同志社看護 Doshisha Kango Vol.2, pp.45-51, 2017
- 看護学会講演 看護学部開設記念(2015 年 12 月 9 日) -
ただいま紹介にあずかりましたホスピス・こどもホスピス病院の看護師の長尾と申します。本日は,
この同志社女子大学看護学部の開設記念という,本当に記念すべき講演会にお招き下さり,感謝致しま す。同志社女子大学は,新島八重さんがその開設にかかわり,日清戦争や日露戦争で篤志看護師とし て活躍されて,看護師の地位向上にも努め,その功績から日本のナイチンゲールとも呼ばれているとい うことを知りました。八重さんはクリスチャンとして生きて,彼女の志を継いでこの同志社女子大学に 看護学部が開設されましたことは,本当に意義深いことだと思います。
今回私は「ホスピス・こどもホスピス病院と看護」というお題を頂いています。ホスピス,緩和ケア 病棟については,今全国に300位に増えてきており,その話を聞く機会は多いと思います。ただ子ども ホスピスは,まだ日本にそしてアジアにも当院ひとつだけですので,今日は特に子どもホスピスのこと を中心に紹介したいと思いますが,話をきくだけでは多分イメージがわかない部分もあると思いますの で,間にDVDを入れさせていただきます。
その前に,自己紹介から始めたいと思います。私は高校二年の時に洗礼を受け,クリスチャンになっ ていましたので,何か人の役に立って一生続けられる仕事をしたいと思っていました。その頃,ネパー ルで医療伝道をしておられた岩村昇先生の話を聞いて,海外で災害支援などの働きもしてみたいと思う ようになり,看護師の学校を探していました。その当時看護の専門学校は多いのですが大学は数校のみ で,看護系の私立は聖路加,国立が東大と千葉と弘前と熊本にあり,高校の衛生看護科の教諭と養護 教諭の資格がとれるということもあり,熊本大学の教育学部の中にあります特別教科(看護)教員養成 課程に進みました。
3年生になりますと病院での実習が始まりましたが,実習は散々でした。そこにはクリスチャンであ りながらも人を愛することのできない自分,コミュニケーションをとることすら難しい自分があることが わかり,学校の先生からは「あなたは,本当は冷たい人なのかもしれない」とも言われて,すごく落ち 込みました。
そんなある日実習をしていた外科病棟の医師に「ちょっと,ちょっと」と呼ばれ,「甲状腺が大きい からちょっと調べよう」と言われて引っ張っていかれ,超音波の機械を甲状腺に当てられて,「ちょっと これ『がん』かもしれないよ」と言われて,急遽大学病院に入院して手術をすることになりました。本 当にびっくりしたのですが,周りの人の対応は様々で,「良性だから大丈夫だよ」と言って安易に励ま す人,「大変だね」と同情する人,当たらず触らずでかかわろうとしない人,そんな中一番助けになっ たのは,「何かあったら言ってちょうだい」と言って共にいようとしてくれた友人でした。
このときの私の一番の苦痛は,身体の痛みは何にもなかったせいもあるのですが,なぜ自分がこの病 気にならないといけないのだろうという魂の痛みでした。私はクリスチャンでしたので,毎日,「神様,
どうして私なのですか」「なぜですか」という思いをぶつける中,聖書を読んでいると,詩篇の4篇8 節の『わたしは安らかに伏し,また眠ります。主よ,わたしを安らかにおらせてくださるのは,ただあ
ホスピス・こどもホスピス病院と看護
Hospice Childrenʼs Hospice Hospital and Nursing
長尾真由美
1)Mayumi Nagao
1)淀川キリスト教病院 ホスピス・こどもホスピス病院 Yodogawa Christian Hospital Hospice Childrenʼs Hospice Hospital
結局良性で良かったのですが,その時教えられたのは,病気をしたら,体も心も魂も痛むということ,
医療者に求められるのは,体の痛みを解決することだけではないということ,相手の心や魂の痛みはど うしようもないと思っても,共にいようとする思いが大切であること,それと自分の人生の中でどんな 小さいことでも一つひとつが自分にとって,意味があると認めること,同じように,他の方にとっても,
