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柔道における外傷の実態とその予防から考える運動法について : 身体の軸を安定させるために

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(1)

修 士論 文

柔道 にお け る外 傷 の実態 とそ の予 防 か ら考 え る

運 動 法 につ い て

一身体の軸を安定 させ るために一

兵 庫 教 育 大学 大学 院

教 育 内容 方 法 開発 専攻

行 動 開発 系教 育 コー ス

Ml1207H

齋藤

彰裕

(2)

目次 第

I章

研 究 の動機 と背景

1.研

究 の動機

2.研

究 の背 景 と 目的

i.健

康 と運動 につ い て 五。子 どもの姿勢 と運 動 五。学校 柔道 へ の期待 と研 究 の 目的 第 Ⅱ章 学校 柔道 での外傷状 況

1.学

校 管理 下 での各競 技 の外 傷状 況

2.柔

道 の外傷 状 況

i.死

亡・ 頭 頸部外傷 につ い て 五。そ の他外 傷 につ いて

3.柔

道 にお け る ヒヤ リハ ッ トと骨 折 、捻挫 、 打撲・ 挫 傷 、脱 日の発 生要 因 につ いて

i.質

問紙 の作成 五

.方

法 第 Ⅲ章 ヒヤ リハ ッ トと外傷 の実態調 査 にお け る結果 と考察

1.回

答 率 と回答者 の基本 情報 につ い て

2.ヒ

ヤ リハ ッ トと外傷 の結果 につ いて

i.段

位 、学年 、柔道 経験年 数 五

.練

習場 面 、原 因 とな る技 、要 因 につ い て 五

.ケ

ガ の可能性 部位 と外 傷 の 内訳 、 リハ ビ リ状 況 、現 在 の外 傷 状 態 に つ い て 市。 自由記 述 につ いて

v.崩

れ に くい身体 の重要性 第Ⅳ 章 崩 れ に くい身 体 につ いて

1.身

体 の軸 と安 定

i.負

荷 と応 力集 中 二

.姿

勢 につ い て 五

.静

的安 定 と動 的安 定 市

.筋

肉 と姿勢

(3)

2. 3. 足部 の強化 につ い て

i.こ

れ まで の取 り組 み 五

.足

のアー チ 面

.足

底 の荷重感 覚 身体 の軸 をつ くるた めの筋 肉 につ いて

i.速

筋 と遅 筋 五

.筋

肉の収縮 面

.筋

肉の可動範 囲 市

.抗

重 力筋 と股 関節 につ い て 第

V章

実 際 の運 動法 につ い て

1.足

指 体操

i.検

査 五

.グ

ー運動 五

.パ

ー運動 市

.チ

ョキ運動 宙。つ ま先 か か と運動

2.荷

重感 覚 訓練 と筋力強化運 動

i.立

位 副1練 五

.腰

落 し運動 血

.ト

レー ニ ン グの段 階 につ いて ■

,今

後 の研 究課題 と展望 参 考文献 謝 辞

(4)

I章

研 究 の動機 と背景

1.研

究 の動機 筆者 は柔道整 復 師 と して、

10年

余 り医療機 関 に勤 め整形疾 患 を主 に様 々な疾 患 を抱 えた患者 の施 術 や運 動 を行 つて い る。 当初 は腰 痛 な どの慢性 疾 患 に対 し て は腰や そ の周 辺 に対 してのテ クニ ック等 を用 い て対応 してい た。 しか しそ う い つた治療 には限界 を感 じる こ とが多 くなった。骨 折 な どの外傷や そ の他疾 患 で入 院・ 外 来 患者 に対 して運 動 を実施 してい る と、痛 み が減 少 した 、 関節 の動 く範 囲が広 が った 、歩 く距 離 が増 えた 、姿勢 が よ くな った 、腰 痛 や 肩 の痛 み な どが軽減 した等 そ の疾 患 に対 して の効 果 以 上 の結 果 が得 られ る よ うに な った。 狭 義 の身 体 だ けに と らわれ る こ とな く広 義 にお い て身 体 をみ る こ とが重 要 で あ り、身 体 を動 かす とい うこ と、運 動 が重 要 だ と認 識 した。 それ 以来

t狭

義 の身 体 に対 して の アプ ロー チ と ともに広 義 の身 体 に対 して の アプ ロー チ と して筋 力 トレー ニ ン グや バ ランス訓練 等 を施 し効 果 を得 て きた。 筆者 は基本 的 に誰 にで もで き る運 動 を考 え、病 院 は も とよ り教 室 を主宰 し実 践 してい る。 特 に高齢 者 や 青壮年 に対 し運動 を実施 して い る と疑 間 に思 うこ と がで て きた。 現在 の生活 に少 し上 乗せ す るだ けで 、痛 み な どの症 状 の軽 減 が な され るの に、 これ まで何故 運 動 を して こなか った のか で あ る。 患者 へ 質 問す る と、運動 習慣 もな く歩 いた りな どもあま りしてい ない こ とが多 く、身 体 の こ と や 運動 につ い て は あま り知識 が ない た め治療 に対 して は受 け身 にな ってお り、 自発 的 な運動 をで き る状態 で はない こ とが多い。 さ らに筆者 が対応 す る患者 には、

10代

の子 どもも多 く、転倒 に よる骨折 な ど 高齢者 と同様 の機 序 に よる疾 患や 、慢 性 疾 患 と して腰 痛 な どで来 院す る者 も多 くな つた。 特 に高齢 者 同様 の骨 折 をす る子 どもを間近 でみ て 、子 ども達 に将 来 の基礎 とな る身体 を しつか り作 って あげたい と思 った のが研 究 の動機 で あ る。

(5)

2.研

究 の背景 と 目的

i.健

康 と運動 につ い て 厚 生労働 省 平成

22年

簡 易生命 表 に よる と、日本 人 の平均寿命 は世界 で も トッ プ クラスで あ り女性

86.30歳

、男性

79.55歳

とな ってい る。 一 見数 字 だ け をみ る と長 寿 で あ る と見 られ るが 、 しか し、健 康 上 の 問題 で 日常生活 が制 限 され る こ とな く生活 で き る期 間で あ る健 康 寿命 で は、平成

22年

で は女性

73.62歳

、男 性 70。

62歳

と欧米 諸 国 な どとあま り変 わ らない (橋本 2012)。 そ して この平均 寿命 と健 康 寿命 の差 は女性 で

12.68年

、男性 で

9.13年

で あ り、つ ま り男女 とも に約

10年

程 度 は死 を迎 えるまでの 間 に 日常生活 に制 限が あ り、健 康 上 問題 が あ る生活 を過 ご さな けれ ばな らない とい うこ とで あ る。 そ の健 康 上 問題 が多 い とされ る

70歳

以上 の高齢者 にお いて多 い疾 患 に骨 折 が あ る。 高齢者 に多 い骨 折 と して、脊椎 圧 迫骨 折 、上腕 骨 近位 端骨 折 、撓 骨遠 位 端 骨 折 、大腿 骨 近位 端 骨折 が挙 げ られ る (国分 2008)。 これ ら四大骨 折 の受 傷 原 因 の ほ とん どが転倒 で あ り、 ま た そ の要 因 の

1つ

と して骨 粗 愁 症 が 関与 して い る こ とが多 い。 骨 粗 愁症 は、端 的 に言 えば骨 が脆 くな る病 気 で あ るがそれ 自 体 は問題 ない。 た だ 、転倒 等 で骨 折す る リス クが非 常 に高 い とい う点 が 問題 で あ る。 荻 野

(2008)に

よる と、実 際 に骨折 を した患者 に対 して は、観 血療 法 や 保 存療 法等 が選 択 され 、早期 離床 や 体 力 の低 下 、実 際 に低 下 した能 力 向上 の為 に運 動療 法 が行 われ る。運 動 療 法 には 関節 可動 域 訓練 や ス トレ ッチ 、バ ラ ンス 訓練 、歩行 訓練 、筋 力増 強 訓練 な どが あ るが筋 力増 強 訓練 はそ の 中で も特 に重 要 で あ る。 また 、

50代

60代

な どに多い変形性 膝 関節 症や 変形性股 関節 症 な どで も下肢 筋 力 の低 下 が要 因 の

1つ

とされ 、 リハ ビ リテー シ ョンや 運 動 指 導等 にお いて も大腿 四頭 筋等 の筋力増 強 副1練が選 択 され る。

(6)

で は何 故 先 ほ どの 四大骨 折や 変形 性 関節 症 な どの運 動器 疾 患 に対 して筋 カ トレ ー ニ ングが重 要視 され選択 され るので あ ろ うか。 まず

