茨城大学教育学部紀要(教育科学)43号(1994)107−123
改訂英語科教科書とコミュニケーション能力育成の問題 高等学校の場合
長 澤 邦 紘*
(1993年10月18日受理)
Teaching of Communicative Competence in the New Course:
An Analysis of Revised Senior High School English Textbooks
Kunihiro NAGASAwA
(Received October 18,1993)
Abstract
This article discusses how the theory and practice of Notiona}/Communicative Approach has affected the design and content of the newlyイevised high school Enghsh textbooks. They are examined from the view−points of syllabus design and the nature of communication activities provided there. It is demonstrated that some textbooks follow the notional syllabus fragmentarily and that most of the communication activities, as they are called in those textbooks, are actually structural driHs of audio−lingual type or,
at their best, communicative drills.
は じ め に
平成元年に高等学校の学習指導要領が改訂され,それに伴って改訂された教科書が平成6年度から 使用され始める。平成5年現在「改訂教科書」はまだ見本本の段階であるが,改訂された学習指導要 領の理念が随所に見られる。本稿の目的は,改訂学習指導要領の基本的理念である「コミュニケー
ション能力の育成」という課題が教科書編纂にどのように反映されているかをみることにある。そ のために,まず,改訂学習指導要領そのものが近年の欧米におけるコミュニケーション中心の言語 教育の理論的研究と実践からどのような影響を受けているかを明らかにする。これらの影響は学習 指導要領の本文からは必ずしも十分には読み取れないが,学習指導要領の解説書とでもいうべき和
*茨城大学教育学部英語教育講座(〒310茨城県水戸市文京2丁目1−1;English Language Teaching, Faculty of Education, Ibaraki University, Mito, Ibaraki 310 Japan.
田・小池(1990)などにはっきりとうかがえる。改訂教科書の内容上の変化の意味を理解する上で も,これらの欧米の研究の意味をまず理解しておくことが必要だと思われる。
最近約20年間の欧米における言語教育研究の争点はコミュニケーション能力の概念規定とその能 力育成のための方法論の開発であったといっても過言ではない。これらの研究のわが国の英語科教 科書への影響は二つの面から考えられる。一つはシラバス編成の面で,コミュニケーション能力の 研究と分かちがたく結びついて発展してきた notional syllabus がどのような形で取り入れられてい るか,という問題である。ここではWilkins(1973)の理論的研究に基づいてvan Ek(1975)が体 系化したノーショナル・シラバスの枠組みとの関係で検討する。もう一つは教授法あるいは言語活 動の内容の面で,それらがどの程度 communicative なものであるかという問題である。 Hymes
(1971)やWiddowson(1976)などのコミュニケーション能力に関する研究を受けて,これまでに コミュニカティヴ・アプローチの多くの実践書が書かれてきたが,改訂教科書はどの程度それらの 影響を受けているのか。検討の対象とする教科書は「オーラル・コミュニケーションA」が中心にな
るが,「オーラル・コミュニケーションB」や「英語1」についても随時言及してゆくことにする。
1 シラバス編成について
1.1 改訂学習指導要領とノーショナル・シラバス
改訂学習指導要領がノーショナル・シラバスにそった教科書編成を示唆しているのは「内容の取 扱い」においてであり,「オーラル・コミュニケーションA」と「オーラル・コミュニケーションC」
についてそれぞれ次のように規定している。
オーラル・コミュニケーションA
(2)感想,感情などを表す効果的な表現を指導するよう配慮するものとする。
オーラル・コミュニケーションC
(1)提案,主張,論証などを表す効果的な表現を指導するよう配慮するものとする。
「感想,感情」の例として和田・小池(1990:146−148)は次のものを上げている。(かっこ内は例文 のうちの一つ)
1ikes and dislikes(I like/enjoy/love_.)
pleasure and annoyance(Oh, that is good news!)
regret(It sunfortunate that._)
worry(What swong with_?)
surprise, preferences, wishes, hope, wanting things, praise and criticism, blame, complaints, apologies, thanks.
