7)
は、 バレーボールの局面について、 サーブレシーブからの攻撃で 「サーブレシーブ+
攻撃の組み立て+カバー」 というファースト・サイド・アウト( )、 「相手の攻撃をブロック+
レシーブ+カウンターアタック+カバー」 というファースト・トランジッション( )、 そして および から 「相手の攻撃をブロック+レシーブ+攻撃の組み立て+カバー」 へ移行するラ リーの3つに分類している。 (図1参照)
米 沢 利 広
1)28 104 2003 8
1
2
3
都沢
3)4)や米沢
8)は、 サイドアウト制のゲームを対象に、 サーブレシーブからの攻撃によってサー ブ権を獲得する 能力が、 バレーボールゲームの勝敗に最も影響を及ぼしていることを報告し ている。 また、 吉田
15)は、 ラリーポイント制のゲームを対象に、 サーブ後の相手のサーブレシーブ からの攻撃を切り返す 能力が、 バレーボールゲームの勝敗に最も貢献度が高いことを報告して いる。 そして、 吉田
15)は 能力について、 ラリーポイント制のゲームでは、 相手と接戦するた めの負けない能力として重要であると述べている。 これらの先行研究は、 バレーボールゲームの勝 敗に最も影響を及ぼす要因として、 能力および 能力を挙げている。
しかし、 バレーボールゲームの勝敗に影響を及ぼすものとして 能力および 能力につい て検討し、 ゲームの勝敗との関連を明らかにしている研究はない。
また、 コーチングの現場では、 チームや個人の能力を簡便に評価することが、 トレーニングの目標 設定やトレーニングの達成度の測定に大変重要である。 しかし、 これまでの報告では、 戦力や技能に 対する簡便で客観的な評価方法は開発されておらず、 これまでコーチの経験的なもので行われてきた。
そこで本研究では、 能力および 能力から、 バレーボールゲームの勝敗の予測とチーム力を 評価する簡便な方法について検討するとともに、 コーチングの効率的なトレーニング方法を提示する ことが目的である。
バレーボールゲームのチーム力評価に関する研究
図1 バレーボールラリーについて A.H.EL.Wassimy 2000より
とした。
バレーボールゲームの 能力および 能力を明らかにするため、 サーブ打数、 サーブレシーブ 数とサーブ、 ブロック、 レシーブ、 トス、 スパイクの各技能の評価を行った。 各技能の評価について は、 米沢
10)の技能評価基準をもとに表1のように分類した。
資料の収集に関しては、 資料の正確性を保証するために一旦 に録画し、 後日再生して技能評 価を行った。 技能評価の基準が統一されるように、 バレーボールを専門とし技能評価の経験を有する 大学生2名によって行われた。
バレーボールゲームの 能力および 能力を明らかにするため、 下式により および の 決定率をセットごとに求めた。
① の決定率=サーブレシーブからの攻撃決定数/サーブレシーブ数
② の決定率= (サーブポイント+ブロックポイント+トランジッションによるスパイク決定数)
/サーブ打数
能力と 能力の関係を明らかにするため、 の決定率を独立変数、 の決定率を従属変
サーブ ブロック レシーブ トス スパイク 相手状況
1 コンビネーション 攻 撃 可 能 な レ シ ー ブ(A返球)
1 決定 (BP) 1 コンビ攻撃可能な レシーブ
1 攻撃可能なトス 1 スパイク決定 (KP)
1 コンビネーション 攻撃
2 二段トスから攻撃 可 能 な レ シ ー ブ (B 返球)
2 相手側コートに返
球継続 2 二段トスからの攻
撃可能なレシーブ 2 十分に攻撃できな
いトス 2 相手継続 2 二段トスからの攻
撃 3 その他の返球
(C 返球)
3 ワンタッチ味方継 続
3 トスにできないレ シーブ
3 トスミス 3 味方継続 3 その他の返球 4 決定 (SP) 4 ブロックアウト 4 レシーブミス 4 トスの反則 4 被ブロック 4 スパイクミス 5 サーブミス (SM) 5 ブロックノータッチ 5 レシーブの反則 5 スパイクミス 5 その他のミス
6 サーブ側の反則 6 ブロック側の反則 6 ブロック側の反則
7 レシーブ側の反則
表1 技能評価基準 (米沢、 1996)
数として回帰分析を行なった。
また、 全セットを勝ちセット、 負けセットに層別し、 の決定率を独立変数、 の決定率を従 属変数として回帰分析を行なった。
次に、 回帰分析の結果から、 すべてのセットが勝ちセットとなる範囲を明らかにするため、 勝ちセッ トのプロットより任意の2点を選び、 勝利確実境界線を求めた。
チーム力の評価を行うために、 および の決定率の平均値、 勝利確実境界線をもとに5つの ゾーンに分け、 それぞれの勝率を算出した。
また、 チーム力の評価には、 リーグ戦1位・2位の上位チームと7位・8位の下位チームの および の決定率を用いて図に示した。
能力および 能力と勝敗について明らかにするため、 の決定率を独立変数、 の決定 率を従属変数として回帰分析を行った。 その結果、 相関係数は、 図2に示すとおり 0 036でほとん ど相関は認められなかった。
