算 制 は経 済 政 策 のた め の 客観 的 指 針 の 役 割 を 果 して い るの で あ る。 二分 法 的 ア プ ロ ーチ は こ の よ うな 事 情 を 反 映
して い る と考 え られ る。
これ に対 して シ ビ リ ョー フは次 の よ うに二 分 法 的把 握 の問 題 点 を 指 摘 す る。
第 一 に,確 か に 独 立 採 算 制 は 一 方 で は 客観 的 な 経済 的事 象 で あ る と同時 に 他 方 で は 国 家 に よ って 意 識 的 に利 用 され て い る。 しか しこの よ うな事 態 は社 会 主 義 の す べ て の 経済 的事 象 た とえ ば価 格,賃 金等 々に お い て生 じてい る。 そ の 際, そ れ らに お い て は 独 立 採 算制 に お い て採 られ て い るよ うな ア プ ロー チは採 られ て い な い 。 た とえ ば 意識 的 に 設 定 さ れ る とい うこ とで,価 格 の諸 形 態 を 経 済 的 カ テ ゴ リー と して の 価 格 か ら切 りは な して 経済 政策 の要 素 と して のみ 考 察 して は い な い 。 しか し独 立 採 算 制 の 場 合 に は,国 家 に よ る意 識 的 利 用 と結 び つ い て い る事 柄 が一 た だ し実 際 に は 独 立 採 算 制 の 具体 的 諸形 態 が一=経済 的 カ テ ゴ リー
㈱ の枠 の 外 に 持 ち 出 され,経 済 政策 の要 素 と して の み 考察 され て い るの であ る。
これ は 不 自然 な こ とで あ る。 さ らに,そ の こ とに よ って経 済 的 カテ ゴ リー と し て の 独 立採 算制 の分 析 内 容 が 貧 弱 に な る傾 向 が あ る。 す なわ ちそ のた め に しば しぽ経 済 的 カテ ゴ リー と して の そ れ の 規 定 が,或 る企業 と国 家,他 の企 業 及 び そ の 企 業 内 の個 々の 働 ぎ手 た ち との 客観 的 な 諸 関係 の総 体 で あ る とい うこ との
㈲ 、
単 な る 「宣 言」 に終 って い る。
第二 に,シ ビ リョー フに よれ ば 経 済 運 営 方 式 と して の独 立 採算 制 を 単 に 上 部 1構造 の要 素 と して把 握 す る こ とは正 し くな いQ経 済 運営 方 式 と しての 勢 立 採 算 制 は 基 本 的 に は 土 台 的 関 係 に 属 す る もの で あ る。 この よ うな主 張 の背 景 に は経 済 管 理 諸 関 係 に 関 す る性 格 規 定 の 問題 が あ る。 シ ビ リ ョー フに よれば 近 年,経 済 管 理 諸 関 係 は 上部 構 造 で は な く基 本 的 に は 土 台 的 関係 で あ る とい う見 解 が 広
㈱A.1く.AraΦoHoB,yKa3.coq.,cTp,116.'
㈱A.H.CH6HpeB,yKa3.coq.,1974,cTp.53.
⑫?)TaM)Ke,CTP.54. .
く 承 認 され つ つ あ る 。 こ の こ とは 大 き な 意 味 を も っ て い る 。 な ぜ な ら従 来 の 見 解 で は,生 産 管 理 諸 関 係 は 上 部 構 造 的 諸 関 係 の 一 つ とみ な さ れ る か ら,生 産 管 理 諸 関 係 の 要 素 で あ る 経 済 運 営 方 式 な い し計 画 的 管 理 方 式 と し て の 独 立 採 算 制 も 上 部 構 造 の 要 素 とみ な さ れ な け れ ば な らな か っ たQし か し新 し い 見 解 で は そ の よ うに み な す 必 然 性 は な い 。 そ こ で 二 分 法 的 独 立 採 算 制 把 握 す な わ ち 経 済 的 カ テ ゴ リー と し て の 独 立 採 算 制 は 客 観 的 な 生 産 諸 関 係 の 一 部 した が っ て 下 部 構 造 の 一 部 で あ り,他 方,経 済 運 営 方 式 と し て の そ れ は 管 理 に 関 す る 関 係 で あ り上 部 構 造 た 属 す る と い う把 握 を 再 検 討 し う る 余 地 が 生 じ た の で あ る。 す な わ ち 独 立 採 算 制 の 二 つ の 側 面 を 統 一 的 に 把 握 す る こ と つ ま り経 済 運 営 方 式 と し て の 独 立 採 算 制 の 分 析 が 同 時 に 経 済 的 カ テ ゴ ジ ー と し て の 独 立 採 算 制 の 分 析 を も意 味
㈱ す
る と い う こ と が 方 法 論 的 に 可 能 に な っ た の で あ る。
以 上 の 点 か ら シ ビ リ ョ ー フ に よ れ ば,'最 も正 し い ア プ ロ ー チ は,「 独 立 採 算 制 に 対 し て,何 か 二 つ の 異 種 の 部 分 か ら成 る も の と して で は な く社 会 主 義 企 業 に お け る 統 一 的 な,客 観 的 な 経 済 運 営 形 態(あ る い は 同 じ こ とだ が 再 生 産 過 程
(諭
の 形 態)と し て ア プ ロ ー チ す る こ と で あ る 。」 そ して こ の 形 態 は 社 会 主 義 の 他 の 経 済 的 事 象 と 同 じ よ うに 計 画 的,意 識 的 に 発 展 さ せ られ る も の とみ な さ れ て
い る。 .
前 述 の よ うに 社 会 主 義 社 会 に お け る 生 産 管 理 の 諸 関 係 の 性 格 規 定 を め ぐ っ て 論 争 が 展 開 さ れ て い る。 一 方 の 人 々 は,そ れ を 上 部 構 造 的 諸 関 係 の 一 つ とみ な す が,他 方 の 人 々 は,そ れ を 土 台 的 諸 関 係 一 経 済 的 諸 関 係 の 一 つ とみ な すQそ の 際 大 き な 論 点 と な る の が マ ル ク ス の 生 産 諸 関 係 二 人 間 の 意 志 か ら独 立 した
(31)
諸 関 係 とい う規 定 で あ る 。 す な わ ち こ の 規 定 を 厳 密 に 解 釈 す る 人 々 は,そ れ を 人 間 の 意 識 を 通 過 し な い で 形 成 さ れ る 諸 関 係 の み が 経 済 的 諸 関 係 で あ る と解 釈
㈱A.H.C胚6HpeB,yKa3.coq.,1977,cTp.12.