長澤:改訂英語科教科書とコミュニケーション能力育成の問題 109
これらの概念はvan Ek(1975)のexpressing pleasure/displeasure/liking/dislike/preference/regret, ・ apologizingなどの言語機能ほとんどそのままである。また「提案,主張,論証」について,和田・
小池(1990:171−172)は次のような表現を指導するようすすめている。
1 would like to suggest....(提案)
What do you think_?(質問)
You re right./1 m sorry you re wrong.(賛成及び反対)
1 m quite sure ._(主張)
This・is the best way, because_(論証)
これらの言語機能はWilkins(1976)が argument (「論法」)に含めた言語機能agree, disagree,
assert, askなどに対応している。このように,改訂学習指導要領いうところの感想,感情,提案等の 概念は,Wilkinsが理論的な枠組みの形で提唱し, van Ekがその実践編として書いたノーショナル・
シラバスを全面的にその基盤にしていることがわかる。では次に,教科書の検討に入る前に「ノー ショナル・シラバス」を構成する要素について少し説明しておく。
Van Ek(1975)はノーショナル・シラバスの構成要素として language functions (言語機能), topic
area s i話題), gefieral notions (概念)の3つの意味領域を想定した。 Van Ek揮 language
functions として挙げているのは次のものである。(6つの大項目のそれぞれに小項目の例を1つ示す。)
1. Imparting and seeking factual information reporting(including describing and narrating)
2. Expressing and finding out intellectual attitudes expressing agreement and disagTeement 3. Expressing and finding out emotional attitudes expressing pleasure,1iking
4. Expressing moral attitudes
apologizing
5. Getting things done(suasion)
requesting others to do something 6. Socializing
greeting people
Topic areas (話題)としてあげているものは以下の通りである。
Personal identification House and home Free time, entertainment Travel
Health and welfare
Shopping
\
7.
8.
9.
10.
11.
12.
Food and drink Services Places Language Weather
public notices
ここでは,たとえば health and welfare においては「医師に自分の悪いところを説明する」,「自分 の身体の状態(空腹,疲労など)を説明する⊥「自分が出会った事故について説明する」などの表 現が教えられる。
General notions (概念)として挙げられているのは次の通り。(丸がっこ内は当該概念を表現する 言語形式の例)
Existentia1(There is....)
Spatial(11ive in London.)
Temporal(lt takes five minutes by taxi.)
Quantitative(I have about£20.)
Qualitative(This pillow is too hard.)
Mental(1 hope/think that you can help me.)
Relational(I gave him a nice present.)
Deixis(There are five people here.)
この概念の分類に従うと,たとえば,過去・未来などの概念は temporal に属し,受動・能動など の概念は relational に属することになる。
1.2改訂教科書とノーショナル・シラバス
Van Ekが示したノーショナル・シラバスの意味領域は以上のようなものであるが,改訂教科書で はどの程度これらを取り入れているのであろうか。言語機能を扱っているのはExpre∬ways A(開隆 堂),New・Start(旺文社), Echo A(三友社), Mainstream・A(増進堂)などである。このうち Mainstreamは言語機能のみを扱い,あとは言語機能のほかに話題や場面を扱っている。ここで話題
と場面の違いについて触れておく。「場面」中心の教材とは,「八百屋で」とか「郵便局で」のよう に,言語活動の場としてふつう外的な意味での場所を設定し,その場所の機能に関連したさまざま な言語表現を教えようとするものである。一方,「話題」とは「天候」「旅行」「音楽」のようなもの で,これらのことについて話すのに場所は限定されない。例えば「旅行」という話題を中心にした 教材では,旅行の計画をしたり,持ってゆくものの相談などをする場合の表現が取り上げられ,そ れは「旅行会社で」という場面中心の教材で扱われる表現とはかなり違ったものになるかもしれな い。「音楽」や「天候」についても,それらを話題にする場面を必ずしも想定する必要はないという ことがいえる。
