• 検索結果がありません。

集合住宅における大規模改修の実態と今後の可能性に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "集合住宅における大規模改修の実態と今後の可能性に関する研究"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

集合住宅における大規模改修の実態と今後の可能性に関する研究

-耐震改修を事例として-

建設工学専攻(修士課程) 508091-6 柳

やなぎ

もと

建築設計研究 指導教員 赤堀 忍 教授

1. 序

1-1.研究背景、目的

本研究は集合住宅における大規模改修工事が、法規制や資金 面、また合意形成を経てどのように進められ、また どのような 効果があったのかを、事例をもとに明らかにすることで今後活 発化されるであろう集合住宅改修の可能性を探るものである。

改修における技術的課題は、いくつかの改良すべき点は残し ているもののほぼクリアされているといっても良い。しかし、

改修工事の際、法規制や合意形成などの問題によって実現不可 能なことが多い。事例をもとに大規模改修工事が今後の少子高 齢化や低炭素化社会への転換による既存ストックの有効利用 への動きにどのような可能性があるか、明らかにしていくこと が本研究の目的である。

1-2.研究方法

調査対象である高島平団地は高層団地の耐震補強工事とし て平成 19 年に高島平 2-26-4 号棟が改修された。今後 30 棟(1 棟は高島平 3 丁目)全てについて順次耐震改修が予定されてい る。

本研究では高島平 2-26-4 号棟における耐震改修工事の内容 を明らかにするとともに、住民が居ながらにして行われた大規 模工事によって、工事前、中、後の住民の生活環境の変化や影 響、苦情等の対応に関するアンケート調査を行う。また独立法 人都市再生機構と高島平 2 丁目団地自治会へのヒアリングを 行なう。

2. 高島平団地 2-26-4 号棟耐震改修の調査概要 高島平団地 2-26-4 号棟は、昭和 47 年から管理が開始され た旧耐震基準による住棟専用建物で、鉄骨鉄筋コンクリート造 11 階建て、162 戸の大型住棟である。

建物の形状は整形で南面をバルコニーとし、北面を開放廊下 として東西に住棟が連なり、中央部にエレベーター及び階段の コアを持つ典型的な公団型住棟である。

2-1.工事内容

1.中央コア南面に鉄骨ブレースを設置 2.北面開放廊下外側に耐震フレームを構築

3.廊下スラブ下面へのコンクリート増し打ち及び手摺壁の一部撤去 4.電気・給水・ガス・テレビ・電話等設備工事

5.その他仮設工事等

工期 当初 :平成 19 年 2 月 3 日~平成 20 年 4 月 30 日 変更後: ~平成 20 年 12 月 26 日

北立面図

基準階平面図

工事は非常に大規模なもので、住民への騒音、粉塵、振動の 問題に対して考慮しなければならなかった。

ハード面では、共用廊下の手すり壁撤去等には当初使用した カッターとハンドブレーカーによる騒音・粉塵などの問題から

「ウォールソー」工法に変更されている。ウォールソーの使用 により、撤去したコンクリートを塊のまま搬出でき騒音などの 発生を軽減できたとされている。

ソフト面では 1 年半近くに及ぶ工事のため、騒音・振動・粉 塵の他に、廊下の迂回や断水、停電などがあり、住民への負担 は大きく、事前の周知徹底や合意形成が欠かせない。

独立行政法人都市再生機構では数回の住民説明会の開催、多 くの資料配付や情報公開を徹底し、原寸大の共用廊下側鉄骨フ レームのモックアップも作成し、実際の形状のイメージを提示 すると共に、照明、彩色などの検討も行っている。また工事中 においても工程ごと作業ごとに工事内容の掲示などの広報に 勤めていた。工事中の苦情等に関しては現場事務所とは別に、

近隣住棟の 1 階に相談事務所を設けることで、工事情報の周知、

苦情等にも対応した。

このような相談事務所の存在により工事監理者や施工者は 本来の業務に専念でき、工事の円滑な推進に役立つとされた。

今後の工事でもこのような措置の活用が望ましいと言える。

工事における騒音・振動・粉塵等の住民への影響、事前説明 と相談事務所の設置効果については『3.住民アンケートからみ る耐震改修工事』のアンケート結果で明らかにする。

