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アスファルトの紫外線劣化と

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 山 口 勝 之

学 位 論 文 題 名

アスファルトの紫外線劣化と

カーボンブラック添加効果に関する研究 学位論文内容の要旨

  ア スファルトの耐久性を向上させるには,供用中の劣化現象を把握することが必要であり,特に 劣化因子として光(紫外線)の影響に着目することが不可欠であるとの観点から,本研究では,これ ま で確立 されて いなか った紫 外線に 関わる新 規の劣 化試験方法を開発し,供用中のアスファルト 被 膜の劣化挙動を簡単,迅速に室内で再現できるようにするとともに,その劣化の程度を定量的に 評価できるようにした.また,アスファルトの紫外線による劣化を抑制するための一手段としてカー ボンブラック添加の可能性を検討し,これがアスファルトの耐候性を改善するだけでなく,補強性改 善にも効果的である ことを明らかにした.

  以下に,本研究で明らかとなった知見を各章ごとに要約する.

  第1章序論 では, 本研究 の意義 と目的 ,なら びに本 論文の 全体構成 につい て述べた.光(紫外 線)は,これまでにもアスファルト舗装の供用時における劣化因子のーっとして認識されながら,そ れ に関わ る劣化 試験方 法が存 在しな ぃことを 述べ, この光による劣化挙動を迅速,的確に把握で きるような試験方法ならびに評価手法が必要であることを説いた.また,耐久性に優れるアスファル トを得るための手段として,ゴムや樹脂の充てん材として知られるカーボンブラックを取り上げ,これ を 添加することによるアスファルト材料の耐候性,さらには補強性改善の可能性について述べた.

  第2章では ,光に よるア スファルトの劣化挙動を調べるために考案した プレス成膜手法を用い た 紫外線 劣化試 験 の 開発経 緯につ いて述べ ,同法 を適用した際のアスファルトの物理的,化学 的 な劣化挙動を明らかにした.すなわち,光による劣化は,アスフヲルトの弾性率を増大させ粘性 を 失わせるとともに,組成の変化により高分子量成分の構成比率を増やし,さらには酸化により生 成 するカルボニル基を増大させることを確認した.また,その劣化の程度を,ほかの代表的な室内 促進劣化試験と比較することにより,アスファルト層の表面近傍では光により短時間にいちじるしい 劣 化 が 生 じる こ と を 明ら か に し ,劣 化 因 子 とし て 光 に目を 向ける ことの 必要性 を提起 した,

  第3章では ,光に よる劣 化の程 度を定 量的に 評価で き,か つ屋外暴 露によ る劣化状態を室内試 験 で的確 に再現 できる 試験方 法とし て確立す るため に,プレス成膜手法を用いた紫外線劣化試験 の 試験条件に関する検討をおこなった.その結果,光による劣化は,アスファルト層の表面から深 さ200pmまで の範囲 で影響が 大きいこと,波長範囲300〜   400 nmの紫外線による劣化がいちじる し いこと を明ら かにし た.また,光の放射照度の影響は33 W/m2〜78W/m2までの範囲で小さく,供 用 時のアスファルトの劣化状態が,波長範囲300〜   400 nmの紫外線積算照射量によって求められ

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る可能性のあることを見出した.さらに,光による劣化挙動を評価するための標準的な試験条件(ア ス フ ァ ルト 膜 厚100mm, 放 射 照度 く80W/n12, ブ ラック スタン ダード温 度60℃ )を提示 した.

  第4章では ,第3章 で提示 した標 準試験 条件に基 づぃて ,室内 におけ る紫外 線促進 劣化試 験を おこない,紫外線照射量の増加にっれてアスファルトの劣化が進行していくこと,紫外線積算照射 量 がl5MJ/rri2未 満の初 期の段階 におい て性状 の変化 が大き く,そ の後一定の劣化レベルに漸近 していくことを確認した.また,この劣化挙動が国内三地区における屋外暴露試験のデータと良く 一致することを示し,プレス成膜手法を用いた紫外線劣化試験が屋外で生じるアスファルト被膜の 劣 化状態 を室内で 再現す る有効 な試験 方法で あることを証した,さらに,劣化の程度が紫外線積 算照射量で一義的に求められることより,供用中のアスファルト被膜の劣化は紫外線によるものが 支配的であることを明らかにした.