Expresswaysが扱っている言語機能はGreeting, Introductions, Permission, Requesting, Agreeing,
長澤:改訂英語科教科書とコミュニケーション能力育成の問題 111
Apologizing, Saying Thank You, Praising, Excusing, Suggesting, Goodbye Expressions, Sympathizing,
Commanding, Desire, Guessing, Offering, lntention, Regardsである。 EXp resswaysはこれをPart Iと してまとめ,Part Hは場面中心のシラバスとなっている。つまり, Part llのLesson 1が「飛行場 で」,Lesson 2が「タクシー会社で」, Lesson 4が「食卓で」という編成である。 New・Startでは 言語機能,話題,場面が6つの単元に散らばった形で扱われている。言語機能は主としてIV Request−
ing and Refusingで扱われており, Asking Directions, Asking for a Favor, Making Appointments, An Invitation, Complaintsがその内容である。ほかに,いくつかの単元にまたがって「喜怒哀楽を表す主 な言い方」がある。取り上げられている表現は You look very happy. What a nice surprise! That s great! You look very angry. That s terrible. You are just so awful. That s too bad. You look very sad. 1 m sorry to hear that. lt・was・fantastic! などである。この「喜怒哀楽を表す表現」というの はvan Ekの言語機能の分類で言うとexpressing emotional attitudesの中のsatisfaction, disap−
pointment, gratitudeなどの表現に当たる。ほかの部分の単元構成はrHSchool Life学校生活」(例:
「学科」「クラブ活動」),「皿Social Life社会生活」(例:「天候」「健康」), rV Transport交通」など,
明らかに話題中心であるが,その中にも「切符を買う」「タクシーに乗る」など場面中心的な部分も
ある。
Echoも似たりよったりの構成で,言語機能,話題場面の3つがからみあっている。 Lesson 6は rAt the Flower Shopショッピング・交渉する」というタイトルになっている。本文その他を見れば,
ここでは明らかに「花屋」という場面での買い物に必要な表現を教えようとするのが目的である。し かし,それらの表現とともに How much is it? 1 11・take・it. など「交渉」に必要な表現をも教えよ
うとする意図がみられるのである。Lesson l 1のrMusic Talks音楽・許可を求める」は「音楽」と いう話題と「許可を求める」という言語機能をからめたものである。同様の例としては「週末・同 情する」「文化祭・推薦する」「家事と職業・同意する」などがあげられよう。
Mainstreamは言語機能のみを扱っている点,しかもその数をごく基本的なものに絞って扱ってい る点に特徴がある。その扱う言語機能は「質問の仕方・答え方」「依頼の仕方・応じ方」「感想・意 見の述べ方」「提案・反対意見の述べ方」「予定・報告の述べ方」「感情の表現など」のみである。
Active English A(一橋),Engtish Street A(第一学習社), He〃o, there!A(東京書籍)は話題と場 面を扱っている。Active Englishは「課外活動」「家族と親族」などの話題を中心に扱いながら「道 案内」「買い物」などの場面をも扱っている。English Streetは My Family, My Schoo1, My Interests などの話題のほか On the Phone, Shopping for Clothes, Ordering Food in a Restaurant な どの場面を平行して扱っている。Hθ〃α伽rε!は「学校生活」「音楽」「映画」「スポーツ」「週末」な どの話題が中心であるが,ほかに「買い物」「食事」などの場面をも扱っている。
以上,オーラル・コミュニケーションAの教科書の単元構成をノーショナル・シラバスとの関連 で見てみたが,そこには明らかにWilkinsやvan Ekの影響が見られる。しかし,教科書での取り 上げ方はさまざまである。言語機能のセクションと場面のセクションを完全に分けて扱っている教 科書もあれば,それらのものがいわばランダムに交錯しているものもある。あるいは言語機能は扱 わず,話題あるいは場面のみを扱っている教科書もある。言い替えれば,ノーショナル・シラバス の考えを小規模ではあるがまとまった形で取り入れている教科書と断片的にしか扱っていない教科 書があるということである。いずれにしてもこれは単元構成という教科書の外枠の問題で,生徒が
