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イギリスにおける近時の民事法律扶助および 訴訟費用の改正

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(1)

二五一イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一)

イギリスにおける近時の民事法律扶助および 訴訟費用の改正

我   妻     学

一  はじめに 二  近時の民事法律扶助および訴訟費用をめぐる問題 三  民事法律扶助および訴訟費用に関する改正動向 四  二〇一二年法律扶助、犯罪者の量刑および処罰に関する法律 五  おわりに

一   はじめに

第二次世界大戦後、イングランドおよびウエールズ(以下、「イギリス」と略記する)において、近代的な民事

法律扶助制度の原点となる一九四九年法律扶助および助言法(

The Legal Aid, and Advice Act 1949

、以下、「四九年 法」と略記する)が制定されてから六〇年あまりの歳月が経ってい )(

(る。民事法律扶助は、従来の弁護士による無償

(2)

二五二 の法的サービスといった慈善的な性 )(

(格から国庫負担による訴訟代理および法律相談などの法的サービスを組織的に

提供する社会保障的な性格として再構築されている。第二次世界大戦後の社会福祉国家思想は、国民から支持され、

国民健康保険制度が整備される原動力にもなってい )(

(る。

資力が十分にないものに対して裁判を受ける権利を実質的に保障するために民事法律扶助の対象は、裁判手続を

中心に発展している。民事法律扶助の担い手の中心は弁護士であり、イギリスの民事法律扶助の対象は、もともと

離婚事件および交通事故などの人身被害事件が中心となっており、我が国では、自己破産および離婚事件が中心と

なっている。

民事法律扶助の対象は、伝統的な法律相談および訴訟代理だけではなく、情報提供および裁判外紛争解決手続

(ADR)に拡充されている。法律扶助の多様化にともない、その担い手も従来の弁護士による法律相談および訴

訟代理だけではなく、市民相談所などの法律家以外の者の役割も重要になっている。

リーマンショック後の長引く不況の下で、失業者の増加、住宅ローンの延滞による住宅の差押えなどによって民

事法律扶助を必要とする者は増加傾向にある。しかし、ギリシャの経済危機の波及により国家財政の逼迫からイギ

リ )(

(スをはじめとするヨーロッパの国々では、法律扶助の予算が削減される事 )(

(態に直面し、法律扶助の更なる効率化

が求められてい )(

(る。

イギリスにおける二〇一〇年の総選挙により、七〇年ぶりに誕生した保守党と自由民主党の連立内閣は、経済危

機のため、国の財政支出を大幅に削減する政策をとっている。このため、法律扶助に関しても、二〇一二年五月に

成立した法律扶助、犯罪者の量刑および処罰に関する法律 )(

(法

  (

Legal Aid Sentencing and Punishment of Offenders

Act2012, Ch10 (LASPO).

以下では、「二〇一二年法」と略記する)は、法律扶助の対象を大幅に制限するとともに、

(3)

二五三イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一) 法律扶助の運営主体に関しても、独立行政法人である法律サービス委員会から司法省の一部門である法律扶助局が担うことにするなど運営組織も大幅に変更されている。

二〇一二年法により、法律扶助予算を大幅に削減しても、なおイギリスにおける法律扶助予算が他のEU諸国な

どと比較しても多 )(

(いからである。イギリスの法律扶助予算が多いのは、資力要件などが他の国よりも緩和されてい

るというよりは、離婚事件数が他の国よりも多いこ )(

(と、起訴率が高いため、裁判件数が他の国よりも多いこ )10

(とが要

因であるとされている。さらに法律扶助業務の質を維持するためには、一定のコストが必要不可欠であるとも指摘

されてい )11

(る。

本論文では、イギリスにおける近時の法律扶助の改正および関連する訴訟費用の問題を紹介する。司法へのアク

セスに関して、なぜ政府が国庫から財源を支出すべきか、法律扶助の対象をどのように定めるか、という根源的な

問題が再び問題となっているからである。

( 論文集)下巻﹄(二〇〇八)二五五頁など参照。

1

) 法律扶助の沿革に関しては、我妻学「民事法律扶助の意義と機能」﹃民事司法の法理と政策(小島武司先生古稀祝賀記念

S. Hynes, at 5 (2012). Austerity Justice 2

) 

Resourcing Civil Justice (A. Paterson and T . Goriely (eds.) at 215 - 216 (1996). T. Goriely , Rushcliffe Fifty Y ears On:The Changing Role of Civil Legal Aid W ithin the W elfare State , in A Reader on 3

) 

Aid Board, 2011 - 2012 at 7(2012) Annual Report

も参照。

The Scottish legal

ー﹃法律扶助の世界動向

リーマンショック後の各国の多様な試み

﹄(二〇一二)一二頁・三九頁)。 制されており、イギリスのように刑事法律扶助予算の高騰の問題が顕在化していないとされている(日本司法支援センタ

4

) スコットランドでは、刑事法律扶助に関して弁護士報酬の固定化、刑事手続の効率化によって、刑事法律扶助予算が抑

(4)

二五四

Address by Sir Callaghan at the 9th Legal Services Research Centre International Conference on 12 September in 2012

)。

W elcome

政府予算の平均削減率が一九%であるのと比較して、法律扶助予算に対しては、なおある程度考慮されている(

of Legal Aid in England and W ales at 15(2010)

)。しかし、同年度の法律扶助予算は、一七%の削減にとどめられ、他の

5 Proposals for the reform

) イギリスでは、二〇一四年度の法律扶助予算の二三%を削減することを当初提案されている(

( 体の独立性)を検討している。 が直面する諸問題(多様化する訴訟費用の調達手段と法律扶助、裁判外紛争解決手続と法律扶助および法律扶助の運営主

6

) 我妻学「民事法律扶助の国際的潮流」総合法律支援論叢第二号(二〇一三)一頁では、緊縮財政のもとで民事法律扶助

31CJQ413 (2012)

、「普遍的制度からの大転換

イギリス民事法律扶助の後退

」司法アクセス・レビュー第

S. Sime, Legal Aid Sentencing and Punishment of Offenders Act2012 ,

に関して規定している。二〇一二年法に関しては、

7

) 二〇一二年法は、一四五条の規定および二七の附則から構成され、法律扶助、訴訟費用の他、刑事罰および刑務所など

( 六九号二一九頁(二〇一一)など参照。 二)七頁など参照。なお、連立政権下における刑事政策に関しては、守山正「イギリス新政権の刑罰政策」犯罪と非行一

1

号(二〇一

tice (2009). R. Bowles and A Perry , , Ministry of Jus - 8 International Comparison of public funded legal Services and Justice System

) 

Id at 31. 9

) 

10 Id at 32.

) 

11 W ritten evidence from Professor Richard Moorhead (AJ 20).

) 

二   近時の民事法律扶助および訴訟費用をめぐる問題

  1

  多様化する訴訟費用の調達手段

訴訟を提起する際には、弁護士費用を含めた訴訟費用を誰が負担すべきか、が問題とな )12

(る。当事者本人が訴訟費

(5)

