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音声言語表現の指導

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Academic year: 2021

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音声言語表現の指導

著者 米田 猛

雑誌名 教育実践研究指導センター研究紀要

巻 2

ページ 115‑122

発行年 1993‑03‑31

その他のタイトル Teaching of Public Speech

URL http://hdl.handle.net/10105/4474

(2)

米 田   猛

(附属中学校)

TeachingofPublicSpeech TakeshiKomeda

(JuniorHighSchooIAttachedtoNaraUniversityofEducation)

和文要

ヒニ

音声言語教育における独話の指導の実践報告である。まず、音声言語教育の必要 性を現場的視点で述べる。次に、「ちょっと気になるこんな日本語−わかりやすく話 す−」という独話(報告または説明)の実践報告をする。

音声言語表現そのものの学習活動に費やす時間を多くするために、「題材」と「単 元構成の仕方」に工夫が必要なこと、「話の場」への適切な対応の学習指導が、音声 言語教育の大事な一面であることが明らかになった。

Keyword;音声言語教育、独話 1音声言語教育の必要性

新学習指導要領が告示されてから、「音声言語」に関する研究や実践が増えている。かつての学 習指導要領がこの領域の指導を軽視したわけではないが、教育現場では他領域に比べ、さまざまな

問題が山積して、実践が困難であったというのが実情であろう。今回の改訂で「音声言語」領域の 指導強化が示されたわけであるが、そのような問題とは別に考えても、音声言語教育の必要性は言

うまでもない。ただ、現場の実践が「流行(はやり)」に終わらないで、しかも「研究的実践」で あるために、次の点については留意すべきであろう。後述する実践例は、このうちの(1)(2)(3)につい て提案を試みたものである。(「音声言語」の教育に関する問題点についてはすでに多くの論稿があ る。ここに示したのは、それらを参考にしながら、筆者が現場的な視点で整理を試みたものである が、十分ではない。)

(1)手段としての「音声言語」から目的としての「音声言語」へ

「理解を深めるために(さらによく味わうために)音読(朗読)しましょう」「その文に書い てあることを確認するために、自分なりに説明してみなさい。」という指導がよくある。一つの 指導方法として決して否定するものではない。しかし、本稿で問題としたいのは、そのような理 解を深める(広める)ために、音声言語を利用するのではなく、音声言語そのものを学習の対象 とする場合をさす。それなしでは、「音声言語」の指導とは言えないという自明の事実を再度確 認しておきたい。

(2)言語生活の基盤としての「音声言語」だという認識の必要性

(3)

音声言語と相対するものに文字言語がある。さらに、これらに支えられて言語文化が存在する。

音声言語と文字言語の関係をどのように考えるかは、諸説のあるところである。筆者は、かって 西尾実博士が説かれたごとく‖)、言語生活の基盤として「音声言語」が存在し、その上に「文字 言語」があり、さらにその上に「言語文化」が存在するものと考えたい。音声言語は、きわめて

日常的な言語活動であり、私たちの言語生活の基盤である。文字言語活動が音声言語活動よりも 一般的には抵抗があることからもそれは明らかであろう。

(3)日常的指導から、意識的・意図的指導へ

音声言語の指導が「しっけ」の指導にすりかえられていないかという危惧がある。「しっかり 聞きなさい。」「わかるように話しなさい。」という指導である。「しっかり聞くために何に気をっ ければいいのか」「わかるように話をするためにどういう点が留意すべきことなのか」の指導が なされていないのではないだろうか。日常的に(しつけの部分も含めて)指導することの重要性 は論を待たないが、一方で国語科の範囲でできる言語の指導としての意識が必要になる。その意 味で、音声言語にかかわる指導時間が明示されたことの意義は大きい(第1学年は年間15〜18単 位時間、第2学年・第3学年は年間12〜15単位時間)。

