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東京医科大学「歴史史料展示室」展示活動報告 工藤 彩*

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医学図書館 2018;65(1):32-35.

特集 ミニ展示から資料室展示まで~医学系図書館の展示

東京医科大学「歴史史料展示室」展示活動報告

工藤  彩*

東京医科大学図書館

育の場とし,一般の方々にも広報することを目的とした。

なお,史料展示室の職員も図書館との兼務のため,史 料展示室に常駐していない。

Ⅲ.展示活動

史料展示室の展示は本学の歴史と歩みをコンセプトと している。本学の歴史は大正5(1916)年5月に「当時 の日本医学専門学校学生約四百五十名が同校を総退学 し,新校設立を企図3)」したことに始まる。日本医学専 門学校の当時の経営者と無試験での医師開業資格をめ ぐって意見を異とし,血判状をもって新校設立運動をし た学生の奮闘とその支援者の熱意を,また,100周年を 迎えたこれまでの本学の歴史を,教職員や学生,一般の 方にも伝わるよう展示品を選定した。

1 .史料展示室

史料展示室は建物の出入り口付近にありガラス張りで 比較的目に入りやすい場所にある。面積は約 25 m2で,

史料展示室と「室」がついているものの個室ではなく,

オープンスペースの一部である。また,史料展示室設置 以前に造作された5本のガラス製の仕切りを活かした展 示スペースとなっている(写真1)。

Ⅰ.はじめに

東京医科大学図書館は昭和21(1946)年に設置され,

現在は本館(西新宿キャンパス),分館(新宿キャンパス)

茨城医療センター分館(茨城キャンパス),八王子医療セ ンター分館(八王子キャンパス)の4館で構成されている。

東京医科大学(以下,本学)は平成28(2016)年に創 立100周年を迎えた。その記念事業の一環として,本学の 西新宿キャンパス内の教育研究棟1階に「歴史史料展示室」

(以下,史料展示室)を開室した1)。今回,図書館が事務 局として携わった史料展示室の展示活動の一部を紹介する。

Ⅱ.概要

本学にはもともと昭和50(1975)年,新宿キャンパスに

「歴史史料室」(以下,史料室)が設置されている2)。東 京医科大学五十周年記念誌を編纂する際に収集した本学 の歴史や学事にまつわる書籍や資料等の散逸を防ぐため,

また,本学の歴史資料を整理・保管し,かつその一部を公 開するものとして史料室が設置された。初代図書館長が室 長を兼任し,史料室の管理は大学総務課で行われてきた が,平成23(2011)年より図書館管理となった。室員は 専任ではなく,同敷地内の新宿キャンパスにある分館職員 2名が兼務で委嘱されている。また,定期的に歴史史料室 運営委員会が開催され,企画・運営がなされている。

平成 26(2014)年より本学 100 周年記念事業のため の「歴史史料室整備委員会」(以下,委員会)が組織さ れ,委員長には学長が就任した。史料展示室の開室まで の組織で,これまでの運営委員会委員に新たな委員も加 わり,図書館は事務局として企画・運営に携わった。

既存の史料室の役割は継承し,西新宿キャンパスの大 学病院内にも史料室と同様の役割を担う史料展示室は,

教職員や学生に本学の歴史と歩みを伝えることで自校教

*Aya KUDO:〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-7-1 教育研究棟2階.

[email protected] (2017年12月16日 受理)

写真1.展示スペースとデジタルサイネージ

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東京医科大学「歴史史料展示室」展示活動報告

33 医学図書館 2018;Vol.65 No.1

頃までの様子と大正7(1918)年の専門学校設立認可祝 賀会の様子を選定した。

・病院の発展:淀橋病院から東京医科大学病院へ 現在の西新宿キャンパスの変遷として,昭和6(1931)

年当時の診療所開設から,昭和 60(1985)年の現大学 病院完成までを選定した。

・施設の充実:茨城医療センター,八王子医療センター,

看護専門学校

他キャンパス,他施設の紹介として,昭和24(1949)

年から昭和 55(1980)年までの茨城・八王子の各キャ ンパスの変遷が確認できる写真と新宿・茨城の各看護専 門学校の当時の写真を選定した。

・企画展示:大学の建物と創立当時の授業風景

現存する新宿キャンパスの第1校舎の当時の様子,新 宿キャンパスでの大学創設当時の授業風景をまとめた。

写真を時系列に並べるために,また写真に付与する キャプションを作成するためにも,本学の歴史を改めて 学ぶことは必須であった。本学で発行されている五十年 史,七十年史,八十年史,東京医科大学新聞,東京医科 大学雑誌,関連資料等,これまでに本学で発行された資 料に目を通し,本学で建設された建物の名称や概観の確 認等を行った。それらの資料で事象の確認ができない場 合,発行当時の資料をそのままの形でデジタル資料を閲 覧・検索できる国立国会図書館デジタルコレクション4)

