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膜乳化による油中水型エマルションに関する研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 外 山 一 吉

学 位 論 文 題 名

膜乳化による油中水型エマルションに関する研究

一 超 低 脂 肪 ス プ レ ッ ド ヘ の 応 用 ―

学位論文内容の要旨

  水と 油を 分散 させ る「 乳化 」す なわ ち「 工 マル ションの調製 」は、食品、化粧品、

医 薬品 、塗 料、 農薬 、写 真乳 剤、 電子 記録 材 料そ の他さまざま な分野で応用されてい る 。食 品エ マル ショ ン製 造に おい ては 用い る 乳化 剤に制約があ るため、高せん断乳化 法 や撹 拌乳 化法 が主 に用 いら れて いる 。製 品 に応 じた物性を有 し、かっ安定したエマ ル ショ ンを 自由 に調 製で きる こと が望 まし い が、 これら機械的 な方法では良好な単分 散 性工 マル ショ ンを 得る こと は困 難で ある 。 この 点を補うため に開発された電気分散 法 やノ ズル 噴出 法で は乳 化速 度が 遅く 、大 型 設備 には向かない 欠点がある。このよう に 従来 の乳 化法 では 高水 分エ マル ショ ンで あ る低 脂肪スプレッ ドの調製には対応しき れ ず、 改良 ある いは 新規 の方 法の 開発 が望 ま れて いた。そこで1988年に初めて報告さ れ た膜 乳化 法に 着目 し、 高水 分工 マル ショ ン の調 製に応用する ための理論的裏付け、

材 質の 検討 、生 成エ マル ショ ンの 評価 方法 の 確立 、さらに実用 化レベルでの諸問題の 解 決を 行っ た。 その 成果 の概 要は 以下 の通 り であ る。

1.高 水分w/0工 マル ショ ンの 調製 膜の 検討

  食品w/0エマ ル ショ ンで は、 乳化 状態 、乳 化安 定性 、硬 度、 粘稠 度、 伸 びの 程度な ど が評 価の 対象 とな る。 加え て細 菌増 殖が 乳 化状 態にも依存す ると指摘されている。

そ こで 、ま ず膜 乳化 法に よっ て得 られ るエ マ ルシ ョンの分散粒 子径を制御するための 諸 因子 の検 討、 およ びシ ャー プな 粒度 分布 を 得る ための多孔質 膜の選定を行った。そ の 結果 、機 械的 な方 法に 比べ て膜 乳化 法が 平 均分 散粒子径を細 かく制御でき、かつ安 定 なェ マル ショ ンを 調製 でき るこ とを 確認 し た。 さら にガ ラス 多孔 質膜 であ るSPG膜 が アル ミナ 焼結 セラ ミッ クス やス テン レス 焼 結金 属の多孔質膜 に比べて、分散分子径 お よび 安定 性に 優れ たェ マル ショ ンを 生成 す るこ とを見出した 。さらに膜表面の処理 と して これ まで のシ ラン カッ プリ ング 法に 代 わる 界面活性剤吸 着法を開発した。この 方 法で 疎水 化し た膜 は従 来の 方法 で処 理し た 膜の 欠点を克服し 、迅速かつ大量のエマ ル ショ ン調 製を 可能 にし た。

2.高水 分w/0エ マ ルシ ョン の分 散粒 子径 測定 法の 確立

  エ マ ル シ ョ ン の 安 定 性 は、 連続 相と 分散 相の 物理 化学 的性 質、 油 水界 面状 態、 界 面 張力 、分 散粒 子径 とそ の分 布に 影響 され る 。特 に高水分エマ ルションでは、分散粒 子 径と その 分布 が品 質の 保存 性、 物性 およ び 風味 感受性に大き な影響を与えるため、

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(2)

正確に径を測定する必要がある。従来の分散粒子径および粒度分布の測定法は、分散 粒子に外的応カを加て判定する方法が主体であり、分散粒子の変形、分断、集合など のために測定誤差を生じることが多い。そこで、応カを加えずに直接に粒子径および 粒度分布を測定する画像処理システムを構築した。すなわち、試料である低脂肪スプ レッドを親油性乳化剤を添加した液体油脂で希釈し、昇温により固体脂肪の影響を除 いて光学顕微鏡を通しCCDカメラで画像化した。このようにして取り込んだ画像を、

