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地震波減衰特性と震源特性に関する研究 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 前 田 宜 浩

学 位 論 文 題 名

サブダクションゾーンにおける

地震波減衰特性と震源特性に関する研究 学位論文内容の要旨

  1995年 の兵 庫県南部地震によって震源近傍での強震 動記録が観測されて以降,

震源 近傍 の強 震動に関する研究が日本においても盛ん に行われるようになった.

また ,こ の地 震を契機として,全国規模の強震観測網 が整備されるとともに,将 来に 発生 する 可能性の高い地震(シナリオ地震)に対 して,ある地点でどのよう な強 震動 が生 ずるかを評価する強震動予測が本格的に 行われるようになった.地 震動 の特 性は ,震源,伝播経路,地盤構造(サイト) に依存しており,高精度の 強震 動予 測に は,各特性の定量的なモデル化が必要で ある.北海道周辺ではプレ ート間地震やスラブ内地震といったサブダクションゾーンの地震が多発している.

しか しな がら ,現在の強震動予測研究は,主として内 陸地殻内地震を対象として 行わ れて おり ,サブダクションゾーンの地震を対象と した高精度な強震動予測は 今後 の課 題と なっている.本研究では,プレートの沈 み込みに伴って発生するプ レー ト問 地震 とスラブ内地震をサブダクションゾーン の地震と定義し,近年の高 密度 強震 観測 網で得られた記録を用いた解析から,サ ブダクションゾーンの地震 によ る強 震動 に強 く影 響を 及ぼ して い ると考えられる伝播経路特性(Q値)と震 源特性の定量的な評価を行った.

  ま ず, やや 深発地震による強震動記録を用いて,伝 播経路特性についての定性 的な 検討 を行 った.その結果,やや深発地震の強震動 記録は震源と観測点との位 置関 係に よっ てその特徴が大きく変化しており,大局 的には火山フロントを境界 と し て 減 衰 構 造 が 大 き く 変 化 し て い る こ と を 明 ら か に し た .   次 に, 火山 フロントの前弧側と背弧側,海洋プレー ト内部を解析対象領域とし て,Q値 の 推定 手法 とし て広 く用 いら れて いる スペ クト ルイ ンバ ージョン法(SI 法 ) と コ ー ダ 規格 化法(CN法 )の ニつ の手 法に より 各 領域 のQs値を 推定 した . 火山 フロ ント 前弧 側と 背弧 側のQs値 の 推定 には 陸上 に展 開さ れて いる高密度強 震観 測網 の記 録を用いた,また,プレート内部のQs値 の推定には海底地震観測点 のデータを用い,プレート内部のQs値のより直接的な推定を目指した.その結果,

前弧 側と プレ ート内部に対して,周波数依存性を持つQs値が推定された.周波数 依存 性の 強さ はQs値の 推定 手法 によ っ ても若干異なっており,1〜10Hzの周波数 帯に おい て, 火山 フロ ント 前弧 側で は 周波 数の 約1.2乗(SI法) と約1.0乗(CN 法) ,プ レー ト内 部で は周 波数 の約1.0乗(SI法) と約0.7乗(CN法)に比例し てお り,SI法 によ り推 定さ れたQs値 の 方がCN法 によ るも のよ りも やや周波数依 存性 が強 い傾 向を示すという結果が得られた.一方で ,火山フロント背弧側では 高周 波数S波が 大き く減 衰さ れた 記録 が多く観測され ていることを高密度の強震 観測 網の 記録 から 明ら かに し,SI法 やCN法 によ って 背弧 側のQs値 を定量的に評 価す るこ とが 困難 であ るこ とを 示し た .そ こで ,限 られ た記 録か ら背弧側のQs

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値 を見 積 も り, 前 弧側 に 比 べて そ の周 波 数 依存 性 が弱 いこ とを示し た.

  既往の研究によれば,海洋プレート内部は周囲のマントルに比べQs値が大きな 一様な領域であると考えられているが,本研究で推定された海洋プレート内部の Qs値は,火山フロント前弧側のQs値に比べやや小さな値であった.また,サブ ダクションゾーンの地震では異常震域が観測され,この現象は地震波が低減衰の 海洋プレート内部を効率よく伝播することにより生じていると考えられているが,

本研究で推定された海洋プレート内部のQs値ではこの現象を説明することはで きなかった,そこで,海洋プレートの2層Q構造モデルを提案し,本研究で推定 された海洋プレート内部のQs値で表される領域をプレートの上部50kmの範囲に 限定すれば異常震域を説明できることを示した.この海洋プレート上部のQS値は,

陸上観測点の記録からでは推定することはできず,海底地震観測点の記録を用い ることによって初めて推定されたものである.

