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教員養成大学生における介護等体験に関する研究 

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

教員養成大学生における介護等体験に関する研究 

−高齢社会に対する不安、高齢者福祉観を指標とし て−

著者 小野 昌彦, 中村 貴志, 小野 桂市, 大久保 哲夫

雑誌名 教育実践研究指導センター研究紀要

巻 9

ページ 181‑188

発行年 2000‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10105/4195

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一高齢社会に対する不安、高齢者福祉観を指標として−

小 野 昌 彦

(奈良教育大学教育実践研究指導センター)

中 村 貴 志

(西南女学院大学保健福祉学部)

小 野 桂 市

(奈良教育大学保健体育教室)

大久保 哲 夫

(奈良教育大学障害児教育教室)

Masahiko ONO

(CenterforEducationalReserchandTraining,NaraUniversityofEducation)

TakashiNAKAMURA

(DepartmentofWelfare,SeinanJoGakuinUniversity)

KeiichiONO

(DepartmentofPhysicalEducation,NaraUniversityofEducation)

Tetsuo OKUBO

(DepartmentofSpecialEducation,NaraUniversityofEducation)

要旨:教員養成大学生(1・2回生)において介護等体験のある学生46名と介護等体験のない学 生46名を対象としてアンケート調査を実施した。アンケート調査は、高齢社会に対する不安を指 標として年金等12項目に関して「非常に不安」〜「まったく不安でない」の4件法で評定させる 調査と高齢者福祉観を指標として「介護」「寝たきり」「痴呆」という語に関してSD法(17個の 形容詞対)を用いて評定させる調査を実施した。その結果、両群において高齢者の不安及び高齢 者福祉に関する語に関してイメージに有意な差はみられなかった。この結果は、教員養成大学に おける介護等体験のあり方の再検討の必要性を示唆するものとして考えられた。

キーワード:介護等体験、高齢者福祉観、教員養成大学生 1.問題と目的

「小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律(平 成9年法律第90号)」として介護等体験特例法が、平成10年4月1日から施行された。

この法律は、教員志願者に対し、高齢者や障害者に対する介護等の体験を義務づけることによ り、人の心の痛みのわかる人づくり、各人の価値観の相違を認められる心を持った人づくりの実 現に資することを目的としている。この法律の施行により平成10年度以降大学に入学する学生等 で小学校又は中学校の普通免許状を取得しようとする者は、社会福祉施設や特殊教育諸学校など

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小野 昌彦・中村 貴志・小野 桂市・大久保哲夫

において、文部大臣が定める期間(7日間)、介護等の体験を行い、施設や学校が発行する体験 に関する証明書を免許状授与申請の際提出することが必要となった。また採用権者はその採用選 考にあたり、この法律の趣旨にのっとり、教員志願者が行った介護等の体験を勘案するよう努め るものとすることが規定された。

この法律における「介護等の体験」とは、以下のように規定されている。

(1)介護、介助のはか、障害者等の話相手、散歩の付添いなどの交流等の体験、あるいは掃除や洗 濯といった、障害者等と直接接するわけではないが、受入施設の職員に必要とされる業務の補助 など、介護等の体験を行う者の知識・技能の程度、受入施設の種類、業務の内容・状況等に応じ、

幅広い体験が想定されること。また、特殊教育諸学校での教育実習や、受入施設での他の資格取 得に際しての介護実習等は、介護等の体験の期間に算入し得ること。

(2)介護等の体験は7日間以上行っても差し支えないこと。また7日間の内訳については、社会福 祉施設等5日間、特殊教育諸学校2日間とすることが望ましいこと。介護等の体験は連続して行 う場合の他、数年問を通じ、長期休業期間中や土・日曜日などに数度に渡り2以上の受入施設に おいて1日単位で行うことなども想定されること。

この介護等体験が、体験した学生に対してどのような影響を与えているかという視点は、教育 的に重要であるといえよう。藤田・佐藤(1999)1)は、短期大学の教職課程で学び「介護等体験」

実習に参加した学生の実習終了後の意識に関する調査を実施している。その結果、「介護等体験」

実習後の意識は、「思いやりの実感」、「将来への自己像」、「自己反省・内省」、「実習への不満感」、

「実習への客観性」の因子で説明可能であるとしている。

橋本・新井・秋山(1999)2)は、高齢化社会へと進んでいる社会背景から、学生の高齢者観を 把握し如何に指導していくかが一つの重要な視点であるとし、短期大学における介護福祉士養成 上、介護実習の学生の老人観に与える影響を調査している。その結果、実習前後で老人に対する