(4)指導方法の開発の必要性

「教材の開発は?」「単元構成は?」「話させる題材は?」′「育てるべき能力は?」「指導法は?」

「評価の方法は?」など、広義の指導方法に関する課題は山積している。特に、音声言語指導の 場合、他人に話す学習が多くを占めるので、他人とのかかわり合いにおける生徒の精神面や性格 面での課題もあるようである。

(5)聞くことの指導方法の開発の必要性

音声言語指導は「話すこと」だけではない。「聞くこと」の指導と表裏一体である。「話すこと」

に比べ、静的な活動だけに指導方法はかなりの困難を伴う。しかし、これらはやはり同時に指導 されなければならない領域である。なぜなら、「聞くこと」で学んだことは「話すこと」に反映 されるからである。

2 実践の概要

(1)題材「ちょっと気になるこんな日本語−わかりやすく話す−」

(2)目標

① 日常生活の中のことばのさまざまな問題について興味を持たせる。

② 要旨がはっきりとわかり、全体の構成を工夫して話す能力を養う。

③ 大勢の人の前でも臆せずに、聞き手を意識して報告したり説明したりしようとする態度を 養う。

(3)指導について

① 音声言語の指導に限らず、何を表現させるかは、表現指導上の大きな課題である。生徒の 興味・関心があり、しかも価値ある話題の選定は、正直言って難しい。今回は、「生活の中 のことばの問題」を取りあげ、「ちょっと気になる日本語」を対象に、その事例や問題点を 報告または説明させる単元とした。「ら抜きことば」が新聞紙面をにぎわし、とりわけ話し

ことばの乱れは、多く見聞するところである。今回は、文字言語の問題も含めて、ことばの

問題を取りあげている。

(4)

ただし、ここにいう「気になる」とは、単に「変だな」「問題を感じるな」というものだ けでなく、「I二夫があるな」「効果的だな」と感じるものも含めている。しかも、単純な「こ とばの間違いさがし」ではなく、いいようでもあり、よくないようでもあり、というふうな 疑問に思ったものを取りあげることにした。

② 今回の表現(独話)の目的は、聞き手に内容を「理解させること」である(生徒によって は、また、話によっては、さらに高いレベルの「納得させる」まで目的にしてもよい)。そ のために「わかりやすく話す」ことが必須の条件であるが、この「わかりやすく」は、生徒 の発達段階によって、実にさまざまなとらえられ方をする。そこで、今回は次の点に特に留 意させて、「わかりやすく」を指導することにした。

・話のテーマが明確で、テーマを語るにふさわしい事例を用いること。

・話全体の筋道がはっきりしていること。

・聞き手を意識した表現の選択や、必要に応じた補助物の提示を行うこと。

③ 短時間の取り立て学習(あるいは練習学習)的な表現活動ではなく、表現活動の一連の過 程(主題の決定→取材・題材→構成→推敲→表現)をふまえた学習となっている。特に、取 材・選材活動や話全体の構成を考える活動にも時間をかけて、すぐに音声表現活動に入らな

い点は、作文指導と相通じるものである。

(4)指導計画(全13時間)

時 学 習 活 動 指 導 上 の 留 意 点

1

・ 学 習 の め あ て や 内 容 を 知 ら せ 、 「音 声 」 に よ る 表 現 の 学 習 で あ る こ と 、 原 表 現 し よ う と す る 意 欲 を 喚 起 さ せ 稿 は 作 ら な い で 話 を す る こ と 、 報 告 や 発 表 の

る 。 形 態 を と る こ と な ど を 知 ら せ る。

2 ・ 話 の 素 材 を 集 め 、 主 題 を 決 め さ 「ち ょ っ と 気 に な る 日 本 語 」 を 思 い っ く ま

せ る 。 ま あ げ さ せ 、 主 題 を 決 め さ せ る。

3 ・  主 題 に 基 づ い て 、 話 の 材 料 を 集 ・ 同 題 材 4 人 の グ ル ー プ で の 取 材 活 動 を さ せ

? め さ せ る 。 る 。 当 然 情 報 交 換 が あ っ て よ い。

5 ・ B 6 大 カ ー ドを 利 用 さ せ る 。

・ 練 習 学 習 に よ っ て 、 「わ か り や 「さ い こ ろ の 並 べ 方 」 と い う練 習 学 習 を さ す く話 す 」 た め に 「注 意 す る こ と」 せ る。 こ れ を 通 し て 、 「わ か り や す く 話 す 」 6 「努 力 す る こ と 」 を 討 議 さ せ 、 た め に 注 意 す る点 を 抽 象 化 さ せ 、 自 分 の 表 現

