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e スポーツ産業に関する調査研究

報告書

平成30 年 3 月

総務省情報流通行政局情報流通振興課 (委託先: 株式会社 Gz ブレイン)

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目次

調査の概要 ...4 調査の目的 ...4 調査の方法 ...5 第 1 章 e スポーツ産業の概要 ... 8 1-1. e スポーツとは ... 8 1-1-1. e スポーツの歴史 ...8 1-1-2. e スポーツで使用されるゲーム ...9 1-1-3. ゲームのジャンル ...11 1-2. e スポーツ市場 ... 17 1-2-1. 海外市場規模・オーディエンス規模 ...17 1-2-2. 国内市場規模・オーディエンス規模 ...20 1-3. 大会 ... 21 1-3-1. 海外大会 ...21 1-3-2. 国内大会 ...23 1-3-3. 収益構造 ...25 1-4. プロ選手 ... 26 1-4-1. プロライセンス制度 ...26 第 2 章 国内における e スポーツ普及に関する課題の整理 ... 28 2-1. 版権に係る課題 ... 28 2-1-1. 大会を開催するまでのプロセス ...28 2-1-2. 大会開催申請・大会内容の調整 ...29 2-1-3. 基本契約の締結 ...29 2-1-4. プロモーション ...29 2-1-5. 配信の準備 ...29 2-1-6. 課題解決に向けた施策 ...30 2-2. 法律に係る課題 ... 32

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2-2-1. 刑法 ...33 2-2-2. 不当景品類及び不当表示防止法 ...33 2-2-3. 風俗営業法 ...34 2-2-4. 不当景品類及び不当表示防止法の適用判断 ...34 2-2-5. 課題解決に向けた施策 ...35 2-3. 国際化に係る課題 ... 36 2-3-1. 世界 e スポーツ産業の嗜好・特徴 ...36 2-3-2. 課題解決に向けた施策 ...37 第 3 章 コンテンツの配信メディア、コンテンツ内容の需要調査 ... 41 3-1. コンテンツの分類 ... 41 3-1-1. オンラインコンテンツ ...41 3-1-2. オフラインコンテンツ ...45 3-2. コンテンツの配信メディア ... 47 3-2-1. 主要な配信サービス ...47 3-3. 加熱する動画配信サービスの競争 ... 49 3-3-1. 他サービスとの連携 ...49 3-3-2. 収益プログラム ...50 第 4 章 e スポーツ普及に資するマーケティングプログラムの構築 ... 51 4-1. スポーツ政策 ... 51 4-1-1. スポーツ立国戦略 ...51 4-1-2. e スポーツと生態系 ...52 4-2. 他の競技との比較 ... 54 4-2-1. 近代オリンピック ...54 4-2-2. 将棋 ...55 4-2-3. マラソン ...55 4-3. e スポーツ発展のためのマーケティングの方向性 ... 57

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第 5 章 e スポーツを用いた地域活性化プログラムの検討 ... 60 5-1. 事例 ... 60 5-1-1. イベントの主催・招致 ...60 5-1-2. 国や自治体による環境整備 ...61 5-2. 提言 ... 65 5-2-1. 地域に根ざしたチームづくり ...65 5-2-2. イベントの招致 ...66 第 6 章 e スポーツコンテンツを通じた教育プログラムの検討 ... 67 6-1. 事例 ... 67 6-1-1. 教育プログラム ...67 6-1-2. クラブ活動 ...68 6-2. 提言 ... 70 6-2-1. プログラミング教育への活用 ...70 6-2-2. コミュニケーション教育への活用 ...71 第 7 章 高齢者・障害者向けの生きがい活動への適用検討 ... 73 7-1. 事例 ... 73 7-1-1. 健康の促進 ...73 7-1-2. バリアフリーの促進 ...74 7-1-3. コミュニケーションの促進 ...75 7-2. 提言 ... 77 7-2-1. ロールモデルの作成 ...77 7-2-2. アクティビティプログラムの作成 ...79 e スポーツ調査研究アンケート調査票 ... 81

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調査概要

調査の目的

本調査は、海外で普及が進んでおり、国内における成長も期待できる e スポーツについ て、さらに認知・普及を進めることを目的とする。 e スポーツはパーソナルコンピューター(PC)ゲーム、家庭用ゲーム 1、モバイルゲーム を用いて行う競技(スポーツ)である。日本のみならず、全世界で流行の兆しを見せてい る。 成長著しい e スポーツ産業において、日本は世界に出遅れている。Gz ブレインが運営す るエンターテイメント調査エンジン「eb-i」を用いて「e スポーツ」という言葉の認知を調 査したところ、2017 年 8 月時点では 14.4%だった。 動画配信サービスによる e スポーツ関連コンテンツの放送は年々増加傾向にあるが、大 手放送メディアが e スポーツコンテンツを報道以外の目的で取り上げることは殆どみられ ない。 競技用ゲームの開発についても、日本は遅れをとっている。e スポーツシーンで利用され

る「League of Legends」、「Counter-Strike: Global Offensive」、「Hearthstone」といっ た人気タイトルはいずれも海外企業が開発したものであり、日本企業は存在感を示せてい ない。 国内で e スポーツ関連の興行を行うにあたり大きな課題として挙げられるのが法律であ る。海外のように賞金付き e スポーツ大会を開催するためには様々な法律に抵触しない開 催スキームの設計には多大な工数を要している。 人材不足も否めない。e スポーツを生業として活躍するプロ選手は国内では数えるほどし か存在しない。また、プロ選手をサポートする指導者や、e スポーツを興行として行うビジ ネスパーソンも十分に育っていない。 本調査はこれらの国内 e スポーツ普及に係る諸問題の解決に資する情報を収集し、その 解決策を提言することを目的とする。 1家庭用のゲーム専用機(例:「ニンテンドー3DS」、「PlayStation 4」)でプレイするゲーム

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調査の方法

本調査を行うにあたり、以下の方法を用いて情報を収集した。 ・関連企業・団体へのアンケート調査 ・一般消費者へのアンケート調査 ・先行事例の調査

関連企業・団体へのアンケート調査

日本において e スポーツ大会を主催している企業 10 社に対してアンケート調査を行った。 アンケートの結果をもとに、日本における e スポーツ市場規模、e スポーツ大会の収益構造 といった数値を算出している。 調査対象企業の業種 家庭用ゲームデベロッパー・パブリッシャー: 3 社 スマートフォンゲーム運営: 2 社 広告・マーケティング: 1 社 PC・デバイスメーカー: 2 社 イベント興行: 2 社 合計 10 社 調査方法 電子ファイルのアンケート調査票2を各企業担当者にメールで送付し、回答を得た。 調査期間 2018 年 2 月 20 日~2018 年 3 月 8 日 アンケート結果概要 2 アンケート調査票の内容は本報告書巻末に記載

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第 1 章

e スポーツ産業の概要

1-1. e スポーツとは

e スポーツとはコンピューターゲーム(以降、ゲーム)を用いた競技を指す。ゲームには PC ゲーム、家庭用ゲーム、スマートフォンゲームが含まれる。また、アミューズメント施 設に設置された業務用ゲーム機を用いて行われる場合もある。 身体運動を伴う遊戯・競争を“スポーツ”と総称するが、マウス、キーボード、専用コ ントローラーといった手による操作に限定される e スポーツを“スポーツ”と定義すべき かといった問題について、意見が交わされている1。乗馬、アーチェリー、カーリングとい った道具を用いたスポーツ種目は数多く存在し、スポーツにおける“身体運動”も明確な 定義ではないため、e スポーツの定義に係る議論は今後も続くことが予想される。 e スポーツの定義に係る議論に関連し、パリオリンピック招致委員会は 2024 年パリオリ ンピックにおいて e スポーツを公式種目として採用することを検討しており、トニー・エ スタンゲ議長は e スポーツを追加することについて前向きなコメントを発表している2