二五五イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一) 用を自己負担することは現実的には困難である。したがって、第三者から訴訟費用を調達すことは、裁判を受ける権利を実質的に保障する上で重要な役割を果たしている。第三者から訴訟費用を調達することは、敗訴リスクを第三者と共有することによって、当事者が敗訴した場合に、訴訟費用を負担するリスクを軽減する役割も果たしている。特にイギリスでは、弁護士費用を含めて訴訟費用に関して敗訴者負担主義を原則として採用しているため、敗訴した場合の当事者の訴訟費用のリスクは我が国よりも大きい。ただし、相手方から和解(

settlement

)の申出が

あったにも関わらず、それを拒絶したが、結果的に相手方からの和解の申出額よりも判決の認容額が少ない場合に

は、勝訴しても弁護士費用を含めて訴訟費用を敗訴当事者に請求できない(一九九八年民事訴訟法規則(

Civil Pro -

cedure Rules 1998

以下、「民訴規則」と略記する)第三六 )11

(章)。和解の申出は、各当事者が訴訟費用を相手方に転嫁

する訴訟戦術として行う側面が強く、我が国における訴訟上の和解のように裁判所による当事者双方の合意形成を

図ろうとするものではない。

当事者の資力や社会的地位とは無関係に裁判を受ける権利を実質的に保障するために、イギリスでは民事法律扶

助が重要な役割を果たしている。民事法律扶助を受給するには、一定の資力要件および勝訴の見込みが十分にあり、

訴訟を追行するのに合理性が認められなければならない(メリット・テスト)。敗訴した場合にも法律扶助の受給

者は、原則として勝訴当事者に対して訴訟費用を負担しない。

法律扶助の他にも、労働組合の組合員であれば、訴訟費用を組合が負担する場合、権利保護保険に加入している

場合、弁護士との間で成功報酬を締結する場合あるいは弁護士がプロボノで行い、依頼人に弁護士報酬を請求しな

い場合および第三者が訴訟費用を提供する場合(

Third Party Litigation F

)14

unding

)などが考えられ )11

(る。

権利保護保険は、自動車の保有者、自営業者などに対する法的紛争に関し、訴訟費用などを提供するものである。

(6)

二五六

ドイツにおける権利保護保険が普及している要因の一つとして、民事法律扶助事件の場合、勝訴しても敗訴者から

償還しうる訴訟費用および弁護士報酬が法律上抑制されている(ドイツ民事訴訟法九一条一項・一二三条、弁護士

報酬法四九条)ことから弁護士は民事法律扶助よりも権利保護保険を好む傾向にあるとされてい )11

(る。

イギリスでは、あらかじめ自動車保険あるいは火災保険などに弁護士費用の補償特約を組み込むことによって、

弁護士費用などの訴訟費用のほか、敗訴した場合に相手方の訴訟費用をカバーする事前保険(

before the event

)だ けではなく、紛争後に成功報酬と事後保険(

after the event

)を組み合わせることも普及してい )11

(る。

 

2

成功報酬と訴訟費用保険をめぐる問題 成功報酬は、アメリカにおける全面成功報酬(

Contingent Fee

)のように勝訴した場合に認容された賠償額の一

定割合を弁護士報酬として当事者に請求するが、敗訴した場合には弁護士報酬を請求しない場合、あるいはイギリ

スにおける条件付成功報酬(

Conditional Fee Arrangements

)のように勝訴した場合に通常の弁護士報酬(時間給に

より算定するのが一般的である)を基準として最大一〇〇%まで上乗せを認めるが、敗訴した場合には弁護士報酬

を請求しないあるいは報酬を減額する場合に大別され )18

(る。

イギリスでは、当事者と弁護士が成功報酬を締結することにより、弁護士が訴訟の結果に対して経済的利害関係

が直接的に生ずるために、もともと成功報酬を禁止する要因となっていた。敗訴の危険を回避するために和解に応

じたりして、依頼人の利益と相反する危険があるとともに、弁護士が自己に有利な結果を得ようとして、証拠の改

ざん・隠蔽をすること、あるいは裁判所に対して誠実性を欠く行為をするおそれがあるからであ )19

(る。

(7)

二五七イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一) 一九九〇年裁判所および法律サービスに関する法律五八条に基づいて、一九九五年から条件付成功報酬が交通事故などの人身被害事件、破産事件およびヨーロッパ人権裁判所事件の三つの領域のみで認められていた。一九九九年司法へのアクセス法(

Access to Justice Act 1999 (1999 Ch. 22)

、以下、「九九年法」と略記する)では、法律扶助 に代替するものとして医療訴訟を除外した人身被害事件全体に対象が拡充されてい )20

(る。法律扶助予算を人身被害事

件から雇用、住宅問題および債務などの社会福祉分野に組み替えることを目的としている。

イギリスでは、敗訴すれば、敗訴当事者は相手方の弁護士費用を含めて訴訟費用を負担する危険があるため、条

件付成功報酬を締結する際に事後保険に加入し、訴訟の勝敗にかかわらず当事者が訴訟費用を負担しないようにす

るのが一般的である。事後保険料は当事者ないし弁護士が負担している。

一九八〇年代まで、中間所得層の大部分は民事法律扶助の受給資格を有していたとされるが、法律扶助予算が次

第に増大したため、受給資格が厳格化され、一九九〇年代半ばから、民事法律扶助の受給者は貧困層に限定され、

中間所得層は民事法律扶助の受給資格を満たさなくなってい )21

(る。そこで、中間所得層の司法へのアクセスを保障す

る手段として、従来の法律扶助から成功報酬を拡充する政策をとってい )22

(る。従来は、敗訴者からは通常の弁護士報

酬を償還できるが、成功報酬は勝訴当事者が負担していたのを九九年法は、通常の弁護士報酬だけではなく、成功

報酬および権利保護保険料を敗訴当事者に償還できるようにしている(同法二七条、二九条)。

民事法律扶助の代替手段が認められることを理由に法律扶助の受給資格を否定することは禁じられていたが、む

しろ条件付成功報酬の対象となる場合には医療訴訟のように提訴をするか否かの判断に時間と費用がかかる場合を

除いては、法律扶助の対象から原則として除外している。

事前保険の場合には、保険会社は予見可能性を重視し、勝訴の見込みのない訴訟を排除するとともに、弁護士費

(8)

二五八

用をコントロールして、訴訟費用を抑制しようとする。これに対して、事後保険と条件付成功報酬が組み合わさる

と、弁護士は敗訴し、事後保険でカバーされていない場合であっても、依頼人に弁護士報酬を請求せず、勝訴すれ

ば、敗訴者から償還するため、原告は敗訴した場合のリスクを実質上負わな )21

(い。このため、当事者本人は、弁護士

の訴訟活動に関心を持たなくなり、弁護士報酬は一般に時間給で算定されるので、原告の弁護士は過剰な訴訟活動

を行い、敗訴被告により多くの成功報酬を請求し、敗訴被告の保険会社に訴訟費用を負担させる傾向にあ )24

(る。アメ

リカにおける全面成功報酬は、認容された賠償額に基づいて算定されるため、請求金額が合理的なものであるかは

別として、弁護士費用は均衡のとれたものとなる。これに対して、イギリスにおける条件付成功報酬は、時間給で

算定するため、弁護士費用を高騰させ、結果的に請求金額と均衡を失する訴訟費用を発生させる要因を与えるおそ

れがあ )21

(る。

事後保険料は、仲介手数料、敗訴した場合に負担するコストおよび必要経費などから構成されるが、事前保険料

よりも高 )21

(額になっており、当事者間で保険料および成功報酬額の妥当性をめぐって、多数の訴訟が提起される要因

となってい )21

(る。

相手方は、訴訟費用負担を回避するため、不当な訴訟を提起された場合でも、和解に応ずる傾向にあるとされて

いる。成功報酬が導入された当初は敗訴者に償還できないため、成功報酬および保険料に関して、当事者と弁護士間で

問題となったが、九九年法が敗訴者への償還を認めることにより、相手方保険会社と当事者との間で、訴訟費用を

めぐって紛争が激化するとは当初、誰も想定できなかったとされてい )28

(る。

(9)