2g)㈹A.レ1.CH6HpeB,yKa3.co職,1974,cT獅54.
(31}K.Marx,F.Engels,昭 θ7々θ.Band13,DietzVeriag,Berlin1974,S.8.
〔邦 訳 〕 大 内 ・向 坂 ・小 島訳r経 済 学批 判 』,マ ル クス ・エ ソ ゲル ス選 集7,新 潮 社,昭 和34年,54頁 。 な お 以 下 の文 献 も参 照 の こ と。
稲 村 毅稿 「管 理 と生 産 関 係」,『 関 大商 学論 集 』,第19巻 第2号,1974年,1‑6頁 。 片 岡信 之 著r経 営経 済 学 の基 礎 理 論 』,千 倉 書 房,昭 和48年,34‑37頁 。
ソ連企業 の独立採算制 の理論的諸問題 97
す る。 した が って 本 来 的 に 「意 識 され た 諸 関 係 」 と して存 在 す る生産 管 理 諸関 係 は 経 済 的 土 台 では な く上 部 構 造 に 属 す る こ とに な る。 二分 法 的 ア プ ロー チは 概 して 上述 の 解 釈 に 立脚 して い るQ
それ に対 して 経済 的 諸 関係 の 客観 性 を広 く解 す る人 々 の一 人 で あ る シ ビ リ ョ ー フ に よれ ば ,そ れの客観性 を人 間に よるそれ の無認識性,そ れ の自然発生性 と規 定 す る こ とは 自然発 生 的 に発 展 す る諸 関係(た とえば 資 本 主 義 的 生 産 諸 関 係)1こ おい て の み妥 当 す る の で あ ら て,計 画的 に発 展 す る社 会(た とえば 社 会 主 義 社 会)で は 狭 す ぎ る解釈 で あ る。 そ こで シ ビ リョー フ は生 産 諸関 係 の客観 性 の基 準 を,.(1)それ が 人 間 の 意 識 の外 で 自立 的 に 存 在 す る こ と。(2)客観 的 諸条 件 に よ って そ れ の発 展 が 規 定 され てい る こ と,に 求 め る。 これ に よ って 生 産管 理 諸 関係 が 客観 的 な経 済 的 諸 関係 の 一部 とみ な し うる よ うに な る。 つ ま り生 産 管 理 諸 関 係 は 確 か に 意 識 的 に 組 織 され る諸 関 係 であ るが,上 述 の 客観 性 の 基準 を 満 た して い る。 さ らに 生産 管 理 諸 関 係 が 生 産 の領 域 に 属 して い る こ と も,そ れ が生 産 諸 関係 の 一 部 で あ る こ との根 拠 と され て い る。 国 家 の管 理 活 動 に つい て い えば,そ れ が生 産 管 理 活 動 で あ る か ぎ り基 本 的 に は土 台 的性 格 を有 す る現
囲 象 とみ な され て い る。
生 産 管 理 諸 関係 が基 本 的 に 土 台 的関 係 に 属 す る こ とが 承認 され るな らば,独 立 採 算 制 の,管 理 方 法,経 済 運 営 方 式 と して の 側 面 も土 台 的 関 係 に含 まれ るこ と は容 易 に承 認 され る。 そ こで シ ビ リョ ー フに よれ ば,い わ ゆ る独立 採 算 制 の 二 側 面(生 産 諸 関係 の一 部,経 済 運 営 方 式)が 共 に土 台 的性 質 を持 つ もの であ る 以 上,こ とさ ら区 別 して論 じる必 然 性 は な く,各 々 の 内容 は抽 象 か ら具 体 へ の 論理 展 開 ρ 中 で統 一 的 に把 握 す れ ば よい こ とに な る。 つ ま りシ ビ リョー フは 独 立採 算 制 を経 済 的 カテ ゴ リー と経済 運 営 方 式 とに 区 分 す る の で はな く,経 済 (謝A.14.CH6HpeB,yKa3.coq.,1974,cTp.36‑41.た だ しシ ビリョーフは次の
ようにも述べ てい る。 「生産管理諸関係 を決 して単に土台的諸 関係 とのみみ な して はな らない。 管理諸関係は 自 らの基礎 におい てのみその ようであるのであ る。」 つ ま り生産管理過程におい て,政 治的,法 律的,道 徳 的な諸要 因が広 く利用 され てい るとい う意味では生産管理諸関係は上部構造的諸 要因を 自らの内に含 んでい る。 し か しそれ らは基本的には土台的諸関係に属す る とみな され てい る。(A・H・CH6H卵B, yKa3.coq.,1974,cTp.40.)
