長 崎 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
2 8
巻 第5 0
号 平 成1 0
年1
月1 0 3
AIDA‑AHP 連成手法の提案と過疎地域における 基幹交通体系の再編計画策定・評価への適用
末 吉 仙 英 * ・ 棚 橋 由 彦 * * 杉 山 和 一 * * *
An A p p l i c a t i o n o f P r o p o s e d AIDA ‑AHP C o u p l i n g M o d e l t o R e ‑ o r g a n i z e d P l a n n i n g o f P u b l i c T r a f f i c S y s t e m i n D e p o p u l a t i o n A r e a s
by
N o r i h i d e SUEYOSHI* , Y o s h i h i k o TANABASHI**
a n d K a z u i c h i SUGIY AMA * * *
AIDA ( A n a 1 y s i s o f I n t e r c o n n e c t e d D e c i s i o n A r e a s ) means t h e f o r m e r two modes o f SCA ( S t r a t e g i c C h o i c e Approach ) which c o n s i s t s o f t h e f o u r modes
,i . e . ; A n a 1 y s i s
,C o n s t i t u t i o n
,C o m p a r r i s o n and C h o i c e m o d e s . T h e 1 a t e r two modes o f SCA c a n n o t e s t i m a t e p r i o r i t y r a n k i n g s o f a l l t h e a 1 t e r n a t i v e p 1 a n s q u a n ‑ t i t a t i v e 1 y . AHP ( A n a 1 y t i c H i e r a r c h y P r o c e s s ) c a n e v a 1 u a t e p r i o r i t y r a n k i n g s among maximum 9 a 1 t e r ‑ n a t i v e p 1 a n s q u a n t i t a t i v e 1 y . T h e r e f o r e
,i n o r d e r t o e s t i m a t e t h e p r i o r i t y r a n k i n g s among a 1 a r g e amount o f t h e a l t e r n a t i v e p 1 a n s q u a n t i t a t i v e l y , by a c c o r d i n g t o a d o p t I n n e r Dependence Method a s a m o d i f i e d AHP and A b s o 1 u t e Measurement Method , AIDA ‑ AHP c o u p l i n g mode1 was p r o p o s e d a s o n e o f r e a s o n a b l e p 1 a n n ‑ i ng p r o c e d u r e s .
On t h e o t h e r hand
,r e ‑ o r g a n i z e d p l a n n i n g o f p u b 1 i c t r a f f i c s y s t e m i n d e p o p u l a t i o n a r e a s i s s t i l l v e r y s e r i o u s i s s u e s i n J a p a n . T h e r e f o r e , t h e p r o p o s e d AIDA‑AHP c o u p 1 i n g mode1 was a p p l i e d t o Shimabara p e n i n s u l a
,N a g a s a k i p r e f e c t u r e
,J a p a n a s a t y p i c a l d e p o p u 1 a t i o n a r e a i n Ky u s h u i s 1 a n d
,J a p a n . One o f t h e a i m s o f t h i s s t u d y i s t o v e r i f y t h e e f f i c i e n c y o f t h e p r o p o s e d mode1 and a n o t h e r aim i s a p r o p o s a l o f t h e r e ‑ o r g a n i z e d o p t i m a 1 p 1 a n n i n g o f t h e p u b 1 i c t r a f f i c s y s t e m i n Shimabara p e n i n s u 1 a
,t a k i n g t h e r e s u 1 t s o f t h e p r o p o s e d mode1 i n t o a c c o u n t .
1 .
