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都市近郊農村における営農変化と来住の展開

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(1)

都市近郊農村における営農変化と来住の展開

— 東海村を対象に —

乾 康代

*

(2009年 11月30日 受理)

The Change of Farm and the New Commer Residence in Suburban Rural Area

— A case of Tokai vill. —

Yasuyo I

NUI*

(Received November 30, 2009)

1. はじめに

開発圧力が小さくなったとはいえ,人口減少に入った都市とは対照的に,都市近郊農村ではなお 増加が続いている。近郊農村における人口増加は,いうまでもなく農地や樹林地などが宅地として 供給され続けているからでがあるが,宅地化は減るどころか最近になってその増加率に上昇傾向さ えみられる状況である。営農の状況悪化が深く進行していることを窺わせる。しかし,農村の農地 と自然環境は,食糧生産の基盤であることに加えて,大気浄化,防災などの環境保全機能,美し さ,安らぎなどのアメニティ機能といった必要不可欠な機能を有しておりしたがって,農村の環境 を保全し,無計画なスプロールは厳しく抑制されなければならない。

本研究が対象としている東海村は,村内に原子力関連13事業所を擁し,北は日立製作所(以下,

日製)本拠地である日立市に隣接している。高度成長期以降,農家の農外就業先が増えて農業就業 人口が急減するとともに,日立市の郊外住宅地として開発がすすみ多数の都市住民が農村地域に来 住した。その結果,2005年の農業就業人口は,わずか5%まで低下している。

東海村の農村地域を対象にこれまで筆者は,農村景観の形成主体となる新旧住民の地域的まとま り形成が,開発方法や時期で異なること

1)

,農村景観の主要な変化要素である住宅について戦後半 世紀の建設動向と住宅外観変化の特徴を示してきた

2)

これまでの調査研究をとおして明らかになった当該農村地域の問題状況をまとめると,①市街化 区域では住宅建設が十分にすすまず,市街化調整区域で住宅建設がすすむというきわめてアンバラ ンスな状態が常態化している。計画的な市街地形成と農村地域での開発抑制という都市計画の意図

*

茨城大学教育学部住居学研究室(〒310-8512 水戸市文京2-1-1; Laboratory of Housing Science,

College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan )

(2)

が必ずしも十分に実現されてはいない。②農村地域では,都市型住宅が急増し,伝統的な農家住宅 や屋敷林など保全すべき景観要素は目に見えて減少しており,農村として望ましい景観とはどのよ うなものなのかについて居住者の合意を形成することが困難な状況が進行している。

都市近郊農村では農家と来住世帯が混住しているが,居住歴や生活基盤,ライフスタイルが異な るこの2つの層は居住域を分かち,あるいは自治会組織を別にするなど,交流も多くない。このよ うな状況下,地域住民の合意のもとで変化の大きい自然環境と農村景観をどう維持保全していくの かは大きな課題である。本研究では,農家の営農がどんな状況にあるのかを確認したうえで,地域 的課題に向けた取り組みの可能性を探るために,地域に居住する来住世帯の典型を取り出し,農村 地域評価と地域居住におけるライフスタイルの特徴を明らかにする。

2. 東海村の土地利用変化と農業政策 

東海村は,水戸市の北東約15kmにあって,日立製作所の本拠地・茨城県日立市の南に隣接する,

面積3,748ha,人口37,032人の村である。村は,北西部から南東に向かって広がる台地と,久慈川の 南側と真崎浦などの低地,臨海部に広がる砂丘で構成され,低地は主に水田,台地には中心部に市 街地と周辺部に農村集落と畑,砂丘には原子力関連事業所が立地し,臨海域の大部分を専有してい る。東海村は高度成長期を迎えるまで純農村であり,1956年の農業統計では,耕地率67.8%,農業 人口比率75.1%(対村人口,1955年)と,農業はそのピークにあった。しかし,同じ1956年,2村 が合併してできたばかりの東海村の発展のためとして原子力研究所の受け入れが決定されて以降,

原子力開発を中心とする産業都市へと大きく方向転換することになった。今日にいたるまで,15の 原子力関連事業所が立地し,また隣接する日立市の郊外住宅地として,原子力関連施設勤労者の居 住地として宅地開発が進んだ。