「話 し方 」 の 学 習 H 標 を 決 め さ せ に 生 か さ せ る 。 共 通 目 標 の は か に、 個 人 に よ っ る (共 通 目 標 ・個 人 目 標 )。 て 異 な る 目 標 が 出 て も よ い 。

7

・  自 分 の 話 に つ い て 、 わ か り や す ・ 構 成 メ モ を 利 用 さ せ る (構 成 メ モ の あ り 方 い 話 の 内 容 や 組 み た て を 考 え さ せ に つ い て は後 述 す る)。 時 間 配 分 ・資 料 の 掟

る 。 示 の 仕 方 等 に つ い て も 予 定 さ せ る 。

8

・  級 友 の 報 告 (説 明 ) を 聞 い て 話 ・  内 容 面 と表 現 面 の 両 方 か ら、 そ れ ぞ れ に 特 し方 を 学 び 、 自 分 の 表 現 に 取 り入 徴 の あ る 生 徒 2 人 を モ デ ル に さ せ る 。 2 人 の

れ さ せ る 。 生 徒 に は 一 定 の 事 前 指 導 を 行 う。

9

・ 実 際 に 報 告 (説 明 ) し 、 お 互 い ・ 聞 く生 徒 に も 聞 く た め の 観 点 を 与 え る 。 に 助 言 を 書 い た り 反 省 を し た り す 1 人 の 発 表 者 に つ き、 3 人 の 助 言 が 与 え ら

? る 。 れ る よ う に 、 分 担 を す る。

1 2 「自 分 の た め の 『わ か り や す く話 す 』 た め

の 10 か 条 」 を 作 らせ る 。

1 3

・  助 言 や 反 省 を ふ ま え て 、 2 回 め 1 週 間 以 内 に提 出 さ せ 、 1 回 め よ りよ くな っ

の 発 表 を 録 音 す る (録 音 は 提 出 し た 点 を 評 価 し た い 。 指 導 者 の コ メ ン トを 録 音

て 、 個 人 指 導 を 受 け る )。 し て 返 却 す る 。

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3 実践上の問題点

(1)題材の選定

前述したごとく、「何」を表現させるかは、音声・文字にかかわらず難しい実践課題である。

とりわけ、音声表現の場合は「この学習の成否は話題によることを知った」(2)と言われるほど、

学習に大きな影響を与える。本実践では、「ことばの問題」を話題とし、しかも、話しことばの 問題もその話題となり得る二重性を持った学習となった。当初、例えば、「わたしの好きな歴史 上の人物」白]本の風習−なぜ大晦Hにそばをたべるのか−」「あなたの知らない奈良のよさ」等 の話題も考えたが、指導者の準備・生徒の調査研究の時間等を考慮し、「ちょっと気になるこん な日本語」とした。学習前には、この話題に生徒が困難を感じて、学習が成立しないのではない かという危惧を抱いたが、それは杷菱に終わり、むしろ改めてことばの問題を深く考える結果と なった。次に、あるクラスの話題例を示す。