はじめに過疎地域における公共交通機関は,モータリゼーシ ョンの進展,道路網の整備による自動車交通の増加に より大きな影響を受け,利用者が学生・高齢者が大半 という厳しい経営状況にある。このような状況の下,
利用者を増加させていくために,様々な改善策を行う 必要に迫られている。しかしながら,改善策の策定に は利用者のニーズ,経営者サイドの事業費や事業の難
平 成
9
年1 0
月2 8
日受理易度といった様々な問題が複雑に絡み合っている。こ のような複雑で不確実な計画の策定に際し,
AIDA
( A n a l y s i s o f I n t e r c o n n e c t e d D e c i s i o n Areas )
手法の 有効性が注目されており,社会科学的な分野を始めと する様々な分野に適用されている。そこで本研究では,ケーススタディとして島原半島 を対象地域とし,
AIDA
手法により幹線公共交通機関 の再編計画の策定を行った。さらに,最近意志決定手 法として注目を集めている階層分析法AHP( A n a l y t i c
*建設省九地建・雲仙復興工事事務所
( UnzenR e c o n s t r u c t i o n O f f i c e
,MOC)
牢牢社会開発工学科( C i v i l E n g i n e e r i n g D e p a r t m e n t )
村本(株)ペック
( P e c k C o r p o r a t i o n C o . , L t d . )
図.1研究のフロー
H i e r a r c h y P r o c e s s )
を用いることにより,各代替案の 比較・検討を実施した。その結果を基にして,島原鉄 道や地元自治体に対して提言を行うと共に,本手法の 適用性について検討した。その手順を図.1
のフロー チャートに示す。2
.島原半島の公共交通機関の問題点2 . 1
島原鉄道8)島原鉄道は諌早 島原 加津佐という島原半島北 東海岸の地域を結ぶ全長78.5k
mの民営鉄道である。
雲仙普賢岳の土石流災害により運休を強いられてい たこの鉄道は,平成
9
年4
月に念願の全線開通を迎え た。島原鉄道の問題点てしては運行本数が少いことが第
l
に挙げられる。表.1
を参照すれば, 朝夕の通勤 通学時間及び正午付近の時間帯に毎時2
本で利便性の 向上への取り組みが伺える。毎時2
本の中でも,正午 付近の運行については間隔が約5 0
分程となっている。当然、のことながら,その他の時間帯はそれ以上の運行
表.
1
鉄道の運行本数区 問 本 数 発車本数/時
上 南 島 原 諌 早
2
本1 9
本7
,1 0
,1 3
,16,1 7
,20 2本 加 津 佐 諌 早1 7
本 上記以外 1:本南 島 原 加 津 佐 1本 9司12,19,20 2本 下 本 諌 早 加 津 佐
1 2
本 20本諌 早 加 津 佐 1本 上記以外 1本
諌 早 南 島 原
6 本
(南島原駅発着時間)
間隔となっており最長7
3
分となっている。平均運行間 隔は約5 0
分であり,運行間隔としては長いと考えられ る。その他の問題点として,路線線形が悪いこと,車両 の老朽化などにより所要時間が長いこと,運賃が高い こと及び駅間距離が長いことなどが挙げられる。
2 . 2
路線パス島原半島における路線パスは,島原鉄道パス(島鉄 パス),長崎県営パス(県営パス),西肥パスの
3
社に より運行されている。まず,島鉄パスは島原半島のほ ぼ全体に3 0
路線を有しており,特に島原半島の東部に 運行路線が多い。これに対して,県営パスは千々石・ 小浜・加津佐といった島鉄パスの路線の少い半島西部 の支線パスを中心(14
路線)に運行している。また,西肥パスは長距離パスのみの運行である。このように 島原半島の路線パスは島鉄パスが中心となり,それを 補う形で県営パスが運行している。
そこで,島鉄パスに注目しその問題点を挙げる。ま ず問題点として挙げられるのが路線の系統である。島 鉄パスの現在の路線は幹線(
4
路線)と支線( 2 2
路線)とに分かれている。しかし,半島東部を運行するほと んどの支線は島鉄パスターミナルを発着する直通型と なっており,島鉄パスターミナル周辺では,幹線パス と支線パスが混在している。そのため,路線の系統が 分かりにくく,効率の悪い運行状況となっている。ま た,支線パスについては非常に運行本数が少くなって おり,1 日 2~3 本という路線も珍しくない。
2 . 3
全体的な問題点パスの運行が島鉄パス中心に行われていることか ら,島原半島の公共交通機関は島原鉄道と島鉄パスが 担っているといっても過言ではない。この島原鉄道と 島鉄パスの経営はともに島原鉄道(株)が行っている。
しかし,島原鉄道と島鉄パスの連携はあまり芳しくな し 両者が協力して利便性を向上させようという姿勢 が見受けられない。
図.2~ 図.