1つ

目の理 由 と して負 の サイ クル か らの脱 却 が あ る。 転倒 して骨 折す る高齢 者 の多 くは、そ の以 前 に も 転倒 を繰 り返 して い る こ とが多 い。 体 力 、筋 力 、バ ラ ンス等 の能 力 が低 下 して きた高齢 者 が 、転 倒 をす る と恐怖 心 が生 まれ 、結 果屋 外 に 出か け るな どの活 動 が減 り、 また能 力 が低 下 しさ らに転倒 を招 く。 そ して また恐怖 心 か ら活 動 が減 ってい く。 転倒 → 骨折→活動低 下→転倒 →骨折→ 寝 た き り等 と負 のサイ クル に な ってい く。それ は変形性 関節 症 の患者 も同様 で、痛 み の為活動範 囲が狭 ま り、 筋 力低 下 を生 む。 それ を脱 却 す る方 法 と して 、恐怖 心 の あ る高齢 者 に体 力 、バ ラ ンス能 力 の 向上 を 目的 と した 、バ ラ ンス訓練や 歩 行 副1練な どを最 初 に選 択 す るの は転倒 等 、本 人 の恐怖 心や 意 識 の 問題 上選択 しづ らい。 転倒 の リス クの少 ない筋カ トレー ニ ン グを行 い 、下肢 筋 力 を強化 す る こ とで 、体 力 、バ ラ ンス の 向上 を 目的 と した 訓練 も増 や す こ とが で き る。負 のサ イ クル か らの転 換 を図 る こ とがで き る。 そ して

2つ

目の理 由 と して は筋 力低 下 が要 因 と して大 きい こ とで あ る。 それ は高齢者 の骨 折 や 変形 性 関節 症 に は明 らか な性 差 が あ り男性 よ り女性 が多 い疾 患 だ か らで あ る (大森 2008)。 高齢 の女性 は 同年 代 の男性 と比べ 筋 力 が低 い傾 向で あ る。 実 際 、筋 カ トレー ニ ン グを行 うこ とで症 状 が改 善す る こ とが多 く、 大 きな要 因で あ る と考 え られ る。そ もそ も特 に下肢 筋 力 は

20歳

頃 を ピー クに年

1%程

度低 下 して い く (福永 2009)。 年齢 が

70歳

で あれ ば単純 に

20歳

の頃 の

50%つ

ま り半分 しか筋 力 が ない とい うこ とで あ る。 実社 会 を見れ ば、交通機 関 の発 達 、電 動 自転 車 の使 用や い た る ところにエ レベ ー ター 、エ スカ レー ター等 の設 置 が多 くなった こ とで 自身 の筋力 を使 用す る機 会 が減 り、運動 とい えば通 勤や通学 で の仕 事場 と家 との往 復 程度 しか ない等 、運 動習慣 が ない こ とが多 い。

(7)

普 段 の 生 活 上 で筋 肉痛 に な る こ と さえ あ ま り無 くな つ て い るわ け で あ るか ら 年 々筋 力 が低 下 してい くの も当然 の結 果 で あ り、 それ に伴 い骨 折や 変 形性 関節 症 な どの疾 患 が発 生 しやす くな るの も当然 で あ る。 逆 に言 えば あ る程 度 筋力 が あ り運 動習慣 が あれ ば これ らの疾 患 に もかか りに くく健 康 に過 ごせ る大 きな要 因 とな る。 厚 生 労働 省

(2013)に

よる と、高齢者 や 青壮年 の高血圧 や脂 質異 常 症 、肥満 な どの生 活 習慣 病 や認 知 症 等 は、定期 的 に適 度 な運動 をす る こ とや 筋 力 をつ け る こ とが予 防 と して重 要 で あ る と してい る。健 康 を維 持す るた めには、 筋力 が ピー ク とな る

20歳

まで に筋 力 を向上 させ て、運 動 習慣 を身 につ け維 持 向 上す る こ とが必要 で あ る。 五。子 どもの姿勢 と運動 現在 子 どもが置 かれ る環境 は

t公

園 で の ボー ル遊 び禁 止 等 、身 体 を動 か して 遊 べ る場 所 が少 な くな ってい る状 況 が あ る。 また 、テ レビゲー ムや パ ソコン、 スマー トフォ ンや そ の他端末 向けのネ ッ トゲー ム な どの発達 に よ り、遊 び の選 択肢 が増 え よ り身 体 を動 か して遊 ぶ こ とが少 な くな って い る。 また 、文部 科 学 省

(2010)に

よる と運 動す る子 と しない子 との

2極

化 が進 んでお り、特 に運 動 を しない子 どもた ちの体力 の低 下 が危惧 され る。 また阿部 ら

(2011)の

研 究 で は、実 際 の教 育現 場 で の子 どものか らだ のお か しさを調 査 して い る。 その 「最近 増 えてい る」 とい う結 果 で保 育 園や 幼 稚 園 、 小学校 で は (背中 ぐにゃ

)と

い う姿勢 の悪 さが上位 に挙 げ られ てお り、 ここ

20

年 以上変 わ ってい ない も しくは悪 化 してい る傾 向で あ る。厚 生 労働 省 (2013) で は腰 痛 等 の一 因 と して不 自然 な姿勢 な どの姿勢 の悪 さが指 摘 され てお り、実 際 中学校 、 高校 で は腰 痛 、首痛 が F最近増 えてい る」 とい う結 果 の上位 にはい ってお り、幼 稚 園や 小 学校 か ら続 く姿勢 の悪 さが影響 してい る こ とが考 え られ 、

(8)

大人 にな って も多 い疾 患 とな ってい る。 別 所

(2007)は

子 どもの姿勢 の悪 化 の原 因 を背 筋 の廃 用性 萎縮 に よる背 筋力 の低 下が主 な原 因 と してお り、そ の要 因 と して骨盤 の後傾位 に よる靭 帯頼 った 休 息姿勢 に よって背 筋 を使 用 しな くな ってい る こ とを指摘 してい る。 しか し、現在 の私 た ち 自身 がそ うい った疾 患や 不 良姿勢 の予 防 を しよ うと し て も ど うい う運動 を した らよい か な どわか らず 、様 々 な情 報 に振 り回 され た り す る こ とが あ る。 筆者 自身 、 これ まで の学校 教 育 の 中で も身 体や 運 動 につ い て の こ とは学 ん だ こ とが な く、学校 教育 の 中で こ うい つた知識 を学ぶ機 会 が増 え れ ば将 来 の 自分 の た めの実学 にな る と考 える。福 永

(2009)は

、理想 的身 体 を 意識 し、それ を創 造 す るた めの知 識 と技術 を身体 教養 と定義 してい る。 将 来 に 向 けて 中学 生 、高校 生 な ど子 どもの ころか ら筋 肉や 姿勢 な ど身 体 を意識 した運 動 を学 ぶ こ とが重要 で あ る。 血

.学

校 柔道 へ の期 待 と研 究 の 目的 現在 中学校 は武道 の必修化 が始 ま り柔道 を選択す る学校 も多 い。

Morel(2001)

に よる と、様 々 な ス ポー ツ と比較 して 、柔道 は格 闘技 とい う面 もあ るた め身 体 に対 して の負 荷 が高 く筋力 向上や 骨 密 度 の増 加 に対 して効 果 が高 い と してお り、 成 長 期 に あた る中高生 に も期待 で き る。 また 、受 け身 や 投 げ技 等 の技術 を学 ぶ こ とで 、武 道 の楽 しさや奥深 さの理解 につ な が る。 また 、礼節 を重 ん じる武 道 故 に他 のス ポー ツに比 べ立礼 や座 ネLな ど姿勢 を意識 す る動 作 も多 い。別 所 (2007) は子 どもの姿勢 悪 化 の原 因で あ る背 筋 力 の 向上 に体操 や ス ポー ツ等 の動 的 な筋 力 の教 育 に対 して 、正 しい 姿勢 (腰椎 を立 て骨盤 をま つす ぐにす る

)を

意識 す る静 的 な筋 力教 育 で あ る 「姿勢 教 育 」 も重 要 で あ る と して い る。 これ らの面 か ら柔道 は、子 どもに とつて

20歳

まで の筋力 向上 に期待 で き、姿勢 の悪化 を防 ぐ、

(9)

筋 肉や 姿勢 な ど身 体 を意識 した運 動 と して適 して い る。 子 どもた ちが柔道 に よ る効果 を享 受す る為 に は、学校 柔 道 が しっか り定着 し、機 能 してい くこ とが重 要 で あ る。 しか し、指 導す る以 上 は安 全確保 が重 要 で あ る。 現在 中学校 での武 道 必修化 に伴 い 、初 めて柔道 を学 ぶ子 どもた ちに対 して の練習 時 の安 全確保 、 外 傷 予 防 は問題 とな つてい る。 そ うい つた予 防 に対 して 、限 られ た時 間 の 中で 誰 しもがで き、効 果 が期待 でい る運動 が重要 とな る。 よって本研 究 は 、現在 の学校 柔 道 の外 傷 状況 を調 査 し、そ の 中か ら問題 点 を 整 理 して 、武 道 必 修 化 に伴 い 、初 めて柔道 を学 ぶ子 どもた ちに対 して柔道 の外 傷 予 防 に適 した運 動 をた だ の予 防運 動 とい う観 点 で は な く、姿勢や 身 体 を意識 した運動 と して考 察 してい くこ とを 目的 とす る。

(10)

第 Ⅱ章 学校 柔道 で の外 傷状況

1.学

校 管理 下 での各競技 の外傷状 況 独 立法人 日本 ス ポー ツ振 興 セ ン ター

(2012)に

よる と、平成

22年

度 の 中学 校 での運動 指導 中の負 傷件数 で は、球 技 が最 も多 く

214,730件

で あ り、続 い て 陸上競 技 の

23,667件

で あ り、武道 等 は

17,778件

、器械 体操 が

13,753件

で あつ た。 それ ぞれ の 競 技 種 類 の 中 で 多 か っ た 競 技 が 、球 技 で はバ ス ケ ッ トボー ル

73,197件

、陸上競技 で は短距離 走

7,368件

、武道 等 で は柔道

12,120件

、器械 体 操 で はマ ッ ト運動

5,909件

で あつた。 球 技 が最 も多 い の は競 技 人 口の違 い か ら くる もの と推 察 され る。 また運 動 指 導 内容 と負 傷 部位 の件 数 の 関係 を、それ ぞ れ の競技 の負 傷件数 を