次に、 勝セットと負セットに層別して、 それぞれの の決定率を独立変数、 の決定率を従属 変数として回帰分析を行った。 その結果、 相関係数は、 図3、 図4に示すとおり、 それぞれ 0 33、
0 07とほとんど相関関係は認められなかった。
したがって、 能力と 能力の間には相関関係はなく、 まったく独立した能力であることが明 らかとなった。
バレーボールゲームのチーム力評価に関する研究
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図2 FSO と FT による回帰分析
西嶋
5)は、 サイドアウト制のゲームを対象に、 因子分析法を用いて、 バレーボールゲームの構造を 明らかにした。 その結果、 得点能力は得権能力に支えられているが、 それぞれ別の能力であることを 明らかにしており、 本研究の結果とも一致するものである。
能力と 能力は独立した能力なので、 コーチングの現場では、 それぞれの能力について目標
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図3 勝セットの FSO と FT による回帰分析
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図4 負セットの FSO と FT による回帰分析
値を設定して、 トレーニングしなければならないことが示唆された。
次に図2より、 の決定率と の決定率からゲームの勝敗を予測するために、 すべてが勝ちセッ トとなる範囲から2点を選び、 勝利が確実となる境界線を求めた。
その結果、 図2に示すとおり勝利確実境界線は 1 99 ×94 41であった。 勝利確実境界線の右上 部の範囲に入る17セットは、 すべて勝セットになることが明らかとなった。 このことより、 の決 定率および の決定率がこの範囲に入ると、 すべて勝つことができるので、 バレーボールゲームの 勝敗を予測することが可能である。
また、 コーチングの現場では、 確実にゲームに勝つことができるので、 の決定率および の 決定率のトレーニング目標値として設定することができる。
バレーボールゲームのチーム力を評価するために、 の決定率および の決定率の各平均値と 勝利確実境界線で分割された5つのゾーンに分け、 各ゾーンの勝率を求めた (表2および図5)。 勝
バレーボールゲームのチーム力評価に関する研究
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図5 FSO と FT によるチーム力評価
勝利確実ゾーン A ゾーン B ゾーン C ゾーン D ゾーン FSO40%以上 FT20%以上
勝セット数 17 20 28 21 18 22
負セット数 0 13 20 25 46 5
勝 率 100% 60.6% 58.3% 45.7% 28.1% 81.5%
表2 各ゾーンの勝率
ゾーンの45 7%であり、 ゾーンは28 1%と最も低かった。
ゾーンは最も勝率の高いゾーンであるが、 表2に示すとおり の決定率が40%以上で の決 定率が20%以上になると、 勝率は81 5%となり、 かなりの確率でゲームに勝つことができる。 まず は、 と の決定率が平均値を上回り、 ゾーンに入ること。 そして、 次の段階は と の 決定率が、 40%以上と20%以上になること。 最終的には勝利確実ゾーンに入るといった段階的な目 標設定ができる。
ゾーンに入っている場合には、 能力は高いが、 能力が低いので、 能力を高めることで、
ゾーンに入ることができる。 ゾーンに入ったならば、 同様に 能力と 能力の決定率につい てトレーニングの段階的な目標値の設定ができる。
Cゾーンに入っている場合は、 能力が高いのに比べて 能力が低いので、 能力を高める ことで、 ゾーンに入ることができる。
吉田
15)や都沢
3)4)は、 ゲームで負けないためには、 能力が重要であると述べている。 ラリーポ イント制のゲームの特性として、 能力が高まると、 サイドアウトを獲得できるの割合が高まるの で、 強いチームに対しても接戦することができる。 逆に、 能力が低い場合には、 弱いチームに対 して接戦したり、 負けたりする割合が高くなる。 つまり、 このゾーンのチームは、 ゲームの安定性に 欠け、 弱いチームに対しても負ける可能性があるといえる。 したがって、 ゾーンのチームは、
能力を高めることで、 安定したチーム力が発揮できるので、 弱いチームに対しても取りこぼさず、 勝 つことができるようになると考えられる。
ゾーンは、 最も勝率が低いゾーンで、 能力および 能力のどちらも低い。 このような 能力と 能力のどちらも低い場合には、 ゾーンと同様に、 まず 能力を高めることが、 チーム 力を高めることにつながり、 ゲームに勝つ可能性が高まるということができる。