O 「すみません」の使われ万一「感謝」の意味で使われていること一について O 「全然〜」が否定で結ばれていないことについて

O 「やる」と「あげる」の使い分け

○ 漢字とちがう読み一「瞬間」は「とき」と読んでいいのか一

〇 少し変な動詞「ミスる」や「ジコる」について

○ 丸字について

O 「〜しちゃう」を関西人が使うことについて

○ 何でも「すごい」と言って済ませてしまうことについて

題材を考えるとき、例えば同じ「説明」の表現であっても、次に示すような(3)「何を説明する か」によってそれに合う題材を見つけなければならない。

・それは何であるか。       ・それはどんな意味があるか。

・それはどのように組み立てられているか。 ・それはどのような働きをするのか。

・それにはどんな狙いがあるのか。     ・それはどうしてそうなったのか。

・それはいっ起こったのか、存在したのか。 ・それはどんなであるか。

・それはどうしたらよいのか。       ・それはなぜそうなのか。

それぞれの説明の学習を成立させる題材の開発が大きな課題である。

(2)取材活動等の準備

「音声言語」の学習をイメージするとき、声に出して、学習する場面ばかりがどうしても先行 してしまう。もちろんその活動なしにはこの学習は成り立たないが、話させるための準備に時間 をかけることも忘れてはならない。その意味では文字言語による作文活動とある時点まで共通す る学習活動である。そのことは、例えば前掲文献(2)で次のように示されている。

音声言語の指導目標を設定するに当たっては、音声言語の特質及び学習指導要領の趣旨と 構成にかんがみて、次の事項に留意しなければならない。

① (筆者省略)

② 「表現」と「理解」の指導事項のうち、音声言語に関する事項だけでなく、音声言

語と文字言語に共通する事項をも含めて考えること。(文献(2)23ペ)

(6)

本実践においても、話題の決定から取材活動までに5時間を費やし、多くはグループ活動をし ながら、情報がより多く集まる形態をとった。また、説明(報告)をわかりやすくするために、

補助物(または実物)の使用を義務づけたために、その作製や取材にも時間を費やしている。補 助物は、例えば紙にかいた図表や絵であったり、家族や友達の話し方を録音したりインタビュー したりしたものであったり、気になる日本語を使っているテレビ番組の録画であったり、書物の 必要な部分をOHPシートに拡大したものであったりして、生徒の発想を生かした種々のものが

提示されている。

この取材活動の時間を指導計画の中にきちんと位置づけておくことが、この種の実践の成否の 鍵の一つを握っていると言えるのであろう。

(3)構成メモのあり方と原稿の有無

本実践では、次に示すような話し方計画表(実際には縦書き、概略のみ示す)を生徒に作成さ せ、学習を進めた。

話し方計画表(1992・10〜11)   2年   組   番〔

1 わたしは、

調べたことを報告(説明)しようと思います。このことばや表現は、

〕について

〕という点が

「ちょっと気になる」日本語なのです。

2 この報告(説明)をするために、次のような材料(具体例)が集まっています。下に 書いたような理由で、今回の報告(説明)に使おう(使わないでおこう)と思っていま す。

<材料>       <使おう(使わないでおこう)と考える理由>

3 話全体のおよその組み立ては次のとおりです。

時間 話す内容 気をっけること 実物の提示

0 ①話 し始 め=

②<       >

③<       >

○結 び=

ここで問題にしたいのは、計画表の3にある「話の組み立て表」である。本実践では、「話し 始め」と「話し終わり」は話すとおりの原稿を書かせ、途中の部分は材料の要点のみメモさせる ことにした。全文の原稿を書かせずとも話ができると判断したからであり、全文原稿を書かせる と「読む」ことになってしまわないかという恐れがあったからである。原稿の有無については、

一応次のような段階があると考えられ、生徒の発達段階やその時点での能力によって選択する必

(7)

要がある。いずれの場合も原稿をできるだけ見ないようにすることが大事である。なぜなら、原 稿を見るとは「話す」ではなく「読む」になるからである。

・第1段階……全文原稿を書く。話の内容や構成を確認する意味がある。初期の指導として は必要なときもある。

・第2段階……各段落の話し始めの原稿を作る。

・第3段階……話し始めと結びは原稿を作る。ほかは、材料の要点メモにとどめる。

・第4段階……話す順番に材料の要点メモのみにする。

・第5段階……原稿は全く作らない。話す内容は覚えておく。

本実践では第3段階で試みたわけであるが、学習経験のなさか、やはり「読む」生徒が多く見 受けられた。原稿を書いているわけではないのだが、そのような話し方がいいと感じているので あろうか。あるいは、完璧な話を意識しすぎたのだろうか。畠弘巳氏の指摘のように(4)、

