埼玉大学紀要 教育学部,57(2):123‑132 (2008)
子 どもの社会的行動における親の社会的情報処理
大池明 日美*・首藤 敏元**
本研究は幼児期の子どもを持つ母親131名 と父親39名を対象に子 どもの社会的逸脱行動に対する親の社会 的情報処理について質問紙調査を行った。質問紙は社会的領域理論の社会的領域に基づいて6つの場面を設 定した。質問項 目は社会的情報処理モデルのステップに対応 して作成 した。子どもの社会的行動の特徴に応 じて、親の判断が異なると仮説を立てた。調査の結果、子 どもの行動や状況に応 じて親の解釈や判断、子ど もへの関わり方は異なっていることが示された。母親と父親は各場面に応 じて関連する領域を考え、さらに、
その他の領域を含めて多元的に考えようとしていた。これらの結果は、社会的領域理論と社会的情報処理モ デルの統合の観点から考察された。
キー ワー ド :社 会 的領域 理 論 ,社 会 的情 報処理 モ デル、 親子 関係 、 道徳 的判 断
Ⅰ 問題 と目的
子 どもの社会性 の発達 は親や周囲の人 との関 わ りの中で形成 される。子 どもと親 は他者や周 囲の環境 に関わ りなが ら、 さまざまな状況 に直 面す る。人間は、他者 との関係 の中で、状況 を 判断 し、 自己を調整 しなが ら、行動 を決定 して い くことが しば しば求め られる。 この ように、
対人関係の中では、他者 との相互作用 を通 して、
意思決定が行われる(中田、2000)。乳幼児がい る親 は子 どもが直面 している状況 と周 りの環境 に配慮 しなが ら、状況に応 じて子 どもに関わろ うとす る。 この行動 は一般的に 「しつけ」 と呼 ばれている。親の考 えと子 どもの欲求や考 えが 一致 しない とき、葛藤が生 じる。
人が他者 と関わった り、ある状況に直面 し反 応す るまでの認知的な過程 を提案 した ものが社 会 的情 報 処 理 モ デ ル (Dodge,1986;Crick&
'秋津幼稚園
= 埼玉大学教育学部乳幼児教育講座
Dodge,1994)である。社会的情報処理モデルは 他者の行動や周 りの環境 を適切 に解釈す ること で、適切 な反応や行動 を行 うことがで きると提 案 された。社会的情報処理モデルによると、人 がある状況や他者の行動 に直面 し、反応するま での過程 は6つのステ ップを経 る。その6つの ステ ップは、 1.符号化、 2.解釈、 3.目標 の 明確化、 4.反応 の検索、 5.反応 決定、 6.実 行である。 6つのステ ップを経 ることで、状況 に応 じた適切 な反応 を行 うことがで きると考 え る。
状況 を判断 した り解釈 した りす るとき、他者 を傷つけているか、人 として してはいけない行 動であるか といった普遍的な道徳観念 を考慮 し た り、周 りの文化 によって決め られた規範 など に照 らし合 わせ なが ら判断 した り行動 を決定 し ようとす る。Turiel(1983)は社会的領域理論 を提唱 した。人の判断や志向性 を作 り出す社会 的領域 は道徳領域 (moraldomain)、慣 習領域 (conventionaldomain)、個 人 領 域 (personal domain)の3つの領域がある。 この領域 に基づ
いて人は状況 を判 断 した り根拠 を説明 しなが ら 自分の行動 を決定 しようとする。
Arsenio& Lemeraise (2004)に よる と、攻 撃的な行動や逸脱行動 を判断するとき、社会的 情報処理モデルと社会的領域理論は統合可能で あ る と 述 べ て い る。Arsenio& Lemeraise
(2004)は社会的情報処理モデルと領域理論 を 統合することによって、 より柔軟で適切 な反応
をすることがで きると論 じている。
本研究は社会的領域理論 (Turiel,1983)と社 会 的 情 報 処 理 モ デ ル (Dodge,1986;Crick&
Dodge,1994)に基づ き、親が子 どもの行動に直 面 し、反応するまでに行なわれる解釈や判断に ついて検討 した。親は子 どものさまざまな行動 に直面 したとき、子 どもの行動や状況に応 じて 状況を判断 し子 どもに関わろうとすると仮説 を 立てた。