4
は,平成6
年度に島原鉄道利用者を対 象として行ったアンケート調査 (配布数1 0 0 0
部回収率52.1%)
より,回答者の属性を示したものである。こ れより鉄道利用者の多くが高齢者・学生(図.2
,3)
といった自動車運転免許証を持たない人(図.4)
で あるということがわかる。このことは,パス利用者に ついても同様であると考えられる。従って,免許を持 っている人のほとんどが自動車を利用している状況が 推察される。AIDA‑AHP
連成手法の提案と過疎地域における基幹交通体系の再編計画策定・評価への適用1 0 5
37
・
022'
,
12'
, 曜
1 2~o 7~ , 1mo
図.2 年齢の比
17'o 36~;
20~ó
図.
3
職業の比率図.4 免許の比率
表.
2
問題点問 題 点 全 相互の連携の悪い鉄道 パス 体 利用者の多くが高齢者と学生 の マイカ一利用の樋加 問 幹線道路の交通量の増加 題
占 観光に対応していない公共交通 運行本数の少なさ
鉄 所要時間の畏さ
道 運賃の高さ 駅間の長さ J¥ 路線の悪さ
ターミナルへの集中 ス フィーダー輸送の少なさ
」 ー 里町生
P
悪さこうしたことが,自動車の保有台数の増加や自動車 の増加に伴う交通量の増加に反映されていると考え る。
その他の問題として,各観光地を結ぶ公共交通機関 のネットワークが整備されていないことが挙げられ る。
以上挙げた問題点をまとめると表.2のようになる。
本研究では公共交通全般を取り扱うという観点か ら,機関別の問題点よりも全体的な問題点に目を向け た。さらに,その問題点の中で「鉄道・パス相互の連 携」が最も重要であると考え,この点に焦点を絞り込 んだ。
~
3 . A I D A
手法の適用AIDA
手 法1).2).6)と は , 戦 略 的 選 択 ア プ ロ ー チ(SCA)
において,分析モード・構成モードと呼ばれ る問題の明確化と代替案の作成に用いられるプロセス である。すなわち,計画問題を択一的な意志決定を要 する選択領域を表わすデシジョンエリア(問題となる 分野)と,その領域内で選択できる選択肢であるオプ ションをそれらの背反関係によって構造化した後,そ れぞれのデシジョンエリアから lつずつ選択されたオ プションの集合である実行可能な代替案を網羅的に列 挙するものである。本研究では,まず島原半島における幹線交通機関の 再編計画を「鉄道・パスの連携および幹線パス路線の 再編」に注目し,表.3 に示す I~ 百のデシジョンエ
リア
( D A)
とオプション( O P )
を設定した。これらの
DA.OP
の設定に際しては,次の5
点を前 提条件とした。①現在ある
6
つのパス営業所を乗り継ぎターミナルと して,幹線の交通機関(鉄道・幹線パス)と支線の 交通機関(支線パス)とに明確に分ける。②鉄道と幹線パスが並行している区間は共通運賃制度
表.3 デシジョンエリア・オプション
デシジョンエリアの内容 1 I幹線パス路線をどうするかっ
ンョ
1‑2‑3‑4‑! 一路一路一路一路一愛 一紘一線一線一線一野 41一2一3一一オ一 プ ソ
っ
ム刈るす
増 凡 又
どを
1ν
ナ
ゐFぎ継
乗
宵且
ml運賃制度はどうするかっ
3両 方 1乗り継ぎ運賃制度 2共通運賃制度 1多以良駅を整備 2加津佐駅を整備 NI駅前広場を整備するかっ
vl鉄道沿線の幹線の交通嵯閲の運行間隔はつ い20分間隔
│2 30分間隔
VII鉄道路線外の幹線パス 1路線の運行間隔はつ
h
30分間柄 260分間隔表.