1-1-1. e スポーツの歴史

ゲームを用いた競技はゲームがアミューズメント施設や一般家庭に普及する以前から開 催されている。古くは 1972 年にスタンフォード大学で計算機科学専攻の学生によって 「Spacewar!3」を用いた大会が開かれ、米雑誌「ローリング・ストーン」のスポーツ欄に記 事が掲載されている。 任天堂社の「ファミリーコンピューター(国外での名称は Nintendo Entertainment System)」、セガゲームス社の「メガドライブ(欧米での名称は GENESIS)」がヒットし、家 庭用ゲーム機を用いたゲームのプレイヤーが飛躍的に増加した。ゲームのデベロッパー(開 1 2018 年 2 月 17 日放送 NHK「週刊ニュース深読み」など 2 https://gigazine.net/news/20170812-paris-olympic-esports/ 3 対戦型のシューティングゲーム。プレイヤーは宇宙船を操作し、ミサイルで相手を撃破す ることで得点を獲得し、制限時間内に獲得した得点を競う

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発企業)やパブリッシャー(販売企業)はプロモーションの一環として e スポーツ大会を 開催するようになる。1990 年に任天堂社は「スーパーマリオブラザーズ」、「ハイウェイス ター」、「テトリス」といった人気タイトルの競技を行う「Nintendo World Championships」 を企画し、北アメリカの 39 都市を回る大規模なツアーを行っている。 日本では 1991 年にアーケードに登場したカプコン社の「ストリートファイターⅡ」が一 大ブームを巻き起こし、各地のゲームセンターで競技大会が開催されるようになる。以降、 「餓狼伝説」、「バーチャファイター」、「鉄拳」といった格闘ゲームジャンルのアーケード ゲームタイトルがゲームセンターを中心にファンコミュニティを形成し、日本における e スポーツ産業の礎を築いた。 「ドットコムバブル4」が起こった 1990 年末期から 2000 年以降、PC が一般家庭やインタ ーネットカフェといった商業施設に普及し、PC ゲームのプレイヤーが増加。これら PC ゲー ムを用いた e スポーツが“興行”として注目されるようになる。2000 年には韓国文化体育 観光部の支援を受け、韓国 e スポーツ協会(KeSPA)が発足。e スポーツの放送、e スポーツ イベントの開催といった包括的な事業に官民協同で乗り出す。同じく 2000 年にはドイツで エレクトロニック・スポーツ・リーグ社(ESL)が設立され、オンラインリーグ開催やメディ ア事業を開始。その他フランス、中国、イギリスといった国々で e スポーツを興行として 行う企業・団体が次々と設立された。 日本では 2000 年以降も PC ゲームより家庭用ゲームやスマートフォンゲームのプレイヤ ーが多数を占めていたため、PC ゲームを用いた e スポーツ興行の盛り上がりには追従して いなかったが、2010 年以降に格闘ゲームジャンルのコミュニティからプロ選手が次々に誕 生し、プロ選手達が世界で開催される大会で活躍することで、興行としての e スポーツへ の注目が集まるようになった。

1-1-2. e スポーツで使用されるゲーム

e スポーツで使用されるゲームのタイトルは多岐にわたる。タイトルによってルールは異 なり、プレイする選手やファンもタイトル毎に存在する。e スポーツ産業はこれらタイトル 毎に存在する選手・ファンのコミュニティによって構成されている。 e スポーツタイトルについて、同一のタイトルがアップデート 5を繰り返し長年にわたっ て継続的にプレイされるケース(例:「League of Legends」)、タイトルがシリーズ化し、 新たなナンバリングタイトルが継続的にプレイされるケース(例:「ストリートファイター」) がある。e スポーツがその他のスポーツと異なるのは、アップデートや新しいナンバリング 4 Microsoft 社の「Windows95」並びにインターネット回線の普及に伴う、情報技術関連企 業の株価高騰 5 キャラクターの追加、アイテムの追加といった部分的なリニューアル。PC ゲームでは“パ ッチ”と呼ばれることが多い

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タイトルへの乗り換えに伴って、ルール並びに競技条件が日々変更されることであり、選 手やファンはこれら変更に係る情報を常に収集する必要がある。

図表 1.1 は 2018 年 3 月 7 日にリリースされた「League of Legends」におけるアップデ 図表 1.1: 「League of Legends」のアップデート内容

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ート情報である。新しいキャラクターの追加、既存キャラクターの性能の変更、既存アイ テムの性能の変更といったアップデート情報が公式 WEB サイトを通じてユーザーに告知さ れる。「League of Legends」では数週間に 1 度といった頻度でこのようなアップデートが 繰り返されている。

1-1-3.ゲームのジャンル

e スポーツで使用されるゲームの主なジャンルは以下の通り。 ・マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA) ・ファーストパーソンシューティング(FPS) ・コレクタブルカードゲーム(CCG) ・格闘ゲーム ・その他スマートフォンゲーム

MOBA

主なタイトル: 「League of Legends」、「Dota 2」、「SMITE」、「Vainglory」

MOBA とは、プレイヤーが 2 つのチームにわかれ、各プレイヤーがキャラクターを操作し、敵チー ムの本拠地を破壊する、というルールを基本としたゲームジャンルを指す。MOBA は e スポーツで 最も人気のあるゲームジャンルの 1 つである。

MOBA はリアルタイムストラテジー(RTS)6から派生したジャンルとみられている。Blizzard

Entertainment 社(現 Activision Blizzard 社)が 1998 年に発売した RTS ゲーム「Star Craft」におけ る、1 体の強力なキャラクターを操作するユーザー制作のカスタムマップ「Aeon of Strife」が MOBA の起源とされる。更に Blizzard Entertainment 社がリリースした「Warcraft 3」において、ユーザーが 「Aeon of Strife」をベースとして様々なヒーロー(ユーザーが操作するキャラクター)を使用できるカ スタムマップ「Defense of the Ancients(DOTA)」を制作し、人気を博す。「DOTA」が普及したことで この基本ルールを踏襲したタイトルが制作され、一連のゲームが MOBA と呼ばれるジャンルとなっ た。 MOBA は全世界で人気を獲得しているゲームジャンルである。2009 年にリリースされた MOBA の代表的タイトル「League of Legends」は世界で最もプレイされているゲームであり、2016 年に 6 リアルタイムに進行する戦場で各チームが様々なキャラクターを操作し、相手チームを打 倒するゲームジャンル

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MAU(月あたりのアクティブユーザー)が 1 億人に達している7。また「League of Legends」と並ぶ人

気 MOBA タイトル「Dota 2」の MAU は 2018 年 3 月時点で 1067 万人をカウントしている8

MOBA タイトルの多くは PC ゲームであり、北米、アジア、欧州といった幅広い地域で人気がある 一方、日本のプレイヤー数は未だ発展途上といえる。図表 1.2 は「League of Legends」のサーバー 別ユーザー比率を表しているが、主に日本ユーザーが使用する「Japan」サーバーは全体の 0.71% に留まる。また「Dota 2」の全世界プレイヤーに対する日本人プレイヤーの比率も 1.75%に留まる。9 日本では長く家庭用ゲームがゲーム産業の大部分を占めてきた。近年はスマートフォンゲーム が台頭してきており、スマートフォンゲームの市場規模は 1 兆円に達成している。 一方、北米、アジア、欧州といった地域では家庭用ゲーム、スマートフォンゲームに加えて PC ゲ ームも盛んであり、大きな市場規模を形成している。 MOBA をはじめ e スポーツタイトルの多くは PC ゲームだが、日本では PC ゲームのプレイヤー層 が薄いという課題を抱えている。 7 https://www.polygon.com/2016/9/13/12891656/the-past-present-and-future-of-league -of-legends-studio-riot-games 8 2018 年 3 月 8 日時点の「Dota 2」公式ブログ発表数値 9 2018 年 2 月 27 日時点の SteamSpy における直近 2 週間の地域別プレイヤーデータを参照 図表 1.2: 「League of Legends」のサーバー別ユーザー比率 出典: https://www.unrankedsmurfs.com/blog/how-many-lol-players-are-on-each-server