本研究は子 どもの行動 と子 どもが直面 してい る状況 を親はどのように状況を判断 し子 どもに 関わろうとするのか明 らかにすることを目的 と
した。
Ⅱ 方法
1 調査の協力者
埼玉県の私立幼稚園 ・保育所 に在囲する子 ど もの母親195名、父親53名の計248名が調査 に協 力 した。
2 質問紙の構成
質問紙は6つの場面か ら構成 した。 6つの場 面は木登 り場面、すべ り台場面、挨拶 をしない 場面、仲間入 り拒否場面、悪口場面、食事中に 行儀が悪 い場面であ った。 6つ場面 と理 由は Turielの社会的領域理論 と対応 して作 った。
木登 りの場面は 「個人に関する場面」 と設定 した。個人に関する場面 とは、 自分の行為が 自 分 自身に影響があるどうか という内容である。
木登 り場面は木か ら落ちて子 どもが怪我 をする のでないか という内容になってお り 「自分 自身
への危険行為」が含 まれている。
すべ り台場面 と悪口場面は 「道徳に関する場 面」 と設定 した。挨拶 をしない場面 と食事中に 行儀が悪い場面は 「慣習に関する場面」 と設定 した。仲間入れ拒否場面は仲間に入れて もらえ なかった子 どもが傷つ くならば道徳に関連があ り、みんなで仲良 く遊ばないといけないならば、
慣習に関連がある。他児 を仲間に入れなかった ことを見ていた子 どもたちに 「仲間はずれにす る子」 と思われ 自分 自身が損するならば、 自己 に関連がある。 このように、仲間入れ拒否場面 は 「道徳、慣習、個人が複雑 に関わっている場 面」 と設定 した。
6つの場面は話になってお り、話に出て くる 登場人物 (親子)は回答者 自身であると仮定 し た。 6つの場面の話 しの展開は、子 どもがある 行為 (逸脱行動) を行い、その行為 に対 して親 は子 どもに注意 をした り励 ました りするが、親 の注意や励 ましなどに対 して子 どもは嫌がると いう内容であった。子 どもが嫌がったとき、親 は各場面の状況をどのように判断 し、子 どもへ の関わるのかについて質問紙 を通 して回答 して
もらった。
質問紙の項 目の流れはDodgeの社会的情報処 理 モデルに基づ いて作成 した。 1)逸脱判断
(二者択一)は子 どもの行為の善悪判断である。
これはステ ップ1:符号化の過程 に基づいた。
2)逸脱内容 (3つか ら選択)は 1)の理由で ある。 これはステ ップ 2 :手がか り解釈の過程 に基づ いた。 3)判断理 由6種類 はステ ップ 2:手がか り解釈の過程 とステップ 3 :目標の 明確化に基づいた。 4)反抗する子 どもへの関 わ り方 (4つか ら選択)はステ ップ4:反応の 検索、ステ ップ5:反応決定、ステ ップ6:行 動実行の過程 に基づいた。 これ らの計4つの質 問か ら構成 した。
3)の6つの理由は、理由1:人を精神的 ・ 身体的に傷つけているか どうか (道徳領域)[以 降 「危害」と省略]、理由 2 :子 どもの行為は人 の道理に外れていないか どうか (道徳領域)[以
‑ 124‑
降 「道理」と省略]、理由3:周 りの人に迷惑 を か けていないか どうか (慣 習領域) [以 降 「迷 惑」と省略]、理由 4 :マナーを守っているか ど うか (慣習領域) [以降 「マナー」 と省略]、理 由5:子 どもの行為が後 に自分 自身の不利益 に なって戻 って こないか どうか (自己管理)[以降
「不利益」と省略]、理 由 6 :対人関係の中で悪
表1 場面と質問紙の内容 [すべ り台場面]
あきこちゃんは公園のすべ り台で遊んでいま す。あきこちゃんは早 くすべ り台を滑 りたかっ たので、「早 く。」 と言って前にいたけいこちゃ んの背中を押 しました。けいこちゃんはすべ り 台の上から下へ勢いよく滑っていきました。そ れを見ていたあきこちゃんの親はあきこちゃん に 「危ないので、高いところから押 さないで。」
と言いました。あきこちゃんは 「だって、けい こちゃんは遅いんだもん。早 く滑 りたかった の。」と言いました。
質問1 あきこちゃんの行いに問題はあ ります か ?
質問2 「問題はある」と答えた方は何が問題だ と思いますか ?