4
デシジョンエリアI
のオプションオフション 路線 特 徴
島原 口之津
路線1 島原 雲仙 小浜 愛野 鉄道利用 口之津 加津佐 小浜 愛野
島原 多以良 愛野 諌皐
路線2 島原 口之 津 小浜 愛野 諌早 諌早直通 島原 雲仙 小浜 諌早
島原 愛野 小 浜 口之;章 島原
路線3 島原 雲仙 小浜 愛野 島原半島循環 愛聖子諌早
島原 愛野 小浜 島原
路線4 島原 口之,寧小浜 島原 北部 南部循環 愛野 諌早
表.
5
オプションマトリックスI E E N V VI
1 1 2 314 1 1 2 3 1 1 2 1 1 213 1 1 2 1 1 2 11/ / 1 / 1 /
本1 1 2 / 1 / / 1 / 1 *
ホ31 / / 1 / 1 /
ホ* 41/ / 1 / 1 /
キ*
* /1 /1 / II121*
ホ ホ/1 /1 / 3 /1 /1 /
1II1 1 *1 *
判ド/ 1 /
2 /1 /
/1/ 1 /
NI2 / 1 /1 /
3 / 1 / 1 /
Vll
/ 1 /
2 / 1 / 1 *
VIll
* 1 / 1 /
2 / 1 /
表
6
実行可能な代替案7 u
‑ n t n t q J ι
内J ι
‑ いえ
‑s
η ζ 'qLsqJι'nノニ
2 1 [ 1 [ 1 [ 1
一一
[
一 一一 一一 一 一ニ
山 一
1 2 1 2 1 2
LL﹁L﹁L﹁L﹁L﹁L﹁L﹁
﹁
一D 1
一U
一 一
ー し
て て てr
‑ q d q u q d
司u
配 一
2
2 2 2
nu‑
閉山
‑ aq ζ ト ・ 1
‑
1
勺 乙 勺
L n t
D 一 1
r L
﹁L﹁L一
JL
一
一 一
円u‑
q u q J q u n J
m一1
川 之
1 1 A一
1
2 3 4 D ‑
﹁L﹁L﹁L﹁L
とする。
①鉄道と支線パス聞は乗り継ぎ運賃制度とする。
④鉄道沿線の運行間隔は最低
3 0
分とする。①鉄道と幹線パスが並行している区間は両者を組合せ たダイヤにする。
なお,
DAI
のOP
の内容は表4
に示す通りである。 次に,DA
聞の相互関係を考慮し,両立し得ないも のをオプションパー (*)として設定した。その結果 を表.5
のオプションマトリクスに示す。さらに,オプションマトリクスによって示された両 立しない
OP
聞の関係を考慮、しながら,各DA
の中か らOP
を選択し,その集合として求めた実行可能な代 替案を抽出した(表.6)
。 た だ し [, ]のOP
はい ずれも選択可能であることを示している。以上により,
6
項目のDA
の全てのOP
の組み合わ せ2 8 8
通りから,OP
バーの引かれた組み合わせを除 くことにより,実行可能な9 0
通りの代替案を抽出する ことができた。4.階層分析法A H P
の適用4 . 1 AH P
の概要3).4)SCA
を用いた意思決定問題では,AIDA
手法で作 成した代替案を比較モード ・選択モードにより代替案 の比較・選択を行うが,この比較・選択の両モードは図
. 5 AHP
のフロー領域の構造化に暖昧さを含んでいる。そこで本研究で は,これらの代替案に対し,定量的な評価が可能であ る
AHP
を用いることとした。AHP
を用いることにより,問題の要素を①最終目 標,②評価基準,①代替案の3
つの関係でとらえて,階層構造を作り上げることができる。すなわち,まず 最終目標からみた評価基準の重要度を求め,次に各評 価基準から見た代替案の重要度を評価し,最後にこれ らを最終目標からみた代替案の評価に換算するもので あるO また,
AHP
ではこの評価の過程で,これまで はモデル化,定量化が難しかった問題も扱えることを 特徴としている。AHP
のブローチャートを図5
に示す。この手法 の中で行う「一対比較」は,表. 7
に示す重要性の尺 度に従って実施する。重要性の尺度は,I
同じくらいJ
,「やや
J
,I
かなり」といった表現を用いているため,意志決定者の負担を軽くしている。しかし,その反面,
一対比較において首尾一貫性のある答えを期待するこ とは不可能である。そこで,このあいまいさの尺度と してコンシステンシ一指数
( C
.I.