  第5章では,アスファルトを構成する成分ごとに紫外線劣化挙動を調査することにより,アスファ ル トの紫 外線によ る劣化 機構の 解明を 試みた .その結果,熱劣化や酸化劣化には比較的安定とさ れ ている 飽和成分 が,紫 外線に は敏感 に反応 してカルボニル基を生成し,レジン成分やアスファ ルテン成分へと変質することを明らかにした.一方,芳香族成分は,酸化反応とは異なる機構によ り 劣 化 が 進 行 し , レ ジ ン 成 分 や ア ス フ ァ ル テ ン 成 分 へ と 変 質 す る 現 象 を 確 認 し た .   第6章では ,アス フブルトの耐候性を改善するための手段として,ゴムや樹脂など高分子工業の 分野で耐候性改善用の充てん材として知られるカーボンブラックに着目し,これの添加がアスファ ルトの紫外線劣化挙動におよぽす影響について調査をおこなった.その結果,カーボンブラックが アスファルト材料に対しても紫外線劣化抑制機能を発揮することを見出した,また,その劣化抑制 効 果は, カーボン ブラッ クがアスファルト被膜の表面近傍で,波長範囲300 ‑‑400nmの紫外線を遮 り,アスファルト中の飽和成分のカルボニル基生成(酸化劣化)を抑える機構により発現することを 明らかにした.さらに,カーボンブラック添加は紫外線劣化によるフラース脆化点の上昇を小幅に 抑え,紫外線劣化後の破壊時のひずみは,カーボンブラック未添加のアスファルトよりも大きいこと を確認した.

  第7章では ,アス ファルトの機械的な補強を目的としたカーボンブラック添加の可能性について 検討をおこなった.外割20wt%までの範囲でカーボンブラックを添加した結果,常温域から高温側 で は ア スフ ァ ル ト の弾 性 率 が 増大 し てSHRP試 験 規格のPG判定に 関わる 最高供用 温度が 高温側 に拡大するとともに,低温域では破壊時のひずみが大きくなることを明らかにした.すなわち,カー ボ ンブラ ックの添 加が, 高温域 におけ る変形 に対する抵抗性と低温域におけるひび割れに対する 抵抗性を両立して改善する可能性のあることを見出した,、さらに,カーボンブラックの添加が,アス ファルトの線膨張係数を小さくすることも確認した.

  第8章では ,アス ファルト混合物まで調査対象を拡げて,カーボンブラック添加の影響について 検討をおこなった.その結果,混合物においてもアスファルト単体の性状が反映され,カーボンブ ラックの添加が高温域における耐流動性を改善し,線膨張係数も小さくすることを確認した.一方,

カーボンブラック添加アスファルトを用いて混合物を作製する際には,低温性状(耐ひび割れ性)と の バ ラ ン ス を 考 慮 し て , ア ス フ ァ ル ト 量 を 設 定 す る 必 要 が あ る こ と を 提 言 し た .   第9章の結 論は, 本論文の総括として本研究で得られた成果,知見をとりまとめたものである.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

アスフんルトの紫外線劣化と

カーボンブラック添加効果に関する研究

  近年アスファルト舗装 の耐久性を向上させる研究 が盛んに行われている。その 多くはカ学的な 手法を用いて亀裂やわだ ち掘れを抑えることを目的 としており、劣化面から舗装 の耐久性を評価 するのは未開発の分野で 、今後の発展がまたれてい る状態にある。

  本論文は、このような状況にあるアスファルト舗装中のアスファルトの劣化について、化学および カ学の両面から研究し、アスファルト舗装上の有益な知見を得ることを目的として、有機物であるア スファルトの紫外線劣化 とその対策方法について述 べている。

  本研究では,これまで 確立されていなかった紫外 線に関わる新規の劣化試験方 法を開発し,供 用中のアスファルト被膜 の劣化挙動を簡単,迅速に室内で再現できるようにするとともに,その劣 化の程度を定量的に評価できるようにした。また,アスファルトの紫外線による劣化を抑制するため の一手段としてカーボン ブラック添加の可能性を検討し,これがアスファルトの耐候性を改善する だけでなく,補強性改善 にも効果的であることを明 らかにした。