二五九イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一)

 

3

ジャクソン報告書

1

) ジャクソン卿の報告書 二〇〇八年一一月三日に控訴院裁判官であるジャクソン卿は、クラーク記録長 )29

(官から訴訟費用に関する問題点を

調査し、均衡のとれた訴訟費 )10

(用で司法へのアクセスを促進するための改正提言をするように命じられ、中間報告 )11

(書

が二〇〇九年に公表され、最終報告 )12

(書が二〇一〇年にそれぞれ公刊されている。

同報告書では、訴訟費用全般に関連する広範な改正提言がなされているが、本論文では、事後保険(最終報告書

第九章)、条件付成功報酬(同第一〇章)および全面成功報酬(同第一二章)に関する問題点を取り上げる。

民訴規則が一九九九年四月二六日に施行されてから、一〇年がたっているが、裁判官の事件管理、訴訟費用額な

どに応じた事件審理および和解の促進などによって、迅速に事件処理が行われている。一九九六年に公表されたウ

ルフ・レポー )11

(トで指摘されていた訴訟遅延に対して、適切な事件処理がなされているが、訴訟費用に関しては、民

訴規則が施行されてからも高騰している。

たしかに、迅速な事件処理のために、訴訟提起前段階から当事者は事前に準備をする必要性があり、事件進行の

ための準備も以前より必要となっている。しかし、訴訟費用の高騰の主たる原因は、九九年法により、法律扶助に

代替する手段として、条件付成功報酬の対象を拡充したこと、成功報酬を促進するために、敗訴当時者に対して、

成功報酬および保険料を償還することを認めたことが一因であると指摘している(中間報告書一頁、同二七頁、二

九頁)。

(10)

二六〇

ジャクソン卿は、事後保険料を敗訴者に負担させることは不公平であることから九九年法の施行前と同じように

事後保険料を敗訴者から償還すべきではなく、依頼人が負担すべきであると提言している。ただし、人身被害事件

な )14

(どに関しては、敗訴者負担のリスクを回避するために、法律扶助の受給者と同じように片面的敗訴者負担とすべ

きであるとしている(最終報告書八八頁、九三頁

para 1 .1

)。当事者に資力がある場合、和解の申出がなされた場

合には、例外的に保険料を負担する余地を認めている。

条件付成功報酬に関しても、事件を受任する弁護士および保険会社が存在すれば、条件付成功報酬を締結できる

こと、事後保険と条件付成功報酬を組み合わせることによって、訴訟の勝敗とは無関係に、原告は訴訟費用を負担

するリスクを実際上は負わないことから訴訟に関心を示さないこと、敗訴した場合に相手方が負担する訴訟費用が

高騰するおそれがあることなどから事後保険料と同様に敗訴当事者の保険会社に転嫁することは適切ではないとし

て、敗訴者から償還すべきではなく、依頼人が負担すべきであると提言している(最終報告書一一二頁、一一六頁

para 1 .1.

(ⅰ))。

敗訴者から、事後保険料および成功報酬を依頼人が負担する代わりに、第一に、財産的損害に関して一〇%の引

き上げを認めること、第二に人身被害事件の成功報酬について、逸出利益などを除外した賠償額の二五%を上限と

すること、第三に原告が和解の申出をしたが、被告が応ぜずにトライアルで、被告に認容された金額が原告の申出

額を超えなかった場合に被告が負担する金額を認容額の一〇%に引き上げることを認めている(最終報告書一一六

Para 1 .1.

(ⅱ))。勝訴しても依頼人が弁護士費用を負担するようになれば、成功報酬も抑制すると想定している。

人身被害事件に関しては、大部分の事件において原告が勝訴していること、被告は、原告よりも資力が多い国や

企業の場合が多いことから、原告が敗訴した場合に訴訟費用を全て負担させることは、過大な負担となり、司法へ

(11)

二六一イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一) のアクセスを疎外するおそれがあるので、法律扶助の受給者と同様に片面的敗訴者負担を提案している。敗訴したリスクを回避する手段として、事後保険が活用されているが、片面的敗訴者負担によって代替する方がより安価に運用できるとしている。

そこで、人身被害事件に関して、片面的な訴訟費用負担を導入し、勝訴した場合に訴訟費用を償還できるのは原

告のみにすることを提言している(最終報告書一九三頁

para 1 .1.

)。ただし、原告が悪意で訴訟を提起した場合に

は、例外的に被告が勝訴した場合にも訴訟費用の回収を認めている。

当事者が合理的な和解の申出をした場合に、和解をより促進するために、和解に応じずに訴訟を続行し、勝訴判

決を得た場合に相手方が申し出た額よりも低い額しか認容されなかった場合には、現行のサンクションを修正する

ことを提案している。具体的には、原告が和解の申出をした場合には、認容額の一〇%の上乗せを認め(最終報告

書四二七頁

para 1 .1

)、被告が和解の申出をした場合には、裁判所は、被告からの和解の申出をした後の原告の訴

訟追行が合理的なものであるか、および原告に負担させる費用が合理的なものであるかを判断して、原告に負担さ

せる額を算定する(民訴規則三六・一四(二))。条件付成功報酬を締結して、勝訴した場合に成功報酬を敗訴者か

ら償還できないことから、原告が合理的な和解の申出を早期に行うことも促進される(最終報告書四二六頁)。

全面成功報酬を民事裁判に関して締結することは違法であるが、当事者対抗主義をとらない審判所では適法であ

る(中間報告書一九一頁)。これに対して、ソリシタかバリスタかを問わず、当事者の資金調達の手段を多様化す

るために全面成功報酬を修正して許容することを提言している(最終報告書一三一頁)。成功報酬の上限は、条件

付成功報酬と同様に賠償額の二五%とする。ただし、敗訴した被告に償還できるのは、勝訴当事者の通常の報酬額

を基準(オンタリオ州のモデル)とし、アメリカの全面成功報酬のように損害賠償額の一定割合を認めるわけでは

(12)