)が定義されている。なお,
C .
I.はS a a t y
の定理により次式のように示され ている。C .
I. = 年ξ 旦 n ‑
1ここに, Amax 最大固有値,
n
一対比較の要因数でAIDA‑AHP
連成手法の提案と過疎地域における基幹交通体系の再編計画策定・評価への適用1 0 7
ある。
S a a t y
は,経験則よりc.r.の値が0 . 1
以下であれば合 格であることを提案しており,本研究でもその提案を 採用した。表.
7
重要性の尺度重要性の F疋晶 『 義 尺度
equa I i mportance (同じくらい重要)
3
weak i mportance (やや重要)5
strong I mportance (かなり重要)7
very strong importance (非常に重要)9
abso I ute i mportance (極めて重要) (2.4.6.8は中間のとき用いる)今回のケーススタディにおいては,
AIDA
手法によ り策定した代替案を,住民側と経営側の2
つの立場か らA HP
を用いて,別々に評価を行った。なお,一対 比較は,住民および経営者(島原鉄道)への聞き取り 調査を基に行った。4 . 2 AH P
の適用AHP
を適用するためには,まず問題を階層に構造 化する必要がある。しかし,従来のAHP
では階層を 構造化する際,同一階層の各要因に独立性のあるもの を設定することが必要である。そこで,同一階層の各 要因に関連性があるとき,その相互関係のマトリクス を用いて分析する手法であるI n n e rD e p e n d e n c e
法を 用いることにより,関連性のあるAIDA
手法の6
つ のDA
を要因として設定し,図.6
および図.7
に示 す経営側および住民側の立場からの階層図を作成しレ/勺レl
レベル2
レノミ1.t4
図
6
経営側の階層図レベルl
レノ:1(.3
図.7 住民側の階層図
図.
8
各要因聞の関係た。なお, 6つの
DA
は図.6のレベル 3および図.7
のレベル2
に設定した。上述した
6
つの要因( DA)
の関係を図.8
に示す。なお,図中の矢印は,元から先に影響を与えていると いう意味である。本研究では,幹線のパス路線の再編 を中心に代替案を策定したため,
I
幹線のパス路線」が
OP
パーのヲ│かれる「乗り継ぎターミナルJ
,I
運賃」に対して影響を与えているものとした。また,
I
鉄道 沿線の運行間隔」と「幹線パスの運行間隔J
について は,互いに影響を及ぼしているものと判断した。AHP
で行う一対比較には,一対比較が可能な要因 数が7
個,多くても9
個以下という制約がある。これ は,要因数が多いと整合性が悪くなる( C .