を用いて調査を行った。

3 .資料収集

現在保管している資料だけではなく,学内で保有して いる学内関連資料等があればもっと展示の幅を広げられ るのではないかという委員会の意見もあり,教職員や同 窓生に向けて広報を行った。本学の歴史にかかわる資料 や医療器具等を寄贈もしくは借用できるよう同窓生等関 係者に郵送される学内広報誌への記事掲載依頼,また同 内容の印刷物を配付した。その甲斐があり,複数資料を 寄贈していただいた。

学内寄贈に関しては,平成 25(2013)年に教育研究 棟建設に伴う医局等移転があった際に,各医局等と連携 を取り寄贈依頼等の広報が充分にできず,本学にかかわ る資料を収集する機会を逸してしまった点は悔やまれる。

展示ケースに展示する物品の選定も行った。展示品に 添えられるキャプションは品目,寄贈者,簡単な説明を つける。寄贈の際に寄贈の経緯や詳細を記録し調査して おくことで,本学とのつながりが鮮明になるよう工夫し ている。以下,展示品の中から3点紹介したい。

また今後,史料展示室が他の場所に移転となった場 合,原状回復が可能な形態となっている。

2 .展示品の選定

委員会で展示品の検討を行った。まず,学祖・高橋琢 也の紹介,ほかは創立から発展と現在の姿を追うように 紹介したい旨が確認された。

100 周年記念事業の一環として,本学の広報委員会 が作成した本学の歴史が写真とともに一覧できる「東 京医科大学 100 年の歩み」(縦 1000 mm 横 1560 mm,縦 1000 mm横1545 mmの2枚)をガラス用外張りシート印 刷にして史料展示室の外に面したガラスに貼付した。

学祖の紹介には A0 サイズ(縦 841 mm 横 1189 mm)2 枚のパネルに,肖像画と本学に関連ある項目と社会的な 立場で他の設立関係者との関わりがわかる項目のみ掲載 した略歴,本人揮毫の書を選定した。これらは建物の入 り口から最もよく見えるような配置で,ガラス製の仕切 りにフックをかけて固定した。

パネルのほかに,写真等を掲示するため,吊り下がり 式の 5 枚のアクリルボード(縦 105 cm 横 130 cm)が用 意された。ボード内で枚数等自由に配置可能な仕様で あったが,実際の展示は展示ケースの上2 m前後の高さ に天井から釣り下げるため,アクリルボードを若干見 上げることになる。その目線からの見やすさを考慮し,

A4(縦 210 mm 横 297 mm)サイズ以上に拡大してもあ る程度鮮明で,対象物が大きく写っている写真を選定対 象とした。写真は主に本学発行の資料や学生から寄贈の 卒業アルバムから選定された。寄贈されたアルバムは分 館にてデータ化し,保存をしている。卒業アルバムは学 校の様子はもちろん,服装,風景等が写され,当時の大 学の日常がうかがえる貴重な資料である。

アクリルボード用の写真を選定する際,本学の歴史を 時系列で紹介するため,1枚ずつ5つのテーマを付与す ることにした。コンセプトに沿ったテーマ選び,選定写 真の配置,全体的な統一感等,テーマや写真選定の練り 直しが何度か行われ,テーマは以下のように決定した。

・奮闘する学生と支援者:理想とする学問の場を求めて 当時の医学教育関係者や県人会への学生訪問によって 本学設立に賛同した医学教育関係者の紹介と,設立当時の 大正5(1916)年頃は校舎を持たなかったため,他校での 講義の様子や他機関で行われた臨床の実習風景を選定した。

・東京医学講習所設立:東京医学専門学校指定認可まで 現在の新宿キャンパスに学校建設用地が決まり,学校 設立・病院移築等,本学の環境が整う大正9(1920)年

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工藤  彩

34 医学図書館 2018;Vol.65 No.1

1)血判状

本学の歴史を紹介する上で欠かせない実物展示とし て,大正 4(1915)年 12 月に署名された血判状のレプ リカがある(写真 2)。血判状の前文では当時の学校側 と袂を分かつ決意が立派な毛筆で学年ごとに記されてお り,特に高学年になるほど生々しい押捺とともに,卒業 後の先行きが見えない前途に「武士道の精神により死を 以って償ふ5)」等,切実な訴えが書かれている。

これらの血判状のレプリカ4本のうち,当時2年生の 血判状を展示することとなった。レプリカの状態もよい ため,展示ケースに一部開いた状態で展示した。

開室後に,実際に血判した学生の親族から何回か問い 合わせを受けたことがあったが,実際に来室された家族 が卒業生の記した署名をご覧になり喜ばれていたのは記 憶に残っている。