質問3
1)けいこちゃんに怪我をさせていないかど うか
2)けいこちゃんにこわい気持ちをさせてい ないかどうか
3)すべ り台の約束事を守っているかどうか 4)友だちと仲良 くしているかどうか 5)自分の感情をコントロールできない人に
なるのではないか
6)人から 「あきこちゃんは乱暴な子ども」
と言われないか
質問4 あきこちゃんの親はもう一度、あきこ ちゃんに 「背中を押 してはいけません。」 と 言いました。 しか し、あきこちゃんは親の言 うことを聞きませんでした。あなたがあきこ ちゃんの親だったら、あきこちゃんにどのよ うに関わりますか ?
い評判がお きないか どうか (自己管理) [以降
「悪い評判」 と省略]であ り、 6つの場面 に合 わせて文章化 した。場面 ごとに6つのすべての 理 由について当てはまる程度 を 「強 く考えた」、
「考 えた」、「少 し考 えた」、「考 えなかった」の 4段 階で評価 して もらった。
3 手続 き
2006年12月14‑18日にアンケー ト調査 を行 っ た。質問紙調査 を質問紙は調査者が直接母親 と 父親 に配布 し、配布 した 日に回収 した。有効 回 答 数 は母 親 が131名、父 親 が39名 の計170名 で あった。有効 回収率 は68.55%であった。
4 統計処理
統 計 解 析 に はSTATISTICAO6JStatSoft JAPANを用いた。
Ⅱ 結果
1 子 どもの行いに対 する親の判断
母親 と父親 はすべ り台場面、挨拶 をしない場 面、仲間入 り拒否場面、悪 口場面、食事 中に行 儀が悪い場面 に 「問題 はある」 と判断 した。木 登 りの場面 に 「問題 はない」 と判断 した母親 と 父親が多かった。「問題 はある」と判断 した内容 に注 目すると、「子 どもの行いに問題 はある」と 回答 した母親 と父親が多かった。 これ らの度数 と割合 は表2にまとめた。
2 各場面における親の判断理由
母親 と父親 は場面 に応 じて理 由が異 なるか ど うかみ るため に、 2 (被験者 間)×6(被験者 内)× 6 (被験者内)で分散分析 を行 った。場面
× 回 答 者 の 交 互 作 用 効 果 が み ら れ た (F (5,840)‑3.373,p
<
.01)。理 由 ×回答 者の交互作用効果がみ られた (F (5,840)‑ 2.877,p<.01)。場面 ×理 由の交互作用効果が み られ た (F (25,4200)‑95.436,p<.01)0 場面 ×理由 ×回答者の交互作用効果がみ られた表2 子 どもの行いに対 する親 の判断
問 題 あ り
子 どもの行為 親へ の反抗 両方
木登 り 母親 89
(67.94)
父親 24
(61.54)
25 9 8
(19.08) (6.87) (6.11)
5 7 3
(12.82) (17.95) (7.69)
x 2(i)‑0.55 x 2(2)‑3.95
すべ り台 母親 1
(0.76)
父親
0
(0.00)
115
0
(87.79) (0.00)
29
0
(74.36) (0.00)
5454⁚o︿カ1l1512
x 2(1)‑0.30 x2(1)‑4.73,p<.05
挨拶 母親 12
(9.16)
父親
0
(0.00)
105 1
(80.15) (0.76)
30 0
(76.92) (0.00)
x 2(1)‑3.84,p<.05 x2(2)‑3.88 仲 間遊 び 母親 13
(9.92)
父親 1
(2.56)
110 0 (83.97) (0.00)
30 1
(76.92) (2.56)
x 2(I)‑2.15 x 2(2)‑7.81,p<.05
悪口 母親
o
(0.00)
父親
0
(0.00)
111
0
(84.73) (0.00)
31
0
(79.49) (0.00)
x2(1)‑0.60 食事 中のマナー 母親 3
(2.29)
父親 1
(2.56)
90 7
(68.70) (5.34)
26
0
(66.67) (0.00) (30.77)
x2(1)‑0.01 x2(2)‑2.71
(F (25,4200)‑1.745,p<.01)。 これ らの結 果か ら母親 と父親は6つの場面 と6つの理由の 特徴 に合わせて捉 えてお り、場面に応 じて理由 が異なっていた。主効果が有意であったので、
場面 と理由について検討 を行った。
(1)木登 り場面
木登 り場面の理由は、「不利益」について 「強 く考えた」 と回答 した母親 と父親は多かった。
次に、「迷惑」、「道理」、の順 に 「考えた」、「少
上は人数、 ( )は%。
し考えた」 と回答 した母親 と父親は多かった。
「危害」、「マナー」、「悪い評判」について 「考 えなかった」 と回答 した母親 と父親は多かった。
場面、理由、母親 と父親の多重比較 を行い、
5%を有意水準 とした。木登 り場面 と理由の多 重比較 を行 った結果、不利益 (〟 ‑2.2529)>
迷惑 (〟 ‑1.5588)>道理 (〟 ‑β1765)>マ ナー (M ‑.38235)、悪い評判 (M‑.37059)、 危害 (〟 ‑.31765)であった。木登 り場面、理
‑ 126‑
木登 り場面
3.00
2.50
2.00 :.l・r."