ほんの小さいことであっても,その人にとったら意味があると認めていくことが大事ということでした。
そして実際の患者になって初めて少し患者さんの気持ちがわかるようになりました。神様は,こういう 形で私に荒療治をされたのだなと思いますが,その時私は神様から大きなスピリチュアルケアを受けた と思っていますし,その時の経験は,私自身の今与えられた仕事をする上でのベースになっています。
それから学生時代に教わったことの中で,今でも私の看護の原点になっていることですが,看護哲学 という授業の中で,「医療に携わる者は,相手の前に,持っている医療技術を一旦十字架につけるとい うことが大切だ」と言うことを教わり,それを聞いた時,これが看護の原点なんだと思いました。私た ちは,相手との対等の関わりの中で自分の医療知識や技術,自分のもっているもの,自分の思い,自我 とかを一旦手放すことも大切で,それが十字架につけることだと思います。そうすることで,本当に相 手の方が何を望んでおられるか,何が必要で何を感じておられるかが,少しずつわかるようになって,
本当に相手に必要なことを提供できるようになると思います。
そういう学生時代を送って,どこに就職しようか考えていた時に,淀川キリスト教病院のことを知り ました。『臨死患者ケアの理論と実際―死にゆく患者の看護―』という,柏木哲夫,今の淀川キリスト 教病院の理事長がまだホスピスを始める前に出された本です。丁度その頃,学生実習で受け持ってい た患者さんががんの末期の方でした。痛みが強くなると麻薬を注射するという毎日で,看護記録には毎 日痛みのことと,注射をしたということしか書かれていませんでした。医療者も足が遠のく中で,家族 の方と一緒に身の回りの世話をしました。患者さんには,その頃は真実を告げないことが多かったので,
その方にも本当のことが告げられていなくて,本当に話したいことが話せずにいましたが,学生が来る ことを楽しみにして下さっていました。本当に,これが看護なのだろうかと思いながら実習していた時に,
この本は末期の患者さんの必要,どうケアしていくのか,真実を告げること,向き合うこと,チームで 関わること等が書いてあり,とても新鮮で,こういう看護がしたいと思いました。それと,先ほど入院 した経験もあって,当時200床も満たなかった淀川キリスト教病院に就職をしました。
就職して思いましたのは,医師も看護師も本当によく患者さんのベッドサイドに行って,その方の必 要にどう答えるのか,悩みつつも本当に真摯に関わって責任をもって対応している様子がわかって,忙 しい中でもやりがいを感じることができましたし,たくさん失敗をして未熟さに落ち込むこともあったの ですが,そこで多くの方に教えられて成長させていただいているという実感がありました。外科病棟と 内科病棟で4年勤めた後,一旦結婚退職して,他院でも働いたのですが,再度淀川キリスト教病院に 就職して内科病棟の責任者とか教育担当,救急外来の責任者を経て,2012年の11月に開設したホス ピス・こどもホスピス病院の看護部長として現在に至っています。元々ホスピスは1984年に病院の中 に開設されたのですが,2012年にホスピス・こどもホスピス病院という形で外に出ることになりました。
ここからスライドを出します。もともとホスピスは中世のヨーロッパで旅の巡礼者を宿泊させた小さな教 会のことをさして,そうした旅人が病や健康上の不調で旅立つことができなければ,そのままそこでケア や看護をしたことから看護収容施設全般をホスピスと呼ぶようになりました。今日本の中でホスピスとい うと,イメージ的には成人のがんのターミナルの方が入る所とイメージされるのですが,世界的には,休 み場所という感じで,がんの方だけではなくいろんな病気の方が入られて休む場所として使われることが 多いようです。子どもと成人の違いですが,成人のホスピスは,がんで積極的な治療を行わないと決めた 方が対象で,その方らしく生きることを支援するところです。子どものホスピスはがんのみでなく,難病 や重度の心身障害の子どもたちも対象としており,自宅での介護負担軽減のためのお預かりが基本です。
ホスピス・こどもホスピス病院と看護