この間の地目別面積と宅地増加率の推移をみると(図1),1965年は畑1,188ha(33.4%),山林 802ha(22.6%),田470ha(13.2%),宅地364ha(10.2%)の順であったが,2007年には,宅地987ha

(26.3%),畑687ha(18.3%),山林432ha(11.5%),田428ha(11.4%)の順となった。畑と山林 はそれぞれ501ha減,370ha減と大きく減少した。経営耕地面積は1955年の1,556.7haから2005年の 737.4haへ,52.6%減少した。他方,宅地増加率は1975年にピークを示した後,低下傾向にあったが

0 5 10 15 20 25 30

0 200 400 600 800 1000 1200

1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005

田 畑 宅地 山林 宅地増加率

ha %

 『東海村の概要 平成15年度』および村税務課資料より作成 図1 東海村の地目別面積の推移

(3)

2005年に再び大きく伸びている。1975年のピークは,1971年の線引きをはさむ5年間に宅地への転 用が急増したことを示している。

地域農業をみると2005年現在で,農家数では892,農家人口1,049人で,村人口の5%にまで減って いる。経営耕地面積は上にみたように737.4ha,その内訳は田334ha,畑391ha,樹園地12ha,農家1戸 あたりの平均経営耕地面積は0.83haである。特産には,明治40年代以降農家の副業として始まった 干し芋があり,現在では全国有数の産地となっている。しかし,生産者の高齢化などで生産基盤の 弱体化が進み,加えて安価な中国産に押されており近年は,収穫面積も減少している。このほか栽 培面積は狭いが,梨やぶどうが産直で出荷されている。耕作放棄地は村全体で60haに達しており,

全経営耕地面積の8.1%を占める。

こうした状況下であるが,村は,農業のもつ多面的な機能を重視し,農業の維持と再生を推進す る立場を明確にしている。『東海村都市計画マスタープラン』の上位に立つ総合計画『とうかい21 世紀プラン』では,農業は福祉,環境,教育と並んで実施計画の4柱のひとつと位置づけられてい る。上記プランにおける営農政策をみると,農業が抱える後継者不足問題などに対し,担い手育成 や農地流動化政策などが具体的に記述されているが,特産振興などの積極策への方策は必ずしも明 確ではない。

3. 須和間区の農家と営農状況

農村東海村須和間区を対象として取り上げる。須和間区は,市街化調整区域の行政区のなかでも とくに近年の開発が著しく,人口増加が大きい地区である。同区は,須和間台地上の集落,その周 辺に広がる畑と平地林,および台地周縁の谷津田で構成される。これら畑の一部と田が農振農用地 区域に指定されている(図2,3)。作物は干し芋用のサツマイモが中心である。

同区内およびその周辺の大きな開発は1970年代に始まった。1971年に集落南部を県道が横断する と,日立製作所の系列ディベロッパによってこれに接道する計画戸建て団地・緑が丘が平地林を拓 いて開発された。つづいて,集落北側の既存の村道が拡幅延長されて上記県道に連結されると,2 つ目の戸建て団地・南台が開発された。さらに,90年代後半,3つ目の団地・フローレスタ須和間

図2 須和間区の現況

村松街道

須和間街道

村道2425線

南台団地

緑ヶ丘団地 県道須和間 豊岡線

荒地

0 100 250 m

図3 須和間区の農振農用地区域

集落地 農振農用地区域 畑地帯総合整備事業 区画整理地区

(4)

が林を切り拓いて水戸市内の会社によって開発された。フローレスタ須和間への入居の進行と合わ せ,須和間区は,村内でもっとも人口増加率の高い区となっている。最近13年間では(2008年の 1995年に対する)は41.3%の増加である。

こうした状況にあって,農業者の高齢化と後継者の不足により遊休農地は3haに達している。な お,区内には,畑地総合整備事業(以下,事業)で整備が完了した畑地が15.3haある。同事業計画 では,完了時の2005年には事業区域内で,担い手の農地流動化率を経営面積の20%以上に増やすこ とが計画されていた。

須和間区の居住世帯すべてを対象に,2006年8月および2008年2月にアンケート調査を行った。

2006年8月の調査(以下,調査1。配布数240,回収数178,回収率74.2%)では,主として居住する 住宅や今後の居住に関して調査し,2008年2月の調査(以下,調査2。配布数262,回収数81,回収 率40.9%)では,農家に対しては営農意向,居住者全員に対して今後の地域環境についての意向,要 望などについて調査した。