二六二

ない。全面成功報酬を導入する前提として、依頼人に対して、訴訟費用、敗訴した場合の費用負担のリスクおよび調達

しうる訴訟費用の手段などに関して、明確で平易な情報を提供し、中立の法律家による法律相談を提供する必要が

あることを指摘している(最終報告書一三一頁~一三三頁

para 1 .1

)。

2

) ジャクソン卿の提言に対する評価

ジャクソン卿の提言に対しては、事件類型に応じて異なる訴訟費用を認めているため、かえって、訴訟費用が一

義的に明確に定まらず、当事者間で訴訟費用をめぐる紛争をもたらす危険性があること、裁判所は、条件付成功報

酬をめぐって、成功報酬額および事後保険をめぐる紛争を適切に処理したとは評価できないにも関わらず、ジャク

ソン卿の提言のように訴訟費用を裁判所がコントロールする考え方は、かえって効率的ではなく、実際にも機能し

ないのではないかと指摘されている。

たしかに、ジャクソン卿が提案しているように成功報酬および事後保険料を敗訴当事者から償還することを認め

ないことは適切である。しかし、人身被害事件で、片面的敗訴者負担を採用しても、弁護士報酬は時間給で算定さ

れるので、弁護士費用の抑制にはつながらない。

事後保険料および成功報酬を敗訴当時者から償還すること自体に合理性がないと判断するなら、代替措置を論ず

る必要はないこと、片面的敗訴者負担を認めても被告が原告に対して、和解の申出を行うことにより、原告が勝訴

しても認容額が和解の申出額を下回れば、訴訟費用を敗訴被告が原告に請求する余地が認められている。

提訴が不当であるなど原告の訴訟活動が合理的であると認められない場合には、裁判所に裁量で敗訴者に訴訟費

(13)

二六三イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一) 用の負担を命ずる余地を認めているので、訴訟費用の合理性に関して、当事者間の訴訟追行が合理的か否か、当事者の資力などをめぐって、あらたに紛争が生じうるとの批判がなされてい )11

(る。

これらの批判に対して、政 )11

(府は、成功報酬および保険料が訴訟費用の高騰の要因となっていることから、成功報

酬および保険料を敗訴者に償還できないこと(

2.1

2.2

)、代替措置として、財産的損害に関して一〇%の引き上 げを認めること(

2. 1

)、和解の申出を修正すること(

2.4

)、成報報酬を損害賠償額の二五%に限定すること、片面 的敗訴者負担を導入すること(

2. 1

)、賠償額を基準とする成功報酬(

damages-based agreemen t

)11

s

)の導入(

2.9

)な

ど、ジャクソン卿の報告書の勧告を基本的に実現するコンサルテーション・ペーパーを公表している。

これらの政府提案に対しては、六〇〇以上の回答があったとされてい )18

(る。敗訴者から成功報酬の償還を認めない

政府提案に対して、司法へのアクセスが疎外される、として反対する回答の方が多い(総数五五六人中三九六名

(七一%))。反対しているのは、大部分の法律事務所および事後保険を扱っている保険会社であるとされている

para 42

)。

敗訴者から事後保険料の償還を認めない政府提案に対しても、反対する回答の方が多い(総数四九六人中三四一

人)。反対しているのは、原告側の保険会社であり、賛成しているのは被告側の保険会社、マスコミなどの利害関

係人であるとされている(

para 8 1

)。事後保険の償還を認めないと事後保険料に代わる必要経費の負担を当事者が

負わなければならないが、実際には費用を負担することは困難なため、訴訟を提起できず、司法へのアクセスを疎

外すると批判している(

para 89

)。

代替措置として、財産的損害に関して一〇%の引き上げを認めることには、賛成する回答の方が多い(総数四四

一人中二八〇人(六三%))。賛成している回答においても、一般損害に関する賠償額が低いのでより高くすべきで

(14)

二六四 あるとしている。賠償額は定期的に審査すべきであると指摘している(

paras 129-1 10

)。

片面的敗訴者負担の導入に関して、反対する回答の方が多い(総数四一二人中二六三人(六四%))。原告が敗訴

した場合に例外的に訴訟費用を負担する基準(原告の不適切な訴訟活動、原告の資力など)が不明確だからである

paras 1 11 -1 11

)。

賠償額を基準とする成功報酬の導入に関しては、反対する回答が若干多かった(総数三五三人中五二%が反対し

ている)。依頼人と弁護士の利害対立を懸念している(

paras 221-224

)。

人身被害事件に関して、成功報酬として、賠償額に応じて上限を定めること、上限として二五パーセントを設定

することにも意見が分かれている。上限を定めることには、賛成する意見の割合が比較的高い(総数四〇六人中二

二六人(五六%))。増減を設けることに賛成する意見の内、上限として、賠償額の二五%を支持する見解が最も多

かったようである(

paras 1 9-8 1

)。

このように政府提案に対する回答の多数が、反対していても、予定どおり、成功報酬および事後保険を敗訴者に

償還できないように立法化を進めることを明らかにしている(

paras 1 -1 1

)。

 

4

裁判外紛争解決手続と民事法律扶助

1

) 裁判外紛争解決手続

一九七〇年代は、権利救済の観点から裁判が重視されてきたが、現在では、むしろ紛争の迅速で安価な解決とい

う観点からメディエーショ )19

(ンなどの裁判外紛争解決手続による解決が重視されている。裁判は弁護士を中心に手続

(15)

二六五イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一) が進められるのに対して、裁判外紛争解決手続は当事者本人が手続に直接参加すること、当事者間の合意形成過程の重要性、当事者の必要性や関心に応じて実際の手続を進めること、謝罪など金銭賠償以外の柔軟な解決が図れることなどから裁判手続と比較して、当事者の満足度が一般に高いとされているからであ )40

(る。

イギリスにおける近時の民事司法制度改革では、司法へのアクセスを促進するために裁判手続の迅速化、訴訟費

用の抑制とともに、メディエーションなどの裁判外紛争解決手続を積極的に奨励する政策がとられてい )41

(る。

EU諸国内においても国際間の紛争における司法へのアクセスを促進するものとして、民事および商事事件に関

して裁判外紛争解決手続の積極的な活用に関する指令が出されてい )42

(る。

司法へのアクセスが十分ではないと批判されながら、無駄な訴訟が増加していると指摘されてお )41

(り、一見すると

互いに矛盾する要請に応えるものとして、家事事件だけではなく、民事・商事事件においても裁判からメディエー

ションの積極的活用に政策が転換してい )44

(る。

イギリスにおける民訴規則は、裁判所が裁判外紛争解決手続を促進するために、訴訟手続を休止することができ

る(一・四条(

2

))。提訴前のプロトコールにおいても裁判外紛争解決手続の利用が奨励されてい 41)

(る。

メディエーションを促進するために、二〇〇三年に民事メディエーション評議会(

Civil Mediation Council

)が設

立され、メディエーションの質を向上し、メディエーションの信頼を高めるためにメディエーションを提供してい

る団体に関して、認証評価を行っている。二〇〇五年に当事者および代理人のために、メディエーションの利用相

談を設けてい )41

(る。当事者が合理的な根拠なしに相手方からの和解や裁判外紛争解決手続の利用を拒絶し、訴訟を続

行し、勝訴した場合であっても、敗訴当事者に訴訟費用を転嫁しないなどの制裁を課すことができる(民事訴訟規

則二六・四条、四四条)。裁判外紛争解決手続の利用を拒絶した当事者が勝訴した場合に、合理性が認められるか

(16)