r.ミO .1
と なる)可能性が非常に高く,また,一対比較そのもの を行うことが不可能となる場合もあるためである。し かし,今回実施した解析ではAIDA
手法により策定 した代替案が9 0
通りと非常に多く,制約条件をはるか に越えている。そこで,A b s o 1 u t e M e a s u r e m e n t
法に よるAHP
を適用することにより,この9 0
通りの代替 案の評価を可能にした。この手法は,各要因に関する 代替案の一対比較の代わりに各要因毎に評価基準を定 め,その評価基準の一対比較を行うことにより,代替 案を評価するものであ石。4 . 3
分析結果AHP
による分析結果を表.8
に示す。評価値につ いては,経営側と住民側の一対比較の視点が逆である ことから,住民側では値の大きい方が,経営側では値 の小さい方が優れた代替案であることを意味する。表
.8
における①案は,明らかに最も利便性の良い代替案表
8
適用結果代替案 住 民 経営者
DA I
DAlI DAm DAN DAV DAVI 順位評価値 順位 評価値l T 1 2 3 2
3 1 0.907 90 1.000 12.'12
32 3 2 . 2
10.907 86 0.879
(a)1 2 2 2 2 66 0.354 2 0.184
14
12 2 2
780.309 0.174
(5
'4
1日 2 2 2 52
0.4103 0.224
であるが,その反面,最も整備に費用を要するもので ある。なお,この代替案に対する評価は,住民側では 最も優れており,経営側では最も悪くなっている。
結果を総合すれば,住民側は乗り継ぎを嫌う傾向が 明らかであり,諌早への直通路線である「路線
2 J
や 乗り継ぎ抵抗が少ない「共通運賃制J
,I
駅前広場の整 備の充実」などの要因を重要視する代替案が上位に集 まった。これに対して,経営側は費用のかかる代替案 を徹底的に嫌った結果となり,住民側とは全く逆の評 価となった。以上の結果から,住民が利便性の良さを,経営者が 事業費を優先することが明らかであり,両者の立場の 違いが明確に表われた。
5
.適用結果にみる島原鉄道の体制と松浦鉄道の事 例5),7)AHP
の経営側の適用結果は,島原鉄道が費用を要 する事業を嫌っていることが明確に表われたものとな った。実際,島原鉄道は運賃収入で営業経費を確保で きないため,自己資金による設備投資に対して非常に 慎重である。これに対し,松浦鉄道( M R )
はサービ ス向上に積極的に投資し,現在好調な成績を挙げてい る。そこで,鉄道に注目し島原鉄道とMR
との比較.検討を行う。
島原鉄道と
MR
は基本的に地域密着型の鉄道であ るが,島原鉄道は諌早 島原聞の利用が比較的多く,都市間輸送型の要素を含んでいる。これに対し,
MR
は佐々 佐世保聞の利用が最も多く,都市近郊型の要 素を含んでいるという違いがある。
MR
は第3
セクター として営業を開始した19 8 8
年度に40%の運賃値上げを 行ったにもかかわらず,その後の 1990~1993年に輸送 人員を大幅に増加させた。これは,この期間に行われ た運行本数の増加と駅の新設が大きな要因であると考 えられる。1 9 9 0
年には毎時2
本体制を実施し,また駅 を39
から48
に増設した。さらに,1 9 9 2
年には駅を4 8
か ら53
に増設し,1 9 9 3
年には佐々 佐世保間昼間毎時3
本体制とした(表,9
参照)。表より,輸送人員の推移 に運行本数の増加および駅の新設による効果が明瞭に 表われていることが明らかである。中でも運行本数を 増加した2
年の伸びが大きく,運行本数が公共交通機 関の活性化にとって重要な要素だといえる。しかし,MR
がこのような大幅なサービ、ス改善を行えたのは,転換交付金があったからである。
MR
は転換交付金を フルに活用し,運行本数の増加を始めとする利便性の 向上に積極的に努め,現在では非常に好調な成績を挙表,
9 MR