2-2.確認申請の手続き

厳密には、新設した柱と梁の部分は増築という形になるが、

東京都との協議に拠れば建築面積・床面積ともに変更なしの扱 いとされ、建築面積・床面積ともに算入する必要はないとされ ている。このため確認申請の必要はなく、また、耐震改修促進 法の計画認定手続きも行う必要がないので実施されていない。

構造体である柱と梁の部分が建築面積に算入される場合、一 団地申請や日陰図の作成、各種認定証の取りそろえ等が必要に なる可能性がある。さらに耐震改修促進法の計画認定手続きも 行う必要がないというのは非常に特異な例であると考えられ る。

また民間集合住宅は建蔽率が限界に建てられているので増 築の余地がない場合が多い。これに対して高島平などの大団地 では敷地にも余裕があるため、既存躯体の外側への増築が容易 なことが、改修におけるメリットとなっている。

2-3.工事費用の財政的支援

このような大規模改修の場合、戸当たり約 100 万単位(仮 設足場や設備改修費込み、総額億単位)とい う工事費が予測さ れる。しかし資金面では賃貸のため住民の負担はない。

通常の民間の集合住宅であれば区によって補助金の額は違 うが総額の 1/3 を上限に最大200~300 万円までであり、調 査地である板橋区の民間分譲住宅耐震改修工事と比較をする と、耐震診断を行った場合は費用の 25%以下かつ 50 万円まで 助成金が受けられるとされている。

高島平団地では平成 18 年度からは国の出資金による財政的

な補助を受けられるという有利な点があることは、民間分譲の

(2)

集合住宅と比較にならないが、耐震改修を積極的に行っている 取り組みは、今後の民間分譲集合住宅における耐震改修の促進 に期待できる。

3. 住民アンケートからみる耐震改修工事 3-1.アンケート概要

アンケートでは主に工事前の説明会参加の有無、工事中の騒 音・振動・粉塵に対する住民の意識を調査している。

居ながらの工事に対して、住民が十分に工事内容を理解し、

また居住環境への影響が実際どの程度であったかを明らかに する。

アンケート概要

配布日 2009 年 12 月 20 日 回収期限 2010 年 1 月 8 日

配布方法 呼び鈴で知らせてから、ドアポストへ直接投函

回収方法 郵送回収

配布数 140 世帯

回収数 58 部

回収率 41.42%

3-2.アンケート結果

工事前説明会の参加有無に関しては、83%が欠席している という結果になった。欠席理由として 70%が「日程が合わな かったから」であり、その次に多かった理由として 10%が説 明会の開催を「知らなかった」というものであった。欠席者の 多くが耐震改修をしたことで、具体的に地震に対する有効性を 把握しておらず、今後地震が起きた際に不安であるという意見 がみられた。

また、説明会欠席者の多くが相談事務所の存在を知らないこ ともアンケート結果から明らかになっている。

アンケートの自由記述欄のなかには、仕事等の都合により説 明会に参加したくてもできなかったため、複数の日程で開催す ることを望む意見も複数あった。

次に工事中の騒音を例に居住環境への影響を見てみると、

50%が「我慢できないくらい」、44%が「我慢できるくらい」

と回答した。

住民の多くは工事時間帯に室内にいることを避け、外出する という工夫をしていため、半数近くが「我慢できるくらい」と いう結果になったと考えられる。「我慢できないくらい」と回 答した住民には諸事情により、工事中、部屋にいなければなら ない人もいた。

住民が居ながらの工事では、引っ越し等の移動の負担がない かわりに、工事前・中・後の住民への工事内容の徹底した周知 と、生活環境のサポートを強化しなければならないことがアン ケート結果で明らかとなった。工事の内容を多くの住民に理解 してもらわなければ、居ながらの工事は難しく、むしろ、トラ ブルを引き起こすことも考えられる。