的 カテ ゴ リー と して の独 立 採 算 制 の分 析 に独 立 採 算 制 的 経済 運 営 方 式 の分 析 を も含 ませ る こ とを主 張 す る。 「経 済 的 カテ ゴ リー と して の独 立 採 算 制 に おい て まず 第 一 に 商 品 生 産 者 と して の社 会 主 義 企 業 の 経 済 的 規 定 の特 異性 そ して この (3紛 規 定 に よ って 決 定 され た 企 業 の経 済 運 営 形 態 及 び 管 理 方 式 が 表 現 され て い る。」 そ して シ ビ リョー フに よれ ば 二 分 法 的 ア プ ローチ は,「 独 立採 算 制 の 客観 的 性 格 とそ れ の 意 識 的 な 導 入 と発 展 とい う事 実 との 間 の外 見上 の,想 像 上 の矛 盾 を
㊤φ
解 決 しよ う とす る独 特 な 試 み であ る。」 つ ま り実 際 に は両 者 は矛 盾 す る もの で は な く,客 観 的 な 独 立 採 算 制 諸 関 係 とい え ど も社 会 主 義 の も とで は意 識 的,計 画 的 に 導 入 ・発 展 させ られ る もの とみ な され る。
2.独 立 採 算 制 の 発 生 原 因
この 問 題 に つ い て も種 々の 見 解 が 存 在 す るが,は じめ に 述 べ た よ うに一 般 的 傾 向 と して は こ の問 題 を 社 会 主 義 的 所 有 諸 関 係 との 関 連 に お い て分 析 す る人 々 が 増 え て い る。 そ こで こ こで は そ の よ うな 人 々の 内 か ら三 人 の 研究 者 を と り出
し,そ の 見解 を 検 討 す る。
(1)シ ビ リョ ー フの 見解
まず シ ビ リ ョー フは 独 立 採 算 制 の必 然 性 を経済 法 則 か ら導 出 す る見 解 を批 判 す る。 そ の要 点 は,独 立採 算 制 と経 済 法 則 は確 か に密 接 に 結 び つ い て はい 喬が
㊨5)
因 果 的 関 連 に は な い と い う こ とで あ る 。 こ の 批 判 は 前 述 の ス ピ リ ドー ノ ワ の 批 判 と 同 趣 旨 で あ る と解 し う る。
さ て シ ビ リ ョ ー フ に よ れ ば,独 立 採 算 制 の 必 然 性 つ ま り発 生 原 因 の 問 題 を 解 決 す る た め に は そ れ の 客 観 的 基 礎 に つ い て の 明 確 な 把 握 を 必 要 と す る。 な ぜ な ら い う ま で も な く独 立 採 算 制 の 発 生 原 因 は そ れ の 客 観 的 基 礎 の 発 生 原 因 で あ る か らで あ る。 彼 は 独 立 採 算 制 の 客 観 的 基 礎 を 社 会 主 義 的 特 殊 性 を 有 す る社 会 的 所 有 諸 関 係 に 求 め て い る。 つ ま り社 会 的 所 有 に 本 来 的 に 固 有 な 統 一 性 関 係 と そ
〔3鋤TaM)Ke,cTp.65.
{3のTaM》Ke,CTP,93.
㊤5)TaM)Ke,CTP.68.'
ソ連企業 の独立採算制 の理論的諸問題 99 の 社 会 主 義 的 段 階 に 特 有 な 経 済 的 孤 立 性 の 諸 要 素 と が 統 一 的 に 存 在 して い る こ と で あ るQし た が っ て 問 題 は こ の よ う な 社 会 主 義 的 な 社 会 的 所 有 を 生 じ させ る も の は 何 か と い う こ と に あ る。 と りわ け 社 会 的 所 有 の 枠 内 で の 経 済 的 孤 立 性 の 発 生 原 因 が 問 題 に な る。 そ れ ゆ え シ ビ リ ョ ー フ に と っ て は,独 立 採 算 制 の 必 然 性 を 経 済 的 孤 立 性 の 諸 要 素 を 含 む 社 会 的 所 有 諸 関 係 そ の も の に 求 め る こ と は 誤
{3励 りで あ る 。
そ こ で シ ビ リ ョ ー フ は,独 立 採 算 制 の 必 然 性 を 生 産 諸 力 の 発 展 水 準,生 産 の 社 会 化 の 程 度 と りわ け 社 会 主 義 に お け る 労 働 の 特 質 に 求 め る。 す な わ ち 社 会 主 義 段 階 の 労 働 で は ま だ 次 の よ うな 事 情 が 存 在 す る。
D重 労 働,有 害 労 働,手 労 働 の 割 合 が ま だ か な り高 い こ と 。
2)個 々 の 諸 企 業 の 技 術 的 装 備 度,労 働 諸 条 件 が ま だ 本 質 的 に 異 な る こ と。
3)人 間 を 生 涯 に わ た っ て 一 定 の 労 働 に 縛 りつ け る 古 い 分 業 が 残 存 して い る こ と 。
4)精 神 的 労 働 と 肉 体 的 労 働 と の 間 の 本 質 的 差 異 が 残 存 して い る こ と。
5)人 間 の 諸 々 の 能 力 が 漆 だ 十 分 に 発 展 して い な い こ と。
以 上 の よ うな 労 働 の 諸 特 質 の た め に 労 働 が 第 一 の 生 活 欲 求 に な っ て い ず,経 済 的 刺 激 を 必 要 と す る 。そ の 際,個 々 の 働 き手 の み で な く個 々 の 生 産 集 団 に 対 し て も経 済 的 刺 激 が 必 要 で あ るQつ ま リ シ ビ リ ョ ー フ は,経 済 的 刺 激 の 必 要 性 を 内 在 さ せ て い る社 会 主 義 に お け る 労 働 の 特 質 こ そ が 企 業 の 経 済 的 孤 立 性 した が
侶7) っ て 独 立 採 算 制 の 直 接 的 原 因 で あ る と み な して い るQ
(2)コ ソ ドラ ー チ ェ フ の 見 解
コ ソ ド ラ ー チ ェ フ(JI,Φ.KOHπpaTbeB)は,独 立 採 算 制 諸 関 係 の 必 然 性 を
㈱
検 討 す る 際 の 要 点 と して 次 の こ と を 指 摘 して い る。 第 一 に,ス ピ リ ドー ノ ワ, シ ビ リ ョ ー フ と 同 様 に 経 済 法 則 か ら経 済 的 諸 関 係(こ こ で は 独 立 採 算 制 諸 関 係)
(36}「 と ころ が現 実 には,経 済 的 孤立 性 は 独 立 採算 制 シ ス テ ム 自体 に 内 在的 な もの で あ る。」(TaM)Ke,CTP.71.)