100%と

して 図

1に

示 した。 こ こで 明 らか に な る こ とは、各 競技 にお いて負 傷 部位 が異 な る とい うこ とで あ る。マ ッ ト運動 で は特 に体幹 が多 く中で も頸部 が多 く、短 距離 走 で は下肢部 、 バ スケ ッ トボール で は上肢部 、柔道 で は下肢部 が多 いが 、また他 の競技 と違 い 頭部 が多い。 ■その他 ■下肢部 口上肢部 自体幹部 ■顔部 ■頭部 銚 蝋 鍋 眺 幌 眺 賜 銚 幌 眺 酬 0 9 8 7 6 5 4 3 2 1 図

1

競技別外傷相 関図

(11)

これ らの結 果 か ら言 え る こ とは、外 傷 とは何 らか の外 力 を受 けて初 めて発 生 す る もの で あ るか ら、そ の外 力 を発 生す る動 作等 はそ の競技 の特性 に よ りそれ ぞれ違 うとい うこ とで あ る。表

1の

Bahr(2003)(2005)が

示 した傷害 の リス クフ ァクター に関す るモデル に よ る と、大 き く

3つ

の要 因 を指摘 してお り、そ れ は内的要 因 、外 的要 因 、受 傷 メカ ニ ズ ムで あ る。 内的 、外 的要 因 だ けで は要 因 が あ るだ けで実 際 の外 傷 には繋 が らない。 受傷機 転 とな る外 力 が加 わ る こ と で初 めて外 傷 が発 生す る。 予 防 につ いて は、 ど うい った動 作 か らどの よ うな外 力 が発 生 してい るのか を考 えな けれ ばな らない こ とが示 唆 され る。

2.柔

道 の外傷 状況

i.死

亡・ 頭 頸部外 傷 につ い て 安 全 面 で一番 回避 しな けれ ば な らない死 亡事 故 にお い て は、 内 田

(2011)に

よる と、

1983年

か ら

2009年

まで に

110件

の学校 管理 下 の柔道 での死亡事故 が 表1.傷害のリスクフアクターのモデル

(12)

発 生 してお り、そ の死 亡原 因 は柔道 固有 の動 作 、投 げ技 に よる頭 部 外 傷 に起 因 してお り、実 に

73件

にのぼ る。 そ の 中で も大外刈 りが 関与す る もの

14件

、背 負 い投 げが関与す る もの

10件

あ り目立 って多 い と してい る。そ して留意 点 と し て脳 震 盪 につ い て指 摘 してお り、特 に脳 震 盪 後 の三度 目の頭部 へ の衝 撃 、い わ ゆ るセ カ ン ドイ ンパ ク トの重 要′性を挙 げてい る。 ま た、独 立行 政 法 人 日本 ス ポー ツ振 興 セ ンター 学校 災害 防止研 究委 員 会

(2013)に

よる と、平成

17年

度 か ら

23年

度 にお け る被 災 当初 月額

3万

円以 上 の災害共済給付 され た頭 頸部 の外傷総数 は

4,396件

あ り、そ の内柔道 は

449件

(頭部

313件

頸 部

136件

)で

あ った。活動別 で は体 育 の授 業 時 が

128件

(頭 部

99件

頸 部

29件

)で

あ り、運動部 活動 中が

321件

(頭部

214件

頸部

107

件)と なってい る。また 、運動部活 動 中で の部員

1,000人

当た りの頻 度 で は 0.61 人 で あ り、 ラ グ ビー

2.33人

、 自転 車

1.71人

、相撲

0.85人

、ボ クシ ン グ0。

76人

に次 ぐ頻度 で あ り、卓球やバ トミン トンで は

0.01人

で あ つた。 これ らの 内容 か ら、頭頸部外 傷 の

71.5%は

運 動部活 動 に発 生 してお り、頭 部外傷 が

69.7%を

占 め、競技別 でみ た際 で は、対人接触 競技 に多 く柔道 も頻 度 が高 い こ とが言 え る。 学年 別 で は高

1(23.6%)、

2(20.9%)、

2(20.2%)で

あ つた。 死 亡・ 重 度 障害事故 に至 るケー スでは、高

1が

18件

(33.3%)、 中

1が

15件

(27.8%)

と多 い。 初 心者 に多 い こ とがい え る。発 生 の要 因 では、技 をか け る等 が

407件

(90.6%)で

あ り、技 で は大外 刈 り、背負 い投 げ、 内股 の順 に多 く、受 け身 や 乱 取 りに係 わ る ものが多 い。 死 亡・ 重 度 障害事 故 の ケー スで は 、大外 刈 りな ど で投 げ られ 安全 な受 け身 を取れ なか つたが

44件

(81.5%)、 取 り自 らの技 の失 敗 や相 手 の変化 す る技 に対応 で きなか つたが

10件

(18.5%)で

あつた。それ ら の要 因 と して受 け身 の未熟 や 技 の失敗 もあ るが 、技 能 に勝 る取 りが受 けの力 量 に配 慮せず に投 げた ときが多 い としてい る。

(13)

柔道の死亡や頭頸部外傷事故の特徴は、運動部活動中が多 く、高

1や

2な

どの初心者 に多 く、発生要因すなわち外力 としての技 も、大外刈 り、背負い投

げ、内股 と技が死亡や頭頸部外傷等の重大事故で共通 していることがいえる。

五。その他外傷について

Heinrich,Ho W,Petersen,D。 駅

oos,N(1980)に

よると、

1つ

の重大事故の

背景には、

29の

軽い事故

(イ

ンシデ ン ト

)が

あ り、

300も

の ヒヤ リハ ッ ト

があると述べている。領域によつて異なるが、柔道においても死亡事故や重度

障害事故のよ うな重大事故に至るまでにはインシデ ン トや ヒヤ リハ ッ トが数多

く発生 していることが示唆 され る。独立法人 日本スポーツ振興セ ンター

(2012)

によると、中学校での柔道での負傷は 12,120件

t高

校では 8,320件 である。そ

の内訳は図

2で

ある。

中学校 においては、骨折が 4,419件 、捻挫 3,057件 、打撲、挫傷は 3,077件 、

■柔道(中学校) ■柔道(高校) 図

2

柔道 にお ける負傷 内容

(14)

脱 臼

297件

で あ り、高校 で は骨 折 が

2,093件

、捻挫

2,226件

、打撲 、挫 傷 は2,356 件 、脱 臼

510件

で あ る。 中学校 にお い て は

10,850件

(89.5%)が

、高校 にお い て は

7,185件 (86.3%)が

骨 折 、捻挫 、打撲・ 挫 傷 、脱 臼 とな つてお り、 これ らの外傷 が柔道 で は多 い とい え る。 ハ イ ン リヒの法則 (図

3)に

お い て は、 ピ ラ ミッ ドの頂 点 に死 亡事故 とい う重 大事 故 が あ り、それ を形成 す るイ ンシデ ン トが骨 折 、捻挫 、 打撲・ 挫 傷 、脱 臼 とい う外 傷 で あ り外 傷 には至 らなか つた が ヒヤ リと した こ とい わ ゆ る ヒヤ リハ ッ トで あ る。 柔道 にお け る外傷予 防 に とつ て これ らの ヒヤ リハ ッ ト、イ ンシデ ン トの発 生要 因 を明 らか に して 、死 亡事 故 を含 めた重 大事 故 との要 因 と比較 検 討 し改善方 法 を考 察 す る こ とが重 要 な こ と で あ る。 図

3柔

道におけるハインリヒの法則による概念図

3.柔

道 にお け る ヒヤ リハ ッ トと骨 折 、捻挫 、打撲・ 挫 傷 、脱 日の発 生要 因

i.質

問紙 の作成 実際 の現 場 で発 生 して い る外 傷 、 ヒヤ リハ ッ トを把握 す るた め質 問紙 を作成 した。 イ ン シデ ン ト、 また重 大事 故 が柔道 や そ の他 ス ポー ツで発 生 した場合 、

(15)

そ の後 の治 療 が重 要 に な る。 治療 とは実 際 の外 傷 に対 す る手 当や 処 置 だ け をい うの で はな く、検 査や診 断 も治療 の一 環 に あ る。 特 に治 療 の方 向性 を決 定す る 診 断 は重要 で あ る。 国分 ら

(2008)は

、外 傷 の診 断 で は年 齢 や受傷機 転 は重 要 で あ り、年齢 に よ る特 有 の外 傷や 、外 力 の方 向、作 用部位 、受 傷 時 の肢位 が重 要 な意 味 を持 つ と してい る。 柔道 の主 な鍛錬 は技 を身 につ け磨 い てい くこ とで あ るので、柔道 技 そ の ものが外 力 とな り、外傷 要 因 の最 も重要 な部分 で あ る。 また、