2)顕微鏡

100周年の年に呼び寄せられたように寄贈があったの は,平成 28(2016)年に博物学の先生が発見したエル ンスト・ライツの顕微鏡である(写真 3)。広島県下の 産業近代化資料の調査活動中に,広島県北部の古い農家 の土蔵から顕微鏡3台と顕微鏡撮影装置1台ほか付属品 が発見された。その接眼レンズ,対物レンズに「東醫細 菌」の刻字があったため,本学のものではないかと連絡 があり寄贈の申し出があった。調査を進め,本体鏡頭の シリアルナンバーより,大正 13 ~ 14(1924 ~ 1925)

年に製造された顕微鏡であることから,本学の前身,東 京医学専門学校にて使用されていたと考えられる。

当 時 の 財 産 目 録 に は,「 検 微 鏡 十 台 … 等  価 格  四千二百五十円6)」とある。他の記載では,「校舎価格 二万円6)」「門番所平屋建三百九十円7)」とあるので,顕 微鏡1台の価格価値は当時では相当高額であったことが うかがえる。

展示ボードの前面に接眼レンズと対物レンズの刻字が 見えやすい位置に配置したが刻字が小さく見えにくいた め,デジタル写真にて多角的に撮影し,後述するデジタ ルサイネージに取り込み映像としても放映している。

3)デジタルサイネージ(電子看板)

史料展示室の中央に配置されているデジタルサイネー ジは動画・静止画・音声ともに対応可能かつ,データの 選択や差替え等運用が容易であるため,資料そのもので はないが,限りあるスペースで多くの展示を公開するに は有効な機器である。

現在の内容は総務部広報・社会連携推進課で作成した 本学の紹介 VTR,寄贈品の中でも顕微鏡等詳細部分に

フォーカスした動画,史料室と史料展示室の見学案内が あるが,中でも図書館職員が作成した,現存する4本の 血判状のデータをつなぎ合わせ校歌をのせた動画データ は力作であると自負している。

血判状を同じ位置から撮った写真をつなぎ合わせ,最 初の前文から最後の署名・押捺までをデジタルデータに 取り込み,スライドショーとして1本ずつ放映している

(写真1)。映像とともに流れる校歌をよく耳にすること で校歌を覚えたとの感想がある等,概ね好評である。

Ⅳ.オープニングセレモニーと展示案内

本学の創立記念日の前日である平成 28(2016)年 4 月 12 日,理事長,学長,常務理事のテープカットで幕 を開けた。本学理事の先生方,また東京新聞と新宿新聞 の記者の取材も入り,にぎわった。

平成28年4月13日東京新聞の都民版に報道されたこ とで,近隣住民,患者家族,同窓生や学生保護者等,後

写真3.寄贈された大正期製造の顕微鏡 写真2.血判状(レプリカ)

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東京医科大学「歴史史料展示室」展示活動報告

35 医学図書館 2018;Vol.65 No.1

日多くの見学者の来室があり,担当の一員として対応や 説明をした。その際に受けた展示に関する質問等は展示 ではわかりにくかった点として記録しておき,必要な場 合は調査している。その後の見学対応の際には口頭の補 足説明をすることにしている。

また,史料展示室は教職員・学生談話室の前に位置し ているため,ここを会場にして行われる本学主催の行事 の際に,参加者が史料展示室をあわせて見学する機会も ある。

Ⅴ.おわりに

史料展示室は完成したが,継続した展示活動は必要で ある。今後の課題は定期的な企画展示の入替と,時間の 経過とともに劣化が進む資料の長期的な保存に適した環 境を整備することである。また,本学発行資料等も含め た収集資料の整理・整備をすすめ,デジタル化を図るこ とでデジタルサイネージをさらに有効に活用していきたい。

今後も学内外への広報に務め,史料室・史料展示室を企

画・運営する歴史史料室運営委員会とともに,次の100周 年に向けて本学の足跡をたどる一助ができれば幸いである。

引用・参考文献

1 ) 東 京医科大学歴史史料展 示 室 [internet]. http://www.

tokyo-med.ac.jp/facilities/shiryoushitsu.html [accessed 2017-11-02]

2 ) 東 京医科大学歴史史料室 [internet]. http://www.tokyo- med.ac.jp/facilities/shiryoushitsu.html [accessed 2017-11-02]

3 ) 東京医科大学五十年史編纂委員会. 東京医科大学五十年 史. 東京:東京医科大学;1971.p.21.

4 ) 国立国会図書館デジタルコレクション[internet]. http://

dl.ndl.go.jp/ [accessed 2017-11-15]

5 ) 東京医科大学五十年史編纂委員会. 東京医科大学五十年 史. 東京:東京医科大学;1971.口絵.

6 ) 東京医科大学五十年史編纂委員会. 東京医科大学五十年 史. 東京:東京医科大学;1971.p.81.

7 ) 東京医科大学五十年史編纂委員会. 東京医科大学五十年 史. 東京:東京医科大学;1971.p.82.

8 ) 栗山敦子. 東京慈恵会医科大学学術情報センター史料室 紹介. 医学図書館. 2016;63(1):44-8.

参照

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