その教科書を使ってどのようなコミュニケーション活動をするのかということは全く別の問題であ る。それは次にみる教科書が提供する言語活動の性質と種類によって決まるものである。
2改訂教科書におけるコミュニケーション活動
2.1 Analytic apProach
ある教材がノーショナル・アプローチの考えをとっているか,いないかという問題は,教材編成 の枠組みとしてのシラバス(教授細目の羅列といういわば狭い意味でのシラバス)の外枠の問題だ けではなく,その中で扱われている言語活動の性質ともかかわってくる。つまり,Wilkins(1976)が 主張したノーショナル・アプローチとは,コース編成の枠組みとしてのシラバスとそれが扱う言語 の意味(ideational/modal/functional meaning)のほかに,それがとるべき教授法をも示唆していたので ある。それは,ウィルキンズのことばを借りれば, synthetic approach に対する analytic approach の提案であった。ウィルキンズによれば synthetic approach とは,構文や語彙など一定の言語項目 をいわばブロック式に積み重ねていって,一定の文法的体系が習得された後にコミュニケーション 活動に移るという方法である。従来の言語教育の方法は多かれ少なかれこの方法を基盤にしていた というのがウィルキンズの考えである。それに対して analytic approach とは,言語学習の最初の 段階からある特定の言語行動を行うために必要な表現を教えてゆき,学習の段階が進むにつれて,言 語行動の種類を増やしていったり,それらの言語活動をより洗練された形にしてゆくという方法で ある。たとえば「道をきく」と いう言語行動をおこなう場合,ごく初歩的な段階では Where・is・the station? を教え,次の段階では Excuse me. Where is the station, please? を,そして更に Bxcuse me.
Can/Could you tell me the way to the station, please? と教えてゆく。この場合,統語的な面だけでなく,
発音やイントネーションなどの音声的な側面も,段階的により自然で正しいものにしてゆくことが 必要であろう。
ウィルキンズの analytic approach が示唆する教育方法は,ある特定の言語行動が意図する意味 を表現するための言語形式(文形式,語彙,発音等)を始めから教えてしまい,その使い方に慣れ させてゆく方法であると解釈される。つまり,かなり実際のコミュニケーション場面に近い状況を 設定して,その中でのことばのやりとりを重視する方法と言いかえてもよい。そこでの教材編成上 の配慮は,当該の言語活動が言語項目の部分的なドリルに終わらず,言語を全体的に使うようにな っているかどうかということである。それが普通「コミュニカティヴであるかないか」という言い 方で表されることがらである。われわれはふだん母国語を使用する場合,ことばをつねに全体的に 使っているので,それは「コミュニカティヴな」使用と言える。しかし,外国語の教室というもの は本来疑似的なもので,いわゆる100パーセント「コミュニカティヴな」発話というものは成立し にくい。多少ともドリル的な要素が入り込んでくる。それゆえ,外国語としての英語教育を考える 場合,ある活動が「コミュニカティヴ」であるかどうかについては,そこに程度の差を設けなけれ ばならない。「かなりドリル的色彩の濃いコミュニケーション活動」とか「ドリル的ではあるがかな り実際のコミュニケーションに近い言語活動」とかの言い方が生まれてくる由縁である。以下,こ のような観点から改訂教科書を検討してゆくことにする。
長澤:改訂英語科教科書とコミュニケーション能力育成の問題 ll3
2.2 改訂教科書におけるコミュニケーション活動
前節で述べたコミュニケーションの度合い(どの程度 communicative であるかの度合い,逆に 言えば,ドリル性の度合い)という観点から言えば,改訂教科書で扱われている「コミュニケーシ
ョン活動」は教師統制が大きく,ドリル性の強いものが多いと言わなければならない。以下,その 中でも比較的コミュニケーションの度合いの強いものを,便宜的に分けた活動の種類に従って検討
してみる。
Listen and Draw
New Age Listening (研究社)はオーラル・コミュニケーションBの教科書であるが,次の例はコ ミュニケーション中心の教授法の理念の一つであるインフォメーション・ギャップを利用した言語 活動になっている。生徒は次のような指示に従って絵を描く。
漫画的な顔の描き方の説明です。英語を聞いて,下の顔の輪郭に指示に従って他の部分を書き加えなさ
し、。 [P. 6]
このような活動は言語的情報を聞き取って,それを非言語的に処理するcommunicative listening の好例である。これは例えば次のByrne and Rixon(1979:13−14)に見られるような活動を下敷き にしているものと思われる。
In this game Player A has to describe Player B a picture which the latter has not seen. Player B has to draw the picture from Player A s description.