世界初の子どもホスピスはイギリスのオックスフォードで1982年に始まりました。子どもホスピス開 設にあたって,オックスフォードまで見学に行きましたので,そのヘレンハウスの様子を紹介したいと 思います。2012年9月19日に訪問したヘレンハウスの赤い玄関です。集合写真の真ん中に座ってい る赤い服の方が,世界で初めて子どもホスピスを創設されたシスター・フランシス。その隣が日本人の 喜谷さんという方で,今度,東京の成育医療センターに子どもホスピスができますが,そこに多額の献 金をしてくださり,日本に子どもホスピスができるようにと本当に多くの取り組みをしてくださった方で す。その隣がジェネラルマネージャーのトムさんです。あと,私たちがいます。場所はオックスフォー ドの街中の修道院の中にあります。感覚を刺激する部屋とか,おもちゃの部屋,転がって遊べる部屋とか,
アートの部屋とかいろんな部屋がありました。病室は個室で,それぞれの飾りつけが違いました。霊安 室は,イギリスは遠くから出てきてそこで亡くなった後に2週間くらい過ごされる方もおられるみたいで,
そこでしばらく過ごせるように冷房が強くきく部屋になっていました。霊安室の前のノートには,亡く なった子どもたちの生年月日が書かれていて,誰でもいつでも見ることができるようになっていました。
ヘレンハウスは世界で初めての子どもホスピスですので,本当に毎日のようにいろいろな人の訪問があ るのですが,私たちが一番驚いたのは,施設ではなく,私たちを本当にアットホームにあたたかく迎え てくださったことと,本当にここにいてもいいのだと思える雰囲気を作っておられたことです。そのこ とがすごく印象に残っていて,ここに来たら自分たちが受け入れてもらえるという空間をどういう風に 作っていくのかがとても大事だなと思いました。
淀川キリスト教病院は急性期630床,ホスピス・こどもホスピス病院は27床の病院です。なぜ当院 に子どもホスピスができたかといいますと,シスター・フランシス・ドミニカさんが2009年に当院を訪 問されて,日本にも子どもホスピスを作って欲しいと希望されました。丁度新病院に移転した跡の分院 という所が空くのでそこをどのように使おうかと考えていた時期でしたので,そこをホスピスと子ども ホスピスの病院にしようということになり,2012年の11月にオープンしました。ここはもともと120ベッ ドがあったのですが,4階に成人のホスピス15床,2階に子どものホスピス12床の27床の病院にな りました。玄関のところにはアヒルがいます。
病院の理念ですが,淀川キリスト教病院は「からだとこころとたましいが一体である人間に,キリス トの愛をもって仕える医療」という理念があり,その理念の元に,ホスピス・こどもホスピス病院は,「家 族・仲間とともに生きる癒しと希望の病院」というコンセプトを作りました。24時間出入りでき,家族だ けでなくお友達とか仲間の方も一緒に過ごせる空間を作りたいと思いました。また亡くなる場所ではなく てその方の傍で体の癒やしだけではなく魂の癒しも得られるように,またたとえ死が迫っていたとしても 将来への希望に繋げられる病院にしたいという思いで作りました。その中でホスピスは「患者さんご家 族が大切にしていることを私たちも大切にする」ということで,その人らしく生きることを最後まで支え ることを大事にしています。子どもホスピスは「子どもの望む場所でご家族・仲間と楽しく過ごすことを 支える病院」ということを大切にしています。玄関入った所の横にチャペルがあります。その隣に安ら ぎの部屋という霊安室があり,ここはイギリスのヘレンハウスにならって冷房を強く効かせられる部屋に しています。霊安室のステンドグラスは元々ホスピスにあったものを持ってきましたが,聖書のイザヤ書 の中に,エッサイの国が亡び,切られた切り株のようになったけれども,そこからイエス様である若芽が 生まれるという箇所があるのですが,そこから,ケアの手で支えたら,絶望のように見えるところからで も希望の芽が生えるという意味で,当病院のホスピスケアの本質を表すものとして使っています。
こどもホスピスのある2階は壁紙がお空と虹の空間になっていて面会制限はありません。デイルーム が3つあります。「おそと」は壁に全面お絵かきが出来るようになっています。いろんなイベントをここ でするようにしていて,冬は床暖房出来るようになっています。「おうち」は,キッチンでご飯を作って,