回収率の高い調査1の結果でみると,農家43.4%(うち専業農家17.0%,兼業農家26.4%),非農 家56.6%(うち世帯主が区内出身世帯26.4%,世帯主が区外出身世帯30.2%)である(表1)。須和

表1  農家世帯の構成

30代 40代 50代 60代 70

以上 会社員 公務員 (農業)自営 (商工)自営 無職その

販売農家 (計25世帯) 14 11 1 1 7 7 7 4 3 15 1 0

自給的農家(計37世帯) 8 29 0 3 11 8 15 9 2 12 4 9

不明分除く 世帯主職業

世帯主年齢 専業

農家 兼業 農家

表2 農家類型と農地の所有・貸付状況 世帯主

年齢

世帯主

職業 世帯類型 所有農地 面積(ha)

貸付農地 割合 70以上 自営(農業) 2世帯同居 1.5 なし

60代 〃 〃 0.6 〃

〃 〃 夫婦のみ 2.4* 〃

50代 〃 2世帯同居 1.5 半分

〃 〃 単独 1.6* 半分以下

不明 〃 夫婦と子 0.5* なし

70以上 無職 2世帯同居 1.1 全部

〃 〃 その他 不明 半分

不明 不明 夫婦と子 不明* 〃

70以上 自営(農業) 片親と子 2.1 半分以上

〃 〃 夫婦と子 1.0 半分以下

〃 〃 〃 不明 〃

50代 〃 2世帯同居 0.6* 半分 70以上 自営(商工) 夫婦と子 1.7 半分以下

50代 〃 夫婦と子 2.0 〃

60代 会社員 2世帯同居 2.0 なし

50代 〃 〃 不明 半分以上

40代 〃 夫婦と子 〃 〃

〃 〃 2世帯同居 〃 なし

70以上 不明 不明 0.1 全部

*:所有農地の他に借地も耕作している *:所有農地の他に借地も耕作している

販売農家

自給的農家

(5)

間区に居住する世帯は,非農家が農家を上回り,非農家のうちでも区内出身者よりも区外からの来 住世帯の方が多いという状況にあると推量された。農家世帯の特徴は,世帯主年齢は高齢が多く,

職業をみると販売農家でも兼業が多く,自給的農家では非農業が多数となっていた。

以下では,主に調査2の結果をもとに(販売農家15,自給的農家12,合計27), 農家の営農状況 についてみる。なお,これら世帯の特徴は調査1の結果(表1)と同様,販売農家,自給的農家と もに30,40歳代の世帯主は少なく,50歳代以上が中心である。とくに60代と70代以上が多く,いず れの類型も60代と70代以上を合わせると半分以上を占める。世帯主職業では,販売農家では「自営

(農業)」が過半数を占めるが,自給的農家では1/3となり,会社員など農業以外の職業で占められ ている。

農家世帯の農地貸付状況を表2にまとめた。取り出したのは貸付状況が把握できた世帯である。

農地の所有関係は,販売農家,自給的農家ともに,すべて自己所有の場合が多数であった。平均所 有農地面積は,販売農家1.3ha,自給的農家では1.4haで,2つの農家類型の間に大きな差はない。販 売農家は,世帯主の職業は「自営(農業)」が多く農地の貸付をしていない農家は9例中4例で,

農地を貸し付けているのは5例である。自給的農家では販売農家に比べると貸付は11例中9例と多 くなる。

農業後継者の状況は表3に示すとおりである。後継者が「いない」農家については販売農家と自 給的農家別で差がない。しかし,「まだわからない」は販売農家56.0%,自給的農家40.5%と販売農 家の方が多く,その差15.5ポイントある。販売農家は自給的農家より「まだわからない」が多く,