この2つの活動に共通する要素は(1)話し手と聞き手の間にインフォメーション・ギャップがある。
(2)聞き取った情報を非言語的に処理している。(3)話し手の表現の言語的正確さは問題にされてい ない(つまり,聞き手が描くのに成功すれば,その伝達は成功したとみなされる)。更にByrne and Rixon(1979)には Player B is allowed to ask questions. ということわり書きがあり,コミュニケー ション活動が当事者の協力によって行われることが強調されている。もしNew Ageの方にも,たと えば「描く方の人はわからないときは質問したり,繰り返しを要求したりしてもかまいません」と いう但し書きをつけたとしたら,あるいは教師が自発的にそのように活動を変えて行えば,その活 動はいっそう「コミュニカティヴな」ものになる。
Listen for specific information
次の例もオーラル・コミュニケーションBの教科書Sailing (啓林館)からのものである。
1家族関係を表す図の中のある3人が,自分の家族について話している。それぞれ話している人はだれ だろうか。[p.29]
戸庵
Susan(48〕 Peter(48)
Eiizabeth(20)
1.
轡
Tom(18)
2.
Kim(24)
3
^穆剛
⑱
魯
Mike(1q)
これと同類の活動例はUr(1984:122)に見られる。ここではStellaが友達に自分の家族のことを 話して,Stellaを中心に描かれた次のような家族図を完成させるというものになっている。
長澤:改訂英語科教科書とコミュニケーション能力育成の問題 115
これらの活動に見られる特徴は,聞き取り活動をさせるとき,あらかじめ目的をもたせて聞かせる という点にある。つまり,特定の情報を得るために聞かせるのである。これは聞き取りにおける
scanning ということができよう。
聞き取りのscanningはEnglish Street Oral Com〃zunication・B (第一学習社)にも見られる。ここ での活動はSusumuとMikeがいくつかの店の広告を見て,カメラや電気製品の値段を比べている 会話を聞かせて,下のような表を完成させるというものである。
Fiτst Camera
@ Service
Central dlectric
Daiichi Department
@ Store
Camera Video camera
Word Processor
これは聞き取った情報を数字で書かせるというだけの活動である。ここに見られるように,得た情 報を表などに書き込むというのが今回の改訂教科書に顕著に見られる特徴である。これはあとで見
るオーラル・コミュニケーションAの教科書にも多く採用されている。
Matching
改訂教科書の言語活動のもう一つの特徴は,言語的情報と非言語的情報(たとえば絵)を結びつ ける種類のもの(いわゆる matching )である。同じEnglish Street B(p.10)に次のようなもの がある。
1英語で説明している絵を選びなさい。
1.a.
グ
%/
C.
これはたとえばLittlewood(1981:23)の次のような活動の影響を受けていると考えられる。
Learner A has a set of four, five or six pictures which are aU very similar in content, but gontain a number of distinguishing features_. Learner B has a duplicate copy of just one of these pictures−
Learner A must find out which of the pictures learner B is holding, by asking him questions about it。
o
国゜ 『
Matching の原理を応用した言語活動はオーラル・コミュニケーションAの教科書にも多く見られ るが,ドリル性の強いものが多い。
Requesting
次に,改訂教科書における言語活動の特徴を見るために,「依頼」(request)の表現を扱っている部 分を検討してみよう。依頼の表現を扱っているのはExρ ressways A, Mainstream・A, New Start, Echo A,
Hε〃②伽rθ!Aなどであるが,それらはほぼ共通した構成をもっている。つまり,依頼の表現を導入 するための対話文がまずあり,次いで多少のドリル,そして最後に「コミュニケーション活動」が
くる。対話文の長さとドリルの量は教科書によってまちまちであるが,基本的には「提示」→「ド リル」→「コミュニケーション活動」という順序であり,質的な差はない。コミュニケーション活 動は提示とドリルのあとの応用練習として各課の最後に設けられているが,その性質はドリルとさ
ほど違わないものが多い。つまり,ここで生徒がすべきことは,テキストにある表現をそのまま言 うか,せいぜいその一部を変えて言うぐらいのことである。このような教科書の中で,ドリル性が 少なく,生徒の自発的な活動を要求しているのはMainstrea〃z Aである。この教科書は第9課と第IO 課の2つの課を「依頼の仕方・応じ方」に当てている。次の例は第10課の Communication Activities
(p.27)からである。
1.下の1)〜3)のようなことを人に頼んだり,頼みに応じたりすることを想定して,隣の席の人と英 語で対話をしてみましょう。その際次のような言い出しで始めましょう。
A:Could you do me a favor?