ご家族皆でお食事が出来るようになっています。「がっこう」は,入学式とか卒業式をここでしたり,ホー ム学級の場としても使っています。
こどもホスピスの12床の内,6床がレスパイト。対象は重度心身障がい児で,脳性麻痺やてんかん などの神経疾患,筋疾患,染色体異常などの方をお預かりしています。緩和ケアの病室が6床,小児
うだいは全然会えない,時々良くなって自宅に帰って,また治療のために入院して,という繰り返しで 過ごされますが,治療と治療の間の寛解期に緩和ケアの病室で,ごきょうだいも含めてご家族で過ごし たり,ご家族とのお出かけやお食事などの企画をしたり,症状緩和のコントロールを行ったりしていま す。最後までこどもホスピスで過ごしたいという方には,ご家族とおうちのように過ごしていただくこ とができます。お部屋の壁紙はディズニーのプーさん,ミッキー,ミニー,ニモ等の6タイプの部屋が あります。緩和ケアの病室は広く,ご家族4人ぐらいでしたら宿泊可能ですので,長い方は3ヶ月くらい,
最期まで過ごされたご家族もあります。お部屋の前のあかりは自分で選べる照明になっていて,照明塾 という所から全部寄贈されたものです。いろんなあかりを自分で選んで部屋の前に飾ることが出来ます。
3階は成人と子供の共有コーナーです。少し大きなイベント,最近でしたら元劇団四季の方や文楽や 落語の方が来てくださいました。成人の場合年2回,子どもの方は年に1回,遺族会をイベントホール で行っています。その他に和室やカラオケのできるパーティルーム,シアタールームもあります。シアター ルームは,見たいDVDやビデオを持ってきて頂いて,一緒に観ることが出来るお部屋です。ゲストルー ムも6室あり,ご家族やご親戚の方がお部屋以外にも泊まることのできる部屋です。屋上はスカイガー デンになっていて,園芸のボランティアさん達が季節毎のお花が咲くということをとても大事に手入れ してくださっています。特に成人のホスピスは在院日数が平均20日ですので,その20日の間にその季 節に咲く花を見ることが出来るというのは,すごく大事なことです。隣にはカフェテリアがあり週に1 回オープンしています。
子どもの緩和ケアに関しては今まで約16名の方が利用されました。特に脳腫瘍の方が多いです。白 血病の方もおられますし,また,15歳までが普通子どもですが,AYA世代といって15歳から29歳とい う大人と子どもの中間の世代の方の利用もあります。この写真の脳腫瘍の方は人工呼吸器をつけていらっ しゃいます。成人の場合はがんの末期で脳腫瘍でしたら人工呼吸器を付けたりはしないですが,子ども の場合は急に状態悪くなって,かかりつけの病院で人工呼吸器をつけてそのまま過ごされる方もおられま す。当院でも人工呼吸器を付けたままで最期まで過ごされた方が2-3人おられました。子どもの場合は 予後予測が分からなくて,前の病院でもうあと1ヶ月もないですよと言われて来られた方で半年ぐらい過 ごされた方もいます。血圧が例えば40とか50で,大人だったら今日,明日という状況ですが,人工呼 吸器を付けている子どもさんの場合,一週間くらい過ごされたということもあって,本当に分からないです。
来られて,すぐ2,3日で亡くなられる方もありました。大学病院でなかなかごきょうだいと一緒に過ごせず,
お風呂にも入れなくて,当院にお風呂に入る事とごきょうだいと過ごせたらいいといって来られ,お風呂 に入り,ごきょうだいと一緒に泊まり,ガーデンで過ごして次の日に亡くなった方もありました。
子どもホスピスでは今まで8名の方をお看取りしました。緩和ケア対象の方には,夢企画といって,
本人やご家族の希望を聞いてアレンジしたりもしています。今まではパーティ食を出してご家族で楽し んでいただいたり,文楽とか落語,阿波踊り,お笑い福祉士の方に来ていただいたり等,本物を見てい ただくということを大事にしています。いつもその時が最後になるかもしれないという毎日なんですね。