二六六 否かをめぐって裁判上争われてい )41

(る。

イギリスのように費用によるサンクションを課すことは、結果的にメディエーションによる当事者の合意形成を

阻害する恐れがあ )48

(る。

2

) 民事法律扶助と裁判外紛争解決手続

民事法律扶助の対象は、権利実現の観点から裁判手続を中心に発展してきた。しかし、近時の司法制度改革にお

ける裁判外紛争解決手続、特にメディエーションの積極的活用は民事法律扶助の対象の重点を裁判手続からメディ

エーションに移行させている。

イギリスの一九九六年家族法は、離婚手続に不合理に高い費用をかけない(同法一条

c

)ために、訴訟よりもカ

ウンセリングやメディエーションの利用を奨励しており、家庭事件のメディエーションは法律扶助の対象となって

い )49

(る。

この背景には、政府のメディエーションなどの積極政策だけではなく、法律扶助の予算が高騰し、費用を抑制す

ることが急務であることが挙げられる。

Genn

教授は、民事法律扶助予算の削減や民事裁判の負担軽減策として、メディエーションを奨励することは、

より容易で安価な方法としてメディエーションの促進をしているだけであり、メディエーションの質を向上させる

ことにもつながらないと批判されてい )10

(る。メディエーションは、あくまでも裁判手続を補完するものであり、本来

民事裁判手続の適正・効率化を図るべきであるのに、メディエーションの活用を強調し、民事法律扶助予算を削減

することは司法へのアクセスを拡充することにはならないと指摘されてい )11

(る。

(17)

二六七イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一)

 

5

法律扶助の運営主体の独立性

1

) はじめに

イギリスにおける法律扶助の運営主体の独立性の問題を論ずる前に、法律扶助の運営主体の変遷を概観する。

四九年法では、弁護士が提供する訴訟代理および法律相談は、国庫から支払われるが、法律扶助を運営する主体

は、弁護士の専門家としての独立性を維持するために、ソリシタの代表機関であるソリシタ協会が行ってい )12

(る。

サッチャー政権の下で成立した一九八八年法律扶助法は、法律扶助の運営主体として、独立行政法人である法律

扶助評議会(

Legal Aid Board

)を設け、法律扶助の運営主体と法的サービスの提供主体を分離するとともに、構成

員には法律家だけではなく、経済界からも登用している。サッチャー政権の下では、医療、教育などの公共部門に

おいても市場原理の導入が唱えられ、法律扶助の効率性と質の充実を図る必要性があったからである。法律扶助の

改革は専ら法律扶助の運営主体の独立性を高めることに主眼がおかれ、他の公共事業のように抜本的な改革を目指

していたわけではなかった。法律扶助の運営費や事務作業が増加し、ソリシタ協会だけでは法律扶助の運営を行う

ことは困難であり、第三者機関に委譲することに異を唱えることはもはやできなかったとされてい )11

(る。

2

) 九九年法

一九九七年の総選挙でブレア労働党政権が誕生し、法律扶助の抜本的改革が行われている。九九年法は、一定の

予算の枠内で民事法律扶助事業(特に弁護士による訴訟代理)および費用を政府がコントロールしている。従来は、

(18)

二六八

法律扶助評議会が年度予算を予測し、オープン・エンド制を採用し、予算不足が生ずるおそれがある場合には財務

省と交渉して対応していたとされ )14

(る。

九九年法は、地域のニーズと優先性に応じた質の高い法的サービスを事業計画に従って提供するという目標を掲

げ、法律扶助の運営組織および対象を抜本的に改革している。一連の改革は、学校、健康保険などの公的部門の効

率性と質の維持を重視する

new public management

の強い影響を受けている。法律扶助が機能不全に陥った最大の 原因は、弁護士の自己規律、専門家の職業意識が適切に機能しなかったという立場に基づいてい )11

(る。

法律サービス委員会(

Legal Services Commission

)が九九年法に基づいて、新たに設けられ、法律扶助評議会に

代わって、法律扶助の運営を行っている。法律サービス委員会は、一定の予算の枠内で、地域のニーズと優先性

に応じた質の高い法的サービスを提供することを目指している。法律サービス委員会は、各地方公共団体やコミュ

テイと協力して、地域および全国的な実施計画の立案、資金提供、実施計画の進捗状況および支出に関する年次

報告書を大法官に提出する。法律サービス委員会は、従来の民事・家事法律扶助を統合したコミュニテイ・リーガ

ルサービスおよび刑事法律扶助を統合した刑事弁護サービスの運営および予算について責任を負う。法律サービス

委員会は、大法官があらかじめ策定したコミュニテイ・リーガルサービスの年間予算および優先領域に従って、具

体的な予算配分を行う。ただし、二〇〇五年には、地域の法的サービスの策定は、予算不足を理由に廃止されて

い )11

(る。

二〇〇七年から司法省が、大法官に代わって、法律扶助の政策決定および資金提供の責任を負っている。法律サ

ービス委員会が個別具体的に法律扶助を認めるか否かを判断するに際して、司法省が干渉していると批判されて

い )11

(る

(19)

二六九イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一) アフガニスタンに駐留しているイギリス軍が捕虜を虐待されるおそれがあるにも関わらず、アフガニスタン国家保安局(NDS)に引き渡したことは、違法であるとして、平和活動家が司法審査を提起した際に、司法審査を提起している事件に対する法律扶助を認めることは正当であるかを再考するように政府から法律サービス委員会に書簡を送付しているが、法律サービス委員会は、法律扶助を認めている。その後に司法審査に関して、裁判所が政府に不利な判断をすることは望ましくないとして、国防省は、司法省に圧力をかけ、直接の利害関係人でなければ司法審査を提起できないように法律扶助の受給資格を変更させている。

裁判所は、「法律扶助の受給を認めないことによって、提訴を阻害することは、裁判所の判断を政府の有利なも

のにしようとするものであり、法の統治に反するものである。」と批判してい )18

(る。

コミュニテイ・リーガルサービスに関する政策決定について、司法省と法律サービス委員会の責任体制が明確に

定められておらず、法律サービス委員会の中央集権的な政策形成および予算配分と地方公共団体の政策および予算

配分が有機的に整合していないことなどの問題点が指摘されてい )19

(る。

さらに、会計検査院は、法律相談および訴訟代理に関して、受給資格を適切に審査していない、過剰な支払いを

行っているなどの不適切な予算執行を指摘してい )10

(る。

司法省による法律扶助政策決定と法律サービス委員会による具体的な予算配分の責任の所在が問題となり、両者

の関係について二〇〇九年に

Magee

氏による調査が行われ、二〇一〇年に報告書が公刊されてい )11

(る。

民事法律扶助の個別事案に関して、政府が干渉するのは適切ではないが、法律扶助の政策決定をめぐる司法省と

法律サービス委員会の関係が不明確であること、このため民事法律扶助および刑事法律扶助の優先領域の決定およ

び法律扶助のガバナンスも不十分であると指摘している。報告書は、①現行制度を維持するが、ガバナンスや責任

(20)