話しことばはある程度の不完全さを前提としたことばであり、作文教育のように発話に完 全さを要求してはならないのである。話しことばと書きことばは違うものであるというのが、

話しことば教育の前提にならなければならない。

ということを生徒にも意識させねばなるまい。

(4)話しことばらしさ一書きことばとのちがい一

前項と関連する。書きことばと異なる「話しことばらしさ」を何に求めるかは、いろいろと論 議のあるところである。結局のところ、次のような部分に集約されるのではないだろうか。

「話すこと」「聞くこと」「話合い」等の音声言語の貝体的な指導に際しては、音声言語活動 の基本的な特質の中でも、まず次の二点についての十分な把握が必要である。その第一点と しては、音声言語とそれに伴う場面や文脈とが流動的、一体的に展開していく点をあげるこ とができる。また第二点としては、話し手としての自己の「話すこと」と聞き手としての相 手の「聞くこと」との関係、聞き手としての自己の「聞くこと」と話し手としての相手の

「話すこと」との関係のように、自己の音声言語活動と相手の音声言語活動との間に相互依 存的な密接な関係が認められる点をあげることができる。(文献(2)21〜22ペ)

つまり、音声言語活動には文字言語活動には絶対起こり得ない「場面適応性」の問題が常に存 在し、それこそが音声言語活動の成否を決定すると言ってもよいであろう。

説明や報告の場合に限って考えれば、「聞き手はそのことにどの程度の知識を持っているのか、

全く知らないのか、部分的に知っているのか、よく知っているのか−よく知っている聞き手に説 明するほど難しいことはない−」「聞き手は、蚤の説明や報告を聞きたいと恩っているのか、そ うでないのか」「自分と同じ話題で話した人は、自分の話以前にいるのか。いないのか。いるな ら、それのどの部分を生かすのか、生かさないのか」等々、さまざまな要素がからみ、話をする 現場でその都度、「話し始めはこれでいいか」「話の順序や組み立てはこれでいいか」「(聞き手の 理解度を確かめながら)要点は繰り返したり、大きな声で言ったりしたはうがいいのか」などの 判断が行われなければならない。

本実践では「構成メモ」に従う生徒も多くいるが、話題が同じ場合、話し始めに変化をもたせ たり提示する資料を異なったものにしたりして、中学生なりの判断があったようである。

(5)評価の方法

本実践で「評価」について留意した点は、次のようであった。

○ 評価の観点をはっきりさせる。「評価の観点」は生徒の努力目標でもある。

(8)

○ 話の現場で評価する。ビデオその他の機器の利用による評価も考えられるが、話しこと ばの「場面適応性」を考慮すれば、その場での評価が一番である。

○ 生徒の自己評価(反省)・相互評価(助言)を積極的に取り入れる。特に「相互評価」

は「聴く耳」を育てる。評価の観点は示しておくが、「A・B・C」等の記号による段階評 価ではなく、気づいたことを文章表現する方法をとる。

○ 学習が一過性とならないように2回めの発表を行い、1固めと合わせて評価する。

音声言語の評価の問題は、音声言語の教育が抱える大きな課題である。この問題の解消が音声 言語の教育を大きく飛躍させるものであると考える。

4 生徒の発表例

生徒の発表例を1例示す。これは、第8時のモデルになった生徒のものである。文字だけでは、

その場の雰囲気が伝えにくいので、参考程度にとどめておきたい。家族へのインタビュー(録音し たもの)、OHPで示した貝体的な資料など、資料提示に上夫がある。また、話しぶりも落ち着いて いる。ただ、クラスで最初の発表をするという緊張感からか、聞き手の反応や理解度を確かめなが