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0 2,000 4,000 6,000 8,000 モバイルゲーム PCゲーム 家庭用ゲーム配信 家庭用ゲームPKG

欧州

1兆8436億円

(単位:億円) 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 モバイルゲーム PCゲーム 家庭用ゲーム配信 家庭用ゲームPKG

米国

2兆5250億円

(単位:億円) 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 モバイルゲーム PCゲーム 家庭用ゲーム配信 家庭用ゲームPKG

アジア

4兆1335億円

(単位:億円) 図表 1.2: 2016 年の世界ゲーム市場※ 出典: ファミ通ゲーム白書 2017 ※欧州は西・中央・東ヨーロッパ諸国全域の集計で、「家庭用パッケージ」のみ英国、ド イツ、フランス、スペイン、イタリア、スカンジナビア、ベネルクス地域の集計を合算。 アジアは、日本、中国、韓国の3 ヵ国の集計を合算。「モバイルゲーム」は、携帯電話、 タブレット向けのゲーム収益合計。PC ゲームは、PC パッケージ及びノンパッケージ、 MMOG、ソーシャル、ブラウザゲームの収益合計

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FPS

主なタイトル: 「Counter-Strike: Global Offensive」、「Overwatch」、「Call of Duty: WWII」、「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」

FPS とは一人称視点でキャラクターを操作し、銃器等のアイテムを用いて敵対するキャラ クターを打倒するゲームジャンルを指す。 1993 年に id Software 社が開発した「DOOM」が本ジャンルの起源とされており、今日に 至るまで数多くのタイトルがリリースされている。「Counter-Strike」、「Halo」、「Call of Duty」といった 2000 年代初頭にリリースされたタイトルはシリーズ化しており、今なお多 くのファンがプレイしている。 日本でも多くのプレイヤーを獲得しているジャンルであり、2015 年に発売された PlayStation 4 用ソフト「Call of Duty: Black Ops Ⅲ」は 39 万本、2016 年に発売された PlayStation 4 用ソフト「Overwatch Origins Edition」は 15 万本を売り上げている。10

2017 年に Bluehole 社(現 PUBG Corp 社)からリリースされた「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」は世界的なヒットとなり、Steam の同時接続数は 2017 年 12 月に 300 万人 を記録、「Counter-Strike: Global Offensive」と「Dota 2」を抜いて Steam で最もプレイ されているゲームとなった11「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」は「制限されたフィール

ドにおいて複数人のプレイヤーが最後の 1 人になるまで戦う」という基本ルールを採用し ているが、同ルールを踏襲した Epic Games 社の「Fortnite」、NetEase Games 社の「荒野行 動」といったタイトルが相次いでリリースされ、バトルロワイヤル系とも呼ばれる FPS の 派生ジャンルを形成している12

10 Gz ブレインが保有する家庭用ゲームパッケージソフト販売データを参照。

11 2018 年 2 月 27 日時点のランキング。SteamSpy における同時接続数プレイヤー数を参照 12 厳密には「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」「Fortnite」といったタイトルは三人称視

点(サードパーソンシューティング)と一人称視点(ファーストパーソンシューティング) を切り替えてプレイするゲームである

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CCG

主なタイトル: 「Hearthstone」、「Shadowverse」、「Gwent」

CCG とはトレーディングカードをデータ化し、アプリケーション内でトレーディングカー ドを用いて対戦するゲームジャンルを指す。

「Magic the Gathering」や「ポケモンカード」といった物理的なカードを用いてプレイ するトレーディングカードゲームは CCG 登場以前から多くのプレイヤーを獲得してきたが、 CCG となってオンラインでの対戦が容易となったことで、プレイヤー層が拡大し、人気ゲー ムジャンルの地位を確立した。Activision Blizzard 社が展開するファンタジーコンテンツ のフランチャイズ「Warcraft」の世界観をベースとして作られた「Hearthstone」は全世界 7000 万人のプレイヤー数を記録している13 国内では Cygames 社が 2016 年にリリースしたスマートフォン用ゲーム「Shadowverse」 が人気を博している。スマートフォンで展開することで多くの若年層プレイヤーを獲得し ており、「Shadowverse」をクラブ活動として採用している学校法人もある。 13 Activision Blizzard 社の 2017 年 5 月 1 日のリリースを参照 図表 1.2: Steam 最高常時接続プレイヤー数ランキング 出典: http://steamcharts.com/

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スクエア・エニックス社の「ドラゴンクエストライバルズ」、ガンホー・オンライン・エ ンターテイメント社の「クロノマギア(2018 年春リリース予定)」など、国内企業も相次い で CCG タイトルに参入しており、日本人プレイヤーからの期待も大きい。日本の e スポー ツ産業にとって大きな可能性のあるゲームジャンルといえる。

格闘ゲーム

主なタイトル: 「ストリートファイター」シリーズ、「鉄拳」シリーズ、「GUILTY GEAR」 シリーズ 格闘ゲームとはキャラクターを操作して相手と“格闘”し、対戦相手を打倒するゲーム ジャンルを指す。 カプコン社の「ストリートファイターⅡ」以降、数多くの格闘ゲームがリリースされ、 アーケードを中心にファンを拡大してきた。ゲームセンターを舞台にプレイヤー同士が競 い合い、「バーチャファイター」、「キングオブファイターズ」といったシリーズのコミュニ ティから有名プレイヤーが生まれた。エンターブレイン社(現 Gz ブレイン社)は 2003 年 から 2012 年まで格闘ゲームタイトルを用いた e スポーツ大会「闘劇」を開催し、格闘ゲー ムコミュニティ全体を支援する活動を行っており、現在同社が開催している「闘会議」に 当該ミッションは引き継がれている。 家庭用ゲーム機がインターネット回線に接続されるようになって以降は、オンラインで のマッチング対戦を楽しむプレイヤーが増加している。任天堂社の「大乱闘スマッシュブ ラザーズ」といったタイトルは家庭用ゲーム発の人気タイトルであり、アーケード発のタ イトルと比較して若年のプレイヤーを獲得している。 格闘ゲームは特に日本で人気のある e スポーツジャンルであり、e スポーツタイトルとし て使用されるタイトルは日本企業が開発・販売しているものが多い。日本ではアーケード ゲームや家庭用ゲームに対するプレイヤーの嗜好によって他国とは異なるゲーム文化が生 まれ、今日に至るまで独自の e スポーツ産業を形成している。

その他スマートフォンゲーム

主なタイトル: 「パズル&ドラゴンズ」、「モンスターストライク」 2012 年の「パズル&ドラゴンズ」に始まる日本のスマートフォンゲーム市場の拡大は、 2013 年には家庭用ゲーム市場を抜き、2016 年には 1 兆円を超えるまでに至っている14。日 本におけるスマートフォンゲームのプレイヤーは家庭用ゲームや PC ゲームよりも多く、日 14 ファミ通ゲーム白書 2017

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本人の 4 人に 1 人以上がスマートフォンでなんらかのゲームをプレイしている15 このような国内のゲーム産業構造の中で、「パズル&ドラゴンズ」、「モンスターストライ ク」といったスマートフォンゲームにおける人気タイトルが e スポーツの競技として採用 され、国内で大規模な大会が開催されている。 スマートフォンの高機能化に伴い、MOBA、FPS といった高度な性能が求められるジャンル のゲームがスマートフォンでリリースされ始めており、端末の普及をアドバンテージとし て、スマートフォンをプラットフォームとした e スポーツ市場が今後も成長していくこと が予想される。