このようなことから、 ラリーポイント制のゲームに勝つためには、 まずは、 能力を高め、 サー ブ権を奪回し得点する力をつけることによって、 どのような相手に対してでも接戦できるようにする ことが必要である。 そして、 接戦している場面からリードを広げるためには、 サーブ後のラリーを制 し、 レシーブ後の攻撃により追加得点できるようにすることによって、 能力を高めることが重要 である。 チーム力を高めるためには、 まずは 能力を高め、 次に 能力を高めるというような順 番で、 トレーニングをすることが重要であると考えられる。
リーグ戦の上位2チームと下位2チームについて、 図6に示すようにチーム力の評価を行った。 そ
の結果、 1位チームは、 ゾーン、 2位チームはBゾーンに入っており、 それぞれ高い勝率ゾーンに
位置している。 1位チームは、 および の決定率がそれぞれ18 22%と35 98%であった。 次
の段階の目標値を および の決定率をそれぞれ20%と40%にすると、 の決定率がやや低
い値である。 したがって、 能力を高めるトレーニングを重点に行うことで、 ゲームでの勝率が高
まると考えられる。
2位チームは、 および の決定率がそれぞれ38 39%と16 52%であった。 ゾーンに入るた めには、 能力を高めることが必要である。 2位チームは、 能力が1位チームよりも高いので、
能力を高めることで、 ゲームの勝率が高まり、 優勝する可能性が高まると考えられる。 したがっ て、 2位チームは の決定率が16 7%の平均値を目標にし、 次の段階として、 の決定率を20%
とし、 能力を高めるトレーニングをすることが有効であると考えられる。
リーグ戦下位の7位チームは ゾーン、 8位チームは ゾーンに入っている。 7位チームは、 最も 勝率の低い ゾーンに入っているが、 の決定率が34 94%と平均値と同値なので、 ゲームで接戦 することができ、 セットを取得できたのではないかと推測される。 7位チームは、 の決定率が34 94%と高いので、 能力を高めるとすぐに ゾーンへ入ることができ、 安定したゲームが期待でき るようになる。 次に、 能力を高めることで、 接戦したゲームに勝つことができるようになると考え られる。
8位チームは、 の決定率が17 01%と平均値の16 7%よりも高い値であった。 能力が高いに も関わらず、 能力が低いために最下位になっと考えられる。 能力は、 サイドアウトを取る能 力であるが、 この能力が低いので、 8位チームは、 サイドアウトをとることができず、 前半から引き 離されるゲーム展開になり、 一方的に負けるケースが多かったのではないかと推測できる。 8位チー ムの場合は、 能力を高め、 サイドアウトを確実に取れるようにして、 中盤から終盤まで接戦した ゲーム展開をすると、 勝つ可能性が高まるのではないかと考えられる。
このように、 それぞれのチーム力を評価することによって、 現在のチームの特徴を明らかにするこ バレーボールゲームのチーム力評価に関する研究
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図6 上位チームと下位チームのチーム力評価
とができる。 そして、 トレーニングの具体的な目標値を設定できるので、 効率的なコーチングが可能 となる。 また、 トレーニングの達成度の評価にも活用できるので、 チーム力評価 (図6) はコーチン グの現場に十分利用することができると考えられる。
九州大学女子バレーボール1部リーグ戦を対象に 能力と 能力から勝敗を予測し、 チーム 力の評価を行った結果、 次の様な結論を得た。
1 能力と 能力には相関関係はなく、 独立した能力であるので、 それぞれの能力を高めるト レーニングをする必要がある。
2 能力と 能力によって勝敗を予測することができる。
3 能力と 能力によってチーム力を評価することができる。 したがって、 トレーニングの目 標値が設定できるので、 コーチングに十分活用することができる。
1) 箕輪憲吾・吉田敏明 (1990) バレーボールにおけるラリーポイント制のゲームの勝敗に関する研 究 スポーツ方法学3 1:55 62
2) 都沢凡夫ら (1988) サーブレシーブからの攻撃に関するサイドアウト率の理論的研究 筑波大学体育科学系運動学研究4:41 47
3) 都沢凡夫ら (1989) バレーボールのサイドアウトに関する研究 筑波大学体育科学系運動学研究5:105 108
4) 都沢凡夫ら (1991) バレーボールのサイドアウトに関する研究 筑波大学体育科学系運動学研究7:97 104
5) 西島尚彦・松浦義行 (1985) ゲームのパフォーマンスの構成要素 バレーボールゲームを中心 に 体育の科学35 2:87 90
6) 西島尚彦・松浦義行 (1985) バレーボールゲームにおけるチームパフォーマンスの決定因子とそ の勝敗との関連 体育学研究30:161 171
1位 2位 7位 8位
FSO FT FSO FT FSO FT FSO FT
平 均 35.98 18.22 38.39 16.52 34.94 15.30 30.57 17.01
標準偏差 10.32 9.05 9.49 7.51 8.82 7.35 9.93 7.39