「プラスイメージ」が、有意に増加していることを報告している。

この高齢者観という視点は、教員志願者に対し「人の心の痛みがわかる人づくり、各人の価値 観の相違を認められる心を持った人づくりの実現に資する」という介護等体験特例法の目的に照

らしても非常に重要な視点であるといえよう。しかしながら、教員養成大学における介護等体験 の高齢化社会に対する不安や高齢者観に関する影響は充分に検討されていない。

そこで、本研究において、教員養成大学生の介護等体験の高齢者観に与える影響を検討するこ とを目的とする。

2.方法 2.1.調査対象

調査対象は、奈良教育大学1・2回生92名(介護等体験のある学生46名、介護等体験のない学 生46名)であった。

2.2.材料

高齢化社会に関する不安に関しては、Fig.1に示すように「年金」、「介護」、「高齢者施設の数」

等12項目に関して、「非常に不安」、「やや不安」、「あまり不安でない」、「まったく不安でない」

の4段階で評定するものを使用した。前述した12項目は、予備調査において、社会福祉系大学学

(4)

生を対象にして高齢化社会について不安に恩う項目を3つずっ書かせ、その結果に基づき算出頻 度が高かったものを項目として選定したものである。なお、評定は、4段階評定尺度となってい た。結果の処理に際しての得点は、「非常に不安」を1点、「まったく不安でない」を4点として 算出した。

また、「高齢者福祉」のイメージの測定に用いた「介護」、「寝たきり」、「痴呆」という語は、

社会福祉系大学学生を対象とした調査の結果、「高齢者福祉」から連想される頻度が高かった項 目である。イメージの評定尺度には、Fig.2〜4に示す17個の形容詞対を用いた。なお、評定は、

5段階評定尺度であった。結果の処理に際しての得点は、各尺度の左側の「かなり」を1点、右 側の「かなり」を5点として算出した。

2.3.手続き

本年度老人福祉関係施設において介護等体験に参加した学生(130名)に対して郵送でアンケー ト調査を10月初旬に実施した。無効票を取り除いた有効回収票は、46名であった。

介護等体験のない学生として「生徒指導I」を受講している学生(1回生、91名)に対して評 定に際しての一般的な教示を述べ、「高齢化社会に対する不安」、高齢者福祉に関する言責に対す

る評定を求めた。回収票の中から無効票を取り除き、無作為に46名分抽出した。

3.結果と考察

3.1.介護等体験あり群と介護等体験なし群における「高齢化社会における不安」の比較

Fig.1は、「高齢化社会に対する不安」に関する12項目への介護等体験あり群と介護等体験な し群の評定値を平均した値についてプロフィールを描いたものである。

t検定を用いて各項目に対する2群の平均値の比較を行った結果、いずれの項目においても有 意差はみられなかった。

この結果は、教員養成大学生において介護等体験の有無が「高齢化社会における不安」に及ぼ す影響が少ないことを示唆しているといえよう。

3.2.「介護」に対する介護等体験あり群と介護等体験なし群のイメージの比較

Fig.2は、介護等体験あり群と介護等体験なし群における「介護」という言葉に対するイメー ジ評定平均値をプロフィールに表して2つを比較したものである。

各群のイメージ評定平均値についてt検定を行った結果、いずれも有意差がみられなかった。

この結果は、2つの群での「介護」に対するイメージが比較的類似していることを示している といえよう。

3.3.「寝たきり」に対する介護等体験あり群と介護等体験なし群のイメージの比較

Fig.3は、介護等体験あり群と介護等体験なし群における「寝たきり」という言葉に対するイ メージ評定平均値をプロフィールに表して2つを比較したものである。

各群のイメージ評定平均値についてt検定を行った結果、いずれも有意差がみられなかった。

この結果は、2つの群での「寝たきり」に対するイメージが比較的類似していることを示して いるといえよう。

(5)