Bahr(2003)(2005)が

示 した傷 害 の リス クフ ァクター の

3つ

の要 因 で あ る、 内的要 因 、外 的要 因 、受傷 メカニ ズ ム を考慮 し項 目を決 定 した。 ヒヤ リハ ッ トにつ いて は

7項

目か らな る。 内的要 因 の習 熟度 を測 る為 、段位 と柔道 経験年数 を尋 ね た。(質問1、

2)内

的要 因 で あ り診 断 にお いて の重要情 報 で あ る年齢 を学 年 と して尋 ねた。(質問

3)環

境 要 因 で あ る練 習場 面 を尋 ね た。 (質問

4)傷

害予 防 、受傷機 転 にお い て重 要 な外 力 で あ る技 を尋 ね た。(質問

5)

実 際 に技 をか け られ た 際 の 内的要 因 で あ る受 けの状 態 、外 的要 因で あ る取 の状 態 、指 導者 の状 態 、 ま た環境 要 因 で あ る施 設 、そ の他 の練 習者 な どの状 況 を尋 ね た。(質問

6)ど

の よ うなケガ に至 る可能性 が あつた か を尋 ね た。(質問

7)

外傷 につ いて は

12項

目か らな る。重 大事 故 以外 のイ ンシデ ン トと して 、柔道 にお い て発 生 しや す い骨 折 、脱 臼、打撲 、捻挫 、挫 傷 に限定 し、 ヒヤ リハ ッ ト と比 較検討 す るた め 同 じ質 問 を使 用 した。 ヒヤ リハ ッ トで のケ ガ に至 る可能性 の質 問は変更 し、実際の外傷 が どの部分 で あったか を尋 ね た。(質問

1)段

位 と 柔道 経 験年数 を尋 ね た。(質問2、

3)年

齢 を学年 と して尋 ね た。(質問

4)練

習場 面 を尋 ね た。(質問

5)重

要 な外 力 で あ る技 を尋 ね た。(質問

6)ケ

ガ を し た対象者 が受 けか取 りか を尋 ね た。(質問

7)受

傷機 転 で あ る受傷 時 の肢位 や 作 用部位 を測 るた め どの よ うにケガ に至 ったか を尋 ね た。(質問

8)実

際 に技 をか け られ た際 の 内的 要 因で あ る受 けの状態 、外 的要 因で あ る取 の状 態 、指 導者 の

(16)

状態 、また環境 要 因 で あ る施 設 、そ の他 の練 習者 な どの状 況 を尋 ね た。(質問

9)

ケガ を した対象者 は どの よ うな医療機 関 に掛 か ったか を尋 ね た。(質問

10)ケ

ガ の予後 を尋 ねた。(質問

11)ケ

ガの治療 での リハ ビ リや機 能 回復 訓練等 を行 って いたか尋ね た。(質問 12) また 、 ヒヤ リハ ッ トした こ とや 実 際 の外 傷 の経 験 か ら どの よ うな対 策 や 注意 を指 導 時 に してい るか尋 ね た。(自 由記 述) 五

.方

法 調査 手続 兵庫 県 体 育連 盟 柔道 部 会 所 属 の各 会員 に質 問紙 調査 票 を郵 送 し、 回 答 を依 頼 した。 調査 時期 平成

24年

8月

。 調査票

ヒヤ リハ ッ トについて

7項

目、外 傷 につ いて

12項

目、事故 を起 こ さ ない よ うど うい つた対策 を とつてい るか の 自由記述

1項

目、計

20項

目の質 問か らな る。 自由記 述 以外 は番 号選択 制 の質 問 とな ってお り、

A4サ

イ ズ

2枚

で あ る。

(17)

第 Ⅲ章 ヒヤ リハ ッ トと外傷 の実態調査 にお ける結果 と考察

1.回

答 率 と回答者 の基本情 報 につ いて 回答 率

34.1%(酉

己布 総数

158

回答数

54)で

あ つた。回答者 の性別 は男性

50

名 、女性

4名

で あ った。年齢 は

20歳

代 が

3名

30歳

代 が

14名

40歳

代 が 14 名 、

50歳

代 が

22名

60歳

代 が1名で あ つた。柔道 の段位 は五段 が最 も多 く

37.0%

で、次 いで 四段 と六段 がそれ ぞれ

22.2%で

あった。柔道 歴 は

20年

以上 が

74.0%

で、次 いで

15年

以 上

20年

未 満 が

13.0%で

あ つた。指導歴 は

20年

以上 が

64.8%

で あ り、次 いで

5年

以上

10年

未満 が

16.7%で

あ つた。また、指 導対象 につ い て は、高校 部活動 が最 も多 く 75。9%、 次 い で高校授 業 53.7%、 中学授 業 35。

1%で

あった。 石川

(2009)ら

は ヒヤ リハ ッ ト認 知 能 力 には メ タ認 知 が重要 で あ る と して い る。 メ タ認 知 とは① 自分 自身 の心 と行 動 を知 る 自己モ ニ タ リン グ機 能 、② 自分 自身 の心 と行 動 を状 況 にふ さわ しい よ うに 自己 コン トロール す る機 能 の

2つ

か らな る。 また石 川

(2009)ら

は保 育 士 の ヒヤ リハ ッ ト体験 の研 究 にて 、保 育経 験年 数 と他 者 、 こ こで は保 護 者 、他 の保 育 士 、保 育 実習 生 に感 じる ヒヤ リハ ッ トで は正 の相 関が あ る と してい る。海 保

(2005)は

メ タ認 知 にお い て過 去 を振 り返 る こ と、事 後 に振 り返 る こ とが ヒヤ リハ ッ ト分析 で あ るか ら経 験 が増加 す れ ば、そ の振 り返 りを多 くす る こ とに な り他 者 に感 じる ヒヤ リハ ッ トの感 受性 が高 くな る と してい る。今 回 の回答者 も柔道歴 は

15年

以 上 が 87.0%、 指 導歴 に つ い て も

10年

以 上 が

79.6%で

あ り、経験年数 か らも十分 ヒヤ リハ ッ ト認 知能 力 が あ り、信 頼 で き る回答 で あ る と考 え られ る。 ヒヤ リハ ッ トと外傷 の結 果 につ いて 段位 、学年 、柔道 経験年 数 ︵ Z     .

(18)

ヒヤ リハ ッ ト総数 は

127件

で授 業 で の ヒヤ リハ ッ トが

49件

、部活動 で の ヒヤ リハ ッ トが

78件

で あった。外 傷 の総数 は

179件

で あった。 図

4で

示す よ うに、ヒヤ リハ ッ ト対象者 の段位 につ い て は全 体 で無段 が

72名

(授業

41名

、部活 動

31名

)56.7%、

初段 が

38名

(部活 動

38名

)30.0%、

二 段

5名

(部活動

5名

)3.9%、

不 明が

12名

(授業

8名

、部活動

4名

)9.4%で

あ つた。外傷 の対象者 の段位 は、無段 が

57名

(31.8%)、 初段 が

100名

(55.9%)、 二段 が

18名

(10.0%)、

3段

3名

(1.7%)、 不 明が

1名

(0.6%)で

あ る。 160 140 120 100 80 60 40 20 0 ■外傷 ■ヒヤ リハ ッ (部活動) ■ヒヤ リハ ッ (授業) 無段 初段 3段以 上 不 明 図

4

ヒヤ リハ ッ トと外傷 の対象者 の段位 の比較 ヒヤ リハ ッ ト対象者 の学年 は、中学 で は全 体 で

1年

生 が

15名

と最 も多 く、高 校 で も

1年

生 が

45名

と最 も多 い。外 傷 の対象者 の学年 にお い て も高校

1年

が最 も多 く、次 いで高校

2年

で あ つた。(図

5)

段位 につ い て は ヒヤ リハ ッ トを感 じる対象者 が無 段 、初 段 が合 わせ て全 体 で 86.7%、 実際 の外 傷 とな つた対象者 で は

87.7%を

占めてお り、学年 につ い て も ヒ ヤ リハ ッ トを感 じる対 象者 、 実際 の外 傷 とな つた対象者 はそれ ぞれ 中学 、高校 ともに

1年

生 が多 い傾 向が あ り、学年 が上 が るにつれ件 数 は少 な くな つてい る。

(19)

これ らの結 果 か ら初 心者 に対 して ヒヤ リハ ッ トを感 じる こ とが多 く、外 傷 も初 心者 に多 い こ とが わ か る。 60 50 40 30 20 10 0 ■ヒヤ リハ ッ ト (授 業) ■ヒヤ リハ ッ ト (部活 動) 日外傷

♂♂澪ξξ藁 ―

:′

:)

5

ヒヤ リハ ットと外傷の対象者の学年の比較 図

6に

示す ヒヤ リハ ッ トと外傷 の対象者 の柔道 経験年 数 につ いて は、全 体 で

1年

未満 が

67名

(授業

33名

、部活 動

34名

)52.7.%、

1年

以上

2年

未満

23名

(授業

9名

、部活 動

14名

)18.1%、

2年

以上

3年

未満

8名

(部活動

8名

)6.3%、

3年

以 上

18名

(部活動

8名 )14.2%、

不 明が

11名

(授業

7名

、部活 動

4名

) 8。

7%で

あつた。 外傷 対象者 の柔道 経験年数 は、

1年

未満 で

54名

(30.2%)、

1年

か ら

2年

未満 で

42名

(23.5%)、

2年

以上

3年

未満 が

25名

(13.9%)、

3年

以上 が (32.4%) で あった。 ヒヤ リハ ッ トを感 じる経 験年数 は

1年

未満 が 52。

9%で

半数 を超 えて お り、外傷 も約

3割

が経 験年 数

1年

未満 に発 生 してい る。 また、柔道 経 験 年 数 が増 え るにつ れ て ヒヤ リハ ッ トと外 傷 の対象者 は減 少 す る傾 向にあ るが、経 験 が