1-2. e スポーツ市場

1-2-1. 海外市場規模・オーディエンス規模

米調査会社 Newzoo によると 2017 年の世界 e スポーツ市場規模は 700.9 億円、視聴者数 15ファミ通ゲーム白書2017 2017 年市場規模

700.9 億円

2017 年視聴者数

3 億 3500 万人

図表 1.3: メインゲーム環境別ゲームユーザー分布図 出典:ファミ通ゲーム白書2017

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は 3 億 3500 万人と試算されており、2018 年には市場規模は 38.2%、視聴者数は 13.8%成長 すると予想している。 527.5 700.9 969.4 1765.5 0.0 200.0 400.0 600.0 800.0 1000.0 1200.0 1400.0 1600.0 1800.0 2000.0 2016年 2017年 2018年 2021年 単位: 億円 図表 1.4: 海外 e スポーツ市場の推移

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近年、パブリッシャー・デベロッパーによる e スポーツリーグ大会が相次いで始まって いる。2017 年より Riot Games 社は「League of Legends」のリーグ大会「The North American League of Legends Championship Series」を開始、同じく 2017 年より Activision Blizzard 社は「Overwatch」のリーグ大会「Overwatch League」を開始した。これらのリーグはフラ ンチャイズシステムを採用しており、リーグに参加する各チームが地域の独占権を保有し ている。(区分けされた地域において、1 チームしか活動できない)リーグ参加チームを固 定することで、ファンはシーズンを通してチームを応援することができ、更には安定的な チームの露出によって、新たなスポンサー企業や配信企業を引き寄せている。 また、2018 年 2 月に行われた平昌冬期オリンピックでは、公式大会として ESL 社が運営 する「Intel Extreme Masters」の「StarCraft Ⅱ」の決勝大会が行われた。オープンリー グのオンライン・オフライン16予選を勝ち抜いたトップ選手が競技を行い、動画配信サービ ス「オリンピックチャンネル」でもその模様が配信された。e スポーツのオリンピック種目 への追加が議論される中で、一般的な認知・受容が高まり、伴って e スポーツ市場は加速 度的に成長している。 16 特定の会場にプレイヤーが集い、開催される大会をオフライン大会、WEB 上でプレイヤ ーをマッチングさせ、遠隔で開催される大会をオンライン大会と呼称する 281 335 380 557 0 100 200 300 400 500 600 2016年 2017年 2018年 2021年 単位:百万人 図表 1.5: 海外 e スポーツコンテンツ視聴者数の推移

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1-2-2. 国内市場規模・オーディエンス規模

本調査では 2017 年の国内 e スポーツ国内市場規模は 5 億円未満と試算した。市場規模に 含まれる項目は Newzoo 社の「2018 Global Esports Market Report」の項目に賞金を加え、 各項目を以下のように試算した。 ・スポンサー・広告収入: 約 1.3 億円以上 ・チケット収入: 約 1.2 億円 ・賞金: 約 0.9 億円 ・グッズ収入: 約 0.1 億円 ・著作権許諾収入: 約 0.1 億円 ・放映権収入: 約 0.1 億円 本調査のアンケートに回答した企業 10 社のスポンサー企業数並びに動画視聴者数をもと に広告・契約料を試算したところ、約 1.3 億円。

国内における主要大規模大会はカドカワ社の「闘会議」、CyberZ 社の「RAGE」、Riot Games 社の「League of Legends Japan League」であり、2017 年のこれらの大会のチケット収入 を試算したところ、約 1.2 億円。

2017 年に開催された「Overwatch」、「League of Legends」、「ストリートファイターV」、 「Shadowverse」、「Counter-Strike: Global Offensive」、「モンスターストライク」の主 要大会の賞金合算が約 0.7 億円。 本調査のアンケートの結果、グッズ収入、著作権許諾収入、放映権収入を得ている企業 数はそれぞれ全体の 10%程度に過ぎないため、収入金額を約 0.1 億円と試算。 これらスポンサー・広告収入、チケット収入、賞金、グッズ収入、著作権許諾収入、放 映権収入に本調査のアンケートに回答していない企業のスポンサー・広告収入を加えても 5 億円には満たないと試算した。 また、「ファミ通ゲーム白書」で 5 歳から 59 歳の男女に行った調査により、e スポーツを 視聴したことがあると答えたのは全体の 2%で、日本の人口に拡大推計した結果、158 万人 と試算した。e スポーツ認知の調査結果、並びに回答者の年代別の比率は図表 1.6 の通りで ある。 2017 年市場規模

5 億円未満

2017 年視聴者数

158 万人

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1-3. 大会

1-3-1. 海外大会

名称 使用タイトル 分類 主催企業 場所 賞金額 League of Legends World

Championship

League of Legends 単発 Riot Games 中国 4 億 9,200 万円17

League of Legends League of Legends リーグ Riot Games アメリカ他 -

17 2017 年大会の賞金総額。円/ドルの為替レート 107 円で算出

図表 1.6: e スポーツの認知と参加経験 出典:ファミ通ゲーム白書 2017

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Championship Series

The Overwatch League Overwatch リーグ Activision Blizzard

アメリカ -

Intel Extreme Masters Counter-Strik:Global Offensive、 PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS、 Starcraft Ⅱ、Dota 2 単発 ESL ポーラン ド他 2 億 900 万円18

The International Dota 2 単発 Valve アメリカ 26 億 5200 万円19

Dota 2 Asia Championships Dota 2 単発 Perfect World 中国 6,500 万円20 Smite World Championship Smite 単発 Hi-Rez Studios アメリカ 8,400 万円21

Call of Duty World League

Call of Duty: World War II

単発 Activision Blizzard

アメリカ 2000 万円22

Call of Duty World League Pro League

Call of Duty: World War II リーグ Activision Blizzard アメリカ 7500 万円23 ELEAGUE Counter-Strik:Global Offensive、-鉄拳、 Rocket League、 Injustice 2、 単発 Turner Sport、 WME-IMG アメリカ 1 億 700 万円24 Hearthstone Championship Tour Hearthstone ツアー Activision Blizzard オランダ 他 -

Capcom Pro Tour ストリートファイター ツアー カプコン アメリカ 他 - 18 2018 年カトヴィツェ大会の全タイトル賞金総額。円/ドルの為替レート 107 円で算出 19 2017 年大会の賞金総額。円/ドルの為替レート 107 円で算出 20 2017 年大会の賞金総額。円/ドルの為替レート 107 円で算出 21 2018 年大会の賞金総額。円/ドルの為替レート 107 円で算出 22 2018 年アトランタ大会の賞金総額。円/ドルの為替レート 107 円で算出 23 2018 年大会の賞金総額。円/ドルの為替レート 107 円で算出

24 2018 年ボストン大会(「Counter-Strik: Global Offensive」の大会)の賞金総額。円/

ドルの為替レート 107 円で算出 図表 1.7: 海外大会一覧

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e スポーツ大会は 「単発」、「リーグ」、「ツアー」に分類できる。

多額の賞金を集め、年・四半期といった頻度で大会を開催する「単発」式大会は、大小 様々、あらゆるタイトルのものが開催されている。Valve 社が開催する「The International」 は世界で最も高額な賞金が提供される大会として有名である。また、「Intel Extreme Masters」は Electronic Sports League 社(現 ESL 社)が主催、インテル社がスポンサー となって 2007 年より開催されている大会であり、ポーランドをはじめとして世界各地で大 会が開催されている。LAN パーティー(参加者が PC 等の機器を持ち込んでプレイする大会) 大手の DreamHack 社は 2010 年からスウェーデン、北米を中心に各地で大会を開催しており、 MOBA、FPS、格闘ゲームなど、取り扱うゲームのジャンルは幅広い。