1.0
0
0.5
0
0.00
危害 道理 迷惑 マナー 不利益 悪い評判 状況 を判断するための考 え方
[ロ母親Ea父郵
3:
強 く考 えた、2:考 えた、1:少 し考 えた、0 :考 えなかった
図1 木登 りの場面 における親の判断理由の平均値
すべ り台場面
危害 道理 迷惑 マナー 不利
益 悪い評判 1犬祝 を判断するための考
l口母額田父親lえ方 3:強 く考 えた、2:考 えた、 1:少 し考
えた、 0 :考 えなかった
図2 すべ り台の場面における親の判断理由の平
由、母親 と父親の多重比較 を行った結果、母親と父親は有意な差がみ られな 均値
かった。
(2すべ り台場面の) すべ り台場 面
理由は「危害」が多 く、次に「道 理」、「迷惑」
の順 に 「考えた」 と回答 した母親 と父親は多かっ
た。母親は 「危害」が多 く、次 に 「道理」の順 に
「考えた」 と回答 した。父親 は 「危害」が多 く
、次に 「道理」、「マナー」の 順 に 「考えた」 と回答
した。
すべ り台場面 と理由の多重比較 を行った結果、
危害 (M ‑2.6941)、道理 (〟 ‑2.5
235)>迷惑 (〟 ‑2.2118)、マナー (〟 ‑2.1176)
>不利益 (〟‑1.3412)>悪い評判(〟 ‑.94118
)であっ た。すべ り台場面、理由、母親 と父親の多重比 較 を行
った結果、母親 と父親は有意な差がみ ら
れなかった。
3 .
0 0 2 . 5 0 2 . 0 0
慧 0 1 1
0.・ . . 5 0 5
000 0
0 危害 道理 迷惑 マナー 不利益 悪い 評判 状況 を判断するための考lu母親Ea父親lえ方
3:強く考えた、2:考えた、1:少し
考えた、0:考えなかった 図3 挨拶をしない
場面における親の判断理由の平均値 (3)挨拶を
しない場面
挨拶 をしない場面の理由は 「マナー」
が多 く、
次に 「迷惑」、「不利益」の順に 「考えた
」 と回 答 した母親 と父親は多かった。母親は「マナー」
が最 も多 く、次 に 「迷 惑」、「不利益」の順 に
伸聞入れ拒否場面
危書 道玉里 迷惑 マナー 不利益 悪い評判 状況 を判断するための考 え方
l口母弟Ja父親l
3:強 く考 えた、2:考 えた、1:少 し考 えた、0 :考 えなか 図4 仲間入れ拒否場面における親の った
判断理由の平均値 結果、道理 (〟 ‑2.5
118)、危害 (〟 ‑2.4941)、 マナー (〟 ‑2.2353)>不利益 (〟 ‑2.0235)
>迷惑 (〟‑1.1706)、悪い評判 (〟‑1.15 であった。仲間入れ拒否場面、理由、母親 と29)
父 親の多重比較 を行った結果、母親 と父親は有
意 な差がみ られなかった。(5)悪口場面
悪口場面の理由は、「危害」が多 く、次に 「道
理」、「マナー」の順 に 「考えた」 と回答 した母 親 と父親が多かった。「迷惑」 について、「考え た」と回答 した母親 と父親は多かった。「マナー」
について母親は 「強 く考 えた」 と回答 した人が 多
く、父親は 「考えた」 と回答 した人が多かっ た。母親は 「不利益」について 「考えなか
った」、
「少 し考 えた」、「考えた」、「
強 く考えた」 とい うように各回答に分かれた。父親は 「不利益
」 について 「少 し考えた」、「考えなかった」 とい う回答が多かった。
「悪い評判」について母親は
「少 し考えた」 という回答が多
く、父親は 「考 えなかった」 とい う回答が多か
った。
悪口場面 と理由の多重比較 を行った結果、危 害 (M ‑2.8059)、道理 (M ‑2.5529)、マナー
(〟 ‑2.2588)>迷惑 (〟 ‑1.6
706)>不利益 (〟
‑1.4235)
、悪い評判 (〟 ‑1.3824)であった。
悪口場面、理由、母親 と父親の多
重比較 を行 っ た結果、母親 と父親は有意な差がみ られな
かっ
た。 危害道理 迷惑 マ
ナー不利益悪い評判
状況を判断するた めの考え方
l□母親Ea父親l
3:強 く考 えた、 2:考 えた、 1:少
し考 えた、0 :考 えなかった 図5 悪口場面における親の判断理由の平均値
食事中に行儀 が悪い場
3 .