3年

以上 にな る と特 に部活 動 で の ヒヤ リハ ッ トが上昇 してお り、 同 じく外 傷 も多 く発 生 してい る。 これ らの結 果 か ら初 心者 と

3年

(20)

上 の 中級者 に外 傷 が多 い こ とが い え る。 柔道 経験 の少 ない初 心者 は様 々 な要 因 で外 傷 が多 い が 、経 験年 数 が増 え、指 導者 が ヒヤ リハ ッ トを感 じる こ とが少 な くな る程度 に生徒 が柔道 に順応 して い く反 面 、別 の要 因 が積 み重 な つて外 傷 が 多 くな ってい る と考 え られ る。 70 60 50 40 30 20 10 0 ■ヒヤ リハ ッ (授業) ■ヒヤ リハ ッ (部活 動) 日外 傷 1年未 満 1∼2年 2∼3年

3年

以 上 不 明 図

6

ヒヤ リハ ットと外傷の対象者の柔道経験年数の比較 五

.練

習場 面 、原 因 とな る技 、要 因 につ い て ヒヤ リハ ッ ト全 体 で は、突 出 して乱取 時 が多 く半数 以 上 で あ り次 いで投 げ込 み 、試 合 で あ り、技 を多 く掛 け合 う練 習 時 に ヒヤ リハ ッ トを感 じる こ とが多 い こ とがわか る。外 傷発 生時 の練 習場 面 で は、乱 取 が

134件

(74.9%)、 試 合 が

29

(16.2%)で

あ り、

9割

以上が技 を掛 け合 う場面 と回答 してお り、外傷の底辺

にあるヒヤ リハ ッ トで同 じ要因が存在す ることが示唆 され る。

(図

7)

(21)

250 200 150 100 50 0 外傷 ヒヤ リハ ッ ト ヒヤ リハ ッ ト (部活動) (授業)

0ご

ヾ ヽ

/ノ

η

7

ヒヤ リハ ッ トと外傷 の対象者 の練習場面の比較 外 力 とな る技 につ い て は、 ヒヤ リハ ッ トで は背負 い投 げが最 も多 く、次 い で 大外刈 、内股 、払腰 の順 で あ る。外 傷 にお いて も背負 い投 げ

(20.6%)が

最 も多 く、払 い腰 (16.0%)、 内股 (9。7%)、 大外刈

(6.9%)出

足払 い (5。

7%)と

なっ てお り、その他 (9.7%)、 不 明

(10.8%)で

あつた。 ヒヤ リハ ッ トと外傷 で技 が 共 通 してお り、技 につ い て も外傷 の底辺 の ヒヤ リハ ッ トには、 同 じ要 因 が存在 してい る こ とが わか る。(図

8)

80 70 60 50 40 30 20 10 0 日外傷 ■ヒヤ リハ ッ 活動) ■ヒヤ リハ ッ 業) 卜(部 卜(授

ダど ヽ

SSSSS

炉屏ξ勿さ

8

ヒヤ リハ ッ トと外傷 の対象者 の原 因技 の比較

(22)

で は 、 どの よ うな要 因 が あ るか につ い て質 問 で は大 き く

3つ

に分類 した。 そ れ は受 けの要 因、取 りの要 因、環境 要 因 の

3つ

で あ る。 図

9に

示す よ うに、 ヒ ヤ リハ ッ トで は受 けの要 因 で は

<受

けが うま く受 け身 を取れ なか った>、

<受

けが投 げ られ まい と した

>と

い う要 因が多 く、また

<受

けの体 力不 足

>が

あげ られ て い る。 取 りにつ いて は 、

<取

りが強 引 に技 をか けにい つた>、

<取

りが 低 く技 に入 つた

>が

多 い。 外 傷 時 で は受 けの要 因 と して は 、

<受

けが投 げ られ まい と した>、

<受

けが うま く受 け身 を とれ な か った

>が

最 も多 い。 取 りの要 因 で は

<取

りが強 引 に技 を掛 けにい つた>、

<取

りが低 く技 に入 つた>、

<取

りが技 の途 中で崩 れ た

>

が多 い。 環境 要 因 と して、

<受

け取 りの体型 や 技術 が あ ってい ない

>が

挙 げ ら れ てお り指 導者 側 の要 因 も見 られ た。 この結 果 か らヒヤ リハ ッ トと外 傷 で要 因 が共通 して い る こ とが わ か る。 ま た

<受

けが投 げ られ ま い と した>、

<受

けが うま く受 け身 を とれ なか った

>等

の受 けの要 因が取 りの要 因 よ り多 く、取 りよ り受 けの問題 が多 い よ うに思 え る。確 か に単純 に受 けの受 け身 の技術 不 足 とい う部 分 も考 え られ るが 、技 の ア クシ ョンは取 りか ら始 ま るので取 りの要 因 で あ る

<取

りが強 引 に技 をか けにい つた>、

<取

りが低 く技 に入 つた

>と

い う要 因 は注 目す べ き ところで あ る。 強 引 に技 をか け る、低 く技 に入 るそ の行 為 自体 が す で に体勢 が崩 れ て い る こ とを意 味 し自身 の荷 重 はお ろか相 手 の荷 重 に も耐 え られ ない状態 で あ る こ とが考 え られ る。 また、 これ らの要 因 の結 果 か ら、荷 重 に耐 え られ ない身 体 、特 に下 半身 で あ るか ら技 を掛 けにい つて も低 くな って しま う、強 引 に な って しま うとい うこ と が考 え られ る。 それ は柔道 の経 験年数 で初 心者 と

3年

以上 の 中級者 に多 い点 が 重 要 で あ る。 初 心者 の多 くは初 めて の荷 重 競技 で あ り、 まだ身 体 が しつか りで きてい ない為 、荷 重 に耐 え られ な い こ とがい え る。 そ して 、そ の初 心者 の頃 か

(23)

ら発 生す る大小 の外 傷 が 中級 者 で は問題 で あ る。 ス ポー ツな どで一 度 傷 つ い た 組 織 は癖痕 化 し脆 弱 に な る こ とが わか ってい る。 よつて そ の部 分 を補 強す る為 に も筋カ トレー ニ ン グを含 む補 強 の た め の運 動 は重 要 で あ る。 柔道 とい う格 闘 技 で は負 荷 が強 い た め よ りこ うい つた補 強 の た めの運 動 は重 要 で あ るが 、外 傷 の発 生頻度 が

3年

以上 の 中級者 に も多 く発 生 して い る点 か ら見 て も、 あま り実 践 され てい ない と思 われ る。 柔道 に順 応 してい く反 面 、外 傷 が増 え る要 因 は、 怪 我 を して脆 弱 に な り、荷 重 を しつか り支 え られず ま た怪 我 をす る とい う悪循 環 の積 み重 ね で あ る。

(24)

そ の他 寝技 で優勢者 が無理 な抑 え方 を した。 寝技で劣勢者 が無理 に逃 げ よ うとした。 寝技 で優勢者 が `参 り″を無視 した。 寝技 で劣勢者 が `参 り″を我慢 した。 柔道場 等 の温度や湿度 が高 か つた 対象者 の体調不 良であつた。 柔道場 等 の換気 が悪 か つた。 他 の練 習者 がぶつ か って きた。 壁 な どに ク ッシ ョンがない。 周 りに ものが置 いてあつた。 練習 人員 が多か った。 畳 な どが傷 んでいて足 な どを取 られ た。 指導者 の注意が向いていなかった。 受取の体型 や技術 が合 つていない。 立技 と寝技 を同時に していた。 取 りが技 の途 中崩れ た。 取 りがふ ざけていた 。 取 りの注意力低 下。 取 りが周 囲 を見ていなか った。 取 りが低 く技 に入 つた。 取 りが引手 を離 した。 取 りが強 引 に技 を掛 けにい つた。 受 けがふ ぎけていた。 受 けの注意力低 下。 受 けの体力不足。 受 けが投 げ られ る際取 りの袖や襟 を離 し― 受 けが疲 労 していた。 受 けが周 囲 を見ていなか つた。 受 けが上 手 く受 け身 を取れ なか つた。 受 けが投 げ られ まい とした。 図

9

ヒヤ リハ ッ トと外 傷 の要 因 の比較 Ш

.ケ

ガの可能性 部位 と外傷 の 内訳 、 リハ ビ リ状況 、現在 の外傷 状態 につ い て で は実際 、外 傷 後 等 の補 強運動 が実 践 され て い るか ま た 、そ の後 の状 態 は ど うな ってい るのか ま とめた。 まず 、 ヒヤ リハ ッ トにお い て、 どの部 分 の ケガ に 至 る可能性 が あ つたか とい う質 問 では、頭 部 が最 も多 く

59件

(36。2%)、 次 い で 頸部

45件

(27.6%)、 上肢部

28件

(17.1%)と

な つてお り、頭 頚部 のみ で

63.8%

(25)

あ り頭 部へ の危 険性 が多 か った こ とが わか る。(図 10) い る脳 震盪や頭 部外 傷 が初 心者 に多 く発 生 してい る こ これ は現在 問題 とな っ て と と も重 な って い る。 70 60 50 40 30 20 10 0 頸 部 上肢部 下肢部 背 部 腹 部 その他