の輸送人員師1送人員(定期%)列車本数 lR数 備 考 国鉄時代(1986) 2.912.000 (65) 52 32
J R九州,1987) 2,810
,
000 (66) 52 32松浦鉄道11988) 2 896.000 (65) 86 39 毎 時 1本を確保 119891 2,881. 000 (63) 81 39
(1990) 3
,
292. 000 (59) 109 48 毎 時2本化 119911 3,
606,
000 (58) 110 5311992) 3
,
989,
000 1581 148 53 佐々 佐世保問昼間毎時3本化,
19931 4.089.000 1591 150 53 11994) 4, 184,
000 1601 151 53 '19951 4.202.000 1601 152 54松浦鉄道提供資料より作成
げている。その背景には,第
3
セクターに移行した後,旧国鉄時代の体制を大幅に改善し,なにより第
l
に利 用者の利便性の追求を考えるようになったことがあ る。島原鉄道は,非常に運行本数が少く毎時 l本という 体制である。
MR
の例から運行本数の重要さは明らか であり,毎時2
本体制の実現が望まれる。また,MR
は駅の新設によっても輸送人員を増加させたが,島原 鉄道は都市間輸送型の傾向があることから,駅の増設 よりも,むしろ諌早 島原聞に快速列車を導入するな どのスピードアップを図ることが望ましい。しかし,
現在の島原鉄道は運行本数の増加を始めとする様々な 改善策に対しでも利用者数の増加の確信がないため,
実行に踏み切れないという状況にある。しかし公共 交通機関の利用者を増加させ,活性化させてし、くため には積極的な施策の実施が必要である。そのためにも,
MR
の転換交付金のような公的補助金が必要であり,圃や地元自治体の協力が必要不可欠である。
6 .
結 論本研究では,
AIDA
手法を用い,島原半島の公共交 通網再編計画の代替案の策定を行うことにより,288
通りの組み合わせから90
通りの実行可能な代替案を抽 出することができた。さらに,階層分析法AHP
を適 用することにより,多数の代替案の比較・検討を行う ことが可能となった。また,評価の結果は住民と経営 者,それぞれの意向をうまく反映したものであった。よって,
AIDA
手法および階層分析法AHP
が代替案 の策定や,その分析・評価において有効であることが 明らかとなった< 謝 辞 >
本研究を進めるに当たり,多大なご助言,ご指導を 頂いた宮川浩一氏(自由業・長崎市在住)に深甚の謝
‑ ー ー ー一
AIDA‑AHP
連成手法の提案と過疎地域における基幹交通体系の再編計画策定・評価への適用1 0 9
意、を表する。また快く資料を提供頂いた島原鉄道(株),
松浦鉄道(株),長崎県庁,島原市役所,長崎陸運局 の関係各位に対し厚くお礼申し上げる次第である。
< 参 考 文 献>
1
)中川 大:戦略的選択アプローチの技法,戦略的 選択アプローチ第25
回土木計画学シンポジウムテキスト,
p p .
27~38 ,1 9 9 1
2) F r i e n d . J
・H i c k 1 i n g
o古池・中川訳:社会計画学の ための戦略的選択アプローチ,技法堂出版 ,19 9 1 3
)木下栄蔵:マネジメントサイエンス入門,近代科学社,p
p .
133~172 ,1 9 9 6 .
4
)木下栄蔵:多変量解析入門,近代科学社,pp.
168~
1 8 8
,1 9 9 5 .
5
)末吉仙英:島原鉄道及び平成筑豊鉄道の活性化方 策に関する研究,1 9 9 4
年度長崎大学工学部社会開発 工学科卒業論文(19 9 5 )
6
)竹林雅衛 :新交 通 計 画 シ ス テ ム 導 入 計 画 へ のAIDA
の適用,戦略的選択アプローチ,第25
回土木 計画学シンポジウムテキスト,p p . 6 5 ‑ 7 6
,1 9 9 1
7 )末吉仙英・杉山和一・甲斐理晋:過疎地域における鉄道の活性化方策,平成