B:Sure. What is it?
1)市役所への道順を尋ねる 2)重い荷物を運ぷ 3)コンサートの切符を買う
長澤:改訂英語科教科書とコミュニケーション能力育成の問題 117
上記Mainstream・Aが他の教科書と違う点は,すでに与えられている Could you do me a favor? 以 外の依頼の表現を「市役所への道順を尋ねる」という部分で使わせるという点にある。この部分は たとえば Where is the City Hall, please? でもいいのかもしれないが,この課の他の部分で Could you buy me a hot dog, please? の表現を教えているので,ここでも Could you tell me the way to the City Ha11, please? が要求されていると考えられる。これと同様に,生徒は「重い荷物を相手に運ん でもらうための」依頼表現,「コンサートの切符を買ってもらうための」依頼表現を用いなければな
らない。
Grammar practice activities
改訂教科書のコミュニケーション活動の中で比較的多いのが grammar practice activities である。
これはPenny Urがその著Gram〃iar・Practice・Activities(1988)で用いたことばで,言ってみれば,イ ンフォメーション・ギャップを含んだコミュニケーション場面で行う文型ドリル的な活動である。そ のもっとも単純で典型的な例がAcce∬to English 1(開拓社, p.9)に見られる。
A二人一組になり,次の会話例にならって質問し,下の1〜3について,お互いにメモを取りなさい。
(例) 1 A: What s your name, please?
B:1 mMasao Tanaka.
2 A:Which junior high school are you from?
B:1 m from Kokusai Junior Hi h SchooL 3 A:Which club are you in?
B:Iam in the tennis club.
1.氏名
2.出身中学
3.所属クラブ
上記の活動例には一般にgrammar practice activitiesに認められる次のような特徴がある。
1活動の前に一定の練習がおこなわれ,学習者はその形態に多少とも慣れている。
2ペアワークによることが多い。
3活動の結果を表のようなものにまとめる。
4対話者間にインフォメーション・ギャップがある。
5活動の最中に対話例を見ることを許す場合と許さない場合があり,その違いでコミュニケー ションの度合いが違ってくる。
以上のような特徴から,grammar practice activitiesがドリル的要素をもちながらも「コミュニカティ ヴな」要素ももっていると言われる。
Guided conversation
Grammar practice activities同様,教師統制のきいた練習問題にコミュニケーションの原理を取り入 れようとした言語活動のもう一つの例が guided conversation (あるいは cued dialogue )とよばれ るものである。もっとも単純でドリル的なものとしては,対話の枠組みを英語で与えておき,その 一部分だけを直させて会話させるものがある。また,別の形として会話者に言うべき内容を指示の 形で与えるものがある。Mainstream・A(p.31)は生徒AとBにそれぞれ次のような指示を与えて対 話を行わせている。
A B
1 週末の予定を尋ねる 答えてから,なぜと尋ねる
2 やろうとしたことを述べる 賛成しない
3 別の案を出す 賛成する
この種の「指示つき対話」( cued dialogue )はLittlewood(1981:14)の次のような活動を原型に もっていると思われる。
」Partner A
You meet B in the street、
A:Greet B,
B;
A:Ask B where he is going.
B:
A:Suggest somewhere to go together.
B:
A:Accept B s suggesIion。
B:
,Partner B
You meet A in the street.
A:
B:GTeet A.
A:
B:Say you are going for a walk.
A:
B:Reject A s suggestion. Make adifferent suggestion,
A:
B:Express pleasure.