農業後継への期待は大きいことが推察された。

今後の営農意向について,「耕作を続ける」「貸し付ける」「農外転用する」「売却する」「耕 作中止するが転用・賃貸・売却しない」の5選択肢を設定し質問した。耕作継続がもっとも多く16 例/27例(59.3%)を占め,貸付4例(14.8%),農外転用4例(14.8%)がこれにつづいている。売 却と耕作中止も2例ずつあった。農家類型でみると,耕作継続は,販売農家13世帯中11世帯,自給 的農家14世帯中5世帯であり,販売農家の方が多い(表4)。自給的農家と比べたときの,これま での販売農家の農地貸付の少なさや農業後継者への期待の多さからから,当然の結果といえる。

表3 農業後継者の有無

いる まだわか

らない いない

4 14 6

16.0 56.0 24.0

7 15 13

18.9 40.5 35.1

14 32 22

20.3 46.4 31.9 上段:世帯数下段:構成比(%),不明分除く

合計 販売農家

自給的農家

表4 区内農地に関する今後の意向

専業 兼業 専業 兼業

耕作を続ける 8 3 0 5 16 59.3

貸し付ける 0 3 0 1 4 14.8

農外転用する 1 1 1 1 4 14.8

売却する 0 1 1 0 2 7.4

耕作は中止するが,転

用・貸付・売却しない 1 0 1 0 2 7.4

わからない 0 0 1 1 2 7.4

合計 27 100.0

販売農家 自給的農家 割合

合計 (%)

表5 事業区域内農地に関する今後の意向

耕作継続 貸付 農外転用 売却 耕作中止 合計

世帯数 8 3 2 0 1 14

割合(%) 57.1 21.4 14.3 0 7.1 100.0

(6)

事業区域内では,担い手の農地流動化を経営面積を20%に増やすことが求められていることは先 に述べたとおりである。事業区域内に農地をもつ14世帯についてみると(表5),耕作継続は8例

(57.1%),貸付3例(21.4%),農外転用2例(14.3%),耕作中止1例(7.1%)であった。耕作 継続と貸付を合わせると78.5%となった。区内農地と比べると若干高いといえる程度である。

以上をまとめると,農家の今後の耕作継続意向は59.3%と少なく,継続減少を補う貸付意向14.8%

を合わせても74.1%である。他には,農外転用やわずかであるが売却などの意向もある。販売農家 に比べると自給的農家は耕作継続だけでなく農地貸付意向も少ない。

4. 農家個別でみた営農意向

農家26世帯(1世帯は詳細不明)について,農家類型と後継者の有無別に営農意向などを整理し た(表6,7)。

販売農家では,後継者がいる農家は,専業・兼業にかかわらずいずれも耕作継続の意向をもって いる(表4)。後継者ができるかまだわからないという農家になると,耕作継続の他,貸付,農外 転用,売却と,今後の選択は多様になる。さらに,後継者がいない農家では耕作中止が加わる。す なわち,後継者未確定グループに対し後継者不在グループでは,耕作継続が減り,他農家への貸付 や耕作中止など,営農からの後退意向が増える。その例は専業農家になく兼業農家にみられた。

自給的農家では,兼業農家,3世代同居が多数である。表7中,No.26は,3世代同居の兼業農家 の例であるが,所有農地のすべてを農外転用するとの回答から離農が想定される。この世帯では,

農地だけでなく所有平地林の伐採も検討されている。

表6 販売農家の農地に対する今後の意向

今後の 意向

面積 割合

今後の 意向

面積 割合

所有の 有無

今後の 意向

1 専業 - ● ● - -

2 専業 0.5 ● - - -

3 兼業 1.4 ● - なし -

4 兼業 1.5 ● - - -

5 専業 0.6 ● ● 屋敷林 保全

6 専業 2 ● - 平地林 保全

7 専業 2 ● - 平地林 保全

8 専業 1.6 ●■ 半分 ●■ 全部 屋敷・平地林 保全

9 兼業 1.5 ○■□ いずれも半分以下 - 平地林 □

10 専業 0.5 ● ● なし -

11 専業 - ● ● - 保全

12 専業 2.4 △ △ 屋敷・平地林 保全

13 兼業 - ● ● なし -

14 兼業 1.1 ○ 全部 ○ 全部 なし -

15 兼業 - ○ 半分以上 ○ 半分 平地林 □

●=耕作継続,○=貸付,■=農外転用,□=売却

△=耕作中止するが貸付,転用,売却しない,「-」=不明

「面積割合」=貸付,農外転用,売却の場合の割合 事業区域 屋敷林・平地林

い る

ま だ わ か ら な い

い な い 後継 者の 有無

農家

No. 類型 所有面積

(ha)