だからイベントも本当に最後まで本物を見ていただきたいということで企画して,色んなイベントのボ ランティアの方を募って,来ていただいています。またその子らしさを支援するということで,きょう だいと一緒に過ごしたり,壁に絵を書いたり,落書きしたりもできます。色々なイベントボランティアさ んがおられて,月に1回ホスピタルクラウンさんも来られて楽しませてくださいます。24時間曲を取り 込んでいるカラオケの機械もあって,カラオケをする事も出来ます。文楽の方も来ました。ネイルアー トの方にも来ていただきました。ガーデンには夏にプールを出して楽しんだりすることも出来ます。ク リスマス会,運動会もあります。スヌーズレンという感覚刺激のバブルチューブが廊下に置いてあります。
イギリスから取り寄せたのですが,泣いている子どもをここに連れてくると泣き止んだりもします。他 にもこういう感覚刺激の物をいくつか置いています。ボランティアさんの働きも大きくて,毎週定期的
ホスピス・こどもホスピス病院と看護
に来てくださる方もありますし,毎日のように色んな楽しいことがあるということをとても大事にしてい て,音楽療法,ホスピタルクラウン,紙芝居,お笑い福祉士さん,体操,臨床美術,アーティスト,工作,
ミュージカル,落語,文楽等,スポット的にお願いして来てくださる方もあります。
がんの子どもさんもそうですし,お家におられる重度の肢体不自由児の子どもさんたちの中でも,本 当にお家から出たことが無く,そういうイベントに参加する機会がない方も多いです。がんの子どもさ んは小児病棟では治療中ずっと外に出ることが出来ませんので,ごきょうだいやご家族と一緒に楽しい 思い出を作るということが難しいですので,こういうイベントを通して楽しい思い出を作っていただく 事を大事にしています。
ボランティアさん達は子どもホスピスの方は今29名おられるのですが,イギリスのヘレンハウスは8 床でボランティアが500名いると言っておられました。ものすごく沢山のボランティアがおられたのです ね。イギリスのボランティアさん達は,色んな働きがあって,子ども1人にボランティア1人,とにかく 子どもさんが一人ぼっちにならないように,「あなたの為に私はいます」っていう存在を必ず作っていま すと言われました。当院の場合はまだ1日にボランティアさん1人から多いときで3人なので,まだま だ少ないと思っていますけれど,何も出来なくてもこどもの傍にいるだけでもいい,子どもさんが一人ぼっ ちにならないようにすることがとても大事だとお話しています。その他に園芸や,あかりを提供してくだ さるボランティアさんがありますが,ヘレンハウスで感じた「あなたは本当に大切な神様から作られた大 切な存在」ということ,「あなたはここにいてもいいんだよ」という風に感じていただくようになる為にも ボランティアさんが傍にいていただくというのはとても大事なことだと思っています。
子どもホスピスの様子はDVDで観て頂いた方が本当によく分かると思いますので今から15分位の DVDを観て頂きます。これは2013年の8月にかんさい情報ネットtenで放映されたもので,がんの 子どもさんが当院でどう過ごされたかを特集して下さっています。
~DVD上映~
『小児がんの少女と家族の4か月』かんさい情報ネットtenより
DVDで見ていただいたように実際のところ本当にこんな感じです。最初,特にがんの子どもさんの ご両親がこどもホスピスにと勧められた時は「えっ」っていう感じになるんですけれども,実際に来ら れて,今まで小児病院では出来なかったことが出来るということや,ごきょうだいと一緒に過ごすこと ができます。小児病院では,ごきょうだいも自分の病気のきょうだいがどういう状態なのか知ることが 出来ませんが,ここでは病気のことをごきょうだいにどういう風に伝えようかということも一緒にご両 親と相談しながら伝えていっています。ごきょうだいにとっても,病気の自分のきょうだいと一緒にこ のような所で過ごせることはとても意味のあることだと思っています。
亡くなられてからも遺族会を年に1回していまして,今まで2回もちました。ご両親ときょうだいは別々 にカウンセラーがファシリテートしています。ご両親には,その時々で過ごされたこと,今どうしてお られるのかというお話を一緒にして,お互いにアドバイスできるようにしています。ごきょうだいは年 齢別に分けて一緒に遊ぶ中で,思いを聞いたり,変化を見たりしています。