Riot Games 社が運営する「League of Legends Championship Series」、Activision Blizzard 社が運営する「Overwatch League」といった大会は「リーグ」式大会に分類される。期間 が決められたシーズンにおいて、参加チームが総当たりで対戦し、シーズンを通しての順 位を決定する。Riot Games 社、Activision Blizzard 社といったパブリッシャー・デベロ ッパー企業が大会運営を行っているケースが多い。野球、サッカー、アメリカンフットボ ールといった他のスポーツ同様、「リーグ」式大会は長期間にわたって複数回の試合が行わ れるため、固定ファンの獲得、スポンサーとの安定したパートナーシップといった e スポ ーツ興行ビジネスモデルの発展に寄与している。 「ツアー」式大会は、「リーグ」式同様に一定期間にわたって大会が開催されるが、大会 参加者は固定されていない。シーズンを通して獲得したポイント及びシーズン最後に行わ れる決勝大会によってシーズンにおける順位が決定される。カプコン社による「Capcom Pro Tour」では、世界各地の様々な興行会社が主催する大会が「Capcom Pro Tour」の大会とし て認定されており、ツアーを通した順位上位者が決勝大会「Capcom Cup」で競い、ツアー 優勝者を決定する。「リーグ」式大会と異なり、大小さまざまな規模の大会が開催されてお り、プロ選手ではない一般プレイヤーにも門戸が開かれている。

1-3-2. 国内大会

名称 使用タイトル 分類 主催企業 賞金額

League of Legends Japan League

League of Legends リーグ Riot Games -

All Campus Series League of Legends 単発 Riot Games - PUBG Japan Series PUBG リーグ DMM - GALLERIA GAMEMASTER CUP Counter-Strike:

Global Offensive

単発 サードウェー ブデジノス

195 万円25

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日本 e スポーツリーグ Overwatch、FIFA、 BLAZBLUE リーグ e スポーツ コミュニケ ーションズ - “PlayStation®4“オーバ ーウォッチ 国内最強決 定戦 Overwatch 単発 e スポーツ 促進機構 30 万円26

GeForce CUP: Overwatch Overwatch 単発 NVIDIA Japan 60 万円27 JCG Master Overwatch 単発 マイルスト ーン 20 万円 RAGE ストリートファイター、 Shadowverse 単発 CyberZ 1,260 万円28 闘神祭 格闘ゲーム各種 単発 タイトー - Evo Japan 格闘ゲーム各種 単発 ハーツユナ イテッド 500 万円 ファミ通 CUP Shadowverse 単発 e スポーツ 促進機構、Gz ブレイン 400 万円29 モンストグランプリ モンスターストライク 単発 Mixi 1,000 万円30 パズドラジャパンカップ パズルアンドドラゴン ズ 単発 ガンホー・エ ンターテイ ンメント -

「League of Legends Japan League」は 2014 年より Riot Games 社によって開催されて おり、日本における「League of Legends」の最高峰の「リーグ」式大会として国内の e ス ポーツ興行をけん引している。同じく Riot Games 社が開催する「All Campus Series」は 大学のサークルのみによって行われる大会である。2018 年から DMM 社によって開催されて いる「PUBG Japan Series」は「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」の大規模なリーグ大会

26 2017 年大会の賞金総額 27 2017 年大会の賞金総額

28 2017 年 Shadowverse World Grand Prix の賞金総額 29 2017 年大会の賞金総額

30 モンストグランプリ 2018 闘会議 CUP の賞金総額

図表 1.8: 国内大会一覧

(26)

として注目を集めている。 日本では MOBA・FPS を扱った高額賞金大会の数は限られているが、マイルストーン社の オンライン対戦の JCG、オンライン対戦と国内最大規模の LAN パーティーを開催している CyAC といったオンライン中心のコミュニティがこれら PC ゲームタイトルのコミュニティ形 成をけん引してきた。国内 e スポーツ産業の成長と共に、これらのコミュニティによるオ フライン大会に対して企業が協賛するケースは増加傾向にある。 格闘ゲームはゲームセンターを中心としてプレイヤーのコミュニティを形成しており、 小・中規模大会が継続的に開催されている。著名な大会としては、タイトー社の「闘神際」、 ハーツユナイテッド社の「Evo Japan」といったものがある。タイトルを単体として取り扱 うのではなく、複数タイトルを大会で取り扱うケースが多い。 スマートフォンゲームを扱った大会も多く開かれている。Mixi 社の「モンストグランプ リ」、ガンホー・エンターテイメント社の「パズドラジャパンカップ」、CyberZ 社の「RAGE」 といった大会は規模が大きく、高額な賞金が設定されている。CyberZ 社は 2018 年に開催さ れる「World Grand Prix 2018」において 1 億円をこえる賞金を提供すると発表している31

1-3-3. 収益構造

本調査のアンケートに協力している企業 10 社の回答結果をもとに、e スポーツ大会の収 益構造を分析した。図表 1.9 は「大会主催に関連するいずれの項目で収益を獲得できてい るか」という質問に対する回答結果である。 収益項目 収益を獲得できている企業 スポンサー・広告収入 8 社 / 10 社 チケット販売 1 社 / 10 社 グッズ販売 1 社 / 10 社 放映権料 1 社 / 10 社 ゲーム会社からの支援金 1 社 / 10 社 10 社のうち、スポンサー契約を獲得している企業は 8 社だった。スポンサー企業は PC メ ーカー、半導体メーカー、PC 関連機器メーカーなど、e スポーツやゲーム全般に関連する 企業が多い。多くの大会来場者数、視聴者数を確保している企業ほど、食品、自動車メー カー、不動産といった e スポーツやゲームに関連しないスポンサーを獲得している傾向が 31 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1712/25/news098.html 図表 1.9: 各項目で収益を獲得できている企業数 出典:アンケート結果をもとにGz ブレインが作成

(27)

みられる。 「チケット販売」、「グッズ販売」、「放映権料」といった収益を獲得できている企業はそ れぞれ 1 社であり、ライブエンターテイメント興行の主となるこれらの項目で十分な利益 を獲得できていないことがわかる。 また、一部の興行企業は「ゲーム会社からの支援金」を得て大会を開催しており、パブ リッシャー・デベロッパーのプロモーション費用が興行にとっての収益源となっている。

1-4. プロ選手

過去、日本においては大規模且つ高額賞金が提供される大会が開催されてこなかったた め、実力のある日本人プレイヤーは海外の大会に出場して活躍していた。海外への遠征費 用や競技に取り組むための費用は個人が負担することになるため、プレイヤーが満足に競 技に取り組むことができないという課題があった。 日本の格闘ゲーム業界における有名プレイヤー梅原大吾氏は、2010 年にゲーム周辺機器 メーカーの Mad Caz 社とスポンサー契約を結び、日本で初めてのプロ選手となった32。格闘 ゲーム業界においては、梅原氏に続くように、まご氏、ときど氏といった有名プレイヤー が企業とスポンサー契約を結び、次々とプロ選手が誕生した。 PC ゲームを中心に活躍していたプレイヤー、チームも本格的なスポンサー獲得に向かっ ていく。「Counter Strike Online」のプレイヤー梅崎伸幸氏は「DetonatioN FocusMe」を 2015 年に設立し、スポンサー収入や獲得賞金をもとに、海外大会への本格的な参加を開始 した。

1-4-1. プロライセンス制度

プロライセンス制度とは、日本の e スポーツ団体である一般社団法人日本 e スポーツ連 合が認めた e スポーツのプレイヤーに対してライセンスを発行する制度である。 一般社団法人日本 e スポーツ連合によれば、以下の条件を満たしたプレイヤーに対して ライセンスが発行される。 ・プロゲーマーの定義33に誓約していること 32. http://www.4gamer.net/games/099/G009927/20100428025/ 33 「プロフェッショナルとしての自覚を持つこと」、「スポーツマンシップに則り、プレイ すること」、「プレイ技術の向上に日々精進努力すること」、「国内e スポーツの発展に寄与 すること」の4 項

(28)

・連合公認大会において公認タイトルの競技で優秀な成績を収めること ・連合の指定する講習を受けること プロ選手としてライセンスが発行されるタイトルは一般社団法人日本 e スポーツ連合が 認定したものに限られている。一般社団法人日本 e スポーツ連合が 2018 年 2 月時点でライ センス発行対象として、以下の 6 タイトルが発表された。 ・ウイニングイレブン 2018 ・Call of Duty: WWII