{37)TaM》Ke,cTp.71‑73.,
(3鋤JI.Φ.KoH双paTbeB,∂KoHoM四ecKHe3aKoHblHxo3pacqeT,《 巫blcπb》,頚.,
、1979,CTμ45・
を 引 き 出 して は な らな い こ とを指 摘 して い る。 第 二 に 彼 に よれ ば,経 済 的 諸 関 係(こ の場 合 は独 立 採 算 制 諸 関 係)に 固 有 な メル クマ ール を この 諸 関係 の発 生 原 因 とみ な しては な らないQつ ま り独 立 採 算 制 諸 関 係 の発 生 原 因 は この 諸 関係 以 外 の もの に求 め なけ れ ば な らない 。
結 局,コ ソ ドラー チ ェフは 独 立 採 算 制 の発 生 原 因 につ い て次 の よ うに 述 べ て い る。 「社 会 的 生 産 物 の一 部,要 素 の再 生 産 過 程 にお い て 生 じる,集 団 的 及 び 全 人 民 的 諸 利 益 の 間 の非 敵 対 的 矛盾 に よ っ て 引 き起 こ され る新 しい 関係 が 独 立
闘 ・
採 算 制 で あ る。」 そ して,「 独 立 採 算 制 諸 関 係 に おい て 全 人 民 的 及 び集 団的 諸 頓0}
利 益 の統 一 が 実 現 され,そ れ らの間 の非 敵 対 的 矛 盾 が 解 決 され るの で あ る。」つ ま り集 団 的 利 益 と全 人 民 的 利 益 との 問 の 矛 盾 が 独 立採 算 制 諸 関 係 の発 生 原 因 と
14ユ)
み な され て い る。 巳,
シ ビ リ ョー フ及 び コソ ドラー チ ェフ の両 所 説 の 関連 は ど うで あ ろ うか?両 老 と も明示 的 に は言 及 して い な い。 しか しシ ビ リ ョー フはそ れ につ い て考 え 為手 が か りを 示 して い る。 す な わ ち彼 は 企 業 の集 団 的 な経 済 的 利 益 を 経済 的 孤 立 性 の一 つ の表 現 形 態 な い し実 現 形 態 とみ な して い る。 それ ゆ え彼 に とって は 企 業 の経 済 的 利 益,そ れ と全 人 民 的 利 益 との矛 盾 的 統 一 は 独 立 採 算 制 の原 因 では あ りえ ない 。 な ぜ な ら前 述 の よ うに彼 に と っ て は企 業 の経 済 的 孤 立 性 の原 因 こそ が 独 立 採 算制 の原 因 で あ る か らで あ る。 つ ま り企 業 の経 済 的 利 益,そ れ と全 人 民 的利 益 との 矛盾 的統 一 は独 立 採 算 制 諸 関係 に 内 在 的 な もの で あ るか ら,そ れ
(魂2) の原 因 とは み な しえ な い の で あ るσ
しか し,両 者 と もに前 述 の よ うな,独 立採 算制 の必 然性 に 関 す る研 究 の大 き な流 れ に は 沿 って い る。 シ ビ リ ョー フの場 合 は独 立採 算 制 の必 然 性 と社 会 主 義 的 な社 会 的 所 有 との関 連 は 認 め られ て い るの で あ るが,独 立 採 算 制 諸 関 係 の中 に社 会 主 義 的 な社 会的 所 有 の諸 関係(統 一 性 と経 済 的 孤 立 性 の 諸 関係)を 最 も 基 底 的 な 関 係 と して い わ ば 「包 摂 した 」 こ と に よ って,問 題 が社 会的 所 有 の社
(39}〔4①TaM》1くe,cTp.57‑58.
@1)な お次文献 もほぼ同様な見解 を表 明 してい る。B.rep皿KOBHq,B.JIHBUIHU, yKa3.coq.,CTP.42.
(⑫A.レ1.C臼6KpeB,yKa3.coq.,1974,cTp.71.
ソ連企業 の独立採算制 の理論 的諸問題 101
会 主義 的特 殊 性(企 業 の経 済 的 孤 立 性)の 発 生 原 因 に移 って い った と考 え られ る。 他 方,コ ソ ドラ ーチ 出フ の場 合 も社 会 的所 有 と独立 採 算制 との 密 接 な 関連
㈹
を 否定 しな い が,よ り厳 密 に規 定 す る こ とを 目 ざ した。 そ して,社 会 主 義 的 な 社 会 的 所 有 か ら生 じる経 済 的 諸 利 益 の 矛 盾 的統 一 こそ そ れ の 直接 的原 因 で あ る
と考 え て い るの で あ る。
〈3》ア ガ フ ォ ー ノ ブの 見解
最 後 に ア ガ フ ォ ー ノ ブ(A.K.AraφOHOB)の 見 解 を見 てみ よ う。 彼 に よれ ば,独 立 採 算 制 が社 会 主 義 的 な社 会 的所 有 に よ って 生 じ る とみ な す こ とは 正 し い が,そ の規 定 を よ り発 展 させ る こ とが 必要 で あ る。 す な わ ち社 会主 義 的 な社 会 的 所 有 に お い て は そ れ が 発 展度 の相 対 的 に低 い社 会 的所 有 で あ るた め に,生 産 結 果 の全 人 民 的 取 得 と同時 に集 団的 取 得(Ko朋eKTHBKoenpKcBoeHKe)も
客 観 的 に必 然 で あ る。彼 に よ る と,コ ノヒホ ー ズ ・協同 組 合 の 場 合 に は 集 団 的 取 得 が 生 産 結 果 の一 部 の み で な く生産 手段(土 地 を除 い て)に も及 ん で い る。 他方 国 有 企 業 の場 合 に は生 産 結 果 の 一部 の み が 集 団 的取 得 の対 象 に な る。 そ して この よ う'に,生 産 結 果 の全 人 民 的取 得 とな らん で集 団 的 取 得 が 存 在 して い るが 故 に企 業 の 相 対 的 な 経 済 的 孤 立性 が生 じ るの で あ り,独 立 採 算 制 は この 孤 立性
鮒
の 形 態 で あ る とみ な され て い る。 この よ うに,ア ガ フ ォー ノ ブの場 合 に も独立 採 算 制 の発 生 原 因 と社 会 主 義 的 な社 会 的所 有 との 関 連 を よ り詳 しく検 討 しよ う と い う意 図 が 認 め られ る。 そ して 彼 の 場合 は,社 会 主 義 的 な社 会 的所 有 の 内 的
㈲ 構 造 を 分 析 して,生 産 結 果 の 一部 の集 団 的取 得 とい う概 念 を取 りあ げ,そ れ に 基 づ いて 独 立 採 算 制 の 必 然 性 の問題 を解 明 しよ うと して い るの で あ る。
3.独 立採算制 と企業の相対的な経済的孤立性
噛1
社会主義 の生産諸 関係 の一 部 としての独立採算制 諸関係 を特徴 づけ る際に社
(4鋤JI.Φ.KoH汲paTbeB,yKa3.co阻.,cTp.38‑39.