二七〇

についてより明確化すること、②政策決定と責任を一体化するために法律サービス委員会を行政機関の一部門に組

み入れること、③裁判所に組み入れること、④効率性を高めるために民営化すること、⑤民事法律扶助と刑事法律

扶助の予算を分離するといった選択肢を提案している。

刑事法律扶助予算が増大することに対して、刑事と民事の法律扶助予算をそれぞれ分離して、民事法律扶助予算

を確保することが望ましいかをもともと検討されているが、報告書では、社会福祉分野では予算の分離が望ましい

が、刑事と民事の法律扶助予算を分離することには消極的であ )12

(る。

司法省は、同年三月三日に法律扶助の政策および財政の一元化を図るために、報告書の②案に則して、独立行政

法人である法律サービス委員会を廃止し、法律扶助を司法省の一部門に組み込むことを立法で定めることを明らか

にしてい )11

(る。

( が有益である。

Funding of Civil Litigation (2010), M. T uil and L. V isscher , New T rends in Financing Civil Litigation in Europe (2010) 12 C. Hodges, S. V ogenauer and M. T ulibacka, The Costs and

) 訴訟費用および訴訟費用の提供に関する比較研究として、

NBL

こに働く力」九七五号(二〇一二)四九頁など参照。 ース著(溜箭将之・山﨑昇訳)﹃イギリス民事手続法制﹄(二〇一二)八頁、雨宮弘和「英国における和解のプロセスとそ

13

) 和解の申出に関しては、我妻学﹃イギリスにおける民事司法の新たな展開﹄(二〇〇三)二四八頁、ニール・アンドリュ

14

) 我妻学「第三者による訴訟費用の提供」東北学院法学七一号(二〇一一)五三二頁など参照。

15 Hodges et al., supra note 12 at 20: J. Peysner , England and W ales in Hodges et al., supra note 12 at 293.

) 

note 12 at 357. 16 B. Hess and R. Hübner , in Hodges et al., supra General Overview and T rends in German Civil Litigation Cost System

) 

17

) ドイツとイギリスの権利保護保険に関しては、日弁連リーガル・アクセス・センター﹃権利保護保険にかかるドイツ・

(21)

二七一イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一) イギリス現地調査報告書﹄(二〇一〇)参照。(

18

) 条件付成功報酬に関して、我妻・前掲注(

13

)一〇〇頁、アンドリュース・前掲注(

13

)一六三頁など参照。

62MLR850, 864 (1999). The Ethical and Organisational Impact on the Bar , 19 A. W alters, Contingency Fee Arrangements at Common Law , 116LQR371, 372 (2000); P . Kunzlik, Conditional Fees:

) 

20

) 九九年法に関して、我妻・前掲注(

13

)一〇七頁・二六七頁など参照。

21 R. Smith, Redressing the Balance at 23 (1997).

) 

22 ’ ara 2.44 m4155 (1998). Modernising Justice The Government s plans for reforming legal services and the courts, p , C

) 

Adris v Royal Bank of Scotland 2010 EWHC941 (QB)

た弁護士であると判断されている([])。アンドリュース・前掲注 場合に、相手方が依頼人に対して請求された訴訟費用を実際に負担すべきは、実際の当事者として訴訟をコントロールし て敗訴すれば、相手方の訴訟費用を個人的に負担される危険があることを説明していなかった事例で、当事者が敗訴した

23

) 弁護士が敗訴した場合に備えて、事後保険に加入する約束を依頼人にしていたのに加入することを怠り、依頼人に対し

13

)一六一頁・一六五頁も参照。

Callery v Gray (Nos 1 and 2) 2002 UKHL28 at 54

る、と指摘している([])。同事件に関しては、我妻・前掲注( 件付成功報酬を奨励することにより、保険会社、最終的には保険加入者に保険料の引き上げという負担を与えるものであ

24 Hope

) 卿は、法律扶助は税金によって運営されているのに対して、中間所得層への司法へのアクセスを拡充するために条

二頁、アンドリュース・前掲注(

13

)二四

13

)一六六頁参照。

, para 26.129 (2003). cedure

アンドリュース・前掲注(

25 M. Zander , Where are W e Heading with the Funding of Civil Litigation? , 22CJQ23, 39 (2003); A. Zuckerman, Civil Pro -

) 

13

)一六六頁参照。

26 upra note 12 at 92. W H. vanBoom, Financing civil litigation by European insurance industry , inT uil et al, s

) 

27

) アンドリュース・前掲注(

13

)一六八頁など参照。

28 H. Kritzer , , 28CJQ344, 365 at Fn66 (2009). Fee Regimes and the Cost of Civil Justice

) 

29

) 記録長官は、民事裁判の長であり、控訴院の長官を兼務している。

30

) 一九九八年民事訴訟規則の基本原則の一つである(第一・一条(二)⒞)。

31 (2009). Review of Civil Litigation Costs: Preliminary Report

) 

32 Review of Civil Litigation Costs: Final Report (2010).

) 

33 Lord W oolf, Access to Justice: Final Report (1996).

) ウルフ・レポートに関して、我妻・前掲注(

13

)五九頁、司法アク

(22)

二七二

セス学会編集委員会﹃司法アクセスの理念と現状﹄(二〇一二)一六頁[田島裕]など参照。(

( としている(最終報告書八八頁)。 中小企業だけではなく大規模会社にも償還しうる余地を認めるので、片面的な訴訟費用負担の例外を認めるべきではない、

34 judicial review defamation

) 司法審査()や文書による名誉毀損()の場合にも認めている。これに対して、会社訴訟では、

J.Q.267 (2010).

アンドリュース・前掲注(

35 A. Zuckerman, The Jackson Final Report on Costs - Plaste ring the Crac ks to shore up a D ysfunctional System , 29C.

) 

13

)一七四頁も参照。

Jacksons Recommendations , Cm 7947 (2010). 36 Proposals for Reform of Civil Litigation Funding and Cost in England and W ales, Implementation of Lor d Justice

) 

Id at para.2.21

ので、賠償額を基準とすることを明示するために賠償額を基準とする成功報酬という用語を用いている()。

37

) 全面成功報酬は、依頼人と弁護士が成功報酬を締結する一般的な用語でもあることから、条件付成功報酬も包含しうる

(2011). Recommendations 38 Reforming Civil Litigation Funding and Costs in England and W ales - Implementation of Lor d Justice Jacksons

) 

( するものであるので、両者を区別して用いる。

39

) 我が国の調停は、調停委員と裁判官から構成されているが、イギリスのメディエーションは裁判外で中立の第三者が関与

- at 99 (2012). Procedure in Cross Cultural Dialogue 40 C. Menkel - Meaddow , - in American Report:Informal, Formal and <Semi Formal> Justice in The United States Civil

) 

( 「ADRの利用を促進する方策」法時八五巻四号(二〇一三)三九頁など参照。

, Cm 8045 (2011) and more proportionate system

など参照。イギリスにおけるADRの動向に関しては、長谷部由起子

41 Ministry of Justice, Attorney - General ’s Department, Solving disputes in the County Courts: creating a simpler , quicker

) 

and N. Creutzfeldt - Banda, (2012) Consumer ADR in Europe

が有益である。

42 Directive 2008/52/EC of 21May 2008. C. Hodges, I. Benöhr

) EU諸国の消費者ADRに関して、詳細に論じたものとして、

43 Proposals for the Reform of Legal Aid in England and W ales at para 2.13.

) 

44 H. Genn, Judging Civil Justice at 78 (2010).

) 

45

) メディエーションに関して、アンドリュース・前掲注(

13

)二五五頁など参照。

tegral role in the civil justice system in England and W ales? , in The Civil Procedure Rules T en Y ears On Ed.D. Dwyer

()