対応策として他の住棟の空き家を利用して、工事中、騒音な どから避難できる部屋を準備することが必要である。今回の工 事でもこのような避難部屋を用意されていたが、利用するには 制約があり、「逆に不自由であった。」いう意見であった。

4. デザイン性から見る耐震改修 4-1.ファサード

中央コア南面に鉄骨ブレースを設置するにあたり、既存 の窓 を撤去し、ガラスのカーテンウォールとしたため、南面コア部 分の外観が一変しており、意匠的にも配慮された改修となって いる。

また北立面のフレームには木下庸子+設計組織ADHによっ て景観的視点から意匠的操作がなされている。

一層ごとの単位でV字ブレースが繰り返される単調さを改 善するために外付けフレームの二層を 1 単位とし、そのうちの 下の層をV字ブレース、上の層を逆V字ブレースとするダイヤ 型として、隣接する外付けフレーム同士を縦方向に一層分ずつ ずらして千鳥状に置いている。このことにより遠景からの立面 に変化を持たせる工夫がされ、また、共用廊下の照明を利用し て 2 層を 1 単位としたダイヤ型のフレームを引き立たせてい る。

共用廊下の照明は改修後、外付けフレームごとの間隔で設置 される縦配管用のパイプスペース内に照明器具を設置し、天井 の横引き配管のカバーとなる鋼板を反射板として兼ねている。

ここでの試みは耐震改修が単なる強度補強という定量的な数 値の改善に留まらず、デザイン的な配慮により建築が新たな姿 として生まれ変わる一つの可能性として捉えられている。

4-2.共用廊下

共用廊下では、耐震改修と並行して行われた電気・給水・ガ ス・テレビ・電話等設備工事より既存の廊下天井より低くなる が、配管類が全て隠れ、廊下照明の直接光を見せない間接照明 的な手法を用いることによって、電気・配管の更新も含めのデ ザイン性の高い改修になったと言える。

共用廊下の改修

改修前 改修後 共用廊下についての住民の意見はそれぞれで、デザイン的に 良くなったという意見もあるが、間接照明だと以前よりも暗く 感じ、高齢者への配慮や安全性に対して問題視する意見もあっ た。

5. 結

今後、集合住宅の大規模改修に必要なことは、事業主と住民 の目線を同じにするということである。様々なデザイン手法や 計画、技術が開発され進歩していく中で 、住民の意識だけが取 り残されていることがアンケート結果から明確になった。

また劣化等の建築物の物理的な問題だけでなく、人口減少、

少子高齢化社会を迎え複合的な問題を抱える集合住宅に関し て、ソフトまたハードの両面の知識を備えた人材の育成も必要 になるであろう。

参考文献・資料

1)新建築社 『新建築 2009,08』

2)リニューアル技術開発協会 『耐震診断・補強工事の手引き』

3)リニューアル技術開発協会 『建物の構造と耐震改修の手引き

4)独立行政法人都市再生機構 『高島平団地 2-26-4 号棟 住宅階耐震改修』

参照

関連したドキュメント

③  (2)(ニ)の欄は、租税特別措置法施行令(昭和 26 年政令第 43 号)第 26

(2)(ニ)の欄は、租税特別措置法施行令(昭和26年政令第43号)第26条の28の4第2

耐震補強工事 耐震改修 進リフォーム工事 以外 工事 経費区分 区 分け 見積 し 者 押印し. ※ 原本提出 自分 控え 必要 場合

住宅本体改修に替え、1階寝室に耐震シェルターを

建築関 団体等 連携を図り ら 経済的 工事中 不便さを軽減 る耐 震改修工法を提案し 工事へ 不安を取り除 す. ン建築関

【 改修工事前に提出が必要な書類(①~⑤必須)】 ① 住宅改修費 申請書 必要事項を記入してください。 ② 理由書

(1)

●耐震改修設計費補助金     ( H 29年度  2件予定) ●耐震改修工事費補助金     ( H 29年度