亡くなられてからのお見送りは,一般の病院は,普通入る時は玄関から入って帰る時は裏口からです が,ホスピス・こどもホスピス病院はホスピスだけの病院になりましたので,入られた所,正面玄関か らお見送りをして,顔は覆わずにお車まで移動して,好きな音楽を流したり,事務職員も一緒にお見送 りして,子どもさんの場合には胸には手作りの金メダルを付けて帰っていただくようにしています。
子どもホスピスは日本にまだひとつしかないのですが,いろんな動きがあります。大阪の鶴見緑地にも,
子どもホスピスが来年の春にオープンする予定と聞いています。東京の成育医療センターにも来年の 春,子どもホスピスができる予定になっています。小児がんの子どもさんは大人に比べると本当に少な くて,年間約300人,大体が治るがんの方が多いので,亡くなる方は本当に少ない中,看取りもできる 専門施設が日本にも必要だということで創りました。また今,NICUでの治療がすごくよくなり,本当
器をつけているお子さんの預かり施設は本当に少なくて,困っておられるということが当院をオープン してよくわかりました。イギリスの子どもホスピスには人工呼吸器の方とか気管切開の方とか全くおら れませんでした。日本だったらどうだろうねと話しながら帰ってきました。イギリスは,国の方針とし てNICUで人工呼吸器をつけてまで子どもさんを助けるということはしないそうです。ところが日本で はどんどん助ける。それで,お家に帰って行かれる。でも預かってくれるところは少なくて,重度の肢 体不自由児の施設に一時預かりのベッドはあるのですが,人工呼吸器をつけていると預かってもらえな くて困っておられたようで,当院がオープンしたら結構そういう重度の方たちが集まってこられて,今 でも12床の中で大体多い時で一日5人位人工呼吸器の方をお預かりしています。そうすると,なかな か看護力が足りなくて難しい所もあるのですが,何回かお預かりする中で,最初は預かってもらうとい うことに抵抗を感じていたご両親が,預かってもらうことによって自分に余裕ができて,自分の健康管 理ができ,きれいになり,元気になっていかれて,そんな様子を見ることが私たちにとって励みになっ ています。またずっとお家におられてなかなか外の世界に接する機会のなかった子どもたちがいろいろ なイベントやボランティアさんも含めて,いろんな人との関わりを通して,どんどん成長していく所を 見させていただくということもすごく嬉しいことです。特に,NICUで生まれた子どもさんで,奇形で 何回も手術しておられる方は,顔が変形していたり,手術の跡があって,最初は「自分の子どもは・・・」「あ んまり外に見せたくないんです」って言いながら,写真をとるのも拒否しておられた方々が,ボランティ アさんたちが「かわいいね,かわいいね」って言って関わる中で,本当に自分の子どもはかわいいんだ と,お母さんが子どもさんのことを認められるようになって,「もう,いつでもどうぞ,子どもの写真撮っ ていいですよ」って言ってくださったり,「うちの子,爪がとってもきれいなんですよ」と言って,男の 子ですけれども,ネイルをしてもらったり等,嬉しい体験ができることもあります。
難病を持った子どもさんやがんの子どもさんの場合,ご両親がすごくご自分を責めておられる場合もあ ります。責める気持ちをなかなかぬぐえなくて,当院を利用される中で,チャプレンの関わりもありますので,
ご両親の責任では決してない,ということをお伝えする機会もあったりして,そういう中で,ご両親も変わっ ていかれる様子をみせていただくというのも本当に私たちの喜びです。どんどんそういう子どもさんたち が増えていく分,こういう子どもホスピスが日本でもたくさん増えていってほしいと思っています。
子どもホスピスの本は日本ではなかったのですが,私たちは,今年『輝く子どもの命―子どもホスピ ス癒しと希望』という本を出しました。子どもの命をどう考えるのかというキリスト教的な視点から第 一章は書いています。第二章では,子どもホスピスとホスピスケアということで実際の子どもホスピス の様子とかヘレンハウスの様子,イギリスや世界の子どもホスピスの様子のことを書いた章です。第三 章は実際に先程映っていたご家族とか,3家族の方に実際の自分の子どもさんが病気になったときから 亡くなるまでの経緯や思いを書いて頂いています。また子どもホスピスの課長がそれぞれの子どもさん が入院された時から亡くなられるまでを看護者としての視点で書いています。