00 面2
502
1510..00500000,00 危害 道理 迷惑 マ
ナー 不利益 悪い評判
状況 を判断するための考 え方
lD母親Ea父親l
3:強 く考 えた、 2:考 えた、 1:少 し考 えた、0 :考 えなか 図6 食事中に行儀が悪い場面における親の判 った
断理由 (6)食事の平均値
中に行儀が悪い場面 食事中に行儀が悪い場面の理由
は、「マナー」
が多 く、次に 「不利益」、「迷
惑」の順 に 「考え た」 と回答 した母親 と父親が多か
った。母親は
「マナー」について 「強 く考 えた
」 と回答 した 母 親 は多 く、次 に 「不 利益」、
「迷 惑」の順 に
「考えた」、「強 く考えた」、
「少 し考えた」 と回 答 した母親が多かった。父親は
「マナー」につ いて 「考えた」 と回答 した父親は多 く、「
人が多かった。
食事中のマナー場面 と理由の多重比較 を行っ た結果、マナー (〟 ‑2.3647)>不利益 (〟 ‑ 1.8588)>迷惑 (〟 ‑1.5294)>道理 (〟 ‑1.2412)
>悪い評判 (〟 ‑.94706)>危害 (〟 ‑.58824) であった。食事中のマナー場面、理由、母親 と 父親の多重比較 を行 った結果、母親 と父親は有 意な差がみ られなかった。
3 親の関わ り方
親の関わ り方は、木登 り場面、すべ り台場面、
悪口場面、食事中に行儀が悪い場面は、「理由を 話 しいいさかせる」が多 く、次に 「もう一度注 意する」、「言 うことをきかせ る」、「あ きらめる」
の順であった。すべ り台場面 と悪口場面は 「あ きらめる」 と回答 した母親 と父親はいなかった。
表3に親の関わ り方についてまとめた。
全体的に母親 も父親 も同 じ傾向があったが、
表3 親のかかわ り方
あ きらめる もう一度 理由を話 し 言 うことを 注意する いい きかせ る きかせ る
1.木登 り 母親 5
(3.82)
父親 1
(2.56)
37 86 3
(28.24) (65.65) (2.29)
10 27 1
(25.64) (69.23) (2.56)
x2(3)‑0.27
2.すべ り台 母親 o
(0.00)
父親 0
(0.00)
6 92
(4.58) (70.23)
2 19
(5.13) (48.72)
33 (25.19)
18 (46.15)
x 2(2)‑6.55,p<.05
3.挨拶 母親 3
(2.29)
父親
0
(0.00)
25 96
(19.08) (73.28)
5 25
(12.82) (64.10)
7 (5.34)
9 (23.08)
x 2(3)‑ll.96,p<.01 4.仲間に入れない 母親 1
(0.76)
父親
0
(0.00)
22 95
(16.79) (72.52)
5 24
(12.82) (61.54)
13 (9.92)
10 (25.64)
x2(3)‑6.60
5.悪口 母親 o
(0.00)
父親
o
(0.00)
6 92
(4.58) (70.23)
2 22
(5.13) (56.41)
33 (25.19)
15 (38.46)
x2(2)‑2.75 6.食事中のマナー 母親 2
(1,53)
父親
o
(0.00)
19 90
(14.50) (68.70)
6 23
(15.38) (58.97)
20 (15.27)
10 (25.64)
x2(3)‑2.87
上は人数、( )は%。
母親 と父親の若干の差は以下の ところであった。
挨拶場面 と仲間遊び場面は 「理由を話 しいい き かせる」 と回答 した母親 と父親が多かった。次 に母親は 「もう一度注意する」、「言 うことをき かせ る」の順 に回答 した。父親は 「言 うことを きかせる」、「もう一度注意する」の順に回答 し た。挨拶場面 と仲間遊び場面は母親 よりも父親 の方が積極的に関わろうとする様子がみ られた。