区内

(7)

販売農家でもこうした例がある。No.9では,区内所有農地の半分程度を農外転用,半分以下を貸 付と売却すると回答しており,離農が想定される。離農とまではいかないが,相当程度まで耕作面 積を減らす予定をしているのがNo.15である。この農家では,区内所有農地の半分以上を貸付,とく に事業区域内農地については半分程度を貸付する。これら2例とも,平地林の売却が検討されてい る。No.9では全体面積の半分程度,No.15では全部である。いずれも兼業農家である。遊休地化の 可能性は,No.12,No.17にみられる。No.12では,耕作を中止するが貸付の意向はない。No.17も同 様の意向をもっている。後継者不足にともない一定量の農地の流動化が進む一方で,遊休化や売却 の検討例も少なくないことがわかる。

なお,区内農地と事業区域農地で別々の営農意向をもっている例があった。No.17は事業区域内農 地は貸付,区内農地では耕作中止を選択している。No.22では,事業区域内農地は耕作継続,区内農 地は農外転用がなされる。これらの例では,事業区域内農地の維持が優先されていることが推測さ れた。

以上より須和間区の営農状況をまとめると,農家は居住世帯の半数に足らず,自給的農家が多数 派であること,耕作継続意向は6割程度で,自給的農家を中心に農業後継者不足は明白で離農を検 討していると想定される数例がある。事業区域内農地でも同様の傾向にあるといえる。全体として 依然,農村環境は大きな変化過程の中にあり今後も景観変化がすすむことが想定される。

5. 来住高齢定住世帯の特性と農村居住の評価

以上のように須和間区では,今後も自然環境と農村景観の大きな変化が起きることが想定される なか,これらの維持保全に向けた地域的取り組みの可能性を検討するために,地域に居住する来住 世帯の典型を取り出し,農村地域評価と地域居住におけるライフスタイルの特徴を明らかにする。

都市住民の来住をみると2つのピークがあり,一つは1971年の線引き前後にあり,もうひとつは 1980年代後半以降にあった。特に後者のピークは前者のピークと比べても高く,最近になるほど高

表7 自給的農家の農地に対する今後の意向

今後の 意向

面積 割合

今後の 意向

面積 割合

所有の 有無

今後の 意向

いる 16 専業 - - - - -

17 専業 2.2 △ ○ 半分以上 屋敷林 保全

18 兼業 - ● - - -

19 兼業 0.6 ● - なし -

20 兼業 - - - なし -

21 兼業 1.0 ● ● 屋敷・平地林 保全

22 専業 0.9 ■ - ● 屋敷林 伐採

23 専業 2.0 ● - - -

24 兼業 - ● - 屋敷林 保全

25 専業 - ○ 全部 - なし

26 専業 1.7 ■ 半分 ■ 半分 平地林 伐採

●=耕作継続,○=貸付,■=農外転用,□=売却

△=耕作中止するが貸付,転用,売却しない,「-」=不明

「面積割合」=貸付,農外転用,売却の場合の割合 農家

No. 類型

い な い

事業区域 屋敷林・平地林

ま だ わ か ら な い

所有面積

(ha)

区内

(8)

くなっている。つまり,宅地化はなお増加の一途にある。

そこで,この2つの来住のピークに対応する,60年代後半から70年代にかけて来住した世帯と,

近年のうちでもとくに増加が著しい1996年以降の来住世帯の二つのグループを対象とする。後者の グループについて1996年以降の来住世帯としたのは,茨城県で同年,既存集落における自己用住宅 の取扱いに関する規定に,市街化区域内居住者が10年以上居住していれば,同一小学校区の隣接調 整区域で持家建設ができるという規定が加えられ,この規定以後,持家建設が急増していることが 確認されていることによる。

前者の60年代後半から70年代にかけて来住したグループについては,該当する12世帯にインタ ビュー調査を行った。後者の1996年以降の来住グループに対してはアンケート調査を実施し,農村 居住の選択理由や住環境評価,農村居住に対する要望などについて質問した。200世帯に配布し,47 票を回収した(回収率23.5%)。前者のグループはその来住時期からいずれも高齢者世帯であり,