(4のA.K,AraΦoHoB,yKa3.coq.,cTp.120「121.
㈲ な お,ア ガ フ ォ ー ノ ブ の こ の よ う な 見 解 に 対 す る 批 判 も 存 在 す る 。 以 下 の 文 献 を 参 照 の こ と 。A.EpeMHH,06aHa朋3epa3BHTH兄couHa涯HcTHqecKo営co6cT・
BeHHocT迎.《BonpocblgKoHoM}IKH》,1978,♪ 亜5,cTpド9.
会 主 義 企業 の 相 対 的 な 経 済 的 孤 立 性 概 念 が ます ます 重要 な役 割 を果 す よ うに な (4⑤(4物
っ て い る。 そ こで こ の概 念 につ い て 若 干検 討 しよ う。 一
ヘ へ
(1)企 業 の相 対 的 な経 済 的 孤立 性 概 念 の 内容
シ ビ リ ョー フに よれ ば,こ の概 念 は社 会 主義 的 な社 会 的所 有 の一 契 機 と して 位 置 づ け られ る。 そ の基 本的 内容 は,社 会 主 義 企 業 の 生産 フ ォ ソ ドが 相 対 的 に 孤 立 して循 環 。.回転 して い る こ と換 言 すれ ば生 産 手 段 が企 業 に 固定 され,全 人 民 的 フ ォソ ドの総 体 的運 動 に お い て それ が 切 断(Bbl朋eHeHHe)さ れ てい る こ
幽
と に求 め られ て い る。 さ らに この経 済 的 孤 立 性 の存 在 は,法 律 的 レベ ル で は次 の こ と に よ って す な わ ち社 会 的 所 有 物 の合 理 的 利 用 の た め に各 企 業 にそ れ が 固 定 され,そ れ の 占有(即aAeHMe),利 用(no恥30BaHHe),処 分(PacHoPH一 皿eHHe)の 諸 権 限が 付 与 され てい る こ とに よ って 表 現 され る。㈹
また ラダ ー エ フ(B.B.PaAaeB)も,社 会 主 義 的 生産 の個 々の環 の相 対 的 な 孤 立 性概 念 を生 産 手 段 の社 会 主 義 的 な社 会 的 所 有 め特 殊 性 を表 現 す る概 念 とみ
ミ
な し て い る 。 す な わ ち 社 会 主 義 的 所 有 は 経 済 の 全 人 民 的 な 社 会 化,国 民 経 済 全 体 の 経 済 的 統 一 性 を 意 味 す る と 同 時 に そ の 社 会 主 義 的 段 階 特 有 の 一 定 の 未 完 成 性,未 成 熟 性 を 有 し て い る 。 そ し て こ の 未 完 成 性,』 未 成 熟 性 を 表 わ す 概 念 が 相 対 的 な 経 済 的 孤 立 性 な の で あ る 。 そ し て ま た ラ ダ ー エ フ も こ の 孤 立 性 の 意 味 を 60) 社 会 主 義 経 済 の 個 々 の 環 の 資 金 の 循 環 の 区 分(pa3rpaHHqeHHe)に 求 め て い る 。
㈱ た だ し社 会 主 義 国 有 企 業 に 対 す る こ の 概 念 の 適 用 に 反 対 す る 見 解 も一 部 に 存 在 す る。 これ に 関 し て こ こ で は 検 討 しな い が 以 下 の 文 献 を 参 照 の ヒ と。A.Ka取eHKO, Xo3兄hcTBeHHbl益pacqeTHHenocpeAcTBeHHoo6皿 真ecTBeHHbl員npoAyKT.
《∂KoHoMHqecKHeHayK胚 》,1977,」 喚4,cτp.51.JI.Φ.KoH双paTbeB,yKa3.
coq.,CTP.43.
幽 な お こ の 概 念060co働eHHocTbは 「分 立 性 」,「 分 離 性 」 と 訳 さ れ る こ と も あ る 。(芦 田 文 夫 著r社 会 主 義 的 所 有 と価 値 論 』,青 木 書 店,1976年,153頁 。)
⑱A,H.C猛6猛peB,yKa3.coq.,1974,cTp.13.
(姻TaM)Ke,CTP.17.