・ストリートファイターV アーケードエディション ・鉄拳 7 ・パズル&ドラゴンズ ・モンスターストライク 2018 年 2 月に行われた Gz ブレイン社主催の e スポーツ大会「闘会議」において、これら のタイトルの初の一般社団法人日本 e スポーツ連合公認大会が開催され、計 15 人のプロ選 手が生まれている。

(29)

第 2 章

国内における e スポーツ普及に関する課題の整理

2-1. 版権に係る課題

e スポーツを国内で普及させるにあたっては、プロ選手が活躍する大規模大会のみならず、 アマチュアのプレイヤーも参加可能な小・中規模大会の開催数を増やすことで、コミュニ ティを形成していくことが不可欠である。 しかし、e スポーツの大会を企画する事業者が直面する課題として版権の許諾がある。サ ッカー、野球、囲碁、将棋といった競技においては、使用される“ゲーム”はパブリック ドメインであり、版権の許諾を得る必要はない。一方、e スポーツの大会を開くには著作権 者であるパブリッシャー・デベロッパーの許諾を得る必要があり、当該プロセスの煩雑さ が事業者の新規参入、小・中規模大会の開催を困難にしているという実態がある。

2-1-1. 大会を開催するまでのプロセス

e スポーツ大会の興行を企画する事業者は著作権者からゲームタイトルを利用する許諾 を取得し、大会を開催する必要がある。大会を開催するまでのプロセスは以下の通り。 プロセス 詳細 大会開催申請 ゲームタイトルを用いて大会を行いたい旨を著作権者に 申請する 大会内容の調整 持ち込みされた大会企画内容について事業者・著作権者が 合意形成する 基本契約の締結 制約・利益の分配といった合意事項を契約書にまとめる プロモーション 集客のために各種プロモーションを行う 配信の準備 配信プラットフォームの選定、大会コンテンツの制作を行 う 図表 2.1: e スポーツ大会開催のプロセス 出典:Gz ブレインが作成

(30)

2-1-2. 大会開催申請・大会内容の調整

e スポーツ大会を企画する事業者は著作権者に対して大会の企画内容を打診し、大会でゲ ームタイトルを利用する目的について説明を行う。著作権者は大会内容によってゲームタ イトルのブランドイメージが棄損されないか、どの程度プロモーション効果が見込めるか、 どの程度協賛するかといった旨を検討する。 e スポーツの興行に関するガイドラインといったものは存在しないため、許諾の判断は全 て著作権者にゆだねられている。事業者・著作権者は案件毎に是非を判断し、内容を協議 する必要がある。 事業者が企画する大会において複数ゲームタイトルを利用する場合は、それぞれの著作 権者に対して問い合わせする必要がある。A 社は企画内容に好意的だが、B 社は企画内容に 批判的といった、ステークホルダーが複数存在する場合の合意形成には多大な工数を要す る。 また地方に拠点を構える事業者は著作権者に対して電話・電子メールといった手段でコ ミュニケーションを行うか、著作権者のオフィスを訪ねて打ち合わせを行う必要があるた め、効率性にも課題がある。

2-1-3. 基本契約の締結

大会内容の合意内容について正式な合意形成を行う、同種の大会を連続して行うといっ た場合、事業者と著作権者が基本契約を締結する方法もある。 資本力のある事業者は、法務部や社内弁護士といった社内人員が契約書を作成し、メリ ット・デメリットを鑑みた契約内容を検討することができる。一方、こういった選任の人 員を確保できない事業者にとっては契約書の作成に工数や外注費用といった追加のコスト を要する。

2-1-4. プロモーション

大会開催にあたっては、参加者の募集・集客といった観点から、WEB によるプロモーショ ン活動は欠かせない。事業者は画像・映像・音楽といった素材を用いてコンテンツを作成 し、ソーシャルネットワークサービスや専用 WEB サイト通じてプロモーションを行う。 これらのコンテンツを利用するために、団体は著作権者から素材利用の許諾を得る必要 がある。コンテンツに必要な素材の打診、受け渡し作業にも工数を要する。

2-1-5. 配信の準備

(31)

大会をオンラインで視聴するファンに向けて、事業者は大会コンテンツの配信を検討す る必要がある。配信に係る技術的な課題、番組演出といった要素に加えて、配信コンテン ツでのゲームタイトルの利用方法について著作権者との合意も必要となる。

2-1-6. 課題解決に向けた施策

e スポーツ大会の興行を企画する事業者並びに著作権者が円滑にコミュニケーションを 行うために、以下の施策が考えられる。 ・ガイドラインの策定 ・著作権の許諾代行 ・プラットフォームの利用 ガイドラインの策定 e スポーツ興行に係るゲームタイトルの使用に関するガイドラインを作成するといった 案が考えられる。大会のフォーマットや配信方法、参加者の規定等、大会開催に係る標準 的な仕様を整理し、広く普及させることで、事業者と著作権者のすり合わせ作業に要する 工数削減を図る。 e スポーツ向けのゲームタイトルを開発する企業にとっては、ガイドラインの内容を参考 に、e スポーツ興行に適した仕様で開発を進めることができる。版権許諾のみならず、e ス ポーツを“観る”ためにどのような配慮が必要かを周知させることで、e スポーツ大会の興 行を企画する事業者と著作権者とのコミュニケーションが円滑化する。 著作権の許諾代行 e スポーツの興行に係る著作権を集中管理するといった案も考えられる。パブリッシャ ー・デベロッパーはゲームタイトルの著作権を保有したまま、特定の団体に対して使用の 許諾を委任する。委任された団体は、全国各地で開かれる大会の問い合わせを一元的に受 付、大会開催の許諾を行う。地域のコミュニティやファンによる小規模大会の際には委任 団体が許諾を行い、大規模な大会に関しては著作権者が主体的に運営者と協議するなど、 規模の大小に応じてプロセスを整備する。 著作権を集中管した場合、事業者と著作権者との契約が一本化されるため、契約作業に 要する工数を削減できる。音楽著作権協会が整備している利用者からの申込方法等を参考 に、許諾を得るまでのプロセスを透明化・簡素化し、事業者が手軽に e スポーツ興行を行 える環境を準備する。

(32)

プラットフォームの利用 大会のプロモーションに際し、オンラインプラットフォームを利用する方法がある。日 本では「JCG」、「CyAC」、「OPENREC ARENA」といった対戦相手のマッチング、集客を担うサ ービスが既に運用されている。事業者はプラットフォーム上で大会情報を展開することで、 容易にプロモーションを行うことができる。 また、プラットフォーム側がプロモーションに必要なコンテンツ(例: ゲームタイトル の壁紙、キャラクターのイラスト、ロゴ)を準備している場合には、事業者がコンテンツ 作成に要する工数を削減できる。

(33)

2-2. 法律に係る課題

海外の e スポーツ大会では高額な賞金が設定されているものが多くみられる。高額な賞 金はプロ選手を目指すプレイヤーをひきつけ、メディア露出を増やすなど、e スポーツ産業

図表 2.2: 「JCG」のトップページ 出典: http://www.j-cg.com/

(34)

の活性化に大きく寄与している。 一方、日本で e スポーツ大会を開催するにあたっては、以下の法律が課題となるため、 事業者は法律に抵触しない枠組み作りが必要となる。 ・刑法 ・不当景品類及び不当表示防止法 ・風俗営業法