不明 10 図

10

ヒヤ リハ ッ ト対象者 の ケガ 可能 性 部位 外傷 の内訳 と して、骨 折

70件

、脱 臼

43件

、打撲

20件

、捻挫

34件

、挫 傷 12 件 で あ った。 骨 折 で は、鎖骨 が最 も多 く、足 関節 、肩 関節 、足指 部 が多 い。 脱 臼で は肩 関節 、肘 関節 が ほ とん どで あ つた。 打撲 は頭 部 や 、下腿 が多 い。 捻挫 は足 関節 が多 く、次 い で膝 関 が多 い。 掛 か った 医療機 関 につ い て は 、病 院等 が 63.3%。 整骨 院 が 13.9%、 行 つてい ないが

7.4%で

あつた。

■積 極 的 に行 つ │ て いた ■少 し行 つて い た あ ま り行 って い ない ■ほ とん ど行 つ て い ない 賢不 明等 図

11

外傷者 の リハ ビ リ状況

(26)

不明 日常生活 において も支障が ある 痛 みがあ り体の動 きな どに制限が あ る 痛みはないが体 の動 きに制限が ある 治癒 してお り柔道 に支障がない 図

12

現在の外傷の状態について 図

11の

外傷者 の リハ ビ リ状 況 で は、 リハ ビ リを積極 的 に行 つていたが

48.6%

で あ り半数 以 上 が あま り積極 的 で は なか つた こ とが わか る。 これ は もち ろん外 傷 の重症 度 な どが考 え られ る もの の 、指 導者 に一度怪我 を した部 分 は弱 くな つ て しま うとい う認 識 が低 い こ とが考 え られ 、そ の為 に生 徒 自身 もそ うい つた教 育 が な され ず認 識 が低 い ので 、補 強 のた めの運 動 は あま り行 われ て い ない こ と が この結果 か ら示 唆 され る。 図

12の

現 在 の外 傷 の状 態 をみ て も指 導 者 が把 握 で きて い な い 不 明 を含 め

16.2%に

制 限や 痛 み 、支 障 が あ りそれ は再受傷 の要 因 とな る。 市。 自由記 述 につ い て 指 導者 の経 験 上 か らの事故 対策 につ い て回答 して いた だい た。 表

2に

示す よ うに、外傷 予 防 の観 点 か ら ど うい つた要 因 に対 して指 導 してい るか を分類 しま とめた。指 導者 は 内的要 因 で あ るス キル や メ ンタル 面 、外 的要 因 で あ る競技 特 性 部 分 、環境 を整 え る こ とを 中心 に指 導 してい る こ とが わか る。反 面 、体型 (ア ライ メ ン ト等)、 フ ィジカル フ ィ ッ トネ ス な どに視 点 を置 い た指 導 は あま りされ て い ない。 これ は トレー ニ ングや ア ライ メ ン ト等 につ い て学 ボ機 会 が少 ない こ

(27)

とが原 因 と考 え られ る。 山本 (2004) 列 の こ とで あ り骨 の形 、骨 の並 び の こ く捻 じれ が あ りこの捻 じれ が強 くな る き く影 響す る。 に よる とア ライ メ ン トとは骨 、 関節 の配 とで あ る。 人 体 の構 造 は真 っ直 ぐで は な と問題 で あ り、 ス ポー ツ外 傷 の発 生 に大 表

2

要 因別指導者 の事 故 対策 ︱ ︱ ストレッチ 経験 1年未満で体力が不足しているものの事故が多いようなので筋カトレーニングを充実 身体全体の力をつけるための体幹トレーニングや部活動では調整力を高めるトレーニングをしている 無理せず自ら受け身をとる(転ぶなど)ことを指導している 受け身をまずはしつかり取れるようになるまで投げ込み等(上級者が取り) 左右の前回り受け身を身につける為、取りが左右の技を掛け、受けは受け身 (前回り受け身)を左右しっかり練習する。特に初心者は肩回りの柔軟体操をしつかり行なわせる 無理に投げられないようにと手をつかないように 投げるとき無理に巻き込まないこと 有段者や3年 以上の経験者でもウオーミングアップ不足で事故がおきやすい 経験 1年未満で体力が不足しているものの事故が多いようなので筋カトレーニングを充実 受け身の徹底 正しい技をかける 正しく柔道着を握る ほどよい緊張感とリラックスを持たせる 集 中させる 正しい姿勢 修行している心を持つ(ふざけない等) 初心者に段階的な指導。生徒の疲労度を見ながら練習メニューを考える 参りを我慢させない 興味をもたせつつも無理のない指導計画をたてていくことが大切 全体の把握を忘れないようにしている 段階指導 違いから速い 低から高 組数が多くならないように。投げられたりしたらすぐにおきること 周りをみながら 乱取りの人数調整 練習は集中して短時間に行なう 指導者が選手の様子に気を配ること

(28)

生徒同士にも注意しあいをさせる。 乱取りや試合は時間を短く集中してやらせる。 体格(体重別)をできるだけそろえる 稽古の適正人数無理をさせないこと その他(注意喚起) 初心者には乱取りを始める頃には必ず事前にどういう状況のときにどういう事故が が多く発生するかを実際に示範して生徒に十分理解させた上で実施する ケガや事故がおきやすい状況、パターンの説明をしつこく 授業では、この投技のときはこのようなケガが起こりやすいと、技の説明時に必ず注意する。 技のかけ方、なげられかた、周囲の状況、段階的注意必要なときは何時間でも言い続けること 素人にはケガのおきるケースを何回も伝える また も う

1つ

重 要 な こ とは、そ の他 の記 述 につ い て共通 してい る ものが あ る。 それ は ど うい つた危 険 が あ るか の注意 を喚起す る こ とで あ る。 長 年 の指 導や 競 技 経験 か ら危 険 に 関 して の感 受性 が強 くな つてい る こ とで で き る こ とで あ り、 ま た学 生 に はそ の感 受性 が低 い こ とが考 え られ る。 この感 受性 は ま さに内的要 因 で あ りこれ まで の 内的要 因 に危 険察知 能 力 と して必 要 な部 分 で あ る と考 え ら れ る。(表

3)

3

外傷 の リス クフ ァクター図 (齋藤)

(29)

v.崩

れ に くい身 体 の重 要性 これ までの結果 か ら、ヒヤ リハ ッ トで は授 業 と部活動 の比較 で は、部 活動 は 3 年 次 にお いて も多 く報告 され てお り、授 業 で は

1年

次 が多 く

3年

次 はなか った。 外 傷 も授 業 時 につ い て は年 次 が上 が るにつれ て少 ない こ とが考 え られ る。 しか し、授 業 と部活 動 を合 わせ た ヒヤ リハ ッ トで は外 傷 も同様 に初 心者 に多 く、練 習場 面 と して乱 取 りや試 合等 の技 を掛 け あ う場 面 に多 い こ とが わか った。 ま た 原 因技 と して背負 い投 げ、大 外刈 、 内股 、払腰 が共通 して多 く、 ヒヤ リハ ッ ト で は頭 部外 傷 の危 険性 が最 も高 くな って い る。 これ らは、 内 田

(2011)や

日本 ス ポー ツ振 興セ ンター

(2012)の

死 亡 、重症外 傷 の結 果 と同 じで あ り、 ヒヤ リ ハ ッ トを底辺 と し、イ ンシデ ン トで あ る外傷 と、頂 点 で あ る死 亡、重症外傷 の ピラ ミシ ドが成 立す る。 これ に よ リヒヤ リハ ッ トや外 傷 の要 因の改善 が、外傷 は もちろん死 亡事 故 の抑制 に繋 が る。 そ して、先行研 究 で は 明 らか に され なか つた ヒヤ リハ ッ トと外 傷 時 の要 因 と して 、今 回

<受

けが投 げ られ まい と した>、

<受

けが うま く受 け身 を とれ なか った

>と

い う受 けの要 因が多 く、取 りの要 因で は

<取

りが強 引 に技 を掛 けにい った>、

<取

りが低 く技 に入 つた>、

<取

りが技 の途 中で崩 れ た

>が

多 い こ と が わか つた。 そ の原 因 は、荷 重 に耐 え られ ない身 体 で あ る こ とが示 唆 され る。 そ の理 由 と して 、

1つ

は今 回 の調 査 で指 導者 や 生徒 が 、外 傷 後 の脆 弱性 の認 識 を してお らず 、半数 以 上 が外 傷後 の トレー ニ ン グや 治 療 に積 極 的 で は なか つた 点 で あ る。 それ に よ り外傷 後 の組 織 の脆 弱化 か らくる繰 り返 し損 傷 が身 体 の支 持機 構 を弱 く して しま う。 も う

1つ

が 、指 導 と して受 け身等 の ス キル 面や集 中 させ る等 の メ ンタル 面 、人数 調整 等 の環境 面 は しつか り行 つて い るが 、体 力 、 体型 面 こ とに身体 の軸 で あ るア ライ メ ン トに対 して の補 強運動 等 は ほ とん ど考

(30)