(50)no八pe几B.B.Pa八aeBa,Xo3pacqe雪HbleoTH(∫HleHHHBpa3BHToMcoqHa・
朋cT四ecKoMo6皿ecTBe.H3A‑Bo瓢ry,1975,cでp.16‑17.な お 奥 林 茂 は こ の 概 念 を 直 接 に 社 会 的 な 労 働 概 念 と の 関 連 に お い て,そ れ の 未 成 熟1生 を 示 す 第 一 の ヵ テ ゴ リー と して 把 握 して お られ る 。(奥 林 康 司 稿 「社 会 主 義 に お け る 直 接 に 社 会 的 な 労 働 に つ い て(2)」,r国 民 経 済 雑 誌 』,第127巻 第6号,昭 和48年,62頁 。)
ソ連企業 の独立採算制 の理論的諸問題 ヱ03
以 上 の よ うに経 済 的 孤 立 性 概 念 は 社 会 主 義 的 な 社 会 的所 有 の特 殊 性 を 表現 す る概 念 とみ な され て い るか ら,シ ビ リ ョー フ にお い て もラ ダ ーエ フに お い て も この概 念 を基 礎 に して 独 立 採 算制 の 具 体 的 諸 規 定 の一 方 の グル ー プが導 出 さ れ て い る。 シ ビ リ ョー フ に おい では こ の概 念か ら派 生 す る もの と して,商 品生 産 者 と して の企 業 の経 済 的 独 立 性,商 品貨 幣 諸 関 係,経 済 的 刺 激,企 業 に特 有 な
励
集 団 的 利 益 等 々の規 定 が 導 出 され て い る。 また ラ ダ ーエ フに お い て も この概 念 か ら商 品 貨 幣 諸 関 係,商 品 生 産 者 と して の社 会 主 義 企 業,企 業 に お け る集 団 的 フ ォ ソ ドの 形 成,自 給 性,収 益 性,経 済 的 環 の 働 き手 た ち の物 質的 関心 等 々が
働 i尊出 され てい るo
そ れ で は こ の よ うな 経済 的 孤 立 性 の発 生 原 因 に つ い て は どの よ うに 考 え られ て い るで あ ろ うか。 両 老 と もほ ぼ 同様 に,社 会 主 義 に おけ る生産 諸 力 の発 展 水 準 と りわ け 社 会 主 義 に おけ る労 働 の特 質 す な わ ち 労働 に お け る諸 々の 本 質 的差 異 の 存続 を そ の原 因 とみ な して い る。 た だ し,ラ ダ ーエ フの場 合 に は そ う した 労 働 の本 質 的 差 異 が 個 別 経 済 環 の経 済 的 孤 立 性 に転 化 す る こ との説 明要 因 と し て,労 働 過 程 が 既 に個 人 的 な ものか ら一 定 の働 き手 が 結 合 した 集 団 的 労働 過 程
(53) に 変 化 してい る事 実 を 強 調 して い る。
(2)若 干 の 問題 点
我 々は シ ビ リ ョー フ と ラ ダー エ フの見 解 をみ て きた が,そ こ には 種 々の問 題 点 が 含 まれ て い るo
第 一 の 問題 点 は,社 会 主 義 企 業 の 経 済 的 孤 立 性 とそ の 企 業 が 現 実 に 有 す る経 済 的 独 立 性 と の関 連 で あ る。シ ビ リ ョー フは 企業 の現 実 の経 済 的 独 立 性 を,経 済 的 孤 立 性 を 基 礎 と した 商 品 生 産 者 と して の経 済 的 独 立 性 と して 把 握 して い る。
しか しこ の把 握 は 一 面 的 で あ り、,不十 分 で あ る。 な ぜ な ら前 述 の よ うに経済 的 孤 立 性 概 念 は 社 会 圭 義 的 な 社 会 的 所 有 の未 成 熟 性,未 完成 性 を 示 す 概 念 で あ り,
61)A.H。CH6HpeB,yKa3.coq.,1974,cTp.18‑19.
拙 稿 「ホ ズ ラ ス チ ョ ー ト に 関 す る 一 考 察 」,『 六 甲 台 論 集 』,第24巻 第4号,昭 和53
年,89頁 。
働no双pe双B.B.Pa丑aeBa,yKa3.coq.,cT籍20‑25.
63)TaM》Ke,CTP.17.
高 次 の 共 産 主 義 では 消滅 す る,社 会 主 義 に 特 有 な 概 念 と考 え られ て い る。 した が って 彼 の 把 握 をつ きつ め る と企 業 な い し経 済 単 位 は 高 次 の 共 産 主 義 に は 独 立 性 を持 た な い こ とに な る。 しか し実 際 に は そ うで は な い。 そ の 時 に も経 済 単 位 は独 立 性 を 持 つ だ ろ う。 そ れ 故,問 題 は 社 会 主 義 企 業 の 独 立 性 を 経 済 的 孤 立 性 を 基 礎 と した 独 立 性 と して のみ 一 面 的 に把 握 した こ とに あ る。 社 会 主 義 企業 は そ の よ うな 独 立 性 のみ で な く,統 一 的 な 社 会 的 所 有 の 個 別 生 産 単 位(環)で あ るか ぎ りで 生 じ る独 立 性,社 会 主 義 の成 立 と と もに発 生 し共 産 主 義 の 高 次 の段 階 に お い て 享す ます 発 展 す る独 立 性 を も有 して い る と規 定 しなけ れ ば な ら な いoド イ ツ民 主 共 和 国 の研 究 者 ヨ ヌシ ヤ イ ト(K.‑EJonuscheit)は この 点 を考 慮 して 次 の よ うに述 べ て い る。 「疑 い もな く,共 産 主 義 に おい て も経済 的 基 本 単 位 の 多 分 い っ そ う大 きな 経 済 一 組 織 的独 立性(Diewirtschaftlich‑
organisatorischeSelbstandigkeit)が 生 じるで あ ろ う。(5の」 さ らに,「 経済 的 単 位 の この新 しい 独 立 性 は 共 産 主 義 に お い て 初 め て 生 じ るの で は な い。 そ れ は 既 に社 会 主 義 的所 有 の 形 成 と と もに … … 発 展 しは じめ た し,さ らに発 展 して い
65}
る。」
第 二 の 問題 点 は,ソ 連 企 業 の 成 立 後 この経 済 的 孤 立 性 が ど の よ うに 推 移 して きた か とい う点 で あ る。 と くをと1930年 前 後 に 成 立 し1960年 代 中 期 の経 済 改革 ま で存 続 した 経 済 シ ス テ ム と経 済 改 革 以 後 の 経 済 シ ス テ ム とに お い て ど の よ うに
66)
変 化 して き た か とい う点 が 問題 に な る。 シ ビ リ ョー フは 前 者 か ら後 者 へ の推 移 に併 っ て経 済 的 孤 立 性 が 発 展 ・増 大 して き た とみ な して い る。 す なわ ち 彼 に よ れ ば,1930年 代 に 成 立 した 独 立採 算 制 シ ス テ ムは,「 社 会 主 義 的 所 有 諸 関 係 に
6鮪5)K.‑H.Jonuscheit,1)2θ レ四7'30乃 αガ1ゴoんθ1〜 θoん%%履83プ 初〃 ππ&Akad.
emie‑Verlag,1966,S.110‑111.