二値化処理する解析ソフトウエアを用いて分散粒子径および粒度分布を正確に測定す ることが可能となった。

3.高水分w/oエマルジョンの分散粒子径の制御と理論的解析

  食品w/0エマルションでは、分散相である水相部に呈味成分の多くを含むが、分散 粒子径、呈味性、保存性の間には相反する関係があるため、適度の分散粒子径に制御 することが重要となる。強い応カをかけずにエマルションを生成できることが膜乳化 法の特徴であることから、適切な条件を設定することにより高水分すなわち低脂肪の w/0工マルジョンの調製が可能になると考えた。これを実証するために理論的解析を 試み、乳化速度一定の場合、平均乳化圧カは平均膜細孔径の2乗に反比例することを 見出した。これまで.Iri1次の関係が成立すると考えられていたため、本解析結果は新 しい知見であり、かつ乳化理論の再構築を迫るものである。また、膜乳化における流 動状態について流体力学的指数であるレイノルズ数を求めたところ、10‑ レベルの値 が得られた。これは膜細孔内の文散層の流れが層流であることを意味し、膜乳化法が 従来の流体力学的理論を応用して解析可能であることが示唆された。これらの結果を 基に、従来法に比較して低い乳化圧カで乳化速度を高め、かつ分散粒子径の制御を可 能とした。

4.膜乳化法で調製した低脂肪スプレッドの特性

    低脂肪スプレッドの調製において、固体脂指数がその物性のーつの指標となる。

この値が高い場合は固く、また低い値では柔らかく、脂肪の結晶状態を反映している。

この指数を用いて低温における長期安定性試験および凍結融解試験を判定したところ、

膜乳化法で調製した低脂肪スプレッドは優れた結果を示した。これは強固な乳化被膜 が生成していること、そのため外的条件の変化によって分散粒子の開裂あるいは凝集 などの変化が生じ難いことによると考えられる。色差計による測定で低脂肪スプレッ   ドの白色度が高いことからも、分散粒子径の分布が均一なことが確かめられた。この ように、分散粒子径の均一性は、高い安定性と密接に関連し、膜乳化法で調製したエ マ ル シ ョ ン が 他 の 方 法 で 調 製 し た も の よ り 優 れ て い る こ と が 示 さ れ た 。   5.工業レベルヘの実用化

    上記の成果を実用化するため、製造規模にスケールアップした場合の諸問題の評 価および解決を試みた。その結果、膜細孔径とその強度に影響のない洗浄方法を確立   し、さらに乳化圧力、および導電率測定による乳化度の連続監視システムなどを構築 することができた。最後にこれまでの乳化法では不可能であった連続相(脂肪):分散 相(水)〓25:75のエマルションの調製を実用レベルの乳化速度で実施し、生成したエマ   ルションを密閉式掻取急速冷却機によって可塑化することにより、超低脂肪スプレッ   ドの試作に成功した。

(3)

  以上のように、本研究は低脂肪スプレッドの調製に適した乳化方法として膜乳化 法に着目し、その乳化のヌカニズムを解析するとともに、本方法で高水分w/oエマル ションを調製しその物性を測定した。さらに構築した膜乳化システムが十分に実用に 耐え得るものであることを実証したことは、産業的に大きな価値のある成果であると ともに、これを達成する過程で得られた理論的解析結果は、学術的にも興味ある知見 を提供している。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

膜乳化による油中水型エマルションに関する研究

ー超低脂肪スプレッドヘの応用―

  本論文は図43、表14、引用文 献53を含み、8章からなる総頁131の和文論文である。別 に参考論文12編が添えられている。

  水と油を分散させる「乳化」すなわち「エマルションの調製」は、食品、化粧品、医薬 品、塗料、農薬、写真乳剤、電子記録材料その他さまざまな分野で応用されている。食品 エマルション製造におぃては用いる乳化剤に制約があるため、機械的な手法が主に用いら れている。製品に応じた物性を有し、かっ安定なエマルションを自由に調製できることが 望ましぃ。しかし機械カによる方法では良好な単分散性エマルションを得ることは困難で あり、高水分エマルションである超低脂肪スプレッドの調製には対応しきれない。そこで、

膜乳化法を高水分エマルションの調製に応用するための理論的裏付け、材質の検討、生成 エマルションの評価方法の確立、さらに実用化レベルでの諸問題の解決を行った。その成 果の概要は以下の通りである。