ら話したり、構成やことば選びを臨機応変に行うというのは、できていない。

こんな経験をしたことがあります。電車の中で席をっめたそのあとで、あるおばさんに、

(次を強く言う)お礼の意味で「すみません。」といわれたのです。わたしはそのときは何も感 じなかったのですが、よく考えてみると「ありがとう」の代わりに「すみません」を使うのが おかしいなと思い、この問題を調べてみました。

「すみません」の使い方には、大きく3つあるようです。1つめは、何かまちがったときに よく言う「すみません」、これは「あやまり」の意味ですから普通の使い方です。2つめは、

レストランで水がほしいときに言う「すみません」、これは「依頼」つまり「ひとにものを頼 む」ときの使い方ですから、やはり普通の使い方です。

問題は、次のような例です。店でものを買いました。そのとき、店員さんの言う「すみませ ん」です。これは、「ありがとう」の意味ですから、「すみません」ではなく、やはり「ありが

とう」と言うのが、適切だと恩います。

実は、このことを家族に尋ねてみたのです。そのときの録音を聞いてください。(録音テー プを流す・約1分)。どちらかというと、祖父や祖母は「ありがとう」を使い、父、母は「ど ちら」も使う、弟は「すみません」を使うようです。国立国語研究所が同じ質問をしたときの 結果をまとめたのが、この表です。(と言ってOHPをっけ、説明に合わせて指示棒を指して

もらう)。10代、20代では「ありがとう」も使われていますが、「すみません」より少なく、30 代、40代と年があがるにつれて「ありがとう」が増えていきます。ただ、これは、30年前の 調査ですから、そのとき10代だった現在40代の父や母は、「すみません」を多く使う年代なの で「ありがとう」と迷っているさっきの録音結果と合うことになりますね。このように「あり がとう」の意味で、「すみません」と使う人が多くなっているのが、今のこのことばの使い方 です。

「ありがとう」と言われるときはとてもうれしいのですが、その代わりに「すみません」と

言われるのは、何か変な気持ちです。わたしも知らぬ問に使っているかもしれません。これか

(9)

らは「ありがとう」の気持ちのときには「ありがとう」と言いたい、と思っています。

(約3分)

5 残された課題

(1)題材および単元構成の仕方の工夫

音声言語表現にかかわる学習時間が十分に確保できる題材や単元構成を考えたい。本実践の場 合、取材や話の構成など、狭義の表現活動に入る前の段階で予定以上に時間を費やした。取材や 話の構成などが表現活動の大事な一過程であることは言うまでもない。しかし、文字表現にはな い音声表現の工夫を考える時間を十分確保されなければ、学習として不十分であろう。そのため の「題材」と「単元構成の仕方」に工夫が要求される。また、その前提として、「音声言語指導」

の指導事項を具体化し、体系づけなければならない。

(2)「音声の言語」であることの認識の必要性

「音声による表現」を「読む」生徒が多くいたきとは、やはり、「音声言語」の特性を十分理 解していない結果であろう。「話す」「語る」ことが、「読む」ことよりも低い位置づけをされて いるからであろうか。その結果、「聞き手」不在の表現活動に陥る恐れがある。指導者も生徒も 認識を新たにする必要がある。「場」への適切な対応こそが、「音声言語」を「音声言語」たらし

めるものであるならば、今後の研究はその方向に向けられるべきである。

注(1)西尾実『言葉とその文化』(1947.3.20.岩波書店のちに『西尾実国語教育全集』第4巻(1975.

4.30教育出版)所収)

注(2)近畿地区国立大学附属学校連盟中学校・高等学校国語部会編『「聞くこと・話すこと」の学 習指導法』(1968.10)の「序にかえて」(広瀬博氏執筆)。

注(3)速水博「説明文の書き方」(『現代作文講座④作文の過程』(1976.12.15明治書院)所収)

注(4)畠弘巳「日本語教育と話しことば教育」(『実践国語研究』No.1211992.10.1明治図書)25ペー

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