ま た 奥 林 氏 も 独 立 採 算 制 の 強 化 と企 業 の 孤 立 性 の 強 化 と を 同 一 視 す る 見 解 を 批 判 し て お られ る。 長 砂 氏 も 社 会 主 義 企 業 の 自主 性 の 拡 大 は 二 つ の 根 本 的 に 異 な っ た 根 拠 を 有 して い る こ と を 指 摘 し て お ら れ る。(奥 林 康 司 稿 「社 会 主 義 に お け る 直 接 に 社 会 的 な 労 働 に つ い て(1)」,『 国 民 経 済 雑 誌 』,第127巻 第5号,昭 和48年,82頁 。 長 砂 実 著 『社 会 主 義 経 済 法 則 論 』,青 木 書 店,1969年,258‑259頁 。)
圃 な お シ ビ リ ョ ー フ は 経 済 的 孤 立 性 が ネ ッ プ の 実 施 に 併 っ た 独 立 採 算 制 の 導 入 の 後 に 初 め て 生 じ た とみ な して い る。 これ に つ い て は 今 後 検 討 した い 。(A.H.CH6H.
peB,yKa3.coq.,1974,cTp.95.)
ソ連企業 の独立採算制 の理論的 諸問題105
お け る経 済 的 孤 立 性 の諸 要 素 の不 十 分 な発 展 」 を基 礎 に してい た。 しか し,こ観 の 点 につ い て は検 討 の余 地 が あ る。 とい うの は前 述 の よ うに シ ビ リ ョー フに よ れ ば,社 会 主 義 企 業 の経 済 的孤 立 性 は 生産 諸 力 の発 展 水 準 の低 さ の一 つ の 表現 で あ る社 会 主 義 に おけ る労 働 の特 質 に規 定 され てい るの で あ るが,ソ 連 に お い て生 産 諸 力 が 発 展 してい る こ とは 明 らか で あ り,.し た が って そ こに お け る労働 の 持 質 も変 化 しつ つ あ る と考 えね ば な らな い。 す な わ ち 重 労働,有 害 労 働,手 働 の 割合 が まだ 高 い こ と等 々 の前 述 の 労 働 の特 質 が 除 々に 消 滅 な い し縮 少 す る 方 向 で変 化 して きて い る と考 え られ る。 とす る とそ の 限 りで は経 済 的 孤 立 性 も そ れ に応 じて 衰 退 ・弱 化 して きて い る と考 え ね ば な らず,少 な く と もシ ビ リョ ー フの よ うに そ れ が 発 展 して きた と考 え る こ とは不 自然 で あ る。 換 言 すれ ば 社 会 的 所 有 の 未 成 熟 性 を 表現 す る カテ ゴ リーで あ る経 済 的 孤 立 性が ソ連 経 済 の発 展 に併 って 「発 展 して い る」 とい う命題 は 再 検 討 を要 す る。
第 三 の 問題 点 は,こ の経 済 的 孤 立 性 の程 度 を どの よ うな尺 度 で測 定 す るか と い う点 で あ る。 シ ビ リ ョー フは そ れ の 程度 の変 化 は 企業 が 自己 の経 済 的 発 展 の 諸 聞題 の解 決 に おい て実 際 に有 して い る権 限 の拡 大 ない し狭 小 化 に よ って 表 現 さ れ る とみ な して い る。 この こ とは 前 述 の よ うに彼 が現 実 の企 業 の経 済 的 独 立 性 を経 済 的 孤 立 性 に よ って の み説 明 して い る こ とか らみ て 当然 の帰 結 であ る。
この よ うな把 握 に は 次 の 点 で 疑 問 が残 る。 第 一 に,前 述 の よ うに現 実 の 企 業 の独 立 性 は 経 済 的 孤 立 性 のみ で な く,生 産 手 段 の社 会 的 所 有 の成 立 に 併 って 生 じ,高 次 の共 産 主義 社 会 に お い て も存 在 す る独 立 性 に よ って も規 定 さ れ て い る。 したが って現 実 の企 業 の独 立 性 の程 度 は必 ず しも経 済 的 孤 立 性 の 程 度 を 表 む さ な い。 た と えぽ 企 業 の権 限が 拡 大 され た と して もそ れ は 企 業 の経 済 的 孤 立 性 の拡 大 ・発 展 を 必 ず しも意 味 しな い ので あ る。 第 二 に,シ ビ リ ョー フの理 解 で は生 産 手 段 の所 有 関係 の一 契 機 で あ り,客 観 的 存 在 で あ る経 済 的 孤 立 性 の 程 度 と社 会 主 義 国 家 の 経 済 政 策 に よ って 主 体 的 に決 定 され る企 業 の 権 限 の 大 き さ が 正 比 例 的 な 関 連 に あ る とい うこ とが 前 提 にな って い る。 これ は 疑 問 が 残 る。
観A.1・1.CH6HpeB,yKa3.coq.,1974,cTμ130.
(5団TaM》Ke,CTP,22.