このような活動は,言うべき内容が初めから決められているという点では教師統制が強いと言える が,それを言うための言語形式が示されていないという点では学習者に表現の自発性が求められ,「コ
ミュニカティヴな」活動といえる。
同様の活動例はEnglish Street A(p.37)にも見られる。
長澤:改訂英語科教科書とコミュニケーション能力育成の問題 119
2GeorgeがBobとJaneを自分の誕生パーティーに招待しようと電話をかけています。次の条件に基づ いて,GeorgeとBobまたはJaneになって対話練習をしなさい。
パーティーの日時・場所 7月23日(金)午後2時,Georgeの自宅
午 前 午 後
Bob スイミング・クラブ 特に予定なし
7月23日の予定
Jane 特に予定なし 家族旅行
1. George:
2. Bob!Jane:
3. George:
4. Bob!Jane:
5. George:
6. Bob/Jane:
自分の名前を告げ,相手を確認する 本人であることを告げる
パーティーの日時・場所を告げ,相手を誘う 自分の予定に応じて返事をする
相手の返事に応じる 招待の礼を言う
この活動の特徴は上のMainstream・Aの場合と同様,生徒は与えられた指示に従って対話をするが,
その指示の中に表現のための構造的な手がかりはほとんど含まれていないということである。たと えば「相手を確認する」という指示から ls・that・Bob? という構文は見えてこないし,「本人である
ことを告げる」という指示には (He s)speaking. という言語形式に関するヒントは何もない。つ まり,このような「指示」は言語機能のみを表している場合が多く,作文的な手がかりは与えない ことが多いので,学習者は当該の言語機能を表す表現を改めて学習することになる。
Communicative reading
以上は主として話す言語活動の例であるが,次に読む言語活動の例をあげる。「コミュニカティヴ な」読み取りとは,結局,ある目的をもって読むということである。次頁のEnglish Street (p.29)
の例などはその好例である。この活動はわれわれが日本語で行う「性格判断」という遊びを模した ものであることがわかる。「自分の性格を知る」というゴールを目指して読むというのが活動の目的 である。
「ある特定の情報を得るために読むこと」( scanning )も「目的をもって読む」ことの一種である。
読み取り教材を多く含む「英語1」の中でも,このscanningを扱っているものはそう多くはないが,
次のAurora (中教出版, p.37)の活動などはそのよい例である。ここでは5ページにわたる本文 でロシア生まれのバレリーナEleanor Pavlovaについて伝記的な事実を語ったあとで,次のような問
Oあなたの性格を調べてみましょう。 →Yes →N・
Po you drink oo描ee more量』an
gree 骨09マ →
↓
Do yo日gleep lo奮eo調
Sundaγs ? →
POγ側Iike
enkat b8貴量or 量』gn pop songs 2 →
Doγou Iik8 fo ploザ sp。r量s 2
継鱒㎝1購 琵蝋鱗側障綴
L−一」F弓↓
→蕪瀬轍騰
↓
1翻⇒蝋翻
晦撚骸e藷磁雛襯醸o盤鎌.翻囎 _ソ
s
Doγo罎study more量」9圃0瞬e h。鯛reo6h閥lg」奮2
P。ソou Iike量o go量。 parties?
rF=弓1
D。70田like win奮er befter 奮han雪凹mmer 2
Would y・ 蜘 3hoars量o meef yo凹r b。yFriend or girlfriend ?
職翁稲
翻¥鍵騰
灘翻
㈱獄概妻華鞭・灘撫麟1鵡聾
いを投げかける。
2.本文の内容に合うように,次の年表の下線部に適当な語句を書き入れなさい。
年 社会の出来事 Eleanorに関すること
1919 P923 P931 P941 P945 P946
happened.
@ broke out.
vorld War II was over.
Eleanor .
dleanor and her family .
dleanor died in .
she 5wαπLα々θwas staged.