以下「高齢定住世帯」と称し,後者のグループは子育て期の若い核家族がほとんどで,「若い核家

表8 高齢定住世帯の居住歴 No. 来住年 従前住所・

住宅 来住理由 居住地状況・居住過程 居住地評価

1 1967 日製給与住宅 同僚に薦められた,畑を作るの

にいいかと考え買った 新住民で常会を立ち上げた

2 1968 日製給与住宅 同僚に薦められた。地価が安い

農家との親交あり,百姓やるなら土 地を貸すといわれるが,その気はな

○静かで良い所

3 1970

日立市(原子 力事業所勤 務)

日立市に適当な土地がなかっ た。広い土地が購入できる。地 元不動産業者から購入,

隣の畑を耕作

4 1972 日立市

職場の同僚に薦められ,1969年 に不動産業者から土地を購入,

山林の状態だった

道を4mに保つため,自分たちで草 刈りしている。息子家族が自宅前の 開発地に住んでいる

○もっと拓けるかと思ったがいまだ 山の中に暮らしている,その分,静 かでよい。●下水道が未整備

5 1973 日立市

会社が持家奨励。姉が現居住地 の隣接地に居住していた。1970 年に購入

井戸を堀り,排水管敷設の許可をと り合併層設置。引き込み道路をつ くった

○静か。日当りがよい

6 1973 日製勤務 東海村の知り合いが日製関係者

に土地分譲の声をかけていた 隣接の土地で畑を耕作

7 1973 茨城県大子町 不動産業者から購入。広いとこ ろに出たかった

○病院,学校が近い。子育てにい い。高齢者も安心して住める。緑が 多い。●家の前に高木が日照を遮断 する

8 1974 日立市

以前栗林。子どもが小さいころ山菜 をとった,20年前から草が茂り入れ ない。2006年,道路拡幅

○山桜がきれい。●道路拡幅により 住宅建設がすすむのではと危惧

9 1976 日製給与住宅

親が1967年から村内船場区に居 住。現在の土地を親が購入,分 けてもらった

周辺に日製社員11世帯が居住

○良い環境。店へ行きやすく生活は しやすい,●子どもの通学は物騒 だった。車がないと不便

10 1976 日立市 1971年に購入。建てるまでは畑

をしていた。 最初は原子力があり敬遠

11 1977 日製給与住宅

団地は嫌だった。地価が安い,

水戸・日立に近い。東海村が ブームだった

最近,道路整備が進んだ 周辺では休耕地はない。●近隣に奇 抜な色の新築住宅が建った

12 1980 給与住宅 義理の姉がこの土地(山林)を 所有し,譲渡を受けた

○:積極的評価,●:消極的評価

(9)

族世帯」と称することとする。

高齢定住世帯の世帯主はいずれも退職していて,子どもは巣立っている。市街化調整区域に来住 した理由は土地の広さや地価の安さである(表8)。従前住居ないし住所は,1世帯を除く11世帯 が,日立市かまたは日立製作所の給与住宅団地であった。計画団地は従前住宅の給与住宅団地とよ く似ているからと忌避され,農村地域の個別的な開発が良かったという回答に示されるように,自 然に囲まれた,団地ではない環境が居住地選択理由のひとつになったことが推察された。

高齢定住世帯は,既存集落周辺の平地林を購入した人が多く,住宅建設に際して山林を拓き,私 道や井戸,排水設備をつけ,常会(現自治会)をつくるなどして,基本的な生活基盤をつくること から始めている。農業を身近に育ってきた人が多い世代らしく,土地購入後,住宅建設までの間,

土地を畑として耕したり,退職後,自宅庭や隣接空地を畑にしている世帯もある。生活基盤づくり と長い居住歴をとおして,新住民間のつながりをつくり,地元農家ともつながりをつくってきたこ とが窺える。多くの世帯は,こうした居住歴を背景に現居住地を静かで住み良い環境だと評価して いる。近年,道路が整備されたり,近隣で開発が進行しているところでは,現状の環境が悪化する のではないかという危惧を抱いているという声が聞かれた。