成人のホスピスは診療報酬体系が大分よくなりましたので,良いのですが,子どもホスピスは赤字 経営です。子どものがんの方が入ってきたら,成人のホスピスと同じ収入があるのですが,子どものレ スパイトの方が入ってこられたときには,がんの子どもさんの半分くらいしか収入がありません。でも,
スタッフの数は必要ですので,赤字経営の中で,淀川キリスト教病院がホスピス・こどもホスピス病院 を支えてくださっている形になります。ご有志の方があれば,入口のところでワンコイン募金をしてお りますので,お気持ちを表して下さればありがたいです。
聖書の言葉で『わたしの兄弟である最も小さい者の一人にしたのはわたしにしてくれたことなのであ る』(マタイ25-40)という言葉があるのですけれど,今日聞いていただいたみなさんにお願いしたいこ とは,子どもホスピスっていうのはまだまだ日本で知られていませんので,こんなところがあるのだとい うことを近くの方にお伝えしていただきたい,その必要性を是非伝えていっていただけたらと思います。
ホスピス・こどもホスピス病院と看護
もう少し時間がありますので,子どものことだけでなく成人のホスピスのこともお話ししたいと思い ます。がんになったら昔は本人に告知をあまりしなかったのですが,最近はがんと分かった最初の段階 から本人は告知を受け,こういう治療がありますがどうしますかという風に選択をしながら,治療を受 け,いろんな症状が出てきたら積極的な治療と一緒に症状緩和を行っていくという治療が今基本になっ ています。でも,これ以上もうがんを治すことは難しいですよ,もしくはこれ以上積極的な治療はしな いという段階で,どこで過ごすのかという選択を迫られて,ご自宅に帰られますか,それともホスピス とか緩和ケア病棟へいかれますか,療養型病院に行かれますかと聞かれて,ご自宅に帰られる方もあれ ば,療養型の病院に行かれる方,ホスピスに行かれる方に分かれます。ホスピスと療養型病院の大きな 違いは,ホスピスは緩和ケアの専門病棟であるということで,積極的な治療はしませんけれども,積極 的な症状緩和の治療は行います。例えば痛みや吐き気,倦怠感等の症状コントロールをいたします。そ の一つの施設として当院のホスピスがあるのですが,定員が15床で,入院の条件としては,がんであ ることを本人が知っていることと,これ以上積極的な治療をしないと決めていて,予後が長くても3か 月以内,自宅に帰ることを望んでないということです。ここではその人らしく生きることを支援するの を大事にしています。またご家族へのケアも大事にしています。一般病棟ではなかなか家族へのケアは 難しいですが,大体これくらいの時期になったらこんな用意をされた方がいいですよ,とかそういうこ とを含めてご家族にお話しするようにしています。ホスピスのお部屋は,全室個室で,有料個室の場合 は畳と洋室の両方あります。いろいろなイベントもしています。またキリスト教病院ですので,チャプ レンが一緒に話をするお茶会というのもあります。リクエスト食といって,一週間に一回土曜日の夕方 の食事は何でも食べたい物を頼めるようになっています。
これはある患者さんの一例ですが,6月の19日に入院して25日に亡くなられました。入院当日は座っ てシターの演奏を聞かれたのですが,次の日からもうしんどくて起きることができませんでした。クリ スチャンの方で,教会の先生を呼んで自分のお葬式の時に使う好きな讃美歌や聖書の御言葉を選んで 準備をすることができました。またご本人の最後の望みで,教会の方にお別れの会をしたいと言われま して,もう,かなり意識は落ちていたのですが,スカイガーデンでお別れの会をして,一人ひとりにお 別れの言葉を伝える時を持つことが出来ました。
ホスピスでは,ここでどんな風に過ごしたいですかと最初にお聞きして,できるだけご希望を叶える ことができるようにしています。ホスピスでの一例をお話しさせていただきました。
ご清聴ありがとうございました。
淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院は、
2017 年 3 月 1 日より、淀川キリスト教病院(本院)
へ全ての機能を移転しました。