親のかかわ り方についてx 2検定 を行った。そ の結果、すべ り台場面における親のかかわ り方 に は 有 意 な 差 が み られ た (x 2(2)‑6.55, p<.05)。挨拶場面における親の関わ り方には有 意な差が認め られた (x 2(3)‑ll.96,p<.01)。
Ⅳ 考察
子 どもの社会性の発達には親の関わ り方に影 響があるのではないか と考え、幼児期の子 ども がいる母親 と父親を対象 に子 どもの社会的行動 における親の社会的情報処理について調査 した。
本研究は、子 どもの逸脱行動の種類 に応 じて、
親の認知的処理のプロセスに違いがあると仮説 を立てた。調査の結果、子 どもの行動や状況に よって親の解釈や判断、子 どもへの関わ り方は 異なっていた。 したがって仮説は支持 されたと 考えられる。
本研究で取 り上げた場面 と理由は対応する形 にした。 自己への危害の場面 と設定 したのを例 にあげると、親の回答は自分への危害 を考えな が らも周 りへの迷惑 も考える親の姿がみ られた。
このように、親は子 どもの逸脱行動 を多元的に 解釈 しなが ら、子 どもに関わることが示 された。
社会的領域理論によると人は物事や状況を判 断するとき、道徳、慣習、 自己の観点か ら判断 すると考えられている。本研究の調査 によると、
母親 と父親は各場面 に応 じて関連する領域 を考 え、 さらに、その他の領域 を含めて多元的に考 えようとした結果が得 られた。親は子 どもの社 会的行動 を理解す る際、領域調整 をしなが ら解 釈 しようとする傾向がみ られることが示唆 され
た。
本研究で提示 した場面は、木登 り場面以外 は
「問題はある」 という回答が多かった。猪野 ・ 高橋 ・寺津 ・星野 (2000)は幼児 をもつ両親の 養育態度を明 らかにするために、幼児 によく見 られる親を困 らせ る場面 に出会った ときにどの ような態度 をするのか調査 した。その結果、場 面 によっては親の状況 も分かってほしいという 親の心情 もあったが、全般的には父親 も母親 も 子 どもの心 を受け入れようとする態度を示 して いた。本研究の木登 り場面について 「問題はな い」 と回答 した背景には、母親 も父親 も子 ども の心 を受け入れようとする気持ちが反映された か らではないか と考えられる。その他 に考えら れることは、親にとって子 どもが木登 りするこ とは 「遊び」 として捉 え、子 ども自身への危険 行為 に直接関係すると考えに くい場面であった のか もしれない。
子 どもへの関わ り方で もっとも回答が多かっ た ものは 「理由を話 しいい きかせ る」であった。
子 どもに関わるとき、注意するだけでな く、な ぜ してはいけないのか という理由を話 し、子 ど もにも理解 して もらうように関わろうとする親 の考えがみ られた。古市 (2002)は幼児 と幼児 の母親 を対象 に日常生活における母子の要求や 欲求が衝突する場面を提示 して調査 を行った。
その結果、母親は 「何 らかの理由があるか ら子 どもの行動 を変化 させたい」 と考えるが、幼児 は 「母親が どういう結論 を出すか」 ということ を先に頭に浮かぶ傾向があることを報告 した。
古市 (2002)が述べているように理由があるか ら子 どもの行動 を変化 させ ようとする母親の行 動 と本研究の親の関わ り方は一致 しているとい える。
親の関わ り方について母親 と父親はすべ り台 場面 と挨拶場面以外 は同 じ傾向がみ られた。挨 拶場面は母親 よりも父親の方が積極的に関わろ うとする様子が見 られた。書森 (1983)による と、父親的役割対子 ども役割に関 して父親は社 会人 としての義務 と責任の遂行 ‑生 き方を教え
‑ 130‑