小野 昌彦・中村 貴志・小野 桂市・大久保哲夫

3.4.「痴呆」に対する介護等体験あり群と介護等体験なし群のイメージの比較

Fig.4は、介護等体験あり群と介護等体験なし群における「痴呆」という言葉に対するイメー ジ評定平均値をプロフィールに表して2つを比較したものである。

各群のイメージ評定平均値についてt検定を行った結果、いずれも有意差がみられなかった。

この結果は、2つの群での「痴呆」に対するイメージが比較的類似していることを示している といえよう。

非常に不安 やや不安

不 あ  不 ま 安 ま  安 つ で り  で た な    な く い     い

年金 介護

高齢者施設の数

高齢者福祉サービスの質 介護保険

生活費 生活の質 少子化

高齢者の一人暮らし 寝たきり

痴呆 高齢者虐待

Fig.1高齢化社会への不安

●一一 ・ 一一 ・ 一一一一1■ 介 護 等 体 験 あ り

● 一一一一一一● 介 護 等 体 験 な し

(6)

かなり やや

どちらでもない

やや

積極的 人のよい おもしろい かわいらしい 個性的な

責任感のある 軽率な 感じのよい 親しみやすい 意欲的な かっこいい 強い 明るい 激しい 派手な 動的な つめたい

Fig.2「介乱へのイメージ

消極的 人のわるい つまらない にくらしい 個性のない 責任感のない 慎重な 感じのわるい 親しみにくい 無気力な かっこわるい 弱い

暗い 穏やかな 地味な 静的な

あたたかい

●− ● 介護 等体 験 あ り

●一一一一一・・● 介 護 等体 験 な し

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小野 昌彦・中村 貴志・小野 桂市・大久保哲夫

かなり やや

どちらでもない

やや

積極的 人のよい おもしろい かわいらしい 個性的な 責任感のある 軽率な 感じのよい 親しみやすい 意欲的な

かっこいい 強い 明るい 激しい 派手な 動的な つめたい

Fig,3「寝たきり」へのイメージ

消極的 人のわるい つまらない にくらしい 個性のない 責任感のない 慎重な 感じのわるい 親しみにくい

無気力な かっこわるい 弱い

暗い 穏やかな 地味な 静的な あたたかい

●一一一一 . 等 体

● 一一一一一一 介 護 体 験

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かなり やや

どちらでもない

やや

積極的 人のよい おもしろい

かわいらしい 個性的な

責任感のある 軽率な 感じのよい 親しみやすい 意欲的な かっこいい 強い 明るい 激しい 派手な 動的な

つめたい

Fig.4「痴呆」へのイメージ

消極的 人のわるい つまらない にくらしい 個性のない 責任感のない 慎重な 感じのわるい 親しみにくい 無気力な かっこわるい 弱い

暗い 穏やかな 地味な 静的な

あたたかい

●一一・ 一 一 一・ 一一・ ・ ・ ● 介 護 等 体 験 あ り

● 一一一一一一● 介 護 等 体 験 な し

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小野 昌彦・中村 貴志・小野 桂市・大久保哲夫

3.5.まとめ

教員養成大学生において介護等体験のある学生46名と介護等体験のない学生46名を対象として、

高齢社会に対する不安に関する調査として年金等12項目に関して「非常に不安」〜「まったく不 安でない」の4件法で評定させるという調査と「介護」、「寝たきり」、「痴呆」という語に関して

SD法(17個の形容詞対)を用いて評定させるという調査を実施した。

その結果、両群において高齢社会に対する不安及び高齢者福祉に関する語に関してイメージに 有意な差はみられなかった。

したがって、本研究においては、教員養成大学生における介護等体験は、高齢社会に対する不 安及び高齢者福祉観との関連はみられなかった。介護等体験は、基本的には7日間であり、介護、

介助の他、一般業務体験を含む幅広い体験を指していることも関連のみられなかった要因の一つ として考えられる。今後の教員養成大学における介護等体験の意義を再考する必要性が示唆され たといえよう。

今後の課題として、介護等体験前後における高齢者福祉観の変化を検討することが挙げられる。

謝辞

本研究の実施にあたりましてご協力いただきました学生部長須田紘太先生、教育実践研究指導 センター長藤原公昭先生、教務課事務職員の方々、介護労働安定センター職員の方々、村上美紀 事務補佐、新谷美童子事務補佐に厚く感謝申し上げます。、

参考文献

1)藤田主一、佐藤嘉晃:「介護等体験実習後における短期大学生の意識」、『日本教育心理学会 第41回総会発表論文集』、pp259,1999

2)橋本佳子、新井文子、秋山節子:「介護福祉士を目指す学生の背景一志望動機と老人観を中 心とした調査から−」、『佐野国際情報短期大学研究紀要』、10,pp203−210,1999

参照

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