46 S. Prince, ADR After the CPR:Have ADR initiatives now assured mediation an in -

) メディエーションの活用に関して、

(23)

二七三イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一)

at 327 (2009); N. Creutzfeld - Banda, C. Hodges and I. Benöhr , The United Kingdom , inC. Hodges et al, supra note 42 at 253

など参照。(

47

) メディエーションの活用と訴訟費用のサンクションに関してアンドリュース・前掲注(

13

)二五六頁など参照。

note 45 at 341. 48 S. Sipman, in Dwyer , supra Alternative Dispute Resolution, the threat of adverse costs, and the right of access to court,

) 

( など参照。

49

) 長谷部由起子「法律扶助とADR

イングランドにおける新たな試み

」リーガルエイド研究一号(一九九七)六一頁

50 Genn, supra note 44 at 116.

) 

51 Genn, supra note 44 at 121.

) 

52

) 我妻・前掲注(

1

)二六八頁など参照。

53

) 我妻・前掲注(

1

)二八〇頁など参照。

54 Heynes, supra note 2 at 50.

) 

55

) 我妻・前掲注(

1

)二八二頁など参照。

56 Hynes, supra note 2 at 62.

) 

Hynes, supra note 2 at 70

断に対して、政府が圧力をかけていると批判されている()。

57

) グルカ兵がイギリスにおける永住権を求めて、裁判を提起したのに対して、法律扶助を認めた法律サービス委員会の判

58 Evans, R on the application of v The Lord Chancellor and Secretary of State for Justice 2011 EWHC 1146 (Admin).

) ()[]

Heynes, supra note 2 at 69

っては、司法省と法律サービス委員会の人的関係も良好ではなかったと指摘されている()。

, p.10 - 20 (2002). discussion Paper , Partnerships and the Community Legal Service

さらに、法律扶助の政策判断をめぐ

59 Department of Constitutional Affairs, (2004); A. Griffith, The Independent Review of the Community Legal Service A

) 

and Criminal Defence Service Accounts for the year ended 31 March2010, p aras 28 - 35. 60 Report of the Comptroller and Auditor General to the Houses of Parliament on the Community Legal Service Fund

) 

61 Review of Legal Aid Delivery and Governance (2010).

) 

62 Id at paras 191 - 193.

) 

Legal Aid Review , Trans -

運営の効率化を図るため、二〇一〇年に法律扶助の運営主体が行政機関に組み入れられている(

63 Legal Services Commission move to agency status, Business Case, version2 (2012).

) ニュージーランドでは、法律扶助の

(24)

二七四

forming the Legal Aid System: Final Report and Recommendations (2009)

)。

三   民事法律扶助および訴訟費用に関する改正動向

  1

  法律扶助予算の拡充と国庫負担の増大

イギリスでは、戦後の社会保障制度の充実を目指す中で、民事法律扶助の対象や予算規模も拡充していった。し

かし、近年では高騰する法律扶助予算を抑制するために、法律相談に対する固定給の導入、民事法律扶助の受給資

格の厳格化などの種々の改革の試みが行われたものの、結果的には成果を上げることができなかった。不況のため、

二〇一〇年の総選挙前の労働党政権の下でも法律扶助予算の大幅な削減が検討されており、総選挙の結果による政

権交代がなかったとしても、法律扶助予算の削減・効率化の問題はもはや避けては通れないものになってい )14

(た。

総選挙後、キャメロン連立政権は、法律扶助予算の削減だけではなく、裁判所の閉鎖などにより、二〇一四年度

までに司法省予算を二三パーセント抑制することが提案されてい )11

(る。

 

2

法律扶助の改正提案 二〇一〇年に法律扶助の改正提 )11

(案が公表されている。主要な提言は、法律扶助予算を削減するために、民事法律

(25)

二七五イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一) 扶助の対象を制限することにある。九九年法により、訴訟代理だけではなく、法律相談の領域も拡充している。しかし、改正提案は、法律扶助予算を削減するために、事件の客観的な重要性、当事者本人が訴訟追行できるか、などを考慮して、民事法律扶助の対象を再構成している。刑事法律扶助は、自ら費用を負担できない犯罪者に対しては、国庫で負担するのに対して、民事法律扶助に関して、納税者に負担を課すような訴訟を提起するのではなく、

自分で解決することを奨励しているからである(

paras 4.1-4.12

)。

具体的には、当事者の生命や自由が脅かされているなどの事件の重要性が必要であり、深刻な家庭内暴力などが

存在しなければ、原則として金銭賠償事件は民事法律扶助の対象から除外される(

paras 4.1 1-4.21

)。当事者が身 体的、精神的に訴訟を追行出来るか、事件の複雑性も考慮して、判断される(

paras 4.22-4.24

)。

条件付成功報酬などの代替手段があれば、法律扶助の対象から原則として除外される(

para 4.2 1

)。

1

) 民事法律扶助の対象

一般的な基準から法律扶助の対象から除外することが提案されている主要な類型を以下の通りである。

家庭事件に関して、法律相談、訴訟代理およびメディエーションが法律扶助の対象とされているが、メディエー

ション以外については、原則として法律扶助の対象から除外している(

paras 4.20 1-4.21 1

)。これに対して、家庭

内暴力が問題とならない家庭事件に関しては、メディエーションの利用に関しては、裁判所の負担も軽減すること

から法律扶助の対象としている(

paras 4. 19-4. 11

)。

債務問題に関しては、住宅の差押えなどを除いて、当事者の安全などに直ちに影響するとは認められないこと、

他に相談機関があることなどから法律扶助の優先順位が高いとはいえないので、法律扶助の対象から除外している

(26)

二七六

paras 4.1 11 -4.1 19

)。

社会保障に関しては、法律相談が認められているが、他に法律相談機関があること、金銭請求であることから重

要性が高いとは評価出来ないことから、法律扶助の対象から除外している(

paras 4.21 1-4.220

)。

雇用に関しては、不当解雇、ストライキなどに関して法律相談が認められているが、雇用問題に関しては、専ら

審問所で審理されており、本人で追行出来ること、訴訟に関しては組合が訴訟代理人を組合員に選任することなど

から、法律扶助の対象から除外している(

paras 4.188-4.192

)。

九九年法により、人身被害事件類型は医療訴訟を除いて、原則として、法律扶助の対象外となっている。改正提

案では、さらに条件付成功報酬の普及によって、医療訴訟に関しても原則として法律扶助の対象から除外するとし

ている。この背景には、訴訟提起前段階(プロトコール)および医療訴訟のケースマネジメントの効率化など医療

訴訟自体の改正も検討されているからである(

paras 4.1 11 -4. 1

)11

19

)。

2

)その他の法律扶助の改正

その他の法律扶助の改正に関して、収入に応じた雇用手当などを支給されている者に対しては、民事法律扶助の

受給資格を当然に認めていることを見直すこと(

paras 1 .9- 1.1 1

)、法律相談に関する負担金を見直すこと(

pa - ras 1 .14- 1.21

)など受給資格の見直しをすることなどが提案されている。

さらに、法律扶助予算を削減するために、民事法律扶助の弁護士報酬(

para 1 .1

)および専門家報酬(

para 8.14

を一律に一〇パーセント削減することが提案されている。

高齢者や地方に住んでいるものが弁護士事務所を訪問することは困難であることから、法律扶助に関する情報の

(27)

二七七イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一) 提供や法律相談に関して、電話やインターネットの活用を提案し、法律扶助による相談を対面から、原則として電話によることを提案している(

paras 4.2 10-4.2 11

)。

法律扶助の運営組織に関して、既に政府が公表しているように政策および財政の一元化

を図るために、従来の法律サービス委員会から、司法省の内部組織である法律扶助庁に移

行することなどの提案がなされている(

paras 10.1-10. 1.