読み取りの結果は語句で表を埋めるという形でおこなわれる。ここでもあくまで,ある特定の内 容を読み取るということに主眼があって,それを答えるための文構成力はさほど問題にされていな
い。
同様の例はNew・Horizon∬(東京書籍p.25)にも見られる。何人かの人々が「人類の将来への
長澤:改訂英語科教科書とコミュニケーション能力育成の問題 121
見通し」という内容でインタビューを受け,それに対して行った人々の答えが教科書の本文になっ ている。若い男女,老人,少年など,インタビューを受ける人々は種々さまざまである。そして,問 題の読み取りの観点は以下の如くである。
●1)については下の「未来に対する考え方」から適切な語句を選んで入れ,2)の欄の空所に適切な語 を1語入れ,未来についての5人の意見を整理しなさい。
名 前 1)未来に対する考え方 2)未来についての意見
Trish 【 ] Trish believes in science and(1).
Martin [ ] Martin doesn Uhink(2)wm control everyIhing,
b浮煤@he is not sure.
Giuliana 【 】 Giuliana believes that( 3 )are making big and 奄高垂純ムtant decisions about the future.
Henry [ ]
Henry doesn t believe IhaI changes made by new i4)are good for family life.
Sam [ ] Sam is moTe interesIed in(5)than in lomorrow.
未来に対する考え方一肯定的/否定的/無関心1慎重
生徒にとっての課題はここでは2つある。一つは本文の趣旨にそって丸がっこに適切な語を入れると いう,やや断片的な問題,もう一つは角がっこにそれぞれの人物の考え方(あるいは態度)をひと ことで言い表した語句を入れるという,読み取りの総合力をみる問題である。後者の読み取りは,ふ つうわれわれが母国語でおこなうものと類似している。このような種類の読み取りが cornmunicative reading といわれるものである。
英語1は聞く,話す,読む,書くの4技能を教えるための総合教材であるが,読み取りのための教 材が多く含まれているわりには communicative reading を意図した活動が極めて少ない。読み取り においては,聞き取りや話す活動におけるほどコミュニカティヴ・アプローチの手法が取り入れら れていないことがわかる。
以上,改訂教科書の中でも比較的「コミュニカティヴな」活動例を見てきた。しかし,
例は全体の数からいえば極めて少なく,多くはドリル性の強いものになっている。
これらの
ま と め
本稿では欧米における近年のコミュニカティヴ・アプローチの理論研究と実践がどのような形で 改訂学習指導要領に影響し,またそれがどのように改訂教科書の内容に影響していったかを2っの視 点から検討した。つまり,シラバス編成と言語活動の内容の点からである。その結果,一部の教科 書がノーショナル・シラバスを取り入れていることがわかった。Van Ekのいう「言語機能」「話題」
「概念」の3つをすべて扱っているもの,言語機能のみを扱っているもの,話題と概念だけを扱って いるものなど,さまざまであることがわかった。また,言語活動については,いくつかの教科書が
「コミュニカティヴな」活動例を取り入れようとしているが,それらはせいぜいが grammar practice activities とよばれるもので,多くは教師統制の大きい,ドリル性の強いものになっている。中でも,
読み取りにおけるコミュニケーション活動の例が極めて少ない。ひとことで言えば,改訂教科書は シラバスの枠組みとしてはノーショナル・シラバスを採用しているものもあるが,教授方法論とし てはコミュニカティヴ・アプローチを採用しているものは極めて少ないということである。
[付記]本稿をまとめるに当たって,茨城県立水戸商業高等学校・吉成和夫氏並びに水城高等学校・渡邊 真由美氏より改訂教科書を借覧することができました。ご好意に対し心より感謝申し上げます。
引 用 文献
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長澤 改訂英語科教科書とコミュニケーション能力育成の問題 123
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English Street Oral Co〃tmunication!垂.第一学習社.
English Street Oral Co〃1〃iunication・B.第一学習社.
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Expre∬ways Oral Communication.A.開隆堂.
Hello, there/Oral Co〃tmunication・A.東京書籍.
Mainstream Oral Com〃iunication・A.増進堂.
IVew Horizon Engtish Course L東京書籍.
New Start English Communication/A.旺文社.
Sailing Oral Co〃1〃zunication B,啓林館.
The NeWIAge Listen ing.研究社.