6. 若い来住核家族世帯の特性と農村居住の評価

若い核家族世帯の世帯主年齢は40代が大半をしめ,職業は 会社員が70.2%,農業は1世帯のみで ある(表9)。世帯類型では2世代世帯が80.9%,末子は就学中と就学前が大半である。従前住宅 は賃貸住宅が76.6%で,市街化調整区域に注文住宅(84.1%)を建てている(表10,11)。

従前住所は,「現住所と同じ大字内」と「隣接の大字」(以下,近接域)が16例(34.0%)で,残る 31例(66.0%)が東海村のその他の地域や茨城県内外(以下,他地域)からの来住である。近接域 からの来住世帯は,必ずしも地元出身ばかりではない。16例中10例は他地域からの来住世帯であ る。他地域からの31例に,近接域からの来住かつ他地域出身の10例を加えると41/47例となり,市街 化調整区域への来住世帯の87.2%は他地域出身となる。

従前住居は先にみたように賃貸住宅が多いが,なかでも給与住宅は36.2%と大変高い。周辺に

表9 若い核家族世帯の職業と世帯類型

会社員 公務員工業その自営(商

他)

自営(農

林漁業) パート 無職 2世代 世帯

夫婦 のみ

単独 世帯

3世代 世帯

実数 33 3 3 1 1 4 38 6 2 1

構成比(%) 70.2 6.4 6.4 2.1 2.1 8.5 80.9 12.8 4.3 2.1

世帯主の職業 世帯類型

表10 若い核家族世帯の来住前の住所と住宅

現住所 と同じ 大字

隣接の 大字

東海村 内(左記 以外)

茨城県 内(東海 村外)

茨城

県外 持家 給与 住宅

民営 賃貸 住宅

公営 住宅

実数 9 7 11 17 3 9 17 15 4

構成比(%) 19.1 14.9 23.4 36.2 6.4 19.1 36.2 31.9 8.5

その他,不明分除く

前住居の所得形態 前住居

(10)

は,日製や原子力関連事業所の給与住宅団地など村内外に多数立地する給与住宅団地からの来住と みられる。

若い核家族世帯の居住地決定理由は,「敷地や住宅の広さ確保」(48.9%)と「土地の安さ」

(42.6%)が多く,この点では高齢定住世帯と違いはない(表12)。「田園環境での暮らし」や

「田園環境での子育て」は主要な要素ではなかった。地価の安さや敷地の広さを主な理由にして来 住しており,農村環境や農村居住に対する積極的な理由や意味づけはごくわずかしかない。

若い核家族世帯の現居住地評価はかならずしも良くない。「満足」はわずか16.3%である。「ま あまあ満足」を加えると93.0%に達するが,住環境要素個別でみていくと,「道路整備」や「日常 の買い物のしやすさ」に対する満足度(「満足」と「まあまあ満足」)は高くない(それぞれ 48.7%,55.5%)。農村の居住地では,従前居住地の都市環境に比べると当然ながら都市的施設や生 活サービスへのアクセスはよくない。この点で厳しく評価されたとみられる。

農村居住に求めるものをみると,第一位に「農家と転入者の交流施設や仕組み」をあげている

(60.0%)(表13)。農家との交流を求める世帯が多いことがわかるが,その背景要因として,居 住域や地域組織が農家と分けられ,交流が少ないといった事情をあげることができよう。第二位は

「農地付き住宅」16例(45.7%)である。農村居住を基盤にしたライフスタイルへの指向性が窺わ れる。しかし「農業の指導」や「体験農園」といった,農業へのより深い関わりとなると関心は薄 い。この点が,若い核家族世帯の特質といえる。

以上,農村地域に来住した都市住民として,1960年代後半から70年代にかけて来住した高齢定住 者と最近来住した若い核家族世帯という,2つの典型グループを取り出し,居住地へのかかわりや 評価をみた。いずれのグループも地価の安さによって現居住地を選んでいるが,その後の居住過程

表12 若い核家族世帯の居住地決定理由 実数 構成比(%) 敷地や住宅の広さ確保 23 48.9

地価の安さ 20 42.6

学区が同じ 12 25.5

通勤の利便性 11 23.4

親族からの土地相続・贈与 7 14.9

田園環境の暮らし 7 14.9

親族との隣居・近居 1 2.1

田園環境での子育て 1 2.1

田園オフィスの実現 1 2.1

合計 47 100.0

複数回答

表13 農村居住地に求めるもの 実数 構成比(%)