1.高水分w/oエマルションの調製膜の検討

  食品w/oエマルションでは、乳化状態、乳化安定性、硬度、粘稠度、伸びの程度などが 評価の対象となる。加えて細菌増殖が乳化状態にも依存する。そこで、まず膜乳化法によ ってェマルションの分散粒子径を制御するための諸因子の検討、および鋭い粒度分布を得 るための多孔性膜の選定を行った。その結果、機械的な方法に比べて膜乳化法が平均分散 粒子径を細か<制御でき、かっ安定なェマルションを調製できることを確認した。さらに ガラス多孔質膜であるSPG膜がアルミナ焼結セラミ゛ソクスやステンレス焼結金属の膜に比 べて、分散粒子径および安定性に優れたェマルションを生成することを見出した。また、

膜表面の処理として界面活性剤吸着法を開発し、従来の処理法による膜に比べて迅速かっ 大量のェマルション調製を可能にした。

2.高水分w/0エマルションの分散粒子径測定法の確立

一 仁

敬 昭

崎 部

藤 村

島 服

伊 玖

授 授

授 授

   

   

教 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

  エマルションの安定性は、連続相と分散相の物理化学的性質、油水界面状態、界面張力、

分散粒子径とその分布に影響される。特に高水分エマルションでは、分散粒子径が品質の 保存性、物性および風味感受性に大きな影響を与えるため、正確に径を測定する必要があ る。そこで試料に親油性乳化剤を添加した油脂で希釈し、昇温して固体脂肪の影響を除い て光学顕徴鏡を通しCCDカメラで画像化し、ニ値化処理する解析ソフトウェアを用いて分 散粒子径および粒度分布を正確に測定した。この方法は分散粒子に応カを加えずに測定す る た め 、 従 来 の 方 法 に 比 べ て よ り 正 確 な 粒 子 径 の 測 定 を 可 能 と し た 。 3.高水分w/oエマルジョンの分散粒子径の制御と理論的解析

  食品w/oエマルションでは、分散相である水相部に呈味成分の多<を含むが、分散粒子 径、呈味性、保存性の間には相反する関係があるため、適度の分散粒子径に制御すること は非常に大切である。強い応カをかけずにエマルションを生成できることが膜乳化法の特 徴であることから、高水分すなわち低脂肪のw/0エマルジョンの調製を可能とする条件を 解析し、乳化速度一定の場合、平均乳化圧カは平均膜細孔径の2乗に反比例することを見 出した。これまでは1次の関係が成立すると考えられていたため、本解析結果は新しぃ知 見である。また、計測された流体力学的指数であるレイノルズ数から、膜細孔内の分散層 の流れが層流であることが判明し、従来の流体力学的理論による解析の妥当性が示された。

これらの結果を基に、従来法に比較して低い乳化圧カで乳化速度を高め、かっ分散粒子径 の制御を可能とした。

4.膜乳化法で調製した低脂肪スプレッドの特性

  低温における長期安定性および凍結解凍試験を、脂肪の結晶状態を反映する固体脂指数 を用いて判定したところ、膜乳化法で調製した低脂肪スプレッドは優れた結果を示した。

これは強固な乳化被膜の生成により、分散粒子の開裂あるいは凝集などの変化が生じ難<

なっていることによる。また、色差計で低脂肪スプレ・ソドの白色度が高<測定され、分散 粒子径分布の均一性が確かめられた。このように分散粒子径の均一性はすなわち高い安定 性と密接に関連し、膜乳化法で調製したエマルションが他.の方法で調製したものより優れ ていることが示された。

5.工業レベルへの実用化

  上記の成果を実用化するため、製造規模にスケールアップした場合の諸問題の評価およ び解決、膜細孔径とその強度に影響のなぃ洗浄方法を確立し、さらに乳化圧力、および導 電率測定による乳化度の連続監視システムなどを構築した。最後にこれまでの乳化法では 不可能であった分散相(水):連続相(脂肪)=75:25のエマルションの調製を実用レベルの乳 化速度で実施し、超低脂肪スプレ`ソドの製造に成功した。

  以上のように、本研究は新規の膜乳化システムの構築、解析さらに実用にまで至ったこ とは、産業的に大きな価値のある成果であるとして、関係学会・業界で高<評価されてお り、かっこれを達成する過程で得られた理論的解析結果は、学術的に非常に興味ある知見 を提供している。よって審査員一同は、外山一吉が博士(農学)の学位を受けるのに十 分な資格を有するものと認めた。

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参照

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