慮 し実 践 され てい ない点 で あ る。 外 傷 予 防 には外 傷 の リス クフ ァクター で あ る これ ら要 因 に も改 善 を加 え る こ とは重 要 で あ る。 注意 喚 起 を しつか り行 い危 険 察知能 力 を高 め、 大 きな要 因 と判 明 した受 け身 や技 に対 しての ス キル 面 で の介 入 、環境 面 の配 慮 は行 つてい るが 、 内的要 因 で あ る身 体 の軸 で あ るア ライ メ ン トに対 して の補 強運 動 へ の介入 が不 足 してい る と予 防 と して不十分 で あ る。 今 回 のア ンケー トの結果 か ら、外 傷 の発 生 要 因 で あ るア ライ メ ン トに対 して の認識 、補 強不足 が、柔道 の初 心者 や 中級者 の技 の崩れ か らくる外傷 の大 きな 原 因 にな ってい る こ とが示 唆 され た。 身 体 の軸 で あ るア ライ メ ン トに対 して の 基礎 的 な トレー ニ ングが必 要 と考 え られ 、そ の運 動 法 を考察 し例 示す る。

(31)

第Ⅳ章 崩 れ に くい身 体 につ いて 1。 身 体 の軸 と安 定

i.負

荷 と応 力集 中 崩 れ に くい身 体 をつ くる うえで 、 まず 身体 の軸 とな るア ライ メ ン トを考 えな けれ ばな らない。 最 も関係 が深 い の は姿勢 で あ る。 例 えば真 っ直 ぐな 円柱 と少 しくの字 に 曲が つ た 円柱 が あれ ば 、上方 か ら負 荷 をか けた場合 真 っ直 ぐな 円柱 の強度 が強 い の は想 像 に易 い。 そ して少 しくの字 にまが つた 円柱 で は、 くの字 部 分 か ら崩 れ て しま う、つ ま り応 力集 中で あ る。 これ を人体 に置 き換 えてみ る と、例 えば 同 じ体 格 で 円背 に な っ てい る人 とそ うで ない人 に上 方 か ら負 荷 を掛 か けれ ば、 円背 に な つて い る人 の ほ うが崩れ て しま うこ とが想 像 で き る。 特 に 高齢者 の脊椎圧 迫 骨 折 後 に、背 中 に負 荷 が多 く掛 か り、破 壊 され崩 れ て しま い 円背 が進 む こ とが あ る。 つ ま り姿勢 が悪 い と悪 い部 分 に応 力 が集 中 し壊 れ て崩 れ て しま う可能性 が大 きい ので あ る。 人 間の体 は 、重 力 を骨 軸 に沿 つて地 面 へ と伝 え、そ して地面 か らの抗 力 、反 力 を骨 軸 に沿 つて任 意 の場 所 に伝 え る こ とで作用 す る力 を生む。 歩 行 が 良い例 で あ る。 よつて 、力 の方 向、ベ ク トル が変化 し うま く軸 を伝 わ らない状態 に な れ ば、大 きな荷 重 がか か つた際 そ の部 分 に重 力 、抗 力 とい つた力 が集 中 し破 壊 を もた らす。 身体 の軸 い わ ゆ るア ライ メ ン トの乱れ は、応 力集 中に よ り外傷 の原 因 とな り、 またそ の外 傷 に よ る組 織 の脆 弱性 が さ らな る外 傷 に繋 が る、そ の悪 循 環 を改 善 す るにはまず 姿勢 を改善す る こ とが重 要 で あ る。 五

.姿

勢 につ い て で は 身 体 の 軸 が しつ か り した 良 い 姿 勢 とは ど うい う姿 勢 な の か 。 猪 飼 や

(32)

Steinhausは

次 の よ うに定義 してい る (金子 2010)。 (図 12) 猪飼

①力学的にみて安定であること ②生理学的にみて疲労しにくいこと ③医学的にみて健康であること ④心理学的にみて気持ちの良いこと ⑤美学的にみて美 しいこと ⑥作業能率か らみて能率の良いこと

Stdnhaus

easy(楽

である) ②non‐tiring(疲れない) ③ready tO mOve(動 きやすい) 図

12姿

勢 の基 準 (金子訳) 一 見す る と抽 象 的 で あ るが 、力学 的 な面 か らみ て安 定 で あ る とい う部 分 で は実 際 の重 心 を見 る とわか りやす い。(図

13)力

学的 にみ た正 常立位 姿勢 で は、側 面 か ら見 る と、重 心線 が 耳垂 と肩 の先 の部 分 で あ る肩峰 、太 ももの外側 の 出 つ張 つた骨 の部 分 で あ る大転子部 、つ ま先 と踵 の 中間 か、や や つ ま先 よ りで、 くる ぶ しよ り少 し前 に落 ち る。 正 面 か らは体 の正 中 とい う真 ん 中を通 る。 実 際 この よ うに重 心線 が真 っ直 ぐにそ ろつて立 ってい る人 は少 ない。

(33)

13

正常立位 姿勢 での重心線 (側面) 実 際 、足組 みや 、横 座 り、足 を交差 させ て立つ 、休 めの姿勢 の よ うに どち ら か の足 にだ け体重 をか けて立 って い る等 の不 良姿勢 は姿勢悪化 の原 因 とな る。 また 、下肢 で は

X脚

O脚

とい った 姿勢 異 常 も見 られ る。 文字 通 り正 面 か ら 見 た際 に、

Xま

た は

0の

形 に下肢 が変形 して い る。 特 に

O脚

は膝 の変形 の進 ん だ高齢 者 な どに顕 著 にみ られ る こ とが多 い が 、最 近 は子 どもに も多 い。 この立 位 姿勢 だ けで も

X脚

は膝 の外 側 に、

O脚

は膝 の 内側 に負 担 が掛 か る。 ま た こ う い った姿勢 異常や最 近 の靴 な どの影響 で 、足部 の重 心 が前方 に偏移 してい る こ とも多 い。 ヒール の高 い靴 な どは特 に著 明 で あ り、 問題 は足部 に留 ま る もので は ない。 足 部 の重 心 が前方 に移 る こ とで 、体 が前傾 しそれ を支 え られ ず 、膝 を 曲げて重 心 を戻す 。 しか し、そ の為 に骨盤 は後 ろに傾 き、今 度 は重 心 が後 方 ヘ 移 るので 、腰 椎 は必 要 以上 に前弯 し重 心 を戻 そ うとす る。 そ うす る と重 心 が前 方 へ移 るの で猫 背 の姿勢 で背 中 を 曲げて重 心 を後 方 へ移 す。 足 の重 心 が変化 す るだ けでそ の上方 に あ る構 造 も大 き く変 化 して しま う。 骨盤 が前傾 も しくは後

(34)

傾 した状態 とな り骨盤が立っている正 しい姿勢が とれな くなる。また足部の前

方荷重は足の指 もしつか り使 えな くなる原因でもあ り、 しつか りと地面を踏み

しめることもできな くなる。

X脚

O脚

といつた姿勢異常や足部の退化や変形

等の下半身の問題 は上半身の姿勢 にも影響す る為、姿勢 を改善 してい く上では

まず土台である下半身に対 して先に介入 しなければならない。

面。静的安定 と動的安定

これまで述べてきたことは、立位や座位な ど静止 した状態での安定について

であった。つま り静的な安定である。 しか し、柔道は技 を掛 けた り掛 けられた

りと常に動作を伴 うものであ り、止まつていることがない。 よつて静的な安定

とともに動 きの中での安定、つま り動的な安定が重要である。立位姿勢で特に

問題がなさそ うであつて も実際歩いた り、走つた り、リヒ

躍 してみるとその動的

安定が崩れていることがある。動的な安定性 を見 る上で川野

(2004)は

、実際

に動きの中で下肢に荷重をかけた際の変化を図

14の

よ うに表 している。

(35)

Knee‐out‐toe…in

14

下肢荷重時の変化

荷 重 が か か つ た 際 に 、 ニ ュー トラル は膝 頭 とう ま先 の 向 きが揃 つ て い る。

Knee‐in‐toe‐

outは

膝 が 内側 に入 り、つ ま先 が外側 に向 くこ とで あ る。 これ は膝

の 内側 に負担 がかか り障害 を もた らす。またKnee‐out‐toe‐

inは

膝 が外側 に向 き、

つ ま先 が内側 に入 る こ とで あ る。 これ は膝 の外側 に負担 がかか り障害 を もた ら す。 動 的 な安 定 を確 立す るた めに は 、静 的 な安 定 を確 立 させ 、そ して動 作 の 中で 安 定 させ る訓練 が必要 で あ る。 市

.筋

肉 と姿勢 身体 の 中で唯一 カ をだせ る器 官 が筋 肉で あ る。 身 体 の動 作 を担 う骨 格 筋 は、 関節 をまた ぐこ とで収縮 した 際 に関節 に動 きがお こ り様 々 な動 作 とな る。 しか し、筋 肉は一般 的 なイ メー ジで は骨 か ら骨 へ と付 着 して い る よ うに思 え るが 、 実際 は骨 か ら骨 だ けで は な く筋膜 や腱 とい つた軟 部組 織 に付着 して い る こ とも 多 い。 ふ く らは ぎの筋 肉で あ る下腿 三頭 筋 と太 も もの裏 の筋 肉で あ る大腿 二頭 筋 な どが 良い例 で あ り、

1つ

の筋 肉が働 けば連動 して他 の筋 肉 も働 く。 そ して 一番 重 要 な こ とは 、軸 が変化 す れ ば働 く筋 肉が全 く異 な る とい うこ とで あ る。