農家との交流 21 60

農地付き住宅 16 45.7

定期的朝市 6 17.1

農業の指導 6 17.1

体験農園 4 11.4

その他 2 5.7

複数回答

表11 若い核家族世帯の住宅概要

持家 民営

賃貸

注文

住宅 贈与 建売

購入

1995年以 前

1996~

2000年

2001年以 降

実数 44 1 37 3 2 2 31 13

構成比(%) 93.6 2.1 84.1 6.8 4.5 4.3 66.0 27.7 その他,不明分除く

現住居の所有形態 住宅の取得方法 入居時期

(11)

や住環境評価などの違いは明らかであった。高齢定住世帯は,来住時には地元農家と交渉しなが ら,自ら宅地を整備したり新たな地域組織づくりにかかわるなど,農村地域における都市住民の居 住基盤を築きあげてきた。また,その居住過程では,畑作をするなど農村居住らしいスタイルもみ られた。他方,若い核家族世帯は大半が都市的な環境の中で生育した人で占められるとみられ,そ の居住地評価からも都市的なライフスタイル指向の強さが窺えた。その一方で,今後の要望を聞く と,畑作に関心を寄せる世帯や地元へのつながりを求める世帯が少なからずあるということも確認 できた。

7. まとめ

地域による農村景観の維持保全の方策を検討するために,農家の営農状況と今後の動向を確認 し,来住都市住民の農村居住に対する評価や地域へのかかわりについて分析した。明らかになった ことを以下にまとめ若干の考察をする。

① 須和間区では,農家は居住世帯の半数に足らず,しかも自給的農家が多数派となっている。耕 作継続意向は6割程度で,村の重要農業政策のひとつである農地流動化へ意欲を示す農家はわずか であった。自給的農家を中心に農地や平地林の売却などを検討する農家も見いだされた。全体とし て農村環境は大きな変化過程のなかにあり,今後も景観変化がすすむことが予想される。

② 1970年前後に来住した高齢定住世帯は,自ら宅地整備や新たな地域組織づくりにかかわるな ど,農村地域における都市住民の居住基盤づくりをしてきた。畑作をするなど農村になじんだ居住 スタイルもみられ,居住地評価も高い。

③ 近年とくに来住が増えその中心である若い核家族世帯は,都市的なライフスタイルを指向し,

現居住地に対する積極的評価はごくわずかであった。その一方で,畑作に関心を寄せ,地元へのつ ながりをつくりたいという要望が少なからずあった。

地域農業が縮小する状況下,居住者の間には,地域の発展には来住者による人口増加が必要とい う考えや期待が根強くあるが,こうした考えに無理があることは今日では明白である。今後は,農 地を宅地に転換して農村を市街化するような従来のやり方ではなく,地域農業を支え守ることで自 然環境と農村景観の急速な悪化をくい止め,それによって農村居住の質を維持するという考えにも とづく新たな方策が必要である。

須和間区の農村社会を構成する居住世帯をみると,農家の多くは今後,超高齢化へすすんでい く。他方,来住の高齢定住者は退職後の農村居住を享受し,若い核家族世帯は農村における自身の 居場所やかかわり方を探している。農家が抱える厳しい状況を来住世帯が理解し,それぞれの農村 へのかかわりを地域支援策へつなげて検討することは,農家と来住世帯の共生につながる。高齢定 住世帯や子育て世帯は,農村に少ない公園に替わり樹林地の利用と共同管理をする。畑作や家庭菜 園に興味をもつ世帯は,遊休農地を共同利用するなどが考えられる。混住を生かした集団的な環境 管理のしくみづくりが農村地域に求められている。

引用文献

1)乾 康代 . 2007. 「都市近郊農村地域における居住者のまとまり形成と地域環境管理に向けた課題に

(12)

関する研究 — 茨城県東海村船場区を対象にして — 」『都市計画論文集』 42-3 , pp. 817-822.

2)乾 康代・寺内美紀子・伊藤勝紀 . 2008. 「都市近郊農村における世帯類型別にみた住宅建設動向と 住宅外観の特質 — 茨城県東海村須和間区を事例にして — 」『日本建築学会計画系論文集』 632, pp.

2117-2124.

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