とい うの は,シ ビ リ ョー フ 自身 の 理解 か ら言 って も経 済 的 孤 立 性 が大 き い ほ ど 企 業 の 商 品 生 産 者 的 側 面 が 強 い の で あ り,企 業 は それ だ け独 自 な集 団 的 利 益 を
追 求 す る こ とに な る。 この よ うな 場 合,一 定 の条 件 の も とで は企 業 の権 限 が狭 め られ,国 家 の 側 か らの直 接 的 な集 中 的 管 理 が 強 め られ る可 能性 もあ る の で あ る。 また シ ビ リ ョー フは 劉 の箇所 で経 済 的 孤立 性 の 深 さ と性 格 を 判 断 す る尺 度
㈲
と して,国 家 か らの 間 接 的 企 業 管 理 の 方法 の 利用 度 を挙 げ て い る。 しか 亡,そ' れ は確 か に経 済 的 孤 立 性 の 諸 要 素(商 品貨 幣 諸 関 係,企 業 に特 有 な集 団的 利 益 等 々)の 利 用 度 の尺 度 で は あ るが,経 済 的孤 立 性 そ の もの の大 き さ,深 さ の尺 度 で は あ りえ な い で あ ろ う。 な ぜ な ら,間 接 的 管 理 方 法 は 企 業 の経 済 的 独 立性, 一 定 の決 定 権 限 を認 め た 上 で,企 業 を経 済 的 刺 激 シ ス テ ムを 通 じて間 接 的 に 統 制 す る管 理 方 法 で あ る。 そ れ 故,間 接 的管 理 方 法 の利 用 度 の増 大 は直 接 に は企 業 の経 済 的 独 立 性,決 定 権 限 が 従 来 よ りも大 き く承 認 され た こ とあ る いは 経 済 的 刺 激 が従 来 よ りも強 化 され た こ とを意 味 す る にす ぎ な い。 した が ってそ れ を 経 済 的孤 立 性 そ の もの の尺 度 とみ な す こ とに は無 理 が あ る の で は な か ろ うか 。
4.独 立 採 算 制 と 企 業 の 集 団 的 利 益
社 会 主 義 経 済 に お い て は三 種 類 の経 済 的 利 益 す な わ ち 全 人 民 的 利 益,企 業 の 集 団的 利 益 及 び 個 人 的利 益 が存 在 す る とい わ れ てい る。 こ こ で検 討 され るの は 企 業 の集 団 的 利 益 と全 人 民 的 利益 との 関連 で あ る。
シ ビ リ ョー フ に よれ ば 現実 の社 会主 義 企 業 は 二 重 の利 益 を 有 す る。 そ れ は全 人 民 的 利 益 と企 業 に 固有 な 集 団 的 利益 で あ る。 つ ま り現 実 の社 会 主 義 企 業 は全 人 民 的 利 益 及 び 企 業 に 固有 な集 団 的 利 益 ㊧ 保 持 老 と して 存 在 す る。 全 人 民 的利 益 は 一 般 的 には,「 生 産 諸 力 の全 面 的 な発 展に 基 づ い た,社 会 及 び 各 々の成 員
劒,
の 要 求 の 完 全 な 充 足 の確 保 」 あ るい は 「社 会 の 全 成 員 の 完 全 な 福 祉,.か れ らの 全 面 的 な,自 由 な 発 展 の確 保 のた め の,科 学技 術 の 最 新 の 成 果 の 利用 に基 づ く 社 会 的 生産 め 絶 え ま な い 向上 と改 善 及 び 生 産 効 率 向 上 に よ る,社 会 的 富 の量 の
側TaM)Ke,CTP.35‑36.
俗ωTaM涯 くe,CTP.77.
ソ連 企 業 の独 立採 算 制 の理 論 的諸 問題107 (61}
絶 え ま な い 増 大 と構 造 の 改 善 」 と規 定 さ れ る 。 そ れ は 共 産 党 及 び 国 家 の 経 済 政 策 の 中 で 具 体 化 さ れ,経 済 的,社 会 的 発 展 計 画 とい う形 を と る。 そ して そ れ は 社 会 主 義 企 業 に と っ て は 国 家 か ら企 業 に 与 え られ る 計 画 諸 課 題 とい う形 で 現 わ
㊨2).
れ る 。 そ の 際,社 会 主 義 企 業 は こ の 計 画 諸 課 題 を 遂 行 し よ う と す る。 な ぜ な ら そ の 構 成 員 は 生 産 手 段 の 社 会 的,共 同 的 所 有 者 で あ り,そ の 意 味 で 生 産 に お い
㈹
て 主 人 と して 存 在 す る か らで あ る。 した が っ て 彼 らは 上 述 の 計 画 諸 課 題 を 自覚 的 に,主 体 的 に 遂 行 し よ う とす る 。 ス ピ リ ドー ノ ワ も次 の よ うに 述 べ て い る。
「共 産 主 義 的 生 産 様 式 は 経 済 発 展 に 対 す る社 会 的 関 心 を 引 き 起 こ す 。 と い うの は,そ こ で は 勤 労 者 そ の もの が 生 産 手 段 及 び そ れ に よ っ て 造 り出 さ れ た 物 質 的
劒
富 の 共 同 的 所 有 者 で あ る か らで あ る 。」 そ し て そ の た め に 道 徳 的 刺 激,大 衆 の (651
革 命 的 熱 狂 が 生 じ る こ とが 指 摘 さ れ て い る。
こ の よ うに 社 会 主 義 企 業 は 全 人 民 的 利 益 の 保 持 者 で あ る 。 と同 時 に 企 業 は そ れ に 固 有 な 集 団 的 利 益 の 保 持 者 で も あ る。 シ ビ リ ョ ー フ に よ れ ぽ こ の 利 益 は, 社 会 主 義 的 な 社 会 的 所 有 に お け る経 済 的 孤 立 性 の 契 機 した が っ て 社 会 主 義 企 業 が 一 面 に お い て 商 品 生 産 者 で あ る と い う事 実 か ら生 じ る 利 益 で あ る。 そ して こ の 利 益 の 基 本 的 内 容 は,企 業 が 「自分 で 処 理 し う る所 得 を 最 大 限 に 獲 得 し よ う
圃
と す る 志 向 」 あ る い は よ り一 般 的 に,費 用 よ り も収 入 が 上 回 る こ と つ ま り利 潤
㈹
を 獲 得 す る こ と で あ る と み な さ れ て い る 。 ま た コ ソ ドラ ー チ ェ フ に よ る と,こ の 集 団 的 利 益 の 対 象 は 集 団 の 生 産 的 及 び 人 的 な 欲 求 の 充 足 の た め に 企 業,生 産 合 同 に 必 要 な 全 人 民 的 資 源 で あ り,具 体 的 に は 企 業 な い し生 産 合 同 内 の 働 き 手 た ち に 対 す る 物 質 的 報 奨,彼 ら の 労 働,休 息,生 活 の 諸 条 件 の 改 善 及 び 生 産 の
俗8)
発 展 と 改 善 の た め の 資 源 が 含 ま れ る 。 つ ま り こ れ は 三 種 の 経 済 的 刺 激 フ ォ ン ド
㈹JI・ Φ・KGH即 与TbeB・yKa3・coqりcTμ50・' 圃A.H.CH6即eB,yKa3.coq.,cTp.79・.
63)JI.Φ.1くoH江paTbeB,yKa3.'coq.,cTp.57.
(64×6励H.C.C∬HpH双oHoBa,Xo3曲cTBeHHb磁pacqeT(BnoMol1真 ム πeKTopy).
《∂KoHoMKqecKHeHayK班 》,1968,♪ 西3,cTp. .102.
㈱A.H.CH6HpeB,yKa3.coq.,1974,cTp,79,84.
㈹TaM}Ke,CTP.85.
囎JI.Φ.KoH江paTbeB,yKa3.coq,,cTp.55.