(36)

松村

(2013)ら

は、 内反膝 で は太腿 の外側 の筋 肉が強 く、外反膝 で は太腿 の 内 側 の筋 肉が強 い と して い る。 また 、 この よ うに姿勢 の異 常 な どにみ られ る静 的 な安 定 の低 下 は 、筋 肉のイ ンバ ラ ンス を生 じ、障害や 痛 み を もた ら し、動 的 な 安 定 も崩 れ て しま うと してい る。 本 来 、正 しい姿勢 で使 用 され るはず の筋 肉が 使 用 され な くな って しまい 、筋 力低 下 を伴 うので違 う動 作 で代償 しよ うと し、 さ らに筋 力低 下 を招 き動 的安 定 は崩 れ て しま う。 よつて 下 半身 の軸 が乱れ ない 運動 に よ り正 しい筋運動 を得 る こ とが重 要 で あ る。 内尾

(2009)ら

に よる と、平成

17年

か ら平成

19年

まで 島根 県雲 南市 の全児 童

5000人

を対象 に した調査 で 、普通 学校 にお け る児童 、生徒 の

1∼ 2割

は運動 器 の疾 患 、損 傷 を もつて い る と して い る。 そ の 中で も、 ス ポー ツ傷 害 と脊柱側 弯症 が

4割

以 上 を 占めてい る。 ま た小 学校 か ら中学校 、高等 学校 と学年 が あが るにつれ て スポー ツ傷 害 の比 率 は高 くな つて い る。原 因 と して側 弯症 に見 られ る よ うに軸 が崩 れ てい る状態や 、Knee‐in‐toe‐out Knee‐out¨toe‐

inな

どの動 的安

定性 の低 下や 背 筋 力 の低 下 の 中で繰 り返 しも しくは過 度 の負 荷 に よ り、学年 が あが るにつれ て ス ポー ツ損 傷 が多 くな って い る こ とが推 察 され る。 現在 の子 ど も達 は、 自重 は支 え られ て い るが 、大 きな負 荷 には対応 で きな い 「軸 が ない」 身 体 にな ってい る。

2.足

部 の強化 につ い て i。 これ まで の取 り組 み 柔道 で は練 習 メニ ュー と して 、打 ち込 みや 投 げ込 み 、乱 取 りな どの メニ ュー が あ るが 、筋 力 強 化や 安 定性 を高 め る運 動 は柔道 と して確 立 され た もの はな く あ ま り研 究 も され てい ない。 他 の競技 と してバ スケ ッ トボールや サ ッカー 、バ レー ボール 、ハ ン ドボール等 で は特 に足 関節 の外傷予 防 の為 に動 的安 定性 を考

(37)

慮 した運動 メニ ュー な どが実施 され た研 究 が あ る。 実施 メニ ュー は ほ とん どが バ ランス トレー ニ ングを主 に した もので あつた。 また茂 木

(2008)は

これ らの 研 究 を踏 ま えテ ニ スで の足 関節 の外 傷 予 防 の為 に、動 的 安 定獲 得 を 目指 した メ ニ ュー を作 つてい る。静 的安 定 の獲得 か ら動 的安 定 の獲 得 へ 、 また単純 な動 作 か ら複雑 な動 作へ とな つてい る。 もち ろん他 の競 技 の メニ ュー を この ま ま柔道 に と りいれ て も一 定 の効 果 は あ る と考 え られ るが 、予 防 で重要 な こ とはそ の競 技 の特性 を理解 しそれ に応 じて対策 を考 え る こ とで あ る。 柔道 は と くに 自身 と 相 手 の荷 重 が技 とい う動 きの 中で か か る競 技 で あ るの で 、 まず しつか りと荷 重 に対応 で き る身 体 を作 る こ とが重 要 で あ る。 柔 道 にお い て荷 重 に対応 で き る身 体 とは、 しつか り立 て る身 体 (静的安 定)、 動 きの 中で も しつか り立 て る身 体 (動的安 定)、 動 きに あつた筋 肉 を正 しく使 う そ して鍛 え る (筋力 強化

)こ

とが重 要 で あ りそれ が 「軸 」 を強化 す る こ とで あ る。 実 際 の運 動 と して は、先 に述 べ た よ うに姿勢 を改 善 してい く上 で はまず 土台 で あ る下 半身 に先 に介 入 す る。 動 的 な安 定 を確 立す るた め には、静 的 な安 定 を 確 立 させ 、そ して動 作 を しなが ら安 定 させ る訓練 をす る。 下 半身 の軸 が乱れ な い運動 に よ り正 しい筋運 動 を得 る こ との

3つ

を考慮 しな けれ ばな らない。 まず 下 半身 で は 、 これ まで の取 り組 み で は動 的 な安 定 を主 と して考 え られ て お り、膝 や 足 首 な どに注 目しての運 動 で あ つた。 今 回 は地 面 との唯一 の接 点 で あ る足部 、下 半身 にお い て最 も土台 とな る部分 に注 目した。 五

.足

のアー チ しつか り立 て る身 体 を作 る為 に重 要 な こ とは退化 した足 元 を作 る こ とで あ る。 基礎 部分 で あ る足 部 の構 造 体 が崩 れ て しま うとそ の上方 にあ る膝 や股 関節 、腰

(38)

部、頸部にいたるまですべての軸が変化 してい く。家や ビルな ど建物で も基礎

部分が重要であるが、人体 も構造体である以上基礎の部分が構造体の強度を強

くす る上で、最初に取 り組むべきものである。

足底や足趾 と姿勢 との影響の研究

(加

2003)(藤

2012)(大

2012)で

は、バ ランス能力の低下 した高齢者等に足底の刺激や足趾運動を行 うことで改

善す ることも報告 されている。足は唯一地面 と接す る部分であ り、少ない面積

で身体を支 える。様 々な姿勢制御 のメカニズムがあった として もまずはその荷

重 を受 けきれ る構造がなければな らない。その荷重 を受 けるために重要な構造

がアーチである。足部には

28個

の骨が靭帯等で連結 されている。その中にアー

チが存在 し、内側縦アーチ、外側縦アーチ、横 アーチの

3つ

がある。

(図 15) 内側縦 アーチ 外側縦 アーチ 図

15

足 の アー チ 横 アーチ

(39)

アー チ とは ま さ しく橋 の こ とで あ り、石 や レンガ等 を組 み合 わせ た アー チ橋 の こ とを指す 。 この アー チ橋 は、 自重や 上 か らの荷 重 を両端 か らか か る反 力 で圧 縮 力 が働 くこ とで 、強 い荷重 を支 え られ る構 造 で あ る。 自重 以 上 に荷 重 がか か つて も構造上 よ り強 くな る仕組み で あ り、それ が足部 に も

3つ

存在 す る こ とで 、 人 にお いて も 自重 以上 の よ り強 い荷 重 に対応 で き る形 にな ってい る。 しか し、板 倉

(2004)に

よ る と、 アー チ橋 で重 要 な こ とはそ の接岸 部 分 の反 力 で あ り、接 岸 部 分 が不 安 定 で あ る と摩 擦 力等 が発 生せ ず アー チ は崩れ て しま う。 足部 にお け る

3つ

の アー チ は共通 した

3点

がそ の接 岸 部 分 で あ り、それ は 踵 骨 、第

1中

足骨 頭 部 、第

5中

足骨 頭 部 で あ る。 足底 か らみれ ば、踵 、母 趾 の 底 面 に あ る膨 らみ の部 分 い わ ゆ る母 趾 球 、小 趾 の底 面 に あ る膨 らみ の部 分 い わ ゆ る小趾球 で あ る。 (図 16) 左 上 母趾球部

右 上 小趾球部 図

16

足底 図 下 踵部 この

3点

に しつか り荷重 が かか らない とアー チ の仕 組 み は働 か ない、つ ま り 3 点 で しつか り立つ こ とが重要 で あ る。 ま た、足底 に は足 底腱 膜 とい う腱 が通 つ て い る。 これ は アー チ橋 では タイ ドアー チ とい う構 造 と同 じで あ る。 通 常 の ア

図 13  正常立位 姿勢 での重心線 (側 面 ) 実 際 、足組 みや 、横 座 り、足 を交差 させ て立つ 、休 めの姿勢 の よ うに どち ら か の足 にだ け体重 をか けて立 って い る等 の不 良姿勢 は姿勢悪化 の原 因 とな る。 また 、下肢 で は X脚 や O脚 とい った 姿勢 異 常 も見 られ る。 文字 通 り正 面 か ら 見 た際 に、 Xま た は 0の 形 に下肢 が変形 して い る。 特 に O脚 は膝 の変形 の進 ん だ高齢 者 な どに顕 著 にみ
図 14  下肢荷重時の変化
図 20  つ ま先かか と運動 グー チ ョキパ ー 運 動 な どは二人 一組 や 多人数 で足指 ジ ャ ンケ ンをす る こ とで 楽 しく行 うこ とが で き、つ ま先 か か と運 動 も多人数 で競 った りす る こ とで楽 し く行 え る。 足指 を しつか り使 用 す る こ とが 目的 で あ るの で 、楽 しく行 え る方 法 を集 団 内で実行 す る こ とが重 要 で あ る。 正 しく指 がつ か えな くて も よ く、指 を 使 お うと意識 して運 動 を行 う

参照

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