本論文二

1

参照)。

公表された法律扶助改正の提言の骨子は、従来の民事法律扶助の対象を除外するもので

ある。しかし、実際に法律扶助予算が高騰している要因は刑事事件によるものであり、む

しろ民事・家庭事件の予算は頭打ちになってい )18

(る(表

1

参照)。このように民事事件が法

律扶助予算の削減の中心となったのは、刑事事件に関して、効率化を図るために当初導入

が検討されていた競争入札(

competitive tendering

)に対して、刑事事件を専門に扱って いる大規模事務所の反対によって、導入が遅れたことによるとされてい )19

(る。

3

) 民事法律扶助と訴訟費用の調達手段の多様化

民事法律扶助予算の削減によって、二〇一〇年に公表されている民事法律扶助の改正の

影響に関する司法省の予想においても、三億五〇〇〇万ポンドの年間予算を削減するため

に、少なくとも五五〇万人以上の人々がもはや法律相談を受けられないと想定されてい )10

(る。

民事法律扶助の予算には限界があり、長引く不況で、国家財政が悪化している以上、法

律扶助予算を削減することは、やむを得ないといえる。しかし、法律扶助の対象から除外

 表 1 法律扶助の年間支出

2001 年度 2001 年度 2001 年度 2008 年度 2009 年度

民事・家庭 911 921 819 928 941

刑事 1,148 1,110 1,218 1,201 1,201

総計 2,104 2,211 2,121 2,111 2,141

単位:100 万ポンド

Justice Committee Governments proposed reform of legal aid,Third Report of Session 2010-11 at 9, HC181-1,10(March2011).

(28)

二七八

された場合に、当事者が訴訟費用を適切に調達する手段が存在する必要がある。

既に指摘した(本論文二

1

)ように、権利保護保険、成功報酬および第三者による訴訟費用の提供など訴訟費用

の調達手段が多様化していることは、法律扶助の対象とならなくても、当事者の選択の幅を拡げ、市場競争を促進

し、望ましいように思える。たしかに、アメリカでは、弁護士のプロボノ活 )11

(動あるいは交通事故などの不法行為訴

訟の原告が金銭賠償を求める場合に全面成功報酬制度が重要な役割を果たしてい )12

(る。しかし、非金銭請求に関して

訴訟費用の適切な調達手段があるとはいえず、全ての事件類型に相応しい訴訟費用の調達手段が存在するわけでは

な )11

(い。

訴訟費用を誰が負担しているかを一義的に定義すること自体も困難となっている。当事者が訴訟費用を自己負担

しているかあるいは第三者から調達しているか、両者の区別も相対的となっているからである。例えば、訴訟費用

を自己負担する場合も、手持ち資金だけではなく、銀行などから借り入れる場合がある。法律扶助の受給者も資力

要件から分担金を当事者が負担する場合には、国庫からの支出と自己負担が併存している。

特に成功報酬制および第三者から訴訟費用を提供する場合には、当事者だけではなく、弁護士、保険会社などの

第三者の役割が重要になる。提訴するのか、和解するのかあるいは裁判外の紛争解決手続による解決を図るかなど

当事者と第三者の利害が対立する場合があり、両者の関係をどのように調整するのかが問題となる。

二〇一一年三月三〇日に公表された議会の特別委員会報告書においても法律扶助予算を削減する必要性を認めて

いるが、主に法律扶助の対象を除外する政府提案に対して、改正による裁判所への提訴件数および本人訴訟に関し

て、正確に予測することが困難であることから、本人訴訟の効率化を図るための専門委員会による調査の必要性、

より厳格なメリットテストの採用などの修正提案をしてい )14

(る。

(29)

二七九イギリスにおける近時の民事法律扶助および訴訟費用の改正

(都法五十四

-

一) 民事法律扶助に関しては、従来の代理業務から法律相談に重点が移行していること、ただし、法律相談業務の支出が増加していることに関して、不況などで事件数が増加していることが挙げられている。法律扶助予算を単に削減することは、他の法制度の予算を増加させることを指摘している。

二〇一一年六月二一日に法律扶助改革等の法案(

Legal Aid, Sentencing and Punishment of Offenders Bill

)が提出

されている。従来は、法律扶助の対象および資力要件の変更によって、法律扶助予算の高騰を抑制しようとしてい

たのに対して、法律扶助改革等の法案は、一九七〇年代から拡充されてきた家庭事件および社会保障領域に関して、

一律に民事法律扶助の対象から除外し法律扶助予算を抑制しようとしている点に特色があ )11

(る。

法律扶助改革等の法案による大幅な法律扶助の予算削減に対して、貴族院において、民事法律扶助の支給を決定

する際に政府の干渉を排除して独立性を維持すること、医療訴訟に関して、法律扶助の適用を例外的に認めること、

女性の権利を擁護するために家庭内暴力の定義を拡げることなどの修正がなされてい )11

(る。しかし、下院の多数派で

ある保守党と自由党の議員が法案を支持したため、労働党からの修正案は投票にも至らなかったとされてい )11

(る。た

だし、民事法律扶助の対象を除外することに関して、当初、同年一〇月からの施行を目指していたが、時期的に厳

しいため、二〇一三年四月から施行することにしている。

(30)

二八〇

四   二〇一二年法律扶助、犯罪者の量刑および処罰に関する法律

  1

  二〇一二年法律扶助、犯罪者の量刑および処罰に関する法律

二〇一二年法律扶助、犯罪者の量刑および処罰に関する法律(以下、「二〇一二年法」と略記する))は、同年五

月一日に女王による裁可がなされ、二〇一〇年五月に連立政権が成立してからわずか二年で成立している。二〇一

三年四月一日より施行されてい )18

(る。

四九年法により、国民の司法アクセスを保障するために近代的な法律扶助が確立されて以来、財政の健全化を図

るために、二〇一二年法は、民事法律扶助の対象を極めて厳格に制限している。大法官は、法律扶助を維持する責

務がある(一条)が、法律扶助の受給者が選択した法的サービスを提供する責務はなく、電話ないし電子的手段で

提供することが認められている。さらに法律扶助の受給者が選任した法律家によって、法律扶助を提供する一般的

義務を負っているのではなく、受給者は、法律扶助局と締結した法律家による法的サービスを受ける義務を負って

いる(二七条)。

金銭請求に関しては、第一義的には成功報酬あるいは権利保護保険によるべきであり、民事法律扶助は例外的に

のみ認められるべきであるという立場を採用してい )19

(る。九九年法では、特に法文上明確に規定していなければ、原

則として法律扶助の対象と考えられていた。既に、九九年法により、医療訴訟以外の人身被害類型に関しては、民

事法律扶助の対象から除外していたが、二〇一二年法は、医療訴訟に関しても胎児が在胎週数三七週以上で出生し

参照

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