  以下に,本研究で明ら かとなった知見を各章ごと に要約する。

  第1章 序論 では ,本 研究の意義と目的,な らびに本論文の全体構成に ついて述べ、ここではこ の光(紫外線)による劣 化挙動を迅速,的確に把握できるような試験方法ならびに評価手法が必要 であることを述べている 。

  第2章では,光による アスファルトの劣化挙動を調 べるために考案した プレス成膜手法を用い た紫外線劣化試験 の開 発経緯について述べ,同法 を適用した際のアスファルト の物理的,化学 的な劣化挙動を明らかに した。すなわち,光による劣化は,アスファルトの弾性率を増大させ粘性 を失わせるとともに,組 成の変化により高分子量成分の構成比率を増やし,さらには酸化により生 成するカルボニル基を増 大させることを確認した。

  第3章 では ,プ レス 成 膜手 法を 用い 試料 で 屋外 およ び屋 内 で紫 外線 劣化試験の試験条件に関

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博 修

昭  

  尚

古 歩

森 千

授 授

教 教

査 査

主 副

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する検討をおこな った。その結果,光による劣 化は,アスファルト層の表面から深さ200Lunまでの 範囲で影響が大き いこと,波長範囲300〜  400 nmの紫外線による劣化がいちじるしいことを明らか にし た 。ま た, 光の 放射 照 度の影響は33 W/m2〜78W/m2までの範囲で小さく ,供用時のアスファ ルト の 劣化 状態 が, 波長 範 囲3Q0〜400 nmの紫 外線積算照射量によって求め られる可能性のある ことを見出した。

  第4章では,紫外 線照射量の増加にっれてア スファルトの劣化が進行して いくこと,紫外線積算 照射 量 がl5MJ/rr12未満 の初 期の段階において 性状の変化が大きく,その後 一定の劣化レベルに 漸近していくこと を確認した。また,この劣化 挙動が国内三地区における屋外暴露試験のデータと 良くー致すること を示し,プレス成膜手法を用 いた紫外線劣化試験が屋外で生じるアスファルト被 膜の劣化状態を室 内で再現する有効な試験方法 であることを証した。

  第5章では,アス ファルトを構成する成分ご とに紫外線劣化挙動を調査し 、熱劣化や酸化劣化に は比 較的安定とされ ている飽和成分が,紫外線 には敏感に反応してカルボニ ル基を生成し,レジ ン成分やアスファ ルテン成分へと変質すること を明らかにした。一方,芳香族成分は,酸化反応と は異 なる機構により 劣化が進行し,レジン成分 やアスファルテン成分へと変 質する現象を確認し た。

  第6章では,アス ファルトの耐候性を改善するための手段として,カーボンブラックに着目し,こ れの添加がアスフ ァルトの紫外線劣化挙動にお よばす影響について調査をおこなった。その結果,

カーボンブラックがアスファルト材料に対しても紫外線劣化抑制機能を発揮することを見出した。ま た, そ の劣 化抑 制効 果は , カーボンブラックが アスファルト被膜の表面近 傍で,波長範囲300〜 400nmの紫外線を遮 り,アスファルト中の飽和 成分のカルボニル基生成(酸 化劣化)を抑える機構 により発現するこ とを明らかにした。

  第7章では,アス ファルトの強度増強を目的 としたカーボンブラック添加 の可能性について検討 をお こ なっ た結 果, 常温 域 から 高温 側で は アス ファ ルトの弾性率が増大し てSHRP試験規格のPG 判定 に関わる最高供 用温度が高温側に拡大する とともに,低温域では破壊時 のひずみが大きくな ることを明らかにした。すなわち,カーボンブラックの添加が,高温域における変形に対する抵抗性 と低 温 域に おけ るひ び割 れ に対 する 抵抗 性 を両 立し て改善する可能性のあ ることを見出した。

  第8章では,アス ファルト混合物に,カーボンブラック添加をすると、この添加が高温域における 混 合 物 の 耐 流 動 性 を 改 善 し , 線 膨 張 係 数 も 小 さ く す る こ と を 確 認 し た 。   第9章の結論は, 本論文の総括として本研究 で得られた成果,知見をとり まとめたものである。

  これを要するに、著者は、アスファルトの劣化について新知見を得たものであり、アスファルト舗 装を用いた道路工学に貢献するところ大なるものがある。よって、著者は、北海道大学博士(工学)

の学位を授与され る資格あるものと言忍める。

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