  Q値を推定するためには観測記録に対して幾何減衰の影響を補正しなくてはな らない.幾何減衰は波面の拡がりに伴う地震波振幅の減衰を表しており,均質媒 質中では震源距離の逆数で表される,実際の地球内部は均質構造ではなぃが,Q 値推定の多くの解析では震源距離を用いて幾何減衰の補正が行われている.そこ で,波線追跡によって理論的に評価された幾何減衰と震源距離との関係について 調べ,震源深さに比べ震央距離が大きくなるほど両者の差が広がることを示した,

また,そのような地震に対して震源距離を用いて幾何減衰の補正を行うことによ り,Q値が過小評価されることを示した.

  最後に,震源特性についての検討を行った,まず,火山フロント前弧側を対象 としたSI法により推定されたQs値と各地のサイト特性を用いて,サブダクショ ンゾーンの地震の震源スペクトルを推定した.震源スペクトルの形状については,

スラブ内地震とプレート間地震による違いは見られなかったものの,加速度震源 スペクトルの高周波数振幅レベルについては,同一規模の地震に対してスラブ内 地震の方がプレート間地震よりも約3倍高いことを示し,スラブ内地震が同規模 のプレート間地震よりも高周波数地震波を強く励起していみことを明らかにした.

また,Bruneの断層モデルを仮定して推定された応力降下量がスラブ内地震とプ レート問地震では異なっていることを示し,地震モーメントが3.0X L024dyne―cm 以上の地震では,スラブ内地震は約300bar,プレート問地震は約50barの一定値 を持っことを示した.

  本研究によって得られた結果は,サブダクションゾーンの地震による強震動を 評価するための基礎的ではあるが,不可欠な情報であり,この結果をもとにサブ ダクションゾーンの地震を対象とした高精度な強震動予測手法が確立されること が期待される.

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学位 論文審査の要旨

学位論文題名

サブダクションゾーンにおける

地震 波減衰特性と震源特性に 関する研究

  日本列島のようなプレ、ートの沈み込む地域(サブダクションゾーン)では,巨大地震の 発生により大きな被害がもたらされている。2003年9月26日に発生した十勝沖地震(マ グニチュード8.0)もその一例である。このような地震による震災軽減のためには,想定さ れた地震による各地の強震動を予測し,それに応じた対策を講じることが必須である。地 震動の特性は,震源,伝播経路,地盤構造の特性に依存しており,高精度の強震動の予測 のためには,それぞれの特性を定量的に明らかにする必要がある。1995年の兵庫県南部地 震による大震災以降,この研究は内陸地殻内地震を対象に進められてきたが,サブダクシ ヨ ン ゾ ー ン の 地 震 に 対 し て は , そ の 手 法 の 確 立 が 待 た れ て い る 状 況 に あ る 。   本論文は,このような状況にあるサブダクションゾーンの地震(プレート問地震及びス ラブ内地震)による強震動の予測に関して,北海道東部地域を対象として,地震波伝播経 路特性と震源特性を定量的に明らかにしたものである。

  著者は,まず,高密度の観測点(K‑NET)で観測された強震動記録を基にして,伝播経 路特性について定性的な検討を行い,サブダクションゾーンの地震による強震動の特性が 火山フロントを境にして大きく異なることを明らかにした。それは,火山フロント背弧側 の観測点における高周波数地震波の大きい欠落で特徴づけられる。そこで,この特徴を定 量的に評価するために,火山フロントの前弧側と背弧側における上部マントルのS波減衰 構造(QS構造)を明らかにした。その結果,火山フロントの前弧側では,周波数の約1.0 乗に比例するQs値を得たが,その背弧側では,QS値の周波数依存性が極めて弱いことを 明らかにした。解析の手法としては,スペクトルインバージョン法(SI法)とコーダ規格 化法(CN法)のニっを採用し,両者がほぼ同一のQS値を示したことから,得られた解の 妥当性を確認している。

  次に,海底地震計による記録を基に,SI法とCN法によルプレート内部のQs値を直接 推定した。その結果得られたQS値は,従来考えられたものよりもかなり小さく,この値 では,サブダクションゾーンで観測される異常震域現象を説明できないことを示した。こ の矛盾 を解決するために,約50kmに境界を持っプレート内部のニ層QSモデルを提唱し た。このプレートのQS構造は,地震波データに基づぃて初めて提唱されたものである。

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努 典

二 清

   

   

泰 順

谷 田

山 田

笹 西

小 蓬

授 授

授 授

助 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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  最後に,上で得られたQs構造に基づき,S波観測スベクトルから伝播経路特性を除去し た震源スペクトルについて検討した。その結果,スラブ内地震の応力降下量がプレート問 地震のそれよりもはるかに大きいことを明らかにした。これらの研究成果は,サブダクシ ヨ ン ゾ ー ン の 地 震 に よ る 高 精 度 な 強 震 動 予 測 に 役 立 っ も の と 期 待 さ れ る 。

よって著者は,北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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