2-2-1. 刑法

高額賞金を捻出するために大会出場者から出場料を徴収した金額を賞金として大会勝者 に分配するケースが考えられるが、これは刑法賭博罪(刑法 185 条)の定義における賭博 に該当する可能性がある。賭博と定義されるものは(1)偶然の勝敗により、(2)財物・財 産上の利益の(3)得喪を争うことである1 (1)についてはチェスや囲碁といった完全情報ゲームでも該当するため、一般的な e スポ ーツタイトルは必然的に「偶然による勝敗が決まる遊戯」に該当する。 (2)については、ゲーム内通貨並びにゲーム内アイテムを賞金とするといった手段が考え られるが、今日のゲームにおいてはゲーム内通貨やアイテムを取引きするオンライン市場 が存在するケースもあり、これらのデータが現実の通貨に換算されてしまう場合には財 物・財産に該当してしまう。なお、RMT(リアルマネートレード)と呼ばれるパブリッシャ ー・デベロッパーではない企業(並びに個人)が運営するオンライン上の非公式な取引所 がオンラインゲーム黎明期から存在しており、「ゲーム内の通貨やアイテム財物・財産と見 做すか否か」については決定的な結論には至っていない。 (3)については、最終的に勝者に分配される賞金の出どころが出場者から徴収された出場 料ではない限り、これに該当しない。例えば、出場者から出場料を徴収するものの、その 金額は大会の運営費用や出場者が大会でゲームをプレイするというサービスに充当する場 合は、賭博に該当しない。賭博罪に抵触しないためには、賞金を出場料以外(例えばパブ リッシャーの予算、スポンサーからの出資金)から捻出する必要がある。

2-2-2. 不当景品類及び不当表示防止法

e スポーツ大会を開催する際に賞金を提供することにより、ゲームのパブリッシャー・デ ベロッパー(並びに利益を享受する関連企業)が顧客を誘引するための手段として自己の 1 2017 年 8 月に行われたゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2017」における国際カジ ノ研究所木曽崇氏のプレゼンテーションに依拠し、本項を作成 参照: http://www.4gamer.net/games/999/G999905/20170901121/

(35)

供給する商品・サービスの取引に付随してこれを提供しているとみなされ、当該法律に抵 触する可能性がある。景品に該当するとみなされる場合、取引価額が 5,000 円未満の場合 は取引価額の 20 倍まで、取引価額が 5,000 円以上の場合は 10 万円までの金額が上限とな り、海外大会のように億を超える賞金を提示した大会を開催することはできない。 賞金が景品とみなされない、つまり「景品が顧客誘引の手段となっていない」とみなさ れる場合は不当景品類及び不当表示防止法に抵触しないが、これは e スポーツタイトルを 含む大部分の家庭用ゲームが購入またはプレイするために金銭を請求する(商取引に該当 する)ため、抵触する可能性が高い。 昨今のスマートフォンゲームには無料でダウンロード・プレイ可能なものがあり、課金 要素はあるものの、その課金については“プレイ時間を圧縮する(例えばレベルを上げる、 いずれ手に入るアイテムを事前に取得する)”といった金銭のやりとりがゲームの巧拙に影 響しないとみなされ、不当景品類及び不当表示防止法に抵触しないという見解もある。 興行を専門とする企業やゲームセンターなど、ゲームタイトルの売り上げによって利益 を得ない企業が賞金を捻出する場合は賞金が景品とみなされないため、不当景品類及び不 当表示防止法には抵触しない。

2-2-3. 風俗営業法

風俗営業法の第 23 条第 4 項には「第二条第一項第七号のまあじやん屋又は同項第八号の 営業を営む者は、前条の規定によるほか、その営業に関し、遊技の結果に応じて賞品を提 供してはならない」との規定があり、ゲームセンターなどは第五号の営業にあたるため、 賞金を出して大会を開催した場合には風俗営業法の適用対象となる。飲食店が大会への出 場料並びに観戦料を徴収した場合にも風俗営業とみなされ、風俗営業法の適用対象となる。 また、興行主が常設ではない場所(野外の仮設など)で大会を開催するという手段もある が、大会が 2 日以上にわたった場合はその場所が常設とみなされる可能性がある。e スポー ツの決勝オフライン大会は 2 日以上にわたって開催されるケースも多く、風俗営業法の適 用対象となる可能性が高い。

2-2-4. 不当景品類及び不当表示防止法の適用判断

海外大会同様に、パブリッシャー・デベロッパーが賞金プール(大会用に課金アイテム をリリースし、課金金額を大会賞金に割り当てする方式)などの手法で資金を集め、高額 賞金付き大会を開催するにあたっての大きな課題は不当景品類及び不当表示防止法の「顧 客誘引となるか否か」の判断となっている。 過去、パブリッシャー・デベロッパーは自社の発売するゲームタイトルを用いた高額賞 金付き大会を行っていた。Mixi 社は「モンスターストライク」を用いた「モンストグラン

(36)

プリ 2016 闘会議 CUP」を 2016 年に開催し、5,000 万円の賞金を設定している。 これらの大会について、消費者庁はノーアクションレターに基づく 2016 年 9 月の回答書 の中で、パブリッシャー・デベロッパーが大会への高額賞金を拠出することに対して不当 景品類及び不当表示防止法の「顧客誘引の手段」にあたるが、基本無料且つ、ゲームへの 課金状況が競争の優劣に影響を与えない場合にはその限りではないとの回答を行っている。 東京大学白石忠志教授はノーアクションレターにおける「当社は、ネットワークを介し て異なる筐体間で対戦することができる機能を有するアクションゲームを一般消費者に供 給する事業を営む具体的な予定があるところ、当該アクションゲームの認知普及のための プロモーションの一環として、当該[アクションゲーム]の販売又は提供期間中に、当該ア クションゲームを利用した大会を開催し、その大会における成績優秀者に対して賞金を提 供するという企画を考えている」との照会情報について、高度な技術を有した有名選手に よる大会に関するものか、そういった技術を有しない一般ユーザーによる大会に関するも のかが明確ではなく、大会全般に拡大解釈できるだけの見解は有していない旨を論じてい る。加えて、高度な技術を有した有名選手による大会の場合は、「観戦する一般ユーザーと いう顧客に対して広告を行い誘引することが目的なのであって、賞金が提供される相手方 であるプレイヤーも形式的にはビデオゲームを購入した顧客であるとしても、そのような 「顧客を誘引するための手段として」賞金を提供しているわけではない、と説明するのが、 最も据わりが良いように思われる」と、見解を述べている。2

2018 年 2 月より開始されたリーグ大会「PUBG JAPAN SERIES」では、試合出場に係る出場 給をチーム・選手に支払うスキームが採用されている。順位と連動せず、あくまで試合に 出場する契約金が支払われる場合は、定義告示運用基準の仕事の報酬となり、景品類に該 当せず、当該法律の規制対象外となる。 また日本 e スポーツ連合が新たに開始したプロライセンス制度において、ライセンスを 取得したプロ選手は、選手としての研鑽のためにゲームに係る支出を行うため、不当景品 類及び不当表示防止法が対象とする一般消費者に当たらず、プロ選手のみが参加する大会 においては現行法の範囲内で、賞金を設定することができるとの説明を行っている 3。 本 スキームは不当景品類及び不当表示防止法において、プロ選手を“事業者”であると位置 づけすれば、事業者向けの景品は当該法律の規制対象外とする法解釈を採択している。

2-2-5. 課題解決に向けた施策

特定の企業が営利目的で販売(売り切り型、基本無料+課金型問わず)するゲームを用 いた新しい“スポーツ”という概念が生まれる中で、e スポーツ大会を企画する事業者、パ ブリッシャー・デベロッパーは賞金付き大会を行うための法解釈を模索している。 2 e スポーツと景品表示法 3 http://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/pickup/15/1003590/122101516/?rt=nocnt

(37)

事業者向けの景品は当該法律の規制対象外とする法解釈をもとに始まった「プロライセ ンス制度」であるが、定義告示運用基準の仕事の報酬であれば“事業者”であると認定さ れずとも賞金の提供が可能であり、「プロライセンス制度」発足以後、その存在意義につい て多くの議論が行われている。 高額賞金を設定した大会を行うメリットは大きい一方、法律に抵触するというリスクは 事業者のビジネス参入を妨げる要因となっている。景品表示法という固有の課題が日本 e スポーツ産業に立ちはだかっている。 本件に関しては民間のみならず、行政と合同で法解釈のコンセンサスを模索しなければ ならない。現行法の解釈によって賞金付き大会を開催できるのか、参加者の制限はあるか、 e スポーツという新しい概念に併せて不当景品類及び不当表示防止法の法改正も視野にい れるべきかといったことを、官民の有識者を交えて議論を進める必要がある。

2-3. 国際化に係る課題

e スポーツ産業は世界各地で盛り上がりを見せているが、国・地域によってゲームタイト ルの嗜好が異なるため、e スポーツ用タイトルの開発、e スポーツ放送事業の展開といった 各種事業において、一律の戦略を用いてグローバル展開することは困難である。 一方、日本のプレイヤーやファンの 嗜好・特徴にあわせて e スポーツ産業が独自の構造・ 特徴をもって発展した場合に、プロ選手の活躍や e スポーツコンテンツの普及に際して対 象となるマーケットが限定されてしまうという課題もある。 e スポーツ産業延いてはゲーム産業においては、グローバルマーケットでの展開が不可欠 であり、各地域の嗜好・特徴を分析した上で、事業の展開を検討する必要がある。

2-3-1. 世界 e スポーツ産業の嗜好・特徴

韓国 e スポーツ大国と呼ばれる韓国は 1998 年に発売された「StarCraft」のブームを皮切りに、 官民が e スポーツ事業に乗り出し、大きな産業を形成してきた。「StarCraft」をはじめと する RTS タイトルや、RTS の派生である MOBA タイトルの人気が根強く、これらの分野で実 力プロ選手が活躍している。 常設の e スポーツ施設やインターネットカフェといったリアルサイトにプレイヤーが集 い、多くのコミュニティを形成しており、e スポーツが最も文化的に根付いた国の一つとい える。

(38)

アメリカ

Activision Blizzard 社や Riot Games 社といった大手 e スポーツタイトルのパブリッシ ャー・デベロッパーが多数存在し、これらの企業が各地で大規模な大会を開催している。 MOBA、FPS、CCG、スマートフォンゲームなど、ジャンル・プラットフォームを問わず、 あらゆるゲームのプロ選手が活躍している。 中国 e スポーツコンテンツの視聴者の半数以上は中国のユーザーと言われるほど、e スポーツ 産業が発達している。Tencent 社、NetEase 社といった巨大 IT 企業が e スポーツ産業に出 資をしており、チームの組成、専用スタジアムの建設といった動きも活発である。 スマートフォンゲームのユーザー層が厚く、PC ゲームでは MOBA の優秀な選手を多く輩出 している。 欧州 老舗 e スポーツ興行企業 ESL 社はドイツで設立されており、e スポーツ産業の歴史は古い。 サッカーのクラブチームがサッカーゲーム「FIFA」のプロ e スポーツチームを保有してい ることも特徴的である。 PC ゲームの嗜好が強く、「Counter Strike」をはじめとした FPS タイトルで多数のプロ選 手が活躍している。 東南アジア 格闘ゲームに対する強い嗜好を有する。シンガポール・マレーシアといった国では「ス トリートファイター」シリーズが、フィリピンでは「鉄拳」シリーズが人気を博している。 ツアー式大会の多くが東南アジアで開催されている。

2-3-2. 課題解決に向けた施策

国際化に向けて注力していくべきテーマは以下の通り。 ・強化タイトル ・産業の可視化

(39)

強化タイトル 日本では初のプロ選手が格闘ゲームジャンルから輩出されていることからも、格闘ゲー ムのコミュニティが多数存在し、多くのプロ選手が活躍している。アーケードゲームを中 心とした対戦ゲーム文化から連綿と続く嗜好・特徴が日本の e スポーツ産業を形成してい る。 日本と同様に、東南アジアやアメリカといった格闘ゲームジャンルの盛んな地域と連携 し、市場拡大を模索していく必要がある。ゲームタイトルを開発する段階でこれらの地域 でのプレイヤー獲得、興行展開を見据えて仕様を調整することで、結果として、e スポーツ 市場の土台となるコミュニティが形成されていく。バンダイナムエンターテイメントコ社 の「鉄拳 7」ではフィリピン人の女性キャラクターを投入し、地域ファンへの訴求をはかっ ている。

(40)

一方でグローバルの e スポーツ市場を鑑みると、MOBA・FPS といったゲームタイトルが主 流であり、グローバルで活躍するプロ選手の育成、グローバルが注目する e スポーツ興行

図表 2.2: 「鉄拳 7」のフィリピン人キャラクター ジョシー・リサール 出典: http://www.tekken-official.jp/news/?p=730

(41)

の創造といった観点では、国内でも MOBA・FPS といったジャンルのコミュニティを育成し ていく必要がある。 日本では家庭用ゲーム市場やスマートフォンゲーム市場の規模が大きく、これら e スポ ーツタイトルの土台となる PC ゲーム市場は今日に至るまで大きな規模には成長していない。 市場規模やプレイヤー数が十分に成長しなければ、e スポーツ興行で活躍するプロ選手の輩 出も困難である。 おりしもプログラミング教育が注目され、幼少期より PC に触れる機会は増えている。プ ログラミングと並行し、PC を用いたゲームに親しむことで、e スポーツ興行のファン、更 にはプロ選手の輩出にも大きな効果が期待できるだろう。 産業の可視化 日本 e スポーツ産業を発展させるには、日本人プロ選手を世界に送り込むのみならず、 世界のプロ選手を e スポーツ興行に招き入れなければならない。世界の e スポーツ関連の マネジメント会社、エージェント、スポンサーといった団体に対して、日本の e スポーツ の興行規模や、ビジネススキーム、契約慣習といった情報を継続的に提供していく必要が ある。 本調査報告書をはじめとして、日本 e スポーツ産業に係るレポートを出版し、e スポーツ 産業を可視化することで、世界のスポンサー企業、メディア、金融機関といった企業をひ きつけることができる。

(42)

第 3 章

コンテンツの配信メディア、コンテンツ内容の需要調査

3-1. コンテンツの分類

e スポーツのコンテンツは主に以下の 2 つに分類される。 ・オンラインコンテンツ ・オフラインコンテンツ

3-1-1. オンラインコンテンツ

e スポーツ大会の試合は WEB の動画配信サービスとして配信されるケースが多く、世界中 のファンはこれらのサービスにアクセスして試合を観戦する。また、選手個人が動画配信 サービスで動画を配信する等、e スポーツコンテンツの視聴体験の大部分は WEB を通じて行 われる。 大会映像 e スポーツを楽しむファンの多くは「Twitch」」、「YouTube」、「ニコニコ動画」といった動 画配信サイトを利用して、リアルタイムで試合を視聴する。ターナー・ブロードキャステ ィング・システム社のリーグ大会「ELEAGUE」は「Twitch」並びにターナー・ブロードキャ スティング・システムで放送されており、2016 年には平均 27 万 1000 人の視聴者を獲得し、 合計視聴時間は 1330 万時間にのぼると発表している1 大会の番組には実況者・解説者といった役割の出演者が配置され、試合内容が逐一解説、 分析される。大規模な大会では、普段からゲームタイトルをプレイするコアなファンから 初めてゲームタイトルを視聴するライトなファンまで様々な視聴者が含まれるため、実況 1 ゲームをプレイしながらコメントする動画をアップロードするインフルエンサー https://digiday.jp/publishers/one-season-down-turners-esports-league-off-to-a-ve ry-successful-start/

図表 1.1 は 2018 年 3 月 7 日にリリースされた「League of Legends」におけるアップデ図表 1.1:  「League of Legends」のアップデート内容
図表 1.7:   海外大会一覧
図表 2.2:   「JCG」のトップページ  出典:   http://www.j-cg.com/
図表 2.2:   「鉄拳 7」のフィリピン人キャラクター  ジョシー・リサール  出典: http://www.tekken-official.jp/news/?p=730
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